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特開2024-175289エアノズル装置及び樹脂シート製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175289
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】エアノズル装置及び樹脂シート製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20241211BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20241211BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20241211BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20241211BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20241211BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/25
B29C48/305
B29C48/88
B29C48/08
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092954
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 公一
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AM23
4F207AP11
4F207AQ01
4F207AR07
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK67
4F207KL84
4F207KM06
4F207KM16
(57)【要約】
【課題】位置や角度が正確に調整されるエアノズルを備えた樹脂シート製造装置を実現する。
【解決手段】一実施形態のエアノズル装置は、樹脂シートに向けて圧縮空気を噴出するエアノズル本体41と、エアノズル本体41を移動可能かつ回転可能に支持する支持機構42と、エアノズル本体41を移動させる第1の駆動機構と、エアノズル本体41を回転させる第2の駆動機構と、前記第1の駆動機構および前記第2の駆動機構を制御する制御部と、を有する。前記制御部は、エアノズル本体41の位置を少なくとも異なる二方向に調整可能であり、かつ、エアノズル本体41の角度を調整可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイから押し出される樹脂シートに空気を吹き付けてキャストロールに押し付けるエアノズル装置であって、
前記樹脂シートに向けて圧縮空気を噴出するエアノズル本体と、
前記エアノズル本体を移動可能かつ回転可能に支持する支持機構と、
前記エアノズル本体を移動させる第1の駆動機構と、
前記エアノズル本体を回転させる第2の駆動機構と、
前記第1の駆動機構および前記第2の駆動機構を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記エアノズル本体の位置を少なくとも異なる二方向に調整可能であり、かつ、前記エアノズル本体の角度を調整可能である、
エアノズル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアノズル装置において、
前記制御部は、水平面に対して平行であって、前記キャストロールの軸方向に対して直角なX軸方向と、水平面に対して直角であって、前記キャストロールの軸方向に対しても直角なZ軸方向と、に前記エアノズル本体の位置を調整可能である、
エアノズル装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアノズル装置において、
前記制御部は、水平面に対して平行であって、前記キャストロールの軸方向に対しても平行なY軸方向に延びる軸を回転軸として前記エアノズル本体を回転可能である、
エアノズル装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエアノズル装置において、
前記制御部は、前記X軸方向および前記Z軸方向に加えて、前記Y軸方向にも前記エアノズル本体の位置を調整可能である、
エアノズル装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエアノズル装置において、
前記制御部は、前記樹脂シートの幅の変動係数が規定値を下回るように、前記エアノズル本体の位置と角度との少なくとも一方を調整する、
エアノズル装置。
【請求項6】
請求項1に記載のエアノズル装置において、
前記制御部は、前記樹脂シートの幅が規定値を上回るように、前記エアノズル本体の位置と角度との少なくとも一方を調整する、
エアノズル装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のエアノズル装置において、
前記樹脂シートの幅方向両端を検出するセンサを有し、
前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記エアノズル本体の位置と角度との少なくとも一方を調整する、
エアノズル装置。
【請求項8】
請求項1に記載のエアノズル装置において、
前記制御部は、前記樹脂シートの表面を撮影するカメラを有し、
前記制御部は、前記カメラの撮影画像に基づいて、前記エアノズル本体の位置と角度との少なくとも一方を調整する、
エアノズル装置。
【請求項9】
請求項3に記載のエアノズル装置において、
前記支持機構は、架台と、前記架台に固定された支持部と、前記支持部によって支持され、前記エアノズル本体を保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記支持部に対して、前記X軸方向および前記Z軸方向に移動可能であり、
前記エアノズル本体は、前記保持部に対して回転可能である、
エアノズル装置。
【請求項10】
請求項9に記載のエアノズル装置において、
前記架台は、前記X軸方向および前記Y軸方向に移動可能である、
エアノズル装置。
【請求項11】
樹脂原料を加熱して溶融させる押出機と、
前記押出機によって押し込まれる溶融樹脂をシート状に成形するダイと、
前記ダイから押し出された樹脂シートを冷却固化させるキャストロールと、
前記ダイから押し出される樹脂シートに空気を吹き付けて前記キャストロールに押し付けるエアノズル装置と、を備える樹脂シート製造装置であって、
前記エアノズル装置は、
前記樹脂シートに向けて圧縮空気を噴出するエアノズル本体と、
前記エアノズル本体を移動可能かつ回転可能に支持する支持機構と、
前記エアノズル本体を移動させる第1の駆動機構と、
前記エアノズル本体を回転させる第2の駆動機構と、
前記第1の駆動機構および前記第2の駆動機構を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記エアノズル本体の位置を少なくとも異なる二方向に調整可能であり、かつ、前記エアノズル本体の角度を調整可能である、
樹脂シート製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアノズル装置及び樹脂シート製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートや樹脂フィルムの製造方法の1つとしてTダイ法が知られている。Tダイ法では、Tダイによってシート状に成形された溶融樹脂をキャストロールの表面に接触させて冷却固化させる。
【0003】
特許文献1には、溶融樹脂をシート状に成形するTダイと、Tダイから押し出される樹脂シートをキャストロールに押し付けるエアノズルと、を備えた樹脂フィルムの製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-6271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂シートや樹脂フィルムの品質の均一化や安定化のためには、エアノズルの位置や角度を正確に調整することが望まれる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態のエアノズル装置は、樹脂シートに向けて圧縮空気を噴出するエアノズル本体と、前記エアノズル本体を移動させる第1の駆動機構と、前記エアノズル本体を回転させる第2の駆動機構と、前記第1の駆動機構および前記第2の駆動機構を制御する制御部と、を有する。前記制御部は、前記エアノズル本体の位置を少なくとも異なる二方向に調整可能であり、かつ、前記エアノズル本体の角度を調整可能である。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、位置や角度が正確に調整されるエアノズルを備えた樹脂シート製造装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】樹脂シート製造装置を模式的に示す側面図である。
図2A】エアノズル装置を模式的に示す側面図である。
図2B】エアノズル装置を模式的に示す背面図である。
図3】エアノズル装置の構成を示すブロック図である。
図4】エアノズル本体の位置や角度の変化を示す説明図である。
図5A】レゾナンス現象の説明図である。
図5B】ネックイン現象の説明図である。
図5C】凹凸現象の説明図である。
図6】レゾナンス抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】レゾナンス抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図8】レゾナンス抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図9】ネックイン抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図10】ネックイン抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図11】ネックイン抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図12】凹凸抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図13】凹凸抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
図14】凹凸抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の機能を有する要素や構成には同一の符号を付す。また、一度説明した要素や構成については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
<全体構成>
図1は、一実施形態に係る樹脂シート製造装置1Aを模式的に示す側面図である。樹脂シート製造装置1Aは、押出機10,ダイ20,キャストロール30,エアノズル装置40及び巻取り機50を備えている。
【0012】
押出機10は、樹脂原料を加熱して溶融させる。さらに、押出機10は、溶融させた樹脂原料をダイ20内に押し込む。ダイ20は、押出機10によって押し込まれた溶融樹脂をシート状に成形する。エアノズル装置40は、ダイ20によってシート状に成形された溶融樹脂に圧縮空気を吹き付けてキャストロール30に押し付ける。キャストロール30は、エアノズル装置40によって押し付けられたシート状の樹脂を冷却固化させる。巻取り機50は、キャストロール30によって冷却固化されたシート状の樹脂を巻き取る。
【0013】
<押出機>
押出機10は、主モータ11,減速機12,シリンダ13,ホッパ14等から構成されている。シリンダ13の周囲にはヒーターが設けられており、シリンダ13の内部にはスクリュが設けられている。ヒーターは、例えば、シリンダ13の外周面に巻かれたバンドヒーターである。スクリュは、主モータ11から出力され、減速機12を介して入力される動力によって回転する。
【0014】
ホッパ14は、シリンダ13と連通している。ホッパ14を介してシリンダ13の内部に樹脂原料(例えば、粉末状やペレット状の樹脂)が供給される。
【0015】
シリンダ13に供給された樹脂原料は、ヒーターから発せられる熱とスクリュの回転によって生じるせん断発熱とによって加熱され、溶融する。溶融した樹脂原料(溶融樹脂)は、回転するスクリュによってシリンダ13の先端からダイ20内に押し込まれる。
【0016】
<ダイ>
ダイ20は、押出機10によって押し込まれる溶融樹脂をシート状に成形する金型である。以下の説明では、ダイ20を“Tダイ20”と呼ぶ場合がある。
【0017】
押出機10によってTダイ20内に押し込まれた溶融樹脂は、Tダイ20内の狭小流路を通り、Tダイ20の出口から押し出される。この結果、溶融樹脂は、Tダイ20の出口の形状と同一または実質的に同一の断面形状を有するシート状に成形される。
【0018】
以下の説明では、Tダイ20によってシート状に成形された溶融樹脂を“樹脂シート”と呼ぶ場合がある。
【0019】
<キャストロール>
キャストロール30は、直径Dmmの回転ロールであって、Tダイ20の出口から押し出された樹脂シートを引き取る。別の見方をすると、Tダイ20から押し出された樹脂シートは、キャストロール30に移動し、キャストロール30の表面に接触する。
【0020】
キャストロール30の内部には、冷媒を循環させるための流路が設けられており、キャストロール30の表面は、流路を流れる冷媒によって冷却される。この結果、キャストロール30の表面に接触した樹脂シートは、冷却され、固化する。
【0021】
なお、キャストロール30の表面に、メッキ処理,溶射コート処理,粗面化処理などの各種の処理や加工が施されている実施形態もある。
【0022】
以下の説明では、キャストロール30によって冷却固化された後の樹脂シートを“キャストシート”と呼んで、樹脂シートと区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0023】
<エアノズル装置>
エアノズル装置40は、Tダイ20から押し出される樹脂シートに空気を吹き付けてキャストロール30の表面に押し付ける。言い換えれば、Tダイ20から押し出された樹脂シートは、エアノズル装置40から吹き出される空気の力(風圧/空気圧)によってキャストロール30の表面に密着する。
【0024】
エアノズル装置40は、Tダイ20及びキャストロール30の近傍に配置されるエアノズル本体41を備えている。エアノズル本体41は、圧縮空気を噴出するノズルを備えており、ノズルから噴出される圧縮空気がTダイ20から押し出される樹脂シートに吹き付けられる。
【0025】
エアノズル装置40は、エアノズル本体41を複数の異なる方向に移動可能であり、かつ、回転可能である。この結果、本実施形態の樹脂シート製造装置1Aでは、樹脂シートに対する圧縮空気の吹付け位置や吹付け角度、樹脂シートに吹き付けられる圧縮空気の強さや量などを調整することができる。エアノズル装置40の詳細については後に改めて説明する。
【0026】
<巻取り機>
巻取り機50は、キャストロール30を通過したキャストシートをロール状に巻き取る。別の見方をすると、キャストシートは、キャストロール30から離脱し、キャストロール30よりも下流側に配置されている巻取り機50に移動する。巻取り機50に所定量のキャストシートが巻き取られると、切断機によってキャストシートが切断される。
【0027】
<エアノズル装置の詳細>
図2Aは、エアノズル装置40を模式的に示す側面図であり、図2Bは、エアノズル装置40を模式的に示す背面図である。図3は、エアノズル装置40の構成を示すブロック図である。
【0028】
既述のとおり、エアノズル装置40は、Tダイ20及びキャストロール30の近傍に配置されるエアノズル本体41を備えている。より特定的には、エアノズル本体41は、Tダイ20とキャストロール30との間のエアギャップに臨むように配置され、エアギャップを通過する樹脂シートに圧縮空気を吹き付ける。なお、エアギャップとは、Tダイ20の出口からキャストロール30と樹脂シートの接点までの間の距離(空間)である。
【0029】
ここで、Tダイ20の内部には樹脂流路21(図2A)が設けられている。また、Tダイ20の底面22には出口23(図2A)が設けられている。押出機10によってTダイ20に押し込まれた溶融樹脂は、樹脂流路21を通過し、出口23からTダイ20の外に押し出される。なお、図2Aは、Tダイ20の内部構造を模式的に示しており、実際の内部構造とは一致していない。
【0030】
エアノズル装置40は、エアノズル本体41に加えて、エアノズル本体41を移動可能かつ回転可能に支持する支持機構42を備えている。また、エアノズル装置40は、エアノズル本体41を移動させたり、回転させたりするための駆動機構と、駆動機構を制御する制御部43と、を備えている。エアノズル装置40は、カメラ44やセンサ45をさらに備えている。
【0031】
エアノズル本体41は、支持機構42により、少なくとも異なる二方向に移動可能に支持されており、かつ、回転可能(自転可能)に支持されている。
【0032】
制御部43は、複数の駆動機構を制御して、エアノズル本体41の位置や角度を調整する。より特定的には、制御部43は、カメラ44の撮影画像やセンサ45の検出結果から得られる情報などに基づいて駆動機構を制御し、エアノズル本体41の位置と角度との少なくとも一方を調整する。
【0033】
<直交座標系および基準点>
既述のとおり、エアノズル本体41は、少なくとも異なる二方向に移動可能であり、かつ、回転可能である。そこで、エアノズル本体41の移動方向,移動量(移動距離),回転方向,回転量(回転角度)などを説明するために、図2A図2Bに示されるX,Y,Z軸からなる直交座標系を設定する。また、同様の目的から、キャストロール30上に、図2Aに示される基準点Pを設定する。
【0034】
直交座標系を構成するX軸は、設置面Gに対して平行であって、キャストロール30の軸方向に対して直角な軸である。Y軸は、設置面Gに対して平行であって、キャストロール30の軸方向に対しても平行な軸である。Z軸は、設置面Gに対して直角であって、キャストロール30の軸方向に対しても直角な軸である。なお、設置面Gは水平面の一例である。
【0035】
基準点Pは、キャストロール30の中心Oを通る仮想水平線Lとキャストロール30の表面との交点である。なお、仮想水平線Lとキャストロール表面との交点は2つ存在するが、基準点Pは、樹脂シートの搬送方向で上流側に位置する一方の交点(上流側交点)である。
【0036】
<支持機構>
支持機構42は、エアノズル本体41をX軸方向,Y軸方向およびZ軸方向に移動可能に支持する。また、支持機構42は、エアノズル本体41をY軸方向に延びる軸を回転軸とする回転方向(θ方向)に回転可能に支持する。
【0037】
支持機構42は、架台61と、架台61に固定された支持部62と、支持部62によって支持され、エアノズル本体41を保持する保持部63と、を備えている。別の見方をすると、架台61は、支持部62,保持部63及びエアノズル本体41が搭載された可動ステージである。
【0038】
支持機構42は、架台61を移動させる架台駆動機構64をさらに備えている。架台61は、設置面G上でX軸方向およびY軸方向に移動可能であって、架台駆動機構64によってこれらの方向に移動される。架台駆動機構64は、駆動源,動力伝達部材、ガイド部材などから構成され、制御部43の制御に従って架台61を移動させる。
【0039】
2つの支持部62が架台61の上に設けられている。それぞれの支持部62は、Z軸方向に延びる柱状の部材であって、Y軸方向で互いに対向している。以下の説明では、一方の支持部62を“支持脚62a”と呼び、他方の支持部62を“支持脚62b”と呼んで区別する場合がある。また、2つの支持脚62a,62bを特に区別しない場合には、これらを“支持脚62”と総称する場合がある。
【0040】
2つの保持部63が支持脚62によって移動可能に支持されている。より特定的には、1つの保持部63が支持脚62aによって移動可能(昇降可能)に支持されている。また、他の1つの保持部63が支持脚62bによって移動可能(昇降可能)に支持されている。
【0041】
以下の説明では、支持脚62aによって支持されている保持部63を“保持アーム63a”と呼び、支持脚62bによって支持されている保持部63を“保持アーム63b”と呼んで区別する場合がある。また、2つの保持アーム63a,63bを特に区別しない場合には、これらを“保持アーム63”と総称する場合がある。
【0042】
保持アーム63は、支持脚62の長手方向(Z軸方向)に対して直交する方向(X軸方向)に延びている。保持アーム63aの一端(基端)は支持脚62aに連結されており、保持アーム63aの他端(先端)はエアノズル本体41に連結されている。同様に、保持アーム63bの一端(基端)は支持脚62bに連結されており、保持アーム63bの他端(先端)はエアノズル本体41に連結されている。
【0043】
支持機構42は、保持アーム63を移動させる保持部駆動機構65をさらに備えている。保持アーム63は、支持脚62に対して、X軸方向およびZ軸方向に移動可能であって、保持部駆動機構65によってこれらの方向に移動される。
【0044】
保持部駆動機構65は、駆動源,動力伝達部材、ガイド部材などから構成され、制御部43の制御に従って保持アーム63を移動させる。より特定的には、保持部駆動機構65は、サーボモータ,減速機,ボールねじ,リニアガイド等の前後進用の駆動要素や、サーボモータ,減速機,スクリュジャッキ等の昇降用の駆動要素を含んでいる。
【0045】
なお、エアノズル本体41も駆動源や動力伝達部材などから構成される駆動機構46を備えており、駆動機構46によってθ方向に回転(自転)する。駆動機構46は、例えば、サーボモータや減速機などから構成される。
【0046】
<カメラ、センサ>
カメラ44やセンサ45は、キャストロール30の近傍に配置されている。より特定的には、キャストロール30の軸方向中央または略中央にカメラ44が配置されている。別の見方をすると、カメラ44は、樹脂シートの幅方向中央または略中央に配置されている。カメラ44は、高速度カメラであって、樹脂シートを撮影し、その画像(画像信号)を制御部43に送信する。
【0047】
キャストロール30の軸方向両側に2つのセンサ45が配置されている。別の見方をすると、センサ45が樹脂シートの幅方向両側にそれぞれ配置されている。それぞれのセンサ45は、樹脂シートの幅方向端部を検出し、検出結果(検出信号)を制御部43に送信する。より特定的には、一方のセンサ45は、樹脂シートの幅方向一端を検出し、他方のセンサ45は、樹脂シートの幅方向他端を検出する。
【0048】
<制御部>
制御部43は、互いに通信可能なメモリ及びプロセッサを備えており、エアノズル本体41,支持機構42,カメラ44及びセンサ45と通信可能に接続されている。制御部43は、カメラ44の撮影画像やセンサ45の検出結果に基づいて駆動機構(駆動機構46,架台駆動機構64,保持部駆動機構65)を制御し、エアノズル本体41の位置や角度を調整する。
【0049】
より特定的には、制御部43は、カメラ44から送信される画像信号やセンサ45から送信される検出信号をメモリに格納されているプログラムに従って処理する。さらに制御部43は、処理結果に基づいて駆動機構を制御する。例えば、駆動機構の駆動源がサーボモータである場合、制御部43は、サーボモータのドライバICに、回転位置,回転速度,回転力などを指示する制御信号を送信する。なお、処理結果に基づく各駆動機構の制御もメモリに格納されているプログラムに従って実行される。
【0050】
<エアノズル本体の位置調整および角度調整>
これまでの説明により、架台61や保持アーム63が移動すると、エアノズル本体41が、キャストロール30等に対して、架台61や保持アーム63の移動方向と同方向に同距離だけ移動することが理解できる。また、エアノズル本体41が回転すると、当該エアノズル本体41が、キャストロール30等に対して回転することが理解できる。つまり、エアノズル本体41は、キャストロール30等に対して、X軸方向,Y軸方向およびZ軸方向に移動可能であり、かつ、θ方向に回転可能である。
【0051】
別の見方をすると、エアノズル本体41は、前後(X軸方向),左右(Y軸方向)および上下(Z軸方向)に移動可能であり、かつ、上下(θ方向)に回転可能である。
【0052】
図4は、エアノズル本体41の位置や角度の変化を示す説明図である。例えば、エアノズル本体41が前後(X軸方向)に移動すると、キャストロール30に対するエアノズル本体41の位置が変化する。別の見方をすると、エアノズル本体41の先端からキャストロール30上の樹脂シートまでの距離Tが増減する。
【0053】
エアノズル本体41が上下(Z軸方向)に移動すると、例えば、設置面Gに対するエアノズル本体41の位置が変化する。別の見方をすると、設置面Gに対するエアノズル本体41の高さHが増減する。
【0054】
また、エアノズル本体41が上下(θ方向)に回転すると、例えば、キャストロール30に対するエアノズル本体41の向きが変化する。別の見方をすると、仮想水平線Lに対するエアノズル本体41の角度αが増減する。
【0055】
上記のようなエアノズル本体41の移動や回転は、Tダイ20や樹脂シートに対する移動や回転と捉えることもできる。例えば、エアノズル本体41が前後(X軸方向)に移動すると、Tダイ20や樹脂シートに対するエアノズル本体41の位置(距離)が変化する。
【0056】
また、エアノズル本体41が上下(Z軸方向)に移動すると、Tダイ20や樹脂シートに対するエアノズル本体41の位置(高さ)が変化する。エアノズル本体41が上下(θ方向)に回転すると、Tダイ20や樹脂シートに対するエアノズル本体41の角度(向き)が変化する。
【0057】
そして、樹脂シートに対するエアノズル本体41の位置(距離や高さ)が変化すると、樹脂シートに吹き付けられる圧縮空気の強さが変化したり、樹脂シートに対する圧縮空気の吹付け位置が変化したりする。また、樹脂シートに対するエアノズル本体41の角度(向き)が変化すると、樹脂シートに対する圧縮空気の吹付け角度や吹付け位置が変化する。
【0058】
Tダイ20に対するエアノズル本体41の角度(向き)が変化すると、エアノズル本体41から吹き出される圧縮空気がTダイ20に与える影響が変化する。例えば、Tダイ20に吹き付けられる圧縮空気の量が増えてTダイ20の温度が低下する。また、樹脂シートがキャストロール30に接触する位置が変更される。
【0059】
したがって、エアノズル本体41の位置や角度を調整することによって、樹脂シート製造装置1Aによって製造される樹脂シートの品質を向上させたり、安定させたりすることができる。別の見方をすると、樹脂シートの品質を向上させたり、安定させたりするためには、エアノズル本体41を好適な位置および角度に再現性良く調整することが必要である。
【0060】
例えば、エアノズル本体41の位置や角度を調整することにより、“レゾナンス”、“ネックイン”、“凹凸(おうとつ)”と呼ばれる現象の発生を防止したり、抑制したりすることができる。図5Aは、樹脂シートの製造工程で発生するレゾナンス現象の説明図である。図5Bは、ネックイン現象の説明図であり、図5Cは、凹凸現象の説明図である。
【0061】
レゾナンス現象とは、Tダイ20から押し出される樹脂シート2の幅Wが周期的に変動する現象である。ネックイン現象とは、Tダイ20から押し出される樹脂シート2の幅Wが狭くなる現象である。凹凸現象とは、樹脂シート2の表面に複数の凸部3が発生する現象である。
【0062】
エアノズル装置40は、上記現象の発生を防止または抑制するために、エアノズル本体41の位置や角度を自動調整する機能を備えている。より特定的には、エアノズル装置40の制御部43は、次に説明する各種制御の少なくとも1つを実行して、エアノズル本体41の位置や角度の好適化を図る。
【0063】
<レゾナンス抑制制御(角度調整)>
図6図8は、エアノズル装置40の制御部43によって実行されるレゾナンス抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。図6図8に示されているフローチャートは、符号A,Bの箇所で互いに接続されている。
【0064】
レゾナンス抑制制御が開始されると、図6に示されるステップS10でエアノズル本体41の位置および角度が初期化される。具体的には、図4に示されている角度α,距離T,高さHが下記の初期条件(初期値)と一致するように、エアノズル本体41の位置および角度が調整される。なお、下記の“ロール高さh”は、設置面Gからキャストロール30の下端までの鉛直距離[mm]である。また“(1/2)D”は、キャストロール30の半径[mm]である。
(初期条件)
・角度α=0[°]
・距離T=10[mm]
・高さH=h+(1/2)D[mm]
ステップS10が終了すると、ステップS11に移行する。ステップS11では、樹脂シート2の幅Wの変動係数Wσ(%)が算出される。変動係数Wσは、樹脂シート2の幅Wのばらつきの有無や程度を判断するための指標である。
【0065】
具体的には、センサ45の検出結果に基づいて、Tダイ20から押し出される樹脂シート2の幅Wを定常的に測定し、標準偏差および平均値を算出する。そして、樹脂シート2の幅Wの標準偏差と平均値とから変動係数Wσを算出する。なお、ここでの平均値は移動平均値とする。
【0066】
続くステップS12では、算出された変動係数Wσが規定値を上回っているか否かが判定される。本実施形態における規定値は5.0%である。つまり、ステップS12では、変動係数Wσが5.0%以上であるか否かが判定される。なお、変動係数Wσに関する規定値は任意に変更することができる。
【0067】
ステップS12で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。別の見方をすると、ステップS12で変動係数Wσが5.0%未満であると判定された場合には、レゾナンス現象の発生を防止または抑制するためにエアノズル本体41の位置や角度を調整する必要はない。一方、ステップS12で変動係数Wσが5.0%以上であると判定されると、ステップS13に移行する。
【0068】
ステップS13では角度αが変更される。本実施形態では、駆動機構46により、エアノズル本体41が+θ方向に0.01°回転される。つまり、ステップS13が実行されると、角度αが0.01°増加する。もっとも、ステップS13での角度αの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0069】
ステップS13が終了すると、ステップS14,S15が実行される。ステップS14,S15では、変動係数Wσが再び算出され、規定値と比較される。具体的には、ステップS11,S12と同様の手順により、変動係数Wσが5.0%以上であるか否かが判定される。そして、ステップS15で変動係数Wσが5.0%以上ではないと判定されると、処理は終了する。言い換えれば、ステップS15で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS15で変動係数Wσが5.0%以上であると判定されると、ステップS16に移行する。
【0070】
ステップS16では、角度αが閾値を上回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値は90°である。そこで、ステップS16では、角度αが90°以上であるか否かが判定される。ステップS16で角度αが90°以上ではないと判定されると、ステップS13に戻る。
【0071】
その後、ステップS13~S16が繰り返される。この間、ステップS15で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS16で角度αが90°以上であると判定されると、図7に示されるステップS20に移行する。別の見方をすると、ステップS16で角度αが90°以上であると判定された場合、角度αの調整によって変動係数Wσを5.0%未満に抑制することはできないと判断する。
【0072】
<レゾナンス抑制制御(距離調整)>
図7に示されるステップS20では、角度αが初期値に戻される。もっとも、図6に示されるステップS10~S16では、距離T及び高さHは変更されていない。つまり、ステップS20が実行されると、エアノズル本体41の位置および角度は、ステップS11が実行される前の状態(初期状態)に戻る。
【0073】
ステップS20が終了すると、ステップS21,S22が実行される。ステップS21,S22では、ステップS11,12と同様の手順により、変動係数Wσが5.0%以上であるか否かが判定される。
【0074】
ステップS22で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS22で変動係数Wσが5.0%以上であると判定されると、ステップS23に移行する。
【0075】
ステップS23では距離Tが変更される。本実施形態では、架台駆動機構64と保持部駆動機構65との少なくとも一方によって、エアノズル本体41が+X軸方向(前方)に0.01mm移動される。つまり、ステップS23が実行されると、距離Tが0.01mm減少する。もっとも、ステップS23での距離Tの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0076】
ステップS23が終了すると、ステップS24,S25が実行される。ステップS24,S25では、ステップS21,S22と同様の手順により、変動係数Wσが5.0%以上であるか否かが判定される。そして、ステップS25で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS25で変動係数Wσが5.0%以上であると判定されると、ステップS26に移行する。
【0077】
ステップS26では、距離Tが閾値を下回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値は0.01mmである。そこで、ステップS26では、距離Tが0.01mm以上であるか否かが判定される。ステップS26で距離Tが0.01mm以下ではないと判定されると、ステップS23に戻る。
【0078】
その後、ステップS23~S26が繰り返される。この間、ステップS25で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS26で距離Tが0.01mm以下であると判定されると、図8に示されるステップS30に移行する。別の見方をすると、ステップS26で距離Tが0.01mm以下であると判定される場合、角度αや距離Tの調整によって変動係数Wσを5.0%未満に抑制することはできないと判断する。
【0079】
<レゾナンス抑制制御(高さ調整)>
図8に示されるステップS30では、角度α及び距離Tが初期値に戻される。もっとも、図7に示されるステップS20~S26では、高さHは変更されていない。つまり、ステップS30が実行されると、エアノズル本体41の位置および角度は、ステップS11が実行される前の状態(初期状態)に戻る。
【0080】
ステップS30が終了すると、ステップS31,S32が実行される。ステップS31,S32では、ステップS11,12と同様の手順により、変動係数Wσが5.0%以上であるか否かが判定される。
【0081】
ステップS32で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS32で変動係数Wσが5.0%以上であると判定されると、ステップS33に移行する。
【0082】
ステップS33では高さHが変更される。本実施形態では、保持部駆動機構65によって、エアノズル本体41が+Z軸方向(上方)に0.01mm移動される。つまり、ステップS33が実行されると、高さHが0.01mm増加する。もっとも、ステップS33での高さHの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0083】
ステップS33が終了すると、ステップS34,S35が実行される。ステップS34,S35では、ステップS31,S32と同様の手順により、変動係数Wσが5.0%以上であるか否かが判定される。そして、ステップS35で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS35で変動係数Wσが5.0%以上であると判定されると、ステップS36に移行する。
【0084】
ステップS36では、高さHが閾値を上回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値はh+(3/4)Dである。つまり、ステップS36では、高さHがh+(3/4)D以上であるか否かが判定される。ステップS36で高さHがh+(3/4)D以上ではないと判定されると、ステップS33に戻る。
【0085】
その後、ステップS33~S36が繰り返される。この間、ステップS35で変動係数Wσが5.0%未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS36で高さHがh+(3/4)D以上であると判定されると、ステップS37に移行する。
【0086】
ステップS37では、制御不能判定が行われ、処理が終了する。言い換えれば、高さHの調整幅はキャストロール30の半径の1/2である。別の見方をするとステップS36で高さHがh+(3/4)D以上であると判定される場合、角度α,距離T,高さHのいずれの調整によっても変動係数Wσを5.0%未満に抑制することはできないと判断する。この場合、初期条件(初期値)を変更した上でレゾナンス抑制制御を再度実行してもよく、レゾナンス抑制制御を終了してもよい。
【0087】
レゾナンス抑制制御の実行中、熱電対などの温度センサよってTダイ20の温度が監視される。そして、Tダイ20の温度変化が規定範囲(例えば、±1.0℃)を超えると処理が中断される。
【0088】
なお、ステップS20(図7)やステップS30(図8)で、エアノズル本体41の位置および角度が初期状態に戻されない実行手順もある。例えば、ステップS13~S16の繰り返しの中で変動係数Wσが最小であった時の角度αを記憶しておき、ステップS20では、記憶されている角度αを選択してもよい。また、ステップS23~S26の繰り返しの中で変動係数Wσが最小であった時の距離Tを記憶しておき、ステップS30では、記憶されている距離Tを選択してもよい。
【0089】
<ネックイン抑制制御(角度調整)>
図9図11は、エアノズル装置40の制御部43によって実行されるネックイン抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。図9図11に示されているフローチャートは、符号A,Bの箇所で互いに接続されている。
【0090】
ネックイン抑制制御が開始されると、図9に示されるステップS40でエアノズル本体41の位置および角度が初期化される。具体的には、図4に示されている角度α,距離T,高さHがステップS10(図6)で調整された位置および角度と同じ位置および角度に調整される。
【0091】
ステップS40が終了すると、ステップS41に移行する。ステップS41では、樹脂シート2の幅Wが測定される。具体的には、センサ45の検出結果に基づいて、Tダイ20から押し出される樹脂シート2の幅Wが一定時間測定される。本実施形態では、樹脂シート2の幅Wが60秒間測定される。
【0092】
続くステップS42では、測定された樹脂シート2の幅Wが基準幅Wrを下回っているか否かが判定される。そして、ステップS42で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。別の見方をすると、ステップS42で幅Wが基準幅Wr以上であると判定された場合には、ネックイン現象の発生を防止または抑制するためにエアノズル本体41の位置や角度を調整する必要はない。一方、ステップS42で幅Wが基準幅Wr未満であると判定されると、ステップS43に移行する。
【0093】
ステップS43では角度αが変更される。本実施形態では、駆動機構46により、エアノズル本体41が+θ方向に0.01°回転される。つまり、ステップS43が実行されると、角度αが0.01°増加する。もっとも、ステップS43での角度αの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0094】
ステップS43が終了すると、ステップS44,S45が実行される。ステップS44,S45では、幅Wが再び測定され、基準幅Wrと比較される。具体的には、ステップS41,S42と同様の手順により、樹脂シート2の幅Wが基準幅Wrを下回っているか否かが判定される。そして、幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、幅Wが基準幅Wr未満であると判定されると、ステップS46に移行する。
【0095】
ステップS46では、角度αが閾値を超えていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値は90°である。つまり、ステップS46では、角度αが90°以上であるか否かが判定される。ステップS46で角度αが90°以上ではないと判定されると、ステップS43に戻る。
【0096】
その後、ステップS43~S46が繰り返される。この間、ステップS45で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS46で角度αが90°以上であると判定されると、図10に示されるステップS50に移行する。別の見方をすると、ステップS46で角度αが90°以上であると判定された場合、角度αの調整によっては、幅Wを基準幅Wr以上に維持することはできないと判断する。
【0097】
<ネックイン抑制制御(距離調整)>
図10に示されるステップS50では、角度αが初期値に戻される。もっとも、図9に示されるステップS40~S46では、距離T及び高さHは変更されていない。つまり、ステップS50が実行されると、エアノズル本体41の位置および角度は、ステップS41が実行される前の状態(初期状態)に戻る。
【0098】
ステップS50が終了すると、ステップS51,S252が実行される。ステップS51,S52では、ステップS41,S42と同様の手順により、樹脂シート2の幅Wが基準幅Wrを下回っているか否かが判定される。そして、ステップS52で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS52で幅Wが基準幅Wr未満であると判定されると、ステップS53に移行する。
【0099】
ステップS53では距離Tが変更される。本実施形態では、架台駆動機構64と保持部駆動機構65との少なくとも一方によって、エアノズル本体41が+X軸方向(前方)に0.01mm移動される。つまり、ステップS53が実行されると、距離Tが0.01mm減少する。もっとも、ステップS53での距離Tの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0100】
ステップS53が終了すると、ステップS54,S55が実行される。ステップS54,S55では、ステップS51,S52と同様の手順により、樹脂シート2の幅Wが基準幅Wrを下回っているか否かが判定される。そして、ステップS55で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS55で幅Wが基準幅Wr未満であると判定されると、ステップS56に移行する。
【0101】
ステップS56では、距離Tが閾値を下回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値は0.01mmである。そこで、ステップS56では、距離Tが0.01mm以下であるか否かが判定される。ステップS56で距離Tが0.01mm以下ではないと判定されると、ステップS53に戻る。
【0102】
その後、ステップS53~S56が繰り返される。この間、ステップS55で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS56で距離Tが0.01mm以下であると判定されると、図11に示されるステップS60に移行する。別の見方をすると、ステップS56で距離Tが0.01mm以下であると判定される場合、角度αや距離Tの調整によっては、幅Wを基準幅Wr以上に維持することはできないと判断する。
【0103】
<ネックイン抑制制御(高さ調整)>
図11に示されるステップS60では、角度α及び距離Tが初期値に戻される。もっとも、図10に示されるステップS50~S56では、高さHは変更されていない。つまり、ステップS60が実行されると、エアノズル本体41の位置および角度は、ステップS51が実行される前の状態(初期状態)に戻る。
【0104】
ステップS60が終了すると、ステップS61,S62が実行される。ステップS61,S62では、ステップS41,S42と同様の手順により、樹脂シート2の幅Wが基準幅Wrを下回っているか否かが判定される。
【0105】
ステップS62で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS62で幅Wが基準幅Wr未満であると判定されると、ステップS63に移行する。
【0106】
ステップS63では高さHが変更される。本実施形態では、保持部駆動機構65によって、エアノズル本体41が+Z軸方向(上方)に0.01mm移動される。つまり、ステップS63が実行されると、高さHが0.01mm増加する。もっとも、ステップS63での高さHの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0107】
ステップS63が終了すると、ステップS64,S65が実行される。ステップS64,S65では、ステップS61,S62と同様の手順により、樹脂シート2の幅Wが基準幅Wrを下回っているか否かが判定される。そして、ステップS65で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS65で幅Wが基準幅Wr未満であると判定されると、ステップS66に移行する。
【0108】
ステップS66では、高さHが閾値を上回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値はh+(3/4)Dである。そこで、ステップS66では、高さHがh+(3/4)D以上であるか否かが判定される。ステップS66で高さHがh+(3/4)D以上ではないと判定されると、ステップS63に戻る。
【0109】
その後、ステップS63~S66が繰り返される。この間、ステップS65で幅Wが基準幅Wr以上であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS66で高さHがh+(3/4)D以上であると判定されると、ステップS67に移行する。
【0110】
ステップS67では、制御不能判定が行われ、処理が終了する。言い換えれば、高さHの調整幅は、キャストロール30の半径の1/2である。別の見方をすると、ステップS66で高さHがh+(3/4)D以上であると判定される場合、角度α,距離T,高さHのいずれの調整によっても幅Wを基準幅Wr以上に維持することはできないと判断する。この場合、初期条件(初期値)を変更した上でネックイン抑制制御を再度実行してもよく、ネックイン抑制制御を終了してもよい。
【0111】
なお、ネックイン抑制制御の実行中、熱電対などの温度センサよってTダイ20の温度が監視される。そして、Tダイ20の温度変化が規定範囲(例えば、±1.0℃)を超えると処理が中断される。
【0112】
ステップS50(図10)やステップS60(図11)で、エアノズル本体41の位置および角度が初期状態に戻されない実行手順もある。例えば、ステップS50では、ステップS43~S46の繰り返しの中で樹脂シート2の幅Wが最大であったときの角度αを記憶しておき、ステップS50では、記憶されている角度αを選択してもよい。またステップS53~S56(図10)の繰り返しの中で樹脂シート2の幅Wが最大であったときの距離Tを記憶しておき、ステップS60では、記憶されている距離Tを選択してもよい。
【0113】
<凹凸抑制制御(角度調整)>
図12図14は、エアノズル装置40の制御部43によって実行される凹凸抑制制御の手順の一例を示すフローチャートである。図12図14に示されているフローチャートは、符号A,Bの箇所で互いに接続されている。
【0114】
凹凸抑制制御が開始されると、図12に示されるステップS70でエアノズル本体41の位置および角度が初期化される。具体的には、図4に示されている角度α,距離T,高さHがステップS10(図6)で調整された位置および角度と同じ位置および角度に調整される。
【0115】
ステップS70が終了すると、ステップS71に移行する。ステップS71では、樹脂シート2の表面における凸部3の出現率Aσが算出される。出現率Aσは、凹凸現象の有無や程度を判断するための指標である。
【0116】
具体的には、カメラ44によって樹脂シート2の表面が一定時間撮影される。さらに、カメラ44の撮影画像が解析され、規定の大きさを上回る大きさの凸部3の数が出現率Aσとして算出される。
【0117】
続くステップS72では、算出された出現率Aσが規定値を上回っているか否かが判定される。ステップS72で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。別の見方をすると、ステップS72で出現率Aσが規定値未満であると判定された場合には、凹凸現象の発生を防止または抑制するためにエアノズル本体41の位置や角度を調整する必要はない。一方、ステップS72で出現率Aσが規定値以上であると判定されると、ステップS73に移行する。
【0118】
ステップS73では角度αが変更される。本実施形態では、駆動機構46により、エアノズル本体41が+θ方向に0.01°回転される。つまり、ステップS73が実行されると、角度αが0.01°増加する。もっとも、ステップS73での角度αの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0119】
ステップS73が終了すると、ステップS74,S75が実行される。ステップS74,S75では、出現率Aσが再び算出され、規定値と比較される。具体的には、ステップS71,S72と同様の手順により、出現率Aσが規定値以上であるか否かが判定される。そして、ステップS75で出現率Aσが規定値以上ではないと判定されると、処理は終了する。言い換えれば、ステップS75で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS75で出現率Aσが規定値以上であると判定されると、ステップS76に移行する。
【0120】
ステップS76では、角度αが閾値を上回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値は90°である。そこで、ステップS76では、角度αが90°以上であるか否かが判定される。ステップS76で角度αが90°以上ではないと判定されると、ステップS73に戻る。
【0121】
その後、ステップS73~S76が繰り返される。この間、ステップS75で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS76で角度αが90°以上であると判定されると、図13に示されるステップS80に移行する。別の見方をすると、ステップS76で角度αが90°以上であると判定された場合、角度αの調整によって出現率Aσを規定値未満に抑制することはできないと判断する。
【0122】
<凹凸抑制制御(距離調整)>
図13に示されるステップS80では、角度αが初期値に戻される。もっとも、図12に示されるステップS70~S76では、距離T及び高さHは変更されていない。つまり、ステップS80が実行されると、エアノズル本体41の位置および角度は、ステップS71が実行される前の状態(初期状態)に戻る。
【0123】
ステップS80が終了すると、ステップS81,S82が実行される。ステップS81,S82では、ステップS71,S72と同様の手順により、出現率Aσが規定値以上であるか否かが判定される。
【0124】
ステップS82で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS82で出現率Aσが規定値以上であると判定されると、ステップS83に移行する。
【0125】
ステップS83では距離Tが変更される。本実施形態では、架台駆動機構64と保持部駆動機構65との少なくとも一方によって、エアノズル本体41が+X軸方向(前方)に0.01mm移動される。つまり、ステップS83が実行されると、距離Tが0.01mm減少する。もっとも、ステップS83での距離Tの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0126】
ステップS83が終了すると、ステップS84,S85が実行される。ステップS84,S85では、ステップS81,S82と同様の手順により、出現率Aσ規定値以上であるか否かが判定される。そして、ステップS85で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS85で出現率Aσが規定値以上であると判定されると、ステップS86に移行する。
【0127】
ステップS86では、距離Tが閾値を下回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値は0.01mmである。そこで、ステップS86では、距離Tが0.01mm以上であるか否かが判定される。ステップS86で距離Tが0.01mm以下ではないと判定されると、ステップS83に戻る。
【0128】
その後、ステップS83~S86が繰り返される。この間、ステップS85で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS86で距離Tが0.01mm以下であると判定されると、図14に示されるステップS90に移行する。別の見方をすると、ステップS86で距離Tが0.01mm以下であると判定される場合、角度αや距離Tの調整によって出現率Aσを規定値未満に抑制することはできないと判断する。
【0129】
<凹凸抑制制御(高さ調整)>
図14に示されるステップS90では、角度α及び距離Tが初期値に戻される。もっとも、図13に示されるステップS80~S86では、高さHは変更されていない。つまり、ステップS90が実行されると、エアノズル本体41の位置および角度は、ステップS81が実行される前の状態(初期状態)に戻る。
【0130】
ステップS90が終了すると、ステップS91,S92が実行される。ステップS91,S92では、ステップS71,S72と同様の手順により、出現率Aσが規定値以上であるか否かが判定される。
【0131】
ステップS92で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS92で出現率Aσが規定値以上であると判定されると、ステップS93に移行する。
【0132】
ステップS93では高さHが変更される。本実施形態では、保持部駆動機構65によって、エアノズル本体41が+Z軸方向(上方)に0.01mm移動される。つまり、ステップS93が実行されると、高さHが0.01mm増加する。もっとも、ステップS93での高さHの1回当たりの調整量は、適宜変更することができる。
【0133】
ステップS93が終了すると、ステップS94,S95が実行される。ステップS94,S95では、ステップS91,S92と同様の手順により、出現率Aσが規定値以上であるか否かが判定される。そして、ステップS95で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS95で出現率Aσが規定値以上であると判定されると、ステップS96に移行する。
【0134】
ステップS96では、高さHが閾値を上回っていないかどうかが判定される。本実施形態における閾値はh+(3/4)Dである。そこで、ステップS96では、高さHがh+(3/4)D以上であるか否かが判定される。ステップS96で高さHがh+(3/4)D以上ではないと判定されると、ステップS93に戻る。
【0135】
その後、ステップS93~S96が繰り返される。この間、ステップS95で出現率Aσが規定値未満であると判定されると、処理は終了する。一方、ステップS96で高さHがh+(3/4)D以上であると判定されると、ステップS97に移行する。
【0136】
ステップS97では、制御不能判定が行われ、処理が終了する。言い換えれば、高さHの調整幅は、キャストロール30の半径の1/2である。別の見方をすると、ステップS96で高さHがh+(3/4)D以上であると判定される場合、角度α,距離T,高さHのいずれの調整によっても出現率Aσを規定値未満に抑制することはできないと判断する。この場合、初期条件(初期値)を変更した上で凹凸抑制制御を再度実行してもよく、凹凸抑制制御を終了してもよい。
【0137】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0138】
例えば、上記3つの抑制制御の全てを常に実行する必要はない。また、エアノズル装置40の制御部43によって実行される制御は上記3つの抑制制御に限られない。例えば、他の一実施形態の制御部43は、カメラ44の撮影画像に基づいて樹脂シート2の着色や変色の有無や程度が判定され、着色や変色が防止または抑制されるように、エアノズル本体41の位置や角度が調整される。なお、制御部43によって2以上の制御が実行される場合、実行順序は適宜設定することができる。
【0139】
エアノズル本体41の角度,距離,高さを変更する場合、エアノズル本体41を上記方向とは異なる方向に回転または移動させてもよい。例えば、ステップS23(図7)でエアノズル本体41が-X軸方向(後方)に移動される実施形態もある。また、ステップS33(図8)でエアノズル本体41が-Z軸方向(下方)に移動される実施形態もある。
【0140】
センサ45の検出結果に代えて、或いは、センサ45の検出結果とともに、カメラ44の撮影画像に基づいて樹脂シート2の幅Wを測定してもよい。
【0141】
エアノズル本体41の回転角度,移動距離(水平移動距離),昇降距離(鉛直移動距離)に関する閾値は、適宜変更することができる。例えば、ステップS16(図6)で角度αと比較される閾値や、ステップS26で距離Tと比較される閾値は、適宜変更することができる。また、エアノズル本体41とキャストロール30との接触を防止するストッパや、エアノズル本体41とTダイ20との接触を防止するストッパを設けてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1A…樹脂シート製造装置、2…樹脂シート、3…凸部、10…押出機、11…主モータ、12…減速機、13…シリンダ、14…ホッパ、20…ダイ(Tダイ)、21…樹脂流路、22…底面、23…吐出口、30…キャストロール、40…エアノズル装置、41…エアノズル本体、42…支持機構、43…制御部、44…カメラ、45…センサ、46…駆動機構、50…巻取り機、61…架台、62…支持部(支持脚)、62a,62b…支持脚、63…保持部(保持アーム)、63a,63b…保持アーム、64…架台駆動機構、65…保持部駆動機構、Aσ…出現率、T…距離、G…設置面、L…仮想水平線、O…中心、P…基準点、W…幅、Wr…基準幅、Wσ…変動係数、α…角度
図1
図2A
図2B
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