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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017530
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】手持ち式機能器具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/04 20060101AFI20240201BHJP
   B66C 1/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B66C1/04
B66C1/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120225
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】笠原 修
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA03
3F004GA07
3F004LC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】底面に機能面を備えた機能器具本体と、機能器具本体と一体になった把手とを有する手持ち式機能器具において、機能面による不測の事故を防止することのできる手持ち式機能器具を提供すること。
【解決手段】底面に機能面16を備えた機能器具本体2と、機能器具本体2と一体になった把手とを有する手持ち式機能器具1において、機能器具本体2の左右端にそれぞれ設けられたヒンジ50,50により該ヒンジ50,50の軸52,52周りに回動可能に軸支され、機能面16から観音開き式に開閉して、機能面16を被覆状態とする閉位置P1と、機能面16を露出状態とする開位置P2とに選択的に配置可能な左右一対の保護ブロック60,60を備える構成とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に機能面を備えた機能器具本体と、機能器具本体と一体になった把手とを有する手持ち式機能器具において、機能器具本体の左右端にそれぞれ設けられたヒンジにより該ヒンジの軸周りに回動可能に軸支され、機能面から観音開き式に開閉して、機能面を被覆状態とする閉位置と、機能面を露出状態とする開位置とに選択的に配置可能な左右一対の保護ブロックを備えることを特徴とする手持ち式機能器具。
【請求項2】
左右一対の保護ブロックのうち、一方の保護ブロックを閉位置から開位置に配置するときの回動角度、および他方の保護ブロックを閉位置から開位置に配置するときの回動角度が、それぞれ時計回り方向に180度、反時計回り方向に180度である請求項1に記載の手持ち式機能器具。
【請求項3】
左右一対の保護ブロックをそれぞれ開位置と閉位置とにおいて定位置に固定する固定部材を備える請求項2に記載の手持ち式機能器具。
【請求項4】
ヒンジにより該ヒンジの軸周りに回動可能に軸支された左右一対の保護ブロックを、機能器具本体の左右端に固定するための固定部を有し、固定部は、機能器具本体に対して工具無しで着脱自在とされた請求項3に記載の手持ち式機能器具。
【請求項5】
機能面が磁気吸着面である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の手持ち式機能器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち式機能器具に関する。より詳しくは、底面に機能面を備えた機能器具本体と、機能器具本体と一体になった把手とを有する手持ち式機能器具において、機能面の安全性の向上を図った手持ち式機能器具に関する。
【背景技術】
【0002】
底面に機能面を備えた機能器具本体と、機能器具本体と一体になった把手とを有する手持ち式機能器具の一例として、特許文献1の仮設ハンドルがある。この仮設ハンドル90は、図11のように、ベース部材91とグリップ92を備えている。ベース部材91は、磁石吸着性を有する金属製の揚重物93に係脱可能に吸着するものである。グリップ92は、ベース部材91に配置され少なくとも片手で把持可能な把手である。すなわち、ベース部材91の底面が、磁気吸着面として機能する。
【0003】
この仮設ハンドル90によると、鋼板などの揚重物93の玉掛作業を行う際、揚重物93の表面94に仮設ハンドル90を磁気吸着させた後、天井クレーン(図示せず)及びワイヤ95などによって揚重物93を吊り上げる。この場合、仮設ハンドル90のベース部材91の底面の磁力吸着部(磁気吸着面)96を揚重物93の表面94に吸着させることによって仮設ハンドル90を揚重物93に取り付ける。
【0004】
揚重物93の表面94上に取り付けられた仮設ハンドル90は揚重物93と一体化しているので、仮設ハンドル90のグリップ92を作業者が手で把持すれば、作業者の意志により、揚重物93の姿勢を一定状態に保持したり、揚重物93を着床したりするときの位置決めなどを容易に行うことができる。このように、玉掛作業において仮設ハンドル90を使用すれば、作業者が揚重物93やワイヤ95に触れることなく、揚重物93の姿勢調整作業や着床位置調整作業を容易かつ安全に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3212882号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記仮設ハンドル90は、不使用時に磁力吸着部96が常に露出しているため、近辺にある鉄板や工具に不用意に吸着することがある。特に、磁力吸着部96の磁力が強い場合は、磁力吸着部96と吸着物との間に手や指を挟んだときに怪我をすることがある。このような問題は、磁気吸着面を機能面とした上記仮設ハンドルに限らず、機能面が高熱を発する例えばアイロンなどにも当てはまる。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、底面に機能面を備えた機能器具本体と、機能器具本体と一体になった把手とを有する手持ち式機能器具において、機能面による不測の事故を防止することのできる手持ち式機能器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段をとる。なお、本欄(「課題を解決するための手段」の欄)において各構成手段に付した括弧書きの符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すための参考用のものであり、本発明の構成手段をこれに限定するものではない。
【0009】
本発明の一の態様は、底面に機能面(16)を備えた機能器具本体(2)と、機能器具本体(2)と一体になった把手(30)とを有する手持ち式機能器具(1)において、機能器具本体(2)の左右端にそれぞれ設けられたヒンジ(50,50)により該ヒンジ(50,50)の軸(52,52)周りに回動可能に軸支され、機能面(16)から観音開き式に開閉して、機能面(16)を被覆状態とする閉位置(P1,P1)と、機能面(16)を露出状態とする開位置(P2,P2)とに選択的に配置可能な左右一対の保護ブロック(60,60)を備えることを特徴とする。
【0010】
本態様によると、手持ち式機能器具(1)を使用するときは、左右一対の保護ブロック(60,60)をそれぞれ開位置(P2,P2)に配置することで、機能器具本体(2)の機能面(16)を露出状態にできる。また、手持ち式機能器具(1)を使用しないときは、左右一対の保護ブロック(60,60)をそれぞれ閉位置(P1,P1)に配置することで、機能器具本体(2)の機能面(16)を被覆して非露出状態にできる。つまり、使用時以外は機能面(16)を非露出状態とすることができ、機能面(16)による不測の事故を防止することができる。
【0011】
本発明の他の態様では、左右一対の保護ブロック(60,60)のうち、一方の保護ブロック(60)を閉位置(P1)から開位置(P2)に配置するときの回動角度(θ)、および他方の保護ブロック(60)を閉位置(P1)から開位置(P2)に配置するときの回動角度(θ)が、それぞれ時計回り方向に180度、反時計回り方向に180度である。
【0012】
本態様によると、機能面(16)を使用するとき、つまり開位置(P2)としたときに保護ブロック(60,60)が対象物と干渉することがないため、使用時の作業性がよい。
【0013】
本発明の他の態様では、左右一対の保護ブロック(60,60)をそれぞれ開位置(P2,P2)と閉位置(P1,P1)とにおいて定位置に固定する固定部材(71,72)を備える。
【0014】
本態様によると、左右一対の保護ブロック(60,60)が、開位置(P2,P2)で定位置に固定されるので、使用時の作業性がよい。また閉位置(P1,P1)で定位置に固定されるので、持続的に機能面(16)の安全性を確保できる。
【0015】
本発明の他の態様では、ヒンジ(50)により該ヒンジ(50)の軸(52)周りに回動可能に軸支された左右一対の保護ブロック(60,60)を、機能器具本体(2)の左右端に工具無しで着脱自在に固定するための固定部(40)を有する。
【0016】
本態様によると、既存の機能器具本体(2)の構造を変えることなく、機能面(16)の安全性を確保できるようになる。
【0017】
本発明の他の態様では、機能面(16)が磁気吸着面である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、底面に機能面を備えた機能器具本体と、機能器具本体と一体になった把手とを有する手持ち式機能器具において、機能面による不測の事故を防止することのできる手持ち式機能器具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る磁着式の施工器具の外観斜視図である。
図2】施工器具における安全装置から本体を離脱させた状態を示す斜視図である。
図3】本体の三面図である。
図4】安全装置の三面図である。
図5】安全装置における保護ブロックの配置状態を説明するための図である。
図6】施工器具の使用方法を説明するための斜視図である。
図7】施工器具と鉄骨との間に形成される磁気回路を示す側断面図である。
図8】第1変形例の安全装置を示す斜視図である。
図9】第2変形例の安全装置を示す斜視図である。
図10】第2変形例の安全装置を本体に装着した状態を示す斜視図である。
図11】従来の手持ち式機能器具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書では「磁気吸着」のことを単に「磁着」と記すことがある。
【0021】
図1は本発明に係る磁着式の施工器具1の外観斜視図、図2は施工器具1における安全装置3から本体2を離脱させた状態を示す斜視図である。図3は本体2の三面図であり、(a)は正面断面図(図2のA―A線断面図)、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。図4は安全装置3の三面図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。図5は安全装置3における保護ブロック60の配置状態を説明するための図であり、(a)は保護ブロック60を閉位置P1としたときの側面図、(b)は保護ブロック60を開位置P2としたときの側面図、(c)は保護ブロック60を開位置P2としたときの斜視図である。
【0022】
本発明に係る磁着式の施工器具1は、図1のように、本体2と安全装置3を有する。本体2と安全装置3とは、図2のように、工具を使うことなく着脱自在となっている。なお施工器具1は、後述の図6のように、鉄骨4に特殊接着剤5を介して非磁性体の壁材6を施工するときに使用する器具である。
【0023】
本体2は、図2,3のように、ケーシング10と、ケーシング10の内部に配置された一対の永久磁石20,20と、ケーシング10の上部にケーシング10と一体になって設けられた把手30とを備える。
【0024】
〔ケーシング〕
ケーシング10は、アルミニウム、合成樹脂などの非磁性材からなる中空直方体形状の箱体であり、図3のように、上部が開口した箱状のケーシング本体11と、ケーシング本体11の開口を閉塞する蓋体12とを備える。蓋体12は、その長手方向両側に厚み方向に貫通するボルト孔121を備え、四隅にビス孔122を備える。ケーシング本体11及び蓋体12の肉厚は、内部の永久磁石20の磁束が十分に透過できる厚さ、例えば1~3mm程度とされる。
【0025】
〔永久磁石〕
永久磁石20は、ブロック型のネオジム磁石からなり、一方の面にN極、反対の面にS極を有するとともに、中心部に厚み方向に貫通するボルト孔21を備える。永久磁石20は、ケーシング本体11内における長手方向両側に互いに間隔をあけて左右対称に配置される。一方の永久磁石20は、N極を底部側に向けて固定配置され、他方の永久磁石20は、S極を底部側に向けて固定配置される。
【0026】
〔把手〕
把手30は、2つのベースヨーク31,31と結合ヨーク32とを有する。ベースヨーク31はブロック型の中密体であり、厚み方向に貫通するボルト孔311を中心に備える。結合ヨーク32は直方体形状の中密体であり、長手方向両側に厚み方向に貫通するボルト孔321,321を備える。いずれも磁性金属、例えばフェライト系ステンレス鋼SUS434やスチールを材質とする。
把手30は、2つのベースヨーク31,31を結合ヨーク32で連結した構成とされる。具体的には、互いに間隔をあけて配置した2つのベースヨーク31,31を架橋する形で結合ヨーク32が連結し、その正面視形状は、「コ」の字を反時計方向に90度回転させたものとされる。
【0027】
以上に示した各構成品は、左右両側について、下から永久磁石20、蓋体12、ベースヨーク31、結合ヨーク32の順に、各ボルト孔21,121,311,321が同軸となるように配置した後、これら各ボルト孔に皿頭付のボルト14を挿通させ、ナット15で締結する。そして蓋体12のビス孔122に挿入したビス13により、蓋体12をケーシング本体11に固定して組立てる。このように組み立てられた本体2は、ケーシング10内の永久磁石20,20により、ケーシング10の底面が強力な磁気吸着面16となる。
【0028】
〔安全装置〕
安全装置3は、図2,4のように、固定部40とヒンジ50,50と保護ブロック60,60を備える。ヒンジ50及び保護ブロック60は、側面視した場合、図4(c)のように、固定部40の左右に対称となるように設けられる。
【0029】
〔固定部〕
固定部40は、図4(b)のように、弾性バンド41と側板42を備える。
弾性バンド41は、リング状のゴムバンド(可撓性無端状)であり、本体2におけるケーシング10の4つの側面を囲曉するとともに弾性収縮力で締結できるサイズとされる。より具体的には、厚さ1~3mm程度の扁平ゴムからなり、縦幅はケーシング10の縦幅よりも若干短い。また全周の長さは、弾性に抗して伸張拡開させない状態で、ケーシング10の周囲長より若干短い。材質は、シリコンゴム、合成ゴム、天然ゴムなどとされる。なお布ゴムのバンドをリング状に形成したものを使用してもよい。
【0030】
側板42は、磁性金属を材質とした長方形の可撓性平板状体であり、そのサイズは、縦幅については弾性バンド41と同じであり、横幅についてはケーシング10の長手方向長さと同じである。例えば厚さ0.2~0.5mm程度のシート状のスチールを上記形状に切断加工したものである。2枚の側板42,42は、弾性バンド41における両側に鏡像対称となるように固着される。すなわち、2枚の側板42,42の一方の側板42の中心と他方の側板42の中心との弾性バンド41に沿った中心間距離は、無端の環状となった弾性バンド41の左右または上下で等しい。つまり右回りに測っても左回りに測っても等しい。固着は、例えば弾性バンド41の表側面にシート状のスチールの片面を接着剤により接着することで行う。
【0031】
〔ヒンジ〕
側板42の長手方向中央部にはヒンジ50が取り付けられる。
ヒンジ50は、例えば一対のプラスチツクのヒンジ片51,51と、鉄製の芯棒52とからなる。一対のヒンジ片51,51は、相互に対称のため一方についてのみ説明する。ヒンジ片51は、図2のように、平板部53と円筒部54からなる。
円筒部54は、平板部53の一端部表面側に突出して平板部53と一体形成され、芯棒52が一対のヒンジ片51,51のそれぞれを同軸状態にて挿通できるようにする部位である。このような構成により、ヒンジ50単体としては、一方のヒンジ片51が、他方のヒンジ片51に対して芯棒52を軸として相対的に360度回動可能となっている。つまり、一方のヒンジ片51と、他方のヒンジ片51とのなす角度φは0~360度となる。
【0032】
〔保護ブロック〕
保護ブロック60は、本体2の不使用時に本体2の磁着面16を被覆して、磁着面16から発する磁力による危険を防止する部材であり、非磁性体からなる直方体形状の中密体からなる。材質は、軽量でかつ軟質のもの、例えばポリウレタン、ポリスチレン、合成ゴムなどが好ましく、発泡材を用いてもよい。
【0033】
保護ブロック60と側板42とは、次の形態でヒンジ50により連結される(図4(c)参照)。すなわち、一対のヒンジ片51,51のうち、一方のヒンジ片51は、側板42の長手方向中央位置において、該ヒンジ片51の裏面に接着剤を介して、側板42に固着される。他方のヒンジ片51は、保護ブロック60の長手方向中央位置において、該ヒンジ片51の裏面に接着剤を介して、保護ブロック60の側面62に固着される。更に具体的には、本体2の磁着面16に対応した長方形状に開口させた固定部40における側板42の表面と、保護ブロック60の側面62とがほぼ面一となる状態で、角度φを180度としたヒンジ50に連結している。
【0034】
このような構成により、保護ブロック60は、ヒンジ50の芯棒52を軸として側板42に対して相対的に180度回動可能となる(図5(b)参照)。つまり、保護ブロック60,60は、本体2に固定部40を装着したとき本体2の左右端にそれぞれ設けられたヒンジ50,50により芯棒52の軸周りに回動可能に軸支され、本体2における磁着面16を次述の被覆状態と露出状態とに選択的に切り替えて配置可能とされる。
【0035】
ここでは、左右の保護ブロック60,60が固定部40の直下にあるときを基準に左右の保護ブロック60,60がそれぞれ時計回り方向に180度(回動角度θ=-180度)、反時計回り方向に180度(回動角度θ=180度)回動した状態を「開位置P2」とし(図5(b)参照)、保護ブロック60,60が、回動していない状態(回動角度θ=0度)を「閉位置P1」とする(図5(a)参照)。開位置P2では、本体2に固定部40を装着したとき本体2の着磁面16が露出状態となり、閉位置P1では、着磁面16が被覆状態となる。
【0036】
保護ブロック60における上面61の面積は、本体2に固定部40を装着し閉位置P1としたときの、2つの保護ブロック60,60を合わせた総面積として、本体2における磁着面16の少なくとも90パーセントを被覆できる広さを有することが好ましい。これは、施工器具1を例えば水平面上に置いたときの安定性を良くするためと、2つの保護ブロック60,60間の隙間63(図4(c)参照)から磁性部品等が入り込んで磁着面16に吸着されるのを防ぐためである。また軟質な材質を用いることで、目的としない磁性体に磁吸したときの衝撃を和らげることができる。
【0037】
〔マグネットシート片〕
保護ブロック60,60における側面62,62の中央に設けられたヒンジ50,50の両側には、一定距離をおいてマグネットシート片71,71が取り付けられる。このマグネットシート片71,71は、保護ブロック60,60を開位置P2,P2としたときに側板42,42に磁着させるためのものである。
更に、保護ブロック60,60の上面61,61における長手方向両側部には、マグネットシート片72,72が取り付けられる。このマグネットシート片72,72は、保護ブロック60,60を閉位置P1,P1としたときに、本体2に固定部40を装着したときの、本体2における磁着面16に磁着させるためのものである。
【0038】
次に、磁着式施工器具1の使用方法を説明する。
図6は施工器具1の使用方法を説明するための斜視図、図7は施工器具1と鉄骨4との間に形成される磁気回路を示す側断面図である。
【0039】
以下で説明する作業は、具体的には、下地鋼材としての鉄骨4に特殊接着剤5を用いて、非磁性体としての石膏ボード6を張り付ける作業である。この特殊接着剤5は、所定の押圧力を加えることで、短時間で接着強度を増す性質を有する接着剤であり、ここでは両面接着テープタイプとする。
【0040】
まず、図6(a)のように、表面に特殊接着剤5を張り付けた鉄骨4上に石膏ボード6を重ね合わせる。これにより、石膏ボード6は特殊接着剤5に密着し、図6(b)のように、石膏ボード6は鉄骨4に仮止めされた状態となる。
【0041】
この仮止め状態で、施工器具1を用意する。施工器具1は、専用ケース等に保管されているときは、保護ブロック60が閉位置P1とされているため、開位置P2とする(図5(c)参照)。開位置P2では、マグネットシート片71,71が側板42,42に磁着し、保護ブロック60,60は定位置に固定される。そして図6(c)のように、施工器具1の磁着面16を石膏ボード6に近づけて、石膏ボード6の表面のうちの鉄骨4が存在する部分に配置する。このとき、図7のように、施工器具1の一方の永久磁石20、一方のベースヨーク31、結合ヨーク32、他方のベースヨーク31、他方の永久磁石20及び鉄骨4は、これらを磁束密度の高い磁束MFが通過する磁気回路を形成する。石膏ボード6の厚みをエアーギャップとする磁気回路である。その結果、施工器具1が鉄骨4に大きな力で磁気吸着されることとなり、強い押圧力によって、石膏ボード6を鉄骨4に押し付けることが可能となる。
【0042】
この状態で、図6(c)の矢印で示すように、施工器具1を下方に移動させることにより、施工器具1が鉄骨4に対して石膏ボード6を押さえ付ける領域が、鉄骨4に沿って移動することとなる。
【0043】
これにより石膏ボード6のうちの、特殊接着剤5を介して鉄骨4に対向する部分が均等な強い押圧力で押圧されることとなり、特殊接着剤5により石膏ボード6が1本の鉄骨4に本付けされることとなる。
【0044】
その後、石膏ボード6が本付けされた鉄骨4の隣に位置する鉄骨4に対して、石膏ボード6を押さえつける作業を同様に行う。このような作業を繰り返すことにより石膏ボード6を鉄骨4に張り付ける。
【0045】
一連の作業を終えた後は、保護ブロック60,60を閉位置P1,P1として専用ケース等に戻す。閉位置P1,P1では、マグネットシート片72,72が磁着面16に磁着し、保護ブロック60,60は定位置に固定される。
【0046】
このように施工器具1では、鉄骨4に石膏ボード6を押し付ける際に、鉄骨4までの距離が遠くても磁力による大きな押圧力を発生させることができる。また、施工器具1を使用しないときは、2つの保護ブロック60,60を閉位置P1,P1に配置することにより磁着面16を被覆状態とし、施工器具1を使用するときだけ、2つの保護ブロック60,60を開位置P2,P2に配置することにより磁着面16を露出状態とすることができるため、磁着面16による不測の事故を防止することができる。
【0047】
左右一対の保護ブロック60は、開位置P2では、マグネットシート片71,71が側板42,42に磁着することで、定位置に固定されるので、作業性がよい。また、閉位置P1では、マグネットシート片72,72が磁着面16に磁着することで、定位置に固定されるので、持続的に機能面16の安全性を確保できる。
【0048】
また、施工器具1によると、本体2と安全装置3とは、工具を使うことなく着脱自在となっているため、既存の本体2の構造を変えることなく、機能面16の安全性を確保できる。また弾性バンド41を用いるため、本体2のケーシング10に確実に固定することができる。弾性バンド41は伸縮自在なので、サイズの異なるケーシング10への適用も可能である。なお、安全装置3を着脱自在とせずにケーシング本体11の側面にネジ等により一体的に固定することも可能である。
【0049】
〔第1変形例の安全装置〕
図8は第1変形例の安全装置3Aを示す斜視図である。
第1変形例の安全装置3Aでは、安全装置3における側板42に代えて扁平筒42Aを有する。その他の構成は、安全装置3と同様である。
扁平筒42Aは、側板42と同様に、磁性金属からなる長方形状体であるが、内部に弾性バンド41が挿通可能な空間S1を有する。この空間S1を弾性バンド41が挿通している。
【0050】
扁平筒42Aとして、例えば、上記側板42の2倍強の縦幅を有する幅広側板を、その長手方向に平行な中心線で二つ折にして、弾性バンド41を挿通可能に挟持する形で取り付け、折り目と対極する開口端を接着剤により封止するものを用いることができる。
安全装置3では、弾性バンド41の途中に側板42が接着固定されており、側板42の固定されている部分では弾性バンド41はその長手方向に伸縮できないが、安全装置3Aでは弾性バンド41は扁平筒42Aの空間S1を挿通しており一体固定されていないので、弾性バンド41は全体についてその長手方向に伸縮可能である。このため、安全装置3に対して、サイズの異なるケーシングへの適用の範囲も広がる。
【0051】
〔第2変形例の安全装置〕
図9は第2変形例の安全装置3Bを示す斜視図、図10は第2変形例の安全装置3Bを本体2に装着した状態を示す斜視図である。
第2変形例の安全装置3Bでは、安全装置3に対して、固定部40が弾性バンド41を有さない。ケーシング10の側面は、内部の永久磁石20により強い磁着力があるため、側板42は直接にケーシング10の側面に磁着する。第2変形例の安全装置3Bでは、互いに独立した2つの別個体を有する形になるが、弾性バンド41のない分だけ、部品点数が節減される。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、上に開示した実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
すなわち、磁着式の施工器具1の全体または一部の構造、形状、材料、個数、取付位置および適用などは、本発明の主旨に沿って適宜変更可能である。例えば、側板42をシート状のスチールとしたが、マグネットシートとしてもよい。
また、上述の実施形態では、磁着面を機能面とした磁着式の施工器具を示したが、機能面が高熱を発する例えばアイロンなどに適用してもよい。この場合、保護ブロックは耐熱性に優れる例えばセラミックを材質とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
機能面による不測の事故を防止することのできる手持ち式機能器具として幅広く活用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 施工器具(手持ち式機能器具)
2 本体(機能器具本体)
16 磁気吸着面(機能面)
30 把手
50 ヒンジ
52 芯棒(軸)
60 保護ブロック
71 マグネットシート片(固定部材)
72 マグネットシート片(固定部材)
P1 閉位置
P2 開位置
θ 回動角度

図1
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