(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175321
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】梱包部材
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
G03G21/16 185
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093015
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 恵子
【テーマコード(参考)】
2H171
【Fターム(参考)】
2H171FA01
2H171FA19
2H171GA23
2H171HA33
2H171HA40
(57)【要約】
【課題】定着器の交換作業性を向上させることができる梱包部材を提供する。
【解決手段】画像形成装置1に対して着脱可能な定着器5を梱包する梱包部材10である。梱包部材10は、定着器5を覆うカバー部11aと、カバー部11aの左,右一対設けられて、定着器5に形成された被把持部5c,5cを把持する左把持部14,右把持部15と、を備える。左把持部14,右把持部15は、内側面と外側面との間を遮熱する断熱材を有している。断熱材は、外側面の押圧により内側面を被把持部5cに圧着させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に対して着脱可能な定着器を梱包する梱包部材であって、
前記定着器を覆うカバー部と、
前記カバー部の少なくとも一部に設けられて、前記定着器に形成された被把持部を把持する把持部と、を備える梱包部材。
【請求項2】
前記把持部は、内側面と外側面との間を遮熱する断熱材を有して、前記断熱材は、前記外側面の押圧により前記内側面を前記被把持部に圧着させる、請求項1に記載の梱包部材。
【請求項3】
前記断熱材の熱伝導率λ[W/m・K]は、λ=2.0未満である、請求項2記載の梱包部材。
【請求項4】
前記断熱材の熱伝導率λ[W/m・K]は、λ=1.0未満である、請求項2記載の梱包部材。
【請求項5】
前記断熱材の熱伝導率λ[W/m・K]は、λ=0.06未満である、請求項2記載の梱包部材。
【請求項6】
前記断熱材は、パルプモールドである、請求項2から5のうち何れか一項に記載の梱包部材。
【請求項7】
前記カバー部の内側と前記定着器の外壁との間の寸法より、前記把持部の内側と前記被把持部の外壁との間の寸法を小さく設定した、請求項2に記載の梱包部材。
【請求項8】
前記カバー部の内側面と外側面との間の厚さ寸法より、前記把持部の内側面と外側面との間の厚さ寸法を大きく設定した、請求項2に記載の梱包部材。
【請求項9】
前記把持部を離間させて一対設けると共に、前記把持部間を前記カバー部が一体に連結している、請求項1に記載の梱包部材。
【請求項10】
前記把持部を離間させて一対設けると共に、一方の前記把持部の周囲に設けられた前記カバー部が他方の前記把持部に向けて延設されている、請求項1に記載の梱包部材。
【請求項11】
前記把持部は、他の構成部分と区別される目印を有する、請求項1に記載の梱包部材。
【請求項12】
前記目印は、凹状の指かけ凹部である、請求項11に記載の梱包部材。
【請求項13】
前記目印は、前記指かけ凹部の外側に位置するカバー部の一部を切欠いた窓部である、請求項10に記載の梱包部材。
【請求項14】
前記目印は、他の部分と色彩,質感または材質を相違させている、請求項11~13のうち何れか一項に記載の梱包部材。
【請求項15】
前記定着器の取付方向に沿って半分以上を覆う第一梱包部材と、前記定着器の取付方向に沿って前記第一梱包部材から分離されて前記第一梱包部材と比べて前記定着器の少ない部分を覆う他の部材と、を備え、
前記第一梱包部材は、前記定着器の取付方向で中間位置に前記把持部を設けた、請求項1に記載の梱包部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機などの電子写真方式の画像形成装置には、トナー画像を紙などの記録媒体に定着させる定着器が備えられている。このようなものでは、定着器に内蔵されているヒータが発熱する。定着器は、紙の上に載せられたトナーを加圧および加熱してトナー画像として紙面に定着させる。
定着器は、画像形成装置に対して着脱可能に構成されている。例えば特許文献1に記載の定着器には、つまみが一体に設けられている。そして、このつまみを用いて画像形成装置から使用済みの定着器を取り外すとともに、新しい定着器を画像形成装置に装着することにより交換作業が行なわれる。
また、特許文献2に記載された画像形成装置では、冷却ユニットを設けて定着器のハンドルに冷却風を常に送って冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-116678号公報
【特許文献2】特開2019-12490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連続印刷の途中や印刷終了直後など定着器の温度がまだ高い状態であっても、使用済みの定着器を新しい定着器と交換して次の印刷を早期に再開したい、という要望がある。
また、定着器は、交換作業に習熟したサービスマンだけでなく、不慣れなユーザによって交換作業が行われることがある。
このような場合、十分温度が低下していない定着器を作業者が掴んでしまうなど、接触する虞があった。また、定着器が作業者の手や衣服に接触すると、手や衣服に定着器のトナーが付着して汚れてしまうこともあり、交換作業性が良好ではなかった。
【0005】
さらに、冷却ユニットを設けた場合、冷却風により定着器が常に冷却されトナーの定着性能に影響を及ぼしてしまう虞があった。このため、更なる改善が望まれている。
【0006】
本発明は、定着器の交換作業性を向上させることができる梱包部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
(1)本発明は、画像形成装置に対して着脱可能な定着器を梱包する梱包部材である。梱包部材は、前記定着器を覆うカバー部と、前記カバー部の少なくとも一部に設けられて、前記定着器に形成された被把持部を把持する把持部と、を備える。
(2)前記把持部は、内側面と外側面との間を遮熱する断熱材を有して、前記断熱材は、前記外側面の押圧により前記内側面を前記被把持部に圧着させる。
(3)前記断熱材の熱伝導率λ[W/m・K]は、λ=2.0未満である、(2)記載の梱包部材。
(4)前記断熱材の熱伝導率λ[W/m・K]は、λ=1.0未満である、(2)記載の梱包部材。
(5)前記断熱材の熱伝導率λ[W/m・K]は、λ=0.06未満である、(2)記載の梱包部材。
(6)前記断熱材は、パルプモールドである、(2)から(5)の何れか一つに記載の梱包部材。
(7)前記カバー部の内側面と前記定着器の外壁との間の寸法より、前記把持部の内側面と前記被把持部の外壁との間の寸法が小さく設定された、(2)記載の梱包部材。
(8)前記カバー部の内側面と外側面との間の厚さ寸法より、前記把持部の内側面と外側面との間の厚さ寸法が大きく設定された、(2)に記載の梱包部材。
(9)前記把持部を離間させて一対設けると共に、前記把持部間を前記カバー部が一体に連結している(1)記載の梱包部材。
(10)前記把持部を離間させて一対設けると共に、一方の前記把持部の周囲に設けられた前記カバー部が他方の前記把持部に向けて延設されている(1)記載の梱包部材。
(11)前記把持部は、他の構成部分と区別される目印を有する(1)記載の梱包部材。
(12)前記目印は、凹状の指かけ凹部である、(11)記載の梱包部材。
(13)前記目印は、前記指かけ凹部の外側に位置する鍔部の一部を切欠いた窓部である(10)記載の梱包部材。
(14)前記目印は、他の部分と色彩,質感または材質を相違させている、(11)~(13)に記載の梱包部材。
(15)梱包部材は、定着器の取付方向に沿って半分以上を覆う第一梱包部材と、前記定着器の取付方向に沿って前記第一梱包部材から分離されて前記第一梱包部材と比べて前記定着器の少ない部分を覆う他の部材と、を備える。前記第一梱包部材は、前記定着器の取付方向で中間位置に前記把持部を設けた(1)記載の梱包部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着器の交換作業性を向上させることができる梱包部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る梱包部材で、梱包部材を用いて加熱状態の定着器を画像形成装置から取り外す様子を説明する斜視図である。
【
図2】梱包部材を用いて定着器を把持する様子を示す側面図である。
【
図3】箱体から梱包部材に覆われた定着器を取り出す様子を説明する斜視図である。
【
図4】取付方向に沿って組合わせられて定着器を覆う梱包部材の側面図である。
【
図5】定着器を梱包部材で包んだ様子を示す斜視図である。
【
図8】梱包部材に包まれている定着器の位置を示し、
図7中VIII-VIII線に沿った位置での断面図である。
【
図9】梱包部材に包まれている定着器の位置を示し、
図7中IX-IX線に沿った位置での断面図である。
【
図10】定着器と梱包部材の一部とが近接した配置であることを説明する
図9中X部分を拡大した要部の断面図である。
【
図11】実施形態1の交換作業を説明し、第一梱包部材を取り出す様子を示す斜視図である。
【
図12】第一梱包部材を画像形成装置の定着器に被せる様子を示す斜視図である。
【
図13】第一梱包部材を画像形成装置の定着器に被せて把持する様子を示す斜視図である。
【
図14】第一梱包部材の上から定着器を把持して取り外す様子を示す斜視図である。
【
図15】外した第一梱包部材内の定着器に第二梱包部材を被せる様子を示す斜視図である。
【
図16】梱包部材とともに外した定着器を箱体に収容する様子を示す斜視図である。
【
図17】画像形成装置に新しい定着器を装着する様子を示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態2に係る梱包部材で、構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について各図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の側面が開放された状態で梱包部材10を用いて定着器5が交換される様子を示している。
なお、実施形態では、理解の容易化の為、画像形成装置1を正面から見た側面に対して定着器5が装着される方向を前方とするとともに、定着器5が取り外される方向を後方として取付方向Fを定義する。また、実施形態では、画像形成装置1の高さ方向を上下方向Hと、定義する。そして、実施形態では、取付方向Fおよび上下方向Hに対して直交する画像形成装置1の奥行き方向である定着器5の長手方向を、左右方向Dと定義する。
【0011】
[画像形成装置]
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式を採用する。画像形成装置1は、主に、原稿などの複製対象物から画像を読み取る画像読取部2と、操作パネル3、および制御部(図示せず)と、を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと、ストレージ等の記憶部に記憶された各種データと、を協働させて画像形成装置1の各構成部を制御する。
【0012】
画像形成装置1は、画像読取部2で読み取られ、または入力された入力画像データからトナー画像を形成する。画像形成装置1には、搬送された記録媒体Pの上に載せられたトナー画像を加圧および加熱して定着させる定着器5が設けられている。
また、画像形成装置1の側部には、メンテナンス開口1aが形成されている。メンテナンス開口1aには、開閉可能な蓋体が設けられている。そして、メンテナンス開口1aの内部には、定着器5を着脱可能に取付ける取付部4が設けられている。
【0013】
[定着器]
図2に示すように、定着器5は、中空で略直方体形状の筐体5aを備えている。筐体5aは、内部にローラ6および加熱ヒータ7を有している。ローラ6は、筐体5aの左右方向(長手方向)Dに軸方向を沿わせて回転可能に軸支されている。
実施形態の定着器5は、ローラ6の内部に加熱ヒータ7を有している。加熱ヒータ7は通電により昇温して、記録媒体Pと接触するローラ6の加圧面を加熱する。そして、記録媒体Pの上に載せられたトナーは、転動するローラ6の加圧面により加圧および加熱されてトナー画像として紙面に定着される。なお、ローラ6の外側に加熱ヒータ7を設けて外方からローラ6等の加圧面が加熱されるように構成してもよい。
【0014】
また、定着器5の筐体5aには、取付方向Fの前端部で取付部4に対向する部分に取付面5bが形成されている。そして、画像形成装置1の内部には、取付部4が設けられている。取付部4は、画像形成装置1の側部に設けられた蓋体が開放された状態で側方から定着器5を取付方向Fに沿わせて着脱可能とする。
たとえば、メンテナンス作業が行なわれる際には、使用済みの定着器5が画像形成装置1から取り外されて、新しい定着器5と交換される。メンテナンス作業を行う際、取付部4に取り付けられている定着器5は、取付部4への取付面5bの係合を解除することにより取付方向Fに沿って後方へ取り外し可能となる。
【0015】
そして、交換する新しい定着器5は、取付方向Fに沿って前方へ向けて取付面5bを取付部4に係合させる。これにより、新しい定着器5は、画像形成装置1の内部に装着される。定着器5は、取付面5bの接続部を画像形成装置1に接続して装着されると、電気的に制御部に接続されるように構成されている。
【0016】
図3に示すように、定着器5の筐体5aには、被把持部5cが左右一対、形成されている。被把持部5cは、左右方向Dの左右各端部にそれぞれ設けられている。被把持部5cの外壁のうち上,下の側面には、上下方向Hにて対となるように上側面部5dおよび下側面部5eが形成されている。実施形態1の各上側面部5dおよび下側面部5eには、取付方向Fに沿って交互に凹凸の滑り止め形状を有している。
そして、被把持部5cの上側面部5dおよび下側面部5eは、お互いに等間隔で面外方向を上下方向Hに向けて形成されている。これにより、それぞれの被把持部5cは、交換作業を行う作業者により上下方向から直接または間接的に指で挟まれる際、滑り落ちることなく確実に把持される。
【0017】
[梱包部材]
図3に示すように、梱包部材10は、直方体形状の外箱30と、定着器5を梱包して、外箱30の内部に収納する第一梱包部材11および第二梱包部材12と、を有している。
実施形態1の梱包部材10は、第一梱包部材11と、他の部材としての第二梱包部材12と、を備えている。このうち、第一梱包部材11は、定着器5の取付方向Fに沿って前方へ半分以上を覆うように構成されている(
図2参照)。また、第二梱包部材12は、第一梱包部材11と、別部材で構成されている。
これにより、第一梱包部材11および第二梱包部材12は、定着器5の取付方向Fに向けて分離可能である。
また、第一梱包部材11および第二梱包部材12は、取付方向Fに沿って付合わせられて組合せられる。これにより、第一梱包部材11および第二梱包部材12で梱包部材10の内側に定着器5を収容する内部空間が形成される。
【0018】
図4に示すように、これらの第一梱包部材11は、取付方向Fに組合わせられた状態で定着器5を覆うカバー部11aを備えている。カバー部11aは、取付方向Fの後方に凸となる袋状に形成されていて第二梱包部材12側を凹状に開口させている。そして、第一梱包部材11は、開口からカバー部11a内に定着器5の取付方向Fで後部を挿入する(
図2参照)。これにより、定着器5は、取付方向Fに沿って半分以上がカバー部11aにより覆われて第一梱包部材11の内部空間に収容される。
【0019】
また、
図5に示すように、第一梱包部材11は、カバー部11aの周囲に設けられて外箱30の内側31に当接する鍔部11bを有している。さらに第一梱包部材11は、カバー部11aの左右端部近傍に設けられる左把持部14および右把持部15を有している。
【0020】
実施形態1のカバー部11aは、左把持部14および右把持部15を離間させた状態で一体に連結している。
すなわち、左把持部14および右把持部15は、カバー部11aと同じパルプモールドを有する断熱材で構成されている。パルプモールドは、段ボールや新聞の古紙などの紙材を主原料として成型された成型品である。
このため、成型により第一梱包部材11が製造される際の作業工程では、カバー部11aの左右端部近傍に左把持部14および右把持部15を一体に設ける。これにより、カバー部11a,左把持部14および右把持部15は、第一梱包部材11を成型する工程で同時に成型出来る。したがって、左把持部14および右把持部15の製造工程を簡略化することができる。
【0021】
そして、左把持部14および右把持部15は、上下方向Hに圧縮される方向へ押圧力が加わると弾性変形する。左把持部14および右把持部15は、定着器5に形成された左右のそれぞれの被把持部5cの外壁に押し付けられる。これにより、作業者は、左把持部14および右把持部15を介してそれぞれの被把持部5cに直接触れることなく把持することができる。
実施形態1では、定着器5を取付方向Fに沿って半分以上、カバー部11a内に挿入する(
図2参照)。左把持部14または右把持部15は、取付方向Fでカバー部11a内に収容された定着器5の中間位置に対向する。
このため、中間位置に設けられた被把持部5cの上側面部5dおよび下側面部5eは、それぞれの左把持部14および右把持部15によって上下方向Hへ挟み込まれる。したがって、定着器5は、取付方向Fでバランスの良好な位置が把持される。
【0022】
また、鍔部11bは、縦壁面11eとフランジ面11fとを有している(
図2参照)。そして、カバー部11aの前縁は、縦壁面11eを介してフランジ面11fに接続されている。
フランジ面11fは、カバー部12aの周囲から離間させた状態で設けられていて外箱30の内側31に当接する。これにより、鍔部11bは、取付方向Fに沿った断面形状で後方を開放する略コ字状に形成される。
【0023】
また、第二梱包部材12は、第一梱包部材11と比べて定着器5の少ない部分を覆うカバー部12aと、カバー部12aの周囲に設けられて外箱30の内側31に当接する鍔部12bと、を備えている。
カバー部12aは、取付方向Fに沿って前方に凸となる袋状に形成されている。これにより、第二梱包部材12のカバー部12aは、取付方向Fに沿って後方へ定着器5の一部、すなわち、第一梱包部材11で覆われていない残りの部分を覆う。
【0024】
実施形態1の梱包部材10では、第一梱包部材11および第二梱包部材12が取付方向Fに沿って組合せられる。これにより、カバー部11aおよびカバー部12aの内側に定着器5を収容する内部空間が形成される。
実施形態の内部空間は、定着器5の左右方向Dの寸法と同様の長手方向の寸法を有している。そして、定着器5の外壁の各面は、第一梱包部材11のカバー部11aおよび第二梱包部材12のカバー部12aによって覆われた状態で梱包される。
【0025】
定着器5は、保管もしくは搬送される際、カバー部11aおよびカバー部12aによって覆われて第一梱包部材11および第二梱包部材12とともに外箱30の内側31に入れられている(
図3参照)。
第一梱包部材11および第二梱包部材12は、外箱30に入れられた状態で外箱30の内側31と、定着器5の筐体5aのそれぞれの外壁と、の間に介在する。これにより、梱包部材10は、定着器5を外箱30の内側31から離間させた状態で支持して、定着器5の緩衝材として機能する。よって、定着器5は、梱包部材10によって運搬若しくは保管の際、衝撃などの外力から保護される。
【0026】
第一梱包部材11および第二梱包部材12を構成する断熱材は、熱伝導率λ[W/m・K]をλ=2.0未満としている。
実施形態1の第一梱包部材11および第二梱包部材12は、断熱材としてのパルプモールドによって構成されている。パルプモールドの熱伝導率λは、紙材の熱伝導率λ=1.3と同程度であり、λ=1.2~1.4である。また、左把持部14および右把持部15に用いられているパルプモールドは、少なくとも何れか一方の表面にシボ状の凹凸が形成されいる。この場合、左把持部14および右把持部15の熱伝導率λをさらに低下させることができる。
【0027】
また、好ましくは、断熱材は、セラミック(陶器または磁器を含む)によって構成されていて、左把持部14および右把持部15のみに用いるようにして所望の変形性を確保してもよい。セラミックは、熱伝導率λ=1.0~1.6である。このため、断熱材の熱伝導率λ=2.0未満とすることができる。
【0028】
さらに、好ましくは、断熱材の熱伝導率は、λ=1.0未満としてもよい。例えば、断熱材がゴムまたは樹脂によって構成されていてもよい。
ゴムは、熱伝導率λ=0.13~0.20である。また、樹脂は、熱伝導率λ=0.13~0.67(例えば熱硬化性樹脂であるベークライト(フェノール樹脂))である。このため、断熱材の熱伝導率λをλ=1.0未満とすることができる。
断熱材としてゴムまたは樹脂を用いる場合には、定着器5の熱により溶融しないもの、例えば他の添加物をゴムまたは樹脂に混合して用いるようにしてもよい。
【0029】
そして、さらに好ましくは、断熱材の熱伝導率は、λ=0.06未満としてもよい。例えば、断熱材が木綿等の布材や紙材によって構成されていてもよい。木綿は、熱伝導率λ=0.059である。また、紙材は、熱伝導率λのさらに低い空気などの気体を含ませることにより、断熱材の熱伝導率λをさらに低下させることができる。したがって、木綿等の布材や紙材等を左把持部14および右把持部15の少なくとも一部に用いることにより、熱伝導率λ=0.06未満に容易に設定することができる。
【0030】
図6は、第一梱包部材11の右把持部15の構成を説明するものである。第一梱包部材11の左把持部14については、右把持部15とほぼ左右対称形状である。このため、ここでは、右把持部15の構成について主に説明し、左把持部14についての説明を省略する。
【0031】
左把持部14および右把持部15は、それぞれ目印19を有している。実施形態1の目印19は、凹状の指かけ凹部19aと、指かけ凹部19aの外側に位置する鍔部11bの一部を切欠いた窓部19bと、を有している。
なお、目印19は、指かけ凹部19aまたは窓部19bの何れか一方であってもよい。さらに目印19は、第一梱包部材11の左把持部14および右把持部15 以外の他の部分と色彩, 質感または材質を相違させて構成してよい。また、目印19は、指かけ凹部19aまたは窓部19bと、これらの相違部分とが組み合わせられて構成されていてもよい。
【0032】
これらの目印19により、左把持部14および右把持部15は、他の構成部分と区別されて、作業者がメンテナンス作業を行う際に第一梱包部材11のどの部分を把持したらよいか位置を容易に特定できる。
図7に示すように、実施形態1では、目印19が第一梱包部材11の左把持部14および右把持部15のみに形成されている。このため、作業者は、第一梱包部材11を用いて定着器5の交換作業を行うことがさらに容易に認識できる。
【0033】
さらに、
図8に示すように、右把持部15は、カバー部11aの内側面11cと定着器5の外壁の上側面部5dとの間が寸法H1となるように設定されている。そして、寸法H1と比較して右把持部15の内側面15cと被把持部5cの外壁5fとの間の寸法H2は、小さく(H1>H2)設定されている。
【0034】
また、
図9に示すように、左把持部14では、カバー部11aの内側面11cと定着器5の上側面部5dとの間が寸法H3となるように設定されている。そして、寸法H3と比較して左把持部14の内側面14cと被把持部5cの外壁5fとの間の寸法H4は、小さく(H3>H4)設定されている。
【0035】
また、実施形態1は、右把持部15が一体に設けられている周囲のカバー部11aと定着器5との間に寸法H1が設定されている。寸法H1は、左把持部14が一体に設けられた周囲のカバー部11aと定着器5との間の寸法H3と同様の大きさに設定されている。
さらに、右把持部15と定着器5との間の寸法H2は、左把持部14と定着器5との間の寸法H4と同じとなるように設定されている。
しかしながら特にこれに限らない。例えば、寸法H1と寸法H3,寸法H2と寸法H4のうち少なくとも何れか一方が相違するように設定されていてもよい。
【0036】
また、実施形態1では、
図10に示すように、カバー部11aの内側面11cと外側面11dとの間に厚さ寸法W2が、鍔部11bの縦壁面11eに厚さ寸法W3がそれぞれ設定されている。そして、これらの厚さ寸法W2,W3のうち少なくとも何れか一方と比較して、左把持部14の内側面14cと外側面14dとの間の厚さ寸法W1が大きく(W2<W1,W3<W1)設定されている。なお、右把持部15の内側面と外側面との間の厚さ寸法についても左把持部14と同様に設定されている。
【0037】
これにより、左把持部14および右把持部15は、所望の厚さ寸法W1の断熱材により断熱されて、把持する作業者に定着器5からの熱が伝わりにくい。
また、左把持部14および右把持部15は、内側面11cと外側面11dとの間を遮熱する所望の厚さ寸法W1の断熱材を有していても、周囲のカバー部11aおよび鍔部11bが外側面11dの押圧により容易に撓む。
このため、少ないストローク(例えば、
図8に示す(H1>H2))、
図9に示す(H3>H4))で内側面14c,15cそれぞれの被把持部5cに当接させて圧着させることができる。
【0038】
図11~
図17は、実施形態1の梱包部材10を用いた画像形成装置1の定着器5を交換するメンテナンス作業について説明するものである。
まず、
図11に示すように、作業者は、梱包部材10の外箱30から新しい定着器5を梱包している第一梱包部材11および第二梱包部材12を取り出す。そして、第一梱包部材11は、第二梱包部材12および定着器5から分離される。
【0039】
この際、作業者は、目印19(
図6)によって各左把持部14および右把持部15の位置が他の構成部分と区別することができる。よって、作業者は、どの部分を把持したらよいか容易に特定できる。
【0040】
図12は、画像形成装置1の側部の蓋体を開放した様子を示している。まず、内部に装着されている使用済みの定着器5に対して、作業者は、第一梱包部材11を取付方向Fに近接させてメンテナンス開口1aから挿入する。
交換作業は、連続印刷の途中や印刷終了直後など定着器5の温度がまだ高い状態であっても開始できる。そして、メンテナンス開口1aの内部で、カバー部11aは、取付部4に付けられている定着器5に被せられる。
また、第一梱包部材11は、使用済みの定着器5と同じ形状の新しい定着器5を梱包していたものである。このため、第一梱包部材11のカバー部11aは、定着器5の形状に適合して定着器5の後方から取付方向Fに沿って前方へ半分以上を覆うことができる。
【0041】
図13に示すように、作業者は、使用済みの定着器5を第一梱包部材11の上から把持する。作業者は、第一梱包部材11の左把持部14および右把持部15を介在させて定着器5の左,右それぞれの被把持部5cを上下方向Hから掴む。この際、左把持部14および右把持部15の目印19としての指かけ凹部19a(
図6参照)が凹状に形成されている。このため、作業者は、指かけ凹部19aに指を適合させてさらに把持する力を効率的に左把持部14および右把持部15から定着器5の被把持部5cに伝えることができる。
【0042】
また、目印19として形成された凹状の指かけ凹部19aは、被把持部5cに凸設されている。このため、左把持部14および右把持部15の内側面14c,15cと被把持部5cの外壁5fとの間の寸法H2,H4を、指かけ凹部19aが形成されていない場合と比べてさらに小さくすることが出来る。
したがって、左把持部14および右把持部15の内側面15cを変形により容易に被把持部5cの外壁5fに当接させることができる。よって、さらに、確実に定着器5を左把持部14および右把持部15の外側面15dから把持することができる。
【0043】
また、定着器5の熱は、左把持部14および右把持部15を構成するパルプモールドによって遮られて作業者の指や手に伝わりにくい。実施形態1では、さらに左把持部14等の内側面14cと外側面14dとの間の厚さ寸法W1が他の部分と比べて大きく設定されている。
このため、さらに指に熱が伝わりにくい。
したがって、十分温度が低下していない定着器5であっても
図13に示すように作業者は、左把持部14および右把持部15を挟んで左,右それぞれの被把持部5cを容易に把持することができる。
【0044】
実施形態1では、
図10に示すように、カバー部11aの厚さ寸法W2または、鍔部11bの厚さ寸法W3より、左把持部14および右把持部15の厚さ寸法W1が大きく(W2<W1,W3<W1)設定されている。
このため、さらに効果的にパルプモールドによって定着器5の熱が遮られて作業者の指や手に伝わりにくい。
また、カバー部11aによって定着器5が作業者の手や衣服に直接、接触することがない。このため、手以外の作業者の身体への熱は遮られる。そして、作業者の衣服に定着器5のトナーが付着する虞もない。したがって、定着器5の交換作業性を向上させることができる。
【0045】
さらに、カバー部11aの厚さ寸法W2または、鍔部11bの厚さ寸法W3は、左把持部14および右把持部15の厚さ寸法W1より小さい。このため、左把持部14および右把持部15の周囲は、容易に変形する。したがって、被把持部5cと対向する左把持部14および右把持部15は、平坦な状態の内側面14cを被把持部5cの凹凸形状の滑り止めに広い範囲で当接させる。よって、定着器5が滑り落ちないように容易に交換作業を行うことができる。
よって、作業者は、連続印刷の途中や印刷終了直後などであっても定着器5の取付面5bの係合を解除して画像形成装置1の取付部4から定着器5を取外すことができる。
【0046】
この際、左把持部14および右把持部15間は、左把持部14および右把持部15と同じパルプモールドで構成されたカバー部11aによって一体に連結されている。したがって、定着器5が直接、作業者に直接接触することがない。よって安全に画像形成装置1から十分温度が低下していない余熱を有する定着器5を取外すことができる。また、作業者の手や衣服に定着器5のトナーが付着して汚れてしまうこともない。
【0047】
図15に示すように、作業者は、第一梱包部材11の上から把持している使用済みの定着器5に、外箱30から取り出された第二梱包部材12を取付方向Fに沿って被せる。使用済みの定着器5は、第一梱包部材11および第二梱包部材12の間に挟まれてカバー部11aおよびカバー部12aにより覆われる。
この際、作業者は、第一梱包部材11および第二梱包部材12を持つことにより定着器5に直接接触することなく梱包作業を行うことができる。このため、定着器5に余熱が残っていても、定着器5は、カバー部11aとカバー部12aとの間に形成される内部空間に収容される。
【0048】
図16に示すように、使用済みの定着器5は、第一梱包部材11と第二梱包部材12とにより覆われている状態で外箱30の内側31に入れられる。外箱30の上部開口は閉じられて、再生あるいは処分まで保管もしくは搬送される。
【0049】
また、
図17に示すように、新しい定着器5は、画像形成装置1の取付部4に装着される。新しい定着器5は加熱されておらず熱を持っていない。このため、作業者は、定着器5の被把持部5c,5cを直接掴んで、画像形成装置1に取り付けることができる。
【0050】
図18は、本発明の実施形態2に係る梱包部材50を示している。ここでは、実施形態1の梱包部材10との相違点を中心として説明し、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2の梱包部材50では、第一梱包部材21が左右方向Dの中間部で二分割された左側第一梱包部材22および右側第一梱包部材23を有している。左側第一梱包部材22および右側第一梱包部材23は、各左カバー部24,右カバー部25に一体となるようにそれぞれの左把持部14および右把持部15を設けている。
このうち、二分割された左カバー部24,右カバー部25には、それぞれ左把持部14および右把持部15が左右方向Dに離間させて一対、設けられている。各左把持部14および右把持部15の周囲からは、左把持部14および右把持部15と同じパルプモールドにて構成されている左カバー部24,右カバー部25が他方の右把持部15および左把持部14に向けて延設されている。
そして、左側第一梱包部材22および右側第一梱包部材23は、分割されている部分で対向するそれぞれの端部を突き合わせている。
【0051】
このように構成された実施形態2の梱包部材50は、第一梱包部材21が左右方向Dの中間部で二分割された左側第一梱包部材22および右側第一梱包部材23を有している。
このため、実施形態2の梱包部材50は、実施形態1の梱包部材10の作用効果に加えて、さらに実施形態2の梱包部材50は、左側第一梱包部材22および右側第一梱包部材23を個別に定着器5に被せることができる。よって、定着器5のメンテナンス作業性がさらに向上する。
【0052】
また、左側第一梱包部材22および右側第一梱包部材23は、左右方向Dに二分割されている。左把持部14の周囲からは、他方の右把持部15に向けて左カバー部24が延設されている。また、右把持部15の周囲からは、他方の左把持部14に向けて右カバー部25が延設されている。
これにより、作業者は、左把持部14を左手で、右把持部15を右手でそれぞれ掴みながら定着器5を取付部4から取り外す際、加熱状態の定着器5に直接接触することがない。
他の構成、および作用効果については、実施形態1の梱包部材10と同様であるので説明を省略する。
【0053】
上述してきたように、実施形態の梱包部材は、定着器5を覆うカバー部11aを備えている。また、梱包部材は、カバー部11aの左,右両側に設けられて、定着器5に形成された被把持部5cを把持する左把持部14および右把持部15を備えている。
このように構成された梱包部材10および50は、定着器5の交換作業性を向上させることができる。
【0054】
すなわち、連続印刷の途中や印刷終了直後など定着器5の温度がまだ高い状態であっても、使用済みの定着器5を新しい定着器5と交換して次の印刷を早期に再開できる。また、交換作業に不慣れな作業者であっても、定着器5に接触しない。このため、定着器5のトナーが手や衣服に付着して汚れる虞もない。
したがって、実施形態1.2の梱包部材10および50は、良好な交換作業性を発揮することができる。
【0055】
また、実施形態1の梱包部材10は、カバー部11aの厚さ寸法W2または、鍔部11bの厚さ寸法W3が左把持部14および右把持部15の厚さ寸法W1より小さく設定されている。これにより、梱包部材10は、全て左把持部14および右把持部15と同じ厚さ寸法W1で構成する場合と比較して軽量化できる。また、主原料としての材料量を減少させることができる、といった実用上有益な作用効果を発揮する。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他のさまざまな実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0057】
例えば、実施形態では、カバー部11aの左右端部近傍にそれぞれ左把持部14および右把持部15を設けたものを示して説明してきたが特にこれに限らない。例えば、第一梱包部材11の何れかの部分に把持部が少なくとも一箇所に設けられていればよい。また、第一梱包部材11の左右各端部の間であれば、中間位置は二等分となる中央位置でなくてもよい。すなわち、把持部は、カバー部11aと連続して形成されていればよい。このように、把持部は、その形状、数量、材質および形成される位置が実施形態により限定されるものではない。
【0058】
また、実施形態の目印19は、左把持部14および右把持部15にそれぞれ凹状の指かけ凹部19aと、指かけ凹部19aの外側に位置する鍔部11bの一部を切欠いた窓部19bと、を有している。また、目印19として色彩,質感または材質を相違させたものであってもよい旨説明してきた。
しかしながら、目印19は、特にこれに限らない。例えば、指かけ凹部19aまたは、窓部19bのうち一方を有しているものであってもよい。また、左把持部14および右把持部15に目印19が設けられていないものであってもよい。すなわち、目印19の形状、数量、材質および色彩等が実施形態に限定されるものではない。
【0059】
さらに、実施形態では、
図10に示すように、カバー部11aの内側面11cと外側面11dとの間の厚さ寸法W2または、鍔部11bの縦壁面11eの厚さ寸法W3のうち、少なくとも何れか一方と比較して、左把持部14の内側面14cと外側面14dとの間の厚さ寸法W1が大きく(W2<W1,W3<W1)設定されている。
しかしながら、特にこれに限らない。例えば、厚さ寸法は全て同様(W1=W2,W3)に設定されていてもよい。すなわち、厚さ寸法W1~W3の大きさや位置は、どのように設定されていてもよく、実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
5 定着器
5c 被把持部
10 梱包部材
11 第一梱包部材
11a カバー部
14 左把持部(一方の把持部)
15 右把持部(他方の把持部)
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