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特開2024-175318チップ除去装置、および、チップ除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175318
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】チップ除去装置、および、チップ除去方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
G01N35/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093009
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上原 僚
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED10
2G058ED36
(57)【要約】
【課題】ピペットを上昇させることのみによってチップに作用する力でピペットからチップを取り外す場合に比べて、小さい力でピペットの先端部からチップを取り外すことを可能としたチップ除去装置、および、チップ除去方法を提供する。
【解決手段】チップ除去装置1は、ピペット50の先端部52に取り付けられたチップ53の上端面に接することが可能に構成された第1当接部22を含む除去部20と、ピペット50の本体部51を把持する把持部14と、把持部14に把持されたピペット50をチップ53の上端面が第1当接部22に当接した状態で、上端面を第1当接部22に押し付ける方向に第1当接部22に対してピペット50を回転させることによって先端部52からチップ53を取り外すことが可能に構成される回転部13とを含み、チップ53が取り付けられたピペット50を除去部20に向けて搬送する搬送ロボット10と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットの先端部に取り付けられたチップの上端面に接することが可能に構成された第1当接部を含む除去部と、
前記ピペットの本体部を把持する把持部を備え、前記チップが取り付けられた前記ピペットを前記除去部に向けて搬送する搬送装置と、を備え、
前記除去部および前記搬送装置のいずれか一方が回転部を含み、
前記回転部は、前記把持部に把持された前記ピペットを前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記第1当接部に対して前記ピペットを相対的に回転させることによって前記先端部から前記チップを取り外すことが可能に構成される
チップ除去装置。
【請求項2】
前記搬送装置が、前記回転部を含み、
前記回転部は、前記把持部に把持された前記ピペットを前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記ピペットを回転させることによって前記先端部から前記チップを取り外すことが可能に構成される
請求項1に記載のチップ除去装置。
【請求項3】
前記除去部は、前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記ピペットの前記先端部に当接することが可能に構成された第2当接部をさらに含む
請求項2に記載のチップ除去装置。
【請求項4】
前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接する点が、第1当接点であり、
前記ピペットの前記先端部が前記第2当接部に当接する点が、第2当接点であり、
前記除去部は、前記第1当接点と前記第2当接点との間の距離が、前記第2当接点と前記把持部との間の距離よりも短くなるように構成される
請求項3に記載のチップ除去装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、
前記回転部および前記把持部を支持し、水平方向における前記把持部の位置を変えることが可能に構成された水平移動部と、
前記水平移動部を支持し、垂直方向における前記水平移動部の位置を変えることが可能に構成された垂直移動部と、を備える
請求項2に記載のチップ除去装置。
【請求項6】
前記第1当接部は、前記水平方向に沿って延び、互いから離れて配置される一対の第1当接片を含み、
前記第1当接片間の距離は、前記水平方向を含む平面において、前記ピペットの前記先端部における幅よりも大きく、かつ、前記チップの前記上端面での前記チップの外形における幅よりも小さい
請求項5に記載のチップ除去装置。
【請求項7】
前記除去部が、前記回転部を含み、
前記回転部は、前記把持部に把持された前記ピペットを前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記第1当接部を回転させることが可能に構成される
請求項1に記載のチップ除去装置。
【請求項8】
ピペットの先端部に取り付けられたチップの上端面を第1当接部に当接させること、および、
前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記ピペットを回転させることによって前記先端部から前記チップを取り外すこと、を含む
チップ除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ピペットの先端部に取り付けられたチップをピペットから取り外すチップ除去装置、および、チップ除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の自動作製装置の一例は、装置台と、装置台に配置されたロボットアームと、ロボットアームの先端部に取り付けられたピペットとを備えている。装置台には、使用済みのチップをピペットから取り外すための一対のチップ離脱爪と、チップ離脱爪の下方に位置するチップ廃棄ボックスとがさらに配置されている。
【0003】
一対のチップ離脱爪は、チップ廃棄ボックスの上方における同一の水平面内において、互いに対向するように配置されている。チップ離脱爪間の距離は、ピペットの径よりも大きく、かつ、チップの径よりも小さい。
【0004】
ピペットからチップが取り外される際には、ロボットアームが、ピペットの下部に取り付けられたチップがチップ離脱爪の間かつ下方に位置するように、ピペットを移動させる。次いで、ロボットアームが上昇することによってチップの上部がチップ離脱爪に引っ掛かる。これによって、ピペットからチップが取り外される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-221453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ピペットにチップを装着する際には、チップに吸引された液体がチップの先端から漏れないように、チップはピペットの先端に強固に嵌合される。そのため、チップ離脱爪にチップを引っ掛けてピペットからチップを取り外すためには、チップをピペットに嵌合させた際に要した力と同程度あるいはそれ以上の力をチップに加えることが必要とされる。
【0007】
ピペットからチップを取り外す操作も含むピペットの操作を自動で行うことは、例えば安全キャビネットのように限られた空間内に装置を配置することが必要とされる環境での作業にも求められている。こうした環境内に配置することが可能なロボットの大きさには制約が生じるから、ロボットの出力にも制約が生じる。そのため、より小さい力をチップに加えることでピペットからチップを取り外すことが可能な装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのチップ除去装置は、ピペットの先端部に取り付けられたチップの上端面に接することが可能に構成された第1当接部を含む除去部と、前記ピペットの本体部を把持する把持部を備え、前記チップが取り付けられた前記ピペットを前記除去部に向けて搬送する搬送装置と、を備える。前記除去部および前記搬送装置のいずれか一方が回転部を含む。前記回転部は、前記把持部に把持された前記ピペットを前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記第1当接部に対して前記ピペットを相対的に回転させることによって前記先端部から前記チップを取り外すことが可能に構成される。
【0009】
上記課題を解決するためのチップ除去方法は、ピペットの先端部に取り付けられたチップの上端面を第1当接部に当接させること、および、前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記ピペットを回転させることによって前記先端部から前記チップを取り外すこと、を含む。
【0010】
上記チップ除去装置によれば、回転部が、第1当接部に接したチップの上端面をさらに第1当接部に押し付ける方向に第1当接部に対してピペットを相対的に回転させるから、ピペットを上昇させることのみによってチップに作用する力でピペットからチップを取り外す場合に比べて、小さい力でピペットの先端部からチップを取り外すことが可能である。
【0011】
上記チップ除去装置において、前記搬送装置が、前記回転部を含み、前記回転部は、前記把持部に把持された前記ピペットを前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記ピペットを回転させることが可能に構成されてもよい。
【0012】
上記チップ除去装置によれば、搬送装置が回転部を備えるから、除去部が除去部の一部を駆動させる機構を備える必要がない分だけ、除去部の構造を簡素化することが可能である。
【0013】
上記チップ除去装置において、前記除去部は、前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記ピペットの前記先端部に当接することが可能に構成された第2当接部をさらに含んでもよい。
【0014】
上記チップ除去装置によれば、除去部が第2当接部を含むから、回転部がピペットを回転させる際にピペットの先端部が第2当接部に当接することによって、ピペットが回転している間に先端部が曲がることが抑えられる。
【0015】
上記チップ除去装置において、前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接する点が、第1当接点であり、前記ピペットの前記先端部が前記第2当接部に当接する点が、第2当接点であり、前記除去部は、前記第1当接点と前記第2当接点との間の距離が、前記第2当接点と前記把持部との間の距離よりも短くなるように構成される。
【0016】
上記チップ除去装置によれば、作用点である第1当接点と支点である第2当接点との間の距離が、支点である第2当接点と力点である把持部との間の距離よりも短いから、ピペットの先端部からチップを取り外すために必要な力をさらに小さくすることが可能である。
【0017】
上記チップ除去装置において、前記搬送装置は、前記回転部および前記把持部を支持し、水平方向における前記把持部の位置を変えることが可能に構成された水平移動部と、前記水平移動部を支持し、垂直方向における前記水平移動部の位置を変えることが可能に構成された垂直移動部と、を備えてもよい。
上記チップ除去装置によれば、搬送装置が水平方向での移動と垂直方向での移動とによってピペットの位置を変更するから、搬送装置の軌道が複雑になることが抑えられる。
【0018】
上記チップ除去装置において、前記第1当接部は、前記水平方向に沿って延び、互いから離れて配置される一対の第1当接片を含み、前記第1当接片間の距離は、前記水平方向を含む平面において、前記ピペットの前記先端部における幅よりも大きく、かつ、前記チップの前記上端面での前記チップの外形における幅よりも小さくてもよい。
【0019】
上記チップ除去装置によれば、チップの上端面を一対の第1当接片に当接させることが可能であるから、ピペットを回転させる際に、チップの上端面が第1当接部に当接している状態が保たれやすい。
【0020】
上記チップ除去装置において、前記除去部が、前記回転部を含み、前記回転部は、前記把持部に把持された前記ピペットを前記チップの前記上端面が前記第1当接部に当接した状態で、前記上端面を前記第1当接部に押し付ける方向に前記第1当接部を回転させることが可能に構成されてもよい。
【0021】
上記チップ除去装置によれば、除去部が回転部を備えるから、搬送装置がピペットを回転させる機構を備える必要がない分だけ、搬送装置の構造を簡素化することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、ピペットを上昇させることのみによってチップに作用する力でピペットからチップを取り外す場合に比べて、より小さい力でピペットの先端部からチップを取り外すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実施形態のチップ除去装置における装置構成図である。
図2図2は、図1が示すピペットに嵌め込まれたチップの上端面と対向する視点から見たピペットの先端部、チップの上端面、および、除去部の構造を示す部分断面図である。
図3図3は、図1が示すチップ除去装置を用いたチップ除去方法に含まれる一工程を示す工程図である。
図4図4は、図1が示すチップ除去装置を用いたチップ除去方法に含まれる一工程を示す工程図である。
図5図5は、図1が示すチップ除去装置を用いたチップ除去方法に含まれる一工程を示す工程図である。
図6図6は、第1変更例のチップ除去装置における構造を示す断面図である。
図7図7は、第2変更例のチップ除去装置における装置構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から図5を参照して、チップ除去装置およびチップ除去方法の一実施形態を説明する。本実施形態のチップ除去装置およびチップ除去方法は、例えば、安全キャビネット内で行われる抗菌性試験においてピペットに取り付けられたチップを取り外すためのチップ除去装置およびチップ除去方法に適用される。なお、抗菌性試験は、JIS Z 2801:2010に準拠した方法によって行われる。
【0025】
[チップ除去装置]
図1および図2を参照して、チップ除去装置を説明する。
図1が示すように、チップ除去装置1の処理対象であるピペット50は、本体部51と先端部52とを備えている。ピペット50の先端部52には、先端部52からの取り外しが可能な状態でチップ53が取り付けられる。
【0026】
チップ除去装置1は、除去部20と搬送ロボット10とを備えている。搬送ロボット10は、搬送装置の一例である。除去部20は、第1当接部22を備えている。第1当接部22は、ピペット50の先端部52に取り付けられたチップ53の上端面53S(図2参照)に当接することが可能に構成されている。
【0027】
搬送ロボット10は、チップ53が取り付けられたピペット50を除去部20に向けて搬送する。搬送ロボット10は、把持部14と回転部13とを備えている。把持部14は、ピペット50の本体部51を把持する。回転部13は、把持部14に把持されたピペット50をチップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接した状態で、上端面53Sを第1当接部22に押し付ける方向にピペット50を回転させることによって先端部52からチップ53を取り外すことが可能に構成されている。
【0028】
本開示のチップ除去装置1によれば、回転部13が、第1当接部22に接したチップ53の上端面53Sをさらに第1当接部22に押し付ける方向にピペット50を回転させる。そのため、ピペット50を上昇させることのみによってチップ53に作用する力でピペット50からチップ53を取り外す場合に比べて、小さい力でピペット50の先端部52からチップ53を取り外すことが可能である。本実施形態では、搬送ロボット10が回転部13を備えるから、除去部20が除去部20の一部を駆動させる機構を備える必要がない分だけ、除去部20の構造を簡素化することが可能である。
【0029】
1つの方向がX方向であり、X方向に直交する方向がY方向である。X方向およびY方向は、水平方向の一例である。X方向とY方向とによって定められる2次元平面が、XY平面である。XY平面に直交する方向が、Z方向である。Z方向は、垂直方向の一例である。
【0030】
チップ除去装置1が備える搬送ロボット10および除去部20は、支持台T上に位置している。支持台Tは、搬送ロボット10および除去部20の支持面を備えている。支持面は、XY平面に平行な平坦面である。
【0031】
搬送ロボット10は、上述した回転部13および把持部14に加えて、垂直移動部11および水平移動部12を備えている。水平移動部12は、回転部13および把持部14を支持している。水平移動部12は、水平方向における把持部14の位置を変えることが可能に構成されている。垂直移動部11は、水平移動部12を支持している。垂直移動部11は、垂直方向における水平移動部12の位置を変えることが可能に構成されている。
【0032】
図1が示す例では、水平移動部12は、XY平面に沿って把持部14の位置を変えることが可能である。水平移動部12は、X方向において把持部14の位置を変えることが可能に構成されている。水平移動部12は、X方向およびY方向の両方において把持部14の位置を変えることが可能に構成されてもよい。XY平面において、変更前における把持部14の位置が第1位置であり、変更後における把持部14の位置が第2位置である。水平移動部12は、XY平面において、把持部14の位置を第1位置から第2位置に変えることが可能に構成されている。水平移動部12は、回転部13を介して把持部14を支持している。搬送ロボット10が水平方向での移動と垂直方向での移動とによってピペット50の位置を変更するから、搬送ロボット10の軌道が複雑になることが抑えられる。
【0033】
回転部13は、XZ平面に直交する回転軸を中心に回転することが可能な状態で、水平移動部12に支持されている。回転部13の重心が、回転中心Cである。回転部13は、回転中心Cを通り、かつ、XZ平面に直交する回転軸を中心に回転方向DRに沿って回転する。把持部14は、回転部13に対する把持部14の回転が不能な状態で、回転部13に支持されている。すなわち、回転部13が回転することによって、把持部14も回転する。
【0034】
除去部20は、上述した第1当接部22に加えて、支持部21および第2当接部23を備えている。第2当接部23は、チップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接した状態で、ピペット50の先端部52に当接することが可能に構成されている。除去部20が第2当接部23を含むから、回転部13がピペット50を回転させる際にピペット50の先端部52が第2当接部23に当接することによって、ピペット50が回転している間に先端部52が曲がることが抑えられる。
【0035】
支持部21は、第1当接部22と第2当接部23とを支持している。支持部21は、Z方向において、チップ53が第1当接部22の下方に位置し、かつ、チップ53が支持台Tに接しない高さで、第1当接部22を支持している。支持部21は、Z方向に沿って延びる形状を有している。支持部21は、支持台T上に位置している。支持部21において、支持台T上に位置する端部が基端であり、かつ、基端とは反対側の端部が先端である。
【0036】
第1当接部22は、XY平面上に沿って延びる形状を有している。第1当接部22は、支持部21の先端において支持部21に支持されている。第1当接部22において、X方向における2つの端部のうち、支持部21に接する端部が基端であり、かつ、基端とは反対側の端部が先端である。第2当接部23は、XY平面に沿って延びる形状を有している。第2当接部23は、支持部21の先端において、支持部21および第1当接部22の両方に重なっている。第2当接部23は、X方向において支持部21から突き出た端部に縁23Eを含んでいる。X方向において、第1当接部22の先端は、支持部21から離れる方向に第2当接部23の縁23Eよりも突き出ている。
【0037】
チップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接する点が、第1当接点CP1(図4参照)である。ピペット50の先端部52が第2当接部23に当接する点が、第2当接点CP2(図4参照)である。除去部20は、第1当接点CP1と第2当接点CP2との間の距離が、第2当接点CP2と把持部14との間の距離よりも短くなるように構成されている。作用点である第1当接点CP1と支点である第2当接点CP2との間の距離が、支点である第2当接点CP2と力点である把持部14との間の距離よりも短い。そのため、ピペット50の先端部52からチップ53を取り外すために必要な力をさらに小さくすることが可能である。
【0038】
第2当接点CP2と把持部14との間の距離は、第2当接点CP2と把持部14の重心との間の距離である。図1が示す例では、把持部14の重心は、回転部13の回転中心Cに一致している。
【0039】
チップ除去装置1は、制御装置30をさらに備えている。制御装置30は、制御部31と記憶部32とを備えている。制御装置30は、垂直移動用モーター11M、水平移動用モーター12M、回転用モーター13M、および、把持用モーター14Mに電気的に接続されている。各モーター11M,12M,13M,14Mは、例えばステッピングモーターであってよい。
【0040】
記憶部32は、例えば、搬送ロボット10に、搬送ロボット10がピペット50を把持する位置であって、ピペット50からチップ53を取り外す際にピペット50の搬送を開始する位置を教示した教示データを記憶している。記憶部32は、例えば、ピペット50を第1当接部22のスリット22S(図2参照)に挿通させる位置であって、ピペット50からチップ53を取り外す際にピペット50の搬送を終了する位置を教示した教示データを記憶している。記憶部32は、例えば、ピペット50をスリット22Sに挿通した状態でピペット50を回転させた後の位置を教示した教示データを記憶している。
【0041】
搬送ロボット10の制御空間において、各モーター11M,12M,13M,14Mのステップ数は、各モーター11M,12M,13M,14Mを備える各部の位置に等しい。すなわち、制御空間における把持部14の位置は、垂直移動用モーター11Mのステップ数、水平移動用モーター12Mのステップ数、回転用モーター13Mのステップ数、および、把持用モーター14Mのステップ数によって把握される。
【0042】
制御部31は、各モーター11M,12M,13M,14Mの駆動を制御する。制御部31は、例えば、記憶部32に記憶されたピペット50の搬送を開始する位置と、ピペット50の搬送を終了する位置とに基づいて、各モーター11M,12M,13M,14Mを駆動するための駆動信号を生成する。制御部31は、例えば、記憶部32に記憶されたピペット50における回転後の位置に基づいて、各モーター11M,12M,13M,14Mを駆動するための駆動信号を生成する。各モーター11M,12M,13M,14Mは、制御部31が生成した駆動信号に基づいて、駆動信号に応じたステップ数だけ回転する。
【0043】
図2は、XY平面と対向する方向から見た除去部20の構造を、XY平面に沿うピペット50およびチップ53の断面構造とともに示している。
図2が示すように、第1当接部22は、一対の第1当接片22Aを含んでいる。各第1当接片22Aは、水平方向の一例であるX方向に沿って延びている。一対の第1当接片22Aは、Y方向に沿って互いから離れて配置されている。一対の第1当接片22A間には、X方向に沿って延びるスリット22Sが位置している。Y方向に沿う第1当接片22A間の距離は、Y方向に沿うスリット22Sの幅Wと等しい。
【0044】
第1当接片22A間の距離、すなわちスリット22Sの幅WはXY平面において、ピペット50の先端部52における幅よりも大きく、かつ、チップ53の上端面53Sでのチップ53の外形における幅よりも小さい。これにより、チップ53の上端面53Sを一対の第1当接片22Aに当接させることが可能であるから、ピペット50を回転させる際に、チップの上端面53Sが第1当接部22に当接している状態が保たれやすい。
【0045】
ピペット50に取り付けられたチップ53がピペット50から取り外される際には、ピペット50の先端部52が、第1当接部22のスリット22Sに挿通される。上述したように、先端部52の幅がスリット22Sの幅Wよりも小さい一方で、上端面53Sの外形における幅がスリット22Sの幅Wよりも大きいから、チップ53の上端面53Sは、各第1当接片22Aのうち、第2当接部23が位置する面とは反対側の面に当接する。
【0046】
XY平面と対向する視点から見て、第1当接部22と第2当接部23との境界に、第2当接部23の縁23Eが位置している。
【0047】
[チップ除去方法]
図3から図5を参照して、チップ除去方法を説明する。
本開示のチップ除去方法は、ピペット50の先端部52に取り付けられたチップ53の上端面53Sを第1当接部22に当接させること、および、チップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接した状態で、上端面53Sを第1当接部22に押し付ける方向にピペット50を回転させることを含んでいる。以下、図面を参照して、チップ除去方法を詳しく説明する。なお、図3から図5では、YZ平面に平行な面であって、Y方向におけるスリット22Sの中央を通る面に沿うピペット50および除去部20の断面構造が示されている。
【0048】
図3が示すように、ピペット50からチップ53を取り外す際には、まず、搬送ロボット10がピペット50を搬送し、これによってピペット50の先端部52を第1当接部22のスリット22Sに挿通する。図3が示す例では、搬送ロボット10は、第1当接片22Aにおいて、第2当接部23に接する面とは反対側の面にチップ53の上端面53Sが接するように、ピペット50を搬送する。
【0049】
搬送ロボット10は、チップ53の上端面53Sが第1当接片22Aに摺動するようにピペット50を搬送してもよい。あるいは、搬送ロボット10は、チップ53の上端面53Sが第1当接部22から離れた状態でピペット50を搬送した後に、ピペット50を第1当接部22に向けて上昇させてもよい。またあるいは、搬送ロボット10は、チップ53の上端面53Sと第1当接部22との間に隙間が位置するように、ピペット50をスリット22Sに挿通してもよい。
【0050】
図4が示すように、搬送ロボット10の回転部13が、回転方向DRに沿ってピペット50を回転させることによって、チップ53の上端面53Sを第1当接部22に押し付ける方向にピペット50を回転させる。これにより、チップ53の上端面53Sが第1当接点CP1において第1当接部22に当接し、かつ、ピペット50の先端部52が第2当接点CP2において第2当接部23の縁23Eに当接する。そして、回転部13が、チップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接した状態で、ピペット50を回転方向DRに沿ってさらに回転させることによって、チップ53に回転力が加えられる。
【0051】
この際に、第2当接部23の縁23Eとピペット50の先端部52とが当接する第2当接点CP2が支点として機能し、把持部14が力点として機能し、かつ、第1当接部22とチップ53の上端面53Sとが当接する第1当接点CP1が作用点として機能する。これにより、ピペット50の先端部52からチップ53を取り外すための力がより小さくて済む。
【0052】
上述したように、チップ53の取り外しに要する力を小さくする観点において、第1当接点CP1と把持部14との間の距離は、第2当接点CP2と把持部14との間の距離よりも小さいことが好ましい。また、チップ53の取り外しに要する力を小さくする観点において、第1当接点CP1と把持部14との間の距離に対する、第2当接点CP2と把持部14との間の距離の比は、大きいことが好ましい。そのため、第1当接点CP1と把持部14との間の距離に対する、第2当接点CP2と把持部14との間の距離の比は、図4に示される比よりも大きくてもよい。
【0053】
なお、第1当接点CP1が複数存在する場合には、第1当接点CP1と把持部14との間の距離における最大値が、第2当接点CP2と把持部14との間の距離よりも小さいことが好ましい。また、第2当接点CP2が複数存在する場合には、第2当接点CP2と把持部14との間の距離における最小値が、第1当接点CP1と把持部14との間の距離よりも大きいことが好ましい。
【0054】
第1当接部22とチップ53の上端面53Sとの間に隙間が位置する状態でピペット50の搬送が終了された場合には、搬送ロボット10は、チップ53の上端面53Sが第1当接部22に接するようにピペット50を上昇させた後に、ピペット50を回転させてもよい。あるいは、搬送ロボット10は、ピペット50を回転させながら上昇させることによって、チップ53の上端面53Sを第1当接部22に当接させてもよい。またあるいは、ピペット50の挿通後において、第1当接部22とチップ53の上端面53Sとの間に隙間が位置するか否かに関わらず、搬送ロボット10は、ピペット50を回転させながらピペット50を水平方向に沿って移動させてもよい。
【0055】
図5が示すように、チップ53の上端面53Sのうち、第1当接部22に当接した第1当接点CP1に対して回転力が作用することによって、ピペット50の先端部52からチップ53が取り外される。
【0056】
[試験例]
[試験例1]
搬送ロボット10の把持部14に、先端部52においてチップ53の上端面53Sが取り付けられる部分の直径が7.1mmであるピペット50を取り付けた。また、チップ53の上端面53Sにおける外形が8.5mmであるチップ53をピペット50に取り付けた。除去部20において、スリット22Sの幅を8.0mmに設定した。
【0057】
[試験例2]
試験例1と同じ搬送ロボット10の把持部14に、先端部52においてチップ53の上端面53Sが取り付けられる部分の直径が13.5mmであるピペット50を取り付けた。また、チップ53の上端面53Sにおける外形が17.5mmであるチップ53をピペット50に取り付けた。除去部20において、スリット22Sの幅を17.0mmに設定した。
【0058】
[試験結果]
試験例1,2において、搬送ロボット10を第1当接部22から離れた状態でスリット22S内に挿通した。次いで、搬送ロボット10を用いてZ方向に沿ってピペット50を上昇させた。ピペット50の上昇によってチップ53に加えることが可能な力はピペット50からチップ53を取り外すために必要な力よりも小さい力であったため、ピペット50からチップ53が取り外される前に、搬送ロボット10の動作が停止した。
【0059】
一方で、試験例1において、チップ53の上端面53Sを第1当接点CP1において第1当接部22に当接させ、かつ、ピペット50の先端部52を第2当接点CP2において第2当接部23に当接させた。次いで、回転方向DRにおいて第1当接部22にチップ53の上端面53Sを押し付ける方向に15°だけ回転部13を回転させ、かつ、Z方向において垂直移動部11を10mmだけ上昇させ、かつ、第2当接部23にピペット50の先端部52を押し付ける方向にX方向に沿って水平移動部12を10mmだけ移動させた。これにより、搬送ロボット10が停止することなく、ピペット50の先端部52からチップ53を取り外すことができた。
【0060】
また、試験例2において、チップ53の上端面53Sを第1当接点CP1において第1当接部22に当接させ、かつ、ピペット50の先端部52を第2当接点CP2において第2当接部23に当接させた。次いで、回転方向DRにおいて第1当接部22にチップ53の上端面53Sを押し付ける方向に20°だけ回転部13を回転させ、かつ、Z方向において垂直移動部11を10mmだけ上昇させ、かつ、第2当接部23にピペット50の先端部52を押し付ける方向にX方向に沿って水平移動部12を20mmだけ移動させた。これにより、搬送ロボット10が停止することなく、ピペット50の先端部52からチップ53を取り外すことができた。
【0061】
以上説明したように、チップ除去装置およびチップ除去方法の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)回転部13が、第1当接部22に接したチップ53の上端面53Sをさらに第1当接部22に押し付ける方向に第1当接部22に対してピペット50を回転させるから、小さい力でピペット50の先端部52からチップ53を取り外すことが可能である。
【0062】
(2)搬送ロボット10が回転部13を備えるから、除去部20が除去部20の一部を駆動させる機構を備える必要がない分だけ、除去部20の構造を簡素化することが可能である。
【0063】
(3)除去部20が第2当接部23を含むから、回転部13がピペット50を回転させる際にピペット50の先端部52が第2当接部23に当接することによって、ピペット50が回転している間に先端部52が曲がることが抑えられる。
【0064】
(4)作用点である第1当接点CP1と支点である第2当接点CP2との間の距離が、支点である第2当接点CP2と力点である把持部14との間の距離よりも短いから、ピペット50の先端部52からチップ53を取り外すために必要な力をさらに小さくすることが可能である。
【0065】
(5)搬送ロボット10が水平方向での移動と垂直方向での移動とによってピペット50の位置を変更するから、搬送ロボット10の軌道が複雑になることが抑えられる。
(6)チップ53の上端面53Sを一対の第1当接片22Aに当接させることが可能であるから、ピペット50を回転させる際に、チップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接している状態が保たれやすい。
【0066】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[除去部]
図6が示すように、除去部20は第2当接部23を備えなくてもよい。この場合には、支点として機能する第2当接点CP2が存在しない。そのため、先端部52に取り付けられたチップ53は、チップ53の上端面53Sに対して作用する回転力のみによって先端部52から取り外される。
【0067】
・除去部20の第1当接部22は、1つの第1当接片22Aのみを備えてもよい。この場合には、チップ53の上端面53Sは1つの第1当接点CP1において第1当接片22Aに当接する。この場合であっても、第1当接点CP1を通じて、チップ53に回転力を加えることは可能である。
【0068】
・第1当接点CP1と第2当接点CP2との間の距離が、第2当接点CP2と把持部14との間の距離以下であってもよい。この場合であっても、上述した実施形態と同様に第1当接部22とチップ53の上端面53Sとの当接点である第1当接点CP1が作用点として機能し、かつ、第2当接部23とピペット50の先端部52との当接点である第2当接点CP2が支点として機能する。
【0069】
・チップ除去装置1は、複数の除去部20を備えてもよい。チップ除去装置1が複数の除去部20を備える場合には、例えば、マルチチャンネル型のピペットが備える第1の先端部に取り付けられた第1のチップを第1の除去部20によって取り外し、かつ、第2の先端部に取り付けられた第2のチップを第2の除去部20によって取り外してよい。チップ除去装置1が複数の除去部20を備える場合には、マルチチャンネル型のピペットが備える先端部の数と、除去部20の数とが同一であってもよいし、同一でなくてもよい。例えば、上述したチップ除去装置1のように除去部20を1つのみ備える場合には、スリット22Sに対して複数の先端部のうちの1つを挿通することによって、当該先端部からチップ53を取り外すことは可能である。
【0070】
・チップ除去装置1は、複数種類の除去部を備えてもよい。この場合には、第1の除去部が、第1の容量のピペットに取り付けられたチップを取り外すことが可能に構成され、かつ、第2の除去部が、第2の容量のピペットに取り付けられたチップを取り外すことが可能に構成されてよい。ピペットの容量が大きいほど、ピペットに取り付けられるチップが大きくなる。そのため、ピペットの容量が大きいほど、ピペットからチップを取り外す際における回転用モーター13Mのステップ数が大きく設定されてよい。
【0071】
[回転部]
・チップ除去装置1では、除去部20および搬送ロボット10のいずれか一方が回転部を含んでいればよい。回転部は、把持部14に把持されたピペット50をチップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接した状態で、上端面53Sを第1当接部22に押し付ける方向に第1当接部22に対してピペット50を相対的に回転させることが可能に構成されればよい。
【0072】
そのため、上述した実施形態によるように、第1当接部22の位置が固定される一方で、回転部13は、ピペット50を回転させることが可能に構成されてもよい。あるいは、ピペット50の位置が固定される一方で、回転部は、第1当接部22を回転させることが可能に構成されてもよい。このように、チップ53に対して相対的な回転力が加えられることによって、ピペット50の先端部52からチップ53が取り外される。
【0073】
すなわち、図7が示すように、除去部20が、回転部を含んでもよい。図7が示す例では、回転部が、第1当接部22と第2当接部23とを含んでいる。回転部は、把持部14に把持されたピペット50をチップ53の上端面53Sが第1当接部22に当接した状態で、上端面53Sを第1当接部22に押し付ける方向に第1当接部22を回転させることが可能に構成されている。第1当接部22および第2当接部23の重心が、回転中心CSである。第1当接部22および第2当接部23は、第2当接部23に位置する回転中心CSを通り、かつ、XZ平面に垂直な回転軸を中心に回転方向DSに回転する。
【0074】
チップ除去装置1は、回転用モーター13Mに代えて、当接用モーター22Mを備えている。制御装置30は、当接用モーター22Mに電気的に接続されている。当接用モーター22Mは、回転用モーター13Mと同様に、例えばステッピングモーターであってよい。搬送ロボット10の制御空間において、当接用モーター22Mのステップ数は、第1当接部22の位置に等しい。
【0075】
制御部31は、当接用モーター22Mの駆動を制御する。制御部31は、例えば、記憶部32に記憶されたピペット50における回転後の位置に基づいて、当接用モーター22Mを駆動するための駆動信号を生成する。当接用モーター22Mは、制御部31が生成した駆動信号に基づいて、駆動信号に応じたステップ数だけ回転する。
【0076】
上述したチップ除去装置1によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(7)除去部20が回転部を備えるから、搬送ロボット10がピペット50を回転させる機構を備える必要がない分だけ、搬送ロボット10の構造を簡素化することが可能である。
【0077】
なお、回転部は、除去部20の支持部21を含んでもよい。この場合は、支持部21が、第1当接部22および第2当接部23とともに、回転中心CSを通る回転軸を中心に回転する。
【符号の説明】
【0078】
1…チップ除去装置
10…搬送ロボット
11…垂直移動部
12…水平移動部
13…回転部
14…把持部
20…除去部
21…支持部
22…第1当接部
23…第2当接部
23E…縁
30…制御装置
31…制御部
32…記憶部
50…ピペット
51…本体部
52…先端部
53…チップ
CP1…第1当接点
CP2…第2当接点
T…支持台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7