(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175297
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システム
(51)【国際特許分類】
E02D 13/06 20060101AFI20241211BHJP
E02D 7/06 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E02D13/06
E02D7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092970
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000172961
【氏名又は名称】あおみ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】青木 判治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優磨
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050CB11
2D050EE10
2D050EE19
2D050FF04
(57)【要約】
【課題】汎用性のある三点式の杭打ち機の改良軸等が鉛直となるようにリーダを自動誘導し、杭打ち機の水平誘導のみで鉛直性を保持できるようにする三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供する。
【解決手段】地盤改良機12におけるリーダ11の鉛直度を測定する傾斜測定部23cと、リーダ11の鉛直度を補正する操作部24と、傾斜測定部23cで測定されたリーダ11の鉛直度に基づき操作部24によるリーダ11に対する必要操作量を演算する演算部23bと、演算部23bで得られたリーダ11に対する傾斜操作部23cによる必要操作量を操作部24に指示する制御部23aと、を設けた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三点式杭打ち機のリーダの鉛直度を自動補正する三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムであって、
前記リーダの前記鉛直度に応じた信号を出力する傾斜計と、
前記傾斜計の前記信号から前記リーダの前記鉛直度を測定する傾斜測定部と、
前記リーダの前記鉛直度を補正する操作部と、
前記傾斜測定部で測定された前記リーダの前記鉛直度に基づき前記操作部による前記リーダに対する必要操作量を演算する演算部と、
前記演算部で得られた前記リーダに対する前記操作部による前記必要操作量を前記操作部に指示する制御部と、
を備えている、
ことを特徴とする三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記リーダの前記鉛直度が予め設定された許容範囲を逸脱したときに前記操作部による前記必要操作量を演算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システム。
【請求項3】
前記操作部による前記鉛直度を補正する操作は、前記三点式杭打ち機の施工中に行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システム。
【請求項4】
前記操作部による前記鉛直度を補正する操作は、前記三点式杭打ち機の移動中に行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システム。
【請求項5】
前記傾斜測定部が測定した前記リーダの傾斜状態を三次元的に把握してリアルタイムで表示する表示部を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システム。
【請求項6】
前記操作部を自動操作する自動補正モードと、前記自動補正モードを無効にして前記操作部を手動で操作可能な手動補正モードと、を切換可能に構成している、
ことを特徴とする請求項5に記載の三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムに関するものであり、特に、三点式杭打ち機のリーダの傾きを自動補正して略鉛直に保つ三点式杭打ち機の鉛直自動補正システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭打ち工事や地盤改良工事にあっては、主にクローラークレーンをベースとした、1本のリーダと2本のバックステイとによる、三点式杭打ち機が使用されている。三点式杭打ち機では、リーダに各種の工法に対応した昇降バケット、ホッパー、オーガ、ケーシングパイプ等を取り付け、これをトップシーブからワイヤーにて懸垂し、主にオーガの回転と自重にて削孔を行い、改良杭等を打設するようにしている。
【0003】
また、杭打ちや地盤改良工事においては、スラリー化したセメント系硬化材を軟弱地盤に注入し、軟弱地盤とともに攪拌混合し、化学的に固化する機械攪拌式の深層混合処理工法、すなわちDCM工法が知られている。特に大深度のDCM工法による施工では、改良体どうしのラップ確保が必要な際、改良位置の正確性が求められる。さらに、陸上のサンドコンパクションパイル(SCP)工法を使用した地盤改良工事の場合には、均一な改良率を確保するために、杭の上端から下端まで一定の杭間距離を確保して、改良杭を打設する必要がある。そのため所定箇所に杭打ち、改良をする際には、平面位置と併せて打設軸、改良軸の鉛直性を保持して施工する必要があるが、主に以下の(1)と(2)を要因とする、改良軸が傾斜するリスクがある。
(1)打設機が設置される改良基面の水平度の状態により鉛直度が変わる。これは、杭打ち機の鉛直計のほとんどが現状の鉛直角度を指示するのみで、改良基面の水平度の状態に変化が生じた場合に、その変化に応じて補正するように、改良基面の平面位置の変化にリンクしていないために生じる精度低下である。
(2)硬質の地盤や転石がある際の削孔抵抗により鉛直度が変わる。これは、施工中の鉛直度の確認をオペレータに任せたままで見逃しのリスクである。
そこで、上記リスクを補完するために杭打ち機外部の作業員等が、二方向から測量機等を使用して改良軸が鉛直となるようにリーダを誘導することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来では杭打ち機の鉛直度を確認するのに、オペレータが傾斜計を確認し、杭打設中に鉛直度の修正を行っている。しかし、この修正は、施工中にオペレータ任せの確認となるため見逃してしまうリスクもある。このリスクを補完するため、杭打ち機外部の作業員等が測量機等を使用して、改良軸が鉛直となるようにリーダを誘導する方法が採られていた。しかしながら、この方法では、誘導を指示する作業員を二方向に常駐させる必要があり、効率が悪いという問題点があった。また、このような改良軸の傾斜管理による杭打ちでは、改良深度が深く改良体の下端位置がずれやすいという問題点があつた。
【0006】
そこで、汎用性のある三点式の杭打ち機の改良軸等が略鉛直となるようにリーダを自動誘導し、杭打ち機の水平誘導のみで鉛直性を保持できるようにする三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、三点式杭打ち機のリーダの鉛直度を自動補正する三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムであって、前記リーダの前記鉛直度に応じた信号を出力する傾斜計と、前記傾斜計の前記信号から前記リーダの前記鉛直度を測定する傾斜測定部と、前記リーダの前記鉛直度を補正する操作部と、前記傾斜測定部で測定された前記リーダの前記鉛直度に基づき前記操作部による前記リーダに対する必要操作量を演算する演算部と、前記演算部で得られた前記リーダに対する前記操作部による前記必要操作量を前記操作部に指示する制御部と、を備えている、三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供する。
【0008】
この構成によれば、傾斜測定部で測定したリーダの鉛直度に基づいて、演算部でリーダに対する必要操作量を演算し、その演算処理されたデータから制御部が操作部に、操作部がリーダの傾きを操作する操作量を指示してリーダの傾きの補正を行い、リーダが常に所定の鉛直度を保つように自動誘導できる。これにより、オペレータは施工管理操作に専念することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記リーダの前記鉛直度が予め設定された許容範囲を逸脱したときに前記操作部による前記必要操作量を演算する、三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供する。
【0010】
この構成によれば、リーダの鉛直度を測定している傾斜測定部の値から、リーダの鉛直度が予め設定された閾値等の許容範囲を逸脱すると、操作部による必要操作量を演算して、リーダの傾きを自動補正することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記操作部による前記鉛直度を補正する操作は、前記三点式杭打ち機の施工中に行われる、三点式杭打機のリーダ鉛直自動補正システムを提供する。
【0012】
この構成によれば、リーダの傾きを補正するための操作部による操作は杭打ち機の施工中に行うので、リーダの鉛直度の補正と杭打ち機の施工を並行して行うことができ、作業の効率化が図れる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記操作部による前記鉛直度を補正する操作は、前記三点式杭打ち機の移動中に行われる、三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供する。
【0014】
この構成によれば、前記操作部による操作は、前記杭打ち機の移動中に行うので、リーダの鉛直度の補正と杭打ち機の施工を並行して行うことができ、作業の効率化が図れる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記傾斜測定部が測定した前記リーダの傾斜状態を三次元的に把握してリアルタイムで表示する表示部を有している、三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供する。
【0016】
この構成によれば、システムの自動補正によるリーダの鉛直度をオペレータがリアルタイムに、視覚的に把握して必要な運転操作を行うことができるので、安全及び作業性に寄与できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成において、前記操作部を自動操作する自動補正モードと、前記自動補正モードを無効にして前記操作部を手動で操作可能な手動補正モードと、を切換可能に構成している、三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供する。
【0018】
この構成によれば、自動補正モードにしておけばリーダの鉛直度を自動で行うことができ、自動補正モードから手動補正モードに切り換えると、リーダの鉛直度を手動操作で微調整することが可能になる。すなわち、オペレータが、表示部に三次元的に表示されているリーダの傾斜状態を見て、オペレータの経験則や作業現場環境などから、もう少しだけ異なる調整を必要とするようなときに、自動補正モードから手動補正モードに切り換えると、作業現場環境に最適な補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、傾斜測定部で測定したリーダの鉛直度に基づき、演算部でリーダに対する必要操作量を演算し、その演算処理されたデータから、制御部が操作部に、操作部がリーダの傾きを操作する操作量を指示してリーダの傾きの補正を行い、リーダが常に所定の鉛直度を保つように自動誘導できるので、オペレータは地盤改良や杭打ちの施工操作等の施工管理操作に専念することができ、地盤改良や杭打ちの精度の向上及び作業効率の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例に係る三点式杭打ち機を使用した締固め地盤改良杭の造成工法を概略的に示す全体構成図である。
【
図2】同上三点式杭打ち機におけるリーダ鉛直自動補正システム制御系の一構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す同上リーダ鉛直自動補正システムを使用した三点式杭打ち機の操縦室における一配置構成例を示す斜視図である
【
図4】同上三点式杭打ち機におけるリーダ鉛直自動補正システム制御系の他の構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す同上リーダ鉛直自動補正システムを使用した三点式杭打ち機の操縦室における他の配置構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、汎用性のある三点式の杭打ち機の改良軸等が略鉛直となるようにリーダを自動誘導し、杭打ち機の水平誘導のみで鉛直性を保持できるようにする三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムを提供するという目的を達成するために、三点式杭打ち機のリーダの鉛直度を自動補正する三点式杭打ち機のリーダ鉛直自動補正システムであって、前記リーダの前記鉛直度に応じた信号を出力する傾斜計と、前記傾斜計の前記信号から前記リーダの前記鉛直度を測定する傾斜測定部と、前記リーダの前記鉛直度を補正する操作部と、前記傾斜測定部で測定された前記リーダの前記鉛直度に基づき前記操作部による前記リーダに対する必要操作量を演算する演算部と、前記演算部で得られた前記リーダに対する前記操作部による前記必要操作量を前記操作部に指示する制御部と、を備えている、構成としたことにより実現した。
【実施例0022】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0023】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0024】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0025】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明の三点式杭打ち機の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0026】
図1は、本発明に係る三点式杭打ち機を使用した締固め地盤改良杭の造成工法の一例を示す全体構成図である。
図1において、締固め地盤改良杭の造成装置10(以下、単に「造成装置10」という)は、軟弱地盤100の中に締固め地盤改良杭101(以下単に「地盤改良杭101」という)を造成するものであり、造成装置10は、リーダ11を支持する三点式杭打ち機である地盤改良機12を備えている。また、その地盤改良機12に隣接して、コンプレッサー(空気圧縮機)13、発動発電機14、及び、レシーバタンク15等が配設されている。なお、
図1は、軟弱地盤100の中に3本の地盤改良杭101を造成し終えた状態を示している。
【0027】
空気圧縮機13は、地盤改良機12で使用する圧縮空気を生成して供給するものであり、発動発電機14は、地盤改良機12で使用する電力を生成して供給する。
【0028】
リーダ11は、地盤改良機12のベースマシン本体12a上に垂設され、バックステイ16R及びバックステイ16Lの、2本のバックステイ16と、1本のリーダ11とにより、三点式に支持されている。そのリーダ11には、回転駆動手段たる駆動装置17が昇降自在に設けられている。
【0029】
駆動装置17の下部には、スイベル17aを介して、掘削軸であるケーシングパイプ18の一端側(上端側)が正逆転駆動可能に連結されている。また、リーダ11には、ケーシングパイプ18内に収納される中詰め材(例えば砂)51を、ケーシングパイプ18内に供給するホッパー19と、ホッパー19内に中詰め材51を供給する昇降バケット20等が取り付けられている。その昇降バケット20は、ケーシングパイプ18内に供給する中詰め材51をリーダ11の下側の位置で取り込み、その後、リーダ11を上昇して、下側の位置で取り込んだ中詰め材51をホッパー19内に供給できるようになっている。
【0030】
さらに、リーダ11には、ケーシングパイプ18の掘削長さを計測する深度計(図示せず)と、ケーシングパイプ18の振れを抑止する振れ止め装置21と、掘削拡径ヘッド22と、リーダ11の傾き(鉛直度)を測定する傾斜計28等が取り付けられている。なお、傾斜計28で検出されるリーダ11の傾きは、
図2に示す後述する制御装置23の傾斜測定部23cに入力され、制御装置23が操作部24におけるアクチュエータ25及び操作レバー26を介して、2本のバックステイ16R及びバックステイ16Lをそれぞれ伸縮駆動させることにより補正される。
【0031】
図2は、同上地盤改良機12におけるリーダ鉛直自動補正システム制御系の一構成例を示すブロック図である。ここでの制御系は、制御装置23と操作部24等を備える。操作部24は、電動のアクチュエータ25と操作レバー26とバックステイ16等を有し、アクチュエータ25の動きに応じて操作レバー26を操作してバックステイ16の伸縮操作を行い、リーダ11の鉛直度を補正する。
【0032】
制御装置23は、演算部23bと制御部23aを有するコンピュータであり、制御装置23の図示しないメモリに組み込まれたプログラムにより地盤改良機12の全体を決められた手順で制御するものである。制御装置23には、制御部23aと演算部23bの他に、傾斜計28と接続された傾斜測定部23cと、液晶ディスプレイ等でなる表示部23dが設けられている。なお、制御装置23は、オペレータが配置される、ベースマシン本体12a上に設けられた操縦室12bに設けられている。
【0033】
傾斜測定部23cは、傾斜計28で検出されるリーダ11の鉛直度に応じた情報を受け、その受けた情報をリーダ11の鉛直度情報に変換として演算部23bに入力する。演算部23bでは、傾斜測定部23cからの鉛直度情報に基づきリーダ11の実際の鉛直度を算出して制御部23aに送る。制御部23aでは、リーダ11の鉛直度に応じてバックステイ16の駆動量を、操作部24を介して指示する。また、これと並行して、制御部23a及び演算部23bでは、リーダ11の傾き量(鉛直度)を三次元的に、かつ、視覚的に把握可能な画像データに変換処理して、オペレータが操作中に見ることができる位置に配置されている表示部23dに送る。表示部23dでは、傾斜測定部23cで測定された傾斜度の状態を、オペレータにリアルタイムに表示する。
【0034】
操作レバー26は、バックステイ16Rの伸縮を操作する操作レバー26Rと、バックステイ16Lの伸縮を操作する操作レバー26Lとを備える。操作レバー26の操作は、アクチュエータ25により操作されるものであり、アクチュエータ25は操作レバー26Rを操作するアクチュエータ25Rと、操作レバー26Lを操作するアクチュエータ25Lとを備える。アクチュエータ25Rの駆動とアクチュエータ25Lの駆動は、それぞれ制御部23aにより制御される。
【0035】
なお、本実施例のシステムでは、図示しないボタンを操作することにより、アクチュエータ25により操作レバー26を自動操作する自動補正モードと、アクチュエータ25と操作レバー26の連結操作を無効にして、地盤改良機12のオペレータが操作レバー26を手動で操作可能な手動補正モードと、に切り換え可能になっており、通常は自動補正モードで運用される。しかし、オペレータが、表示部23dに三次元的に表示されているリーダ11の傾斜状態を見て、オペレータの経験則や作業現場環境などからもう少し異なる調整を必要とするようなときには、オペレータが図示しないボタンを操作すると、自動補正モードから手動補正モードに切り換えられて、作業現場環境に最適な補正を行うことが可能になる。
【0036】
また、本実施例のシステムでは、アクチュエータ25の誤操作等により安全性が損なわれる可能性に対処するため、図示しない緊急停止ボタンを設けており、緊急停止ボタンを押すことにより、操作部24におけるアクチュエータ25と操作レバー26との連結がフリーとなり、自動補正モードから手動操作モードのオペレーションに戻る機能を備えている。
【0037】
図3は、ベースマシン本体12a上に設けられた操縦室12bに設けられた各種装置の操作レバー等の配置構成等の一例を示す図である。
図3に示す操縦室12bには、オペレータ席の前面に、操作レバー26Rと操作レバー26L、及び、表示部23dの他に、昇降バケット20及びスイベル17aの上下動を操作する操作レバー26a~26gが設けられている。
【0038】
このように構成された地盤改良機12の鉛直度補正操作の動作を説明する。地盤改良機12が工事現場に移動されるときは、組立可能なリーダ11、バックステイ16、ケーシングパイプ18等が分解された状態で工事現場に搬入される。
【0039】
ベースマシン本体12aが工事現場に到達すると、
図1に示すように、ベースマシン本体12aが、所定の施工位置に水平に保たれる。その後、地盤改良機12にリーダ11が立設されて、ケーシングパイプ18の下端部に取り付けられた掘削拡径ヘッド22を所定の施工位置にセットする。そのケーシングパイプ18内には、ホッパー19より投入された中詰め材51が収納されている。
【0040】
また、ケーシングパイプ18の上端部における駆動装置17を起動させて、ケーシングパイプ18を掘削拡径ヘッド22と共に正方向に回転駆動させ、掘削拡径ヘッド22の軟弱地盤100への貫入を開始する。こうして、
図1に示すように所定の深さまで掘削孔を形成したら、その掘削孔内に中詰め材51を置き配して、軟弱地盤100の表面まで地盤改良杭101を形成する。この地盤改良杭101を複数本形成することにより、軟弱地盤の改良を行うことができる。なお、このような地盤改良杭101の造成については、広く各種の方法が知られているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0041】
そして、杭打ち工事においては、少なくとも工事中、傾斜測定部23cにおいて傾斜計28で計測されたデータからリーダ11の鉛直度を常に監視している。
【0042】
ところで、杭打ち機は、施工時、地盤の硬軟や、機械設置箇所の不陸等の影響で、機体自体が短期的に動揺し、リーダ11に設置した傾斜計28に影響を与え、実際のリーダの鉛直度を正確に反映することが難しい。そこで、本実施例の補正システムでは、リーダ11に設けた傾斜計28とは別に施工機体(ベースマシン本体12a)に動揺センサ30を設置し、施工機体の動揺をキャンセルして、リーダ11の動揺だけに反応するシステム形成となっている。また、短期的な動揺(硬質地盤で機体が持ち上がる等)をキャンセルする機能も付帯している。具体的には、(1)短期(瞬時)動揺のキャンセルとしては、何秒以下の動揺は反応せずにスルーさせる。また、(2)ある程度の時間動揺のキャンセルとしては、リーダ11に設けた傾斜計28とは別に施工機体に設置した動揺センサ30等のデータを計測し、そのデータをリーダ11の傾斜データと相関させて実態の動揺を算出し、自動補正動作に使用する。そして、(1)と(2)の2種類のキャンセル方法を併用して測定を2重管理し、実際の鉛直度に近いデータでシステムを可動させる。
【0043】
さらに、傾斜測定部23cで得られた測定値は、制御装置23の演算部23bに入力され、演算部23bではリーダ11の傾き量を常に監視し、操作部24によるリーダ11に対する必要操作量を演算して、その必要操作量を制御部23aに入力している。
【0044】
制御部23aでは、演算部23bで演算されたリーダ11に対する必要操作量、すなわちリーダ11の傾きが任意の許容範囲(閾値等)を超えると、その傾き方向及び測定値に応じてアクチュエータ25R又はアクチュエータ25Lの駆動を制御する。また、駆動されたアクチュエータ25R又はアクチュエータ25Lは、対応する操作レバー26R又は操作レバー26Lを操作し、さらに操作レバー26R又は操作レバー26Lは、対応するバックステイ16R、バックステイ16Lの伸縮を傾き量に応じて操作する。これにより、リーダ11の傾きを自動補正して鉛直度を所定の状態に保持できる。なお、制御部23aでの制御は、地盤改良機12のバックステイ16を効率的に自動操縦することを実現するため、オペレータの操作レバー26による動作を再現した動作を採用している。また、通常は、前後方向、横方向のどちらかを先に鉛直修正させてから別方向の鉛直度を修正していくが、ここでは、斜め方向に修正することで、早期の鉛直度収束を実現する方法を図っている。
【0045】
また、本実施例の補正システムは、地盤改良機12のバックステイ16を自動操作することによりリーダ11の鉛直度を自動で補正するアシストシステムであるが、地盤改良機12全体で同じ油圧機構を使用する。そのため、油圧力を自動補正操作に使用し過ぎると、他の操作に影響が出ることから、早く補正操作が収束するように補正値を制御すると共に、次に自動補正が作動するまでのシステム始動・開始する鉛直許容値と鉛直度が収束してシステムの終了する鉛直許容値を別々に設定できるようにしている。そして、その鉛直許容値を超えないと自動補正が開始しないような設定が可能である。これにより、制御装置23による効率的な制御動作を実現して、効率的なリーダ11の補正を可能にする。
【0046】
また、制御装置23による上記システム設定値は、機械の動作状況(杭打設中、地盤状況や施工機材の仕様、例えばリーダ11の長さ、地盤改良機12の移動中等)により制御閾値を変更する必要がある。そこで、施工状況により制御設定を数パターン記憶しておき、施工パターンにより手動や自動で切り替え可能にしておくことが好ましい。例えば、制御閾値(鉛直度0.5度)を確保するために制御開始鉛直度0.4度、制御終了角度0.1度とする等の、制御設定を行う。
【0047】
また、制御部23aによるリーダ11の制御と並行して、表示部23dには、制御部23a及び演算部23bにより、リーダ11の傾き量を三次元的に、かつ、視覚的に把握可能な画像データに変換処理されたデータが送られ、表示部23dでは傾斜測定部23cで測定して把握された傾斜状態を、操縦室12bに居るオペレータにリアルタイムに表示する。これにより、オペレータが地盤改良や杭打ちの施工操作を維持した状態、で、オペレータが施工管理操作に専念することができ、地盤改良や杭打ちの精度及び作業効率を向上できる。
【0048】
なお、オペレータが、表示部23dに三次元的に表示されているリーダ11の傾斜状態を見て、オペレータの経験則や作業現場環境などから、もう少しだけ異なる調整を必要とすると判断したときには、操作レバー26R又は操作レバー26Lを操作すると、電磁コントロールバルブ29が自動補正モードから手動補正モードに切り換えられ、制御装置23の制御に優先して、アクチュエータ25の動作を操作レバー26による操作に連動させて作業現場環境に最適な補正を行う。また、アクチュエータ25による操作レバー26の操作、すなわち制御部23a等によるリーダ11の自動補正は、地盤改良機12の施工中は勿論のこと、地盤改良機12の移動中にも並行して行われる。
【0049】
図4は、地盤改良機12におけるリーダ鉛直自動補正システム制御系の他の構成例を示すブロック図で、
図5は、
図4に示す同上リーダ鉛直自動補正システムを使用した三点式杭打ち機の操縦室における他の配置構成例を示す斜視図である。
図4及び
図5に示す構成の中、
図1及び
図3と同一の構成部分については、同一符号を付して重複説明を省略し、主として
図2及び
図3の構成と相違する点について説明する。
【0050】
上述したように、
図4の操作部24は、操作レバー26とバックステイ16との間に、操作レバー26と制御部23a及びバックステイ16に連結された電磁コントロールバルブ29を有している。電磁コントロールバルブ29は、オペレータにより操作レバー26が操作されないときには、自動操作モードに切り換え、操作部24では制御部23aからの信号に基づいて前記バックステイ16の伸縮操作を自動で行う。これに対して、オペレータにより操作レバー26が手動で操作されると、電磁コントロールバルブ29は自動操作から手動操作モードに切り換え、オペレータによる操作レバー26の操作を優先し、操作レバー26の動きに応じてバックステイ16の伸縮操作を行い、リーダ11の鉛直度を補正する。なお、
図4及び
図5に示すシステムでは、操作レバー26の誤操作等により安全性が損なわれるのを回避するのに、図示しない緊急停止ボタンを設けている。
【0051】
次に、
図4及び
図3におけるシステム制御系に変更した構成を有する地盤改良機12の、鉛直度補正操作の動作を説明する。地盤改良機12は、工事現場に到達すると、
図1に示すように、地盤改良機12のベースマシン本体12aが、所定の施工位置に水平に保たれる。その後、地盤改良機12によりリーダ11を立設させて、ケーシングパイプ18の下端部に取り付けられた掘削拡径ヘッド22を所定の施工位置にセットする。そして、杭打ち工事においては、少なくとも工事中、傾斜測定部23cにおいて傾斜計28で計測されたデータからリーダ11の鉛直度を常に測定し、監視している。
【0052】
傾斜測定部23cで得られた測定値は、制御装置23の演算部23bに入力され、演算部23bではリーダ11の傾き量を常に監視し、操作部24によるリーダ11に対する必要操作量を演算して、その必要操作量を制御部23aに入力している。
【0053】
制御部23aでは、演算部23bで演算されたリーダ11に対する必要操作量、すなわちリーダ11の傾きが任意の許容範囲(閾値等)を超えると、電磁コントロールバルブ29を通してバックステイ16R、バックステイ16Lに、リーダ11の傾き方向及び測定値に応じた伸縮量(必要操作量)を指示して、バックステイ16R、バックステイ16Lを各々操作する。これにより、リーダ11の傾きを自動補正して鉛直度を所定の状態に保持できる。なお、ここでも、制御部23aでの制御は、地盤改良機12のバックステイ16を効率的に自動操縦することを実現するため、オペレータの操作レバー26による動作を再現した動作を採用している。また、通常は、前後方向、横方向のどちらかを先に鉛直修正させてから別方向の鉛直度を修正していくが、ここでは、斜め方向に修正することで、早期の鉛直度収束を実現する方法を図っている。
【0054】
また、本実施例の補正システムは、地盤改良機12のバックステイ16を自動操作することによりリーダ11の鉛直度を自動で補正するアシストシステムであるが、地盤改良機12全体で同じ油圧機構を使用する。そのため、油圧力を自動補正操作に使用し過ぎると、他の操作に影響が出ることから、早く補正操作が収束するように補正値を制御すると共に、次に自動補正が作動するまでのシステム始動・開始する鉛直許容値と鉛直度が収束してシステムの終了する鉛直許容値を別々に設定できるようにしている。そして、その鉛直許容値を超えないと自動補正が開始しないような設定が可能である。これにより、制御装置23による効率的な制御動作を実現して、効率的なリーダ11の補正を可能にする。
【0055】
また、制御部23aによるリーダ11の制御と並行して、表示部23dには、制御部23a及び演算部23bにより、リーダ11の傾き量を三次元的に、かつ、視覚的に把握可能な画像データに変換処理されたデータが送られ、表示部23dでは傾斜測定部23cで測定して把握された傾斜状態を、操縦室12bに居るオペレータにリアルタイムに表示する。これにより、オペレータが地盤改良や杭打ちの施工操作を維持した状態、で、オペレータが施工管理操作に専念することができ、地盤改良や杭打ちの精度及び作業効率を向上できる。
【0056】
なお、オペレータが、表示部23dに三次元的に表示されているリーダ11の傾斜状態を見て、オペレータの経験則や作業現場環境などから、もう少しだけ異なる調整を必要とすると判断したときには、操作レバー26R又は操作レバー26Lを操作すると、制御装置23の制御に優先して、操作レバー26の操作に連動した操作がなされて作業現場環境に最適な補正を行う。また、操作レバー26の操作、すなわち制御部23a等によるリーダ11の自動補正は、地盤改良機12の施工中は勿論のこと、地盤改良機12の移動中にも並行して行われる。
【0057】
また、上記実施例では、通常は制御部23aの指示による自動操作モードで運転し、操作レバー26が操作されると自動補正モードから手動補正モードに切り換え、操作レバー26による操作が制御装置23の制御に優先する構成を開示したが、自動と手動の補正モードの切り換えは、必ずしも必要なものではない。
【0058】
また、上記各実施例において、制御装置23の制御によりリーダ11の鉛直度を制御する操作部24の構成は上記構成に限らず、制御装置23の制御でリーダ11の鉛直度を制御できる構成であればどのようなものでもよい。
【0059】
さらに、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。