(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175309
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】建築材の連結方法および連結構造
(51)【国際特許分類】
B25B 23/10 20060101AFI20241211BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B25B23/10 B
F16B41/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092995
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000250432
【氏名又は名称】理研軽金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】山梨 巧貴
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA04
3C038BB04
3C038BC01
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】支持部材に対して建築材を連結するときに、ナットの落下を防止して、ナットを安全かつ容易に取り付けることができる連結方法および連結構造を提供する。
【解決手段】支持部材30に対して建築材31をボルト20およびナット22で連結する連結方法または連結構造において、指先で摘まんで操作可能なノブ状に形成されて、前記ナット22を回転不能に保持する補助具10を使用し、前記支持部材30および前記建築材31を貫通した前記ボルト20の先端を、前記補助具10に取り付けた前記ナット22に挿入し、前記補助具10または前記ボルト20を回転させることで前記ボルト20と前記ナット22とを螺着可能とした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に対して建築材をボルトおよびナットで連結する連結方法であって、
指先で摘まんで操作可能なノブ状に形成されて、前記ナットを回転不能に保持する補助具を使用し、
前記補助具に前記ナットを取り付ける前工程と、
前記支持部材および前記建築材を貫通した前記ボルトの先端を、前記補助具に取り付けた前記ナットに挿入し、前記補助具または前記ボルトを回転させることで前記ボルトと前記ナットとを螺着させるナット取付工程と、
を含む、
建築材の連結方法。
【請求項2】
前記補助具は、前記ナットに加えて座金を収容可能であり、
前記前工程において、前記補助具に前記ナットと前記座金とを重ねて取り付ける、
請求項1に記載の建築材の連結方法。
【請求項3】
前記補助具は、外周面に滑り止め部を形成した円筒状の部材である、
請求項1に記載の建築材の連結方法。
【請求項4】
前記ボルトを前記支持部材の上面側から取り付け、前記補助具を前記支持部材の下面側から取り付ける、
請求項1に記載の建築材の連結方法。
【請求項5】
支持部材に対して建築材をボルトおよびナットで連結する連結構造であって、
指先で摘まんで操作可能なノブ状に形成されて、前記ナットを回転不能に保持する補助具を使用し、
前記支持部材および前記建築材を貫通した前記ボルトの先端を、前記補助具に取り付けた前記ナットに挿入し、前記補助具または前記ボルトを回転させることで前記ボルトと前記ナットとを螺着可能である、
建築材の連結構造。
【請求項6】
前記補助具は、前記ナットに加えて座金を重ねて収容可能である、
請求項5に記載の建築材の連結構造。
【請求項7】
前記補助具は、外周面に滑り止め部を形成した円筒状の部材である、
請求項5に記載の建築材の連結構造。
【請求項8】
前記ボルトを上面側から取り付け、前記ナットを下面側から取り付ける、
請求項5に記載の建築材の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、支持部材に対して建築材をボルトおよびナットで連結する連結方法および連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の外壁面より前方へ張り出すように設けられる庇の発明が開示されている。この庇は、建物の外壁面に取り付けられる保持枠と、保持枠に基端部が全幅にわたって保持される庇板とを備え、保持板部と庇板とをボルトおよびナットで連結するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように支持部材に対して建築材をボルトおよびナットで連結する場合、建築材を支持しつつ、複数の小さな部品を持って連結作業を行わなければならないため、取り付けの手間がかかるという問題があった。また、高所作業時に手に持つナットなどの複数の部品を落下させると危険であるため、細心の注意を払う必要があった。
【0005】
このような状況を鑑み、本発明は、支持部材に対して建築材を連結するときに、ナットの落下を防止して、ナットを安全かつ容易に取り付けることができる連結方法および連結構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明の連結方法は、支持部材に対して建築材をボルトおよびナットで連結する連結方法であって、指先で摘まんで操作可能なノブ状に形成されて、前記ナットを回転不能に保持する補助具を使用し、前記補助具に前記ナットを取り付ける前工程と、前記支持部材および前記建築材を貫通した前記ボルトの先端を、前記補助具に取り付けた前記ナットに挿入し、前記補助具または前記ボルトを回転させることで前記ボルトと前記ナットとを螺着させるナット取付工程と、を含む。
【0007】
また、本発明の連結構造は、支持部材に対して建築材をボルトおよびナットで連結する連結構造であって、指先で摘まんで操作可能なノブ状に形成されて、前記ナットを回転不能に保持する補助具を使用し、前記支持部材および前記建築材を貫通した前記ボルトの先端を、前記補助具に取り付けた前記ナットに挿入し、前記補助具または前記ボルトを回転させることで前記ボルトと前記ナットとを螺着可能とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記の通りであり、指先でつまんで操作可能なノブ状に形成されて、ナットを回転不能に保持する補助具を使用する。そして、支持部材および建築材を貫通したボルトの先端を、補助具に取り付けたナットに挿入し、補助具またはボルトを回転させることでボルトとナットとを螺着させる。このように補助具を介してボルトにナットを螺着させるため、複数の小さな部品でも落下しにくく、ナットを安全かつ容易に取り付けることができる。また、補助具は指先で摘まんで操作可能なノブ状であるため、狭い空間でも取り付けの作業をすることができる。
【0009】
なお、補助具は指先でつまんで操作するものであるため、ナットの締め付けが弱くなる可能性がある。この場合は、補助具でナットを取り付けた後に、レンチや電動工具で本締めを行ってもよい。このように後で本締めを行う場合でも、予め補助具を使用してナットを仮止めしておくことで工具の先端でナットや座金などの部品を押さえながら作業する必要がないため、安全かつ容易に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】補助具の(a)平面図、(b)正面図、(c)底面図である。
【
図2】補助具にナットおよび座金を取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図3】補助具にナットおよび座金を取り付けた状態の斜視図である。
【
図4】補助具の断面図であって、(a)ナットおよび座金を取り付ける前の図、(b)ナットおよび座金を取り付けた後の図である。
【
図5】支持部材に対して建築材を連結する様子を説明する図(例1)であって、(a)ボルトを取り付けた状態の図、(b)ボルトを補助具に挿入した状態の図である。
【
図6】支持部材に対して建築材を連結する様子を説明する図(例1)であって、(a)補助具でナットを取り付けている状態の図、(b)取付完了後の図である。
【
図7】支持部材に対して建築材を連結する様子を説明する図(例2)であって、(a)補助具をセットした状態の図、(b)ボルトを補助具に挿入した状態の図である。
【
図8】支持部材に対して建築材を連結する様子を説明する図(例2)であって、(a)補助具でナットを取り付けている状態の図、(b)取付完了後の図である。
【
図9】支持部材に対して建築材を連結する様子を説明する図(例3)であって、(a)ボルトを取り付けた状態の図、(b)ボルトを補助具に挿入した状態の図である。
【
図10】支持部材に対して建築材を連結する様子を説明する図(例3)であって、(a)補助具でナットを取り付けている状態の図、(b)取付完了後の図である。
【
図11】支持部材に対して建築材を連結する様子を説明する図(例4)である。
【
図13】補助具の変形例1を示す図であって、(a)ナットおよび座金を取り付ける前の図、(b)ナットおよび座金を取り付けた後の図である。
【
図14】補助具の変形例2を示す図であって、(a)ナットおよび座金を取り付ける前の図、(b)ナットおよび座金を取り付けた後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
本実施形態に係る連結方法および連結構造は、支持部材に対して建築材をボルト20およびナット22で連結するものであり、
図1に示すような補助具10を使用する。なお、以下の補助具10の説明においては、ナット22を挿入する端部側(
図1(b)における上側)を「上」、その反対側(
図1(b)における下側)を「下」として説明する。
【0012】
なお、本実施形態に係る支持部材および建築材は、互いに重ね合わせることができる板状部位を有しており、重ね合わせた板状部位を貫通するようにボルト20を取り付け、ボルト20の先端にナット22を螺着することで連結されるものである。
【0013】
補助具10は、ボルト20に対して座金(本実施形態においては平座金23とばね座金24)およびナット22を取り付けるための金具取付用の補助具10である。この補助具10は、
図1に示すような円筒状の部材であり、指先で摘まんで操作可能なノブ状(つまみ状)に形成されている。具体的には、第一関節までの指先で摘まんで回転させることができる大きさで形成されている。本実施形態に係る補助具10は、弾性変形可能な材料(例えば樹脂やゴムなど)で形成されている。
【0014】
この補助具10の中心軸上には、貫通孔11が形成されている。貫通孔11は、複数の異なる径の穴を同軸上に連続して配置した段穴形状で形成されている。具体的には、
図4(a)に示すように、平座金収容部12、ばね座金収容部13、ナット収容部14、ボルト挿通部15が、補助具10を貫通する貫通孔11の一部として形成されている。この貫通孔11の段穴は、下方にいくに従って次第に径が小さくなるように配置されている。よって、上から下に、平座金収容部12、ばね座金収容部13、ナット収容部14、ボルト挿通部15の順で径が小さく形成されている。
【0015】
平座金収容部12は、平座金23を収容するための部位であり、円形の凹部として形成されている。この平座金収容部12の底面は、平座金23を載置できるように平坦な面となっており、中央に穴が開口している。この平座金収容部12の上下幅は、平座金23の厚みよりもやや大きく設定されており、
図4(b)に示すように、平座金23をすっぽりと収容できる大きさで形成されている。なお、本実施形態に係る平座金収容部12は、平座金23よりもやや(0.3mm程度)小径に形成されており、平座金23を手で押し込んで圧入可能となっている。この平座金収容部12は、貫通孔11の最も上部に配置されており、平座金収容部12の開口縁が貫通孔11の開口縁となっている。
図1に示すように、補助具10の上面10aは平坦に形成されており、この平坦な上面10aに平座金収容部12が開口しているため、平座金収容部12に平座金23を押し込むときには、平座金23を上面10aに置き、補助具10の上面10aが平らになるまで平座金23を押し込めばよい。平座金収容部12に平座金23を押し込むと、後述する弾性変形部17が拡開方向に弾性変形し、平座金収容部12に平座金23をはめ込むことができる。このように平座金23を圧入することで、平座金収容部12に取り付けた平座金23は容易に外れないようになっている。例えば、平座金収容部12が下向きになるように補助具10を逆さまにしても、平座金収容部12に取り付けた平座金23が落下しないようになっている。
【0016】
ばね座金収容部13は、ばね座金24を収容するための部位であり、円形の凹部として形成されている。このばね座金収容部13の上下幅は、ばね座金24の厚みよりもやや大きく設定されており、
図4(b)に示すように、ばね座金24をすっぽりと収容できる大きさで形成されている。なお、本実施形態に係るばね座金収容部13は、ばね座金24よりもやや(1.6mm程度)大径に形成されており、ばね座金24を落とし込んで収容することができる。このばね座金収容部13は、平座金収容部12の下方に連続して配置されている。また、ばね座金収容部13の上端縁(平座金収容部12と連続する部分)には、開口方向に(上方に向けて)拡開するばね座金用テーパ部13aが設けられている。このばね座金用テーパ部13aが設けられることで、ばね座金収容部13にばね座金24を落とし込みやすくなっている。また、ばね座金24は、
図4(a)に示すように、弾性変形部を備えているため、上下にズレが生じている。ばね座金収容部13とばね座金用テーパ部13aとを合わせた上下の高さは、このように上下にズレを有するばね座金24を収納できる大きさで形成されている。なお、ばね座金24の弾性変形部が大きく、上下のズレがさらに大きくても対応できるように、ばね座金収容部13とばね座金用テーパ部13aとを合わせた上下の高さは余裕を持って設定されている。
【0017】
ナット収容部14は、ナット22を収容するための部位であり、
図1(a)に示すような凹二十四角形の凹部として形成されている。具体的には、
図12に示すように、同一中心かつ同じ大きさの2つの正六角形を30度回転させて重ね合わせた形状の凹部として形成されている。この2つの正六角形は、ナット22の正六角形よりもやや(1.5mm程度)大きく形成されており、ナット22を落とし込んで収容することができるようになっている。すなわち、
図12に示す正六角形Aまたは正六角形Bの形状にナット22が嵌まり込み、これにより、ナット収容部14がナット22を回転不能に保持するようになっている。なお、ナット収容部14の形状はナット22を回転不能に保持できれば良いので、凹二十四角形でなくてもよい。具体的には、正六角形や凹三十六角形でもよい。このナット収容部14の上下幅は、ナット22の厚みとほぼ等しく設定されており、
図4(b)に示すように、ナット22をすっぽりと収容できる大きさで形成されている。このナット収容部14は、ばね座金収容部13の下方に連続して配置されている。また、ナット収容部14の上端縁(ばね座金収容部13と連続する部分)には、開口方向に(上方に向けて)拡開するナット用テーパ部14aが設けられている。このナット用テーパ部14aが設けられることで、ナット収容部14にナット22を落とし込みやすくなっている。
【0018】
ボルト挿通部15は、ナット22に螺合させたボルト20の先端を逃がすための部位であり、まっすぐな筒状の穴として形成されている。このボルト挿通部15は、補助具10の下面側まで貫通している。このボルト挿通部15は、ボルト20の軸部20bよりも大径に形成されており、ボルト20とナット22とを螺着させたときに、ナット22から飛び出したボルト20の先端と干渉しないようになっている。このボルト挿通部15は、ナット収容部14の下方に連続して配置されている。
【0019】
また、この補助具10の外周面には、
図1(b)に示すように、滑り止め部16が形成されている。滑り止め部16は、補助具10の外周面に、周方向に一定間隔で形成された複数のリブ16aによって形成されている。リブ16aは、貫通孔11の軸方向と平行に形成された、断面三角状の突起である。この複数のリブ16aによって補助具10の外周面に凹凸が形成され、補助具10を摘まんで持ったときに滑りにくくなっている。ただし、この滑り止め部16は、補助具10の上端縁付近には設けられていない。言い換えると、補助具10の上端縁付近には、リブ16aのない弾性変形部17が設けられている。なお、滑り止め16は、滑り止めが形成されていれば良いので、断面が三角形の突起でなくてもよい。具体的には、断面が四角形や多角形、丸型でもよく、突起があればよい。
【0020】
この弾性変形部17は、平座金収容部12の外周を囲むように設けられている。この弾性変形部17は、他の部位と比較して薄肉となっており、これにより平座金収容部12に平座金23を押し込むときに、平座金収容部12が外側に弾性変形しやすくなっている。また、この弾性変形部17の外周面は、
図4(a)に示すように、開口方向(上方向)に行くに従って拡開するテーパ状となっている。このため、弾性変形部17の下端側(平座金収容部12の奥側)が最も薄肉となっている。このため、平座金収容部12に平座金23を押し込んだときに、弾性変形部17の下端側が変形しやすくなっており、逆に、開口側の変形量が小さくなるように形成されている。このように形成することで、繰り返し使用によって弾性変形部17の開口部が伸びきってしまうことを防止している。言い換えると、平座金収容部12による平座金23の保持性能の低下を防止し、補助具10の機能を長持ちさせることができる。
【0021】
この補助具10には、
図2~4に示すように、ナット22、平座金23、ばね座金24を取り付け可能である。ナット22は、一般的な六角ナットであり、中央の貫通孔に雌ネジが切ってある。平座金23も、一般的に用いられる円板状の部材であり、中央にボルト20の径に合わせた穴が開口している。また、ばね座金24も、一般に流通しているものであり、平座金の一部が切れてねじれた形をしている。なお、平座金23およびばね座金24は、ナット22よりも大きい外形で形成されている。また、本実施形態においては、平座金23の直径は、ばね座金24の直径よりも大きく設定されている。
【0022】
これらのメス側(ナット22側)の部品を補助具10に取り付けるときには、径の小さい部材から先に取り付ける。すなわち、まずナット22をナット収容部14に落とし込み、次にばね座金24をばね座金収容部13に落とし込み、最後に平座金23を平座金収容部12に押し込んで取り付ける。これにより、
図4(b)に示すように、補助具10にナット22と座金(平座金23およびばね座金24)とを重ねて取り付けることができる。また、貫通孔11の最上部に取り付けられる座金(平座金23)は、貫通孔11に圧入されて落下しないように保持されている。このため、すべての部材が落下しないように平座金23で蓋をした状態となり、部品を補助具10にセットした状態で安全に持ち運びすることができる。
【0023】
支持部材に対して建築材をボルト20およびナット22で連結する場合には、このようにまずは補助具10にナット22などのメス側の部品を取り付け、これをボルト20に螺着させる。以下、このような連結方法について具体例を挙げて説明する。
【0024】
図5および
図6に示す例は、壁面32に取り付けた支持フレーム30(支持部材)に、庇材31(建築材)を連結する態様である。この支持フレーム30は、庇材31を支持するために水平方向に突出した突出部30aを備える。庇材31は、庇を構成する板状の長尺材であり、端部を支持フレーム30に支持される。この支持フレーム30と庇材31を連結するときには、まず補助具10にナット22などのメス側の部品を取り付けておく。その後、
図5(a)に示すように、突出部30aの上に庇材31を載置し、支持フレーム30および庇材31を貫通するようにボルト20を上面側から取り付ける。このとき、ボルト20の頭部20aと庇材31との間にボルト側座金21を挟んでもよい。そして、
図5(b)に示すように、ボルト20の軸部20bを補助具10に挿入する。具体的には、ボルト20の先端を座金に挿入し、ナット22に突き当てる。これにより、ボルト20の先端がナット22の雌ネジに押し当てられる。このとき、突出部30aの下面と補助具10との間には、隙間が形成される。そして、
図6(a)に示すように、ナット22を下面側から取り付ける。具体的には、補助具10を上方(突出部30aの方向)に押し付けながら回転させることでボルト20とナット22とを螺着させる。ボルト20とナット22とを螺着していくと、最終的には補助具10が突出部30aに当接する位置で螺着が完了する。なお、このような補助具10の操作は、作業者が指先で行うことができる。また、補助具10は指先で操作できる大きさの円筒状であるため、狭い空間でも作業しやすい。そして、ナット22の取り付けが終わったら、
図6(b)に示すように、補助具10を取り外す。なお、ナット22の締め付けが足りない場合は、補助具10でナット22を取り付けた後に、レンチや電動工具で本締めを行ってもよい。
【0025】
なお、上記説明では、補助具10を回転させることで、ボルト20とナット22とを螺着させるようにしたが、これに限らず、ボルト20を回転させることで、ボルト20とナット22とを螺着させてもよい。具体的には、補助具10を摘み持つことでナット22の回転を抑制し、この状態でボルト20を回転させることで、両者を螺合させてもよい。
【0026】
また、
図7および
図8に示すように、先に補助具10を支持フレーム30に押し当てておき、その後でボルト20を取り付けてもよい。この場合でも、まず補助具10にナット22などのメス側の部品を取り付けておく。そして、
図7(a)に示すように、突出部30aの上に庇材31を載置し、突出部30aの下面に補助具10の上面10aを押し当てる。その後、
図7(b)に示すように、支持フレーム30および庇材31を貫通するようにボルト20を上面側から取り付ける。これにより、ボルト20の先端を、補助具10に取り付けた座金およびナット22に挿入させる。このとき、ボルト20の頭部20と庇材31の上面との間には、隙間が形成される。その後、
図8(a)に示すように、補助具10またはボルト20を回転させることで、ボルト20とナット22とを螺着させる。そして、ナット22の取り付けが終わったら、
図8(b)に示すように、補助具10を取り外す。なお、ナット22の締め付けが足りない場合は、補助具10でナット22を取り付けた後に、レンチや電動工具で本締めを行ってもよい。
【0027】
また、
図9および
図10に示すように、ボルト20の頭部20aが回り止めされていると、更に作業性を向上させることができる。この例では、支持フレーム30と協働して庇材31を保持するベースアングル33を使用している。ベースアングル33は支持フレーム30に係合しており、ベースアングル33の下面が庇材31の上面に当接する。これにより、支持フレーム30とベースアングル33とで庇材31を上下から挟み込んで保持するようになっている。このとき、ボルト20は、ベースアングル33の上面側から取り付けられ、庇材31を貫通して、支持フレーム30の下面側から先端が突出するようになっている。ベースアングル33の上面には、ボルト20の頭部20aを保持するボルト保持部33aが設けられており、これにより、ボルト20の頭部20aが軸回転しないように回り止めされている。このような態様の場合、下記のような手順で連結作業を行うことができる。
【0028】
すなわち、まず補助具10にナット22などのメス側の部品を取り付けておく。その後、
図9(a)に示すように、突出部30aの上に庇材31を載置し、庇材31の上にベースアングル33を取り付ける。そして、ベースアングル33と支持フレーム30および庇材31を貫通するようにボルト20を上面側から取り付ける。このとき、ボルト20の頭部20aがベースアングル33のボルト保持部33aに係合する。そして、
図9(b)に示すように、ボルト20の軸部20bを補助具10に挿入する。具体的には、ボルト20の先端を座金に挿入し、ナット22に突き当てる。これにより、ボルト20の先端がナット22の雌ネジに押し当てられる。このとき、突出部30aの下面と補助具10との間には、隙間が形成される。そして、
図10(a)に示すように、ナット22を下面側から取り付ける。具体的には、補助具10を上方(突出部30aの方向)に押し付けながら回転させることで、ボルト20とナット22とを螺着させる。ボルト20とナット22とを螺着していくと、最終的には補助具10が突出部30aに当接する位置で螺着が完了する。そして、ナット22の取り付けが終わったら、
図10(b)に示すように、補助具10を取り外す。なお、ナット22の締め付けが足りない場合は、補助具10でナット22を取り付けた後に、レンチや電動工具で本締めを行ってもよい。
【0029】
ところで上記した
図5~10の例では、支持部材として支持フレーム30を使用し、建築材として庇材31を使用したが、この支持部材および建築材は一例に過ぎず、任意の支持部材に建築材を連結することができる。支持部材は、躯体や構造物、地面などに直接または間接的に固定されて建築材を支持するものであればよい。
【0030】
例えば、
図11に示すように、フェンスや外装などに使用されるルーバー構造に本発明を適用してもよい。
図11に示す例では、取付金具41が支持部材として使用され、ストリンガー42が建築材として使用される。
【0031】
取付金具41は、躯体等に固定された柱40に取り付けられる部材である。この取付金具41は、例えば、
図11に示すようなアングル材であり、柱40に対して直交する方向に突出した突出部41aを備える。
【0032】
ストリンガー42は、取付金具41に取り付けられる長尺材である。このストリンガー42は、例えば、
図11に示すような断面L字形の部材であり、L字形の一辺を成す取付部42aと他辺を成すルーバー支持部42bとを備える。取付部42aは、取付金具41の突出部41aに重ね合わせて固定される板状の部位である。ルーバー支持部42bは、ルーバー材43の裏面に固定される板状の部位である。
【0033】
取付金具41(支持部材)に対してストリンガー42(建築材)を連結する場合は、まず補助具10にナット22などのメス側の部品を取り付けておく。そして、
図11に示すように、ストリンガー42の取付部42aを、取付金具41の突出部41aに重ね合わせ、両者を貫通するようにボルト20を取り付ける。そして、取付金具41およびストリンガー42を貫通したボルト20の先端を補助具10に挿入し、ボルト20の先端をナット22の中央の貫通孔の上面にある雌ネジに押し当てる。このとき、突出部41aと補助具10との間には、隙間が形成される。その後、補助具10を上方(突出部41aの方向)に押し付けながら回転させることでボルト20とナット22とを螺着させる。ボルト20とナット22とを螺着していくと、最終的には補助具10が突出部41aに当接する位置で螺着が完了する。そして、ナット22の取り付けが終わったら、補助具10を取り外す。なお、ナット22の締め付けが足りない場合は、補助具10でナット22を取り付けた後に、レンチや電動工具で本締めを行ってもよい。
【0034】
なお、上記した
図5~11の説明では、補助具10を使用してボルト20にナット22を取り付ける例について説明したが、上記説明は逆の操作を行うことで、ボルト20からナット22や座金を取り外す作業を行うこともできる。取り外しを行う場合は、例えば、取り付けられている平座金23に対して補助具10を押し当てることで、平座金23を平座金収容部12に圧入させ、補助具10を取り付けとは反対回りに回転させればよい。これにより、ボルト20からナット22を取り外すことができる。また、取り外したナット22および座金は、補助具10に保持された状態となる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態は、指先で摘まんで操作可能なノブ状に形成されて、ナット22を回転不能に保持する補助具10を使用する。そして、支持部材および建築材を貫通したボルト20の先端を、補助具10に取り付けたナット22に挿入し、補助具10またはボルト20を回転させることでボルト20とナット22とを螺着させる。このように補助具10を介してボルト20にナット22を螺着させるため、複数の小さな部品でも落下しにくく、ナット22を安全かつ容易に取り付けることができる。また、補助具10は指先で摘まんで操作可能なノブ状であるため、狭い空間でも取り付けの作業をすることができる。特に、躯体等に固定された支持部材に建築材を固定するときには、作業スペースが限られている場合があり、しかも高所での作業が必要となる場合があるが、このような場合でも安全かつ容易に作業を行うことができる。
【0036】
また、補助具10は、ナット22に加えて座金を収容可能であり、補助具10にナット22と座金とを重ねて取り付けることができる。すなわち、複数のメス側の部品をまとめてボルト20に取り付けることができ、建築材を支持しつつ、複数の小さな部品を持って連結作業を行う必要がない。よって、作業効率が向上し、部品の落下リスクも低減する。
また、補助具10は、外周面に滑り止め部16を形成した円筒状の部材であるため、狭い空間でも作業しやすい。
【0037】
また、ボルト20を支持部材の上面側から取り付け、補助具10を支持部材の下面側から取り付けるようにすれば、ボルト20やナット22が落下しにくいので、安全性を高めることができる。
【0038】
なお、上記した実施形態においては、補助具10に貫通孔11を設け、ナット収容部14および座金収容部は、貫通孔11の一部として形成されるようにした。しかしながら、ナット収容部14および座金収容部を設ける孔は、必ずしも貫通孔11でなくてもよい。例えば、ボルト挿通部15は下面側に完全に貫通していなくてもよい。
【0039】
また、上記した実施形態においては、2つの座金収容部(平座金収容部12とばね座金収容部13)を有する補助具10について説明したが、これに限らない。例えば、使用する座金の数に合わせて座金収容部の数を増減させてもよい。
例えば、ばね座金収容部13を設けず、平座金収容部12のみを設けてもよい。
【0040】
また、平座金収容部12を設けず、ばね座金収容部13のみを設けてもよい。ばね座金収容部13のみを設ける場合は、ばね座金収容部13の径をばね座金24よりもやや(1.5mm程度)小径に形成し、ばね座金24をばね座金収容部13に手で押し込んで圧入可能としてもよい。このように構成すれば、ばね座金収容部13に取り付けたばね座金24が容易に外れないので、補助具10を逆さまにしてもばね座金24が落下しないようにすることができる。
【0041】
また、座金を3枚以上使用する場合には、座金収容部の数を3つ以上に設定してもよい。ただし、これら3つ以上の座金収容部の径は、上面10a側の方が必ず大きくなるように設定すべきである。
また、座金を使用しない場合は、座金収容部を設けなくてもよい。
【0042】
また、上記した実施形態では、ばね座金収容部13をナット収容部14よりも大きい直径で形成しているが、ばね座金収容部13とナット収容部14とを同じ直径で形成してもよい。例えば、ばね座金収容部13に収容したばね座金24が、ナット収容部14に収容したナット22の上に載るようにしてもよい。
【0043】
また、上記した実施形態においては、平座金収容部12がフラットな穴底を備えた段穴形状で形成されているが、収容部の形状はこのような態様に限らない。収容部の形状は、ナット22や座金の直径に合わせて変更することができる。
例えば、
図13に示すように、平座金収容部12の下端縁が、ばね座金用テーパ部13aに連続するように形成してもよい。
【0044】
また、
図14に示すように、ナット22の直径が座金とほぼ同じときには、平座金収容部12とばね座金収容部13とナット収容部14とを同じ直径で形成してもよい。このように、収容部を段穴形状とせず、ナット収容部14とボルト挿通部15との間だけが段穴形状となるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 補助具
10a 上面
11 貫通孔
12 平座金収容部
13 ばね座金収容部
13a ばね座金用テーパ部
14 ナット収容部
14a ナット用テーパ部
15 ボルト挿通部
16 滑り止め部
16a リブ
17 弾性変形部
20 ボルト
20a 頭部
20b 軸部
21 ボルト側座金
22 ナット
23 平座金
24 ばね座金
30 支持フレーム(支持部材)
30a 突出部
31 庇材(建築材)
32 壁面
33 ベースアングル
33a ボルト保持部
40 柱
41 取付金具(支持部材)
41a 突出部
42 ストリンガー(建築材)
42a 取付部
42b ルーバー支持部
43 ルーバー材