(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175316
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】型締装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/66 20060101AFI20241211BHJP
B29C 45/83 20060101ALI20241211BHJP
B29C 45/70 20060101ALI20241211BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B29C45/66
B29C45/83
B29C45/70
B22D17/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093006
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】松下 和照
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AJ14
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL01
4F202CL32
4F202CL50
4F202CR03
4F202CS01
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM06
4F206JN31
4F206JP02
4F206JQ83
(57)【要約】
【課題】摩耗し易いリンクピンの摩耗の進行を抑制することができる型締装置を提供する。
【解決手段】トグル機構(13)において、型締ハウジング(9)と2本の型締ハウジング側リンク(31、32)とを接続しているリンクピン(43、44)と、可動盤(8)と2本の可動盤側リンク(34、35)とを接続しているリンクピン(50、51)と、型締ハウジング側リンク(31、32)と可動盤側リンク(34、35)とを接続しているリンクピン(55、56)と、を型締力作用リンクピンとする。そして、複数本の型締力作用リンクピンの少なくとも1本を重点潤滑対象リンクピンとする。重点潤滑対象リンクピンは、他の型締力作用リンクピンに比して給脂量が多く給脂されるように構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに固定されている固定盤と、
前記ベッド上にスライド自在に設けられている可動盤と、
前記ベッド上にスライド自在に設けられている型締ハウジングと、
前記固定盤と前記型締ハウジングとを連結している複数本のタイバーと、
前記型締ハウジングと前記可動盤との間に設けられているトグル機構と、を備え、
前記トグル機構は、前記型締ハウジングに対してそれぞれ水平なリンクピンによって回転可能に接続されている2本の型締ハウジング側リンクと、前記可動盤に対してそれぞれ水平なリンクピンによって回転可能に接続されている2本の可動盤側リンクと、クロスヘッドと、2本のクロスリンクと、を備え、
2本の前記型締ハウジング側リンクと2本の前記可動盤側リンクはそれぞれ互いに水平なリンクピンによって回転可能に接続され、2本の前記型締ハウジング側リンクはそれぞれ2本のクロスリンクによって前記クロスヘッドに接続されており、
前記型締ハウジングと2本の前記型締ハウジング側リンクとを接続しているリンクピンと、前記可動盤と2本の前記可動盤側リンクとを接続しているリンクピンと、2本の前記型締ハウジング側リンクと2本の前記可動盤側リンクとをそれぞれ接続しているリンクピンと、を型締力作用リンクピンとすると、複数本の前記型締力作用リンクピンの少なくとも1本が重点潤滑対象リンクピンになっており、
前記重点潤滑対象リンクピンは、他の型締力作用リンクピンに比して給脂量が多く給脂されるようになっている、型締装置。
【請求項2】
前記重点潤滑対象リンクピンは、当該リンクピンの円周面の下半分より上半分において給脂量が多くなるように給脂されるようになっている、請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
前記重点潤滑対象リンクピンは、前記クロスヘッドより上側に配置されている前記型締ハウジング側リンクと前記型締ハウジングとを接続している前記型締力作用リンクピンである、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記重点潤滑対象リンクピンは、前記クロスヘッドより上側に配置されている前記可動盤側リンクと前記可動盤とを接続している前記型締力作用リンクピンである、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項5】
前記重点潤滑対象リンクピンには、1カ所または複数箇所の給脂ポイントが設けられ、少なくとも当該リンクピンの円周面の下半分より上半分において前記給脂ポイントの個数が多くなっている、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項6】
前記重点潤滑対象リンクピンには、1カ所または複数箇所の給脂ポイントが設けられ、少なくとも当該リンクピンの円周面の下半分より上半分において給脂される給脂量の合計が多くなっている、請求項1または2に記載の型締装置。
【請求項7】
金型を型締めする型締装置と、
射出材料を射出する射出装置と、を備え、
前記型締装置は、ベッドに固定されている固定盤と、
前記ベッド上にスライド自在に設けられている可動盤と、
前記ベッド上にスライド自在に設けられている型締ハウジングと、
前記固定盤と前記型締ハウジングとを連結している複数本のタイバーと、
前記型締ハウジングと前記可動盤との間に設けられているトグル機構と、を備え、
前記トグル機構は、前記型締ハウジングに対してそれぞれ水平なリンクピンによって回転可能に接続されている2本の型締ハウジング側リンクと、前記可動盤に対してそれぞれ水平なリンクピンによって回転可能に接続されている2本の可動盤側リンクと、クロスヘッドと、2本のクロスリンクと、を備え、
2本の前記型締ハウジング側リンクと2本の前記可動盤側リンクはそれぞれ互いに水平なリンクピンによって回転可能に接続され、2本の前記型締ハウジング側リンクはそれぞれ2本のクロスリンクによって前記クロスヘッドに接続されており、
前記型締ハウジングと2本の前記型締ハウジング側リンクとを接続しているリンクピンと、前記可動盤と2本の前記可動盤側リンクとを接続しているリンクピンと、2本の前記型締ハウジング側リンクと2本の前記可動盤側リンクとをそれぞれ接続しているリンクピンと、を型締力作用リンクピンとすると、複数本の前記型締力作用リンクピンの少なくとも1本が重点潤滑対象リンクピンになっており、
前記重点潤滑対象リンクピンは、他の型締力作用リンクピンに比して給脂量が多く給脂されるようになっている、射出成形機。
【請求項8】
前記重点潤滑対象リンクピンは、当該リンクピンの円周面の下半分より上半分において給脂量が多くなるように給脂されるようになっている、請求項7に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記重点潤滑対象リンクピンは、前記クロスヘッドより上側に配置されている前記型締ハウジング側リンクと前記型締ハウジングとを接続している前記型締力作用リンクピンである、請求項7または8に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記重点潤滑対象リンクピンは、前記クロスヘッドより上側に配置されている前記可動盤側リンクと前記可動盤とを接続している前記型締力作用リンクピンである、請求項7または8に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記重点潤滑対象リンクピンには、1カ所または複数箇所の給脂ポイントが設けられ、少なくとも当該リンクピンの円周面の下半分より上半分において前記給脂ポイントの個数が多くなっている、請求項7または8に記載の射出成形機。
【請求項12】
前記重点潤滑対象リンクピンには、1カ所または複数箇所の給脂ポイントが設けられ、少なくとも当該リンクピンの円周面の下半分より上半分において給脂される給脂量の合計が多くなっている、請求項7または8に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド上に横置きされているトグル機構を備えた型締装置、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型を型締する型締装置と、射出材料を射出する射出装置とから構成されている。いわゆる横型の射出成形機は、ベッド上に型締装置が横置きされ、型盤が水平方向に駆動されて型開閉されるようになっている。つまり、型締装置はベッド上に固定されている固定盤と、ベッド上をスライド自在に設けられている可動盤と、同様にベッド上にスライド自在に設けられている型締ハウジングと、を備えている。固定盤と型締ハウジングは複数本のタイバーによって接続されており、可動盤はその間でスライド自在になっている。型締ハウジングと可動盤の間には、複数本のリンクとクロスヘッドとからなるトグル機構が設けられている。したがって、クロスヘッドを駆動してトグル機構を屈伸させると、型締ハウジングに対して可動盤が水平方向に前後進する。すなわち型開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
トグル機構を構成している複数本のリンクは、それぞれ型締ハウジングや可動盤とリンクに対してリンクピンを介して回転可能に接続され、そしてリンク同士もリンクピンで回転可能に接続されている。したがって、トグル機構が屈伸するとき、リンクピンにおいて摺動して摩擦が発生する。そこでこれらのリンクピンには例えば特許文献1に記載されているような給脂装置によって適量のグリスが定期的に供給され、摩耗が抑制されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トグル機構に設けられている複数本のリンクピンには、定期的にグリスが供給されて摩耗が抑制されている。しかしながら、長期間に渡って射出成形機を運転すると徐々に摩耗が進行する。そうするとリンクピンを交換する必要がある。ところで、トグル機構に設けられている複数本のリンクピンの中には、他のリンクピンに比して摩耗の進行が早いリンクピンがある場合がある。このようなリンクピンが摩耗すると、他のリンクピンがほとんど摩耗していなくてもリンクピンを交換する等して、トグル機構を保守しなければならない。つまり、摩耗の進行の早いリンクピンによって、トグル機構の保守の頻度を大きくせざるを得ない。
【0006】
本開示において、摩耗し易いリンクピンの摩耗の進行を抑制することができる型締装置を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、トグル機構において、型締ハウジングと2本の型締ハウジング側リンクとを接続しているリンクピンと、可動盤と2本の可動盤側リンクとを接続しているリンクピンと、2本の型締ハウジング側リンクと2本の可動盤側リンクとをそれぞれ接続しているリンクピンと、を型締力作用リンクピンとする。そして、複数本の型締力作用リンクピンの少なくとも1本を重点潤滑対象リンクピンとする。重点潤滑対象リンクピンは、他の型締力作用リンクピンに比して給脂量が多く給脂されるように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、摩耗し易いリンクピンの摩耗の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面図である。
【
図3A】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す斜視図である。
【
図3B】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図4A】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す斜視図である。
【
図4B】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図5A】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図5B】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図6A】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図6B】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図6C】第1の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図8A】第2の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面図である。
【
図8B】第2の実施形態に係る型締装置の一部を示す正面図である。
【
図9】第3実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【
図10】第4実施形態に係る型締装置の一部を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
[第1の実施形態]
<射出成形機>
第1の実施形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、ベッドB上に設けられている型締装置2と、ベッドB上において型締装置2の側方に設けられている射出装置3と、これらを制御する制御装置4と、を備えている。射出成形機1はいわゆる横置き型になっている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤7と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤8と、同様にベッドBをスライド自在に設けられている型締ハウジング9と、を備えている。固定盤7と型締ハウジング9は複数本のタイバー11、11、…により連結されており、可動盤8は固定盤7と型締ハウジング9の間に配置されている。型締ハウジング9と可動盤8の間には後で詳しく説明するトグル機構13が設けられている。固定盤7と可動盤8には、それぞれ固定側金型15と、可動側金型16とが設けられている。従って、トグル機構13を駆動すると金型15、16が型開閉される。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられているスクリュ20と、スクリュ駆動装置22と、を備えている。加熱シリンダ19はスクリュ駆動装置22に支持されており、スクリュ20はスクリュ駆動装置22によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ19にはホッパ23と、射出ノズル24とが設けられている。また、加熱シリンダ19にはヒータ25、25、…が設けられている。
【0015】
<トグル機構>
トグル機構13は、
図2に示されているように、クロスヘッド30と、複数本のリンクを備えている。複数本のリンクは、型締ハウジング9に接続されている型締ハウジング側リンク31、32と、可動盤8に接続されている可動盤側リンク34、35と、クロスヘッド30と型締ハウジング側リンク31、32とを接続しているクロスリンク37、38である。型締ハウジング側リンク31、32は、クロスヘッド30より上側に配置されている方を上側型締ハウジング側リンク31、下側に配置されている方を下側型締ハウジング側リンク32と呼ぶことができる。同様に可動盤側リンク34、35も、クロスヘッド30を基準にして上側を上側可動盤側リンク34、下側を下側可動盤側リンク35と呼ぶことができる。
【0016】
型締ハウジング9には、上側と下側にそれぞれ接続部、つまり上側型締ハウジングクレビス40と下側型締ハウジングクレビス41が形成されている。
図2には、上側型締ハウジングクレビス40と下側型締ハウジングクレビス41は1個ずつ示されているが、紙面の奥行き方向にそれぞれさらに1個ずつ設けられている。つまり、上側型締ハウジングクレビス40と下側型締ハウジングクレビス41は、それぞれ2個ずつ型締ハウジング9に設けられているが、
図2において重ねて表示されているので、一方は隠れている。このような上側型締ハウジングクレビス40と下側型締ハウジングクレビス41とに対して、上側型締ハウジング側リンク31と下側型締ハウジング側リンク32とが、それぞれ水平なリンクピン43、44によって回転可能に接続されている。つまり、リンクピン43、44も、
図2には1本ずつしか示されていないが、2本ずつ設けられている。
【0017】
これらのリンクピン43、44は、固定部材45、46によってそれぞれ上側型締ハウジング側リンク31と下側型締ハウジング側リンク32に固定されている。したがって、トグル機構13が屈伸するときリンクピン43、44は上側型締ハウジング側リンク31や下側型締ハウジング側リンク32と一体的に回転し、上側型締ハウジングクレビス40や下側型締ハウジングクレビス41に対して摺動することになる。
【0018】
同様に、可動盤8には、上側可動盤クレビス48と下側可動盤クレビス49が形成され、これらに対してそれぞれ上側可動盤側リンク34と下側可動盤側リンク35とが、水平なリンクピン50、51によって回転可能に接続されている。そしてリンクピン50、51は、それぞれ上側可動盤側リンク34と下側可動盤側リンク35に対して固定部材53、54によって固定されている。上側可動盤クレビス48と下側可動盤クレビス49も2個ずつ、そしてリンクピン50、51も2本ずつ設けられているが、
図2において一方は隠れている。上側型締ハウジング側リンク31と上側可動盤側リンク34は水平なリンクピン55によって、そして下側型締ハウジング側リンク32と上側可動盤側リンク35は水平なリンクピン56によって、それぞれ回転可能に接続されている。
【0019】
これらのリンクピン43、44、50、51、55、56は、型締時において型締力が直接作用するようになっているので、本明細書では型締力作用リンクピン43、44、50、51と呼んでいる。第1の実施形態において、これらの型締力作用リンクピン43、44、50、51、55、56のうち一部が、後で説明するように、重点的に給脂される重点潤滑対象リンクピンになっている。
【0020】
また、上側型締ハウジング側リンク31と下側型締ハウジング側リンク32には、それぞれリンクピン60、61を介してクロスリンク37、38が接続され、これらのクロスリンク37、38はクロスヘッド30に接続されている。これらのリンクピン60、61は、型締力は直接作用しないので、本明細書において型締力作用リンクピンから除外している。クロスヘッド30はボールねじ機構62によって駆動されるようになっている。
【0021】
<トグル機構の給脂機構>
第1の実施形態のトグル機構13に対してグリスを給脂する給脂機構を説明する。給脂機構は、
図2に示されていないグリスポンプと、グリスポンプに接続されているジャンクション70、70、…と、これらジャンクション70、70、…に設けられている複数本のグリス定量バルブ72、72、…とを備えている。これらのジャンクション70、70、…は、型締ハウジング9、可動盤8等に固定されているが、
図2においては分かりやすいように、型締ハウジング9、可動盤8等から離れて図示されている。
【0022】
図2に示されているグリス定量バルブ72、72、…は、前に説明した型締力作用リンクピン43、44、50、51、55、56に接続され、これらに給脂するようになっている。つまり、これらのリンクピン43、44、…55、56の中心に、給脂箇所p、p、…が設けられ、それぞれに対して1本ずつグリス定量バルブ72、72、…が接続されている。これらのリンクピン43、44、…はいずれもその大きさが同じ、あるいは大きさが近い。つまり必要なグリス量は等しい。したがって、
図2に示されているグリス定量バルブ72、72、…は、全て同じ型式のものが採用されている。グリスポンプを駆動すると、これらのグリス定量バルブ72、72、…に定量かつ同量のグリスが供給され、これらの給脂箇所p、p、…に同量ずつ給脂されることになる。
【0023】
トグル機構13に設けられている他のリンクピン60、61、…にも、給脂箇所は設けられているが、
図2において図示を省略している。これらのリンクピン60、61、…は、型締力作用リンクピン43、44、…55、56に比して大きさが小さいので、必要なグリス量は少ない。グリス定量バルブは前記したグリス定量バルブ72、72、…と同じ型式のものを採用してもよいが、異なる別の型式のものが採用され給脂量が少なくなっている。
【0024】
ところで、型締力作用リンクピン43、44、…55、56には、いずれも同量ずつ給脂するように説明した。しかしながら第1の実施形態においては、上側型締ハウジングクレビス40にも給脂箇所Pが設けられ、グリス定量バルブ72が接続されている。この給脂箇所Pは、上側型締ハウジングクレビス40と上側型締ハウジング側リンク31とを接続している型締力作用リンクピン43に接続されている。つまり型締力作用リンクピン43は、他の型締力作用リンクピン44、50、51に比して給脂量が多い、重点潤滑対象リンクピンになっている。
【0025】
図3A、
図3Bには、下側型締ハウジングクレビス41と下側型締ハウジング側リンク32とを接続している型締力作用リンクピン44が示されている。重点潤滑対象リンクピンでない、他の型締力作用リンクピン44、50、…、56の代表として、給脂の仕組を説明する。型締力作用リンクピン44には、その端面に給脂箇所pが設けられ、型締力作用リンクピン44の中心軸にグリス流路g1が空けられている。そして型締力作用リンクピン44の略中央において直径方向に貫通するグリス流路g2が空けられ、グリス流路g1と連通している。したがって、給脂箇所pからグリスを給脂すると、グリス流路g1、g2を経由して型締力作用リンクピン44の外周面に供給される。そうすると、グリスは型締力作用リンクピン44の下半分と上半分とに同量ずつ給脂される。下側型締ハウジングクレビス41のピン穴74との間に潤滑が確保されることになる。
【0026】
重点潤滑対象リンクピンである型締力作用リンクピン43について、
図4A、
図4Bを参照して給脂の仕組を説明する。上側型締ハウジング側リンク31に設けられている型締力作用リンクピン43にも、その端面に給脂箇所pが設けられ、中心軸のグリス流路g1と直径方向のグリス流路g2とが空けられており、グリスが給脂されるようになっている。これ以外に、既に説明したように上側型締ハウジングクレビス40に給脂箇所Pが設けられている。給脂箇所Pからは上側型締ハウジングクレビス40のピン穴75に達するグリス流路g3が空けられている。つまり、重点潤滑対象リンクピンである型締力作用リンクピン43には他の型締力作用リンクピン44、50、…、56に比して略2倍の量のグリスが給脂されるようになっている。
【0027】
さらに、このグリス流路g3は、型締力作用リンクピン43の円周面の上側に開口している。つまり型締力作用リンクピン43に対して、その円周面の上側から給脂するようになっている。したがって、給脂箇所p、Pから給脂されるとき、型締力作用リンクピン43についてその円周面の下側よりも上側において多く給脂されることになる。
【0028】
<下側型締ハウジング側リンクの型締力作用リンクピン>
重点潤滑対象リンクピンである型締力作用リンクピン43と、それ以外の他の型締力作用リンクピン44、50、51とは、長期間の運転を経ると潤滑状態に差が出てくる。この潤滑状態の差を解消するために、重点潤滑対象リンクピンには他の型締力作用リンクピン44、50、…、56に比して多くのグリスを給脂する。あるいはリンクピンの円周面の下半分より上半分において給脂量を多くする必要がある。これを理解するため、最初に他の型締力作用リンクピン44、50、…、56の潤滑状態を説明する。
【0029】
他の型締力作用リンクピン44、50、…、56を代表して、
図5Aには下側型締ハウジングクレビス41と下側型締ハウジング側リンク32とを連結している型締力作用リンクピン44が示されている。
図5Aはトグル機構13を伸張させて型締めしている状態が示されている。型締めしているとき、下側型締ハウジング側リンク32には矢印77方向に力が作用するので、型締力作用リンクピン44は、接触部分78においてピン穴74に強く押しつけられる。つまり接触部分78はグリスが付着していない場合に摩耗し易い箇所になっている。ピン穴74にはグリス79が入れられているが、グリス79が少ない場合には、型締状態のときグリス79が接触部分78に達しないこともある。
【0030】
しかしながら、
図5Bに示されているようにトグル機構13を屈曲させるとき、この接触部分78は下方に向かって回転する。そうすると、グリス79が少なくてもグリス79はピン穴74の底部近傍に溜まっているので接触部分78に必要なグリスが付着する。そうすると次に
図5Aに示されているようにトグル機構13を伸張しても、接触部分78には十分なグリスが付着しているので摩耗しにくい。給脂箇所pからグリスを給脂するとき、比較的少量であっても十分な潤滑が確保できることになる。
【0031】
<重点潤滑対象リンクピン>
重点潤滑対象リンクピンである型締力作用リンクピン43の潤滑状態を考える。
図6Aには、トグル機構13を伸張させて型締めしている状態が示されている。型締めしているとき、下側型締ハウジング側リンク32には矢印81方向に力が作用するので、型締力作用リンクピン43は、接触部分83においてピン穴75に強く押しつけられる。つまり接触部分83はグリスが付着していない場合に摩耗し易い箇所になっている。ピン穴75に入れられているグリス82が少ない場合には、型締状態のとき接触部分83に達しないこともある。
【0032】
図6Bに示されているように、トグル機構13を屈曲させるとき、この接触部分83は上方に向かって回転する。そうすると、接触部分83はさらにグリスが少ない方向に移動することになる。接触部分83にグリスが付着しない場合には、次に型締めするとき接触部分83の潤滑が十分でない状態でピン穴75に強く押しつけられることになる。そうすると摩耗し易くなるので給脂が必要になる。
【0033】
重点潤滑対象リンクピンである型締力作用リンクピン43に給脂するとき、
図6Cに示されているように、給脂箇所pだけでなく給脂箇所Pからも給脂される。そうすると他の型締力作用リンクピン44、50、…、56(
図2参照)に比して略2倍の量が給脂される。そうすると接触部分83にも十分にグリスが付着する。さらには、型締力作用リンクピン43の円周面の下半分よりも上半分において多く給脂されるので、上側に位置している接触部分83にグリスが付着し易い。したがって、接触部分83は十分な潤滑状態が確保されるので、摩耗が抑制される。
【0034】
なお、
図6A、
図6Bにおいてグリス82はピン穴75の下方に溜まっているように示されている。しかしながら実際にはグリスは粘性があるので、ピン穴75の上方にもある程度付着している。したがって、トグル機構13を屈伸させるときグリス82の量が少なくても接触部分83が完全に乾くことはない。しかしながら、接触部分83はトグル機構13の屈伸において常に上側に位置するので付着するグリス量は少なくなり易い。第1の実施形態において、重点潤滑対象リンクピンである型締力作用リンクピン43には円周方向の下半分より上半分においてより多く給脂されるようになっている。そうすると、仮に給脂量が2倍の量なくても、接触部分83にグリスが付着し易く、潤滑が確保される。
【0035】
[第2の実施形態]
<第2の実施形態に係る射出成形機>
第2の実施形態に係る射出成形機は、射出装置3、制御装置4については、
図1に示されている第1の実施形態に係る射出成形機1と同様に構成されている。また型締装置2Aについても、トグル機構13に対する給脂機構を除いて、他は全て同様に構成されている。したがって、型締装置2A、射出装置3等についての説明は省略する。
【0036】
<トグル機構の給脂機構>
第2の実施形態に係る型締装置2Aにおける、トグル機構13とその給脂機構が
図7に示されている。第2の実施形態が第1の実施形態と相違している点は、2点ある。第1の相違点は、第2の実施形態において上側型締ハウジングクレビス40に給脂箇所P(
図2参照)がない点である。第2の相違点は、型締力作用リンクピン43の給脂箇所pに対して、2本のグリス定量バルブ72、72が接続されている点である。つまり、型締力作用リンクピン43は重点潤滑対象リンクピンになっており、他の型締力作用リンクピン44、50、…、56の2倍の量のグリスが給脂されるようになっている。
【0037】
図8Aには、第2の実施形態に係る型締装置2Aにおいて重点潤滑対象リンクピンである型締力作用リンクピン43に給脂箇所pから給脂している様子が示されている。給脂箇所pからは2倍程度の量が給脂されるので、ピン穴75には十分な量のグリス85が給脂される。したがって接触部分86にも十分なグリスが付着する。トグル機構13を伸張して
図8Bに示されているように型締めしても、十分な量のグリスが接触部分86に付着しているので、接触部分86がピン穴75に強く押しつけられても摩耗が防止される。
【0038】
[第3の実施形態]
<第3の実施形態に係る射出成形機>
第3の実施形態に係る射出成形機は、射出装置3、制御装置4については、
図1に示されている第1の実施形態に係る射出成形機1と同様に構成されている。また型締装置2Bについても、トグル機構13に対する給脂機構を除いて、他は全て同様に構成されている。したがって、型締装置2B、射出装置3等についての説明は省略する。
【0039】
<トグル機構の給脂機構>
第3の実施形態に係る型締装置2Bにおける、トグル機構13とその給脂機構が
図9に示されている。第3の実施形態が第1の実施形態と相違している点は、2点である。すなわち第3の実施形態においては、型締力作用リンクピン43だけでなく型締力作用リンクピン50と型締力作用リンクピン56も重点潤滑対象リンクピンになっている。つまり、型締力作用リンクピン50には上側可動盤クレビス48に給脂箇所P‘が設けられ、グリス定量バルブ72から給脂されるようになっている。同様に、型締力作用リンクピン56には下側型締ハウジング側リンク32に給脂箇所P’が設けられ給脂されるようになっている。したがって、型締力作用リンクピン50、56にも他の型締力作用リンクピン44、51、55に比して2倍のグリスが給脂されることになる。そして、その円周面の下半分より上半分においてより多くのグリスが給脂されることになる。
【0040】
[第4の実施形態]
<第4の実施形態に係る射出成形機>
第4の実施形態に係る射出成形機は、射出装置3、制御装置4については、
図1に示されている第1の実施形態に係る射出成形機1と同様に構成されている。したがって、射出装置3、制御装置についての説明は省略する。型締装置2Cについては、
図10に示されているように、トグル機構13Cが第1の実施形態と相違している。第1の実施形態と同様の作用を奏する部材については同じ参照番号を付して説明を省略し、相違している点について説明する。
【0041】
<トグル機構>
第4の実施形態に係る型締装置2Cは、クロスヘッド30Cが2個設けられ、トグル機構13Cが上下の2個に分離している。まず上側は次のようになっている。すなわち、上側型締ハウジングクレビス40Cに接続されている上側型締ハウジング側リンク31Cと、上側可動盤クレビス48Cに接続されている上側可動側リンク34Cと、クロスリンク37と、クロスヘッド30Cからなる。下側は、下側型締ハウジングクレビス41Cに接続されている下側型締ハウジング側リンク32Cと、下側可動盤クレビス49Cに接続されている下側可動側リンク35Cと、クロスリンク38とクロスヘッド30Cからなる。
【0042】
第4の実施形態に係る型締装置2Cのトグル機構13Cにおいて下側型締ハウジング側リンク32Cと下側可動側リンク35Cはこれらが接続されているクロスヘッド30Cより、上側に配置されている。そうすると、その構造上グリスが少ないときリンクピン44、51は比較的グリス切れが発生し易いリンクピンになっている。そこで第4の実施形態において、型締力作用リンクピン44、45、…、56のうち、リンクピン44、51が重点潤滑対象リンクピンになっており、給脂箇所P‘、P’が設けられ2倍の量のグリスが給脂されるようになっている。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
7 固定盤 8 可動盤
9 型締ハウジング 11 タイバー
13 トグル機構 15 固定側金型
16 可動側金型 19 加熱シリンダ
20 スクリュ 22 スクリュ駆動装置
23 ホッパ 24 射出ノズル
25 ヒータ 30 クロスヘッド
31 上側型締ハウジング側リンク
32 下側型締ハウジング側リンク
34 上側可動盤側リンク 35 下側可動盤側リンク
37 クロスリンク 38 クロスリンク
40 上側型締ハウジングクレビス
41 下側型締ハウジングクレビス
43 型締力作用リンクピン 44 型締力作用リンクピン
45 固定部材 46 固定部材
48 上側可動盤クレビス 49 下側可動盤クレビス
50 型締力作用リンクピン 51 型締力作用リンクピン
53 固定部材 54 固定部材
55 リンクピン 56 リンクピン
62 ボールねじ機構 70 ジャンクション
72 グリス定量バルブ 74 ピン穴
75 ピン穴
p 給脂箇所 P 給脂箇所
g1、g2、g3 グリス流路
78 接触部分 82 グリス