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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175308
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20241211BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20241211BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/09
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092992
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬朗
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA30
3D241BA33
3D241BA60
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DC37Z
3D241DC57Z
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181FF22
5H181FF33
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】工事区間及び走行車線の区画線を跨ぐ停止車両を検出した場合に不要な減速制御の実行を抑制する。
【解決手段】自車両の走行する走行車線上で自車両の前方に停止車両を検出した場合に自車両の減速制御を行う車両制御装置であって、自車両の自動運転中に、走行車線に隣接する工事区間と走行車線との区画線を跨いで停止する車両を停止車両として検出した場合には、停止車両に対する減速制御を行わずに自車両のドライバーに手動運転の開始を求める運転操作交代要求を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行する走行車線上で前記自車両の前方に停止車両を検出した場合に前記自車両の減速制御を行う車両制御装置であって、
前記自車両の自動運転中に、前記走行車線に隣接する工事区間と前記走行車線との区画線を跨いで停止する車両を前記停止車両として検出した場合には、前記停止車両に対する前記減速制御を行わずに前記自車両のドライバーに手動運転の開始を求める運転操作交代要求を行う、車両制御装置。
【請求項2】
前記運転操作交代要求を行ってから前記ドライバーが運転操作を開始するまでの間、前記停止車両及び前記自車両の距離と前記自車両の車速とに基づいて緊急制動条件が満たされたか否かを判定し、
前記ドライバーが運転操作を開始しないまま前記緊急制動条件が満たされた場合には、前記停止車両に対する前記自車両の緊急制動制御を開始する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
自車両の走行する走行車線上で前記自車両の前方に停止車両を検出した場合に前記自車両の運転支援として減速制御を行う車両制御装置であって、
前記走行車線に隣接する工事区間と前記走行車線との区画線を跨いで停止する車両を前記停止車両として検出した場合には、前記停止車両に対する前記減速制御の減速開始タイミングを遅延させ、遅延中に前記停止車両をロストしたときには前記停止車両に対する前記減速制御を行わず、前記停止車両をロストせずに前記減速開始タイミングに至ったときには前記停止車両に対する前記減速制御を実行する、車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両制御装置に関する技術文献として、特開2022―060074号公報が知られている。この公報には、車線区画線上に設置されたパイロンが、車線区画線からはみ出している量に応じて仮想の車線を設定し、目標走行路を設定する運転支援装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022―060074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自車両の走行する走行車線に隣接する工事区間において、走行車線及び工事区間の区画線上に配置されたパイロンなどの工事関連用具と工事区間内の停止車両とが近接している場合、遠方の自車両からでは停止車両が区画線を跨いで存在しているように検出されることがある。この場合において、誤って自車両の減速制御が行われることで自車両のドライバーに違和感を与えるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、自車両の走行する走行車線上で自車両の前方に停止車両を検出した場合に自車両の減速制御を行う車両制御装置であって、自車両の自動運転中に、走行車線に隣接する工事区間と走行車線との区画線を跨いで停止する車両を停止車両として検出した場合には、停止車両に対する減速制御を行わずに自車両のドライバーに手動運転の開始を求める運転操作交代要求を行う。
【0006】
本発明の一態様に係る車両制御装置において、運転操作交代要求を行ってからドライバーが運転操作を開始するまでの間、停止車両及び自車両の距離と自車両の車速とに基づいて緊急制動条件が満たされたか否かを判定し、ドライバーが運転操作を開始しないまま緊急制動条件が満たされた場合には、停止車両に対する自車両の緊急制動制御を開始してもよい。
【0007】
本発明の他の態様は、自車両の走行する走行車線上で自車両の前方に停止車両を検出した場合に自車両の運転支援として減速制御を行う車両制御装置であって、走行車線に隣接する工事区間と走行車線との区画線を跨いで停止する車両を停止車両として検出した場合には、停止車両に対する減速制御の減速開始タイミングを遅延させ、遅延中に停止車両をロストしたときには停止車両に対する減速制御を行わず、停止車両をロストせずに減速開始タイミングに至ったときには停止車両に対する減速制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の各態様によれば、工事区間及び走行車線の区画線を跨ぐ停止車両を検出した場合に不要な減速制御の実行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る車両制御装置を示すブロック図である。
図2】走行車線と工事区間との区画線を跨ぐ停止車両の存在を検出した状況の一例を示す平面図である。
図3】(a)走行車線と工事区間との区画線を跨ぐ停止車両が誤検出であった場合の一例を示す図である。(b)走行車線と工事区間との区画線を跨ぐ停止車両が正確に検出された場合の一例を示す図である。
図4】減速制御の前段処理の一例を示すフローチャートである。
図5】自動運転中の減速制御の後段処理の一例を示すフローチャートである。
図6】運転支援中の減速制御の後段処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る車両制御装置1を示すブロック図である。図1に示す車両制御装置1は、乗用車等の車両(自車両)に搭載されており、自車両の走行を制御する。車両制御装置1は、自車両の自動運転又は運転支援を実行する機能を有している。
【0012】
自動運転とは、ドライバーの運転操作なしに車両を自動で走行させる車両制御である。運転支援とは、自車両が適切に走行するようにドライバーの運転操作を支援する車両制御である。本実施形態に係る運転支援には、所定の条件下で自車両を自動で減速させる減速制御が含まれる。
【0013】
[車両制御装置の構成]
以下、車両制御装置1の構成について図面を参照して説明を行う。図1に示すように、車両制御装置1は、自車両の走行を制御するECU[Electronic Control Unit]10を備えている。ECU10は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットである。ECU10では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の車両制御を実行する。ECU10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0014】
ECU10は、前方カメラ2、レーダセンサ3、運転操作検出部4、HMI[Human Machine Interface]5、及び車両アクチュエータ6と接続されている。
【0015】
前方カメラ2は、自車両の前方の状況を撮像する撮像機器である。前方カメラ2は、例えば自車両のフロントガラスの裏側に設けられ、自車両の前方を撮像する。前方カメラ2は、自車両の前方の状況に関する撮像画像をECU10へ送信する。
【0016】
レーダセンサ3は、電波(例えばミリ波)又は光を利用して自車両の周囲の物体を検出する検出機器である。レーダセンサ3には、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。レーダセンサ3は、自車両の周囲の物体の検出結果をECU10へ送信する。
【0017】
運転操作検出部4は、ドライバーによる自車両の操作部の操作を検出する。運転操作検出部4は、操舵センサ、アクセルセンサ、及びブレーキセンサのうち少なくとも一つを含んでいる。操舵センサは、ドライバーによる操舵部(ステアリング)の操作を検出する。操舵センサは、ドライバーが操舵部を両手で把持していることを運転操作として検出可能であってもよい。アクセルセンサは、ドライバーによるアクセルペダルの操作を検出する。ブレーキセンサは、ドライバーによるブレーキペダルの操作を検出する。運転操作検出部4は、ドライバーの運転操作に関する情報をECU10に送信する。
【0018】
HMI5は、ECU10とドライバーとの間で情報の入出力を行うためのインターフェイスである。HMI5は、例えば、車室内に設けられたディスプレイ、スピーカーなどを備えている。HMI5は、ECU10からの制御信号に応じて、ディスプレイの画像出力及びスピーカーからの音声出力を行う。ディスプレイは、MID[Multi Information Display]であってもよく、HUD[HeadUp Display]であってもよい。HMI5は、各種のインジケータを備えていてもよい。
【0019】
車両アクチュエータ6は、自車両の制御に用いられる機器である。車両アクチュエータ6は、駆動アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。駆動アクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、自車両の駆動力を制御する。なお、自車両がハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)である場合には、エンジンに対する空気の供給量の他に、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。自車両が電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である場合には、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。これらの場合における動力源としてのモータは、車両アクチュエータ6を構成する。
【0020】
ブレーキアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、自車両の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、自車両の操舵トルクを制御する。
【0021】
次に、ECU10の機能的構成について説明する。ECU10は、工事区間認識部11、停止車両検出部12、及び車両制御部13を有している。
【0022】
工事区間認識部11は、自車両の走行する走行車線に隣接する工事区間が存在するか否かを認識する。工事区間は、走行車線に隣接する隣接車線上に形成されていてもよく、走行車線に隣接する路肩や路側帯に形成されていてもよい。
【0023】
工事区間認識部11は、例えば前方カメラ2の撮像画像及びレーダセンサ3の検出結果のうち少なくとも一つに基づいて、工事区間を認識する。工事区間認識部11は、例えば画像認識又は物体検出により、工事区間を示すパイロン、看板、簡易バリケードなどの工事関連用具を検出することで工事区間を認識する。
【0024】
工事区間認識部11は、前方カメラ2及びレーダセンサ3の検出結果を用いたセンサフュージョンにより、工事区間を認識してもよい。工事区間認識部11は、深層学習や畳み込みニューラルネットワークを適用した機械学習モデルを用いて工事区間を認識してもよい。工事区間認識部11は、自車両の位置情報と地図情報に基づいて、地図情報に関連付けられた工事区間情報から自車両の走行車線に隣接する工事区間を認識してもよい。工事区間の認識方法は特に限定されず、周知の手法を採用することができる。
【0025】
停止車両検出部12は、前方カメラ2の撮像画像及びレーダセンサ3の検出結果のうち少なくとも一つに基づいて、自車両の走行車線上で自車両の前方に位置する停止車両を検出する。停止車両は工事車両や四輪車に限られず、二輪車であってもよい。停止車両には駐車中の車両も含まれる。
【0026】
停止車両検出部12は、例えば撮像画像に対する白線認識により自車両の走行する車線である走行車線を認識する。停止車両検出部12は、例えばパターンマッチングなどにより自車両の前方の物体が車両であることを認識すると共に、車両の速度の検出結果から停止車両であることを検出する。
【0027】
停止車両検出部12は、走行車線と工事区間との区画線を跨ぐ停止車両が存在するか否かを判定する。区画線を跨ぐとは、工事区間に停車している停止車両の一部が区画線を跨いで走行車線上にはみ出している状況を意味する。停止車両検出部12は、白線認識により認識した走行車線と工事区間との区画線と停止車両の位置から走行車線と工事区間との区画線を跨ぐ停止車両の存在を判定する。
【0028】
しかしながら、停止車両検出部12は、誤検出(誤判定)を行う場合がある。すなわち、停止車両検出部12は、自車両の走行車線に隣接する工事区間において、走行車線及び工事区間の区画線上に配置されたパイロンなどの工事関連用具と工事区間内の停止車両とが近接している場合、遠方の自車両からでは停止車両が区画線を跨いで存在しているように検出されるおそれがある。
【0029】
ここで、図2は、走行車線と工事区間との区画線を跨ぐ停止車両の存在を検出した状況の一例を示す平面図である。図2に、自車両M、走行車線Ra、隣接車線Rb、走行車線Raの右側区画線La、隣接車線Rbの左側区画線Lb、走行車線Raと隣接車線Rbとを分ける区画線Lc、パイロンP1~P3、工事区間C、及び停止車両Uを示す。また、自車両Mと停止車両Uとの距離を距離Daとして示す。符号Maは、将来の自車両Mの位置Maを示している。将来の自車両Mの位置Maと停止車両Uとの距離を距離Dbとして示す。パイロンP1~P3は、区画線Lcに沿って配置されている。
【0030】
図2に示す状況においては、自車両Mと停止車両Uとの距離が離れていることから、停止車両Uが誤検出である可能性がある。停止車両検出部12は、自車両Mが停止車両Uに接近することで正確な検出が可能となる。
【0031】
ここで、図3(a)は、走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが誤検出であった場合の一例を示す図である。図3(a)に、工事区間C内(隣接車線Rb内)に位置する停止トラックNとパイロンPuとを示す。パイロンPuは、例えば区画線Lc上に一部が重なるように置かれている。なお、パイロンPuは必ずしも区画線Lc上に一部が重なっている必要はなく、区画線Lcの付近に位置していればよい。工事区間Cは隣接車線Rb内ではなく路肩などに形成されていてもよい。
【0032】
図3(a)に示す状況において、停止車両検出部12は、停止トラックNとパイロンPuとが近接しているため、誤って走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在すると検出していた。停止車両検出部12は、自車両Mの接近により停止トラックN及びパイロンPuを区別して検出する。停止車両検出部12は、誤検出であった区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在しないため、停止車両Uをロストしたと判定する。ロストとは一度検出した対象を見失ったと言う意味である。
【0033】
図3(b)は、走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが正確に検出された場合の一例を示す図である。図3(b)に示す状況において、停止車両検出部12は、自車両Mの接近により区画線Lcを跨ぐ停止トラックNを正確に検出する。
【0034】
車両制御部13は、車両アクチュエータ6に制御信号を送信することで自車両Mの走行を制御する。車両制御部13は、ドライバーの許可した自車両Mの自動運転又は運転支援を実行する。
【0035】
まず、自車両Mの自動運転中における通常の減速制御について説明する。通常の減速制御とは、停止車両が工事区間Cと走行車線Raとの区画線Lcを跨いでいない場合に行われる減速制御である。この場合の停止車両は、一例として赤信号の信号機などにより走行車線Ra内で停止している車両である。
【0036】
車両制御部13は、自車両Mの自動運転中に、停止車両検出部12が走行車線Ra上で自車両Mの前方に位置する停止車両を検出した場合、自動運転の一部として自車両Mの減速制御を行う。
【0037】
車両制御部13は、自車両Mが予め設定された減速開始タイミングに至ったときに、減速制御を実行する。車両制御部13は、停止車両及び自車両Mの距離と自車両Mの車速とに基づいて、自車両Mが減速開始タイミングに至ったか否かを判定する。車両制御部13は、例えば、停止車両に対する自車両Mの衝突余裕時間[TTC:Time To Collision]が所定のTTC閾値未満となったときに、自車両Mが減速開始タイミングに至ったと判定する。衝突余裕時間に代えて停止車両及び自車両Mの距離を用いてもよい。この場合、TTC閾値に代えて距離閾値を用いることができる。車両制御部13は、減速制御として予め設定された減速度で自車両Mを減速させ、自車両Mを停止車両の後方に停止させる。
【0038】
続いて、自動運転中に走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uを検出した場合の減速制御について説明する(図2参照)。車両制御部13は、自車両Mの自動運転中に停止車両検出部12が走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uを検出した場合には、ドライバーに手動運転の開始を求める運転操作交代要求を行う。
【0039】
運転操作交代要求は、自車両Mの自動運転中にドライバーに手動運転の開始を求める要求である。車両制御部13は、HMI5に制御信号を送信することで、例えばディスプレイの画像表示及びスピーカの音出力によりドライバーに運転操作交代要求を行う。車両制御部13は、音声によりドライバーに運転操作交代要求を行ってもよく、音声により運転操作交代の理由をドライバーに説明してもよい。
【0040】
車両制御部13は、運転操作検出部4の検出したドライバーの運転操作に基づいて、ドライバーが手動運転を開始したか否かを判定する。車両制御部13は、例えばドライバーが自車両Mの操舵部を両手で把持した場合、ドライバーが自車両Mのアクセルペダル又はブレーキペダルを踏んだ場合に、ドライバーが手動運転を開始したと判定する。
【0041】
車両制御部13は、ドライバーが手動運転を開始しない場合、緊急制動条件が満たされたか否かを判定する。緊急制動条件とは、停止車両と自車両Mとの衝突を抑制するために自車両Mを減速させる緊急制動制御である。
【0042】
車両制御部13は、例えば許容される最大減速で自車両Mを減速させないと自車両Mを停止車両の手前に停止させられない場合、緊急制動条件が満たされたと判定する。車両制御部13は、停止車両U及び自車両Mの距離と自車両Mの車速に基づいて、停止車両に対する自車両Mの衝突余裕時間が緊急制動判定閾値未満であるときに緊急制動条件が満たされたと判定してもよい。衝突余裕時間に代えて停止車両及び自車両Mの距離を用いてもよい。
【0043】
具体的に、車両制御部13は、例えば自車両Mが図2に示す位置Maに至ってもドライバーが手動運転を開始しない場合(停止車両U及び自車両Mの距離が距離Dbになってもドライバーが手動運転を開始しない場合)、自車両Mの緊急制動制御を実行する。車両制御部13は、通常の減速制御と比べて強い減速度で自車両Mを減速させ、停止車両Uの手前に自車両Mを停止させる。緊急制動制御は、例えばプリクラッシュセーフティ[PCS : Pre Crash Safety]に相当する。なお、車両制御部13は、運転操作交代要求後だけではなく運転操作交代要求を行う前に、緊急制動条件が満たされたか否かを判定する態様であってもよい。
【0044】
車両制御部13は、緊急制動条件が満たされたと判定されなかった場合、再びドライバーが手動運転を開始したか否かを判定する。なお、車両制御部13は、一定時間が経過してもドライバーが手動運転を開始されなかった場合には自車両Mの停止を行ってもよい。
【0045】
なお、車両制御部13は、図3(a)に示すように、停止車両検出部12が停止車両Uをロストした場合には、緊急制動条件を繰り返し判定する必要はない。この場合、車両制御部13は、ドライバーが手動運転を開始したか否かの判定を繰り返してもよく、ドライバーに対して自動運転の継続を提案してもよい。車両制御部13は、ドライバーの入力操作により自動運転の継続が承認された場合、自動運転を継続する。
【0046】
次に、運転支援中における通常の減速制御について説明する。運転支援中における通常の減速制御は、例えばACC[Adaptive Cruise Control]の一部として行われる。
【0047】
車両制御部13は、自車両Mの運転支援中に、停止車両検出部12が走行車線上で自車両Mの前方に位置する停止車両を検出した場合、運転支援として自車両Mの減速制御を行う。車両制御部13は、自車両Mが予め設定された減速開始タイミングに至ったときに自車両Mの減速制御を実行する。減速開始タイミングの判定は自動運転の場合と同様とすることができる。
【0048】
続いて、運転支援中に走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uを検出した場合の減速制御について説明する(図2参照)。車両制御部13は、自車両Mの運転支援中に停止車両検出部12が走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uを検出した場合には、減速開始タイミングを遅延させる。
【0049】
減速開始タイミングの遅延とは、区画線Lcを跨ぐ停止車両Uを検出した場合には、通常の停止車両の検出時と比べて減速開始タイミングを遅くすることである。車両制御部13は、例えば区画線Lcを跨ぐ停止車両Uを検出した場合のTTC閾値を通常のTTC閾値と比べて小さい値とすることで、減速開始タイミングを遅延させる。
【0050】
車両制御部13は、減速開始タイミングを遅延させた後、緊急制動条件が満たされたか否かを判定する。車両制御部13は、緊急制動条件が満たされたと判定した場合、緊急制動制御を実行する。緊急制動条件の判定及び緊急制動制御は自動運転の場合と同様とすることができる。
【0051】
車両制御部13は、緊急制動条件が満たされたと判定されなかった場合、停止車両検出部12が停止車両Uをロストしたか否かを判定する。車両制御部13は、停止車両検出部12が停止車両Uをロストした場合、運転支援としての減速制御の対象が無くなったことから減速制御を行わない。車両制御部13は、停止車両検出部12が停止車両Uをロストしていない場合、自車両Mが減速開始タイミングに至ったか否かを判定する。車両制御部13は、自車両Mが予め設定された減速開始タイミングに至った場合、自車両Mの減速制御を実行する。
【0052】
[車両制御装置の処理]
続いて、本実施形態に係る車両制御装置1の処理について図面を参照して説明する。図4は、減速制御の前段処理の一例を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、自車両Mが自動運転中又は運転支援中である場合に実行される。
【0053】
図4に示すように、車両制御装置1のECU10は、S10として、工事区間認識部11により自車両Mの走行する走行車線Raに隣接する工事区間Cが存在するか否かを認識する。ECU10は、走行車線Raに隣接する工事区間Cが存在すると判定された場合(S10:YES)、S11に移行する。ECU10は、走行車線Raに隣接する工事区間Cが存在すると判定されなかった場合(S10:NO)、S12に移行する。
【0054】
S11において、ECU10は、停止車両検出部12により走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在するか否かを判定する。ECU10は、走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在すると判定された場合(S11:YES)、S13に移行する。ECU10は、走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在すると判定されなかった場合(S11:NO)、S12に移行する。
【0055】
S12において、ECU10は、車両制御部13により停止車両Uに対する減速制御を実行する。車両制御部13は、車両アクチュエータ6に制御信号を送信することで自車両Mの減速制御を行う。その後、ECU10は今回の処理を終了する。
【0056】
S13において、ECU10は、車両制御部13により緊急制動条件が満たされたか否かを判定する。ECU10は、緊急制動条件が満たされたと判定された場合(S13:YES)、S14に移行する。ECU10は、緊急制動条件が満たされたと判定されなかった場合(S13:NO)、図5又は図6に示す後段処理へ移行する。
【0057】
S14において、ECU10は、車両制御部13により自車両Mの緊急制動制御を実行する。車両制御部13は、車両アクチュエータ6に制御信号を送信することで自車両Mの緊急制動制御を行う。その後、ECU10は今回の処理を終了する。
【0058】
図5は、自動運転中の減速制御の後段処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、自車両Mが自動運転中である場合に図4のS13がNOとなったときに実行される。
【0059】
図5に示すように、ECU10は、S20として、車両制御部13によりドライバーに運転操作交代要求を行う。車両制御部13は、HMI5に制御信号を送信することでドライバーに運転操作交代要求を行う。その後、ECU10はS21に移行する。
【0060】
S21において、ECU10は、車両制御部13により緊急制動条件が満たされたか否かを判定する。この判定内容は、図4のS13と同じとすることができる。ECU10は、緊急制動条件が満たされたと判定された場合(S21:YES)、S22に移行する。ECU10は、緊急制動条件が満たされたと判定されなかった場合(S21:NO)、S23へ移行する。
【0061】
S22において、ECU10は、車両制御部13により自車両Mの緊急制動制御を実行する。その後、ECU10は今回の処理を終了する。
【0062】
S23において、ECU10は、車両制御部13によりドライバーが手動運転を開始したか否かを判定する。ECU10は、ドライバーが手動運転を開始したと判定された場合(S23:YES)、今回の処理を終了する。ECU10は、ドライバーが手動運転を開始したと判定されなかった場合(S23:NO)、S21に戻って処理を繰り返す。
【0063】
図6は、運転支援中の減速制御の後段処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、自車両Mが運転支援中(運転支援が許可状態)である場合に図4のS13がNOとなったときに実行される。
【0064】
図6に示すように、ECU10は、S30として、車両制御部13により減速開始タイミングの遅延処理を行う。その後、ECU10はS31に移行する。
【0065】
S31において、ECU10は、車両制御部13により緊急制動条件が満たされたか否かを判定する。この判定内容は、図4のS13と同じとすることができる。ECU10は、緊急制動条件が満たされたと判定された場合(S31:YES)、S32に移行する。ECU10は、緊急制動条件が満たされたと判定されなかった場合(S31:NO)、S33へ移行する。
【0066】
S32において、ECU10は、車両制御部13により自車両Mの緊急制動制御を実行する。その後、ECU10は今回の処理を終了する。
【0067】
S33において、ECU10は、停止車両検出部12により走行車線Raと工事区間Cとの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uをロストしたか否かを判定する。ECU10は、区画線Lcを跨ぐ停止車両Uをロストしたと判定された場合(S33:YES)、減速対象が無くなったため今回の処理を終了する。ECU10は、区画線Lcを跨ぐ停止車両Uをロストしたと判定されなかった場合(S33:NO)、S34に移行する。
【0068】
S34において、ECU10は、車両制御部13により自車両Mが減速開始タイミングに至ったか否かを判定する。ECU10は、自車両Mが減速開始タイミングに至ったと判定した場合(S34:YES)、S35に移行する。ECU10は、自車両Mが減速開始タイミングに至ったと判定しなかった場合(S34:NO)、S33に戻って処理を繰り返す。
【0069】
S35において、車両制御部13により停止車両Uに対する減速制御を実行する。その後、ECU10は今回の処理を終了する。
【0070】
以上説明した本実施形態に係る車両制御装置1によれば、自車両Mの自動運転中に走行車線Ra及び工事区間Cの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在すると検出した場合には、ドライバーに対する運転操作交代要求を行なって減速制御を行わないので、工事区間C内の停止トラックNと区画線Lc付近に配置されたパイロンPu(図3(a)参照)などを一体として誤検出したときに不要な減速制御の実行を抑制することができる。
【0071】
また、車両制御装置1によれば、運転操作交代要求を行ったにも関わらずドライバーが運転操作を開始しないまま自車両Mが停止車両Uに近づいた場合には緊急制動制御を行うので、自車両Mが停止車両Uに近づき過ぎることを避けることができる。なお、自車両Mの接近によって区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在しないと認識された場合(停止車両Uをロストした場合)には緊急制動は行われない。
【0072】
また、車両制御装置1によれば、自車両Mの運転支援中に走行車線Ra及び工事区間Cの区画線Lcを跨ぐ停止車両Uが存在すると検出した場合には、減速開始タイミングを遅延させる。これにより、自車両Mが停止車両Uに接近することで正確に停止車両Uの存在を検出することができ、停止車両Uが誤検出である場合には減速制御を実行しないので、不要な減速制御の実行を抑制することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0074】
車両制御装置1は、自動運転と運転支援の何れか一方のみ実行可能に構成されていてもよい。車両制御装置1は、自動運転のみ実行可能な場合には、図6のフローチャートに対応する処理を実行可能である必要はない。車両制御装置1は、運転支援のみ実行可能な場合には、図5のフローチャートに対応する処理を実行可能である必要はない。また、車両制御装置1は、必ずしも緊急制動条件の判定及び緊急制動制御を行う必要はない。
【符号の説明】
【0075】
1…車両制御装置、2…前方カメラ、3…レーダセンサ、4…運転操作検出部、5…HMI、6…車両アクチュエータ、10…ECU、11…工事区間認識部、12…停止車両検出部、13…車両制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6