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特開2024-175312二酸化炭素回収装置、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法
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  • 特開-二酸化炭素回収装置、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175312
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20241211BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20241211BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20241211BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241211BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20241211BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241211BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/82
B01D53/96
B01J20/28 Z
B01J20/34 D
B01J20/34 H
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092998
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】成澤 道則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】江部 郁仁
【テーマコード(参考)】
4D002
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC07
4D002BA04
4D002BA12
4D002BA13
4D002BA20
4D002CA08
4D002DA01
4D002DA11
4D002DA16
4D002DA41
4D002DA45
4D002DA46
4D002DA47
4D002DA70
4D002EA05
4D002EA08
4D002GA01
4D002GB12
4D002HA08
4G066AA05B
4G066AA20B
4G066AA22B
4G066AA61B
4G066AA63B
4G066AB00
4G066BA09
4G066BA20
4G066CA35
4G066DA01
4G066DA03
4G066GA01
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC21
4G146JD02
(57)【要約】
【課題】共通する空間内で吸着剤への二酸化炭素の吸着と脱着とを実施することが可能な二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収装置20は、原料ガス供給口22と原料ガス排出口23と脱着ガス排出口24とを有する槽21と、第1フィルタ26と、第2フィルタ27とを備え、吸着剤33は第1フィルタ26及び第2フィルタ27で区画された空間内に収容され、吸着剤33は原料ガスの気流に乗って第2フィルタ27で捕集され、吸着剤33が第2フィルタ27で捕集された状態で吸着剤33は原料ガス中の二酸化炭素を吸着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス供給口と原料ガス排出口と脱着ガス排出口とを有する槽と、
前記槽内に設けられた第1フィルタと、
前記第1フィルタの上方に配置され、原料ガスが通過するように前記槽内に設けられた第2フィルタと、
を備え、
原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する吸着剤は、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタで区画された空間内に収容され、
前記原料ガス供給口は前記原料ガスを前記空間内に供給し、
前記原料ガス排出口は前記原料ガス供給口から前記空間に供給された原料ガスを前記槽の外側へ排出し、
前記第1フィルタは、前記吸着剤から脱着した前記二酸化炭素を含む脱着ガスが通過するように前記槽内に設けられ、
前記脱着ガス排出口は、前記第1フィルタを通過した脱着ガスを排出し、
前記原料ガスが前記空間内に供給された場合に、前記吸着剤は前記原料ガスの気流に乗って前記第2フィルタで捕集され、前記吸着剤が前記第2フィルタで捕集された状態で前記吸着剤は前記原料ガス中の二酸化炭素を吸着し、
前記原料ガスが前記空間内へ供給されない場合に、前記吸着剤は前記第2フィルタから前記空間内の脱着領域に落下し、前記吸着剤が前記脱着領域に落下した状態で前記吸着剤に吸着された二酸化炭素が脱着される、二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記原料ガスが前記空間内へ供給されない場合には、前記吸着剤は、前記第1フィルタよりも上に載置された状態で、前記吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着する、請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記原料ガスは空気である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記吸着剤のメディアン径は0.5μm以上300μm以下である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記第2フィルタで捕集された場合に形成される前記吸着剤の層の厚さは10mm以下である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記第2フィルタの前記吸着剤が捕集された面とは反対側の面から前記吸着剤が捕集された面に向かって流れるガスを送る送風部を備える、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
前記吸着剤を加熱する加熱装置を備える、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
前記第1フィルタが設けられた前記脱着領域における前記槽の原料ガス流路断面積は、前記第2フィルタが設けられた吸着領域における前記槽の原料ガス流路断面積よりも小さい、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
前記槽は水蒸気供給口を有し、前記水蒸気供給口は水蒸気を前記空間内に供給する、請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
請求項9に記載の二酸化炭素回収装置と、
気液分離装置と、
を備える二酸化炭素回収システムであって、
前記気液分離装置は、前記脱着ガス排出口から排出された脱着ガスを、二酸化炭素を含むガスと水とに分離する気液分離部を含む、二酸化炭素回収システム。
【請求項11】
前記水蒸気供給口に接続された水蒸気供給装置をさらに備え、
前記水蒸気供給装置は、前記気液分離装置で分離された水を貯留する貯留部と、前記貯留部の水から生成された水蒸気を加熱する加熱器とを含み、
前記加熱器で加熱された水蒸気は、前記水蒸気供給口を介して前記空間内に供給される、請求項10に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項12】
原料ガス供給口と原料ガス排出口と脱着ガス排出口とを有する槽と、
前記槽内に設けられた第1フィルタと、
前記第1フィルタの上方に配置され、原料ガスが通過するように前記槽内に設けられた第2フィルタと、
を備える二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法であって、
原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する吸着剤は、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタで区画された空間内に収容され、
前記原料ガス供給口は前記原料ガスを前記空間内に供給し、
前記原料ガス排出口は前記原料ガス供給口から前記空間に供給された原料ガスを前記槽の外側へ排出し、
前記第1フィルタは、前記吸着剤から脱着した前記二酸化炭素を含む脱着ガスが通過するように前記槽内に設けられ、
前記脱着ガス排出口は、前記第1フィルタを通過した脱着ガスを排出し、
前記二酸化炭素回収方法は、
前記原料ガスを前記空間内に供給し、前記吸着剤を前記原料ガスの気流に乗せて前記第2フィルタで捕集する工程と、
前記吸着剤が前記第2フィルタで捕集された状態で前記吸着剤によって前記原料ガス中の二酸化炭素を吸着する工程と、
前記原料ガスの前記空間内への供給を停止し、前記吸着剤を前記第2フィルタから前記空間内の脱着領域に落下させる工程と、
前記吸着剤が前記脱着領域に落下した状態で前記吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着する工程と、
を含む、二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素回収装置、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因として問題視されており、世界的に二酸化炭素濃度の上昇を抑制する動きが広まっている。従来、二酸化炭素吸着剤を用いて二酸化炭素を分離及び回収する二酸化炭素分離回収システムが知られている。
【0003】
特許文献1には、吸着剤が流入する吸着容器と、吸着容器で二酸化炭素を吸着した吸着剤が流入する再生容器と、再生容器で二酸化炭素が離脱した吸着剤を吸着容器へ移送する移送装置とを備える二酸化炭素分離回収システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-69423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の装置は、吸着容器と再生容器とを備え、移送装置を用いて二酸化炭素吸着剤を再生容器から吸着容器へ移送するなどして二酸化炭素の吸着と脱着とを繰り返している。このように、従来の装置は、異なる容器と移送手段を用いているため、装置が大型化してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、共通する空間内で吸着剤への二酸化炭素の吸着と脱着とを実施することが可能な二酸化炭素回収装置、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る二酸化炭素回収装置は、原料ガス供給口と原料ガス排出口と脱着ガス排出口とを有する槽と、槽内に設けられた第1フィルタと、第1フィルタの上方に配置され、原料ガスが通過するように槽内に設けられた第2フィルタとを備える。原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する吸着剤は、第1フィルタ及び第2フィルタで区画された空間内に収容され、原料ガス供給口は原料ガスを空間内に供給する。原料ガス排出口は原料ガス供給口から空間に供給された原料ガスを槽の外側へ排出する。第1フィルタは、吸着剤から脱着した二酸化炭素を含む脱着ガスが通過するように槽内に設けられる、脱着ガス排出口は、第1フィルタを通過した脱着ガスを排出する。原料ガスが空間内に供給された場合に、吸着剤は原料ガスの気流に乗って第2フィルタで捕集され、吸着剤が第2フィルタで捕集された状態で吸着剤は原料ガス中の二酸化炭素を吸着する。原料ガスが空間内へ供給されない場合に、吸着剤は第2フィルタから空間内の脱着領域に落下し、吸着剤が脱着領域に落下した状態で吸着剤に吸着された二酸化炭素が脱着される。
【0008】
原料ガスが空間内へ供給されない場合には、吸着剤は、第1フィルタよりも上に載置された状態で、吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着してもよい。
【0009】
原料ガスは空気であってもよい。
【0010】
吸着剤のメディアン径は0.5μm以上300μm以下であってもよい。
【0011】
第2フィルタで捕集された場合に形成される吸着剤の層の厚さは10mm以下であってもよい。
【0012】
二酸化炭素回収装置は、第2フィルタの吸着剤が捕集された面とは反対側の面から吸着剤が捕集された面に向かって流れるガスを送る送風部を備えていてもよい。
【0013】
二酸化炭素回収装置は、吸着剤を加熱する加熱装置を備えていてもよい。
【0014】
第1フィルタが設けられた脱着領域における槽の原料ガス流路断面積は、第2フィルタが設けられた吸着領域における槽の原料ガス流路断面積よりも小さくてもよい。
【0015】
槽は水蒸気供給口を有し、水蒸気供給口は水蒸気を空間内に供給してもよい。
【0016】
本開示に係る二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素回収装置と、気液分離装置とを備えていてもよい。気液分離装置は、脱着ガス排出口から排出された脱着ガスを、二酸化炭素を含むガスと水とに分離する気液分離部を含んでいてもよい。
【0017】
本開示に係る二酸化炭素回収システムは、水蒸気供給口に接続された水蒸気供給装置をさらに備えていてもよい。水蒸気供給装置は、気液分離装置で分離された水を貯留する貯留部と、貯留部の水から生成された水蒸気を加熱する加熱器とを含み、加熱器で加熱された水蒸気は、水蒸気供給口を介して空間内に供給されてもよい。
【0018】
本開示に係る二酸化炭素回収方法は、原料ガス供給口と原料ガス排出口と脱着ガス排出口とを有する槽と、槽内に設けられた第1フィルタと、第1フィルタの上方に配置され、原料ガスが通過するように槽内に設けられた第2フィルタとを備える二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法である。原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する吸着剤は、第1フィルタ及び第2フィルタで区画された空間内に収容される。原料ガス供給口は原料ガスを空間内に供給する。原料ガス排出口は原料ガス供給口から空間に供給された原料ガスを槽の外側へ排出する。第1フィルタは、吸着剤から脱着した二酸化炭素を含む脱着ガスが通過するように槽内に設けられる。脱着ガス排出口は、第1フィルタを通過した脱着ガスを排出する。二酸化炭素回収方法は、原料ガスを空間内に供給し、吸着剤を原料ガスの気流に乗せて第2フィルタで捕集する工程を含む。二酸化炭素回収方法は、吸着剤が第2フィルタで捕集された状態で吸着剤によって原料ガス中の二酸化炭素を吸着する工程を含む。二酸化炭素回収方法は、原料ガスの空間内への供給を停止し、吸着剤を第2フィルタから空間内の脱着領域に落下させる工程を含む。二酸化炭素回収方法は、吸着剤が脱着領域に落下した状態で吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着する工程を含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、共通する空間内で吸着剤への二酸化炭素の吸着と脱着とを実施することが可能な二酸化炭素回収装置、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る二酸化炭素回収システムの吸着工程における様子を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る二酸化炭素回収システムの減圧工程における様子を示す概略図である。
図3】一実施形態に係る二酸化炭素回収システムの加熱工程における様子を示す概略図である。
図4】一実施形態に係る二酸化炭素回収システムの水蒸気供給工程における様子を示す概略図である。
図5】一実施形態に係る脱着領域において、原料ガスの流し始めの様子を示す概略図である。
図6】一実施形態に係る脱着領域において、原料ガスを流してから少し時間が経過した後の様子を示す概略図である。
図7】一実施形態に係る脱着領域における脱着の様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
まず、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム1について、図1を用いて説明する。図1は、一実施形態に係る二酸化炭素回収システム1の吸着工程における様子を示す概略図である。図1に示すように、二酸化炭素回収システム1は、原料ガス供給装置10と、二酸化炭素回収装置20と、気液分離装置50と、水蒸気供給装置70とを備えている。
【0023】
原料ガス供給装置10は、二酸化炭素回収装置20に原料ガスを供給する。原料ガスは、二酸化炭素を含んでおり、本実施形態においては空気である。しかしながら、原料ガスは、二酸化炭素を含んでいればよい。例えば、火力発電所及び製鉄所などのような施設で燃料が燃焼されることによって発生した燃焼排気ガス、化学工場等の施設で生成されるプロセス排気ガス、又は、石油精製及び石油化学の工程で生成される二酸化炭素を含むガスであってもよい。
【0024】
原料ガス供給装置10は、原料ガス配管11と、吸込みフード12と、送風機13と、第1ダンパ14と、第2ダンパ15とを含んでいる。原料ガス配管11には、吸込みフード12と、送風機13と、第1ダンパ14と、第2ダンパ15とが接続されている。吸込みフード12は、大気中の空気である原料ガスの吸込み口である。設置環境によっては、原料ガスに粉塵などが混在しているため、吸込みフードにはフィルタを設け、それらが槽21内へ導入されるのを防止する。原料ガスは、送風機13によって二酸化炭素回収装置20に送風される。送風機13より二酸化炭素回収装置20側において、原料ガス配管11は分岐しており、分岐した原料ガス配管11は第1原料ガス供給口22a及び第2原料ガス供給口22bに接続されている。第1原料ガス供給口22aに接続された原料ガス配管11には第1ダンパ14が設けられている。第2原料ガス供給口22bに接続された原料ガス配管11には第2ダンパ15が設けられている。
【0025】
二酸化炭素回収装置20は、槽21と、第1フィルタ26と、第2フィルタ27と、送風部29と、加熱装置30とを備えている。第1フィルタ26及び第2フィルタ27は槽21内に設けられている。
【0026】
槽21は、第1空間S1と、第1空間S1よりも上側に配置された第2空間S2と、第2空間S2よりも上側に配置された第3空間S3とを有している。第1空間S1と第2空間S2とは、第1フィルタ26によって区画されている。第2空間S2と第3空間S3とは第2フィルタ27によって区画されている。吸着剤33は、第1フィルタ26及び第2フィルタ27で区画された第2空間S2内に収容されている。第2空間S2は、脱着領域S2aと、脱着領域S2aよりも上方に配置された吸着領域S2bとを含んでいる。吸着領域S2bでは、吸着剤33は原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する。脱着領域S2aでは、吸着剤33に吸着された二酸化炭素が脱着される。
【0027】
槽21は、原料ガス供給口22と、原料ガス排出口23と、脱着ガス排出口24と、水蒸気供給口25とを有している。原料ガス供給口22は、原料ガス供給装置10と接続されており、原料ガスを第2空間S2内に供給する。原料ガス供給口22は、第1原料ガス供給口22a及び第2原料ガス供給口22bを含んでいる。第1原料ガス供給口22aは、第1フィルタ26よりも鉛直方向下側に配置されており、第1空間S1に原料ガスを供給する。第2原料ガス供給口22bは、第1フィルタ26よりも鉛直方向上側に配置されており、第2空間S2に原料ガスを供給する。
【0028】
原料ガス排出口23は、原料ガス供給口22から第2空間S2内に供給された原料ガスを槽21の外側へ排出する。具体的には、原料ガス排出口23は、第2フィルタ27の上側に配置されており、第2フィルタ27を通過した第3空間S3内の原料ガスを槽21の外側へ排出する。原料ガス排出口23は原料ガス排出流路40と接続されており、第3空間S3から原料ガス排出口23を介して原料ガス排出流路40に原料ガスが排出される。原料ガス排出流路40には第3ダンパ41が設けられている。第3ダンパ41は、原料ガス排出流路40内を開閉可能であり、原料ガス排出流路40を開いている場合には原料ガスが槽21内から排出され、原料ガス排出流路40を閉じている場合には槽21内から原料ガスが排出されないように構成されている。
【0029】
脱着ガス排出口24は、第1フィルタ26を通過した脱着ガスを排出する。脱着ガス排出口24は第1フィルタ26の下側に配置されている。脱着ガス排出口24は気液分離装置50と接続されており、吸着剤33から脱着した二酸化炭素及び水を含む脱着ガスが第1空間S1から気液分離装置50に脱着ガス排出口24を介して排出される。
【0030】
水蒸気供給口25は、水蒸気を第2空間S2内に供給する。水蒸気供給口25から吸着剤33に水蒸気が供給されることにより、吸着剤33から二酸化炭素の脱着を促進することができる。水蒸気供給口25は水蒸気供給装置70と接続されており、水蒸気供給装置70から水蒸気供給口25を介して第2空間S2に水蒸気が供給される。
【0031】
第1フィルタ26は槽21内に設けられている。具体的には、第1フィルタ26は、原料ガス供給口22から供給された原料ガスが通過するように槽21内に設けられている。また、第1フィルタ26は、吸着剤33から脱着した二酸化炭素を含む脱着ガスが通過するように槽21内に設けられている。第1フィルタ26は、本実施形態において、複数の孔を有する多孔板を含んでいる。
【0032】
第2フィルタ27は、第1フィルタ26の上方に配置され、原料ガスが通過するように槽内21に設けられている。このため、後述するように、吸着工程では、第2フィルタ27の表面に吸着剤33が捕集され、吸着剤33の薄い層を形成する。第2フィルタ27は、第1フィルタ26の上方に配置されている。本実施形態において、第2フィルタ27は、バグフィルタのように、複数の円筒状ろ布を含んでいる。円筒状ろ布の一端はプレート28に取り付けられており、もう一端は自由端となっている。これにより、第2フィルタ27の表面積が大きくなるため、吸着剤33の層が薄く形成される。したがって、粒子径が小さい吸着剤33の層を原料ガスが通過しても圧力損失を低く抑えることができる。
【0033】
第2フィルタ27で捕集された場合に形成される吸着剤33の層の厚さは10mm以下であってもよい。吸着剤33の厚さが10mm以下である場合、圧力損失を抑え、原料ガスを供給する送風機の動力を低減することができる。第2フィルタ27で捕集された吸着剤33の層の厚さは、1mm以上であってもよい。吸着剤33の層の厚さが1mm以上である場合、吸着剤33による二酸化炭素の吸着量を多くすることができる。なお、層の厚さは、第2フィルタ27で捕集されて形成された吸着剤33の層の厚さの平均値を算出することによって得ることができる。
【0034】
送風部29は、第2フィルタ27の吸着剤33が捕集された面とは反対側の面から吸着剤33が捕集された面に向かって流れるガスを送る。送風部29のガス送風口は、第3空間S3内であって、第2フィルタ27の上側に配置されている。第2フィルタ27において、第3空間S3側から吸着剤33が捕集された第2空間S2に向けて、原料ガスの流れと反対方向に送風部29からガスが送られるため、第2フィルタ27で捕集された吸着剤33の落下を促進することができる。送風部29は、圧縮空気を瞬間的に噴射するパルスジェット式で第2フィルタ27から吸着剤33を落下させてもよい。空気が勢いよく噴射されるため、第2フィルタ27が振動し、第2フィルタ27に捕集された吸着剤33の落下をさらに促進することができる。なお、棒などを用いて第2フィルタ27を振動させたり、第2フィルタ27をプレート28ごと振動させたりすることによって吸着剤33を払い落としてもよい。また、送風部29を用いずに、第2フィルタ27で捕集された吸着剤33を、自然落下によって第2フィルタ27から落下させてもよい。
【0035】
加熱装置30は、吸着剤33を加熱する。吸着剤33を加熱することにより、吸着剤33に吸着された二酸化炭素の脱着を促進することができる。加熱装置30は、加熱器31と、加熱器31に電気的に接続された交流電源32とを含んでいる。加熱器31は、交流電源32から電気が流れることによって発熱する。加熱器31は、吸着剤33の周囲を取り囲むように設けられていてもよく、吸着剤33の内部に埋設されていてもよい。加熱装置30は、バンドヒータ、フィルムヒータ、プレートヒータ、シーズヒータ、チューブヒータ、ホースヒータ、プラグヒータ、及びフランジヒータからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。また、加熱装置30は、誘導加熱、抵抗加熱、マイクロ波加熱、ミリ波加熱、及び、熱交換器からなる群より選択される少なくとも1種によって吸着剤33を加熱してもよい。熱交換器は、吸着剤33に配管を配置し配管内へ温水や蒸気を供給してもよい。なお、交流電源32は直流電源であってもよい。
【0036】
吸着剤33は、原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する。吸着剤33のメディアン径は0.5μm以上300μm以下であってもよい。吸着剤33のメディアン径が0.5μm以上である場合、第2フィルタ27によって吸着剤33を容易に捕捉することが容易になる。吸着剤33のメディアン径が300μm以下である場合、吸着剤33が原料ガスの気流に乗って、第2フィルタ27へ容易に移動することができる。また、吸着剤33のメディアン径が小さいと、単位重量当たりの吸着量が大きいため、吸着剤33の使用量を低減することができる。吸着剤33のメディアン径は1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。また、吸着剤33のメディアン径は100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。なお、メディアン径(D50)は、レーザ回折・散乱法により測定された体積基準で50%の値である。
【0037】
吸着剤33は、多孔質体、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。これらの材料は、二酸化炭素を効率的に吸着することができる。多孔質体は、ゼオライト、アルミナ、シリカ、樹脂、粘土及び活性炭からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。アルカリ金属を含む吸着剤33は、アルカリ金属の炭酸塩、及びリチウム遷移金属複合酸化物の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。アルカリ土類金属を含む吸着剤33は、アルカリ土類金属の酸化物などを含んでいてもよい。
【0038】
吸着剤33は、塩基性物質が表面に担持された多孔質体、及び、表面が塩基で修飾された多孔質体の少なくともいずれか一方を含んでもよい。このような材料は、比表面積が大きく、塩基の二酸化炭素に対する反応性が高いことから、多くの二酸化炭素を吸着することが可能となる。多孔質体は、上述したものを用いてもよい。また、塩基性物質は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物及び第3級アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種のアミン化合物を含んでいてもよい。また、多孔質体の表面を修飾する塩基は、アミノ基であってもよい。これらの材料は、多孔質体を上述したアミン化合物に浸漬後、乾燥させ、多孔質体の表面に塩基性物質を担持又は塩基で修飾することにより得ることができる。あるいは、これらの材料は、多孔質体表面とアミン化合物の脱アルコール反応などの化学的な反応を用い、多孔質体を塩基性物質によって修飾することで得ることができる。
【0039】
気液分離装置50は、脱着ガス排出口24から排出された脱着ガスを、二酸化炭素を含むガスと水とに分離する。気液分離装置50は、冷却器51と、気液分離部52とを含んでいる。脱着ガス排出口24と、気液分離部52及び貯留部71とは、脱着ガス配管53によって接続されている。脱着ガス配管53には、脱着ガスを冷却する冷却器51が接続されている。脱着ガス配管53は、冷却器51よりも気液分離部52及び貯留部71側において分岐しており、分岐した脱着ガス配管53は気液分離部52及び貯留部71にそれぞれ接続されている。気液分離部52に接続された脱着ガス配管53にはバルブ54が設けられている。貯留部71に接続された脱着ガス配管53にはバルブ55が設けられている。脱着ガス排出口24から排出された脱着ガスは、脱着ガス配管53を介して気液分離部52に供給される。脱着ガスは冷却器51の通過によって冷却され、脱着ガス中の水分が凝縮する。気液分離部52は、脱着ガス排出口24から排出された脱着ガスを、二酸化炭素を含むガスと水とに分離する。気液分離部52は、本実施形態においてタンクである。
【0040】
気液分離部52及び貯留部71には、排気配管56が分岐して接続されている。排気配管56の一端には気液分離部52及び貯留部71が接続されており、排気配管56のもう一端には二酸化炭素利用ライン及び放出ラインが接続されている。分岐して気液分離部52に接続された排気配管56には、バルブ57が設けられている。分岐して貯留部71に接続された排気配管56には、バルブ58が設けられている。気液分離部52及び貯留部71から合流した排気配管56には、真空ポンプ59が設けられている。真空ポンプ59は、槽21内の第1空間S1、第2空間S2及び第3空間S3、並びに気液分離部52及び貯留部71内を減圧する。真空ポンプ59から分岐した排気配管56には、二酸化炭素利用ライン及び放出ラインが接続されている。
【0041】
気液分離部52には第1熱交換器81が設けられており、第1熱交換器81は気液分離部52内の液体の水に接触している。第1熱交換器81には温調水タンク83の水が循環される。第1熱交換器81の給水口と温調水タンク83とは第1給水配管84によって接続されている。第1熱交換器81の排水口と温調水タンク83とは第1返送配管85によって接続されている。第1給水配管84には、供水ポンプ86と第4バルブ87とが設けられている。
【0042】
貯留部71には第2熱交換器82が設けられており、第2熱交換器82は貯留部71内の液体の水に接触している。第2熱交換器82には温調水タンク83の水が循環される。第2熱交換器82の給水口と温調水タンク83とは第2給水配管88を介して接続されている。具体的には、第2給水配管88は、供水ポンプ86及び第4バルブ87の間の第1給水配管84と、第2熱交換器82の給水口とに接続されている。第2給水配管88には第5バルブ89が設けられている。第2熱交換器82の排水口と温調水タンク83とは第2返送配管90を介して接続されている。具体的には、第2返送配管90は、第2熱交換器82の排水口と、第1返送配管85とに接続されている。
【0043】
温調水タンク83には加熱器91が設けられており、加熱器91は温調水タンク83内の液体の水に接触している。加熱器91には、交流電源92が電気的に接続されている。加熱器91に交流電源92から電流が流れることによって、加熱器91が発熱する。なお、交流電源92は直流電源であってもよい。また温調水タンク83に配管を配置し配管内へ温水や蒸気を供給する熱交換器を加熱器91として用いてもよい。
【0044】
気液分離部52及び貯留部71には、水蒸気配管72が分岐して接続されている。水蒸気配管72の一端には気液分離部52及び貯留部71が接続されており、水蒸気配管72のもう一端には二酸化炭素回収装置20の水蒸気供給口25が接続されている。分岐して気液分離部52に接続された水蒸気配管72には、バルブ73が設けられている。分岐して貯留部71に接続された水蒸気配管72には、バルブ74が設けられている。気液分離部52及び貯留部71から合流した水蒸気配管72には、加熱器75が設けられている。加熱器75には交流電源76が電気的に接続されている。加熱器75は、交流電源76から電気が流れることによって発熱する。なお、交流電源76は直流電源であってもよい。
【0045】
水蒸気供給装置70は、水を貯留する貯留部71と、貯留部71の水から生成された水蒸気を加熱する加熱器75とを含んでいる。加熱器75で加熱された水蒸気は、水蒸気供給口25を介して第2空間S2内に供給される。このような構成により、脱着領域S2aに集まった吸着剤33を内部から加熱すると共に二酸化炭素の分圧を低くすることができるため、吸着剤33に吸着された二酸化炭素の脱着を促進することができる。また水蒸気の供給により、槽21内の残留酸素が排出されるため、吸着剤33にアミン化合物を用いた場合には、残留酸素によりアミンが酸化されて劣化することを抑制することができる。貯留部71は、気液分離装置50で分離された水を貯留してもよい。これにより、気液分離装置50で回収した水分を蒸気源として再利用することができる。貯留部71は、本実施形態においては、タンクである。
【0046】
次に、図1図4を用いて本実施形態に係る二酸化炭素回収方法について説明する。二酸化炭素回収方法は、吸着工程と、減圧工程と、加熱工程と、水蒸気供給工程とを含んでおり、この順番で繰り返し実施される。
【0047】
(吸着工程)
図1に示すように、吸着工程は、原料ガスを第2空間S2内に供給し、吸着剤33を原料ガスの気流に乗せて第2フィルタ27で捕集する工程を含んでいる。また、吸着工程は、吸着剤33が第2フィルタ27で捕集された状態で吸着剤33によって原料ガス中の二酸化炭素を吸着する工程を含んでいる。具体的には、吸着工程では、二酸化炭素回収装置20の送風機13が駆動し、第1ダンパ14及び第2ダンパ15が開かれる。そして、原料ガス供給口22は、原料ガスを第2空間S2内に供給する。具体的には、第1原料ガス供給口22aは第1空間S1に原料ガスを供給し、第2原料ガス供給口22bは第2空間S2に原料ガスを供給する。また、第3ダンパ41が開かれ、原料ガス排出口23は、原料ガス供給口22から第2空間S2内に供給された原料ガスを槽21の外側へ排出する。一方、バルブ54、バルブ55、バルブ57、バルブ58、バルブ60、バルブ61、バルブ73及びバルブ74は閉じられている。
【0048】
第1原料ガス供給口22aから第1空間S1内に供給された原料ガスは、第1フィルタ26を通過して第2空間S2内に供給され、第2原料ガス供給口22bから第2空間S2内に供給された原料ガスと合流する。第2空間S2内に供給された原料ガスは、第2フィルタ27を通過し、第3空間S3から槽21の外側へ排出される。このように、第2空間S2内に供給された原料ガスは、第2フィルタ27を通過する。そのため、原料ガスが第2空間S2内に供給された場合に、吸着剤33は原料ガスの気流に乗って第2フィルタ27で捕集され、吸着剤33が第2フィルタ27で捕集された状態で吸着剤33は原料ガス中の二酸化炭素を吸着する。吸着剤33は原料ガスの気流に乗って第2フィルタ27で捕集されるため、移送コンベヤのような装置はなくてもよい。吸着剤33は第2フィルタ27に捕集された状態で原料ガスが吸着剤33に供給され続けるため、吸着剤33の層が形成され、吸着剤33は、原料ガス中の二酸化炭素を吸着することができる。
【0049】
第1フィルタ26が設けられた脱着領域S2aにおける槽21の原料ガス流路断面積は、第2フィルタ27が設けられた吸着領域S2bにおける槽21の原料ガス流路断面積よりも小さい。具体的には、槽21の内径は、吸着領域S2bよりも脱着領域S2aの方が小さい。そのため、脱着領域S2aでは原料ガスの流速が早く、吸着剤33が吹き飛びやすく、吸着領域S2bでは原料ガスの流速が遅くなり、吸着剤33による二酸化炭素の吸着効率を高くすることができる。
【0050】
吸着工程において、原料ガスが槽21内に供給されている状態で、送風部29は第2フィルタ27にガスを吹き付け、吸着剤33を第2フィルタ27から一時的に落下させてもよい。第2フィルタ27に捕集された吸着剤33は、均一な厚さの層を形成しない場合があり、この場合には吸着剤33の層厚が薄い部分を原料ガスが通り抜ける傾向にある。そのため、吸着剤33が吸着する二酸化炭素の吸着量にムラが生じるおそれがある。そこで、送風部29によって第2フィルタ27から吸着剤33を一旦払い落とし、原料ガスの流れによって、吸着剤33を舞わせる。これにより、吸着剤33の層を新たに形成することができ、吸着剤33の捕集状態の偏り、及び吸着剤33に吸着した二酸化炭素の濃度勾配を解消することができる。
【0051】
(減圧工程)
図2に示すように、減圧工程は、原料ガスの第1空間S1及び第2空間S2内への供給を停止し、吸着剤33を第2フィルタ27から第2空間S2内の脱着領域S2aに落下させる工程である。減圧工程では、槽21内が減圧され、吸着剤33が第2フィルタ27から落下する。減圧工程では、吸着工程と比較し、送風機13の駆動が停止し、第1ダンパ14及び第2ダンパ15が閉じられる。また、減圧工程では、バルブ54、バルブ57及びバルブ61が開かれ、真空ポンプ59が駆動する。
【0052】
これにより、原料ガスが第2空間S2内へ供給されなくなり、吸着剤33は第2フィルタ27から第2空間S2内の脱着領域S2aに落下する。また、槽21内のガスは、脱着ガス配管53、気液分離部52及び排気配管56を通って放出ラインに放出される。そのため、槽21内の第1空間S1、第2空間S2及び第3空間S3が減圧される。減圧時の槽内の圧力は、例えば、-70kPa(g)~-95kPa(g)であってもよい。また、槽21内のガスは冷却器51で冷却され、ガス中の水分が凝縮する。凝縮した水は、気液分離部52で気液分離される。
【0053】
減圧工程では、送風部29によって、吸着剤33が第2フィルタ27から落下するのを促進してもよい。また、吸着剤33による二酸化炭素の吸着が飽和に達するような時間になった場合に、送風部29によって、吸着剤33を第2フィルタ27から脱着領域S2aに落下させてもよい。第2フィルタ27から落下した吸着剤33は、脱着領域S2aに集まって容積の小さい充填層を形成する。
【0054】
(加熱工程)
図3に示すように、加熱工程では、吸着剤33が脱着領域S2aに落下した状態で、吸着剤33が加熱装置30によって加熱され、吸着剤33に吸着された二酸化炭素が脱着される。所定の圧力に減圧された状態で吸着剤33が加熱装置30によって加熱されるため、吸着剤33に吸着された二酸化炭素の脱着が促進される。加熱された吸着剤33の温度は、例えば80℃~100℃であってもよい。
【0055】
加熱工程では、減圧工程と比較し、バルブ60が開かれ、バルブ61が閉じられる。これにより、吸着剤33から脱着した二酸化炭素を含む脱着ガスは、脱着ガス配管53、気液分離部52及び排気配管56を通って二酸化炭素利用ラインに放出される。この際、吸着剤33に吸着していた大気中の水分が二酸化炭素と共に脱着するが、脱着ガスを冷却することにより、気液分離部52でドレンとして回収することができる。水分は気液分離部52で回収することができるため、二酸化炭素濃度が高くなったガスを利用先である二酸化炭素利用ラインへ送ることができる。
【0056】
本実施形態では、脱着領域S2aにおける槽21の原料ガス流路断面積は、吸着領域S2bにおける槽21の原料ガス流路断面積よりも小さい。したがって、容積の小さい脱着領域S2aに吸着剤33を集めて加熱装置30で加熱するため、吸着剤33の加熱時間を短縮することができる。
【0057】
(水蒸気供給工程)
図4に示すように、水蒸気供給工程では、吸着剤33が脱着領域S2aに落下した状態で、水蒸気供給装置70によって槽21内に水蒸気が供給され、吸着剤33に吸着された二酸化炭素が脱着される。所定の圧力に減圧された状態で槽21内に水蒸気が供給されることにより、水蒸気が選択的に吸着剤33へ供給され、二酸化炭素の分圧を低くすることができるため、吸着剤33に吸着された二酸化炭素の脱着を促進することができる。また、高温の水蒸気が吸着剤33に供給されるため、脱着領域S2aに集まった吸着剤33を内部から加熱することができる。
【0058】
水蒸気供給工程では、加熱工程と比較し、バルブ74が開かれる。バルブ74が開いている場合には、槽21内と貯留部71とは連通しており、槽21内の圧力と貯留部71内の圧力が同じになっている。槽21内に供給される水蒸気の温度は、槽21内における圧力の飽和温度よりも5℃~20℃、より好ましくは5℃~10℃程度高い温度であってもよい。水蒸気の温度をこのような範囲とすることにより、水蒸気が槽21内で凝縮することを抑制し、脱着領域S2aに集まった吸着剤33の充填層へ水蒸気を分散して流通させることができ、供給する水蒸気量を低減できる。
【0059】
貯留部71内の水は第2熱交換器82で加熱されて蒸発し、蒸発した水蒸気が加熱器75でさらに加熱される。槽21内の圧力における飽和水蒸気から過熱水蒸気を製造するため、外部環境の変化に応じて過熱のためのエネルギを変化させて安定した過熱水蒸気を供給できる。貯留部71内の温度は、圧力条件で決まる飽和温度になるように維持されてもよい。この場合、飽和温度よりも5℃~10℃程度高い温度の温水を供給することで水蒸気を生成することができる。なお、圧力が-80kPa(g)である場合の飽和温度は約60℃であり、圧力が-90kPa(g)である場合の飽和温度は約45℃である。
【0060】
水蒸気供給工程では、加熱工程と比較し、供水ポンプ86が駆動し、第5バルブ89が開いている。これにより、温調水タンク83の水を用いて貯留部71の水を加熱している。温調水タンク83の水は、工場などの排熱で得られた温水を用いてもよい。また、貯留部71の水は、電気ヒータで加熱してもよい。
【0061】
水蒸気供給工程が実施された後には、吸着工程に戻る。すなわち、吸着工程では、水蒸気供給工程と比較し、バルブ54、バルブ57、バルブ60、バルブ74及び第5バルブ89が閉じられ、加熱装置30、冷却器51、真空ポンプ59及び供水ポンプ86の駆動が停止する。一方、二酸化炭素回収装置20の送風機13が駆動し、第1ダンパ14、第2ダンパ15及び第3ダンパ41が開かれる。以上のように、吸着工程と減圧工程と加熱工程と水蒸気供給工程とが繰り返される。なお、減圧条件から吸着工程に移行する際には、図示しない真空破壊弁などを用いて槽21内の圧力を大気圧まで回復させてもよい。
【0062】
次に、脱着領域S2aについて、図5図7を用いて、さらに詳細に説明する。図5は、一実施形態に係る脱着領域S2aにおいて、原料ガスの流し始めの様子を示す概略図である。図6は、一実施形態に係る脱着領域S2aにおいて、原料ガスを流してから少し時間が経過した後の様子を示す概略図である。図7は、一実施形態に係る脱着領域S2aにおける脱着の様子を示す概略図である。
【0063】
図5に示すように、第1フィルタ26の上には、吸着剤33よりも大きい平均粒子径を有する大径粒子110の層が配置されてもよい。大径粒子110の層の上には、吸着剤33が載置されている。吸着剤33の下側に大径粒子110の層を挿入することにより、吸着剤33が第1フィルタ26内に詰まるのを抑制することができる。
【0064】
第1フィルタ26には、散気ノズル120が貫通している。散気ノズル120は、配管121と被覆部122とを含んでいる。配管121は第1フィルタ26及び大径粒子110の層を貫通している。配管121の第1端部は第1フィルタ26の下側の第1空間S1に配置されており、第1端部の反対側である第2端部は大径粒子110の層の上側の第2空間S2に配置されている。配管121の第2端部には被覆部122が設けられている。被覆部122は、天板と天板の端部から下側に向かって延在する周壁とを含んでおり、断面略逆U字状の形状を有している。被覆部122は、配管121の第2端部側の開口部との間に空間を空けて、かつ、配管121の上端よりも被覆部122の周壁の下端が下側に配置されるように、配管121の第2端部側の開口部を覆っている。吸着剤33が脱着領域S2aに配置されている場合には、散気ノズル120の被覆部122は吸着剤33に埋没するように設けられている。
【0065】
散気ノズル120における配管121の第1端部から原料ガスが供給されると、原料ガスは配管121の第2端部から排出される。原料ガスは、被覆部122の天板に当たって跳ね返り、被覆部122の内壁と配管121の外壁との間を通って、下側に向かって噴出する。散気ノズル120から噴出した原料ガスは、吸着剤33を内部から吹き飛ばす。また、第2原料ガス供給口22bを介して供給された原料ガスは、上方から吸着剤33を吹き飛ばす。
【0066】
図5及び図6に示すように、第2原料ガス供給口22bは、散気ノズル120の配管121の第2端部よりも上方に設けられており、被覆部122よりも上側の吸着剤33を吹き飛ばす。これにより、散気ノズル120より上側の吸着剤33の量を減らすことができるため、散気ノズル120から噴出する原料ガスの圧力損失を低減でき、被覆部122よりも下側の吸着剤33を容易に吹き飛ばすことができる。また、第1フィルタ26は、原料ガスが通過可能であるため、第1フィルタ26上に載置された吸着剤33が脱着領域S2aに残留するのを抑制することができる。
【0067】
図7に示すように、加熱工程及び水蒸気供給工程では、吸着剤33に吸着した二酸化炭素を脱着する。原料ガスが空気である場合、例えば、空気の1/1000程度の流量の二酸化炭素が脱着され、第1フィルタ26を通過する。第1フィルタ26を通過させて二酸化炭素を回収するため、二酸化炭素の流量が少なくても、二酸化炭素を容易に回収することができる。
【0068】
以上の通り、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置20は、原料ガス供給口22と原料ガス排出口23と脱着ガス排出口24とを有する槽21を備えている。二酸化炭素回収装置20は、槽21内に設けられた第1フィルタ26と、第1フィルタ26の上方に配置され、原料ガスが通過するように槽21内に設けられた第2フィルタ27とを備えている。原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する吸着剤33は、第1フィルタ26及び第2フィルタ27で区画された第2空間S2内に収容される。原料ガス供給口22は原料ガスを第2空間S2内に供給する。原料ガス排出口23は原料ガス供給口22から第2空間S2に供給された原料ガスを槽21の外側へ排出する。第1フィルタ26は、吸着剤33から脱着した二酸化炭素を含む脱着ガスが通過するように槽21内に設けられる。脱着ガス排出口24は、第1フィルタ26を通過した脱着ガスを排出する。原料ガスが第2空間S2内に供給された場合に、吸着剤33は原料ガスの気流に乗って第2フィルタ27で捕集され、吸着剤33が第2フィルタ27で捕集された状態で吸着剤33は原料ガス中の二酸化炭素を吸着する。原料ガスが第2空間S2内へ供給されない場合に、吸着剤33は第2フィルタ27から第2空間S2内の脱着領域S2aに落下し、吸着剤33が脱着領域S2aに落下した状態で吸着剤33に吸着された二酸化炭素が脱着される。
【0069】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素回収装置20を用いた二酸化炭素回収方法である。二酸化炭素回収装置20は、原料ガス供給口22と原料ガス排出口23と脱着ガス排出口24とを有する槽21を備える。二酸化炭素回収方法は、槽21内に設けられた第1フィルタ26と、第1フィルタ26の上方に配置され、原料ガスが通過するように槽21内に設けられた第2フィルタ27とを備える。原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する吸着剤33は、第1フィルタ26及び第2フィルタ27で区画された第2空間S2内に収容される。原料ガス供給口22は原料ガスを第2空間S2内に供給する。原料ガス排出口23は原料ガス供給口22から第2空間S2に供給された原料ガスを槽21の外側へ排出する。第1フィルタ26は、吸着剤33から脱着した二酸化炭素を含む脱着ガスが通過するように槽21内に設けられる。脱着ガス排出口24は、第1フィルタ26を通過した脱着ガスを排出する。二酸化炭素回収方法は、原料ガスを第2空間S2内に供給し、吸着剤33を原料ガスの気流に乗せて第2フィルタ27で捕集する工程を含む。二酸化炭素回収方法は、吸着剤33が第2フィルタ27で捕集された状態で吸着剤33によって原料ガス中の二酸化炭素を吸着する工程を含む。二酸化炭素回収方法は、原料ガスの第2空間S2内への供給を停止し、吸着剤33を第2フィルタ27から第2空間S2内の脱着領域S2aに落下させる工程を含む。二酸化炭素回収方法は、吸着剤33が脱着領域S2aに落下した状態で吸着剤33に吸着された二酸化炭素を脱着する工程を含む。
【0070】
本実施形態に係る二酸化炭素回収装置20及び二酸化炭素回収方法によれば、共通する第2空間S2内で吸着剤33への二酸化炭素の吸着と脱着とを実施することができる。したがって、二酸化炭素回収装置20が大型化するのを抑制することができる。
【0071】
なお、上記実施形態では、原料ガスが第2空間S2内へ供給されない場合には、吸着剤33は、第1フィルタ26よりも上に載置された状態で、吸着剤33に吸着された二酸化炭素を脱着した。このような構成により、槽21内に付着した水滴を落下させ、水滴を例えば気液分離部52で効率的に回収することができる。しかしながら、第1フィルタ26は、脱着領域S2aにおいて、吸着剤33を囲うように鉛直方向に延在していてもよい。このような構成によっても、共通する第2空間S2内で吸着剤33への二酸化炭素の吸着と脱着とを実施することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、減圧する場合には、バルブ54及びバルブ57を開け、バルブ55及びバルブ58を閉じ、気液分離部52を気液分離器として使用した。しかしながら、バルブ55及びバルブ58を開け、バルブ54及びバルブ57を閉じることで、貯留部71を気液分離器として使用することができる。また、上記実施形態では、水蒸気を供給する場合には、バルブ74を空け、バルブ73を閉じることで貯留部71から水蒸気を供給していた。しかしながら、バルブ73を空け、バルブ74を閉じることで気液分離部52から水蒸気を供給することができる。すなわち、気液分離部52と貯留部71とをバルブの開閉で入れ替えることができる。そのため、水蒸気供給装置70は、気液分離装置50で回収した水分を蒸気源として再利用することができる。また、気液分離部52内の水と貯留部71内の水とを循環させる循環流路を設け、循環流路によって、水蒸気供給装置70は、気液分離装置50で回収した水分を蒸気源として再利用してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0074】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献することができる。また、本開示に係る二酸化炭素回収装置で回収された二酸化炭素は、水の確保が難しい地域でのハウス栽培で、二酸化炭素を施用することによって植物の光合成を促し、ハウス栽培の生産性向上を図ることができる。そのため、本開示は、SDGsの目標2の「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 二酸化炭素回収システム
20 二酸化炭素回収装置
21 槽
22 原料ガス供給口
23 原料ガス排出口
24 脱着ガス排出口
25 水蒸気供給口
26 第1フィルタ
27 第2フィルタ
29 送風部
30 加熱装置
33 吸着剤
50 気液分離装置
52 気液分離部
70 水蒸気供給装置
71 貯留部
S2 第2空間(空間)
S2a 脱着領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7