(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175298
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】油圧ユニットおよび油圧ユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20241211BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F16H61/00
F16H61/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092971
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ドゥミトル トライアン
(72)【発明者】
【氏名】バートン エドワード
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552NA08
3J552NB01
3J552PA67
3J552QA06B
3J552QA13C
3J552QA26B
3J552QA30B
3J552QA41B
3J552QB07
3J552QC08
3J552RA02
3J552SA03
3J552SA23
3J552SA26
3J552SB02
3J552VA32W
3J552VA36W
3J552VC01W
(57)【要約】
【課題】 変速制御システムのクラッチアクチュエータとシフトアクチュエータを油圧制御する油圧機構の構造を簡素化し、少ないスペースでも装置の取付を可能とする変速制御装置の油圧ユニットを提供すること
【解決手段】 多段シフト機構の変速ギヤ切換え時に、シフト用クラッチの接続および切断を行うクラッチアクチュエータ(26)と、シフト位置の入力指令に応じて前記変速ギヤの位置を変更するシフトアクチュエータ(27)と、を駆動する油圧ユニット(200)には、クラッチアクチュエータとシフトアクチュエータを油圧制御するための、バルブと、ポンプと、ポンプを駆動するモータが一体的に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段シフト機構の変速ギヤ切換え時に、シフト用クラッチの接続および切断を行うクラッチアクチュエータ(26)と、シフト位置の入力指令に応じて前記変速ギヤの位置を変更するシフトアクチュエータ(27)と、を駆動する油圧ユニット(600)において、
前記クラッチアクチュエータと前記シフトアクチュエータを油圧制御するための、バルブと、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータが一体的に形成されている、油圧ユニット(600)。
【請求項2】
前記バルブ、前記ポンプ、および前記モータを制御する電子制御装置(500)が油圧ユニット(200)に一体的に形成される、請求項1記載の油圧ユニット(600)。
【請求項3】
前記クラッチアクチュエータと接続される第1油圧チャンネル(100)と前記シフトアクチュエータと接続される第2油圧チャンネル(200)を備える、請求項1記載の油圧ユニット(600)。
【請求項4】
前記バルブには、少なくとも切替弁(107、207)と、吸入弁(111、211)と、増圧弁(113、213)と、が含まれる、請求項3記載の油圧ユニット(600)。
【請求項5】
前記切替弁は、前記第1油圧チャンネルに配置される第1切替弁(107)と、前記第2油圧チャンネルに配置される第2切替弁(207)であり、
前記吸入弁は、前記第1油圧チャンネルに配置される第1吸入弁(111)と、前記第2油圧チャンネルに配置される第2吸入弁(211)であり、
前記増圧弁は、前記第1油圧チャンネルに配置される第1増圧弁(113)と、前記第2油圧チャンネルに配置される第2増圧弁(213)であり、
前記ポンプは、前記第1油圧チャンネルに配置される第1ポンプ(119)と、前記第2油圧チャンネルに配置される第2ポンプ(219)である、請求項4記載の油圧ユニット(600)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の油圧ユニットを備える、変速制御システム。
【請求項7】
前記第1油圧チャンネルの前記第1ポンプ(119)を作動させることによって前記クラッチアクチュエータを増圧制御している間、前記第2油圧チャンネルの前記第2増圧弁(213)を閉じる制御を行う、請求項5記載の油圧ユニットの制御方法。
【請求項8】
前記第2油圧チャンネルの前記第2ポンプ(219)を作動させることによって前記シフトアクチュエータを増圧制御している間、前記第1油圧チャンネルの前記第1増圧弁(113)を閉じる制御を行う、請求項5記載の油圧ユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトスイッチの手元操作により多段変速ギヤのシフト位置を指定し、これに応じて自動的にトランスミッションのアクチュエータを駆動してシフト動作させる自動変速機構(AMT:Automated Mechanical Transmission)を備えるモータサイクルに搭載される変速制御システムの油圧ユニット、および該油圧ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AMTのクラッチを断続するクラッチアクチュエータと、AMTのシフト段の切替を行うシフトアクチュエータを油圧で制御する変速システムが知られている。
運転者からシフトチェンジの指令がなされると、クラッチアクチュエータへ油圧を提供してクラッチを切断し、同時にシフトアクチュエータへ油圧を提供し、シフト段を指令値に設定することによって、シフトチェンジを行う。
【0003】
通常この油圧機構は、モータにより駆動されるポンプと、オイルタンクと、アキュムレータとにより構成される。アキュムレータから一定圧力の油圧作動油がクラッチアクチュエータおよびシフトアクチュエータに供給され、それぞれクラッチおよびシフトカムを所定の手順にしたがって駆動し、その後油圧作動油がオイルタンクに戻される。クラッチアクチュエータにはクラッチのストローク位置を検出するストロークセンサが設けられる。また、ドライブ軸には車速センサが設けられ,シフトカムにはシフトポジションセンサが設けられる。これらのセンサおよびその他各種センサの検出データに基づき、運転者によるシフト位置の入力指令に応じて、エンジン制御装置が、クラッチアクチュエータおよびシフトアクチュエータを駆動し、クラッチ切断、変速ギヤ切換え、クラッチ接続の一連のシフト動作を制御装置内に格納した所定のプログラムやマップその他演算回路により自動的に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クラッチアクチュエータとシフトアクチュエータは個別に駆動されるので、それぞれ独立した油圧制御が必要となる。このため上記の油圧機構では、少なくともクラッチアクチュエータとシフトアクチュエータへ油圧作動油を供給する個別のポンプと、該ポンプを駆動する個別のモータが必要となるため、装置が大型化する原因になっていた。
【0006】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、変速制御システムのクラッチアクチュエータとシフトアクチュエータを油圧制御する油圧機構の構造を簡素化し、少ないスペースでも装置の取付を可能とする変速制御装置の油圧ユニットを提供することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る油圧ユニットは、多段シフト機構の変速ギヤ切換え時に、シフト用クラッチの接続および切断を行うクラッチアクチュエータと、シフト位置の入力指令に応じて前記変速ギヤの位置を変更するシフトアクチュエータ(27)を駆動する油圧ユニット(200)において、クラッチアクチュエータとシフトアクチュエータを油圧制御するための、バルブと、ポンプと、ポンプを駆動するモータが一体的に形成されている。
【0008】
また、本発明に係る油圧ユニットの制御方法によれば、一方の油圧チャンネルのポンプを作動させることによってアクチュエータを増圧制御している間、他方の油圧チャンネルに配置される増圧弁を閉じる制御を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、バルブと、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータが前記油圧ユニットに一体的に形成されているので、1つの油圧ユニットによってクラッチアクチュエータとシフトアクチュエータの油圧制御を独立して行うことができる。
また、上記の油圧ユニットの制御方法を採用することで、1つのモータにより2つのポンプが駆動される油圧ユニットにおいても、クラッチアクチュエータとシフトアクチュエータの油圧制御を独立して行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る変速システムが搭載されたモータサイクルを示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る変速システムの油圧ユニットの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る変速システムおよび変速システムの制御方法について、図面を用いて説明する。
【0012】
なお、以下では本発明が自動二輪車に適用される場合について説明しているが、エンジンを推進源とし、運転者が跨って搭乗する鞍乗型車両であれば、自動二輪車のみならず自動三輪車にも適用可能である。
【0013】
また、以下で説明する構成および動作等は一例であり、本発明に係る変速システムおよび変速システムの制御方法は、そのような構成および動作等である場合に限定されない。また、以下では、同一のまたは類似する説明を適宜簡略化または省略している。また、各図において、同一のまたは類似する部材または部分については、符号を付すことを省略しているか、または、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化または省略している。
【0014】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係る変速システムを説明する。
【0015】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車の油圧駆動式の自動変速制御装置の構成図である。
【0016】
ハンドル1の右グリップ側がアクセルグリップを構成し、スロットル入力ポテンショメータ2が装着され、運転者の意志によるアクセル入力(スロットル開度入力)が検出される。ハンドル1の左グリップ側にシフトスイッチ3が備わる。シフトスイッチ3は、アップダウンスイッチであり、手動操作により変速ギヤをニュートラルから1速および最速の例えば6速まで増加または減少方向に変更してシフト位置を運転者の意志により指定する。ハンドル1の中央部に、現在のシフト位置を表示するモニタ(インジケータ)5を備える。
【0017】
変速制御装置のメイン軸15には、多段(この例では6段)の変速ギヤ17が装着されるとともにメイン軸回転数センサ16が設けられる。メイン軸15上の各変速ギヤ17は、これに対応してドライブ軸18上に装着した変速ギヤ19に噛合っている。これらの変速ギヤ17および19は、選択された変速ギヤ以外は、いずれか一方または両方がメイン軸15またはドライブ軸18に対し遊転状態で装着される。したがって、メイン軸15からドライブ軸18への回転伝達は選択された一対の変速ギヤのみを介して行われる。
【0018】
変速ギヤ17、19を選択して変速比を変えるシフト動作はシフト入力軸であるシフトカム79により行われる。シフトカム79は、複数のカム溝20を有し、各カム溝20にシフトフォーク21が装着される。各シフトフォーク21は、それぞれメイン軸15およびドライブ軸18の所定の変速ギヤ17および19に係合している。シフトカム79の回転により、シフトフォーク21がカム溝20にしたがって各軸方向に移動し、シフトカム79の回転角度に応じた位置の一対の変速ギヤ17、19のみがメイン軸15およびドライブ軸18に対し両方ともスプラインによる固定状態となってこれらにより回転伝達が行われ変速ギヤ位置が定まる。これらの変速ギヤ17、19およびシフトカム79により多段シフト機構の自動トランスミッションが構成される。
【0019】
このような多段シフト機構および前述のクラッチ14は、ともに油圧ユニット600により駆動される。この油圧ユニット600は、モータ300により駆動される第1ポンプ119および第2ポンプ219と、リザーバ400と、各種バルブ等により構成される。
油圧ユニット600の構成および動作は後述する。
【0020】
エンジン回転数センサ(図示せず)等の各種センサの検出データに基づき、シフト位置の入力指令に応じて、電子制御装置500が、モータ300と、各種バルブを制御することによってクラッチアクチュエータ26およびシフトアクチュエータ27を駆動し、クラッチ切断→変速ギヤ切換え→クラッチ接続の一連のシフト動作を電子制御装置500内に格納した所定のプログラムやマップその他演算回路により自動的に行う。
【0021】
より具体的には、クラッチ動作については、クラッチアクチュエータ26の駆動によりロッド31を矢印Aのように往復動作させ、レバー32を矢印Bのように回動させ、これによりピニオン33を回転させてこれに噛合うラック34を往復動作させる。これによりクラッチ14がラック34の移動方向に応じて接続または切断される。クラッチレバーによらずアクチュエータによりクラッチを動作させることにより、運転者によるクラッチ操作が不要になり疲労が軽減される。
【0022】
シフト動作については、シフトアクチュエータ27の駆動によりロッド35を矢印Cのように往復動作させ、リンク機構36を介してシフトカム79を所定角度だけ回転させる。これによりカム溝20にしたがってシフトフォーク21が所定量だけ軸方向に移動し1速から6速までの一対の変速ギヤ17、19を順番にメイン軸15およびドライブ軸18に固定状態として各減速比の回転を伝達する。すなわち、シフトカム79は、変速ギヤ17、19によるシフト動作のためのシフト入力軸を構成する。
【0023】
図2は、実施形態に係る油圧ユニット600の油圧回路を示す回路図である。この油圧ユニット600は、クラッチアクチュエータ26の動作を制御する第1油圧チャンネル100と、シフトアクチュエータの動作を制御する第2油圧チャンネル200と、第1油圧チャンネル100および第2油圧チャンネル200の各ポンプ119、219を駆動するモータ300とモータ300とバルブを制御する電子制御装置500を備えている。ポンプ119、219は、モータ300の軸に取り付けられるカムに連動して駆動されるプランジャ型のポンプであってよい。油圧チャンネル100、200は、油圧作動油で満たされている。なお、図中一点鎖線で囲われた領域は1つのユニットに組み込まれていることを示している。ただし、電子制御装置500は油圧ユニット600に一体的に組み込まれていてもよいし、油圧ユニット600とは別体として構成されていてもよい。
【0024】
第1油圧チャンネル100は、管路104を介してリザーバ400に接続された第1切替弁107と、管路120を介してリザーバ400に接続された第1吸入弁109とを備えている。なお、管路104と第1切替弁107との接続部、および管路120と第1吸入弁109との接続部には、それぞれフィルタが設けられている。さらに、管路104には圧力センサ111が設けられ、圧力センサ111は、リザーバ400と第1切替弁107および第1吸入弁109との間の圧力を検知して、電子制御装置500に検知結果に基づく信号を送信するように設けられている。
【0025】
第1増圧弁113は、管路104に接続されている。第1増圧弁113と管路104との接続部にも、フィルタが設けられている。第1増圧弁113は、管路114を介してクラッチアクチュエータ26へつながるPort Aに接続されている。
【0026】
管路106には、第1ポンプ119の吐出側が絞りを介して接続されている。第1ポンプ119の吸込側は、フィルタを介して管路120に接続されている。第1ポンプ119は、モータ300により駆動される。また、管路120には、第1逆止弁121の一端が接続されている。さらに、管路120には、第1吸入弁109の吐出ポートが接続されている。また、第1逆止弁121の他端は、管路122に接続されている。第1逆止弁121は、管路120から管路122への逆流を防止するように配置されている。
【0027】
また、管路122には、第1減圧弁123の吐出ポートが接続されている。さらに、管路122には、第1逆止弁121と第1減圧弁123との間に、第1アキュムレータ125が接続されている。
【0028】
第1減圧弁123の流入ポートは管路114を介してPort Aに接続されている。第1減圧弁123の流出ポートは、管路122に接続されている。また、第1減圧弁123の流入ポートと管路114との接続部には、フィルタが設けられている。管路114には、圧力センサ127が設けられており、圧力センサ127は、管路114内の圧力を測定して、電子制御装置500に圧力信号を送信する。
【0029】
次に、第2油圧チャンネル200の構成を説明する。第2油圧チャンネル200は、管路204を介してリザーバ400に接続された第2切替弁207と、管路220を介してリザーバ400に接続された第2吸入弁209とを備える。なお、管路204と第2切替弁207との接続部、および管路220と第2吸入弁209との接続部には、それぞれフィルタが設けられている。さらに、管路204には圧力センサ211が設けられ、圧力センサ211は、リザーバ400と第2切替弁207および第2吸入弁209との間の圧力を検知して、電子制御装置500に検知結果に基づく信号を送信する。
【0030】
また、第2増圧弁213は、第2切替弁207および管路206を介して接続されている。第2切替弁207や第2増圧弁213と管路206との接続部にも、それぞれフィルタが設けられている。第2増圧弁213は、管路214を介してシフトアクチュエータへつながるPort Bに接続されている。
【0031】
一方、管路206には、第2ポンプ219の吐出側が絞りを介して接続されている。第2ポンプ219の吸込側は、フィルタを介して管路220に接続されている。第2ポンプ219は、モータ300により駆動される。また、管路220には、第2逆止弁221の一端が接続されている。さらに、管路220には、第2吸入弁209の吐出ポートが接続されている。また、第2逆止弁221の他端は、管路222に接続されている。第2逆止弁221は、管路220から管路222への逆流を防止するように配置されている。
【0032】
また、管路222には、第2減圧弁223の吐出ポートが接続されている。さらに、管路222には、第2逆止弁221と第2減圧弁223との間に、第2アキュムレータ225が接続されている。
【0033】
第2減圧弁223の流入ポートは、管路214を介してPort Bに接続されている。第2減圧弁223の流出ポートは、管路222に接続されている。また、第2減圧弁223の流出ポートと管路214と接続部には、フィルタが設けられている。管路214には、圧力センサ227が設けられており、圧力センサ227は、管路214内の圧力を測定して、電子制御装置500に圧力信号を送信する。
【0034】
電子制御装置500は、運転者によるシフト位置の指令、および圧力信号に基づき、所定の条件に従って、モータ300、第1切替弁107、第2切替弁207、第1吸入弁109、第2吸入弁209、第1増圧弁113、第2増圧弁213、第1減圧弁123、および第2減圧弁223のそれぞれを作動する。なお、各弁はソレノイドを備えた電磁弁であり、電子制御装置500によって通電されて開閉状態が切り換えられる。
【0035】
本実施形態に係る変速制御システムは、運転者の手動操作によりシフトスイッチ3が変更されると、ギヤシフト動作を以下のように自動で行う。
電子制御装置500は、運転者の手動操作によりシフトスイッチ3が変更されたことを検出すると、第1油圧チャンネル100の第1吸入弁109を開くとともに、第1切替弁107を閉じる。また、電子制御装置500は、モータ300を駆動して第1ポンプ119を作動させる。このとき、第1減圧弁123は閉じており、第1ポンプ119は、第1ポンプ119の吸込側と連通しているリザーバ400から油圧作動油を吸引する。第1ポンプ119は、吸引した油圧作動油を吐出側から管路106内に吐出してPort Aに油圧作動油を供給し、Port Aを通じて圧送される油圧作動油が、クラッチアクチュエータ26を駆動する。クラッチアクチュエータ26は、ロッド31を移動させ、レバー32を回動させ、ピニオン33を回転させてこれに噛合うラック34を往復動作させる。これによりクラッチ14がラック34の移動方向に応じて切断される。
【0036】
クラッチの切断状態を保持するため、電子制御装置500はクラッチが切断されたことをクラッチ14のストロークセンサからの信号により検出すると、第1増圧弁113を閉じる制御を行い、Port Aからクラッチアクチュエータにつながる管路内の圧力を一定に保持する。
【0037】
尚、モータ300が駆動されることによって、第2油圧チャンネルの第2ポンプ219も同時に作動するが、第2増圧弁213を閉じることによって、クラッチが切断されるまでPort Bを通じてシフトアクチュエータへ油圧作動油が圧送されるのを防止することができる。
【0038】
次に、運転者の入力に応じたシフト位置に変速するため、電子制御装置500は、第2油圧チャンネル200の第2吸入弁209を開くとともに、第2切替弁207を閉じる。また、電子制御装置500は、モータ300を駆動して第2ポンプ219を作動させる。
このとき、第2減圧弁223は閉じており、第2ポンプ219は、第2ポンプ219の吸込側と連通しているリザーバ400から油圧作動油を吸引する。第2ポンプ219は、吸引した油圧作動油を吐出側から管路206内に吐出してシフトアクチュエータ27につながるPort Bに油圧作動油を供給し、シフトアクチュエータを駆動させる。シフトアクチュエータはロッド35を移動させ、リンク機構36を介してシフトカム79を運転者が指示したシフト位置に合わせて回転させる。これによりカム溝20にしたがってシフトフォーク21が所定量だけ軸方向に移動する。尚、この動作の間、第1油圧チャンネルの第1増圧弁113は閉じているので、モータ300の動作によってPort A側の圧力に変化は起こらず、クラッチの切断状態は維持されている。
【0039】
次に、クラッチの切断状態を接続状態に変更すべく、電子制御装置500は、第1油圧チャンネルの第1増圧弁113を開き、第1切換え弁を開き、第1吸入弁を閉じる。
クラッチが切断されている状態では、第1増圧弁113の下流側は上流側に比べて高圧状態であるため、油圧作動油はPort A側からリザーバに向かって流れ、クラッチアクチュエータに供給される油圧は減圧される。これによって、クラッチが接続される。
またはこれに代わって、電子制御装置500は、増圧弁113を閉じると同時に、減圧弁を開く。また、電子制御装置500は、モータ300を駆動して第1ポンプ119を作動させる。このとき、第2減圧弁223は開いているので、第1ポンプ119は、第2ポンプ219の吸込側と連通しているPort Aから第1アキュムレータ125流入した油圧作動油を吸引し、リザーバ400へ油圧作動油を還流させる。この動作によってクラッチアクチュエータに供給される油圧を減圧させることができる。
【0040】
クラッチが接続され、運転者の指示に基づきシフト変更がされると、シフトアクチュエータへ供給される油圧をもとの状態に戻す。つまり、電子制御装置500は、第2油圧チャンネルの第2増圧弁213を開くと同時に、第2切替弁207を開き、第2吸入弁209を閉じる。シフトアクチュエータ27を駆動している状態では、第2増圧弁213の下流側は上流側に比べて高圧になっているため、油圧作動油はPort B側からリザーバ400に向かって流れ、シフトアクチュエータ27に供給される油圧は減圧される。これによって、シフトアクチュエータ27へ供給される油圧をもとの状態に戻すことができる。
【0041】
またはこれに代わって、電子制御装置500は、第2増圧弁213を閉じると同時に、第2減圧弁223を開く。また、電子制御装置500は、モータ300を駆動して第2ポンプ219を作動させる。このとき、第2減圧弁223は開いているので、第2ポンプ219は、第2ポンプ219の吸込側と連通しているPort Bから第2アキュムレータ225流入した油圧作動油を吸引し、リザーバ400へ油圧作動油を還流させる。この動作によってシフトアクチュエータに供給される油圧を減圧させることができる。
ただし、この場合、モータ300の駆動により第1ポンプ119も駆動され、第1油圧チャンネルの油圧作動油の油圧にも影響が及ぶ。このため、第1油圧チャンネルの第1切替弁107と第1吸入弁109をともに開き、第1増圧弁113と第1減圧弁123をともに閉じておくことにより、Port Aへの油圧が増圧されるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ハンドル、2 スロットル入力ポテンショメータ、3 シフトスイッチ、14 クラッチ、15 メイン軸、17 変速ギヤ、18 ドライブ軸、19 変速ギヤ、20 カム溝、21 シフトフォーク、26 クラッチアクチュエータ、27 シフトアクチュエータ、31 ロッド、32 レバー、33 ピニオン、34 ラック、35 ロッド、36 リンク機構、79 シフトカム、100 第1油圧チャンネル、107 第1切替弁、109 第1吸入弁、113 第1増圧弁、119 第1ポンプ、123 第1減圧弁、125 第1アキュムレータ、200 第2油圧チャンネル、207 第2切替弁、209 第2吸入弁、213 第2増圧弁、219 第2ポンプ、223 第2減圧弁、225 第2アキュムレータ、300 モータ、400 リザーバ、500 電子制御装置、600 油圧ユニット