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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001753
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】リレー
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/12 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H01H50/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100621
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】附田 幸広
(57)【要約】
【課題】制御装置を使用しない簡易な構造を用いて、低温環境下におけるリレー端子接点の結露や氷結を抑制する。
【解決手段】リレーは、接点部を有する固定端子と、固定端子の接点部に対して近接または離間可能に設けられる接点部を有する可動端子と、固定端子および可動端子の少なくとも一部を覆うカバーと、カバーの内部において固定端子の途中を分断するギャップを跨ぐように並設され、相互に接離自在に構成された一対の開閉端子と、カバーの内部に設けられるヒートシンクと、ヒートシンクに接続され、一対の開閉端子を開閉可能に構成された熱変形機構とを備える。熱変形機構の温度が氷点下の第1閾値以上である場合、熱変形機構は一対の開閉端子に接触しておらず、かつ、一対の開閉端子は相互に接触しており、熱変形機構の温度が第1閾値未満である場合、熱変形機構は熱変形して一対の開閉端子に当接することにより、一対の開閉端子を相互に離間させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源と電気負荷との間に接続されるリレーであって、
接点部を有する固定端子と、
前記固定端子の前記接点部に対して近接または離間可能に設けられる接点部を有する可動端子と、
前記固定端子および前記可動端子の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記カバーの内部において前記固定端子の途中を分断するギャップを跨ぐように並設され、相互に接離自在に構成された一対の開閉端子と、
前記カバーの内部に設けられるヒートシンクと、
前記ヒートシンクに接続され、前記一対の開閉端子を開閉可能に構成された熱変形機構と、
を備え、
前記熱変形機構の温度が氷点下の第1閾値以上である場合、前記熱変形機構は、前記一対の開閉端子に接触しておらず、かつ、前記一対の開閉端子は、相互に接触しており、
前記熱変形機構の温度が前記第1閾値未満である場合、前記熱変形機構は、熱変形して前記一対の開閉端子に当接することにより、前記一対の開閉端子を相互に離間させる、リレー。
【請求項2】
前記熱変形機構は、前記ヒートシンクに接続され、相互に離間して並設される一対の熱変形部材を備え、
前記一対の熱変形部材の温度が前記第1閾値以上である場合、前記一対の熱変形部材は前記一対の開閉端子に接触しておらず、かつ、前記一対の開閉端子は相互に接触しており、
前記一対の熱変形部材の温度が前記第1閾値未満である場合、前記一対の熱変形部材は、相互に異なる方向に変形して、前記一対の開閉端子にそれぞれ当接することにより、前記一対の開閉端子を相互に離間させる、請求項1に記載のリレー。
【請求項3】
前記熱変形機構は、
前記ヒートシンクに接続され、相互に離間して並設される一対の突出端子と、
前記一対の突出端子のうち少なくとも一方に接続される少なくとも1つの熱変形部材と、を備え、
前記熱変形部材の温度が前記第1閾値以上である場合、前記一対の突出端子は前記一対の開閉端子に接触しておらず、かつ、前記一対の開閉端子は相互に接触しており、
前記熱変形部材の温度が前記第1閾値未満である場合、前記熱変形部材は、熱変形により、前記一対の突出端子を相互に離間する方向に変形させて、前記一対の開閉端子にそれぞれ当接させ、前記一対の開閉端子を相互に離間させる、請求項1に記載のリレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるメインリレーは、例えば、車両各部の電気負荷と電源との間に接続され、電気負荷に対する電力の供給と遮断とを切り替えるためのスイッチとして利用される。このようなメインリレーとして、例えば、電磁リレーなどのメカニカルリレーが用いられる。電磁リレーは、励磁コイルの電磁誘導作用により可動端子を固定端子に対して近接または離間する方向に移動させることで、スイッチングを行う(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-165406号公報
【特許文献2】特開2018-125159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のリレーでは、極低温環境下(例えば、外気温が-30℃~-10℃)において、リレー内部の可動端子と固定端子との接点部に結露水由来の氷結が発生して、当該接点部が接触不良となる場合がある。その結果、リレーのスイッチングをオンにしたとしても、リレーが通電しないため、車両各部の電気負荷に対して電力が供給されず、車両の始動性不良等の不具合が発生するおそれがある。
【0005】
この点、上記特許文献1には、リレーの凍結を防止するために、コントロールユニットが温度センサの検出値に基づいてリレー内の凍結の有無を判定し、リレーの筐体または凍結発生個所を振動させることで、凍結を解除する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の凍結解除方法では、凍結解除のための振動発生装置とその制御装置が必要であるので、リレーの装置構成が複雑になり、既存車両に対する汎用性に欠け、コスト増にもつながるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2には、電磁リレーにおける固定接点の結露を防止するために、電磁コイルが発生する熱を、熱伝導材を介して固定接点に伝えることにより、固定接点の温度低下を抑制することが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載のように、熱伝導材が固定接点に常時接続された構造であると、通常環境下や低温環境下における走行風による冷却熱が、固定端子を通じて熱伝導材にも伝達されてしまう。このため、固定端子と共に熱伝導材も、リレー内部雰囲気よりも低い温度に冷えてしまうので、当該冷えた熱伝導材では固定接点の温度低下を抑制できず、固定接点に結露や氷結が生じてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、制御装置を使用しない簡易な構造を用いて、低温環境下におけるリレー端子接点の結露や氷結を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、
車両に搭載される電源と電気負荷との間に接続されるリレーであって、
接点部を有する固定端子と、
前記固定端子の前記接点部に対して近接または離間可能に設けられる接点部を有する可動端子と、
前記固定端子および前記可動端子の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記カバーの内部において前記固定端子の途中を分断するギャップを跨ぐように並設され、相互に接離自在に構成された一対の開閉端子と、
前記カバーの内部に設けられるヒートシンクと、
前記ヒートシンクに接続され、前記一対の開閉端子を開閉可能に構成された熱変形機構と、
を備え、
前記熱変形機構の温度が氷点下の第1閾値以上である場合、前記熱変形機構は、前記一対の開閉端子に接触しておらず、かつ、前記一対の開閉端子は、相互に接触しており、
前記熱変形機構の温度が前記第1閾値未満である場合、前記熱変形機構は、熱変形して前記一対の開閉端子に当接することにより、前記一対の開閉端子を相互に離間させる、リレーが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御装置を使用しない簡易な構造を用いて、低温環境下におけるリレー端子接点の結露や氷結を抑制することができる。
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るメインリレーを備えた車両を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態に係るメインリレーを示す縦断面図である。
図3図3は、同実施形態に係る通常環境下における氷結対策構造の状態を示す縦断面図である。
図4図4は、同実施形態に係る極低温環境下における氷結対策構造の状態を示す縦断面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る通常環境下における氷結対策構造の状態を示す縦断面図である。
図6図6は、同実施形態に係る極低温環境下における氷結対策構造の状態を示す縦断面図である。
図7図7は、比較例に係るメインリレーを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
[1.リレーの用途、設置場所]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るメインリレーの用途、設置場所について説明する。図1は、本実施形態に係るメインリレー10を備えた車両1を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、車両1は、例えば、走行用の駆動源としてエンジン4が設けられたエンジン車両である。なお、車両1は、走行用の駆動源としてエンジンとモータとが駆動源として設けられたハイブリッド車両であってもよいし、走行用の駆動源としてモータが設けられた電動車両であってもよい。
【0014】
車両1の前部には、エンジンルーム3が設けられ、この上面を覆うようにフロントフード2が設けられる。エンジンルーム3には、エンジン4、ラジエータ5、トランスミッション(図示せず。)等の各種装置(駆動装置、冷却装置、空調装置、電源、制御装置、センサ等)が設置される。さらに、エンジンルーム3内には、本実施形態に係るメインリレー10を収容するリレーボックス8も設置される。図1の例では、リレーボックス8は、エンジンルーム3内の左後方の上部側に配置されているが、エンジンルーム3内の他の場所に配置されてもよい。エンジンルーム3のリレーボックス8内にメインリレー10を設置することにより、水分や粉塵等がメインリレー10に浸入することを抑制できる。
【0015】
本実施形態に係るメインリレー10は、本発明のリレーの一例である。メインリレー10は、電気負荷6と電源7との間に接続されて、電源7から電気負荷6への電力供給のオンとオフ(電力の供給と遮断)を切り替えるスイッチング装置である。メインリレー10は、例えば、エンジン4またはトランスミッション等の各種装置の制御に必要な電力の供給をオンまたはオフするために用いられる。
【0016】
電気負荷6は、例えば、エンジン4の空燃比、点火タイミング、電子制御式スロットルバルブ等を制御する制御装置(ECU:エンジン コントロール ユニット)、トランスミッションを制御する制御装置(TCU:トランスミッション コントロール ユニット)、その他各種の車載装置を制御する制御装置などである。また、電気負荷6は、車両駆動用モータ、その他のモータなどの駆動装置であってもよいし、補機、冷却装置、空調装置、センサ、カーナビゲーション装置、表示装置、音響装置、電動スライドドアなど、電力が必要な各種の車載電装部品であってもよい。
【0017】
電源7は、上記電気負荷6に供給する電力を蓄えるバッテリである。電源7は、車両1に搭載されるバッテリ、例えば、補機用バッテリで構成される。しかし、電源7は、かかる例に限定されず、ハイブリッド車両または電動車両の駆動用モータのためのメインバッテリなど、車両1に搭載される各種のバッテリ、または外部電源などであってもよい。
【0018】
[2.リレーの基本構成]
次に、図2を参照して、本実施形態に係るメインリレー10の基本構成について説明する。図2は、本実施形態に係るメインリレー10を示す縦断面図である。
【0019】
図2に示すように、メインリレー10は、例えば、電磁リレーなどのメカニカルリレーで構成される。メカニカルリレーは、機械的に近接または離間する接点を有するリレーである。図2に示すメインリレー10は、例えば、4つの外部端子を有する4極の電磁リレーで構成される。電磁リレーは、励磁コイル11の電磁誘導作用により、固定端子20の接点部26に対して可動端子30の接点部36を近接または離間する方向に移動させることで、スイッチングを行う。これにより、上記の電源7と電気負荷6との通電の有無が切り替えられて、電源7から電気負荷6に電力が供給(リレーオン)または遮断(リレーオフ)される。
【0020】
メインリレー10は、励磁コイル11と、ヨーク12と、鉄芯13と、一対のコイル用端子14と、ベース15と、スプール16と、カバー17と、ストッパー18と、固定端子20と、可動端子30とを備える。
【0021】
励磁コイル11は、ボビンなどに巻回されている。励磁コイル11に電流が流れると、その巻回中心および周囲に磁束が発生する。ヨーク12は、鉄などの金属材料で形成される部品であり、電磁石の効果を高めるために磁路に設けられる。ヨーク12は、励磁コイル11の外周を覆うように配置されており、励磁コイル11の通電時に磁気回路を形成する。鉄芯13は、励磁コイル11の巻回中心を通るように、ヨーク12の内部に軸方向に挿通されている。励磁コイル11は、ヨーク12および鉄芯13に対して絶縁されている。コイル用端子14は、励磁コイル11に電流を流すための端子である。図2の紙面垂直方向に並んで一対のコイル用端子14が設けられており、当該一対のコイル用端子14はそれぞれ励磁コイル11の両端に接続されている。
【0022】
これら励磁コイル11と、ヨーク12と、鉄芯13と、コイル用端子14は、導電性を有する金属材料で形成されており、上記電磁誘導作用による磁力を用いて可動端子30を動かすための電磁石として機能する。
【0023】
ベース15およびスプール16は、上記励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13およびコイル用端子14等からなる電磁石を支持する支持部材として機能する。ベース15は、鉄芯13およびスプール16の下側に設けられ、ヨーク12、鉄芯13およびスプール16を下方から支持する。また、ベース15は、カバー17の開口部を閉塞する。スプール16は、励磁コイル11の上側、下側および内周側に沿って配置されており、励磁コイル11を鉄芯13の周囲の所定位置に固定する。
【0024】
これらベース15、スプール16およびカバー17は、導電性を有しない絶縁材料、例えば樹脂等で形成されている。かかる非導電性のベース15、スプール16を用いて、導電性を有する励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13、コイル用端子14、固定端子20および可動端子30などの金属製部品を支持することにより、これら金属製部品間の短絡を防止できる。
【0025】
カバー17は、例えば、メインリレー10の上部側(例えば、ベース15より上側の部分)を覆うキャップであり、メインリレー10内の各種部品を保護する。励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13、ベース15およびスプール16と、固定端子20および可動端子30の上部は、カバー17の内部に収容されている。一方、固定端子20および可動端子30の下部(端子部22、端子部32)と、一対のコイル用端子14は、カバー17の外部に露出している。これら4極の端子は、例えば、リレーボックス8内に設けられるコネクタ(図示せず。)に対して着脱可能に接続されている。ストッパー18は、可動端子30の接点部36の上方に配置され、可動端子30の可動範囲を規制する。
【0026】
固定端子20は、メインリレー10の一側(例えば、図2の左側)に配置される。可動端子30は、メインリレー10の他側(例えば、図2の右側)に配置される。固定端子20および可動端子30は、ベース15により支持および固定されている。固定端子20および可動端子30は、導電性を有する材料、例えば、銅、鉄、りん青銅などの金属材料で形成されている。固定端子20および可動端子30は、上記電源7の電力を電気負荷6に供給するための電気回路の一部を構成する。
【0027】
固定端子20は、メインリレー10内に固定的に設置される端子であり、可動部を有していない。固定端子20は、例えば、1つの金属部品で一体構成されてもよいし、複数部品を組み合せて構成されてもよい。
【0028】
固定端子20は、ベース部21と、端子部22と、フランジ部23と、接点部26と、とを備える。
【0029】
ベース部21は、固定端子20の本体を構成する部分である。ベース部21は、メインリレー10内の一側(例えば、図2の左側)において、上下方向に延設される。ベース部21の下部側には、端子部22が設けられている。端子部22は、ベース部21から下方に延設されて、カバー17の外部に露出する部分であり、上記コネクタ等に接続される。ベース部21の上部側には、接点部26を設置するためのフランジ部23が設けられている。フランジ部23は、例えば、ベース部21の上端部を曲げて水平方向に延びるように設けられる。
【0030】
固定端子20のフランジ部23の上面には、接点部26が設けられている。接点部26は、後述する可動端子30の接点部36に対向する位置に配置される。接点部26は、可動端子30に対する固定端子20の接点となる部分である。
【0031】
ここで、図2図7を参照して、本実施形態に係る固定端子20のベース部21の特徴について説明する。図7は、比較例に係る固定端子20を備えたメインリレー10を示す縦断面図である。なお、図7の比較例では、本実施形態に係る氷結対策構造50は設けられていない。
【0032】
一般的には、製造容易性の観点から、図7の比較例に示すように、固定端子20のベース部21は、下端の端子部22から上端のフランジ部23まで1つの連続した部材で一体形成される。この場合、極低温環境下において、車両1の走行風などにより固定端子20の下端の端子部22が氷点下以下の低温に冷却されると、当該冷却熱は、端子部22から、1つの部材で一体形成されたベース部21を介して、上端のフランジ部23および接点部26まで伝わりやすい。このため、固定端子20の接点部26が低温に冷却されて、接点部26に結露および氷結が発生しやすい。
【0033】
これに対し、本実施形態に係る固定端子20のベース部21は、図2に示すように、第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとに分割されており、2つの非連続な部材から構成される。第1ベース部21Aは、ベース部21の上側部分を構成する部材であり、第1ベース部21Aの上部はフランジ部23に接続されている。第2ベース部21Bは、ベース部21の下側部分を構成する部材であり、第2ベース部21Bの下部は端子部22に接続されている。
【0034】
第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとの間には、ギャップ27が形成されている。ギャップ27は、ベース部21の途中を分断するための隙間である。このギャップ27により、第1ベース部21Aと第2ベース部21Bが相互に接触することなく、上下に分断される。かかるギャップ27をベース部21の途中に設けることにより、第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとの間で、直接的な電気的接続や熱の伝達が遮断される。そして、本実施形態に係る固定端子20のベース部21には、ギャップ27を跨ぐようにして第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを間接的に接続する氷結対策構造50が設けられている。
【0035】
このように、本実施形態に係る固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bは、直接的に接続されておらず、氷結対策構造50を介して間接的に接続される。氷結対策構造50は、ギャップ27を跨ぐように設置される開閉端子52A、52B(図3図4参照。)などから構成される。氷結対策構造50は、第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとを接続する接続回路として機能するとともに、当該接続回路の接続態様を切り替えるためのスイッチ機構としても機能する。この氷結対策構造50の詳細については後述する。
【0036】
次いで、図2を参照して、本実施形態に係る可動端子30について説明する。図2に示すように、可動端子30は、ベース部31と、端子部32と、可動部33とを備える。可動部33は、板バネ34と、可動板35と、接点部36とからなる。
【0037】
ベース部31は、可動端子30の本体を構成する部分である。ベース部31は、メインリレー10内の他側(固定端子20のベース部21とは反対側。例えば、図2の右側)において、上下方向に延設される。ベース部31の下部側には、端子部32が設けられている。端子部32は、ベース部31から下方に延設されて、カバー17の外部に露出する部分であり、上記コネクタ等に接続される。ベース部31の上端には、例えば鉤型に湾曲した係止部31aが設けられている。係止部31aは、可動部33の可動板35の一端部を抱え込むようにして係止する。
【0038】
可動部33は、メインリレー10のスイッチを開閉(即ち、リレーオンまたはオフ)するための可動部材である。可動部33は、メインリレー10内の上部において、左右方向に延びるように配置される。可動部33は、例えば、ベース部31の係止部31aを支点として、回動可能に設けられる。
【0039】
可動部33は、板バネ34により可動板35と接点部36とが連結された構造を有する。板バネ34の基端は、上記ベース部31の係止部31aに固定されている。板バネ34の先端は、自由端であり、固定端子20の接点部26の上方に配置される。板バネ34は、例えば、りん青銅などのように、電気抵抗が小さく、ある程度の剛性を有する金属材料で形成される。
【0040】
可動板35は、例えば、板バネ34よりも厚い平板状の金属板で構成され、板バネ34の下面側に取り付けられる。可動板35の一端部は、ベース部31の係止部31aにより係止される。可動部33が回動したときに板バネ34が撓みすぎないように、可動板35は、板バネ34を補強する機能を有する。
【0041】
可動部33の先端部(例えば、板バネ34の先端部)には、接点部36が設けられている。接点部36は、前述の固定端子20の接点部26の上方において、当該接点部26に対向する位置に配置される。接点部36は、固定端子20に対する可動端子30の接点となる部分である。
【0042】
固定端子20の接点部26と、可動端子30の接点部36は、例えば、銅などの耐熱性を有する金属材料で形成されることが好ましい。これにより、通電時における接点部26および接点部36の焼き付きを抑制することができる。
【0043】
以上のような構成のメインリレー10によれば、電磁石の磁力により、可動端子30の接点部36を固定端子20の接点部26に対して近接または離間させて、メインリレー10のスイッチを開閉(即ち、リレーオンまたはオフ)することができる。
【0044】
具体的には、励磁コイル11の非通電時(リレーオフ時)には、励磁コイル11の電磁誘導作用が生じず、励磁コイル11、ヨーク12、鉄芯13等からなる電磁石に磁力が発生しない。このため、可動端子30の可動部33は、板バネ34の付勢力により上方に回動した状態となり、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26とは離間して、非接触状態となる(図2の実線で示す状態。)。この結果、可動端子30と固定端子20が通電せず、メインリレー10のスイッチがオフの状態となり、電気負荷6と電源7とが電気的に切り離されて、電気負荷6に対する電力供給が遮断される。
【0045】
なお、リレーオフ時に、上方に向けて移動した可動端子30の接点部36は、当該接点部36の上方に配置されたストッパー18に当接する。これにより、当該接点部36の上方への移動量がストッパー18により規制される。
【0046】
一方、励磁コイル11の通電時(リレーオン時)には、励磁コイル11の電磁誘導作用により、上記電磁石は、可動端子30の可動部33を固定端子20に近づける方向の磁力を発生させる。この磁力により、板バネ34の付勢力に抗して、可動端子30の可動部33を下方に回動させる力が作用する。これにより、可動端子30の可動部33が固定端子20に向けて下方に移動して、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26とが接触する接触状態となる(図2の二点鎖線で示す状態。)。この結果、可動端子30と固定端子20とが通電して、メインリレー10のスイッチがオンの状態となり、電気負荷6と電源7とが電気的に接続されて、電気負荷6に対して電力が供給される。
【0047】
なお、可動端子30の板バネ34は、ある程度の柔軟性および弾性を有する薄い金属板で形成されている。このため、リレーオン時に、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26とが接触状態となるとき、板バネ34により接点部36が接点部26に押し付けられる。これにより、両接点部26、36間の寸法差や設置誤差等を吸収して、両接点部26、36同士を安定的に接触させることができる。
【0048】
[3.リレーの氷結対策構造の背景と目的]
次に、図2(本実施形態)と図7(比較例)を参照して、本実施形態に係るメインリレー10の特徴である氷結対策構造50の背景と目的について説明する。
【0049】
上述したように、メインリレー10は、励磁コイル11に対する通電が制御されることにより、可動端子30の接点部36を固定端子20の接点部26に対して近接または離間させる方向に移動させて、メインリレー10のスイッチングのオンとオフを切り替える。
【0050】
このようなメインリレー10では、寒冷地または早朝等の低温環境下(例えば、外気温が氷点下)、特に極低温環境下(例えば、外気温が-30℃~-10℃)において、固定端子20の接点部26と可動端子30の接点部36(以下、「リレー端子接点」と総称する場合もある。)に、結露水由来の氷結が発生して、リレー端子接点間の接触不良の問題が生じることがある。例えば、外気温の変化や湿度の変化の激しい極低温環境下では、メインリレー10のカバー17内における空気雰囲気19(以下、「リレー内部雰囲気19」と称する場合もある。)中の水分などが結露して、固定端子20の接点部26または可動端子30の接点部36に対して付着および氷結する。このため、図7に示すように、当該結露水の氷結により接点部26、36の表面に氷結層60が形成されてしまい、接点部26、36が接触不良となることがある。その結果、メインリレー10のスイッチングをオンにしたとしても、氷結層60によりリレー端子接点が通電しないため、エンジン、モータの制御装置等の電気負荷6に対して電力が供給されず、始動性不良等の不具合が発生する場合がある。
【0051】
特に、例えば図7に示すような構造のメインリレー10では、固定端子20の構成部品数は可動端子30よりも少なく、固定端子20の部品長は可動端子30よりも短い。このため、メインリレー10のカバー17外に露出した端子部22が極低温の外気に晒されると、端子部22からベース部21を通じた冷却熱の伝熱により、固定端子20の接点部26は、可動端子30の接点部36よりも低温になりやすく、氷結の可能性が高くなる。したがって、図7に示すように、リレー内部雰囲気19よりも低温化した固定端子20の接点部26を覆うようにして、結露水の氷結層60が形成されやすい。この結果、固定端子20の接点部26と可動端子30の接点部36との間に接触不良が生じ、スイッチとしての機能を適切に発揮することが困難になってしまう。
【0052】
ここで、リレー端子接点における氷結形成条件と氷結形成メカニズムの具体例について、より詳細に説明する。
【0053】
例えば、極低温環境下において車両1を初始動し、短時間走行した後に、所定時間ソーク(エンジン停止)した場合、リレー端子接点に氷結層60が形成されて、接触不良が生じやすい。このような極低温環境における走行条件下では、車両1の走行時の走行風により、メインリレー10の固定端子20および可動端子30は、極低温に冷却される。一方、リレー内部雰囲気19は、エンジン4の熱により加熱されて、極低温の外気よりも高い温度を有する。このため、上記ソーク中は、リレー端子接点の温度T1よりも、リレー内部雰囲気19の温度T2が高くなっており(T2>T1)、リレー端子接点の温度T1とリレー内部雰囲気19の温度T2との間に温度差ΔT1(ΔT1=T2-T1)が生じる。例えば、寒冷地では、温度差ΔT1が10℃以上になる場合もある。
【0054】
したがって、上記ソーク中において、当該温度差ΔT1が所定の閾値(例えば、約6℃)以上になった場合、リレー内部雰囲気19中の水分が結露してリレー端子接点に付着し、さらに、当該結露水が冷却されて氷結し、リレー端子接点の表面に氷結層60が形成されてしまう。この際、上述したように、可動端子30は、固定端子20よりも構成部品が多く、走行風による冷却熱の伝達を低減しやすい構造であるため、可動端子30の接点部36よりも固定端子20の接点部26の方が氷結しやすい。
【0055】
上記のような氷結形成条件およびメカニズム等によって、極低温環境下において、リレー端子接点に結露水由来の氷結が発生して、リレー端子接点の接触不良の問題が生じることがある。
【0056】
かかる課題を解決するために、本実施形態に係るメインリレー10は、極低温環境下の熱(冷却熱)を利用した氷結対策構造50を備える。氷結対策構造50は、制御装置等を使用しない簡易な機械的構造からなり、極低温環境下における冷却熱を利用して、氷結対策構造50が具備する熱変形機構を熱変形させることを特徴とする。本実施形態に係るメインリレー10は、氷結対策構造50を用いて、リレー端子接点の結露および氷結を防止して、極低温環境下における氷結に起因するリレー端子接点の接触不良を回避することができる。本実施形態に係る氷結対策構造50について、以下に詳述する。
【0057】
[4.リレーの氷結対策構造]
次に、図3および図4を参照して、本実施形態に係るメインリレー10の氷結対策構造50の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る通常環境下における氷結対策構造50の状態を示す縦断面図である。図4は、本実施形態に係る極低温環境下における氷結対策構造50の状態を示す縦断面図である。なお、図3図4は、図2に示すメインリレー10のうち、氷結対策構造50とその周辺部分を拡大したものである。
【0058】
図3および図4に示すように、本実施形態に係る氷結対策構造50は、極低温環境下で自律的に変形する熱変形機構を備える。熱変形機構は、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する一対の開閉端子52A、52Bを開閉可能に構成されている。本実施形態に係る熱変形機構は、一対の熱変形部材56A、56Bから構成される。
【0059】
本実施形態に係る氷結対策構造50は、一対の開閉端子52A、52Bと、ヒートシンク54と、一対の熱変形部材56A、56B(熱変形機構)と、固定端子20のベース部21の途中に形成されたギャップ27とを備える。以下に、氷結対策構造50の各構成要素について詳述する。
【0060】
(1)開閉端子
一対の開閉端子52A、52B(以下、「開閉端子52」と総称する場合もある。)は、メインリレー10のカバー17の内部において、固定端子20のベース部21のギャップ27を跨ぐように並設される。ギャップ27は、固定端子20のベース部21の途中を分断する隙間であり、このギャップ27により、ベース部21は第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとに分割される、
【0061】
開閉端子52A、52Bは、ギャップの27の両側にそれぞれ取り付けられ、相互に接離自在に構成されている。一方の開閉端子52Aは、ギャップ27の上側の第1ベース部21Aの下端部に取り付けられ、他方の開閉端子52Bは、ギャップ27の下側の第2ベース部21Bの上端部に取り付けられる。なお、本実施形態では、製造容易性の観点から、開閉端子52とベース部21は別部材として構成されており、開閉端子52は、固定端子20のベース部21に対して溶接等により固定される。しかし、かかる例に限定されず、開閉端子52は、固定端子20のベース部21と一体構成されてもよい。
【0062】
また、一対の開閉端子52A、52Bは、相互に接離自在に構成されている。図3に示すように、開閉端子52A、52Bが相互に接触するとき、開閉端子52A、52Bが閉じた状態となる。一方、図4に示すように、開閉端子52A、52Bが相互に離間するとき、開閉端子52A、52Bが開いた状態となる。このように、開閉端子52が開閉することにより、固定端子20のベース部21のギャップ27を跨ぐ接続回路の接続態様が切り替えられる。
【0063】
各開閉端子52は、板バネ特性と導電性を有する金属部品から構成される。各開閉端子52は、固定端子20のベース部21に対して垂直方向に延びる平板状の端子本体521と、端子本体521から突出する突出部522とを有する。端子本体521の一端(基端部)は、固定端子20のベース部21に固定される固定端となっており、端子本体521の他端(先端部523)は、自由端となっている。突出部522は、端子本体521の途中から内側(ギャップ27側)に向けて突出している。突出部522の突出量は、ギャップ27の上下方向の幅の半分程度である。突出部522の一端(基端部)は、端子本体521に固定される固定端となっており、突出部522の他端(先端部)は、自由端となっている。
【0064】
一方の開閉端子52Aの端子本体521と、他方の開閉端子52Bの端子本体521は、相互に間隔を空けて対向配置され、相互に平行な方向(図示の例では水平方向)に延びるように並設されている。また、一方の開閉端子52Aの突出部522と、他方の開閉端子52Bの突出部522は、それらの先端が相互に当接可能な位置に配置される。図3に示すように、一対の開閉端子52A、52Bが閉じた状態であるときには、当該開閉端子52A、52Bの突出部522、522が相互に当接しており、開閉端子52A、52B全体の断面形状は、H字型となる。一方、図4に示すように、一対の開閉端子52A、52Bが開いた状態であるときには、当該開閉端子52A、52Bの突出部522、522が相互に離間しており、開閉端子52A、52B全体の断面形状は、中央で分断されてH字型から崩れる。
【0065】
開閉端子52は、板バネ特性を有する部材で構成されている。このため、図4に示すように、開閉端子52に外力が作用したときには、開閉端子52は、当該外力の方向に弾性変形可能である。一方、図3に示すように、当該外力が解除されたときには、開閉端子52は、自ら弾性変形して、元の形状に戻る。このとき、一対の開閉端子52A、52Bの端子本体521、521のバネ反力により、突出部522、522が相互に当接する。
【0066】
以上のように、一対の開閉端子52A、52Bは、ベース部21のギャップ27を跨ぐように配置され、第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを電気的に接続する接続回路として機能する。図3に示すように、開閉端子52A、52Bが相互に接触するときには、当該開閉端子52A、52Bのみを介して第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとが接続される短絡回路が構成される。一方、図4に示すように、開閉端子52A、52Bが相互に離間するときには、当該短絡回路は分断されて、後述する迂回回路により第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとが接続される。
【0067】
(2)ヒートシンク
ヒートシンク54は、その広い表面積を利用してリレー内部雰囲気19と効率的に熱交換する機能を有する。ヒートシンク54は、フィン形状を有する導電性の熱交換部材であり、メインリレー10のカバー17内に設けられる。本実施形態の例では、図3および図4に示すように、ヒートシンク54は、上記固定端子20のベース部21のギャップ27およびその周辺に対向する位置において、カバー17の内面に固定されている。しかし、ヒートシンク54の配置は、かかる例に限定されず、後述する熱変形部材56と物理的に接続可能な位置であれば、カバー17内の他の位置に配置されてもよい。
【0068】
ヒートシンク54は、例えば、金属等の導電性材料で形成されており、導電性および伝熱性を有する。例えば、図示の例のヒートシンク54は、フィン形状を有する金属部品で構成されている。ヒートシンク54は、カバー17の内面に固定される平板状の1つの基材541と、基材541からカバー17の内部に向けて突出する複数のフィン542(放熱板)とを有する。複数のフィン542は、上下方向に相互に所定間隔を空けて配列されている。
【0069】
かかる構成により、ヒートシンク54の表面積が広くなるので、ヒートシンク54は、リレー内部雰囲気19と、効率良く熱交換可能である。例えば、図3に示す開閉端子52A、52Bが閉じた状態(通常環境下)では、固定端子20から分離されたヒートシンク54が、リレー内部雰囲気19と熱交換することにより、ヒートシンク54自体の温度がリレー内部雰囲気19の温度T2と同程度に近づく。これにより、図4に示す開閉端子52A、52Bが開いた状態(極低温環境下)では、上記通常環境下でヒートシンク54に蓄えた熱を、熱変形部材56および開閉端子52を通じて固定端子20に伝達して、固定端子20の温度が極低温にまで低下しないように保温することができる。
【0070】
また、図4に示す極低温環境下では、固定端子20の第2ベース部21Bから伝わる冷却熱が、固定端子20の第1ベース部21Aや接点部26よりも先にヒートシンク54に伝わる。このため、ヒートシンク54の温度は、固定端子20の接点部26の温度よりも低くなりやすい。そうすると、リレー内部雰囲気19中の水分は、接点部26よりもヒートシンク54の表面に付着して結露しやすくなる。したがって、ヒートシンク54によりリレー内部雰囲気19中の湿度を吸収できるので、接点部26に水分が付着して結露することを抑制することもできる。
【0071】
(3)熱変形部材
一対の熱変形部材56A、56B(以下、「熱変形部材56」と総称する場合もある。)は、一対の開閉端子52A、52Bを開閉可能に構成された熱変形機構の一例である。一対の熱変形部材56A、56Bは、カバー17内において、上記ヒートシンク54に接続され、相互に離間して並設される。
【0072】
一対の熱変形部材56A、56Bは、例えば、同一形状を有する板状の金属部材で構成される。一方の熱変形部材56Aと、他方の熱変形部材56Bは、相互に間隔を空けて対向配置され、相互に平行な方向(図示の例では水平方向)に延びるように並設されている。各熱変形部材56の一端(基端部)は、ヒートシンク54に固定される固定端となっており、各熱変形部材56の他端(先端部563)は、自由端となっている。このように、各熱変形部材56の全体がヒートシンク54に固定されるのではなく、各熱変形部材56の一側の基端部のみがヒートシンク54に固定されている。各熱変形部材56の他側の先端部563は、何れの部材にも固定されておらず、自由に変形可能になっている。
【0073】
各熱変形部材56は、ヒートシンク54の上下方向の中央部から開閉端子52に向けて突出するように配置される。一対の熱変形部材56A、56Bの先端部563、563が、一対の開閉端子52A、52Bの先端部523、523の間に挟まれる位置に配置されるように、熱変形部材56A、56Bの略水平方向の突出量や上下方向の配置が調整されている。
【0074】
熱変形部材56は、自身の温度Tに応じて自律的に熱変形する部材で構成される。熱変形部材56は、温度Tに応じて熱変形する特性を有する金属材料、例えば、バイメタル、形状記憶合金などで形成される。バイメタルは、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせた板状の金属部材である。バイメタルは、2枚の金属板の熱膨張の差により、温度変化に応じて所定方向に反るように湾曲する特性を有する。即ち、バイメタルの温度が高くなるにつれ、熱膨張率が大きい方の金属板が熱膨張率が小さい方の金属板より延びる。このため、バイメタルは、熱膨張率が大きい方の金属板が外側、熱膨張率が小さい方の金属板が内側になって反るように、湾曲変形する。また、形状記憶合金は、所定の温度(変態点)以上では、変形を受けても元の形状に回復する性質を有する合金である。
【0075】
このように、熱変形部材56をバイメタルまたは形状記憶合金などの熱変形性を有する材料で形成することにより、熱変形部材56の温度Tに応じて、熱変形部材56を所定方向に湾曲するように熱変形させることができる。これにより、熱変形部材56の温度Tの所定の閾値T(第1閾値)を基準として、熱変形部材56の形状を、所定方向に湾曲した湾曲形状、または直線状に延びる直線形状のいずれかに変形させることができる。
【0076】
熱変形部材56は、閾値T未満の低温環境下において、先端部563が所定方向に湾曲する特性を有する。そして、一対の熱変形部材56A、56Bは、閾値T未満になったときに、それぞれの先端部563、563が相互に異なる方向に湾曲変形するように構成されている。このため、一対の熱変形部材56A、56Bが湾曲変形したとしても、熱変形部材56Aの先端部563と熱変形部材56Bの先端部563とが相互に接触しない。
【0077】
図3に示すように、通常環境下において、各熱変形部材56の温度Tが閾値T以上である場合、各熱変形部材56の先端部563が略水平方向に真っすぐ延びるように、熱変形部材56が熱変形する。この結果、各熱変形部材56の形状が、略水平方向に真っすぐ延びた直線形状になる。これにより、各熱変形部材56の先端部563は、各開閉端子52の先端部523から離間して、各開閉端子52と非接触状態となる。このように、各熱変形部材56の先端部563が開閉端子52の先端部523と接触せずに離間しているときは、一対の熱変形部材56A、56Bは、一対の開閉端子52A、52Bを開く方向に押圧しない。したがって、図3に示すように一対の開閉端子52A、52Bは、自身の板バネ特性により、相互に接触して閉じた状態となる。
【0078】
一方、図4に示すように、極低温環境下において、各熱変形部材56の温度Tが閾値T未満に低下した場合、各熱変形部材56の先端部563が各開閉端子52の先端部523に向けて反るように、各熱変形部材56が熱変形する。これにより、各熱変形部材56の形状が、各開閉端子52に向けて湾曲した湾曲形状になる。この結果、上側の熱変形部材56Aの先端部563は、上側の開閉端子52Aの先端部523に当接して、当該先端部523を上方向に押圧する。同様に、下側の熱変形部材56Bの先端部563は、下側の開閉端子52Bの先端部523に当接して、当該先端部523を下方向に押圧する。この結果、一対の熱変形部材56A、56Bにより一対の開閉端子52A、52Bが上下逆方向に押圧される。したがって、図4に示すように一対の開閉端子52A、52Bは、相互に離間して開いた状態となる。
【0079】
なお、上記熱変形部材56の熱変形の基準となる温度Tの閾値T(第1閾値)は、固定端子20の接点部26や可動端子30の接点部36が氷結し得る氷点下の所定温度に設定されることが好ましい。閾値Tは、熱変形部材56の材質、形状、変形特性や、熱変形部材56と開閉端子52の配置関係、車両1が使用される温度環境等に応じて、適切な温度に適宜調整されてもよい。閾値Tは、0℃未満、-10℃以上の範囲内の所定温度に設定されることが好ましく、例えば、約-6℃に設定することができる。上記のように、リレー端子接点の温度T1とリレー内部雰囲気19の温度T2との間の温度差ΔT1が6℃以上になると、リレー端子接点が氷結しやすいことを考慮すると、例えば、閾値Tを-6℃程度に設定することが好適である。
【0080】
このように、極低温環境下でリレー端子接点に、結露水由来の氷結層60が形成されるおそれがある場合には、冷却熱により一対の熱変形部材56A、56Bが自律的に熱変形し、一対の開閉端子52A、52Bを開く方向に押圧して、相互に離間させ、開いた状態とする。一方、通常環境下では、一対の熱変形部材56A、56Bが一対の開閉端子52A、52Bと接触しないため、一対の開閉端子52A、52Bは、自身の板バネ特性により自律的に閉じた状態となる。
【0081】
以上のような一対の熱変形部材56A、56Bは、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する接続回路を、短絡回路(図3参照。)と迂回回路(図4参照。)との間で切り替える機能を有する。
【0082】
具体的には、図3に示すように通常環境下においては、熱変形部材56A、56Bは、開閉端子52A、52Bと接触しないので、開閉端子52A、52Bは閉じたままの状態となる。この結果、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する接続回路は、開閉端子52A、52Bのみを介する短絡回路となる。この場合には、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bは、開閉端子52A、52Bのみを介して電気的に接続され、ヒートシンク54および熱変形部材56A、56Bとは、電気的にも物理的にも接続されない。したがって、固定端子20と、ヒートシンク54および熱変形部材56A、56Bとの間で、熱が伝達されない。
【0083】
一方、図4に示すように極低温環境下においては、一対の熱変形部材56A、56Bは、相互に離れる方向に湾曲変形する。これにより、熱変形部材56A、56Bの先端部563、563はそれぞれ、開閉端子52A、52Bの先端部523、523を上下逆方向に押圧して、押し広げる。この結果、開閉端子52A、52Bは相互に離れる方向に弾性変形して、開閉端子52A、52Bが開いた状態となる。したがって、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する接続回路は、開閉端子52A、52B、熱変形部材56A、56Bおよびヒートシンク54を介する迂回回路となる。この場合には、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bは、開閉端子52A、熱変形部材56A、ヒートシンク54、熱変形部材56Bおよび開閉端子52Bを介して電気的に接続される。よって、固定端子20は、開閉端子52A、52Bを介してヒートシンク54および熱変形部材56A、56Bと物理的に接続されるので、固定端子20とヒートシンク54との間で熱が伝達される。
【0084】
[5.リレーの動作]
次に、図2図4を参照して、本実施形態に係るメインリレー10の動作について説明する。
【0085】
(1)通常環境下(熱変形部材56の温度T≧閾値T
まず、図3を参照して、通常環境下(例えば、外気温が-10℃超)におけるメインリレー10の状態と動作を説明する。
【0086】
図3に示すように、通常環境下では、外気温およびリレー内部雰囲気19の温度T2が比較的高い。このため、メインリレー10の内部において、結露水が発生せず、リレー端子接点である固定端子20の接点部26も氷結しない。したがって、特段の氷結対策は不要である。
【0087】
したがって、図3の通常環境下では、メインリレー10は、一般的なメインリレーと同様に動作して、リレーをオンまたはオフする。具体的には、図2に示すリレーオフ時には、可動端子30の可動部33は、固定端子20の接点部26から上方に離間した離間位置(図2の実線で示す位置)に配置されており、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26は非接触状態である。よって、固定端子20と可動端子30は通電せず、電源7から電気負荷6への電力供給が遮断されている。
【0088】
そして、リレーをオンにする時には、励磁コイル11が通電される。すると、電磁石の電磁誘導作用により、可動端子30の可動部33が固定端子20の接点部26に向けて下方に回動して接触位置(図2の二点鎖線で示す位置)に配置され、可動端子30の接点部36が固定端子20の接点部26に近接して接触する。この結果、固定端子20と可動端子30とが通電し、電源7から電気負荷6へ電力が供給される。
【0089】
このような通常環境下におけるリレーオフおよびリレーオンのいずれの場合でも、熱変形部材56の温度Tが閾値T(例えば-6℃)以上であるので、熱変形部材56A、56Bは湾曲変形しない。よって、一対の熱変形部材56A、56Bは、真っすぐ延びた直線形状となり、一対の開閉端子52A、52Bと接触せず、各開閉端子52A、52Bから離間している。このため、一対の開閉端子52A、52Bは相互に接触して、閉じた状態となる。よって、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bは、開閉端子52A、52Bのみからなる短絡回路で電気的に接続される。
【0090】
この場合、熱変形部材56およびヒートシンク54は、固定端子20と物理的に接続されていない。したがって、走行風により固定端子20がある程度冷却されたとしても、その冷却熱は、固定端子20のベース部21から熱変形部材56およびヒートシンク54に伝達されにくい。したがって、ヒートシンク54および熱変形部材56とリレー内部雰囲気19との熱交換により、ヒートシンク54および熱変形部材56の温度Tは、リレー内部雰囲気19の温度T2程度となり、固定端子20の温度T1よりも高温となる。よって、熱変形部材56およびヒートシンク54には、リレー内部雰囲気19の熱が蓄熱される。
【0091】
(2)極低温環境下(熱変形部材56の温度T<閾値T
次に、図4を参照して、極低温環境下(例えば、外気温が-30°~-10℃)におけるメインリレー10の状態と動作を説明する。
【0092】
極低温環境下においては、リレー端子接点の温度T1とリレー内部雰囲気19の温度T2との間の温度差ΔT1が、所定の閾値(例えば、約6℃)未満となる場合がある。この場合、当該温度差ΔT1により、メインリレー10の内部で結露水が発生して、固定端子20の接点部26が氷結する可能性がある。例えば図7の比較例に示すように、もし固定端子20の接点部26が氷結してしまうと、リレーオン時に可動端子30の可動部33が下方に回動したとしても、可動端子30の接点部36と固定端子20の接点部26との間に氷結層60が介在するため、両接点部26、36は通電できない。したがって、極低温環境下では、車両1の走行時の走行風などにより、エンジンルーム3内が極低温に冷却されたとしても、その冷却熱が、メインリレー10のカバー17の外部に露出している固定端子20の端子部22からベース部21を介して接点部26に伝わることを抑制して、接点部26の温度低下を抑制することが求められる。
【0093】
そこで、図4に示すように、本実施形態に係る氷結対策構造50では、上記の極低温環境下において、熱変形部材56の温度Tが閾値T未満になると、一対の熱変形部材56A、56Bが自律的に相互に逆方向に湾曲変形する。これにより、熱変形部材56A、56Bの先端部563、563はそれぞれ、開閉端子52A、52Bの先端部523、523に内側から当接して、外側に向けて押圧し、開閉端子52A、52Bを押し広げる。これにより、開閉端子52A、52Bが相互に離間して、開いた状態となる。
【0094】
この結果、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bは、図3に示す短絡回路(開閉端子52A、52Bのみ)を介して接続された状態から、図4に示す表面積の大きい部材からなる迂回回路(開閉端子52A、熱変形部材56A、ヒートシンク54、熱変形部材56B、開閉端子52B)を介して接続された状態(図4参照。)となる。したがって、第2ベース部21Bから第1ベース部21Aへの冷却熱の伝熱を抑制できるので、第1ベース部21Aや接点部26の温度低下を抑制できる。
【0095】
詳細には、極低温環境下では、図4に示すように、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bが、表面積の大きい迂回回路を介して接続されることになる。つまり、固定端子20の下側の第2ベース部21Bは、開閉端子52B、熱変形部材56B、ヒートシンク54、熱変形部材56A、開閉端子52Aを介して第1ベース部21Aに接続される。これにより、第2ベース部21Bから第1ベース部21Aに伝達される冷却熱は、これらの迂回回路の各部材を伝わる間に、比較的高温のリレー内部雰囲気19と熱交換される(第1の作用)。したがって、第2ベース部21Bの冷却熱が第1ベース部21Aや接点部26に伝達されにくくなるので、固定端子20の接点部26の温度低下を抑制できる。
【0096】
加えて、図4に示す迂回回路が構成された場合、ヒートシンク54が集めたリレー内部雰囲気19の熱が、2つの熱変形部材56A、56Bおよび2つの開閉端子52A、52Bを介して、固定端子20のベース部21に伝わる(第2の作用)。したがって、当該熱により、固定端子20の接点部26の温度低下を抑制できる。
【0097】
このように、極低温環境下においては、上記第1の作用と第2の作用により、固定端子20の接点部26の温度低下を抑制できるので、接点部26の温度T1とリレー内部雰囲気19の温度T2の温度差ΔT1(ΔT1=T2-T1)が小さくなる。したがって、固定端子20の接点部26の結露および氷結を抑制することができる。よって、リレーオン時に、リレー端子接点の接触不良を回避でき、可動端子30と固定端子20とが好適に通電可能になる。
【0098】
[6.まとめ]
以上説明したように、本実施形態に係るメインリレー10によれば、極低温環境下においてリレー端子接点が氷結により接触不良になるという問題の解決手段として、固定端子20のベース部21の途中にギャップ27を設けて、第1ベース部21Aと第2ベース部21Bに分割するとともに、当該ギャップ27を跨ぐようにして第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する氷結対策構造50を設ける。
【0099】
かかる氷結対策構造50により、極低温環境下において、熱変形部材56A、56Bが冷却熱を利用して自律的に変形する。これにより、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとを接続する接続回路を、図3に示す短絡回路(開閉端子52A、52Bのみ)から、図4に示す迂回回路(開閉端子52A、熱変形部材56A、ヒートシンク54、熱変形部材56B、開閉端子52B)に自動的に切り替える。
【0100】
より詳細には、本実施形態に係る氷結対策構造50によれば、図3に示す通常環境下においては、熱変形機構(熱変形部材56A、56B)が熱変形しないため、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとが、短絡回路(即ち、開閉端子52A、52Bのみ)を介して接続される回路構成となる。
【0101】
一方、図4に示す極低温環境下においては、熱変形機構(熱変形部材56A、56B)が熱変形することにより、第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとが、迂回回路(即ち、開閉端子52A、熱変形部材56A、ヒートシンク54、熱変形部材56B、開閉端子52B)を介して接続される回路構成に変化する。
【0102】
これにより、極低温環境下では、固定端子20の下側の第2ベース部21Bから伝達されてくる冷却熱が、表面積の大きな部材からなる迂回回路を介して、第1ベース部21Aに伝達されることになる。したがって、固定端子20の第2ベース部21Bから第1ベース部21Aへの冷却熱の伝達を抑制できる(第1の作用)。さらに、迂回回路のヒートシンク54に蓄積されたリレー内部雰囲気19の熱(リレー内部雰囲気19の温度T2と同程度)を、熱変形部材56および開閉端子52を介して固定端子20に伝達できる(第2の作用)。
【0103】
これら2つの作用により、固定端子20の接点部26の温度低下を抑制できるので、固定端子20の接点部26が結露および氷結することを防止できる。よって、氷結による固定端子20の接点部26および可動端子30(リレー端子接点)の接触不良の問題を回避できる。
【0104】
さらに、本実施形態によれば、極低温環境下において、固定端子20の接点部26よりも先に温度低下したヒートシンク54により、リレー内部雰囲気19中の湿度を吸収できる。したがって、リレー内部雰囲気19中の水分は、固定端子20の接点部26よりもヒートシンク54に付着して結露しやすくなるので、固定端子20の接点部26が結露することを、より効果的に抑制できる。
【0105】
ところで、上記特許文献2に記載のように、熱伝導材が固定接点に常時接続された構造であると、通常環境下や低温環境下における走行風などによる冷却熱が、固定端子を通じて熱伝導材にも伝達されてしまう。このため、固定端子と共に熱伝導材も、リレー内部雰囲気より低い温度に冷えてしまうので、当該冷えた熱伝導材では固定接点の温度低下を抑制できず、固定接点に結露や氷結が生じてしまうという問題があった。
【0106】
これに対し、本実施形態によれば、氷結対策構造50のヒートシンク54および熱変形部材56は、固定端子20に常時接続されておらず、必要に応じて接続される。即ち、リレー端子接点の氷結の可能性が低い通常環境下では(図3参照。)、熱変形部材56が開閉端子52と接触していないため、ヒートシンク54は、固定端子20に接続されていない。これにより、固定端子20の冷却熱がヒートシンク54に伝達されないので、ヒートシンク54の温度低下を抑制できる。さらに、ヒートシンク54の熱が固定端子20に漏れ出さないので、リレー内部雰囲気19の熱をヒートシンク54に効率的に蓄熱することができる。
【0107】
一方、リレー端子接点の氷結の可能性がある極低温環境下では(図4参照。)、熱変形部材56が開閉端子52と接触するため、ヒートシンク54は、熱変形部材56および可動端子30を介して固定端子20に接続される。これにより、通常環境下で蓄熱されたヒートシンク54を用いて、上述した第1および第2の作用によって、固定端子20の接点部26の温度低下を好適に抑制できる。
【0108】
以上のように、本実施形態によれば、氷結対策が必要な場合にだけ、氷結対策構造50のヒートシンク54を固定端子20に接続して、固定端子20の接点部26の氷結防止に活用することができる。
【0109】
[7.第2の実施形態]
次に、図5および図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係るメインリレー10について説明する。図5は、第2の実施形態に係る通常環境下における氷結対策構造50の状態を示す縦断面図である。図6は、第2の実施形態に係る極低温環境下における氷結対策構造50の状態を示す縦断面図である。なお、図5図6は、図2に示すメインリレー10のうち、氷結対策構造50とその周辺部分を拡大したものである。
【0110】
上述した第1の実施形態に係る氷結対策構造50の熱変形機構は、一対の熱変形部材56A、56Bから構成されていた。これに対し、第2の実施形態に係る氷結対策構造50の熱変形機構は、以下に説明するように一対の突出端子58A、58Bと、1つの熱変形部材56から構成される点で、第1の実施形態と相違する。なお、第2の実施形態に係る氷結対策構造50のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質的に同一であるので、それらの詳細説明は省略する。
【0111】
図5および図6に示すように、第2の実施形態に係る氷結対策構造50は、一対の開閉端子52A、52Bと、ヒートシンク54と、1つの熱変形部材56と、一対の突出端子58A、58Bと、固定端子20のベース部21の途中に形成されたギャップ27とを備える。このうち、熱変形部材56および突出端子58A、58Bは、第1の実施形態と相違し、その他の開閉端子52A、52Bおよびヒートシンク54は、第1の実施形態と実質的に同一な構成を有する。
【0112】
第2の実施形態に係る熱変形機構は、極低温環境下で自律的に変形する機構である。熱変形機構は、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する一対の開閉端子52A、52Bを開閉可能に構成されている。第2の実施形態に係る熱変形機構は、1つの熱変形部材56と、一対の突出端子58A、58Bから構成される。
【0113】
一対の突出端子58A、58B(以下、「突出端子58」と総称する場合もある。)は、メインリレー10のカバー17の内部において、上記ヒートシンク54に接続され、相互に離間して並設される。
【0114】
一対の突出端子58A、58Bは、例えば、同一形状を有する板状の金属部材で構成される。例えば、各突出端子58は、板バネ特性と導電性を有する金属部品から構成される。かかる突出端子58は、ヒートシンク54と開閉端子52とを接離自在に連結するための連結端子として機能する。
【0115】
一方の突出端子58Aと、他方の突出端子58Bは、相互に間隔を空けて対向配置され、相互に平行な方向(図示の例では水平方向)に延びるように並設されている。各突出端子58の一端(基端部)は、ヒートシンク54に固定される固定端となっており、各突出端子58の他端(先端部583)は、自由端となっている。このように、各突出端子58の全体がヒートシンク54に固定されるのではなく、各突出端子58の一側の基端部のみがヒートシンク54に固定されている。各突出端子58の他側の先端部583は、何れの部材にも固定されておらず、自由に変形可能になっている。
【0116】
各突出端子58は、ヒートシンク54の上下方向の中央部から開閉端子52に向けて突出するように配置される。一対の突出端子58A、58Bの先端部583、583が、一対の開閉端子52A、52Bの先端部523、523の間に挟まれる位置に配置されるように、突出端子58A、58Bの略水平方向の突出量や上下方向の配置が調整されている。
【0117】
熱変形部材56は、一対の突出端子58A、58Bのうち少なくとも一方に接続される。例えば、図示の例の熱変形部材56は、一対の突出端子58A、58Bの間に懸架されるように配置され、一対の突出端子58A、58Bの双方に接続されている。熱変形部材56の一端(上端部)は、上側の突出端子58Aの下側面に固定され、熱変形部材56の他端(下端部)は、下側の突出端子58Bの上側面に固定されている。
【0118】
熱変形部材56は、自身の温度Tに応じて自律的に熱変形する部材で構成される。熱変形部材56は、温度Tに応じて熱変形する特性を有する金属材料、例えば、バイメタル、形状記憶合金などで形成される。第2の実施形態に係る熱変形部材56は、温度Tに応じて、当該熱変形部材56の長手方向(例えば、図示の上下方向)に伸縮するように変形する。熱変形部材56が伸縮することにより、突出端子58A、58Bの自由端である先端部583、583を、相互に離間または接近させることができる。このように、熱変形部材56は、相互に並設される一対の突出端子58A、58Bの間隔を拡縮する機能を有する。
【0119】
このように、第2の実施形態では、熱変形部材56の温度Tに応じて、平板状の熱変形部材56を長手方向(図示の上位下方向)に伸縮するように熱変形させる。例えば、熱変形部材56の温度Tが所定の閾値T(第1閾値)以上である場合には、図5に示すように熱変形部材56は収縮した形状となる。一方、熱変形部材56の温度Tが閾値T未満である場合には、図6に示すように熱変形部材56は伸張した形状となり、突出端子58A、58Bを押し広げる。
【0120】
より詳細には、図5に示すように、通常環境下において、熱変形部材56の温度Tが閾値T以上である場合、熱変形部材56は収縮しており、熱変形部材56の長手方向の長さは、突出端子58A、58Bの間隔と同程度となる。これにより、突出端子58A、58Bは、水平方向に相互に略平行に延びる形状となる。この結果、突出端子58A、58Bの先端部583、583は、開閉端子52A、52Bの先端部523、523から離間して、各開閉端子52A、52Bと非接触状態となる。このように、各突出端子58A、58Bの先端部583、583が各開閉端子52A、52Bの先端部523、523と接触せずに離間しているときは、一対の開閉端子52A、52Bは、自身の板バネ特性により、相互に接触して閉じた状態となる。
【0121】
一方、図6に示すように、極低温環境下において、熱変形部材56の温度Tが閾値T未満に低下した場合、熱変形部材56は長手方向に伸張し、熱変形部材56の長手方向の長さは、突出端子58A、58Bの間隔よりも大きくなる。これにより、伸張した熱変形部材56によって、一対の突出端子58A、58Bは、相互に異なる方向(例えば、図示の上下方向)に押圧される。このため、突出端子58A、58Bの先端部583、583が相互に離間する方向に変形し、突出端子58A、58Bは、上方向または下方向に湾曲した湾曲形状になる。この結果、上側の突出端子58Aの先端部583は、上側の開閉端子52Aの先端部523に当接して、当該先端部523を上方向に押圧する。同様に、下側の突出端子58Bの先端部583は、下側の開閉端子52Bの先端部523に当接して、当該先端部523を下方向に押圧する。この結果、一対の突出端子58A、58Bにより一対の開閉端子52A、52Bが上下逆方向に押圧される。したがって、図6に示すように一対の開閉端子52A、52Bは、相互に離間して開いた状態となる。
【0122】
このように、第2の実施形態でも、極低温環境下でリレー端子接点に、結露水由来の氷結層60が形成されるおそれがある場合には、冷却熱により熱変形部材56が自律的に熱変形し、一対の突出端子58A、58Bおよび開閉端子52A、52Bを開く方向に押圧して、相互に離間させ、開閉端子52A、52Bを開いた状態とする。一方、通常環境下では、熱変形部材56は一対の突出端子58A、58Bを押し広げないため、一対の開閉端子52A、52Bは、自身の板バネ特性により自律的に閉じた状態となる。
【0123】
以上のように、第2の実施形態に係る熱変形部材56と突出端子58A、58Bとからなる熱変形機構は、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する接続回路を、短絡回路(図5参照。)と迂回回路(図6参照。)との間で切り替える機能を有する。
【0124】
具体的には、図5に示すように通常環境下においては、突出端子58A、58Bは、開閉端子52A、52Bと接触しないので、開閉端子52A、52Bは閉じたままの状態となる。この結果、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する接続回路は、開閉端子52A、52Bのみを介する短絡回路となる。この場合には、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bは、開閉端子52A、52Bのみを介して電気的に接続され、ヒートシンク54および突出端子58A、58Bとは、電気的にも物理的にも接続されない。したがって、固定端子20と、ヒートシンク54および突出端子58A、58Bとの間で、熱が伝達されない。
【0125】
一方、図6に示すように極低温環境下においては、熱変形部材56が伸張して、突出端子58A、58Bの先端部583、583を上下逆方向に押圧して、押し広げる。これにより、突出端子58A、58Bの先端部583、583はそれぞれ、開閉端子52A、52Bの先端部523、523を上下逆方向に押圧して、押し広げる。この結果、開閉端子52A、52Bは相互に離れる方向に弾性変形して、開閉端子52A、52Bが開いた状態となる。したがって、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bを接続する接続回路は、開閉端子52A、52B、突出端子58A、58B、熱変形部材56およびヒートシンク54を介する迂回回路となる。この場合には、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bは、開閉端子52A、突出端子58A、ヒートシンク54、熱変形部材56、突出端子58Bおよび開閉端子52Bを介して電気的に接続される。よって、固定端子20は、開閉端子52A、52Bを介してヒートシンク54および突出端子58A、58Bと物理的に接続されるので、固定端子20とヒートシンク54との間で熱が伝達される。
【0126】
以上説明したように、第2の実施形態に係るメインリレー10によれば、極低温環境下において、熱変形部材56が冷却熱を利用して自律的に伸張するように変形する。これにより、固定端子20の第1ベース部21Aと第2ベース部21Bとを接続する接続回路を、図5に示す短絡回路(開閉端子52A、52Bのみ)から、図6に示す迂回回路(開閉端子52A、突出端子58A、ヒートシンク54、熱変形部材56、突出端子58B、開閉端子52B)に自動的に切り替える。
【0127】
これにより、極低温環境下では、固定端子20の下側の第2ベース部21Bから伝達されてくる冷却熱が、表面積の大きな部材からなる迂回回路を介して、第1ベース部21Aに伝達されることになる。したがって、固定端子20の第2ベース部21Bから第1ベース部21Aへの冷却熱の伝達を抑制できる(第1の作用)。さらに、迂回回路のヒートシンク54に蓄積されたリレー内部雰囲気19の熱(リレー内部雰囲気19の温度T2と同程度)を、突出端子58および開閉端子52を介して固定端子20に伝達できる(第2の作用)。
【0128】
このように第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、上記2つの作用により、固定端子20の接点部26の温度低下を抑制できるので、固定端子20の接点部26が結露および氷結することを防止できる。よって、氷結による固定端子20の接点部26および可動端子30(リレー端子接点)の接触不良の問題を回避できる。
【0129】
さらに、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、極低温環境下において、固定端子20の接点部26よりも先に温度低下したヒートシンク54により、リレー内部雰囲気19中の湿度を吸収できるので、固定端子20の接点部26が結露することを、より効果的に抑制できる。加えて、氷結対策が必要な場合にだけ、氷結対策構造50のヒートシンク54を固定端子20に接続して、固定端子20の接点部26の氷結防止に活用することができる。
【0130】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0131】
例えば、上記実施形態では、車両1に搭載される各種装置の制御装置に対する電力供給をオンまたはオフするためのメインリレー10に適用する例について説明したが、かかる例に限定されない。本発明のリレーは、上記メインリレー10の例以外にも、エンジンルーム3内に設置される各種のリレーに好適に適用可能であり、エンジンルーム3以外にも、車両1の各場所(例えば、車室、トランクルーム、フロア下など)に設置される他のリレーにも適用されうる。
【0132】
また、上記第2の実施形態では、一対の突出端子58A、58Bの内側に、低温時に伸長する変形特性を有する1つの熱変形部材56を設けて、極低温環境下において熱変形部材56が伸張することにより、突出端子58A、58Bを押し広げたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、一対の突出端子58A、58Bの外側に、低温時に収縮する変形特性を有する1つまたは2つ以上の熱変形部材56を設け、極低温環境下において当該熱変形部材56が収縮することにより、突出端子58A、58Bを引き広げてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 車両
6 電気負荷
7 電源
8 リレーボックス
10 メインリレー
17 カバー
20 固定端子
26 接点部
30 可動端子
33 可動部
34 板バネ
35 可動板
36 接点部
50 氷結対策構造
52A、52B 開閉端子
54 ヒートシンク
56A、56B、56 熱変形部材
58A、58B 突出端子
60 氷結層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7