(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175281
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】サージ圧吸収装置、サージ圧吸収装置の液圧装置、成形機及び液圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20241211BHJP
B29C 45/57 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B22D17/32 B
B29C45/57
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092943
(22)【出願日】2023-06-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】辻 眞
(72)【発明者】
【氏名】豊島 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】中野 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】松澤 周吾
(72)【発明者】
【氏名】井澤 龍介
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AR027
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN25
4F206JQ03
4F206JQ90
4F206JT21
4F206JT24
(57)【要約】
【課題】サージ圧の吸収に係る応答性を向上させる。
【解決手段】サージ圧吸収装置2は、液圧式のシリンダ43と接続されるチェック弁51を有している。シリンダ43において、ロッド49は、金型101内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41に固定される。ピストン47は、ロッド49に固定されている。シリンダ部材45は、ピストン47を収容している。シリンダ部材45の内部は、ピストン47によって、ロッド49が位置しているロッド側室45rと、その反対側のヘッド側室45hとに区画されている。チェック弁51は、金型101内の溶湯109の圧力によって進退部材41が後退してピストン47がロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ移動する過程で、ヘッド側室45hからロッド側室45rへの流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材に固定されるロッドと、前記ロッドに固定されているピストンと、前記ピストンを収容しているシリンダ部材と、を有し、前記シリンダ部材の内部が、前記ピストンによって、前記ロッドが位置しているロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている液圧式のシリンダと、
前記ピストンが前記型内の成形材料の圧力による前記進退部材の後退に伴って前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ヘッド側室から前記ロッド側室への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁と、
を有しているサージ圧吸収装置。
【請求項2】
前記チェック弁は、前記ピストンに含まれている
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項3】
前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退して前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記チェック弁を含む流路とは別個に前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを通じさせるランアラウンド回路を更に有している
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項4】
前記ロッド側室、前記ヘッド側室、液圧源及びタンクの接続関係を切り換える切換弁を更に有しており、
前記切換弁は、
前記ロッド側室、前記ヘッド側室及び前記液圧源を互いに接続する第1状態と、
前記ロッド側室及び前記液圧源を互いに接続するとともに、前記ヘッド側室及び前記タンクを互いに接続する第2状態と、
前記ロッド側室及び前記タンクを互いに接続するとともに、前記ヘッド側室及び前記液圧源を互いに接続する第3状態と、の間で切換え可能であり、
前記ランアラウンド回路は、前記切換弁が前記第1状態に切り換えられることによって構成される
請求項3に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項5】
前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退した後、かつ次の成形サイクルで前記型内の成形材料が前記進退部材に到達する前に、前記切換弁を前記第3状態にする制御装置を更に有している
請求項4に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項6】
アキュムレータと、
前記アキュムレータから前記ヘッド側室へ至っているACC流路と、
前記ACC流路に位置しており、前記アキュムレータ及び前記ヘッド側室の少なくとも一方の圧力によって開かれ、かつパイロット圧の導入によって閉じられるACCバルブと、
を更に有している請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項7】
前記ヘッド側室に液圧を付与する供給部と、
前記供給部を制御する制御装置と、
を更に有しており、
前記制御装置は、前記型内へ射出された成形材料が前記進退部材に到達する前から到達するまでの期間に亘って、前記供給部に、所定圧力の液圧を前記ヘッド側室に付与させる
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記型の温度に応じて前記所定圧力を変更する
請求項7に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記型内へ射出された成形材料が前記進退部材に到達して前記進退部材が後退した後、前記供給部に、前記所定圧力よりも高い液圧を前記ヘッド側室へ付与させ、これにより前記進退部材を前進させて局部加圧を行う
請求項7に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項10】
型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材に固定されるロッドと、前記ロッドに固定されているピストンと、前記ピストンを収容しているシリンダ部材と、を有し、前記シリンダ部材の内部が、前記ピストンによって、前記ロッドが位置しているロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている液圧式のシリンダに接続される液圧装置であって、
前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退して前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを通じさせるランアラウンド回路を有している
サージ圧吸収装置の液圧装置。
【請求項11】
請求項1に記載のサージ圧吸収装置と、
前記型を保持する型締装置と、
前記型内に成形材料を射出する射出装置と、
を有している成形機。
【請求項12】
シリンダ部材と、
前記シリンダ部材に収容されており、前記シリンダ部材の内部をロッド側室とヘッド側室とに区画しているピストンと、
前記ピストンに固定されており、前記ロッド側室を経由して前記シリンダ部材の外部へ延び出ているロッドと、
前記ピストンに含まれており、前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ヘッド側室から前記ロッド側室への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁と、
を有している液圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サージ圧吸収装置、サージ圧吸収装置の液圧装置、サージ圧吸収装置を含む成形機、及びサージ圧吸収装置に利用可能な液圧シリンダに関する。成形機は、例えば、金属を成形するダイカストマシン、又は樹脂を成形する射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
型のキャビティに通じるスリーブ内の成形材料(例えば溶融状態の金属)をプランジャによって押すことによってキャビティに成形材料を射出して成形品を製造する成形機において、いわゆるサージ圧が生じることが知られている。サージ圧は、成形材料がキャビティの概ね全体に行き渡って逃げ場を失ったとき(充填が概ね完了したとき)に生じる、瞬間的かつ比較的大きい圧力である。サージ圧が大き過ぎると、例えば、いわゆるバリが生じる。バリは、キャビティの周囲へ成形材料が食み出して形成される部分(形成が意図されていない部分)である。
【0003】
特許文献1は、キャビティに充填された成形材料をスクイズピンによって加圧する局部加圧に係る技術を開示している。特許文献1では、スクイズピンを油圧式(液圧式)のシリンダによって駆動している。特許文献1は、第1圧力でスクイズピンを前進させて局部加圧を行い、次に、第1圧力よりも高い第2圧力でスクイズピンを前進させて局部加圧を行うこと(2段階の局部加圧を行うこと)を提案している。
【0004】
特許文献2は、局部加圧のための局部加圧装置を用いてサージ圧を低減する技術を提案している。具体的には、特許文献2では、キャビティに成形材料を射出する前に、加圧部材(スクイズピン)を前進限にて待機させる。このとき、加圧部材を駆動する液圧式のシリンダには、アキュムレータによって第1圧力が付与されている。その後、成形材料が射出されて加圧部材に到達すると、加圧部材は、成形材料の圧力によって後退する。これにより、サージ圧が吸収される。その後、第1圧力よりも高い第2圧力が上記シリンダに付与される。これにより、加圧部材が前進して、局部加圧が行われる。
【0005】
特許文献3及び4では、加圧プランジャ(スクイズピン)を駆動する液圧式のシリンダにおいて、2つのシリンダ室(ロッド側室及びヘッド側室)を接続する流路と、当該流路に設けられたバルブとを開示している。この流路は、シリンダからのガス抜き(エア抜き)に利用される。
【0006】
特許文献5~7では、キャビティに金型(キャビティを構成する金型とは別の金型)とその駆動用の油圧式のシリンダとを組み込んだ技術を開示している。これらの文献では、冷却及びエア抜きのために、前方シリンダ室(ロッド側室)と後方シリンダ室(ヘッド側室)とを連通する流路と、当該流路の開閉に係る弁とを開示している。
【0007】
より詳細には、例えば、特許文献5の
図3では、ヘッド側室からロッド側室への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁が開示されている。ヘッド側室とチェック弁との間には、オリフィス及びリリーフ弁が介在している。ヘッド側室に作動油が供給され、ピストンが前進限(ロッド側室の側の駆動限)に到達すると、ヘッド側室の圧力が上昇し、リリーフ弁が開かれる。ヘッド側室の作動油は、チェック弁及びロッド側室を順に経由してタンクへ流れる。このような作動油の交換によって、シリンダの冷却が行われ、また、エア抜きが行われる。
【0008】
また、特許文献6では、ピストンに内蔵されている制御弁を開示している。制御弁は、ヘッド側室からロッド側室への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁を含んでいる。ただし、上記制御弁は、上記のチェック弁に対して直列かつ逆向きに接続される他のチェック弁を含んでおり、ピストンが後退限(ヘッド側室の側の駆動限)に到達しない限り、いずれの方向の流れも禁止するように構成されている。
【0009】
また、特許文献6では、ピストンに内蔵されている制御弁を開示している。制御弁は、ロッド側室又はヘッド側室の圧力によっては開かれず、前進限又は後退限に到達したときに開かれるように構成されている。
【0010】
特許文献8では、ロッド側室とヘッド側室とを連通可能なエアシリンダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016-196009号公報
【特許文献2】特許第7137729号公報
【特許文献3】特開2021-20224号公報
【特許文献4】国際公開第2021/14707号
【特許文献5】特開2002-31101号公報
【特許文献6】特開2006-207792号公報
【特許文献7】特開2013-7407号公報
【特許文献8】実開昭58-76805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
サージ圧の吸収に係る応答性を向上させることができるサージ圧吸収装置、サージ圧吸収装置の液圧装置及び成形機、並びにサージ圧吸収装置に利用可能な液圧シリンダが待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様に係るサージ圧吸収装置は、型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材に固定されるロッドと、前記ロッドに固定されているピストンと、前記ピストンを収容しているシリンダ部材と、を有し、前記シリンダ部材の内部が、前記ピストンによって、前記ロッドが位置しているロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている液圧式のシリンダと、前記ピストンが前記型内の成形材料の圧力による前記進退部材の後退に伴って前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ヘッド側室から前記ロッド側室への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁と、を有している。
【0014】
本開示の一態様に係るサージ圧吸収装置の液圧装置は、型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材に固定されるロッドと、前記ロッドに固定されているピストンと、前記ピストンを収容しているシリンダ部材と、を有し、前記シリンダ部材の内部が、前記ピストンによって、前記ロッドが位置しているロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている液圧式のシリンダに接続される液圧装置であって、前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退して前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを通じさせるランアラウンド回路を有している。
【0015】
本開示の一態様に係る成形機は、上記サージ圧吸収装置と、前記型を保持する型締装置と、前記型内に成形材料を射出する射出装置と、を有している。
【0016】
本開示の一態様に係る液圧シリンダは、シリンダ部材と、前記シリンダ部材に収容されており、前記シリンダ部材の内部をロッド側室とヘッド側室とに区画しているピストンと、前記ピストンに固定されており、前記ロッド側室を経由して前記シリンダ部材の外部へ延び出ているロッドと、前記ピストンに含まれており、前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ヘッド側室から前記ロッド側室への流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁と、を有している。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成によれば、例えば、サージ圧の吸収に係る応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は実施形態に係るサージ圧吸収装置の概要を説明するための模式図、
図1(b)は
図1(a)の領域Ibの拡大図。
【
図2】
図2(a)は
図1(a)の動作の続きを示す模式図、
図2(b)は
図2(a)の領域IIbの拡大図。
【
図3】
図1のサージ圧吸収装置の要部の構成を示す模式図。
【
図4】実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す側面図。
【
図5】サージ圧吸収装置のサージ圧吸収中の状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態に係るサージ圧吸収装置の概要)
図1(a)~
図2(b)は、実施形態に係るサージ圧吸収装置2(以下、単に「吸収装置2」ということがある。)及び射出装置9の動作の概要を示す模式図である。
【0020】
図1(a)及び
図2(a)は、吸収装置2及び射出装置9を模式的に示しており、また、成形サイクル中(より詳細には射出サイクル中)の互いに異なる時点の状態を示している。
図1(b)は、
図1(a)の領域Ibの拡大図である。
図2(b)は、
図2(a)の領域IIbの拡大図である。
【0021】
図1(a)は、成形材料(例えば溶融状態の金属である溶湯109)を金型101の内部に射出する射出工程が行われている状態を示している。射出工程においては、矢印a1で示すように、プランジャ21(射出プランジャ)が金型101に向かって前進することによって、スリーブ19内の溶湯109を金型101の内部(空洞107)に押し出す。
【0022】
図2(a)は、
図1(a)の後の状態を示している。射出工程が進むと、溶湯109が空洞107の概ね全体に行き渡る。
図2(a)は、そのような状態を示している。なお、実施形態の説明では、このような状態に至ったことを充填が完了したということがある。充填が完了すると、逃げ場を失った溶湯109をプランジャ21が押すことによって溶湯109の圧力は上昇する。このとき一時的かつ急激な圧力上昇を伴う、いわゆるサージ圧が生じることもある。
【0023】
ここで、本実施形態においては、空洞107への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41と、進退部材41に固定されているシリンダ43とが設けられている。シリンダ43は、液圧式(例えば油圧式)のシリンダである。
【0024】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、充填が完了する前(別の観点では溶湯が進退部材41へ到達する前)において、進退部材41は、後退限よりも前方(空洞107側)の初期位置(例えば前進限)にて待機する。そして、溶湯109が進退部材41の位置に到達し、さらに、溶湯109が進退部材41を後方へ押す力が一定の大きさを上回ると、矢印a2(
図2(a))及び矢印a3(
図2(b))によって示すように、進退部材41は後退する。なお、進退部材41は、後退限に到達してもよいし、到達しなくてもよい。
【0025】
進退部材41の後退に伴う力は、シリンダ43に伝えられ、シリンダ43が駆動される。別の観点では、進退部材41は、シリンダ43から後退に抗する力を受けつつ後退する。これにより、例えば、一定程度の圧力が溶湯109に付与されつつ、サージ圧の少なくとも一部が吸収される。
【0026】
吸収装置2は、その後、進退部材41を前進させることによって、いわゆる局部加圧を行うことができる。ただし、吸収装置2は、そのような局部加圧を行わず、単にサージ圧の吸収のみに利用されてもよい。実施形態の説明では、主として、局部加圧を行う態様を例に取る。
【0027】
図3は、吸収装置2の要部の構成を示す模式図である。なお、シリンダ43に関して、
図3の左右方向は、
図1(a)の左右方向と同じである。従って、シリンダ43に対して
図3の左側に進退部材41が位置する。
【0028】
シリンダ43は、以下の構成要素を備えている。進退部材41に固定されるロッド49。ロッド49に固定されているピストン47。ピストン47を収容しているシリンダ部材45。シリンダ部材45の内部は、ピストン47によって、ロッド49が位置しているロッド側室45rと、その反対側のヘッド側室45hとに区画されている。ロッド49は、ロッド側室45rを経由してシリンダ部材45の外部へ延び出ており、その先端側が進退部材41に固定される。
【0029】
なお、「固定」の語は、矛盾等が生じない限り、広く解釈されてよい。例えば、2つの部位の固定は、両者を一体的に同一材料で形成することによって実現されてもよいし、両者を互いに別個に作製して、ねじ等によって連結することによって実現されてもよい。また、両者の間に他の部位が介在していてもよい。また、以下では、ピストン47のロッド側室45rの側への移動を「前進」といい、その逆側への移動を「後退」ということがある。
【0030】
空洞107に充填された溶湯の圧力によって進退部材41が後退するとき、ピストン47も後退する。すなわち、ヘッド側室45hの容積が縮小される。このとき、ヘッド側室45hからは作動液が排出されてよい。また、別の観点では、ピストン47が後退するとき、ロッド側室45rの容積が拡大する。このとき、ロッド側室45rには、作動液が補給されてよい。
【0031】
ヘッド側室45hからの作動液の排出先は任意である。図示の例では、ヘッド側室45hにアキュムレータ65が接続されている。従って、例えば、ヘッド側室45hの圧力がアキュムレータ65の圧力を超えると、ヘッド側室45hの作動液は、アキュムレータ65に流入する。別の観点では、ヘッド側室45hの圧力は、概ね、アキュムレータ65の圧力に維持される。これにより、例えば、吸収装置2は、サージ圧を吸収しつつも、溶湯に一定程度の圧力を付与することができる。
【0032】
なお、例えば、ヘッド側室45hとアキュムレータ65との間の流路の容積が相対的に大きく、ヘッド側室45hから排出される作動液の量が相対的に少ない場合においては、ヘッド側室45hの作動液がアキュムレータ65に到達するとは限らない。ただし、本開示においては、便宜上、上記のような場合であっても、ヘッド側室45hの作動液がアキュムレータ65へ流入する等と表現することがある。成形機内の他の部分における流体の流れについても同様とする。
【0033】
吸収装置2は、溶湯の圧力によって進退部材41及びピストン47が後退する過程で(換言すれば中途の位置で)、ヘッド側室45hからロッド側室45rへの流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁51を有していてよい。この場合、ヘッド側室45hの圧力がロッド側室45rの圧力に対して一定程度(略0であってもよい)の差で大きくなると、ヘッド側室45hの作動液はロッド側室45rへ流入する。チェック弁51(別の観点ではチェック弁51を含む流路61)は、任意の位置に設けられてよい。図示の例では、チェック弁51(流路61)は、ピストン47に設けられている。
【0034】
また、吸収装置2は、溶湯の圧力によって進退部材41及びピストン47が後退する過程で、ヘッド側室45hとロッド側室45rとを通じさせるランアラウンド回路53を有していてよい。この場合、ヘッド側室45hの圧力がロッド側室45rの圧力に対して大きくなると、ヘッド側室45hの作動液はロッド側室45rへ流入する。ランアラウンド回路53の具体的な構成は任意である。図示の例では、切換弁55が中立位置とされ、これにより、ヘッド側室45h、ロッド側室45r及びポンプ57(液圧源の一例)が相互に接続されることによって、ランアラウンド回路53が構成されている。
【0035】
ヘッド側室45hの横断面(軸に直交する断面)の面積は、ロッド49の横断面の面積で、ロッド側室45rの横断面の面積よりも大きい。従って、ピストン47が後退するとき、ヘッド側室45hから排出される作動液の量は、ロッド側室45rに補給される作動液の量よりも多い。その差分は、例えば、上述したように、ヘッド側室45hからアキュムレータ65へ流れる。
【0036】
チェック弁51及び/又はランアラウンド回路53が設けられることによって、吸収装置2は、瞬間的な圧力変動であるサージ圧に対して高応答に反応することができる。具体的には、以下のとおりである。
【0037】
特に図示しないが、比較例としては、チェック弁51及びランアラウンド回路53が設けられていないとともに、ロッド側室45rがタンク59(
図5)に接続されている態様が挙げられる。この態様では、ピストン47が後退するとき、容積が拡大するロッド側室45rは、負圧によってタンク59の作動液を吸引する。この場合、ピストン47の後退に関してロッド側室45rにおいて生じる抵抗が大きくなる。
【0038】
一方、チェック弁51及び/又はランアラウンド回路53が設けられている場合においては、ピストン47の後退に伴って上昇したヘッド側室45hの圧力によってロッド側室45rに作動液が補給される。その結果、上記の比較例に比較してピストン47の後退が容易である。その結果、瞬間的な圧力変動であるサージ圧を吸収装置2へ逃がすことが容易化される。
【0039】
なお、チェック弁51を含む流路61は、ランアラウンド回路の一種と捉えることができる。ランアラウンド回路53は、流路61とは別個にロッド側室45rとヘッド側室45hとを通じさせる回路であるということができる。図示の例では、チェック弁51(流路61)及びランアラウンド回路53の双方が設けられている。ただし、一方のみ設けられていても構わない。例えば、ランアラウンド回路53は設けられなくてもよい。
【0040】
以上が実施形態の概要である。以下では、概略、下記の順で実施形態について説明する。
1.ダイカストマシン(
図4)
1.1.ダイカストマシン全般
1.2.マシン本体
1.3.制御装置
1.4.ダイカストマシンのその他の構成
2.進退部材(
図1(b))
3.吸収装置のシリンダ及びチェック弁(
図3)
3.1.シリンダ及びチェック弁の動作
3.2.シリンダの構成
3.3.チェック弁の構成
4.吸収装置の液圧装置(
図5~
図8)
4.1.シリンダからアキュムレータまでの構成
4.2.ポンプ及びタンクからシリンダまでの構成
4.3.液圧装置のその他の構成
5.射出装置の動作(
図9)
6.吸収装置の動作
6.1.サージ圧の吸収前の状態(
図5)
6.2.サージ圧の吸収に係る動作(
図5)
6.3.局部加圧に係る動作(
図6)
6.4.スプレイに係る動作(
図7)
6.5.サージ圧の吸収の準備に係る動作(
図8)
7.実施形態のまとめ
【0041】
(1.ダイカストマシン)
(1.1.ダイカストマシン全般)
図4は、実施形態に係る型付ダイカストマシンDC(成形機の一例)の要部の構成を示す側面図(一部に断面図を含む)である。
図4を参照して行う説明において、便宜上、
図4の左側を前方といい、
図4の右側を後方ということがある。
【0042】
型付ダイカストマシンDCは、型(金型101)と、進退部材41と、金型101を保持しているダイカストマシン1(これも成形機の一例)とを有している。ダイカストマシン1は、機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の制御を行う制御装置5とを有している。型付ダイカストマシンDC又はダイカストマシン1(若しくはマシン本体3)は、既述の吸収装置2(
図1(a))を有している。吸収装置2以外の構成要素の構成及び動作は、公知のものであってもよいし、新規なものであってもよく、換言すれば、種々の態様とされてよい。なお、公知の構成及び動作とされて構わない構成及び動作については、適宜に説明を省略する。
【0043】
ダイカストマシン1は、既に触れたように、空洞107に溶融状態の成形材料を射出(充填)することによって、凝固した成形材料からなる製品(成形品、ダイカスト品)を製造する。成形材料は、例えば、アルミニウム等の金属である。なお、溶融状態の成形材料に代えて、固液共存状態(半凝固状態又は半溶融状態)の成形材料が空洞107に射出されてもよい。
【0044】
金型101は、例えば、固定型103と、固定型103と対向する移動型105とを有している。空洞107の主たる部分は、固定型103と移動型105との間に構成される。固定型103は、移動しない型である。移動型105は、固定型103との対向方向(型開閉方向)に移動する型である。型開閉方向は、例えば、水平方向である。
図4等では、便宜上、固定型103又は移動型105の断面が1種類のハッチングで示されている。ただし、これらの型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定型103及び/又は移動型105は、ダイベースを含んでいてよい。
【0045】
(1.2.マシン本体)
マシン本体3は、例えば、金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置7と、空洞107に溶湯を射出する射出装置9と、溶湯が凝固して構成された製品を固定型103又は移動型105から押し出す不図示の押出装置と、を有している。
【0046】
型締装置7は、例えば、ベース11と、ベース11上に固定されている固定ダイプレート13と、ベース11上において型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート15と、これらのダイプレートに挿通されている複数(例えば4本)のタイバー17と、を有している。固定ダイプレート13と移動ダイプレート15とは型開閉方向において互いに対向している。固定ダイプレート13は、移動ダイプレート15に対向する面に固定型103を保持する。移動ダイプレート15は、固定ダイプレート13に対向する面に移動型105を保持する。移動ダイプレート15の型開閉方向における移動によって、金型101の開閉がなされる。また、型閉じがなされた状態でタイバー17が伸長されることによって、その伸長量に応じた型締力が金型101に付与される。
【0047】
射出装置9は、固定ダイプレート13の背後(移動ダイプレート15とは反対側)に位置している。射出装置9は、既に触れたように、空洞107内に通じるスリーブ19と、スリーブ19内の溶湯を空洞107内へ押し出すプランジャ21と、プランジャ21を駆動する駆動部23とを有している。なお、スリーブ19及びプランジャ21は、消耗品として捉えることができるから、駆動部23のみを射出装置として捉えてもよい。
【0048】
駆動部23の駆動方式は、例えば、液圧式(例えば油圧式)、電動式又はハイブリッド式(液圧式と電動式との組み合わせ)とされてよい。
図1(a)では、液圧式の駆動部23が例示されている。すなわち、駆動部23は、プランジャ21に連結される液圧式のシリンダ(射出シリンダ)と、射出シリンダへの作動液(例えば作動油)の供給等を行う液圧装置(不図示)とを有している。
【0049】
(1.3.制御装置)
制御装置5は、例えば、特に図示しないが、コンピュータを含んで構成されてよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び外部記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive))を含んで構成されてよい。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、種々の演算(制御を含む)を行う種々の機能部が構築される。また、制御装置5は、一定の動作を実行する論理回路を含んでいてもよいし、電源回路を含んでいてもよいし、ドライバを含んで概念されてもよい。制御装置5は、ハードウェア的に1カ所に纏められていてもよいし、複数個所に分散されていてもよい。
【0050】
なお、制御装置5は、ダイカストマシン1が含む各装置に着目したときは、その装置の制御装置として捉えられてよい。例えば、制御装置5は、吸収装置2の制御装置として捉えられてよい。
【0051】
本実施形態の説明において、ダイカストマシン1(吸収装置2)の動作は、基本的に制御装置5の制御によって実現されてよい。従って、例えば、
図1(a)~
図2(b)を参照して説明した動作、並びに後述する
図5~
図8を参照して説明する動作は、特に断りが無い限り、制御装置5の制御によって実現されてよい。実施形態の説明では、便宜上、種々の動作について、制御装置5が制御する点を省略して説明することがある。なお、制御装置5の制御によって実現される動作の一部又は全部は、オペレータがダイカストマシン1の入力装置(不図示)に対して操作を行うことによって実現されたり、人力で実現されたりしても構わない。
【0052】
(1.4.ダイカストマシンのその他の構成)
型付ダイカストマシンDC(又はダイカストマシン1若しくは吸収装置2)は、種々のセンサを有してよい。そして、制御装置5は、種々のセンサの検出値に基づいて、各部を制御してよい。
【0053】
上記のようなセンサの例を挙げる。例えば、特に図示しないが、プランジャ21の位置を検出する位置センサ、及び/又は駆動部23の駆動力を検出するセンサが設けられてよい。位置の微分によって速度が得られるから、位置センサは速度センサと捉えられてもよい。駆動部23の駆動力を検出するセンサとしては、例えば、駆動部23が射出シリンダを有する態様においては、作動液の圧力を検出する圧力センサが用いられてよい。
【0054】
プランジャ21の位置を検出するセンサは、例えば、射出速度(換言すればプランジャ21の速度)の制御に利用される。駆動部23の駆動力を検出するセンサは、射出圧力(換言すればプランジャ21が成形材料に付与する圧力)の制御に利用される。ただし、後述するように、本実施形態においては、局部加圧に利用される吸収装置2によって成形材料の圧力が所望の圧力にされてもよく、射出圧力の制御は必須ではない。
【0055】
(2.進退部材)
型付ダイカストマシンDC(又はダイカストマシン1若しくは吸収装置2)は、1以上の任意の数で進退部材41(
図1(a)~
図2(b))を有してよい。複数の進退部材41が設けられている態様においては、例えば、金型101の種々の位置でサージ圧を吸収し、バリが発生する蓋然性を低減できる。また、吸収装置2が局部加圧に利用される場合においては、金型101内の溶湯に均等に圧力を付与することが容易化される。ただし、以下の説明では、便宜上、特に断り無く、1つの進退部材41に着目した説明を行うことがある。
【0056】
図1(b)に示すように、進退部材41の形状は、概略、進退方向を長手方向とするピン状であってもよいし(図示の例)、ピン状でなくてもよい。後者の例としては、進退部材41の進退方向における長さよりも径が大きいブロック状の形状を挙げることができる。また、進退部材41の横断面(進退方向に直交する断面)の形状は、円形であってもよいし、円形以外の形状であってもよい。進退部材41の寸法も任意である。
【0057】
進退部材41は、固定型103に配置されてもよいし(図示の例)、移動型105に配置されてもよい。本実施形態の説明では、便宜上、進退部材41が固定型103に配置される態様を前提として説明を行うことがある。
【0058】
進退部材41は、例えば、その一部又は全部が型(固定型103又は移動型105)に対して摺動(別の観点では当接)してよい。進退部材41は、後端側の部分(シリンダ43に連結される部分)が型の外部に位置していてもよいし、その全体が型の内部に位置していてもよい。後者の例としては、進退部材41の後端側部分が不図示のダイベースによって構成された空間に位置している態様を挙げることができる。
【0059】
進退部材41の進退方向は、適宜な方向とされてよい。例えば、進退方向は、型開閉方向(
図1(b)の左右方向)であってもよいし、型開閉方向に交差(直交又は傾斜)する方向であってもよい。ただし、進退方向が型開閉方向であれば、例えば、進退部材41が配置されている型から成形品を引き剥がす動作に伴って進退部材41を成形品から離すことができる。
【0060】
進退部材41の空洞107に対する配置位置は適宜に設定されてよい。例えば、空洞107は、
図1(a)又は
図1(b)に示すように、製品形状に対応する形状を有している製品部107aと、スリーブ19から製品部107aへ溶湯を導くランナー107eと、余剰な溶湯が流れ込むオーバーフロー107bとを有している。進退部材41は、これらのいずれの空間の内面に位置していてもよい。
【0061】
図1(a)の例では、進退部材41は、オーバーフロー107bの内面から空洞107内に露出している。また、
図1(b)の例では、固定型103は、移動型105側の面に、進退部材41の先端側部分が出し入れされる凹部107cを有している。もちろん、固定型103は、そのような凹部107cを有していなくてもよい。
【0062】
なお、以下の説明では、特に断り無く、進退部材41がオーバーフロー107bに位置している態様を例に取ることがある。この態様では、進退部材41が空洞107の他の部位に位置している態様に比較して、成形材料が進退部材41に到達する時期と、サージ圧が生じる時期とが近い。そして、説明の便宜上、両者の時期を区別しないことがある。
【0063】
進退部材41の前進限及び後退限は、例えば、進退部材41が前進又は後退するときに進退部材41が当接する部材又は部位(ストッパ)が金型101等に設けられることによって規定されてもよいし、シリンダ43の駆動限によって規定されてもよい。なお、実施形態の説明では、進退部材41及びシリンダ43のいずれによって進退部材41の駆動限が規定されているのか、特に区別しないことがある。特に断りがない限り、また、矛盾等が生じない限り、進退部材41の駆動限、前進限及び後退限の語と、ピストン47の駆動限、前進限及び後退限の語とは、相互に置換されてよい。また、前進限及び後退限を規定する部材の図示は省略する。
【0064】
(3.吸収装置のシリンダ及びチェック弁)
(3.1.シリンダ及びチェック弁の動作)
溶湯109の圧力によって進退部材41が後退するときの動作は、
図3を参照して既に述べたとおりである。その他、例えば、シリンダ43及びチェック弁51は、シリンダ部材45のポート45a及び45b(
図3)を介して作動液を供給することなどによって、以下の動作が可能である。
【0065】
ポート45a及び45bを介してヘッド側室45hとロッド側室45rとの双方に同等の液圧を付与すると、ピストン47のヘッド側室45hにおける受圧面積はピストン47のロッド側室45rにおける受圧面積よりも大きいから、ピストン47は前進する。このとき、チェック弁51は、後述するスプリング(不図示)の力によって閉じられる。及び/又は、ピストン47の前進に伴ってロッド側室45rの圧力がヘッド側室45hの圧力よりも高くなり、これにより、チェック弁51は閉じられる。当該動作は、例えば、後述する
図6の動作に利用されてよい。
【0066】
ポート45bを介してロッド側室45rに作動液を供給し、ヘッド側室45hからポート45aを介してタンク59(
図5)への作動液の排出を許容すると、ロッド側室45rの圧力がヘッド側室45hの圧力よりも高くなるから、チェック弁51は閉じられる。また、ピストン47は、ロッド側室45rの圧力によって後退する。なお、ヘッド側室45hからの作動液の排出先は、タンク59以外とすることも可能である。当該動作は、例えば、後述する
図7の動作に利用されてよい。
【0067】
ポート45aを介してヘッド側室45hに作動液を供給し、ロッド側室45rからポート45bを介してタンク59への作動液の排出を許容すると、ヘッド側室45hの圧力によってピストン47は前進する。ヘッド側室45hからチェック弁51を介してロッド側室45rへ作動液が流れたとしても、ピストン47のヘッド側室45hにおける受圧面積は、ピストン47のロッド側室45rにおける受圧面積よりも大きいから、やはりピストン47は前進する。また、ピストン47の前進に伴って、ロッド側室45rの圧力がヘッド側室45hの圧力よりも大きくなると、チェック弁51は閉じられる。この場合も、ピストン47は前進を維持する。ピストン47が前進限に到達した状態では、ヘッド側室45hに供給された作動液は、チェック弁51及びロッド側室45rを介してタンク59へ排出される。当該動作は、例えば、後述する
図8の動作に利用されてよい。
【0068】
(3.2.シリンダの構成)
型付ダイカストマシンDC(又はダイカストマシン1若しくは吸収装置2)は、1以上の任意の数でシリンダ43を有していてよい。ただし、実施形態の説明では、特に断り無く、1つのシリンダ43に着目した説明を行うことがある。
【0069】
1つのシリンダ43が駆動する進退部材41の数は、1つであってもよいし(図示の例)、2以上であってもよい。後者の場合、例えば、公知の押出装置から類推できるように、進退部材41の進退方向に面する板状部材をシリンダ43に連結し、この板状部材に複数の進退部材41を互いに並列に固定してよい。なお、本実施形態の説明では、便宜上、図示の態様(1つのシリンダ43が1つの進退部材41を駆動する態様)を例に取る。
【0070】
シリンダ43の概略構成については既に述べたとおりである。シリンダ部材45は、例えば、概略、筒状の部材である。シリンダ部材45の内部の横断面の形状は、例えば、円形である。シリンダ部材45の外形(外側の形状)は、直方体状等の適宜な形状とされてよい。ピストン47は、例えば、概略、円柱状の部材であり、シリンダ部材45の内部を軸方向において摺動可能である。ロッド49は、例えば、概略、円柱状の部材である。ロッド49の径は、ピストン47の径よりも小さい。
【0071】
なお、実施形態の説明では、便宜上、特に断り無く、ピストン47及びロッド49の横断面の形状が円形であることを前提とした説明をすることがある。従って、例えば、円形における径と面積との関係に基づいて、横断面の径の説明と横断面の面積の説明とは相互に援用されてよい。
【0072】
ピストン47及びロッド49等の寸法は任意である。本実施形態では、後述する動作からも理解されるように、液圧源(例えばポンプ又はアキュムレータ)からロッド側室45rへ作動液を供給することによってピストン47を後退させるとき、大きな駆動力は必要とされない。あるいは、実施形態の説明とは異なり、液圧源からロッド側室45rへの作動液の供給によって駆動力を生じる動作は、行われなくてもよい。従って、ピストン47の径に対するロッド49の径の比(<1)は、通常の液圧式シリンダに比較して大きくされてよい。別の観点では、ピストン47及びシリンダ部材45の径を小さくして、小型化が図られてよい。
【0073】
例えば、ピストン47のロッド側室45rにおける受圧面積をピストン47のヘッド側室45hにおける受圧面積で割った値は、一般には、4/5程度である。これに対して、シリンダ43において、上記の値は、例えば、3/5以下とされてもよく、また、例えば、1/2程度(例えば、4/10以上6/10以下、又は9/20以上11/20以下)とされてもよい。なお、上記の値が1/2の場合においては、ロッド側室45r及びヘッド側室45hの双方に所定の圧力(同じ圧力)を付与するときの駆動力と、ロッド側室45rのみに上記の所定の圧力を付与する(ヘッド側室45hはタンク圧とされる)ときの駆動力とは、概ね同等になる。
【0074】
シリンダ43は、ピストン47とシリンダ部材45との間等の適宜な位置にパッキン(符号省略)を有していてよい。なお、便宜上、ピストン47とシリンダ部材45との間にパッキンが介在していても、ピストン47がシリンダ部材45に対して摺動する等と表現する。他の構成要素(例えばアキュムレータ65)も適宜な位置にパッキンを有してよい。ただし、便宜上、図示又は符号は省略されることがあり、また、特に言及しない。パッキンが介在しても、摺動等と表現することも、シリンダ43と同様である。
【0075】
ピストン47は、シリンダ部材45の内部の前端及び後端(シリンダ部材45内に設けられた不図示のストッパを含む概念であるものとする。)に対する当接によって、物理的な前進限及び後退限(駆動限)が規定される。既述のように、この前進限及び/又は後退限は、進退部材41の前進限及び/又は後退限を規定してもよいし、規定しなくてもよい。
【0076】
ピストン47及びロッド49(これら全体を1つの部材として捉えてもよい。)は、チェック弁51を含む流路61を有している。流路61の形状は、ヘッド側室45hとロッド側室45rとを通じさせることが可能である限り任意である。
図3の例では、流路61は、ピストン47を軸方向に軸心にて貫通している第1部分と、当該第1部分からロッド49を径方向に延びている第2部分とを有している。第2部分の数は任意であり、例えば、1つの第2部分が設けられていてもよいし、放射状に複数の第2部分が設けられていてもよい。後述する
図5では、2以上の第2部分が設けられ、互いに反対側に延びる2つの第2部分に沿う断面が示されている。
【0077】
シリンダ43は、例えば、
図1(a)に示すように、進退部材41の空洞107とは反対側に進退部材41に同軸的に配置され、また、ロッド49側を進退部材41に向けている。シリンダ部材45は、固定型103(進退部材41が配置されている型)に対して不動とされる。ロッド49の先端は進退部材41の後端と固定される。
【0078】
進退部材41とロッド49との固定は、適宜な方法によってなされてよい。例えば、進退部材41とロッド49とはカップリングによって固定されてもよいし(
図1(a))、ロッド49の先端及び進退部材41の後端の一方に設けられた雌めじ部に他方に設けられた雄ねじ部が螺合されてもよい。また、理論上は、進退部材41とロッド49とを一体的に形成して両者を固定することも可能である。固定型103(進退部材41が配置される型)とシリンダ部材45との固定も適宜な方法によってなされてよい。例えば、シリンダ部材45は、固定型103及び/又は固定ダイプレート13に対してボルトなどによって固定されてよい。また、シリンダ部材45は、その少なくとも一部が固定型103と一体的に形成されて固定型103に固定されていてもよい。
【0079】
(3.3.チェック弁の構成)
既述のとおり、チェック弁51の位置は任意であり、ピストン47に限定されない。例えば、チェック弁51は、シリンダ部材45に設けられたり、シリンダ部材45の外側面に固定されたブロックに設けられたり、シリンダ部材45とは離れて設けられたりしてもよい。チェック弁51を含む流路61と、当該流路61とは別のランアラウンド回路53とが設けられる場合においては、流路61の長さ(例えば中心線に沿う長さ)は、例えば、ランアラウンド回路53の長さに比較して短くされてよい。なお、実施形態の説明では、特に断りなく、チェック弁51がピストン47に設けられていることを前提とした説明を行うことがある。
【0080】
チェック弁51の構成は、ピストン47に設けられている点を除いて、種々の構成とされてよく、公知の構成とされて構わない。例えば、特に図示しないが、チェック弁51は、ヘッド側室45hの側からロッド側室45rの側へ作動液が流れるバルブ流路を含むバルブ本体と、当該バルブ本体に対して移動可能な弁体とを有している。弁体は、例えば、バルブ流路において、バルブ本体が有する弁座に対して、ロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ当接することによって、バルブ流路を塞ぐことが可能である。
【0081】
チェック弁51は、例えば、弁体を弁座に押し付けるスプリングを有している。従って、ヘッド側室45hの側からの作動液が弁体を押す力が、スプリングが弁体を押す力を超える差で、ロッド側室45rの側からの作動液が弁体を押す力を上回ると、弁体が弁座から離れる。これにより、ヘッド側室45hからロッド側室45rへの流れが許容される。逆にいえば、そうでない場合は、ロッド側室45rからヘッド側室45hへの流れが禁止される。なお、スプリングは、無くすことも可能である。
【0082】
バルブ本体は、例えば、適宜な形状を有する複数の部材が適宜に組み合わされて構成されてよい。ピストン47の大部分を占める部材が、バルブ本体の少なくとも一部を構成していてもよい。バルブ流路は、例えば、弁座及び弁体に対してヘッド側室45hの側となる部分と、その反対側となる部分とが、同一直線状に位置していてもよいし、互いに交差していてもよい。弁体は、例えば、円錐状部分と円筒部分とを組み合わせたポペットであってもよいし、
図3の記号に示されているように球状であってもよい。弁座の形状も任意である。
【0083】
チェック弁51は、パイロット式のものではない。換言すれば、チェック弁51は、常に、ヘッド側室45hからロッド側室45rへの流れの許容及びその反対方向の流れの禁止(以下、「1方向流れの許容」ということがある。)を行う。ただし、チェック弁51は、パイロット式とされてもよい。
【0084】
チェック弁51は、既述のとおり、ピストン47がロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ移動する過程において、1方向流れの許容を行う。別の観点では、流路61は、ピストン47が前進限(ロッド側室45rの側の駆動限)及び/又は後退限(ヘッド側室45hの側の駆動限)に位置するときのみチェック弁51による1方向流れの許容が有効になるような機構(例えばチェック弁51と他のチェック弁とを組み合わせた制御弁。特許文献6参照。)を有していない。換言すれば、チェック弁51は、(常に又は所定の時期において)ピストン47が前進限から後退限までの範囲のいずれの位置にあるときも、1方向流れの許容を行う。ただし、チェック弁51は、前進限を含む所定範囲においてのみ、1方向の流れの許容を行ってもよい。
【0085】
厳密にいえば、ピストン47が駆動限に位置するときのみチェック弁51による1方向流れの許容が有効になるような機構が設けられている場合においても、ピストン47が駆動限に位置するときだけでなく、ピストン47が駆動限から僅かな長さの範囲内に位置するときも、1方向の流れの許容が有効となる。上記の僅かな長さは、例えば、1方向の流れの許容を有効及び無効とするための、チェック弁51とは別のチェック弁における弁体の移動可能距離以下である。ピストン47が移動する過程において1方向の流れの許容が行われるというとき、当該動作に係る態様は、そのような僅かな長さの範囲内でのみ1方向の流れの許容が行われる態様を含まないものとする。上記の僅かな長さとして、チェック弁51における弁体の移動可能距離が参照されてもよい。
【0086】
また、例えば、ヘッド側室45hからチェック弁51への流れを制限する構成要素は設けられていない。例えば、ヘッド側室45hとチェック弁51との間には、オリフィス及びリリーフ弁(特許文献5の
図3を参照。)は設けられていない。チェック弁51とロッド側室45rとの間についても同様である。別の観点では、ヘッド側室45hとロッド側室45rとをつなぐ流路61は、バルブとして、チェック弁51のみを有している。また、例えば、流路61において、チェック弁51よりもヘッド側室45hの側及び/又はロッド側室45rの側の横断面の最小面積(複数の流路に分岐している場合は最小面積の合計)は、チェック弁51内の横断面の最小面積(例えば弁座と弁体との隙間の面積、又は流路を有するポペットのポートの開口面積)よりも大きい。このような態様は、オリフィスが設けられていない態様の一例である。
【0087】
ただし、例えば、本開示で意図されている動作が阻害されない範囲で、流路61の断面積が小さくなっている部位が存在したり、チェック弁51以外のバルブが存在したりしても構わない。例えば、溶湯の圧力が、予想されるサージ圧よりも一定程度で低い圧力であり、ひいては、ヘッド側室45hの圧力が所定の閾値よりも低い場合に、ヘッド側室45hからチェック弁51への流れを禁止し、そうでない場合はヘッド側室45hからチェック弁51への流れを許容するリリーフ弁が設けられてもよい。
【0088】
(4.吸収装置の液圧装置)
図5~
図8は、吸収装置2の構成を示す図である。
図5~
図8は、後述する吸収装置2の動作の説明で述べるように、互いに異なる状態を示している。これらの図において、相対的に高い圧力が付与されている状態の流路は、他の流路よりも太い線で示されている。また、進退部材41とロッド49とは一体的な1つの部材として示されている。これは、便宜上、1つの部材として示されているだけと捉えられてもよいし、実際に1つの部材であると捉えられてもよい。
【0089】
吸収装置2が含む液圧システムのうち、シリンダ43(本実施形態ではチェック弁51を含む)を除いた部分を液圧装置63と称するものとする。シリンダ43と液圧装置63とは、別個に実施(例えば製造及び/又は流通)されても構わない。この場合、実施形態の説明とは異なり、シリンダ43のみがサージ圧吸収装置として捉えられたり、液圧装置63のみがサージ圧吸収装置として捉えられたりしてもよい。また、金型101、進退部材41及びシリンダ43の組み合わせが、液圧装置63とは別個に、サージ圧吸収金型として流通されてもよい。本実施形態とは異なり、チェック弁51がシリンダ43に内蔵されない態様において、チェック弁51は、シリンダ43とは別個に製造及び/又は流通されてよく、この場合に、チェック弁51は、液圧装置63の構成要素として捉えられてもよい。
【0090】
液圧装置63は、概して言えば、以下の3つの部分を有している。進退部材41の後退に伴うヘッド側室45hからアキュムレータ65への作動液の流れに係る構成。液圧源(図示の例ではポンプ57)からシリンダ43への作動液の供給及びシリンダ43からタンク59への作動液の排出に係る構成。その他の構成。以下、これらの構成について順に説明する。
【0091】
(4.1.シリンダからアキュムレータまでの構成)
アキュムレータ65は、ACC流路67Aを介してヘッド側室45hと接続されている。ACC流路67Aは、当該ACC流路67Aの流れを制御するACCバルブ69を有している。ACCバルブ69は、例えば、ポンプ57からヘッド側室45hへ作動液を供給してピストン47を前進させるときに、作動液がアキュムレータ65に流れてしまう蓋然性を低減することに寄与する。図示の例では、ACCバルブ69は、パイロット式のバルブとされている。パイロット圧の導入は、パイロット用バルブ71によって制御される。各構成要素の具体的な構成は、例えば、以下のとおりである。
【0092】
アキュムレータ65の形式は、種々のものとされてよく、例えば、重量式、ばね式、気体圧式、ピストン式又はブラダ式とされてよい。重量式では、重りの重力によって作動液に圧力を付与する。ばね式では、ばねの復元力によって作動液に圧力を付与する。気体圧式では、圧縮された気体が作動液に直接に触れて作動液に圧力を付与する。ピストン式では、圧縮された気体がピストンを介して作動液に圧力を付与する。ブラダ式では、圧縮された気体が可撓性のブラダ(ダイヤフラム)を介して作動液に圧力を付与する。気体圧式、ピストン式及びブラダ式において、気体は、例えば、空気若しくは不活性ガス(例えば窒素)である。
【0093】
図5では、アキュムレータ65として、ピストン形アキュムレータが例示されている。特に符号を付さないが、アキュムレータ65は、シリンダ部材と、シリンダ部材に収容されているピストンとを有している。シリンダ部材の内部は、液体を収容する液室と、気体を収容する気体室とに区画されている。アキュムレータ65は、気体室における圧縮された気体(例えば窒素又は空気)の圧力で液室の作動液に圧力を付与している。液室は、ACC流路67Aに接続されている。
【0094】
ACCバルブ69の構成は、例えば、ヘッド側室45hの側からアキュムレータ65の側への流れを禁止することが可能である限り、種々の構成とされてよい。図示の例では、ACCバルブ69は、流路67Bから導入される圧力(パイロット圧力)によって制御されるロジック弁によって構成されている。
【0095】
具体的には、図示の例のACCバルブ69においては、ばね(符号省略)が弁体(符号省略)に閉位置(ACCバルブ69を閉じる位置)へ向けて復元力を付与している。ACC流路67A(別の観点ではヘッド側室45h)の圧力及びアキュムレータ65の圧力のいずれも、弁体を開位置へ向ける力として作用する。従って、パイロット圧力が導入されていないときは、ACC流路67Aの圧力及びアキュムレータ65の圧力が弁体に開位置へ向けて付与する力の合計(一方の圧力による力が0のときは他方の圧力による力)が上記復元力を超えることによってACCバルブ69が開かれる。また、パイロット圧力が導入されているときは、当該パイロット圧力が弁体に閉位置へ向けて付与する力及び上記復元力の合計が、弁体に開位置へ向けて付与されている力を超えることによってACCバルブ69が閉じられる。ACCバルブ69の図示の例以外の構成としては、例えば、チェック弁、切換弁、流量制御弁、圧力制御弁又はソレノイドバルブが挙げられる。
【0096】
パイロット用バルブ71は、ACCバルブ69へのパイロット圧力の導入及びその停止を行う。その構成は、種々可能であり、
図5では、4ポート2位置の切換弁が例示されている。ただし、4ポートのうち1つは塞がれて未使用状態とされている。パイロット用バルブ71は、図の右側の矩形の状態(位置)では、ACCバルブ69のパイロットポートにつながる流路67Bとタンク59とを接続する。これにより、ACCバルブ69へのパイロット圧力の導入が停止される。また、パイロット用バルブ71は、図の左側の矩形の状態(位置)では、流路67Bとポンプ57とを接続する。これにより、ACCバルブ69へパイロット圧力が導入される。パイロット用バルブ71の駆動方式は任意であり、
図4では、パイロット用バルブ71を図の右側の矩形の位置に移動させるばねと、パイロット用バルブ71を図の左側の矩形の位置へ移動させるソレノイドとが組み合わされた方式が例示されている。
【0097】
ACC流路67Aは、複数のシリンダ43が設けられていることに対応して、ACCバルブ69よりもシリンダ43の側において分岐している。なお、複数のシリンダ43が設けられている場合において、図示の例とは異なり、各シリンダ43に対応して1つのアキュムレータ65が設けられても構わない。また、図示の例のように、1つのアキュムレータ65に複数のシリンダ43が接続されている構成が、複数設けられていてもよい。
【0098】
ACC流路67Aは、例えば、ヘッド側室45hからアキュムレータ65までの間において、制御装置5によって制御されるバルブとして、ACCバルブ69のみを有しており、他のバルブを有していない。なお、ACC流路67Aは、制御装置5によって制御されない(例えば手動のバルブ)を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、例えば、ACC流路67Aにおいて、ACCバルブ69以外の部分の横断面の最小面積(分岐している場合は最小面積の合計)は、ACCバルブ69内の横断面の最小面積よりも大きい。このような構成により、ACC流路67Aは、圧力損失が小さくされている。
【0099】
液圧装置63が有している種々の流路(ACC流路67A以外の流路も含む)は、適宜な構成とされてよい。例えば、各流路は、剛体からなる管、可撓性のホース、流路が形成されたブロック、及び/又はこれらの組み合わせによって構成されてよい。
【0100】
(4.2.ポンプ及びタンクからシリンダまでの構成)
液圧装置63は、既に言及したポンプ57、タンク59及び切換弁55を有している。また、液圧装置63は、ポンプ57への逆流を防止する逆止弁73を有している。各要素の具体的な構成は、例えば、以下のとおりである。
【0101】
ポンプ57及び/又はタンク59は、ダイカストマシン1が有する、吸収装置2以外の液圧装置(例えば射出装置9の液圧装置)に共用されてもよいし、共用されなくてもよい。なお、ポンプ57及びタンク59は、複数のダイカストマシン1等に共用されているものであってもよい。また、ポンプ57及びタンク59は、ダイカストマシン1(液圧装置63)の構成要素と捉えることが困難な態様のものであってもよい。
【0102】
ポンプ57及びタンク59の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされて構わない。ポンプ57は、必要に応じて駆動されてもよいし、常時駆動されていてもよい。ポンプ57は、例えば、供給する圧力を任意に調整可能なものである。その調整は、例えば、ポンプ57を駆動するモータ75の回転数の制御によって実現されてよい。モータ75は、例えば、ACサーボモータとされたり、インバータ制御がなされたりしてよい。タンク59は、例えば、大気開放型のものとされている。換言すれば、タンク圧は、概ね大気圧である。従って、タンク59に接続されている流路等の圧力は、理論上は、概ね大気圧である。
【0103】
切換弁55は、4ポート3位置の切換弁として構成されている。切換弁55は、図の左側の矩形の状態(位置)では、ポンプ57とヘッド側室45hとを接続するとともに、タンク59とロッド側室45rとを接続する。これにより、例えば、ピストン47を前進させることができる。また、切換弁55は、図の右側の矩形の状態(位置)では、ポンプ57とロッド側室45rとを接続するとともに、タンク59とヘッド側室45hとを接続する。これにより、例えば、ピストン47を後退させることができる。また、切換弁55は、図の中央の矩形の状態(位置)では、
図3を参照して既に述べたように、ロッド側室45r、ヘッド側室45h及びポンプ57を相互に接続する。
【0104】
切換弁55の駆動方式は任意であり、
図5では、切換弁55を図の中央の矩形の位置に移動させるばねと、切換弁55を図の右側及び左側の矩形の位置へ移動させるソレノイドとが組み合わされた方式が例示されている。図の中央の矩形の位置は、ソレノイドが駆動されていないときの中立位置である。
【0105】
ヘッド側室45hと切換弁55とを接続するための流路(符号省略)と、ヘッド側室45hとアキュムレータ65とを接続するためのACC流路67Aとは、ヘッド側室45h側の一部を互いに共有している。別の観点では、両流路は互いにつながっている。従って、例えば、切換弁55が図の左側の矩形の状態とされているとき、ポンプ57は、ACC流路67Aに圧力を付与することに寄与し、ひいては、ACCバルブ69を開いたり、アキュムレータ65を蓄圧したりすることに寄与し得る。
【0106】
逆止弁73は、ポンプ57からの流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。ポンプ57と切換弁55とを接続する流路(符号省略)と、ポンプ57とパイロット用バルブ71とを接続する流路(符号省略)とは、ポンプ57の側の一部において互いに共通化されている。逆止弁73は、その共通化された部分に位置している。
【0107】
(4.3.液圧装置のその他の構成)
液圧装置63は、ACC流路67Aとタンク59とを接続するドレイン流路(符号省略)と、当該流路に位置するドレイン弁79とを有している。ドレイン流路は、例えば、吸収装置2のメンテナンスにおいて、ACC流路67A及び当該ACC流路67Aに接続されている構成要素(例えばヘッド側室45h及び/又はアキュムレータ65)から作動液を排出することに寄与する。成形サイクル中において、ドレイン弁79は、ACC流路67Aとタンク59とを遮断した状態(図の左側の矩形の状態)のままとされる。
【0108】
液圧装置63は、ヘッド側室45hの圧力を検出する圧力センサ77を有している。この圧力センサ77は、例えば、サージ圧を吸収するときのヘッド側室45hの圧力を調整したり、局部加圧のときのヘッド側室45hの圧力を調整したりするときに参照される。すなわち、圧力センサ77は、圧力のフィードバック制御に利用される。圧力センサ77は、実質的にヘッド側室45hの圧力を検出できる限り、任意の位置の圧力を検出してよい。図示の例では、圧力センサ77は、ACC流路67AのうちACCバルブ69よりもヘッド側室45hの側の部分の圧力を検出する。圧力センサ77の構成も任意である。
【0109】
液圧装置63は、金型101の温度を検出する温度センサ81を有している。この温度センサ81は、例えば、サージ圧を吸収するときのヘッド側室45h(及び/又はアキュムレータ65)の目標圧力を設定することに寄与する。具体的には、金型101の温度が変化すると、溶湯109の流れも変化し、ひいては、サージ圧の大きさも変化する。一般には、金型101の温度が上昇すると、サージ圧は大きくなる。そこで、例えば、温度センサ81が検出する温度の上昇に応じて、上記の目標圧力(別の観点では液圧装置63によるサージ圧の吸収度合い)を大きくする。温度センサ81の構成及び位置は任意である。例えば、別の用途での金型101の温度を検出する温度センサは公知であり、温度センサ81の構成及び位置は、そのような温度センサと同様とされて構わない。
【0110】
検出温度(及び/又はその変化量)と目標圧力(及び/又はその変化量)との相対関係は、実験等に基づいて適宜に設定されてよい。制御装置5は、例えば、温度と目標圧力とを対応付けたマップを記憶しており、当該マップを参照して、温度センサ81の検出値に応じた目標圧力を設定する。マップは、液圧装置63の製造者及び液圧装置63のユーザによって作成されてもよいし、制御装置5又は制御装置5と通信を行うサーバが試運転及び/又は過去の成形サイクルにおいて検出された温度及びサージ圧に基づいて作成してもよい。
【0111】
特に図示しないが、吸収装置2は、進退部材41又はロッド49の位置を直接的に検出する位置センサを有していてもよい。また、吸収装置2は、ロッド側室45rから排出される作動液の流量を検出する流量センサを有していてもよい。このような位置センサ又は流量センサは、例えば、進退部材41の位置及び/又は移動の検出に寄与する。吸収装置2は、ロッド側室45rの圧力を検出する圧力センサを有していてもよい。この圧力センサは、例えば、ヘッド側室45hの圧力を検出する圧力センサ77と共に、進退部材41が溶湯に付与する圧力の算出に寄与する。
【0112】
(5.射出装置の動作)
図9は、射出に係る動作を説明するための図である。この図において、横軸は時間tを示しており、右側ほど後の時点となっている。左の縦軸は速度Vを示しており、上側ほど高速である。右の縦軸は圧力Pを示しており、上側ほど高圧である。
【0113】
線LnVは、射出速度(プランジャ21の速度)の経時変化を示している。線LnPは、射出圧力の経時変化を示している。ここでは、射出圧力は、プランジャ21が溶湯に付与する圧力であるものとする。なお、線LnV及びLnPによって示される速度又は圧力は、目標値を示していると捉えられてもよいし、実際の値を示していると捉えられてもよい。また、これらの線で示される波形は一例に過ぎない。
【0114】
ダイカストマシン1は、例えば、低速射出(時点t0~t1)、高速射出(時点t1~t2)、並びに増圧及び保圧(時点t2付近~)を順に行う。すなわち、ダイカストマシン1は、線LnVによって示されているように、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止する等の観点から比較的低速(速度VL)でプランジャ21を前進させる低速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LnVで示されているように、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速(速度VH)でプランジャ21を前進させる高速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LnPによって示されているように、ひけ巣をなくす等の観点から、プランジャ21によって溶湯に付与する圧力を上昇させる増圧を行う。その後、線LnPによって示されているように、ダイカストマシン1は、増圧によって得られた鋳造圧力Pc(終圧)を維持する保圧を行う。
【0115】
上記の動作について補足すると、射出圧力は、低速射出(時点t0~t1)では、比較的低圧となっている。なお、
図9では、便宜上、低速射出中の射出圧力については、極めて小さいものとして図示が省略されている。その後、高速射出が開始されると(時点t1)、射出圧力は上昇する。さらに、溶湯の充填が概ね完了すると(時点t2付近)、溶湯が行き場を失うことから、射出速度は急激に低下し、また、射出圧力は急激に上昇する。なお、射出速度を低下させる減速射出が行われてもよい。ただし、本実施形態では、吸収装置2によってサージ圧が吸収されるから、減速射出の必要性は低い。射出圧力は、溶湯が行き場を失うことによって上昇するだけであってもよい。すなわち、増圧のための特別な動作は行われなくてもよい。保圧においては、射出速度は概ねゼロである。
【0116】
増圧は、種々の態様で行われてよい。例えば、増圧は、速度制御がなされている射出に引き続いて駆動部23としての射出シリンダのヘッド側室23h(
図1(a))へ作動液が供給され、かつ圧力制御が行われるものであってよい。また、増圧は、射出においてヘッド側室23hへ作動液を供給していたアキュムレータとは異なるアキュムレータからヘッド側室23hへ作動液が供給されるものであってもよい。また、増圧は、
図1(a)に例示した射出シリンダとは異なる増圧式の射出シリンダにおいて、ヘッド側室23hの圧力を上昇させる増圧用のシリンダへ作動液を供給するものであってもよい。
図9では、増圧式の射出シリンダが用いられ、ヘッド側室23hへの液圧の付与によって得られる圧力P1(時点t3付近)よりも鋳造圧力Pcが高くなっている態様が例示されている。
【0117】
線Ln1は、バリが生じる最小圧力(バリ吹き限界曲線)を示している。この圧力は、概略、√tに比例している。また、線Ln0は、吸収装置2が設けられていない場合に生じ得る射出圧力の一部を示している。この図に示されているように、吸収装置2が設けられていない場合においては、充填完了時にサージ圧が生じ、ひいては、射出圧力がバリ吹き限界曲線を超え、バリが生じ得る。実施形態では、このようなサージ圧が低減されることから、例えば、充填完了時付近(時点t3付近)の圧力をバリ吹き限界曲線よりも低くしたり、その後の圧力をバリ吹き限界曲線に近づけたりすることが容易化される。
【0118】
(6.吸収装置の動作)
ダイカストマシン1は、例えば、成形サイクルを繰り返す。
図5~
図8は、各成形サイクルにおいて吸収装置2が実行する一連の動作を示している。吸収装置2の動作(状態)は、
図5、
図6、
図7及び
図8の順に遷移する。具体的には、以下のとおりである。
【0119】
(6.1.サージ圧の吸収前の状態)
図5は、溶湯が進退部材41に到達したときの状態を示している。
図5において、溶湯109が進退部材41に到達していることを除けば、
図5は、溶湯が進退部材41に到達する前(例えば直前)の状態を示していると捉えられてよい。
【0120】
溶湯109が進退部材41に到達する前において、制御装置5は、ACC流路67A(別の観点ではシリンダ43のヘッド側室45h)とアキュムレータ65との間の流れを許容するように液圧装置63(別の観点ではACCバルブ69)を制御している。具体的には、制御装置5は、パイロット用バルブ71を図の右側の矩形の状態とし、ACCバルブ69へのパイロット圧力の導入を停止している。また、制御装置5は、
図3に示したランアラウンド回路53を有効化している。具体的には、制御装置5は、切換弁55を図の中央の矩形の位置としている。
【0121】
ヘッド側室45hの圧力は、所定の目標圧力に調整されている。この調整は、例えば、制御装置5が圧力センサ77の検出値に基づくポンプ57(モータ75)のフィードバック制御を行うことによって実現されている。このときの目標圧力は、既述のとおり、温度センサ81の検出値に応じて設定されてよい。このようにいうとき、目標圧力は、例えば、成形サイクル毎に設定されてもよいし、所定回数の成形サイクル毎に設定されてもよい。金型101の温度は成形サイクル内で変化する。目標圧力の設定に用いられる温度は、成形サイクル内のいずれの時期の温度とされてもよいし、所定期間の平均値とされてもよい。もちろん、目標圧力は、金型101の温度によらずに一定であっても構わない。
【0122】
上記のような制御の結果、シリンダ43においては、ロッド側室45rとヘッド側室45hとに同等の圧力が付与されている。そして、ピストン47及び進退部材41は、前進限にて停止した状態となっている。アキュムレータ65の圧力は、ヘッド側室45hの圧力と概ね同等であってもよいし、ヘッド側室45hの圧力よりも高くてもよい。前者の場合において、アキュムレータ65のピストンは、液室の側の駆動限付近に位置していてもよいし、上記駆動限から気体室の側へ一定程度の距離で離れていてもよい。後者の場合においては、アキュムレータ65のピストンは、液室の側の駆動限に位置している。
【0123】
目標圧力の具体的な値は、所定の大きさのサージ圧が生じたときに溶湯109が進退部材41を押す力によって進退部材41が後退可能な大きさ以下である限り、任意である。例えば、目標圧力は、1MPa未満であってもよいし、1MPa以上であってもよい。一例として、目標圧力は、1MPa以上5MPa以下の範囲で0.1MPa単位で調整がなされてよい。サージ圧に係る上記の所定の大きさは、吸収装置2の製造者、オペレータ及び制御装置5のいずれによって想定されたものであってもよい。同様に、目標圧力は、吸収装置2の製造者、オペレータ及び制御装置5のいずれによって設定されてもよい。
【0124】
(6.2.サージ圧の吸収に係る動作)
射出装置9によって溶湯109が金型101の空洞107に射出されると、溶湯109が進退部材41に到達する。さらに、溶湯109が進退部材41を後方(
図5の右側)へ押す力が、シリンダ43が進退部材41を前方に押す力を上回ると、
図2(a)及び
図2(b)に示したように、進退部材41が後退する。このとき、ヘッド側室45hからチェック弁51を介したロッド側室45rへの流れ、ランアラウンド回路53における流れ、及びヘッド側室45hからアキュムレータ65への流れが生じることは既述のとおりである。また、ヘッド側室45hから排出された作動液のポンプ57側への逆流は、逆止弁73によって規制される。
【0125】
ヘッド側室45hの側からアキュムレータ65へ作動液が流入することによって、アキュムレータ65の圧力は上昇する。すなわち、シリンダ43が進退部材41を前方へ押す力は増加する。この増加した力と、溶湯が進退部材41を後方へ押す力とが釣り合うと、進退部材41は停止する。又は、進退部材41若しくはピストン47が後退限に到達することによって、進退部材41は停止する。なお、ここでの説明とは異なり、アキュムレータ65のピストンが上限(気体室の側の駆動限)に到達することによって進退部材41が停止してもよい。また、下記の局部加圧に係る動作の説明から理解されるように、進退部材41は、上記のように自然と停止する前に前進(局部加圧)を開始してもよい。
【0126】
(6.3.局部加圧に係る動作)
図6は、局部加圧が行われているときの状態を示している。制御装置5は、進退部材41が後退を開始した後の適宜な時期に進退部材41を前進させて局部加圧を行うように液圧装置63を制御する。具体的には、例えば、制御装置5は、ACC流路67Aからアキュムレータ65への流れを禁止するようにACCバルブ69を制御する。すなわち、制御装置5は、パイロット用バルブ71を図の左側の状態とする。また、制御装置5は、サージ圧を吸収した直後の圧力よりも高い圧力がシリンダ43に付与されるようにポンプ57(モータ75)を制御する。
【0127】
進退部材41を前進させるとき、圧力センサ77に基づくフィードバック制御が行われてよい。進退部材41が溶湯109に付与する圧力の目標値は、一定値であってもよいし、所定の圧力曲線(横軸を時間とし、縦軸を圧力としたグラフに描かれる曲線)に沿って上昇するように設定されていてもよい。また、ここでの説明とは異なり、進退部材41は、進退部材41の位置を検出する不図示のセンサに基づいて位置制御がなされてもよい。
【0128】
局部加圧開始後、進退部材41は、例えば、シリンダ43が進退部材41を前方へ押す力と、溶湯が進退部材41を後方へ押す力とが釣り合う位置で停止する。これにより、進退部材41は、シリンダ43に付与される圧力によって規定される圧力を溶湯に付与する。ただし、ここでの説明とは異なり、進退部材41は、上記の釣り合いが生じる前に前進限に到達してもよい。
【0129】
進退部材41が最終的に溶湯を付与する圧力は任意である。例えば、この圧力は、プランジャ21が最終的に溶湯に付与する圧力(
図9の圧力Pc)に対して、低くてもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。なお、溶湯の凝固によって、溶湯においてパスカルの原理は厳密には成立しなくなる。従って、例えば、局部加圧の圧力が圧力Pcよりも高くても、その差が大き過ぎない限り、プランジャ21は後退しない。
【0130】
また、ポンプ57がシリンダ43に付与する圧力の目標値も適宜に設定されてよい。一例として、当該圧力の目標値は、16MPa以下の範囲で、0.1MPaの単位で設定変更されてよい。
【0131】
制御装置5が局部加圧を開始するタイミングは、例えば、適宜な条件が満たされた時期、又は上記条件が満たされてから所定時間が経過した時期とされてよい。すなわち、局部加圧を開始するタイミングは、適宜な条件に基づいて決定されてよい。
【0132】
上記条件は、例えば、不図示の位置センサによって進退部材41の後退が検出されたこととされてよい。ここでいう後退の検出は、進退部材41の後退の有無の検出であってもよいし、進退部材41の後退量が所定量に到達したことの検出であってもよいし、進退部材41が所定位置まで後退したことであってもよい。なお、上記の後退量が比較的小さい場合、及び上記の所定位置が前進限に比較的近い場合は、進退部材41の後退の有無が検出されていると捉えられてよい。
【0133】
局部加圧を開始する契機となる条件は、進退部材41の後退の検出以外のものであってもよい。例えば、上記条件は、射出装置9による射出開始から所定の時間が経過したことであってもよい。また、例えば、進退部材41の後退の検出以外の方法(例えば通電センサ、温度センサ又は圧力センサ)によって溶湯が所定位置に到達したことが検出されたことであってもよい。
【0134】
(6.4.スプレイに係る動作)
制御装置5は、溶湯が凝固すると、進退部材41による局部加圧を終了する。制御装置5は、溶湯が凝固したか否かを適宜に判断してよい。例えば、適宜な時点(例えば射出開始時点又は局部加圧開始時点)から所定の時間が経過したか否かによって溶湯の凝固を判定してよい。
【0135】
局部加圧を終了するとき、制御装置5は、吸収装置2の状態を、単にサージ圧が吸収される前の状態(
図5の状態)に戻すのではなく、進退部材41を一旦後退させてもよい。この後退は、例えば、進退部材41及び/又はピストン47が後退限に到達するまで行われてよい。進退部材41の後退は、例えば、ヘッド側室45hの作動液の排出による冷却及び/又はエア抜きに寄与したり、金型101のうち進退部材41が摺動する部分に対するスプレイに寄与したりしてよい。スプレイでは、例えば、エアブロウ(洗浄)及び/又は離型剤の吹付けが行われてよい。
【0136】
図7は、上記のように進退部材41を後退させている状態を示している。
【0137】
制御装置5は、例えば、切換弁55を図の右側の矩形の状態とする。これにより、ポンプ57の液圧はロッド側室45rに付与され、ヘッド側室45hはタンク圧とされる。その結果、ピストン47が後退し、ひいては、進退部材41が後退する。進退部材41を後退させるときにポンプ57がロッド側室45rに付与する圧力は、適宜な大きさとされてよい。例えば、当該圧力は、既述の射出開始前に進退部材41を初期位置(例えば前進限)に待機させるときの圧力に対して、低くてもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。一例として、ポンプ57の圧力は、16MPa以下の範囲で0.1MPa単位で設定されてよい。
【0138】
進退部材41を後退させるとき、ACCバルブ69は、開かれていてもよいし、閉じられていてもよい。図示の例では、前者とされている。すなわち、パイロット用バルブ71は、図の右側の状態とされており、ACCバルブ69にはパイロット圧が導入されていない。従って、アキュムレータ65は、液室の作動液をタンク59に排出する。このとき、アキュムレータ65のピストンは、液室の側の駆動限に到達してもよいし、到達しなくてもよい(例えば、到達前にACCバルブ69が閉じられてもよい。)。また、別の観点では、アキュムレータ65の圧力は、例えば、サージ圧を吸収する前の圧力よりも低くされてもよいし、サージ圧を吸収する前の圧力と同等の圧力とされてもよい(例えば、サージ圧の吸収前の圧力が得られたときにACCバルブ69が閉じられてもよい。)。
【0139】
(6.5.サージ圧の吸収の準備に係る動作)
図8は、
図5の状態にするための準備をしている状態を示している。この状態では、制御装置5は、切換弁55を図の左側の矩形の状態とする。すなわち、ポンプ57とヘッド側室45hとを接続するとともに、ロッド側室45rとタンク59とを接続する。そして、ポンプ57からヘッド側室45hへ作動液を供給する。これにより、ピストン47は前進する。この際、ロッド側室45rの作動液はタンク59に排出される。その後、ピストン47は、前進限に到達する。
【0140】
切換弁55の図の左側の矩形の状態は、ピストン47が前進限に到達したときに終了してもよいし、前進限に到達した後も所定の終了条件が満たされるまで継続されてもよい。後者の場合、ヘッド側室45hへ供給された作動液は、チェック弁51及びロッド側室45rを介してタンク59へ排出される。これにより、例えば、ピストン47が前進限に到達したときに、ロッド側室45rに残っている作動液も排出することができる。また、例えば、作動液をヘッド側室45h及びロッド側室45rに流れさせることによってシリンダ43の冷却を行うことができる。上記の終了条件は、例えば、
図8の状態になってから、又はピストン47が前進限に到達してから、所定の時間が経過したことなどとされてよい。所定の時間の長さは任意であるが、一例として、2秒程度である。
【0141】
上記のように進退部材41を前進させるとき(及び/又は前進限に位置しているとき)、ACCバルブ69は、開かれていてもよいし、閉じられていてもよい。図示の例では、後者とされている。すなわち、パイロット用バルブ71は、図の左側の状態とされており、ACCバルブ69にはパイロット圧が導入されている。
【0142】
進退部材41を前進させるとき(及び/又は前進限に位置しているとき)にポンプ57がヘッド側室45hへ付与する圧力の大きさは任意である。例えば、当該圧力は、型内の成形材料が進退部材41に到達するのを待っているとき(
図5)にポンプ57がヘッド側室45hに付与する圧力に対して、低くてもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。その具体的な値も任意である。一例として、ポンプ57の圧力は、5MPa以上16MPa以下の範囲で0.1MPa単位で設定されてよい。
【0143】
進退部材41が前進限に到達した後、所定の条件が満たされると、制御装置5は、吸収装置2を
図5の状態にする。なお、
図5の状態になるタイミングは、溶湯が進退部材41に到達する前である限り、任意である。例えば、当該タイミングは、プランジャ21が前進を開始する前であってもよいし、プランジャ21が前進を開始した後であってもよい。
【0144】
(7.第1実施形態のまとめ)
以上のとおり、実施形態に係るサージ圧吸収装置2は、液圧式のシリンダ43と接続されるチェック弁51を有している。シリンダ43は、ロッド49と、ピストン47と、シリンダ部材45とを有している。ロッド49は、型(金型101)内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41に固定される。ピストン47は、ロッド49に固定されている。シリンダ部材45は、ピストン47を収容している。シリンダ部材45の内部は、ピストン47によって、ロッド49が位置しているロッド側室45rと、その反対側のヘッド側室45hとに区画されている。チェック弁51は、金型101内の成形材料(溶湯109)の圧力によって進退部材41が後退してピストン47がロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ移動する過程で、ヘッド側室45hからロッド側室45rへの流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止する。
【0145】
別の観点では、実施形態に係る成形機(ダイカストマシン1又は型付ダイカストマシンDC)は、上記のような吸収装置2と、金型101を保持する型締装置7と、金型101内に成形材料(溶湯109)を射出する射出装置9と、を有している。
【0146】
従って、例えば、実施形態の概要の説明で述べたように、サージ圧が進退部材41に加えられてピストン47が後退するときに、ヘッド側室45hに生じた圧力によってヘッド側室45hの作動液をロッド側室45rに補給することができる。その結果、瞬間的な圧力上昇に対する進退部材41及びピストン47の後退の遅れ時間を短くし、効果的にサージ圧を吸収することができる。サージ圧の吸収によって、バリが生じる蓋然性を低減することができる。別の観点では、サージ圧の大きさをコントロールすることによって、溶湯109に必要十分な圧力を加え、巣の発生を低減することができる。すなわち、製品の品質が向上する。
【0147】
また、例えば、チェック弁51が設けられず、ロッド側室45rとヘッド側室45hとが単純に連通されただけである場合においては、ロッド側室45rに作動液を供給すると、ロッド側室45rからヘッド側室45hへ作動液が流れる。一方、ピストン47は、ロッド側室45rにおける受圧面積がヘッド側室45hにおける受圧面積よりも小さい。従って、ピストン47を後退させる動作(
図7)ができない。しかし、本実施形態では、チェック弁51が設けられていることから、ピストン47を後退させることができる。その結果、例えば、スプレイが可能になる。
【0148】
さらに、チェック弁51(別の観点では流路61)が設けられていることから、
図8を参照して説明した動作が可能になる。すなわち、ヘッド側室45hに作動液を供給しつつ、ロッド側室45rをタンク59に接続することによって、ヘッド側室45h及びロッド側室45rの双方に作動液を流れさせることができる。これにより、シリンダ43の冷却を行ったり、シリンダ43のエア抜きを行ったりすることができる。この動作に関して、前進限又は後退限に到達したときのみに1方向の流れを許容するような複雑な機構は不要である。
【0149】
チェック弁51は、ピストン47に含まれていてよい。別の観点では、チェック弁51を含み、ヘッド側室45hとロッド側室45rとを通じさせる流路61は、ピストン47及びロッド49(ピストン47のみとすることも可能)に設けられていてよい。
【0150】
この場合、例えば、他の態様(例えばシリンダ部材45の外側面に固定されたブロックにチェック弁51が含まれる態様)に比較して、流路61を短くしやすい。一方、作動液は、通常、ある程度の圧縮性を有しており、ピストン47が後退し始めてからヘッド側室45hの作動液がロッド側室45rへ供給されるまで流路61の長さ等に応じた時間遅れが生じる。従って、流路61が短くなることによって、上記の応答性を高くする効果が向上する。
【0151】
吸収装置2は、ランアラウンド回路53を更に有していてよい。ランアラウンド回路53は、金型101内の溶湯109の圧力によって進退部材41が後退してピストン47がロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ移動する過程で、チェック弁51を含む流路61とは別個にロッド側室45rとヘッド側室45hとを通じさせてよい。
【0152】
この場合、流路61及びランアラウンド回路53の双方を介してヘッド側室45hからロッド側室45rへ作動液が流れるから、例えば、上述したサージ圧に対する応答性を高くする効果が向上する。
【0153】
吸収装置2は、ロッド側室45r、ヘッド側室45h、液圧源(ポンプ57)及びタンク59の接続関係を切り換える切換弁55を更に有していてよい。切換弁は、第1状態~第3状態の間で切換え可能であってよい。第1状態(
図5の切換弁55を示す記号における中央の矩形)では、ロッド側室45r、ヘッド側室45h及びポンプ57が互いに接続される。第2状態(右側の矩形)では、ロッド側室45r及びポンプ57が互いに接続されるとともに、ヘッド側室45h及びタンク59が互いに接続される。第3状態(左側の矩形)では、ロッド側室45r及びタンク59が互いに接続されるとともに、ヘッド側室45h及びポンプ57が互いに接続される。ランアラウンド回路53は、切換弁55が第1状態に切り換えられることによって構成される。
【0154】
従って、ポンプ57からシリンダ43への作動液の供給によってピストン47を駆動するための構成によって、ランアラウンド回路53が構成され、上述したサージ圧に対する応答性を高くする効果が奏されることになる。その結果、構成が簡素化される。また、単にロッド側室45rとヘッド側室45hとが連通されるだけでなく、ポンプ57が接続されるから、溶湯109の進退部材41への到達を待っているときに、ポンプ57によってロッド側室45r及びヘッド側室45hに一定程度の圧力を付与しておくことができる。その結果、進退部材41の後退に伴ってピストン47が後退するときにロッド側室45rに負圧が生じる蓋然性を更に低減することができる。その結果、応答性を高くする効果が更に向上する。
【0155】
吸収装置2は、制御装置5を更に有していてよい。制御装置5は、型(金型101)内の成形材料(溶湯109)の圧力によって進退部材41が後退した後、かつ次の成形サイクルで金型101内の溶湯109が進退部材41に到達する前に、切換弁55を第3状態(
図8の切換弁55を示す記号における左側の矩形)にしてよい。
【0156】
この場合、例えば、
図8を参照して説明したように、進退部材41を前進させて、次の成形サイクルにおけるサージ圧の吸収のための準備を行うことができる。加えて、チェック弁51が設けられていることによって、ヘッド側室45h及びロッド側室45rに作動液を流れさせ、シリンダ43の冷却を行うことができる。すなわち、チェック弁51が設けられていることによって、サージ圧の吸収のための準備と、作動液の循環による冷却との双方が行われる。しかも、上記のように、切換弁55は、ランアラウンド回路53を構成することにも寄与する。これらのことから、吸収装置2は、簡素な構成で多機能化される。
【0157】
吸収装置2は、アキュムレータ65と、ACC流路67Aと、ACCバルブ69とを更に有していてよい。ACC流路67Aは、アキュムレータ65からヘッド側室45hへ至っていてよい。換言すれば、ACC流路67Aは、一端がアキュムレータ65に位置し、他端がヘッド側室45hに位置してよい。ACCバルブ69は、ACC流路67Aに位置していてよく、アキュムレータ65及びヘッド側室45hの少なくとも一方の圧力によって開かれてよく、かつパイロット圧の導入によって閉じられてよい。
【0158】
この場合、ヘッド側室45hとアキュムレータ65との間の圧力損失を低減することが容易化される。特に、ACC流路67Aが、他のバルブを有していない場合において、当該効果が向上する。従って、例えば、ヘッド側室45hとアキュムレータ65との間で圧力が伝わりやすくなり、サージ圧をアキュムレータ65によって吸収しやすくなる。
【0159】
吸収装置2は、ヘッド側室45hに液圧を付与する供給部(例えば液圧装置63)と、液圧装置63を制御する制御装置5と、を更に有していてよい。制御装置5は、型(金型101)内へ射出された成形材料(溶湯109)が進退部材41に到達する前(具体的な時点は既述のように任意)から到達するまでの期間に亘って、液圧装置63に、所定圧力の液圧をヘッド側室45hに付与させてよい(
図5参照)。
【0160】
この場合、吸収装置2のサージ圧の吸収度合いが所定圧力に応じて決定される。別の観点では、例えば、ピストン47をロッド側室45rの側へ押し付けるばねの復元力のみによってサージ圧を吸収する態様(当該態様も本開示に含まれてよい)においては、サージ圧の吸収度合いを調整できないが、本実施形態では、吸収度合いの調整が可能である。すなわち、吸収装置2では、単にサージ圧の吸収が容易化されるだけでなく、サージ圧をコントロールすることが容易化される。これにより、例えば、バリが生じる蓋然性を低減することが容易化されるだけでなく、溶湯109の充填完了時に必要十分な圧力を溶湯109に行き渡らせることが容易化され、ひいては、巣が発生する蓋然性を低減することが容易化される。
【0161】
制御装置5は、型(金型101)の温度に応じて上記所定圧力(換言すれば、サージ圧を吸収する前のヘッド側室45h(アキュムレータ65)の目標圧力)を変更してよい。
【0162】
この場合、例えば、既述のとおり、金型101の温度の変化に起因するサージ圧の大きさの変化に対応して、サージ圧の吸収度合いを変化させることができる。すなわち、サージ圧のコントロールの精度が向上する。その結果、バリ及び巣の双方を低減する効果が向上する。
【0163】
制御装置5は、型(金型101)内へ射出された成形材料(溶湯109)が進退部材41に到達して進退部材41が後退した後、供給部(例えば液圧装置63)に、上記所定圧力(換言すればサージ圧を吸収するときのヘッド側室45hの圧力)よりも高い液圧をヘッド側室45hへ付与させ、これにより進退部材41を前進させて局部加圧を行ってよい。
【0164】
すなわち、サージ圧吸収装置2は、局部加圧装置に兼用されてよい。これにより、例えば、型付ダイカストマシンDC(又はダイカストマシン1若しくは吸収装置2)の構成が簡素化される。また、進退部材41が後退してヘッド側室45hの作動液が圧縮された状態から局部加圧を開始することができるから、局部加圧を速やかに開始することができる。その結果、例えば、製品の品質が向上する。
【0165】
以上とは別の観点では、実施形態に係るサージ圧吸収装置2の液圧装置63は、液圧式のシリンダ43と接続される。シリンダ43は、ロッド49と、ピストン47と、シリンダ部材45とを有している。ロッド49は、型(金型101)内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41に固定される。ピストン47は、ロッド49に固定されている。シリンダ部材45は、ピストン47を収容している。シリンダ部材45の内部は、ピストン47によって、ロッド49が位置しているロッド側室45rと、その反対側のヘッド側室45hとに区画されている。液圧装置63は、ランアラウンド回路53を有している。ランアラウンド回路53は、金型101内の溶湯109の圧力によって進退部材41が後退してピストン47がロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ移動する過程で、ロッド側室45rとヘッド側室45hとを通じさせる。
【0166】
この場合、例えば、チェック弁51を含む流路61による作用と同様に、サージ圧が進退部材41に加えられてピストン47が後退するときに、ヘッド側室45hに生じた圧力によってヘッド側室45hの作動液をロッド側室45rに補給することができる。なお、ランアラウンド回路(53)が、流路61とは別個であるという限定がなされずに、ピストン47がロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ移動する過程で、ロッド側室45rとヘッド側室45hとを通じさせるものとして定義されている場合、実施形態の説明とは異なり、流路61は、上記ランアラウンド回路の一例として捉えられて構わない。
【0167】
以上とは更に別の観点では、実施形態に係る液圧シリンダ(シリンダ43)は、シリンダ部材45と、ピストン47と、ロッド49と、チェック弁51と、を有している。ピストン47は、シリンダ部材45に収容されており、シリンダ部材45の内部をロッド側室45rとヘッド側室45hとに区画している。ロッド49は、ピストン47に固定されており、ロッド側室45rを経由してシリンダ部材45の外部へ延び出ている。チェック弁51は、ピストン47に含まれており、ピストン47がロッド側室45rの側からヘッド側室45hの側へ移動する過程で、ヘッド側室45hからロッド側室45rへの流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止する。別の観点では、ピストン47は、前進限及び/又は後退限に位置したときのみチェック弁51の1方向の流れの許容が有効になるような特別な機構は有していない。
【0168】
このようなシリンダ43によれば、例えば、上述した実施形態に係る吸収装置2であって、ピストン47がチェック弁51を含む態様を実現することができる。
【0169】
以上の種々の態様において、ダイカストマシン1又は型付ダイカストマシンDCは、成形機の一例である。溶湯109は成形材料の一例である。金型101は型の一例である。シリンダ43は液圧シリンダの一例である。液圧装置63は、供給部の一例である。
【0170】
本発明は、以上に例示した態様に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0171】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。ダイカストマシンは、コールドチャンバマシンに限定されず、例えば、ホットチャンバマシンであってもよい。
【0172】
射出は、低速射出及び高速射出を含むものに限定されず、例えば、低速で層流充填を行うものであってもよい。進退部材は、成形材料が凝固して構成された成形品を型から押し出すための押出ピンと兼用されるものであってもよい。サージ圧吸収装置は、局部加圧に利用されなくてもよい。
【0173】
ランアラウンド回路53が設けられなくてもよいことについては既に触れた。この場合、ロッド側室45rは、例えば、ポート45bからの作動液の排出が禁止されていてもよいし、許容されていてもよい(例えばポート45bがタンク59に接続されていてもよい。)。また、ランアラウンド回路53は、ポンプ57と接続されていないものであってもよい。
【0174】
実施形態では、進退部材41を前進させるときの液圧装置63の状態(
図8)と、進退部材41を前進限で待機させるときの液圧装置63の状態(
図5)とが相違した。ただし、両者は同じとされてもよい。例えば、
図8の状態を利用せずに、
図5の状態でピストン47を前進させてもよい。逆に、ランアラウンド回路を利用しない態様において、
図8の状態(ただし、ACCバルブ69にパイロット圧を導入しない)で、溶湯の進退部材41への到達を待ってもよい。
【0175】
アキュムレータ65は設けられなくてもよい。例えば、ヘッド側室45hは、リリーフ弁を介してタンク59に接続されていてもよい。
【0176】
なお、本開示からは、チェック弁(51)を要件としない吸収装置の概念が抽出されてよい。例えば、ヘッド側室45hとロッド側室45rとを通じさせるランアラウンド回路53を有する吸収装置の概念が抽出されたり、型の温度に応じてサージ圧の吸収度合い(ヘッド側室45hの圧力)を調整する吸収装置の概念が抽出されたりしてよい。
【符号の説明】
【0177】
DC…型付ダイカストマシン(成形機)、1…ダイカストマシン(成形機)、2…サージ圧吸収装置、5…制御装置、7…型締装置、9…射出装置、41…進退部材、43…シリンダ、45…シリンダ部材、45h…ヘッド側室、45r…ロッド側室、47…ピストン、49…ロッド、51…チェック弁、63…液圧装置、101…金型(型)。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材に固定されるロッドと、前記ロッドに固定されているピストンと、前記ピストンを収容しているシリンダ部材と、を有し、前記シリンダ部材の内部が、前記ピストンによって、前記ロッドが位置しているロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている液圧式のシリンダと、
前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを連通している流路と、
前記流路に位置しており、前記ピストンが前記型内の成形材料の圧力による前記進退部材の後退に伴って前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ヘッド側室から前記ロッド側室への作動液の流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁と、
を有しているサージ圧吸収装置。
【請求項2】
前記流路及び前記チェック弁は、前記ピストンに含まれている
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項3】
前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退して前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記チェック弁を含む前記流路とは別個に前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを通じさせるランアラウンド回路を更に有している
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項4】
前記ロッド側室、前記ヘッド側室、液圧源及びタンクの接続関係を切り換える切換弁を更に有しており、
前記切換弁は、
前記ロッド側室、前記ヘッド側室及び前記液圧源を互いに接続する第1状態と、
前記ロッド側室及び前記液圧源を互いに接続するとともに、前記ヘッド側室及び前記タンクを互いに接続する第2状態と、
前記ロッド側室及び前記タンクを互いに接続するとともに、前記ヘッド側室及び前記液圧源を互いに接続する第3状態と、の間で切換え可能であり、
前記ランアラウンド回路は、前記切換弁が前記第1状態に切り換えられることによって構成される
請求項3に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項5】
前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退した後、かつ次の成形サイクルで前記型内の成形材料が前記進退部材に到達する前に、前記切換弁を前記第3状態にする制御装置を更に有している
請求項4に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項6】
アキュムレータと、
前記アキュムレータから前記ヘッド側室へ至っているACC流路と、
前記ACC流路に位置しており、前記アキュムレータ及び前記ヘッド側室の少なくとも一方の圧力によって開かれ、かつパイロット圧の導入によって閉じられるACCバルブと、
を更に有している請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項7】
前記ヘッド側室に液圧を付与する供給部と、
前記供給部を制御する制御装置と、
を更に有しており、
前記制御装置は、前記型内へ射出された成形材料が前記進退部材に到達する前から到達するまでの期間に亘って、前記供給部に、所定圧力の液圧を前記ヘッド側室に付与させる
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記型の温度に応じて前記所定圧力を変更する
請求項7に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記型内へ射出された成形材料が前記進退部材に到達して前記進退部材が後退した後、前記供給部に、前記所定圧力よりも高い液圧を前記ヘッド側室へ付与させ、これにより前記進退部材を前進させて局部加圧を行う
請求項7に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項10】
型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材に固定されるロッドと、前記ロッドに固定されているピストンと、前記ピストンを収容しているシリンダ部材と、を有し、前記シリンダ部材の内部が、前記ピストンによって、前記ロッドが位置しているロッド側室と、その反対側のヘッド側室とに区画されている液圧式のシリンダに接続される液圧装置であって、
前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退して前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを通じさせるランアラウンド回路を有しており、
前記ランアラウンド回路は、
前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを連通する流路と、
前記流路を開閉可能な弁と、を有している
サージ圧吸収装置の液圧装置。
【請求項11】
請求項1に記載のサージ圧吸収装置と、
前記型を保持する型締装置と、
前記型内に成形材料を射出する射出装置と、
を有している成形機。
【請求項12】
シリンダ部材と、
前記シリンダ部材に収容されており、前記シリンダ部材の内部をロッド側室とヘッド側室とに区画しているピストンと、
前記ピストンに固定されており、前記ロッド側室を経由して前記シリンダ部材の外部へ延び出ているロッドと、
前記ピストンに含まれており、前記ロッド側室と前記ヘッド側室とを連通している流路と、
前記流路に位置しており、前記ピストンが前記ロッド側室の側から前記ヘッド側室の側へ移動する過程で、前記ヘッド側室から前記ロッド側室への作動液の流れを許容するとともに、その反対方向の流れを禁止するチェック弁と、
を有している液圧シリンダ。