(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175284
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】編地および繊維製品
(51)【国際特許分類】
D04B 1/16 20060101AFI20241211BHJP
D04B 1/18 20060101ALI20241211BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20241211BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20241211BHJP
A41D 31/18 20190101ALI20241211BHJP
A41D 31/24 20190101ALI20241211BHJP
【FI】
D04B1/16
D04B1/18
D02G3/36
A41D31/00 502C
A41D31/18
A41D31/00 503E
A41D31/00 503G
A41D31/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092947
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】袋 忠之
(72)【発明者】
【氏名】尾形 暢亮
【テーマコード(参考)】
4L002
4L036
【Fターム(参考)】
4L002AA05
4L002AA07
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC01
4L002AC06
4L002AC07
4L002BA01
4L002BB02
4L002EA06
4L002EA07
4L002FA00
4L002FA02
4L002FA03
4L036MA05
4L036MA33
4L036MA40
4L036PA03
4L036PA05
4L036PA42
4L036PA46
4L036RA24
4L036UA01
(57)【要約】
【課題】芯鞘型混繊糸を含む編地であって、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有し、抗スナッギング性にも優れた編地および繊維製品を提供する。
【解決手段】芯鞘型混繊糸を含む編地であって、前記芯鞘型混繊糸の芯部が非捲縮のマルチフィラメントからなり、編地の密度が80~150コース/2.54cmかつ60~120ウエール/2.54cmの範囲であり、編地がさらに伸縮性繊維を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型混繊糸を含む編地であって、前記芯鞘型混繊糸の芯部が非捲縮のマルチフィラメントからなり、編地の密度が80~150コース/2.54cmかつ60~120ウエール/2.54cmの範囲であり、編地がさらに伸縮性繊維を含むことを特徴とする編地。
【請求項2】
編地の伸長率がタテ方向30%以上かつヨコ方向50%以上であり、編地の回復率がタテ方向およびヨコ方向ともに90%以上である、請求項1に記載の編地。
【請求項3】
前記芯鞘型混繊糸と前記伸縮性繊維とがプレーティング編で編成されている、請求項1に記載の編地。
【請求項4】
前記伸縮性繊維が、仮撚捲縮加工糸、潜在捲縮糸、および弾性糸のうちいずれかである、請求項1に記載の編地。
【請求項5】
前記芯鞘型混繊糸において、芯部と鞘部との糸足差が25%以上である、請求項1に記載の編地。
【請求項6】
前記芯鞘型混繊糸において、芯部と鞘部がともにポリエステル繊維からなる、請求項1に記載の編地。
【請求項7】
前記芯鞘型混繊糸において、芯部を構成する非捲縮のマルチフィラメントがカチオン可染性ポリエステル繊維からなる、請求項1に記載の編地。
【請求項8】
前記芯鞘型混繊糸において、鞘部の単繊維繊度が0.8dtex以下である、請求項1に記載の編地。
【請求項9】
前記芯鞘型混繊糸において、芯部および鞘部がともにフィラメント数20~200本のマルチフィラメントからなる、請求項1に記載の編地。
【請求項10】
前記芯鞘型混繊糸に、30個/m以上のインターレース加工が施されてなる、請求項1に記載の編地。
【請求項11】
編地の抗スナッギング性が3級以上である、請求項1に記載の編地。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の編地を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯鞘型混繊糸を含み、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有し、抗スナッギング性にも優れた編地および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソフトかつシルキーなふくらみ感を呈するポリエステル系混繊糸や、工程通過性が優れ、フィンガーマークやテカリが発生しにくく、ソフトなスウェード調タッチと変化に富んだ外観を有するスウェード調布帛用の複合交絡糸などが提案されている(特許文献1、2)。
しかしながら、これらのものでは、ソフトなスウェード調タッチは得られるものの、ストレッチ性や回復性および抗スナッギング性についてまだ満足とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-331545号公報
【特許文献2】特開2003-342846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、芯鞘型混繊糸を含み、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有し、抗スナッギング性にも優れた編地および繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。かくして以下の本発明が提供される。
【0006】
1.芯鞘型混繊糸を含む編地であって、前記芯鞘型混繊糸の芯部が非捲縮のマルチフィラメントからなり、編地の密度が80~150コース/2.54cmかつ60~120ウエール/2.54cmの範囲であり、編地がさらに伸縮性繊維を含むことを特徴とする編地。
2.編地の伸長率がタテ方向30%以上かつヨコ方向50%以上であり、編地の回復率がタテ方向およびヨコ方向ともに90%以上である、上記1に記載の編地。
3.前記芯鞘型混繊糸と前記伸縮性繊維とがプレーティング編で編成されている、上記1または2に記載の編地。
4.前記伸縮性繊維が、仮撚捲縮加工糸、潜在捲縮糸、および弾性糸のうちいずれかである、上記1~3のいずれかに記載の編地。
5.前記芯鞘型混繊糸において、芯部と鞘部との糸足差が25%以上である、上記1~4のいずれかに記載の編地。
6.前記芯鞘型混繊糸において、芯部と鞘部がともにポリエステル繊維からなる、上記1~5のいずれかに記載の編地。
7.前記芯鞘型混繊糸において、芯部を構成する非捲縮のマルチフィラメントがカチオン可染性ポリエステル繊維からなる、上記1~6のいずれかに記載の編地。
8.前記芯鞘型混繊糸において、鞘部の単繊維繊度が0.8dtex以下である、上記1~7のいずれかに記載の編地。
9.前記芯鞘型混繊糸において、芯部および鞘部がともにフィラメント数20~200本のマルチフィラメントからなる、上記1~8のいずれかに記載の編地。
10.前記芯鞘型混繊糸に、30個/m以上のインターレース加工が施されてなる、上記1~9のいずれかに記載の編地。
11.編地の抗スナッギング性が3級以上である、上記1~10のいずれかに記載の編地。
12.上記1~11のいずれかに記載の編地を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芯鞘型混繊糸を含み、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有し、抗スナッギング性にも優れた編地および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の編地は芯鞘型混繊糸(以下、「混繊糸」ということもある。)を含み、かかる混繊糸の芯部が非捲縮のマルチフィラメント(以下、「非捲縮糸」ということもある。)で構成される。混繊糸の芯部に仮撚捲縮加工糸などの捲縮糸が配されていると、編地のハリ感が低下しスウェード調タッチを有しないおそれがある。なお、混繊糸の鞘部は仮撚捲縮加工糸などの捲縮糸(捲縮を付与されたマルチフィラメント)でもよいし非捲縮糸でもよい。
【0009】
なお、「非捲縮」とは仮撚捲縮加工などの捲縮が付与されてないことであり、以下の方法で捲縮率を測定して5%以下(最も好ましくは0%)のことを意味する。
【0010】
(捲縮率の測定方法)
供試糸条を、周長が1.125mの検尺機のまわりに巻きつけて、乾繊度が3333dtexのかせを調製する。前記かせを、スケール板の吊り釘に懸垂して、その下部分に6gの初荷重を付加し、さらに600gの荷重を付加したときのかせの長さL0を測定する。その後、直ちに、前記かせから荷重を除き、スケール板の吊り釘から外し、このかせを沸騰水中に30分間浸漬して、捲縮を発現させる。沸騰水処理後のかせを沸騰水から取り出し、かせに含まれる水分をろ紙により吸収除去し、室温において24時間風乾する。この風乾されたかせを、スケール板の吊り釘に懸垂し、その下部分に、600gの荷重をかけ、1分後にかせの長さL1aを測定し、その後かせから荷重を外し、1分後にかせの長さL2aを測定する。供試フィラメント糸条の捲縮率(CP)を、下記式により算出する。
CP(%)=((L1a-L2a)/L0)×100
【0011】
前記混繊糸において、総繊度が50~120dtex(より好ましくは50~100dtex)の範囲内であることが好ましい。混繊糸の総繊度が上記範囲より小さいと、編地の密度が小さくなることによりスナッギングが起きやすくなるおそれがある。逆に上記範囲を越えると、編地の風合いが硬くなり、目付けも大きくなりすぎるおそれがある。
【0012】
また、前記混繊糸の芯部および/または鞘部に配されるマルチフィラメントのフィラメント数としては、20~200本の範囲内であることが好ましい。特に、芯部と鞘部がともにフィラメント数20~200本のマルチフィラメントであることが好ましい。
【0013】
混繊糸における鞘部の作用としては、熱処理により芯糸が大きく収縮した際に鞘糸がミニパイル状にふくらむことにより、編地に非起毛でソフトなスウェード調タッチを付加することである。ソフトなスウェード調タッチにするために、鞘部に配されるマルチフィラメントの単繊維繊度は、0.8dtex以下(より好ましくは0.0001~0.5dtex)であることが好ましい。鞘部を構成する繊維の断面形状は特に限定されないが、編地に非起毛でソフトなスウェード調タッチを発現させる上で、丸断面であることが好ましい。異形断面の場合は、三角、偏平、くびれ付き偏平、Y型、W型、十字などのいずれでも良い。
【0014】
一方、芯部の作用としては、熱処理により大きく収縮し鞘糸を高密度のミニパイル構造にしてソフトなスウェード調タッチを発現させることであり、さらに編地を高密度化させ細かい編目にすることで回復性を良くし抗スナッギング性を保つことである。芯部に配される非捲縮糸の単繊維繊度は、収縮力の点から、0.5dtex以上であることが好ましく、より好ましくは0.9~2.2dtexの範囲である。単繊維繊度が0.5dtexより小さい場合、風合はソフトとなるが、収縮力が不十分となるおそれがある。一方、2.2dtexより大きい場合、風合が硬くなり、目的とする編地が得られにくくなるおそれがある。芯部を構成する繊維の断面形状は特に限定されず、丸断面でもよいし前記のような異形断面でもよい。
【0015】
前記芯部および/または鞘部に配されるマルチフィラメントを形成するポリマーの種類としては、ポリエステルや脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66など)が好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどがより好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。特に艶消し剤がポリマー重量対比0.1重量%以上(より好ましくは0.3~2.0重量%)含まれていると、防透性が向上し好ましい。具体的には、セミダルポリエステル、フルダルポリエステル、カチオン可染性ポリエステルが好ましい。カチオン染料可染剤(エステル形成性スルホン酸金属塩化合物など)がポリエステル中に含まれていると、国際公開第2011/048888号パンフレットに記載されているように酸性処理することで抗菌防臭性が付加され好ましい。
【0016】
本発明の編地は、前記の混繊糸だけでなく伸縮性繊維をも含んでいる。その際、伸縮性繊維としては、良好なストレッチ性および回復性の点で仮撚捲縮加工糸、潜在捲縮糸、弾性糸などが好ましい。ここで、弾性糸は、ウレタン系、エステル系のいずれであってもよい。なお、編地は、前記混繊糸と伸縮繊維だけで構成してもよいが、さらに、非捲縮糸や紡績糸など他の糸条を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の編地を製造する方法としては、まず、芯部用非捲縮糸と鞘部用マルチフィラメントを用意する。その際、混繊糸を芯鞘構造とする上で、芯部の沸水収縮率は、鞘部の沸水収縮率より大きいことが必要である。例えば、芯部用非捲縮糸としては、ポリエステル未延伸糸(UDY)やポリエステル半延伸糸(POY)を冷延伸した糸が、沸水収縮率が大きく好ましい。
【0018】
次いで、芯部用非捲縮糸と鞘部用マルチフィラメントとを引き揃えて、インターレース加工などの空気混繊法や合撚法により混繊糸を得る。その際、30個/m以上(より好ましくは60~200個/m)のインターレース加工が施されていることが好ましい。
【0019】
かかる混繊糸の沸水収縮率(BWS)としては、編地の抗スナッギング性の点から40%以上(より好ましくは40~60%)であることが好ましい。沸水収縮率(BWS)が40%より小さいと、染色加工工程で混繊糸が十分に収縮せず、結果として編地の密度が低くなる。そのため、編地が鋭利なものにひっかかった場合、糸が引き出されてしまい、抗スナッギング性が低下するおそれがある。一方、沸水収縮率(BWS)が60%より大きいと、染色加工工程で混繊糸の収縮が大きくなるため編地の密度が高くなる。その結果、抗スナッギング性は良くなるが風合が硬くなりすぎるおそれがある。
【0020】
次いで、前記混繊糸と伸縮繊維とを用いて編地を得る。その際、編地の組織は特に限定されず、例えば、丸編では、天竺、ニットミス、スムース、フライス、鹿の子、添え糸編、両側結接、片側結接など、経編では、デンビー、ハーフ、サテン、クインズコードなどの編組織を有する編地などが例示されるが、これらに限定されるものではない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。
【0021】
特に、前記芯鞘型混繊糸と前記伸縮性繊維とがプレーティング編(添え糸編)で編成されていることが好ましい。例えば、前記混繊糸と伸縮繊維(弾性糸など)とをプレーティング編(添え糸編)で天竺(ベア天竺)を編成した場合、混繊糸で形成されるループより伸縮繊維(弾性糸など)で形成されるループが小さく形成され、編地のストレッチ性にはほとんど伸縮繊維(弾性糸など)が寄与するため、混繊糸のミニパイル構造が崩れずに保持され、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有することができる。
【0022】
次いで、適宜、染色加工や吸水加工を施す。染色加工などの熱履歴により混繊糸に含まれる芯部用非捲縮糸が大きく収縮し混繊糸が芯鞘型となる。その際。混繊糸に含まれる芯部と鞘部との糸足差が25%以上(より好ましく25~80%)であることが好ましい。かかる糸足差が25%未満の場合、混繊糸にふくらみが無く、例えば、編地において編みループ間の隙間が大きくなり、引掛りやすくなってスナッギング性が低下するおそれがある。なお、混繊糸に含まれる芯部と鞘部との糸足差を25%以上とするには、例えば、芯部用非捲縮糸として、ポリエステル未延伸糸(UDY)やポリエステル部分配向糸(POY)を冷延伸した糸を用い、一方、鞘部用マルチフィラメント糸としてポリエステルを常法により紡糸・延伸(熱延伸)した延伸糸やポリエステル部分配向糸(POY)を延伸仮撚加工した仮撚捲縮加工糸などを用いるとよい。
【0023】
芯部と鞘部との糸足差の測定方法としては、例えば、以下の方法が例示される。まず、混繊糸を用いて筒編地を編成し、染色加工を施した後、水酸化ナトリウム水溶液に前記筒編地を浸漬し、加熱後、乾燥させることで芯糸を減量する。その後、減量前の筒編地から抜き取った混繊糸の所定ウエールの長さ(L1)と減量後の筒編地から抜き取った混繊糸の同じウエールの長さ(L2)に、それぞれ所定の荷重をかけて測定を行い、下記式により糸足差を算出する。
糸足差(%)=(L2-L1)/L1×100
【0024】
かくして得られた編地において、ソフトなスウェード調タッチ、抗スナッギング性の点で、編地の密度が、80~150コース/2.54cmかつ60~120ウエール/2.54cmの範囲であることが重要である。編地の密度が上記範囲未満であると、風合いはソフトになるが抗スナッギング性は低下するおそれがある。また、編地の密度が上記範囲以上であると抗スナッギング性は良くなるが、風合いが硬くなるおそれがある。
【0025】
編地の目付けは、特に限定されるものではないが、ソフト性の観点から、また用途を考えた場合、80~300g/m2が好ましい。編地の目付が80g/m2未満であると、シャツ用途として破裂強力などの観点からも好ましくない。また、編地の目付が300g/m2を越えると、ウエアー(衣料)として重くなりすぎるおそれがある。
【0026】
本発明の編地は前記の構成を有するので、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有し、抗スナッギング性にも優れる。
その際、前記編地の伸度がタテ方向30%以上(より好ましくは30~150%)かつヨコ方向50%以上(より好ましくは30~150%)であることが好ましい。また、前記編地の回復率がタテ方向およびヨコ方向ともに90%以上であることが好ましい。また、抗スナッギング性としては、JIS L 1058-2021 D3法のカナノコにより5時間テストしタテとヨコともに4級以上であることが好ましい。
【0027】
次に、本発明の繊維製品は、前記の編地を用いてなる、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、および寝具からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。
かかる繊維製品は前記の編地を用いているので、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有し、抗スナッギング性にも優れる。
【実施例0028】
次に、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
【0029】
(1)目付け
JIS L1096-2010 8.3により測定する。
(2)抗スナッギング性
JIS L 1058-2021 D3法のカナノコにより5時間テストする。
(3)糸足差
混繊糸を用いて筒編地を編成した後、染色加工を施す。次いで、水酸化ナトリウム水溶液50g/L×250mlに3.75gの前記筒編地を浸漬し、2℃/分で昇温し、80℃で270分キープした後、乾燥させることで芯糸を減量する。その後、減量前の筒編地から抜き取った混繊糸の50ウエールの長さ(L1)と減量後の筒編地から抜き取った混繊糸の50ウエールの長さ(L2)に、それぞれ3.6gの荷重をかけて測定を行い、下記式により糸足差を算出する。
糸足差(%)=(L2-L1)/L1×100
(4)インターレース度
交絡糸を8.82mN×表示テックス(0.1g/de)の荷重下で1mの長さをとり、除重後、室温で24時放縮後の結節点の数を読み取り、個/mで表示する。
(5)沸水収縮率(BWS)
JIS L1013-2021 8.18 B法によりBWS(%)を測定する。
(6)伸長率
JIS L1096-2010 8.16.1 D法(編物の定荷重法)により測定する。
(7)伸長回復率
JIS L1096-2010 8.16.1 E法により測定する。
(8)風合い
ソフトなスウェード調タッチの点で、優れている(〇)、普通(△)、不良である(×)、の3段階に評価する。
(9)総合評価
ソフトなスウェード調タッチ、良好なストレッチ性と回復性および抗スナッギング性の点で、優れている(〇)、普通(△)、不良である(×)、の3段階に評価する。
(10)編地の密度
JIS L1096-2010 8.6により測定する。
【0030】
[実施例1]
カチオン可染性ポリエステルとして、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩が1.5mol%共重合されているポリエチレンテレフタレートからなる、総繊度56dtex/36本、破断強度2.0cN/dtex、破断伸度148%のカチオン可染性POY(部分配向糸)を1.6倍の延伸倍率で冷延伸した糸(非捲縮糸、総繊度33dtex/36本)と、丸断面のフルダルポリエチレンテレフタレートの延伸仮撚加工糸(総繊度33dtex/36本)とを引き揃え、2%のオーバーフィードを加えてインターレース加工して糸足差39.9%の混繊糸(総繊度66dtex/72本、インターレース度91個/m)を得た。
【0031】
次いで、36ゲージのシングル丸編機を使用し、前記混繊糸(混率:90.3%)とポリウレタン弾性糸(混率:9.7%)とを用いてプレーティング編(添え糸編)でベア天竺組織の丸編地を編成した。
【0032】
次いで、該編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間30分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編地に親水化剤を付与した。次いで、該丸編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編地は、ソフトなスウェード調タッチと良好なストレッチ性および回復性を有し、かつ抗スナッギング性を兼ね備えたものであった。評価結果を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
カチオン可染性ポリエステルとして、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩が1.5mqol%共重合されており、エチレングリコール成分とテレフタル酸成分がケミカルリサイクルにより得られた成分であるポリエチレンテレフタレートからなる、総繊度56dtex/36本、破断強度2.0cN/dtex、破断伸度150%のカチオン可染性POY(部分配向糸)を1.6倍の延伸倍率で冷延伸した糸(非捲縮糸、総繊度33dtex/36本)と、丸断面のセミダルポリエチレンテレフタレート延伸仮撚加工糸(総繊度33dtex/72本)とを引き揃え、2%のオーバーフィードを加えてインターレース加工して糸足差57.3%の混繊糸(66dtex/108本、インターレース度94個/m)を得た。
【0034】
次いで、28ゲージのシングル丸編機を使用し、前記混繊糸(混率:90%)とポリウレタン弾性糸(混率:10%)とを用いてプレーティング編(添え糸編)でベア天竺組織の丸編地を編成した。
【0035】
次いで、該編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編地に親水化剤を付与した。次いで、該丸編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編地は、ソフトなスウェード調タッチと良好なストレッチおよび回復性を有し、かつ抗スナッギング性を兼ね備えたものであった。評価結果を表1に示す。
【0036】
[実施例3]
カチオン可染性ポリエステルとして、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩が1.6mol%共重合されているポリエチレンテレフタレートからなる、総繊度56dtex/36本、破断強度2.4cN/dtex、破断伸度128%のカチオン可染性POY(部分配向糸)を1.6倍の延伸倍率で冷延伸した糸(非捲縮糸、総繊度33dtex/36本)と、偏平断面のフルダルポリエチレンテレフタレート延伸糸(非捲縮糸、総繊度44dtex/36本)とを引き揃え、2%のオーバーフィードを加えてインターレース加工して糸足差62.8%の混繊糸(総繊度77dtex/72本、インターレース度91個/m)を得た。
【0037】
次いで、36ゲージのシングル丸編機を使用し、前記混繊糸(混率:88.4%)とポリウレタン弾性糸(混率:11.6%)とを用いてプレーティング編(添え糸編)でベア天竺組織の丸編地を編成した。
【0038】
そして、該編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間30分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編地に親水化剤を付与した。次いで、該丸編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編地は、ソフトなスウェード調タッチと良好なストレッチ性および回復性を有し、かつ抗スナッギング性を兼ね備えたものであった。評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例4]
カチオン可染性ポリエステルとして、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩が1.5mol%共重合されており、エチレングリコール成分とテレフタル酸成分がケミカルリサイクルにより得られた成分であるポリエチレンテレフタレートからなる、総繊度56dtex/36本、破断強度2.0cN/dtex、破断伸度150%のカチオン可染性POY(部分配向糸)を1.6倍の延伸倍率で冷延伸した糸(非捲縮糸、総繊度33dtex/36本)と、丸断面のセミダルポリエチレンテレフタレート延伸糸(非捲縮糸、総繊度22dtex/72本)とを引き揃え、2%のオーバーフィードを加えてインターレース加工して糸足差30%の混繊糸(55dtex/108本、インターレース度118個/m)を得た。
【0040】
次いで、36ゲージのシングル丸編機を使用し、前記混繊糸(混率:89.1%)とポリウレタン弾性糸(混率:10.9%)とを用いてプレーティング編(添え糸編)でベア天竺組織の丸編地を編成した。
【0041】
次いで、該編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間15分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編地に親水化剤を付与した。次いで、該丸編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編地は、ソフトなスウェード調タッチと良好なストレッチ性および回復性を有し、かつ抗スナッギング性を兼ね備えたものであった。評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
常法のPOY・DTY方式で得られたポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(総繊度84dtex/72本)を、28ゲージの丸編機を使用し、得られた仮撚捲縮加工糸(混率:86%)とウレタン弾性糸(混率:14%)とを用いてプレーティング編(添え糸編)でベア天竺組織の丸編地を編成した。
【0043】
次いで、該編地を、分散染料を用いて、温度130℃、キープ時間30分で染色加工した。その際、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体エマルジョン)を染液に対して2ミリリットル/リットルの割合にて、染色加工時に同浴処理を行うことにより、編地に親水化剤を付与した。次いで、該丸編地に、温度160℃、時間1分で乾熱ファイナルセットを施した。
得られた編地は、ストレッチ性、抗スナッギング性には優れていたが、ソフトなスウェード調タッチ、回復性の点で不良なものであった。評価結果を表1に示す。
【0044】
本発明によれば、ソフトなスウェード調タッチだけでなく良好なストレッチ性および回復性を有し、抗スナッギング性にも優れた編地および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。