(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175302
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】推定装置、学習装置、推定方法、学習方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
E21D9/093 D
E21D9/093 B
E21D9/093 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092977
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 浩基
(72)【発明者】
【氏名】陳 剣
(72)【発明者】
【氏名】山本 真哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA02
2D054AC01
2D054AD02
2D054BA03
2D054GA04
2D054GA19
2D054GA25
2D054GA56
(57)【要約】
【課題】同一の掘進方向に対して異なる方向に力点位置が設定されるように推進ジャッキが操作される場合があっても、推進ジャッキの操作を精度よく予測できる学習済モデルを生成する。
【解決手段】シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを取得する取得部と、前記方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定部と、を備え、前記推定モデルは、前記方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを取得する取得部と、
前記方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定部と、
を備え、
前記推定モデルは、前記方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、
推定装置。
【請求項2】
前記シールド掘削機は、中折れ機構を有する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記シールド掘削機が曲線に沿った掘進をする場合に、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定部によって推定された前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を積分することによって、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置を出力する出力部、をさらに備える、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定モデルを生成する学習部を備え、
前記推定モデルは、前記シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、
学習装置。
【請求項6】
前記学習部は、
前記学習データのうち第1学習データを用いて、前記第1学習データにおける前記力点位置が変化した時刻を基準時刻として、前記基準時刻の前又は後に連続する特定の時間区間に、前記力点位置が変化したとする第2学習データを生成し、
前記第2学習データを含む前記学習データを用いて前記推定モデルを生成する、
請求項5に記載の学習装置。
【請求項7】
コンピュータが行う推定方法であって、
取得部が、シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを取得し、
推定部が、前記方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定し、
前記推定モデルは、前記方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、
推定方法。
【請求項8】
コンピュータが行う学習方法であって、
学習部が、シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定モデルを生成し、
前記推定モデルは、前記シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、
学習方法。
【請求項9】
コンピュータに、
シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを取得させ、
前記方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定させ、
前記推定モデルは、前記方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、
プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定モデルを生成させ、
前記推定モデルは、前記シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、学習装置、推定方法、学習方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
シールドマシンの掘進において、AI(機械学習)を利用して掘進の方向を定める推進ジャッキの操作を予測する技術がある。例えば、特許文献1には、指示値や現在値などの方向データに掘進すべき力点の位置座標と対応づけた学習データを機械学習させることによって生成した推定モデルを用いて、力点の位置座標を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シールドマシンの状況によっては、掘進方向と同じ方向に力点を設定せずに、あえて逆方向に設定するような操作が行われる場合がある。例えば、中折れ機構を有するシールドマシンにて、曲線を掘進する操作では、中折れ機構と推進ジャッキのそれぞれの操作を併用して曲線の掘進を行う。中折れ角との関係によっては、曲がりたい方向に力点を設定する場合と、曲がりたい方向とは逆方向に力点を設定する場合がある。
【0005】
同じ掘進方向に対して異なる方向に力点を設定する操作を含む学習データを用いて推定モデルを生成しようとすると、学習データにおけるデータの関係性が複雑になってしまう。関係性が複雑な学習データを学習では力点の予測が難しくなり、精度よく予測することができる推定モデルを生成することが困難になるという問題があった。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明は、同一の掘進方向に対して異なる方向に力点位置が設定されるように推進ジャッキが操作される場合があっても、推進ジャッキの操作を精度よく予測できる学習済モデルを生成することができる推定装置、学習装置、推定方法、学習方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる推定装置は、シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを取得する取得部と、前記方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定部と、を備え、前記推定モデルは、前記方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。
【0008】
本発明の一態様にかかる学習装置は、シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定モデルを生成する学習部を備え、前記推定モデルは、前記シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。
【0009】
本発明の一態様にかかる推定方法は、コンピュータが行う推定方法であって、取得部が、シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを取得し、推定部が、前記方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定し、前記推定モデルは、前記方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。
【0010】
本発明の一態様にかかる学習方法は、コンピュータが行う学習方法であって、学習部が、シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定モデルを生成し、前記推定モデルは、前記シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。
【0011】
本発明の一態様にかかるプログラムは、コンピュータに、シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを取得させ、前記方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定させ、前記推定モデルは、前記方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、プログラムである。
【0012】
本発明の一態様にかかるプログラムは、コンピュータに、シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量を推定する推定モデルを生成させ、前記推定モデルは、前記シールド掘削機が掘進する方向を示す方向データを含む学習用の入力データに前記シールド掘削機が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである、プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同一の掘進方向に対して異なる方向に力点位置が設定されるように推進ジャッキが操作される場合があっても、推進ジャッキの操作を精度よく予測できる学習済モデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】実施形態にかかるシールド掘削機10を説明するための図である。
【
図1B】実施形態にかかるシールド掘削機10を説明するための図である。
【
図1C】実施形態にかかるシールド掘削機10を説明するための図である。
【
図2A】実施形態にかかるシールド掘削機10による掘進を説明するための図である。
【
図2B】実施形態にかかるシールド掘削機10による掘進を説明するための図である。
【
図3】実施形態にかかる推定装置30の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態にかかる推定装置30が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態の変形例において推定装置30が行う処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
<シールド掘削機10について>
まず、実施形態のシールド掘削機10について、
図1(
図1A~
図1C)を用いて説明する。
図1は、実施形態にかかるシールド掘削機10を説明するための図である。
【0017】
図1Aには、シールド掘削機10を側面から見た概念図が示されている。
図1Aに示すように、シールド掘削機10は、前胴部100と、後胴部101とを備える。シールド掘削機10は、前胴部100が後胴部101に対して中折れ機構を介して屈折可能に設けられる。すなわち、シールド掘削機10は、中折れ機構を有する掘削機である。
【0018】
図1Aに示すように、シールド掘削機10は、円筒形のスキンプレート11の後部において、エレクタ(不図示)によりセグメントリングを組み立てて、一次覆工SGを施工しつつ、地山を掘削する。シールド掘削機10には、カッタービット15を備えた環状かつ面板型のカッター16の後部に、チャンバー12が設けられている。チャンバー12内の側壁には複数の土圧計Dが設置される。土圧計Dは、チャンバー12における泥土の圧力(制御土圧)を測定する。チャンバー12には、作泥土材注入管13から添加材14が注入される。チャンバー12内に堆積された掘削土は、練混ぜ翼(不図示)により、添加材14と撹拌されることで練混ぜられ、泥土に変換される。スクリューコンベア17は、チャンバー12の泥土を、排土ゲートGを介してコンベア18に排土する。そして、コンベア18は、スクリューコンベア17より排出された泥土を、コンベア19を介してトンネルの外部に搬出する。架台Mは、スクリューコンベア17と、コンベア18及び19とを支持している。
【0019】
図1Bには、シールド掘削機10を推進させる推進ジャッキを説明する概念図が示されている。
図1Bに示すように、シールド掘削機10には、後述する推進ジャッキ20(以下では、単に、「ジャッキ」と表記する場合がある)が設けられている。推進ジャッキ20は、スキンプレート11の内周を囲むようにして複数設けられる。推進ジャッキ20は、スキンプレート11とセグメントリングとの間に配置される。推進ジャッキ20を、油圧制御などにより伸張する操作がなされることにより、シールド掘削機10の掘進方向及び掘進速度が制御される。この図の例では、シールド掘削機10において22個の推進ジャッキ20が設けられた例が示されているが、この数は限定されない。
【0020】
推進ジャッキ20のうちの何れの推進ジャッキ20を駆動(伸長)するかに応じて、シールド掘削機10が掘削面に作用させる力点の位置座標が設定される。このようにして設定された力点に対応する位置に、推進する圧力がかかることで、シールド掘削機10が推進する方向が設定される。すなわち、推進ジャッキ20のいずれを駆動するかを示すジャッキパターンにより掘進方向が設定される。また、推進ジャッキ20を駆動させる圧力を油圧制御する際の単位時間あたりに供給する油の量(油量)により、掘進速度が設定される。
【0021】
図1Cには、曲線を掘進するシールド掘削機10を俯瞰した様子が模式的に示されている。シールド掘削機10は、曲線区間を掘進する際に、中折れ機構と推進ジャッキ20を併用してカーブの掘進を行う。中折れ機構は、中折れ角を設定する機構である。中折れ角は、前胴部100の掘進方向と、後胴部101の胴面に対して垂直な方向と、がなす角度である。例えば、中折れ機構は、前胴部100と後胴部101との間に設けられた中折れジャッキを操作することによって実現される。具体的には、中折れジャッキのうち、曲線の内側に設けられた中折れジャッキを縮め、外側に設けられた中折れジャッキを伸ばす操作を行うことで中折れ角が設定される。
【0022】
ここで、中折れ機構を併用して曲線を掘進する場合における推進ジャッキ20の操作には、2通りの操作が存在する。1つ目の操作は、曲がりたい方向に力点が設定されるように推進ジャッキ20を操作するものである。2つ目の操作は、中折れ機構によって曲がり過ぎるのを防ぐために、曲がりたい方向とは逆方向に力点が設定されるように推進ジャッキ20を操作するものである。
【0023】
例えば、この図の例では左方向Hにカーブして掘進する様子が示されている。この場合、曲がりたい方向である左方向Hに力点が設定されるように推進ジャッキ20を操作する、「右押」の操作が行われる場合と、右方向に力点が設定されるように推進ジャッキ20を操作する、「左押」の操作が行われる場合がある。
【0024】
このように、同じ掘進方向に対して異なる方向に力点を設定する操作を含む学習データを用いて推定モデルを生成しようとすると、学習データにおけるデータの関係性が複雑になり、精度よく予測することができる推定モデルを生成することが困難になるという問題があった。
【0025】
この対策として、本実施形態では、推定モデルが、力点の位置ではなくその変化量を予測対象とするようにした。力点の位置の方向が異なる場合であっても、その力点の変化量を見れば、掘進方向に対して、同じ方向を示す傾向にあるためである。
【0026】
<掘進方向と力点の関係について>
ここで、
図2(
図2A及び
図2B)を用いて、掘進方向と力点位置及び力点変化量の関係について説明する。
図2は、実施形態にかかるシールド掘削機10による掘進を説明するための図である。
【0027】
図2には、掘進に係る掘進データの時系列変化が示されている。
図2の横軸は時間を示す。
図2の縦軸は掘進データを示す。
図2には、1リング分の掘進データが示されている。すなわち、1つのセグメントリングの幅に相当する距離を掘進するのに、
図2の横軸に設定された時間(掘進時間)を要している。
【0028】
図2では、シールド掘削機10の掘進方向に対して左右方向にx軸方向を設定し、x軸正方向を右側、x軸負方向を左側に設定している。
【0029】
図2に示す掘進データは、力点位置Fx、力点変化量ΔFx、左右ジャッキストローク差現在値、左右ジャッキストローク差指示値、及び、線形(左右ジャッキストローク差指示値)である。
【0030】
力点位置Fxは、力点の位置を示すx座標である。力点変化量ΔFxは、力点位置Fxの変化量である。例えば、
図2Aのように、力点位置Fxが、負の値である場合、力点は左側に設定されており、「左押」の状態である。一方、
図2Bに示すように、力点位置Fxが、正の値である場合、力点は右側に設定されており、「右押」の状態である。
【0031】
左右ジャッキストローク差現在値は、シールド掘削機10の現在位置における掘進方向のx座標である。例えば、
図2に示すように、左右ジャッキストローク差現在値が減少する傾向にある場合、シールド掘削機10の掘進方向は、右から左に変化しており、左側にカーブして掘進している状態である。
【0032】
左右ジャッキストローク差指示値は、現在位置に対応して予め指示されている掘進方向のx座標である。左右ジャッキストローク差指示値は、離散的に設定され、ここでは、セグメントリング単位で設定されている。
図2Aの例では、点P1、P2が、左右ジャッキストローク差指示値である。
図2Bの例では、点P3、P4が、左右ジャッキストローク差指示値である。線形(左右ジャッキストローク差指示値)は、左右ジャッキストローク差指示値を、線形に接続させたものである。
【0033】
図2Aには、左方向にカーブして掘進する際に、「左押」の操作が行われた場合の掘進データの時系列変化が示されている。すなわち、
図2Aにおいて、左右ジャッキストローク差現在値は減少する傾向にあり、力点位置Fxは負の値を推移している。これは、左方向に曲がり過ぎるのを抑えるように、推進ジャッキ20が操作されている状態である。
【0034】
図2Aでは、推進ジャッキ20が、時刻T1~T4のそれぞれにおいて、計4回操作されたことが示されている。推進ジャッキ20が操作される度に、力点位置Fx、力点変化量ΔFxが変化する。力点位置Fxが変化したことに連動して、左右ジャッキストローク差現在値が変化している。
【0035】
時刻T1及びT3では、「左押」の度合いを緩める方向に推進ジャッキ20が操作されている。これは、操作前に、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値(左右ジャッキストローク差指示値)より大きいプラスの状態が継続しており、左に押し過ぎた状態であったことから、現在値を指示値に近づけるために、「左押」の度合いを緩める操作が行われたことを示している。
【0036】
時刻T2及びT4では、「左押」の度合いを強める方向に推進ジャッキ20が操作されている。これは、操作前に、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値(左右ジャッキストローク差指示値)より小さいマイナスの状態が継続しており、左に押しが足りない状態であったことから、現在値を指示値に近づけるために、「左押」の度合いを強める操作が行われたことを示している。
【0037】
図2Bには、左方向にカーブして掘進する際に、「右押」の操作が行われた場合の掘進データの時系列変化が示されている。すなわち、
図2Bにおいて、左右ジャッキストローク差現在値は減少する傾向にあり、力点位置Fxは正の値を推移している。これは、左方向に曲がるように、推進ジャッキ20が操作されている状態である。
【0038】
図2Bでは、推進ジャッキ20が、時刻T5において、「右押」の度合いを強める方向に推進ジャッキ20が操作されたことが示されている。これは、操作前に、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値(左右ジャッキストローク差指示値)より大きいプラスの状態が継続しており、右に押しが足りない状態であったことから、現在値を指示値に近づけるために、「右押」の度合いを強める操作が行われたことを示している。
【0039】
このように、シールド掘削機10が曲線を掘進している状態において、
図2Aに示すように曲がる方向とは逆方向に力点位置Fxが設定される場合と、
図2Bに示すように同方向に力点位置Fxが設定される場合がある。すなわち、左右ジャッキストローク差現在値が減少する場合において、常に力点位置が正の方向に設定されるものではなく、力点位置Fxが負の値に設定される場合がある。
【0040】
オペレータは、左右ジャッキストローク差現在値を、その指示値(左右ジャッキストローク差指示値)に近づくように、推進ジャッキ20を操作する。例えば、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値よりも大きいプラスの状態であれば、力点位置Fxがプラスの方向に移動するように、推進ジャッキ20を操作する。この時、力点位置Fxが負の値であれば、「左押」の度合いを緩める操作を行う。一方、力点位置Fxが正の値であれば、「右押」の度合いを強める操作を行う。このように、力点位置Fxに着目すると、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値よりも大きいプラスの状態であることは同じ状況にも関わらず、「左押」の度合いを緩める操作と、「右押」の度合いを強める操作とが混在し、データの関係性が複雑になってしまう。
【0041】
そこで、本実施形態では、力点変化量ΔFxに着目する。例えば、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値よりも大きいプラスの状態であり、且つ、力点位置Fxが負の値であれば、「左押」の度合いを緩める操作を行う。このとき、力点変化量ΔFxは、プラスの方向に変化する。一方、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値よりも大きいプラスの状態であり、且つ、力点位置Fxが正の値であれば、「右押」の度合いを強める操作を行う。このときも、力点変化量ΔFxは、プラスの方向に変化する。このように、力点変化量に着目すると、左右ジャッキストローク差現在値が、その指示値よりも大きいプラスの状態であれば、力点位置Fxに関わらず、力点変化量ΔFxをプラスの方向に変化させる操作となり、データの関係性が明確である。
【0042】
このように、本実施形態では、水平方向(x軸方向)の力点変化量ΔFxに着目し、推定モデルが力点変化量ΔFxを予測するモデルとなるように学習をさせるようにした。これにより、推定モデルに、対応関係が明確なデータを用いて学習させることができる。このため、予測精度の高い推定モデルを生成することが可能となる。また、鉛直方向(y軸方向)の予測についても、本実施形態を同様に適用することによって予測精度の高い推定モデルを生成することが可能となる。
【0043】
<推定装置30について>
ここで、推定装置30について説明する。推定装置30は、力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定するコンピュータである。推定装置30は、推定モデルを用いて力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定する。推定モデルは、学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。学習データは、シールド掘削機10が掘進に係る学習用の入力データに、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量(力点変化量(ΔFx、ΔFy))が対応づけられたデータである。
【0044】
図3は、実施形態にかかる推定装置30の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、推定装置30は、例えば、操作データ取得部31と、方向データ取得部32と、学習部33と、操作データ記憶部34と、方向データ記憶部35と、学習済モデル記憶部36と、推定部37と、推定結果出力部38と、を備える。
【0045】
操作データ取得部31は、シールド掘削機10の掘進を制御するために行われた操作に係るデータを取得する。操作データ取得部31は、例えば、推進ジャッキ20を操作したデータ、例えばジャッキパターンを示す情報などを取得する。例えば、操作データ取得部31は、オペレータが操作したジャッキパターンを示す情報を取得する。操作データ取得部31は、ジャッキパターンに対応した力点位置を示す情報を取得してもよい。操作データ取得部31は、操作に係るデータを操作データ記憶部34に記憶させる。
【0046】
方向データ取得部32は、シールド掘削機10の掘進方向を示す方向データを取得する。方向データ取得部32は、方向データとして、例えば、左右ジャッキストローク差現在値、左右ジャッキストローク差指示値、を取得する。左右ジャッキストローク差現在値を計測する方法として任意の方法が採用されてよいが、例えば、シールド掘削機10に設置されたジャイロコンパス等の計測機器により計測することができる。一方、左右ジャッキストローク差指示値は、掘進指示書(以下では単に、「指示書」と表記する場合がある)などに基づいて予め定められていることから、その掘進指示書などから指示値を取得することができる。方向データ取得部32は、方向データを、方向データ記憶部35に記憶させる。
【0047】
学習部33は、推定モデルを生成する。推定モデルは、学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。学習データは、方向データを含む学習用の入力データに、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量(力点変化量(ΔFx、ΔFy))が対応づけられたデータである。
【0048】
学習部33は、例えば、過去の操作実績を用いて学習データを生成する。学習部33は、例えば、熟練のオペレータの操作に係る、方向データと力点変化量(ΔFx、ΔFy)とを対応付けたデータを、学習データとして生成する。
【0049】
学習部33は、学習モデルに、学習データを学習させる。学習モデルとして、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、決定木学習、サポートベクタマシンなどの一般的に用いられている学習モデルのいずれを用いてもよい。学習部33は、学習モデルに、学習データを学習させることによって、方向データと力点変化量(ΔFx、ΔFy)との対応関係を学習させる。対応関係を学習することによって、学習モデルは、入力された(未学習の)方向データに基づいて、力点変化量(ΔFx、ΔFy)を、推定できるようになる。学習部33は、学習データを用いて、学習モデルが精度よく力点変化量(ΔFx、ΔFy)を予測できるようになるまで、繰り返し学習させる。学習部33は、学習モデルが精度よく力点変化量(ΔFx、ΔFy)を予測できるようになったら、その学習モデルを、推定モデルとする。学習部33は、推定モデルを学習済モデル記憶部36に記憶させる。
【0050】
推定部37は、推定モデルを用いて、力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定する。推定部37は、学習済モデル記憶部36を参照して、推定モデルに係る情報を取得し、取得した情報にお基づいて、推定モデルを構築する。推定部37は、推定モデルに方向データを入力する。推定モデルは、入力された方向データに基づく力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定し、推定結果を出力する。推定部37は、推定モデルから出力された推定結果を、推定部37が推定する力点変化量(ΔFx、ΔFy)とする。
【0051】
推定結果出力部38は、推定結果を出力する。推定結果出力部38は、例えば、シールド掘削機10の操作室の操作画面に、推定結果としての力点変化量(ΔFx、ΔFy)を表示し、推定結果をオペレータが視認できるようにする。これにより、オペレータは、目標或いは目安となる力点変化量(ΔFx、ΔFy)を把握することができる。すなわち、推定装置30をガイダンスとして利用することができる。
【0052】
或いは、推定結果出力部38は、操作データと力点変化量(ΔFx、ΔFy)に基づいて算出した力点位置(Fx、Fy)を、推定結果として出力するようにしてもよい。この場合、推定結果出力部38は、操作データ記憶部34から現在の力点位置を示す情報を取得する。また、推定結果出力部38は、推定部37が推定した力点変化量(ΔFx、ΔFy)を取得する。推定結果出力部38は、現在の力点位置に、力点変化量(ΔFx、ΔFy)を加算することによって、推定結果としての力点位置を算出する。推定結果出力部38は、推定した力点位置を出力する。推定結果として力点位置が提示されることに慣れているオペレータであれば、力点位置(Fx、Fy)を出力するようにすれば、オペレータは今までと同じ要領で推定装置30をガイダンスとして利用することができる。したがって、現場の状況に応じて、推定結果として出力する指標を、力点位置(Fx、Fy)とするか、力点変化量(ΔFx、ΔFy)とするかを自由に変更することができ、汎用性を向上させることができる。
【0053】
推定装置30記憶部(操作データ記憶部34、方向データ記憶部35、及び学習済モデル記憶部36を含む)は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体、あるいはこれらの組合せによって構成される。推定装置30記憶部は、推定装置30の機能を実現するための各種処理を実行するためのプログラム、及び各種処理を行う際に利用される一時的なデータを記憶する。操作データ記憶部34は操作データを記憶する。方向データ記憶部35は方向データを記憶する。学習済モデル記憶部36は、学習部33が生成した推定モデルを示す情報を記憶する。
【0054】
また、推定装置30が備える機能部(操作データ取得部31、方向データ取得部32、学習部33、推定部37、及び推定結果出力部38)は、推定装置30がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)、及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
【0055】
(推定装置30が行う処理の流れについて)
ここで、
図4を用いて、推定装置30が行う処理の流れについて説明する。
図4は、実施形態にかかる推定装置30が行う処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、推定モデルがすでに生成されていることを前提とする。
【0056】
まず、推定装置30の操作データ取得部31は、操作データを取得する(ステップS10)。次に、方向データ取得部32は、方向データを取得する(ステップS11)。推定部37は、方向データを推定モデルに入力する(ステップS12)。推定部37は、推定モデルから出力された推定結果を、シールド掘削機10が推進すべき力点変化量として推定する(ステップS13)。推定結果出力部38は、操作データ、及び、ステップS13で推定した力点変化量を用いて力点位置を算出し(ステップS14)、算出した力点位置を推定結果として出力する(ステップS15)。
【0057】
以上説明したように、実施形態の推定装置30は、方向データ取得部32(取得部の一例)と、推定部37とを備える。方向データ取得部32は、シールド掘削機10が掘進する方向を示す方向データを取得する。推定部37は、方向データを含む入力データを推定モデルに入力することにより、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量を推定する。推定モデルは、方向データを含む学習用の入力データに、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。
【0058】
これにより、実施形態の10では、方向データに基づいて力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定することができる。シールド掘削機10の状況によっては方向データと力点位置との関係性が複雑となる場合があるが、このような状況下でも方向データと力点変化量との関係性は明確である。このため、同一の掘進方向に対して異なる方向に力点位置が設定されるように推進ジャッキが操作される場合があっても、推進ジャッキの操作を精度よく予測できる学習済モデルを生成することが可能となる。
【0059】
また、実施形態の推定装置30では、シールド掘削機10は、中折れ機構を有する。これにより、中折れ角を操作することによって方向データと力点位置との関係性が複雑となるが、推定モデルに方向データに基づいて力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定させることで推進ジャッキの操作を精度よく予測することが可能となる。
【0060】
また、実施形態の推定装置30では、推定部37は、シールド掘削機10が曲線に沿った掘進をする場合に、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量を推定する。これにより、実施形態の推定装置30では、シールド掘削機10が曲線を掘進することによって方向データと力点位置との関係性が複雑となるが、推定モデルに方向データに基づいて力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定させることで推進ジャッキの操作を精度よく予測することが可能となる。
【0061】
また、実施形態の推定装置30では、推定結果出力部38(出力部の一例)をさらに備える。推定結果出力部38は、推定部37によって推定された、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量(力点変化量(ΔFx、ΔFy))を積分することによって、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置(Fx、Fy)を出力する。これにより、実施形態の推定装置30では、力点位置(Fx、Fy)を推定することができ、操作の目安として力点位置(Fx、Fy)が表示されたほうが操作しやすいオペレータに対応することができ、利便性を向上させることができる。
【0062】
また、実施形態の推定装置30を学習装置として適用することができる。この場合、推定装置30(学習装置の一例)は、学習部33を備える。学習部33は、推定モデルを生成する。推定モデルは、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量を推定するモデルである。推定モデルは、シールド掘削機10が掘進する方向を示す方向データを含む学習用の入力データに、シールド掘削機10が掘進すべき力点位置の変化量が対応づけられた学習データを用いて機械学習を実行することにより生成されたモデルである。これにより、実施形態の推定装置30(学習装置の一例)では、シールド掘削機10の状況によっては方向データと力点位置との関係性が複雑となる場合であっても、推進ジャッキの操作を精度よく予測できる学習済モデルを生成することが可能となる。
【0063】
(実施形態の変形例)
ここで、実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、方向データに、力点変化量(ΔFx、ΔFy)を対応付けた学習データ用いて生成した推定モデルによって推定を行う態様について説明した。学習データの目的変数として力点変化量(ΔFx、ΔFy)を用いることで、上述したように、方向データと力点位置との関係性が複雑となる場合でも操作を精度よく推定可能なモデルを生成することができる。
【0064】
一方、学習データにおける目的変数を力点変化量とする場合、掘進データにおいて力点変化量を示すデータの多くが、0(ゼロ)となってしまう。例えば、
図2Aにおいて、1リングに相当する距離を掘進する間に、推進ジャッキ20が操作された回数は、時刻T1~T4の4回のみであり、時刻T1~T4のそれぞれにおいて力点変化量ΔFxが0(ゼロ)以外の値であるが、その他の時刻において力点変化量ΔFxは0(ゼロ)である。
【0065】
学習データにおいて、力点変化量ΔFxが0(ゼロ)となるデータが多く、力点変化量ΔFxが0(ゼロ)ではないデータが少ない場合、機械学習の過程において過学習が起こり、未知のデータ(未学習の方向データ)に対して力点変化量ΔFxを推定する精度が著しく低下する可能性がある。或いは、常に操作しない、つまり推進ジャッキの操作として力点変化量ΔFxを0(ゼロ)とするように推定するモデルが生成されてしまう可能性が高い。鉛直方向(y軸方向)の力点変化量ΔFyについても、同様の傾向にある。
【0066】
この対策として、本変形例では、学習データを疑似的に増やしてデータ拡張を行うようにした。シールド掘削機10が掘進を行う際、頻繁に推進ジャッキ20が操作されることはほとんどない。このため、操作データは急に変化することはないと考えることが可能である。具体的に、操作データは、シールド掘削機10の掘進に伴った速度で変化する。このため、推進ジャッキ20を操作するべきタイミングは、操作データにおいてオペレータが実際にジャッキを操作した時刻から、ある程度の幅をもつことが予想される。すなわち、オペレータが実際にジャッキを操作した時刻から、ある程度の時間を前後させた時刻にジャッキが操作されたとしても、方向データが著しく変化してしまうことがない。
【0067】
このような観点に基づいて、学習部33は、元の学習データ(第1学習データという)から、第1学習データに用いた操作データにおいて実際にオペレータがジャッキを操作した時刻から、一定時間Nだけ、前(あるいは、後)に対応する時間区間に、ジャッキが操作されたとする、新たな学習データ(第2学習データという)を生成する。これにより、実際の操作実績に基づく第1学習データから、N個の第2学習データを生成することができ、学習データをN倍に増加させることが可能である。
【0068】
図5は、実施形態の変形例において推定装置30が行う処理を説明するための図である。
図5には、サンプリング前の操作フラグデータと、サンプリング後の操作フラグデータが示されている。
【0069】
サンプリング前の操作フラグデータは、実際の操作実績に基づく操作フラグの時系列変化を示すデータである。操作フラグは、操作されたか否かを二値で示す情報である。サンプリング前の操作フラグデータは、第1学習データの目的変数とした操作データに対応する。
【0070】
この図の例では、サンプリング前の操作フラグデータにおいて、時刻t1、及びt2に、操作フラグ(
図5において操作有無と記載)に「1」が設定され、推進ジャッキ20が操作されたことが示されている。操作フラグに「1」が設定されたデータは、「操作有レコード」である。一方、操作フラグに「0(ゼロ)」が設定されたデータは、「操作無レコード」である。
【0071】
サンプリング後の操作フラグデータは、サンプリング前の操作フラグデータに基づいて生成した、「操作有レコード」を増加させたデータである。ここでは、時刻t1、及びt2から、一定時間nsmpだけ前に対応する時間区間を「操作有レコード」として、操作フラグに「1」を設定した例が示されている。サンプリング後の操作フラグデータを用いて、操作データをサンプリングし直した操作データを、学習データにおける方向データに対応づけることによって再ラベリングを行う。これによって、操作タイミングをした学習データ(第2学習データ)を生成することができる。
【0072】
このようにして、学習データをデータ拡張することによって多くの学習データを学習させることができる。これにより過学習を抑制することができ、精度よく力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定できる推定モデルを生成することが可能となる。
【0073】
以上説明したように、実施形態の変形例に係る推定装置30(学習装置の一例)の学習部33は、学習データのうちの第1学習データを用いて、第2学習データを生成する。第2学習データは、第1学習データにおける、力点位置が変化した時刻(
図5の時刻t1、及びt2)を基準時刻として、基準時刻の前、又は後に連続する特定の時間区間、例えば、時刻t1-n
smp~時刻t1、及び、時刻t2-n
smp~時刻t2、において、力点位置が変化したとするデータである。学習部33は、第2学習データを含む学習データを用いて、推定モデルを生成する。これにより、実施形態の変形例に係る推定装置30(学習装置の一例)では、学習データをデータ拡張することができる。これにより多くの学習データを学習させることができ、過学習を抑制することができる。したがって、精度よく力点変化量(ΔFx、ΔFy)を推定できる推定モデルを生成することが可能となる。
【0074】
なお、上述した実施形態では、シールド掘削機10が中折れ機構を有する掘削機である場合を例示して説明したが、これに限定されない。シールド掘削機10が中折れ機構を有していない場合にも適用することができる。
【0075】
また、上述した実施形態では、方向データとして、左右ジャッキストローク差現在値、及び左右ジャッキストローク差指示値を用いる場合を例示して説明したが、これに限定されない。方向データとして、少なくともシールド掘削機10が掘進する方向を示す任意のデータを用いることが可能である。方向データとして、例えば、カッタートルク、カッター速度、推進圧力、推進速度、推進速度指示書逸脱値、制御土圧、切羽土圧平均値指示書範囲外ダミー、アジテータトルク、スクリュー速度、1次スクリュー圧力、2次スクリュー圧力、NO.1コピーストローク、NO.1コピーストローク指示値差、NO.1コピー位置、NO.1コピー位置指示書逸脱値、ピッチング、ピッチング指示値差(ピッチング角誤差)、ローリング、ローリング指示値差、上下中折れ角度、上下中折れ角度指示値差、左右中折れ角度、左右中折れ角度指示値差、S/M前胴方位、S/M前胴方位指示値差、S/M後胴方位、S/M後胴方位指示値差、計画路線水平偏差(水平偏差:管理点)、計画路線垂直偏差(鉛直偏差:管理点)、方位(方位角誤差:管理点)、方位指示値差(管理点)、計画路線方位(管理点)、ピッチ(管理点)、計画路線ピッチ(管理点)などを用いることが可能である。これらの方向データは、学習モデルに学習させる学習データの説明変数として用いることが可能である。
【0076】
上述した実施形態における推定装置30の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10…シールド掘削機、100…前胴部、101…後胴部、20…推進ジャッキ、30…推定装置(学習装置)、31…操作データ取得部、32…方向データ取得部(取得部)、33…学習部、37…推定部、38…推定結果出力部(出力部)