(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017532
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】包装用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B65D33/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120229
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】591012392
【氏名又は名称】日本マタイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一朗
(72)【発明者】
【氏名】谷高 新簡
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064BA27
3E064BB03
3E064EA09
3E064EA30
3E064FA01
3E064FA06
3E064GA06
3E064HA02
3E064HA06
3E064HB02
3E064HC02
(57)【要約】
【課題】 包装用袋相互の滑りを確実に防止しつつ効率良く積層作業をすることができる。
【解決手段】 包装用袋10は、第1の壁部14Aと、この第1の壁部14Aに相対する第2の壁部14Bとを有する袋本体12を備える。これらの第1及び第2の壁部14A、14Bの各々に、この包装用袋10に積載される他の包装用袋10の滑りを防止する防滑手段18を有し、この防滑手段18は、袋本体12のトップからボトムに向かう方向において袋本体12の長手方向の中央を除いた位置に帯状に形成されると共に、第1の壁部14Aに形成された第1の防滑手段18Aと第2の壁部14Bに形成された第2の防滑手段18Bとが相対向しない非対称の位置に互い違いにずれて形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁部と、前記第1の壁部に相対する第2の壁部とを有する袋本体を備えた包装用袋であって、前記第1及び第2の壁部の各々に、前記包装用袋に積載される他の前記包装用袋の滑りを防止する防滑手段を有し、前記防滑手段は、前記袋本体のトップからボトムに向かう方向において前記袋本体の長手方向の中央を除いた位置に帯状に形成されると共に、前記第1の壁部に形成された第1の防滑手段と前記第2の壁部に形成された第2の防滑手段とが相対向しない非対称の位置に互い違いにずれて形成されていることを特徴とする包装用袋。
【請求項2】
請求項1に記載された包装用袋であって、前記第1及び第2の防滑手段は、前記袋本体の内部から外部に向けて突起するように形成されたエンボスであって、前記エンボスは複数の前記包装用袋を積層した場合に隣り合う他の前記包装用袋の前記防滑手段がない部分に食い込むことを特徴とする包装用袋。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された包装用袋であって、前記第1及び第2の防滑手段は、前記袋本体への収納物の収納率に関係なく前記他の包装用袋に接する位置に形成されていることを特徴とする包装用袋。
【請求項4】
請求項3に記載された包装用袋であって、前記第1及び第2の防滑手段は、前記袋本体の横幅を100部とした場合に、各前記防滑手段に近い側の端部から10部以上離れた位置から前記袋本体の長手方向の中央寄りの位置に形成されていることを特徴とする包装用袋。
【請求項5】
請求項4に記載された包装用袋であって、前記第1及び第2の防滑手段は、前記袋本体の横幅を100部とした場合に、各前記防滑手段に近い側の端部から30部離れた位置までの間の位置に形成されていることを特徴とする包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ポリエチレンの粒等の化成品の原材料や食品添加物等の化学原料や、肥料、培養土、砂利等の土木園芸品、塩、砂糖、精米、玄米等の米、大麦、小麦等の麦類等の穀物類の食料品、医薬品等の多様な製品の保存や輸送等に用いられる包装用袋の改良に関し、特に、保存や輸送のために複数の包装用袋を多層状に積層した場合に荷崩れが生じるのを確実にかつ効率良く防止することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、化学原料や、肥料等の土木園芸品、食料品、医薬品等を工場等から出荷する際に大量に包装して運搬等に使用される幅約400mm~600mm、高さ約800mm~1000mm程度の比較的大型のプラスチック製の包装用袋においては、インフレーション成形やラミネート加工によって得られたプラスチックフィルムを筒状に加工し、その上端(トップ)及び下端(ボトム)をシールすることにより製造される。
【0003】
これらの包装用袋は、袋物の内容物の生産者から店舗販売の販売者へ譲渡等するに際し、又は、通信販売等において販売者から購入者への引き渡しに際して宅配業者等が内容物が収納された袋を輸送又は保管するに際し、これらの内容物を収納した袋物を、本願の包装用袋の内部に収納して、内部の袋物を保護するために使用される。
【0004】
この場合、複数の包装用袋を多層状に積層して保管や輸送をすることが多いが、合成樹脂から形成された包装用袋を積層した場合、材質上、相互に滑りやすく、多段に積層すると荷崩れを起こすおそれがある。そのため、従来から、包装用袋の表面に防滑手段を形成することが行われている。具体的には、包装用袋の一面に外向きにエンボス加工を施し、これを他の包装用袋の平滑な面に接触させることにより、包装用袋の相互の滑りを防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、包装用袋の一方の面のみに滑り止め加工を付し、かつ、これを他の包装用袋の平滑面に接触させるためには、積層される全ての包装用袋において、当該滑り止め加工が同じ方向(上向き又は下向きのいずれか一方)を向くように向きを統一して積層する必要が生じ、作業者において、包装用袋を積層する際に、その滑り止め加工がされている面を確認する手間を強いられ、作業効率が低下する。のみならず、この場合、滑り止め加工の向きを間違えて積層すると、滑り止め加工同士が接触する場合はともかく、平滑な面同士が接触すると、却って相互に滑りやすくなる問題があった。
【0006】
また、一方向からのみの食い込みよりは、二方向、即ち、とある包装用袋が上層及び下層のいずれの他の包装用袋にも作用するように工夫することが望ましいが(例えば、特許文献2参照)、この場合、包装用袋の両面に滑り止め加工を施すとしても、単に両面に加工を施し、その滑り止め加工の位置が他の包装用袋と一致していると、滑り止め加工同士が接触することになり、平滑な面への食い込みによる滑り止め効果を確保できない問題が生じる。
【0007】
更には、包装用袋の内容物の収容率によっては、包装用袋の一面における他の包装用袋に接する部分の面積が変わるため、常識的な収容率の範囲では、確実に滑り止め加工と平滑面とを接触させる必要もある。この場合、例えば、トップからボトムに掛けての長手方向の中央部分を含む部分に滑り止め加工を施せば、収容率を問わず、この滑り止め加工が他の包装用袋と必ず接することができるが、一方で、滑り止め加工同士が接することにもなり、食い込みによる滑り止め効果の確保と両立させることが困難である問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5183668号公報
【特許文献2】特開昭55-143255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、包装用袋相互の滑りを確実に防止しつつ効率良く積層作業をすることができる包装用袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、第1の壁部と、この第1の壁部に相対する第2の壁部とを有する袋本体を備えた包装用袋であって、これらの第1及び第2の壁部の各々に、この包装用袋に積載される他の包装用袋の滑りを防止する防滑手段を有し、この防滑手段は、袋本体のトップからボトムに向かう方向において袋本体の長手方向の中央を除いた位置に帯状に形成されると共に、第1の壁部に形成された第1の防滑手段と第2の壁部に形成された第2の防滑手段とが相対向しない非対称の位置に互い違いにずれて形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。。
【0011】
また、本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、第1及び第2の防滑手段は、袋本体の内部から外部に向けて突起するように形成されたエンボスであって、このエンボスは複数の包装用袋を積層した場合に隣り合う他の包装用袋の防滑手段がない部分に食い込むことを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、第1及び第2の防滑手段は、袋本体への収納物の収納率に関係なく他の包装用袋に接する位置に形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第3の解決手段において、第1及び第2の防滑手段は、袋本体の横幅を100部とした場合に、各防滑手段に近い側の端部から10部以上離れた位置から袋本体の長手方向の中央寄りの位置に形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第4の解決手段において、第1及び第2の防滑手段は、袋本体の横幅を100部とした場合に、各防滑手段に近い側の端部から30部離れた位置までの間の位置に形成されていることを特徴とする包装用袋を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、第1及び第2の壁部のいずれにも防滑手段を設け、この防滑手段を、袋本体のトップからボトムに向かう方向において袋本体の長手方向の中央を除いた位置に帯状に形成すると共に、第1の壁部に形成された第1の防滑手段と第2の壁部に形成された第2の防滑手段とが相対向しない非対称の位置に互い違いにずれて形成しているため、包装用袋は、その上下のいずれに積層された他の包装用袋に対しても、防滑手段が作用するため、一方向にのみ防滑作用が働く場合に比べて防滑効果を向上させることができると共に、いずれの防滑手段も他の包装用袋の平滑面に接触することが可能となる上に、特に、第1又は第2のいずれの壁部を上にして積層しても防滑効果を発揮することができるので、積層作業の際に防滑手段の積層の上下方向における向きを確認する必要がなくなり、作業効率を向上させることができる実益がある。
【0016】
また、本発明によれば、上記のように、これらの第1及び第2の防滑手段は、袋本体への収納物の収納率に関係なく他の包装用袋に接する位置に形成されているため、収容率を問わず、確実に防滑作用を発揮させて荷崩れを防止することができる実益がある。この場合、本発明によれば、上記のように、特に、防滑手段は、袋本体の横幅を100部とした場合に各防滑手段に近い側の端部から30部以上離れた位置までの間の位置に形成されているため、包装用袋の中央付近には、防滑手段が存在しない平滑面が存在することになり、この中央に位置する平滑面に、収容物の識別や宛先のためのラベルを円滑に貼付することや、印刷を施すことができる実益もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本発明の包装用袋を積層した状態をトップ側から見た概略側面図である。
【
図4】本発明の包装用袋の収容率との関係を示す図である。
【
図5】本発明の包装用袋における防滑手段を付与すべき範囲を示す図である。
【
図6】本発明の包装用袋の他の実施の形態の概略正面図である。
【
図7】本発明の他の実施の形態の包装用袋を積層した状態をトップ側から見た概略側面図である。
【
図8】本発明に用いられる防滑手段の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明すると
図1及び
図2は、本発明の包装用袋10を示し、この包装用袋10は、例えば、ポリエチレンの粒等の化成品の原材料や食品添加物等の化学原料や、肥料、培養土、砂利等の土木園芸品、塩、砂糖、精米、玄米等の米、大麦、小麦等の麦類等の穀物類の食料品、医薬品等の多様な製品の保存や輸送等に使用される幅約400mm~600mm、高さ約800mm~1000mm程度の比較的大型の袋である。この包装用袋10は、
図1及び
図2に示すように、袋本体12を有する。
【0019】
(1.袋本体)
この袋本体12は、オレフィンを主原料とする原料から成り、この原料を主にインフレーション成形により筒状に加工した後に折り畳んで、折り目状の端部(両側端)を有する袋本体12の原型とした上で、必要な長さに裁断し、その後、下端をボトムシールすることにより、
図1に示すように、トップ(上方の開口)とボトム(下端の底)を有する形状に製造される。
【0020】
また、この袋本体12は、
図2に示すように、第1の壁部14Aと、この第1の壁部14Aに相対する第2の壁部14Bとを有する。これらの壁部14A、14Bは、包装用袋10の表面及び裏面を構成するものであり、
図1乃至
図3に示す実施の形態では、
図2及び
図3に示すように、これらの壁部14A、14Bの間には、側面を袋本体12の内側に向けて谷折りして形成された襠(マチ)部16が設けられている。
【0021】
なお、この袋本体12は、ある程度の強度を確保するため、ポリエチレン等の樹脂を単体で用いて単層のインフレーションチューブフィルムとすることができ、このポリエチレンとしては、具体的には、特にJIS K7210に準拠するメルトフローレート(以下、単にMFRという。)が0.03g/10min~4.0g/10minであり、C(炭素数)4~C8の側鎖を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を挙げることができる。このような直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、その製造時に、ブテン―1、ヘキセンー1、4メチルペンテン-1、オクテン-1などの炭素数4~8のαオレフインを添加することにより製造することができる。この直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いて、例えば、中間層に環状オレフィン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とをブレンドした層を有し、その両面の最外層及び最内層に更に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を有する多層状の袋本体12とすることができる。
【0022】
また、この袋本体12の原料には、さらに包装用袋10の改質を目的として、必要に応じて耐候剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤等の添加剤を、包装用袋10としての性状に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0023】
上記のようにして調製された原料は、図示しないインフレーション成形機のホッパーから加熱されたシリンダー内に投入され、完全に溶融した状態で混練されながらスクリューで送られ、環状ダイを通過して、空気を吹き込みながらそのリップ部から円筒状に押し出された後、エアリングで冷却され、ピンチロールで引っ張り上げられて、袋本体12の原形である筒をつぶした状態のポリエチレン原反(筒状のフィルム)に連続的に成形される。このときの空気吹き込みによる膨張の程度であるブロー比は、この筒状のフィルムの配向バランス、ひいては、強度、透明性、成膜安定性に影響する重要な要素であり、本発明においては、1.0~3.0に設定するのが好ましい。
【0024】
この場合、袋本体12の原形である筒状のフィルムは、用途や必要に応じて、400mm~600mmの幅に調整して成形される。袋本体12は、この所定の幅に成形された筒状のフィルムを、
図1及び
図2に示すように、用途や必要に応じた800mm~1000mmの長さにて裁断して、製造される。
【0025】
加えて、本発明においては、袋本体12は、100μm~300μmの厚みに形成される。この場合、300μmとの上限を設けたのは、300μmを超える厚みとすると、包装用袋10として柔軟性に欠け、折り畳みや包装のための作業に、却って悪影響を与えるからである。従って、300μm以下の厚みとすることにより、必要以上の剛性も有さず、折り畳み等の際にも良好な取扱い性を発揮することができる。もっとも、一方で、特に150μmを超える厚みに形成するためには、ブロー比を含めインフレーション成形機の設定を適切に調整することが必要となる。また、本発明の包装用袋10を、それ自体を単体で使用する場合には、100μm~150μm程度の厚みとして、強度を確保することが望ましい。
【0026】
なお、原料を袋本体12の原形である筒状のフィルムに成形する方法としては、必ずしも、上記のインフレーション成形に限定されるものではなく、上記の条件を充足する袋本体12とすることができれば、他に、例えば、T-ダイ成形法、カレンダー成形法又は延伸法により先にフィルムに成形し、続いてこのフィルムの長さ方向又は幅方向の両端を合わせて熱シールするラミネート加工によって、筒状のフィルムとすることもできる。
【0027】
(2.防滑手段)
本発明の包装用袋10は、
図1乃至
図3に示すように、これらの第1及び第2の壁部14A、14Bの各々に、この包装用袋10に積載される他の包装用袋10の滑りを防止する防滑手段18を有する。即ち、本発明においては、防滑手段18は、袋本体12のいずれか一方の壁部14A、14B(表面又は裏面)のみに形成されるものではなく、いずれの壁部14A、14B(表面又は裏面)にも第1及び第2の防滑手段18A、18Bが形成される。
【0028】
従って、第1の壁部14A又は第2の壁部14Bのいずれを上にして積層しても、防滑手段18が、上下いずれに存在する他の包装用袋10の壁部14A、14Bとも必ず接することができ、防滑手段18が存在しない面同士が接触することはない。また、包装用袋10は、その上下のいずれに積層された他の包装用袋10に対しても、防滑手段18が作用するため、一方向にのみ防滑作用が働く場合に比べて防滑効果を向上させることができる。
【0029】
これらの第1及び第2の防滑手段18A、18Bは、特に
図8に示すように、袋本体12の内部から外部に向けて突起するように形成されたエンボス20とすることができる。このエンボス20は、筒状に加工された袋本体12の内側から、図示しないエンボスロールをあてがうことにより、形成することができる。
【0030】
また、このエンボス20は、複数の包装用袋10を積層した場合に隣り合う他の包装用袋10の防滑手段18がない部分(平滑面22)に食い込んで、滑り止め効果を発揮する。この場合、防滑手段18同士が噛み合って滑り止めをすることもできるが、エンボス20が平滑面22に食い込んで、エンボス20の形状にマッチした嵌合状態となる方が、より高い摩擦抵抗を生み出し、より高い滑り止め効果を発揮することができる。従って。本発明においては、積層された場合に他の包装用袋10と面することになる両面、すなわち、第1及び第2の壁部14A、14Bのいずれにも防滑手段18を形成しつつ、同時に、その防滑手段18同士が面合わせしないように(重ならないように)配置する工夫が必要となる。
【0031】
そのため、本発明においては、まず、この防滑手段18は、
図1乃至
図3に示すように、袋本体12のトップからボトムに向かう方向において袋本体12の長手方向の中央を除いた位置に帯状に形成される。具体的には、袋本体12の両端の襠部16を合わせるようにしてトップとボトムを結ぶ線で2つ折りにした場合に、その折り目となる中央線から外れた位置に防滑手段18を形成する。
【0032】
また、特に
図2及び
図3に示すように、第1の壁部14Aに形成された第1の防滑手段18Aと、第2の壁部14Bに形成された第2の防滑手段18Bとが相対向しない非対称の位置に互い違いにずれて形成されている。即ち、
図2及び
図3に示すように、第1の防滑手段18Aの反対側(裏側)には第2の防滑手段18Bは存在せず、同様に、第2の防滑手段18Bの反対側(裏側)には第1の防滑手段18Aは存在しない。
【0033】
このため、
図3に示すように、包装用袋10を多段積みにした場合に、下方の包装用袋10の第1の壁部18A(積層上面:表面)のエンボス20(第1の防滑手段18A)と、上方の包装用袋10の第2の壁部18B(積層下面:裏面)のエンボス20(第2の防滑手段18B)が重ならないように、即ち、一方の包装用袋10のエンボス20は、他方の包装用袋10のエンボス20以外の平滑面22に接触するように、配置されている。これにより、いずれの防滑手段18A、18Bも他の包装用袋10の防滑手段18が存在しない平滑面22に接触することが可能となり、エンボス20の平滑面22への食い込みによる滑り止め効果を発揮することができ、特に、複数の包装用袋10を積層した場合に、積層状態における上面側のみにエンボス20を形成した場合に比べ、下向きに突出する第2の防滑手段18であるエンボス20が、収容物の荷重により下層の包装用袋10の第1の壁部14Aにめり込むようにして噛み合うことができ、より高い滑り止め効果を発揮することができる。
【0034】
本発明においては、特に、両面に防滑手段18が形成されている結果、第1の壁部14A又は第2の壁部14Bのいずれを上にして積層しても防滑効果を発揮することができるので、積層作業の際に防滑手段18の積層の上下方向における向きを確認する必要がなくなり、作業効率を向上させることができる。この場合、より正しくは、複数の包装用袋10の間で、トップ及びボトムの向きを統一して積層すれば、防滑手段18は、他の包装用袋10の必ず防滑手段18がない平滑面22と接することができる。これによっても、勿論、例えば、下方の包装用袋10のトップと、上方の包装用袋10のボトムとが重なるように誤って配置した場合には、これらの複数の包装用袋10間で防滑手段18同士が接することにはなるが、横方向における向きを回転させるだけで修正することができ、包装用袋10を再度持ち上げて上下の向きをひっくり返して積み直すことに比べれば簡易な作業で修正することができると同時に、修正をしなくても、少なくとも平滑面22同士のみが接する、ということは回避できるため、何らかの防滑作用を確保することはできる。
【0035】
(3.防滑手段を付すべき範囲)
また、本発明においては、第1及び第2の防滑手段18A、18Bは、袋本体12への収納物の収納率に関係なく他の包装用袋10に接する位置に形成されている。具体的には、
図1乃至
図3に示す襠部16を有する包装用袋10において、
図4(A)に示すように、収容物の収容率をほぼ100%とした場合における襠部16の立ち上がり角度θ(左右の襠部16の中心を結んだ面に対する角度:
図4参照)は89°(約90°)となり、この場合における第1又は第2の壁部14A、14Bが他の包装用袋10の壁部14A、14Bと面することになる部分の幅をL(
図4参照)と仮定する。その上で、
図4(B)から(D)に示すように、収容率が100%から下がるに連れて小さくなる襠部16の立ち上がり角度θの変化に応じて、他の包装用袋10の壁部14A、14Bと面することになる部分の接触幅M、N、O(
図4参照)を検討した。
【0036】
その結果、例えば、
図4に示す幅を有する襠部16を有する包装用袋10の場合には、
図4(B)に示すように、襠部16の立ち上がり角度θが75°の場合には接触幅Mは、M=0.94×L、
図4(C)に示すように、襠部16の立ち上がり角度θが60°の場合には接触幅Nは、N=0.74×L、
図4(D)に示すように、襠部16の立ち上がり角度θが45°の場合には接触幅Oは、O=0.42×Lとなることが判明した。この場合、
図4(D)に示す立ち上がり角度θが45°となるケースは、収容率が50%程度となる場合であるが、この場合は、襠部16が壁部14A、14Bの全幅よりも外側にはみ出すことなく収容できる率であるため、壁部14A、14Bの全幅をもって他の包装用袋10の壁部14と接触することができ、それ以下の割合である場合には、防滑手段18は、その位置に関係なく、他の包装用袋10に接触することができる。
【0037】
従って、襠部16の立ち上がり角度θが60°以上である場合に限定して検討すると、
図5に示すように、第1及び第2の防滑手段18A、18Bを、袋本体12の横幅を100部とした場合に、各防滑手段18に近い側の端部から少なくとも10部以上離れた位置から袋本体の長手方向の中央寄りの位置に形成すれば、襠部16の立ち上がり角度θが小さくなって壁部14の端部付近が傾斜しても、上方又は下方を向く位置に設置することができ、他の包装用袋10と接触することができるといえる。これにより、収容率を問わず、確実に防滑作用を発揮させて荷崩れを防止することができる。具体的には、例えば、
図5に示すように、壁部14の全幅を500mmとした場合には、各防滑手段18に近い側の端部から50mmの位置から袋本体12の長手方向の中央寄りの位置に形成する。
【0038】
一方、第1及び第2の防滑手段18A、18Bは、
図5に示すように、袋本体12の横幅を100部とした場合に、各防滑手段18に近い側の端部から30部離れた位置までの間の位置に形成されている。具体的には、例えば、
図5(A)では、各防滑手段18に近い側の端部から30部離れた位置までの間の位置に(31部以上離れた位置には、防滑手段が存在しない平滑面22のみが存在する)、
図5(B)では、各防滑手段18に近い側の端部から24部離れた位置までの間の位置に(25部以上離れた位置には、防滑手段が存在しない平滑面22のみが存在する)、同様に、
図5(C)では、各防滑手段18に近い側の端部から20部離れた位置までの間の位置に(21部以上離れた位置には、防滑手段が存在しない平滑面22のみが存在する)、防滑手段18が設けられている。具体的には、例えば、
図5に示すように、壁部14の全幅を500mmとした場合には、
図5(A)では、各防滑手段18に近い側の端部から50mmの位置から袋本体12の長手方向の中央寄りの位置に100mmにわたって、
図5(B)では、各防滑手段18に近い側の端部から50mmの位置から袋本体12の長手方向の中央寄りの位置に70mmにわたって、
図5(C)では、各防滑手段18に近い側の端部から50mmの位置から袋本体12の長手方向の中央寄りの位置に50mmにわたって、防滑手段18であるエンボス20を形成する。従って、
図5(A)乃至
図5(C)のいずれを見ても解るように、包装用袋10の中央付近には、防滑手段18が存在しない平滑面22が存在することになり、この中央に位置する平滑22に、収容物の識別や宛先のためのラベルを円滑に貼付することや、印刷を施すことができ、保管や輸送の際に必要な情報を付与することができる。
【0039】
(4.他の実施の形態)
このように、防滑手段18を形成することができる範囲内であれば、防滑手段18である帯状に形成されたエンボス20の幅は、
図5(A)乃至(C)に示すように、適宜変更することができ、従って、
図6及び
図7に示すように、
図1に示す実施の形態よりも幅広に設定することもできる。また、
図1乃至
図3に示す実施の形態では、襠部16が設けられた包装用袋10としたが、必ずしも襠部16ありの形態に限定されるものではなく、
図7に示すように、筒状の袋本体を単に潰した襠部16なしの形態とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、ポリエチレンの粒等の化成品の原材料や食品添加物等の化学原料や、肥料、培養土、砂利等の土木園芸品、塩、砂糖、精米、玄米等の米、大麦、小麦等の麦類等の穀物類の食料品、医薬品等の多様な製品の保存や輸送等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 包装用袋
12 袋本体
14 壁部
14A 第1の壁部
14B 第2の壁部
16 襠部
18 防滑手段
18A 第1の防滑手段
18B 第2の防滑手段
20 エンボス
22 平滑面