IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本利器工業株式会社の特許一覧 ▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図1
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図2
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図3
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図4
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図5
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図6
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図7
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図8
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図9
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図10
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図11
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図12
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図13
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図14
  • 特開-剃刀及び剃刀形成用シート 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175324
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】剃刀及び剃刀形成用シート
(51)【国際特許分類】
   B26B 21/06 20060101AFI20241211BHJP
   B26B 21/52 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B26B21/06 Z
B26B21/52 A
B26B21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093019
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】591113068
【氏名又は名称】日本利器工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山藤 正二
(72)【発明者】
【氏名】亀井 一輝
(72)【発明者】
【氏名】横田 善行
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シート材から簡易に組み立てることができる剃刀を提供する。
【解決手段】紙製の第一及び第二シート材と金属製の刃とがこの順に積層されたシート体から組み立てられ、第一シート材が、刃先より前方に延出する第一前方延出部と、第一折り線と、刃より後方に延出する第一後方延出部とを有し、第一後方延出部が、刃先に対して直交する方向に延在する中央領域と、側部折り線を介して連接する側部領域とを有し、第二シート材が、刃先より前方に延出する第二前方延出部と、第二折り線とを有し、第二前方延出部が、第二前方延出部を刃の上に折り返された際に、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する縁片と、が形成される第一切断部とを有し、ヘッド部は、第一前方延出部が第一折り線で折り返され、第二前方延出部が第二折り線で刃の上に折り返されて形成され、ハンドル部は、側部折り線で側部領域が中央領域から立設するように折り曲げられて形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃が取り付けられているヘッド部と、利用者に把持されるハンドル部とを有する剃刀であって、
紙製の第一シート材と、第一シートより上層に位置する紙製の第二シート材と、第二シートより上層に位置する金属製の刃とが積層されているシート体から組み立てられ、
シート体は、
刃より後方位置で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方を折り曲げるヘッド部折り線を有し、
第一シート材が、刃先より前方に延出する第一前方延出部と、第一前方延出部を折り返す第一折り線と、刃より後方に延出する第一後方延出部とを有し、
第一後方延出部が、刃先に対して直交する方向に延在する中央領域と、側部折り線を介して中央領域に連接する側部領域とを有し、
第二シート材が、刃先より前方に延出する第二前方延出部と、第二前方延出部を折り返す第二折り線とを有し、
第二前方延出部が、第二前方延出部を刃の上に重ねるように折り返した際に、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する縁片とが形成される第一切断部とを有し、
ヘッド部は、ヘッド部折り線で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方が折り曲げられるとともに、第一シート材の第一前方延出部が第一折り線で折り返されて下部が形成され、第二シート材の第二前方延出部が第二折り線で刃の上に折り返されて、上部と、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する舌片とが形成され、
ハンドル部は、第一後方延出部の側部折り線で側部領域が中央領域の側部から立設するように折り曲げられて形成され、かつ、
ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とでヘッド部とハンドル部とが、連結されて、構成されている、
ことを特徴とする剃刀。
【請求項2】
第一シート材の第一前方延出部に、第三折り線と、第三折り線で折り返した際に切り起こされるヘッド部側係止部とを有し、
第一シート材の第一後方延出部に、側部折り線で側部領域が折り曲げられた際に側部領域の前方部に形成されるハンドル部側係止部と、を有し、
ヘッド部側係止部とハンドル部側係止部とが係止されることで、ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とが連結されている、
請求項1記載の剃刀。
【請求項3】
第一シート材と第二シート材と刃とが、金属製の固定手段によって固定されている、請求項1又は2記載の剃刀。
【請求項4】
ハンドル部側係止部は、湾曲縁を有し、ヘッド部側係止部は、凹溝を有し、
ハンドル部側係止部の湾曲縁が、ヘッド部側側係止部の凹溝に嵌合し、
ハンドル部側係止部の凹溝の底部が、ハンドル部側係止部の湾曲縁に沿って移動することで、ヘッド部が揺動可能とされている、
請求項2記載の剃刀。
【請求項5】
第二前方延出部は、先端部に差込片を有し、
第一シート材は、刃よりも後方位置に前記差込片が差し込まれる差込部を有し、
第二前方延出部の差込片が刃よりも後方位置で、第一シート材の差込部に差し込まれている、
請求項1又は2記載の剃刀。
【請求項6】
刃が取り付けられているヘッド部と、利用者に把持されるハンドル部とを有する剃刀を形成するための剃刀形成用シートであって、
紙製の第一シート材と、第一シートより上層に位置する紙製の第二シート材と、第二シートより上層に位置する金属製の刃とが積層されているシート体であり、
シート体は、
刃より後方位置で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方を折り曲げるヘッド部折り線を有し、
第一シート材が、刃先より前方に延出する第一前方延出部と、第一前方延出部を折り返す第一折り線と、刃より後方に延出する第一後方延出部とを有し、
第一後方延出部が、刃先に対して直交する方向に延在する中央領域と、側部折り線を介して中央領域に連接する側部領域とを有し、
第二シート材が、刃先より前方に延出する第二前方延出部と、第二前方延出部を折り返す第二折り線とを有し、
第二前方延出部が、第二前方延出部を刃の上に重ねるように折り返した際に、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する縁片とが形成される第一切断部とを有し、
ヘッド部折り線で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方が折り曲げられるとともに、第一シート材の第一前方延出部が第一折り線で折り曲げられてヘッド部の下部が形成され、第二シート材の第二前方延出部が第二折り線で刃の上に折り返されて、ヘッド部の上部と、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する舌片とが形成され、
第一後方延出部の側部折り線で側部領域が中央領域の側部から立設するように折り曲げられてハンドル部が形成され、かつ、
ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とでヘッド部とハンドル部とが、連結可能に、構成されている、
ことを特徴とする剃刀形成用シート。
【請求項7】
第一シート材の第一前方延出部に、第三折り線と、第三折り線で折り返した際に切り起こされるヘッド部側係止部とを有し、
第一シート材の第一後方延出部に、側部折り線で側部領域が折り曲げられた際に側部領域の前方部に形成されるハンドル部側係止部と、を有し、
ヘッド部側係止部とハンドル部側係止部とが係止されることで、ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とが連結されるように構成されている、
請求項6記載の剃刀形成用シート。
【請求項8】
第一シート材と第二シート材と刃とが、金属製の固定手段によって固定されている、請求項6又は7記載の剃刀形成用シート。
【請求項9】
ハンドル部側係止部は、湾曲縁を有し、ヘッド部側係止部は、凹溝を有し、
ハンドル部側係止部の湾曲縁が、ヘッド部側側係止部の凹溝に嵌合可能に構成され、
ハンドル部側係止部とヘッド部側係止部とが嵌合された際に、ハンドル部側係止部の凹溝の底部が、ハンドル部側係止部の湾曲縁に沿って移動可能となることで、ヘッド部が揺動可能となるように構成されている、
請求項7記載の剃刀形成用シート。
【請求項10】
第二前方延出部は、先端部に差込片を有し、
第一シート材は、刃よりも後方位置に前記差込片が差し込まれる差込部を有する、
請求項6又は7記載の剃刀形成用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剃刀及び剃刀形成用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
剃刀は、樹脂製のケースに金属製の刃が収容された剃刀ヘッド(カートリッジ等とも称されることがある)と、剃刀ヘッドが取り付けられるヘッド部及び使用者が把持や操作するためのハンドル部が一体となっている柄体とで構成された、全体としてT字型をなすものがよく知られている。剃刀ヘッドは、一般的に、硬質プラスチックの枠体に金属製の刃が固定されており、柄体は、一般的に、硬質プラスチックや金属などによって形成されている。このため、従来のこの種の剃刀は、折り畳みや分解することが難しく、収容や保管のためのスペースを広く確保する必要があったり、持ち運びが不便であったりする問題があった。
【0003】
また、従来のこの種の剃刀は、プラスチック枠体と金属製の刃を分別することが難しい構造のものが多く、また、素材を分別しようとすると金属製の刃で作業者が怪我をする危険性があるため手間がかかるなどの理由により、素材の有効なリサイクルがされず、可燃物あるいは不燃物として処理されている。
【0004】
他方で、旅館やホテル等の宿泊施設等では、アメニティとして剃刀ヘッド及び柄体がプラスチックで形成されている、使い捨ての剃刀が提供されていることがある。近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでおり、日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、例えば、ホテル業等の特定の事業者に対して、使い捨てプラスチック製品の削減が義務化されることとなった。そして、この「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、「特定プラスチック使用製品」として、プラスチック製の剃刀が指定されており、剃刀における脱プラスチック化が注目されている。
【0005】
従来、柄体を紙製として、薄いシート形状から折り曲げ組み立てて形成される剃刀が、例えば、下記特許文献1に開示されている。この剃刀は、柄体が紙製となっており、全体としてプラスチック使用量が少なく、また、シート型のまま輸送や保管することができるため、収納性や運搬性も改善されている。例えば、店舗等や宿泊施設にシート状のまま納品したり、シート状のままバックヤードに保管したり、必要時に組み立てて使用する使用態様を採ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-157763号公報
【特許文献2】特許6858478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1の剃刀は、柄体が紙製であるものの、剃刀ヘッド(カートリッジ)は硬質プラスチック製の枠体に金属製の刃を固定したものを使用するため、剃刀全体としてのプラスチック使用量は少なくなっているものの脱プラスチック化は達成されていない。廃棄やリサイクルの際には、剃刀ヘッドと柄体との分別が求められることがある。また、柄体に対して剃刀ヘッドを接着剤や粘着テープによって固定する必要があるため組み立てや製造が煩雑となるという問題があった。
【0008】
他方で、柄体がプラスチックや金属製の剃刀においては、首振りヘッド、首振り機構等とも称される、柄体に取り付けた剃刀ヘッドが、肌の曲面に追従して動く機構を備えるものがあり、ユーザーに広く受け入れられている。
【0009】
引用文献1の剃刀においては、柄体の撓みによって、剃刀ヘッドがユーザーの肌に付勢されるようになっているが、剃刀ヘッド自体が動くわけではなく、剃刀ヘッドと肌との面圧が変化するに留まっており、薄いシート形状から折り曲げ組み立てて形成される剃刀において、首振り機構を有するものはない。
【0010】
そこで、本発明の主たる課題は、プラスチックを使用することなく製造でき、剃刀ヘッドと柄体とを分別したり、剃刀ヘッドのプラスチック部分を分別したりすることなく、廃棄やリサイクルすることが可能であり、さらに、剃刀ヘッドと柄体とが一体のシート形状から簡易に組み立てることができる剃刀及び剃刀形成用シートを提供することにあり、さらなる課題は、加えて刃が曲面に追従できる首振り機構を有する剃刀及びその剃刀を形成できる剃刀形成用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した第一の手段は、
刃が取り付けられているヘッド部と、利用者に把持されるハンドル部とを有する剃刀であって、
紙製の第一シート材と、第一シートより上層に位置する紙製の第二シート材と、第二シートより上層に位置する金属製の刃とが積層されているシート体から組み立てられ、
シート体は、
刃より後方位置で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方を折り曲げるヘッド部折り線を有し、
第一シート材が、刃先より前方に延出する第一前方延出部と、第一前方延出部を折り返す第一折り線と、刃より後方に延出する第一後方延出部とを有し、
第一後方延出部が、刃先に対して直交する方向に延在する中央領域と、側部折り線を介して中央領域に連接する側部領域とを有し、
第二シート材が、刃先より前方に延出する第二前方延出部と、第二前方延出部を折り返す第二折り線とを有し、
第二前方延出部が、第二前方延出部を刃の上に重ねるように折り返した際に、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する縁片とが形成される第一切断部とを有し、
ヘッド部は、ヘッド部折り線で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方が折り曲げられるとともに、第一シート材の第一前方延出部が第一折り線で折り返されて下部が形成され、第二シート材の第二前方延出部が第二折り線で刃の上に折り返されて、上部と、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する舌片とが形成され、
ハンドル部は、第一後方延出部の側部折り線で側部領域が中央領域の側部から立設するように折り曲げられて形成され、かつ、
ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とでヘッド部とハンドル部とが、連結されて、構成されている、
ことを特徴とする剃刀である。
【0012】
第二の手段は、
第一シート材の第一前方延出部に、第三折り線と、第三折り線で折り返した際に切り起こされるヘッド部側係止部とを有し、
第一シート材の第一後方延出部に、側部折り線で側部領域が折り曲げられた際に側部領域の前方部に形成されるハンドル部側係止部と、を有し、
ヘッド部側係止部とハンドル部側係止部とが係止されることで、ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とが連結されている、
上記第一の手段に係る剃刀である。
【0013】
第三の手段は、
第一シート材と第二シート材と刃とが、金属製の固定手段によって固定されている、上記第一又は第二の手段に係る剃刀である。
【0014】
第四の手段は、
ハンドル部側係止部は、湾曲縁を有し、ヘッド部側係止部は、凹溝を有し、
ハンドル部側係止部の湾曲縁が、ヘッド部側側係止部の凹溝に嵌合し、
ハンドル部側係止部の凹溝の底部が、ハンドル部側係止部の湾曲縁に沿って移動することで、ヘッド部が揺動可能とされている、
上記第二の手段に係る剃刀である。
【0015】
第五の手段は、
第二前方延出部は、先端部に差込片を有し、
第一シート材は、刃よりも後方位置に前記差込片が差し込まれる差込部を有し、
第二前方延出部の差込片が刃よりも後方位置で、第一シート材の差込部に差し込まれている、
上記第一又は第二の手段に係る剃刀である。
【0016】
第六の手段は、
刃が取り付けられているヘッド部と、利用者に把持されるハンドル部とを有する剃刀を形成するための剃刀形成用シートであって、
紙製の第一シート材と、第一シートより上層に位置する紙製の第二シート材と、第二シートより上層に位置する金属製の刃とが積層されているシート体であり、
シート体は、
刃より後方位置で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方を折り曲げるヘッド部折り線を有し、
第一シート材が、刃先より前方に延出する第一前方延出部と、第一前方延出部を折り返す第一折り線と、刃より後方に延出する第一後方延出部とを有し、
第一後方延出部が、刃先に対して直交する方向に延在する中央領域と、側部折り線を介して中央領域に連接する側部領域とを有し、
第二シート材が、刃先より前方に延出する第二前方延出部と、第二前方延出部を折り返す第二折り線とを有し、
第二前方延出部が、第二前方延出部を刃の上に重ねるように折り返した際に、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する縁片とが形成される第一切断部とを有し、
ヘッド部折り線で第一シート材又は第一シート材と第二シート材の双方が折り曲げられるとともに、第一シート材の第一前方延出部が第一折り線で折り返されてヘッド部の下部が形成され、第二シート材の第二前方延出部が第二折り線で刃の上に折り返されて、ヘッド部の上部と、刃先が露出される開口部と、刃先より延出する舌片とが形成され、
第一後方延出部の側部折り線で側部領域が中央領域の側部から立設するように折り曲げられてハンドル部が形成され、かつ、
ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とでヘッド部とハンドル部とが、連結可能に、構成されている、
ことを特徴とする剃刀形成用シートである。
【0017】
第七の手段は、
第一シート材の第一前方延出部に、第三折り線と、第三折り線で折り返した際に切り起こされるヘッド部側係止部とを有し、
第一シート材の第一後方延出部に、側部折り線で側部領域が折り曲げられた際に側部領域の前方部に形成されるハンドル部側係止部と、を有し、
ヘッド部側係止部とハンドル部側係止部とが係止されることで、ヘッド部の下部に位置された第一前方延出部と、ハンドル部の側部領域とが連結されるように構成されている、
上記第六の手段に係る剃刀形成用シートである。
【0018】
第八の手段は、
第一シート材と第二シート材と刃とが、金属製の固定手段によって固定されている、上記第六又は第七の手段に係る剃刀形成用シートである。
【0019】
第九の手段は、
ハンドル部側係止部は、湾曲縁を有し、ヘッド部側係止部は、凹溝を有し、
ハンドル部側係止部の湾曲縁が、ヘッド部側側係止部の凹溝に嵌合可能に構成され、
ハンドル部側係止部とヘッド部側係止部とが嵌合された際に、ハンドル部側係止部の凹溝の底部が、ハンドル部側係止部の湾曲縁に沿って移動可能となることで、ヘッド部が揺動可能となるように構成されている、
上記第七の手段に係る剃刀形成用シートである。
【0020】
第十の手段は、
第二前方延出部は、先端部に差込片を有し、
第一シート材は、刃よりも後方位置に前記差込片が差し込まれる差込部を有する、
上記第六又は第七の手段に係る剃刀形成用シートである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プラスチックを使用することなく製造でき、剃刀ヘッドと柄体とを分別したり、剃刀ヘッドのプラスチック部分を分別したりすることなく、廃棄やリサイクルすることが可能であり、さらに、剃刀ヘッドと柄体とが一体のシート形状から簡易に組み立てることができる剃刀及び剃刀形成用シートが提供され、さらに、加えて刃が曲面に追従できる首振り機構を有する剃刀及びその剃刀を形成できる剃刀形成用シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の剃刀の正面を示す図である。
図2】実施形態の剃刀の背面を示す図である。
図3】実施形態の剃刀の側面を示す図である。
図4】実施形態の剃刀に係るシート体の平面図である。
図5】実施形態の剃刀に係るシート体の側面図である。
図6】実施形態の剃刀に係る第一シート材の平面図である。
図7】実施形態の剃刀に係る第二シート材の平面図である。
図8】実施形態の剃刀に係る第一シート材と第二シート材とを積層した状態の平面図である。
図9】実施形態の剃刀に係る刃の平面図(A)及び側面図(B)である。
図10】実施形態の剃刀の組み立てを説明するための第一の側面図である。
図11】実施形態の剃刀の組み立てを説明するための第二の側面図である。
図12】実施形態の剃刀の組み立てを説明するための第三の側面図である。
図13】実施形態の他の剃刀に係る第一シート材の平面図である。
図14】実施形態の他の剃刀に係る第二シート材の平面図である。
図15】多層紙の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次いで、本発明に係る剃刀の実施形態を図1図15を参照しながら以下に詳述する。本発明は、図示の形状やこの実施形態に限定されるわけではない。本発明の範囲において、各部の詳細な形状や位置については、本発明の効果を妨げない範囲で変更可能である。
【0024】
また、本発明及び本明細書においては、シート体の形態時における第一シート側を「下層」、刃側を「上層」としている。また、シート体の形態時において刃先が向く方向を「前方」、刃先が向く方向と反対方向を「後方」としている。さらに、本発明及び本明細書においては、使用形態に鑑みて剃刀の形態時における、ヘッド部の刃を肌に当てる面側を「正面」、正面と反対側を「背面」としている。さらに、本発明及び本明細書においては、使用形態に鑑みて剃刀の形態時における、ヘッド部側を「上方」、ハンドル部側を「下方」としている。本発明及び本明細書においては、「上層」、「下層」、「前方」、「後方」、「正面」、「背面」、「上方」、「下方」の語は、観者の位置によって変わるものであり絶対的な位置を示す語ではない。また、「第一」、「第二」等の語は、必ずしも操作の順を示す語ではない。
【0025】
本実施形態の剃刀1は、特に図1図3に示されるように、刃30が取り付けられているヘッド部1Aと、利用者に把持されるハンドル部1Bとを有している。この剃刀1は、ヘッド部1Aの中央からハンドル部1Bが突き出た、全体としてT字型をなす形状となっており、T字型の剃刀とも称されるものである。この実施形態の剃刀1は、特に、図2及び図3に示すように、背面側においてヘッド部1Aとハンドル部1Bとがヘッド部折り線9を介して一体的に構成され、正面側においてはヘッド部1Aの下部を構成する部分15と、ハンドル部1Bの下部の前方部分を構成する部分16とが連結された構造となっている。
【0026】
この剃刀1は、特徴的に図4及び図5に示されるように展開状態がシート形態であり、特に、紙製の第一シート材10と、第一シート材10より上層に位置する紙製の第二シート材20と、第二シート材20より上層に位置する金属製の刃30とが積層されているシート体5から組み立てられている。第一シート材10と第二シート材20と刃30との間には、本発明の効果を妨げない範囲で他のシート材やスペーサーを介在させることができる。この剃刀1は、組み立てた状態で、店舗や宿泊施設等に納品したり、バックヤード等に保管することができるほか、例えば、シート体5の状態で店舗や宿泊施設等に納品したり、バックヤード等に保管し、必要時に組み立てて使用するという使用態様を採ることができる。組み立て前のシート体5は、保管性、収納性や運搬性に優れる。
【0027】
剃刀1における刃30は、鉄、ステンレス等の既知の一般的な金属製の薄板状の剃刀刃を用いることができる。刃30は、両刃のものも使用できるが、片刃のものが望ましい。図示の形態では片刃の刃30を用いている。また、剃刀においては、二枚刃、三枚刃などと称される、刃先の位置をずらして複数の刃30が固定されている複数刃タイプのものがあるが、本発明に係る剃刀1においても、複数の刃30が固定されている複数刃タイプとすることができる。近年では六枚刃のものも知られるが、このような多数刃タイプのものとすることもできる。
【0028】
図示の形態は、図9に示すように、刃30が二枚の二枚刃タイプの形態となっている。具体的には、二枚の刃30,30が所定厚のスペーサー31を介して、その刃先32の位置をずらして積層された状態で各シート材10,20と固定される。またシート材10,20に近い側の刃30と第二シート材20との間にもスペーサー31が介在されている。スペーサー31は、紙又は金属とするのが望ましい。特に厚み方向の硬度が高い金属とするのが望ましい。なお、実施形態では、二枚刃であるが、上記のとおり、本発明における剃刀の刃30の枚数は限定されるものではない。一枚刃であってもよく三枚刃以上であってもよい。なお、複数枚刃の場合、本発明における刃先32とは、最も前方に位置する刃の縁である。
【0029】
第一シート材10と第二シート材20と刃30とを相互に固定する固定方法は必ずしも限定されない。接着剤や粘着テープの化学的な固定手段、カシメやハトメ、ステープル、クリップ等の機械的な固定手段等、適宜の固定手段によって固定することができる。剃刀1は、水に触れる態様で使用されることが多いことから、特に好ましくは、金属製の機械的な固定手段である。金属製の機械的な固定手段としては、金属製のカシメ、ハトメ、ステープル、クリップ等の連結具が例示できる。接着剤を用いる場合、その具体的な種類は限定されないが、接着剤によって固定するのであれば、水性又は油性の耐水性を有する接着剤を用いるのが望ましい。
【0030】
図示の形態の剃刀1は、金属製のカシメ40によって第一シート材10と第二シート材20と二枚のスペーサー31,31と二枚の刃30,30とを固定する形態を示している。この剃刀1は、各刃30及びスペーサー31にカシメ穴30Hが形成され、第一シート材10と第二シート材20の所定位置に位置決め孔10H,20Hが形成されており、各刃30及びスペーサー31のカシメ穴30Hと第一シート材10及び第二シート材20の位置決め孔10H,20Hを一致させてカシメ40によって固定されることで、適切な位置で各シート材10,20と刃30とが固定されている。なお、特に複数枚刃タイプとする場合、このように固定手段をカシメ40によるものとすると、複数枚の刃30,30の刃先32,32を適切な位置で簡易に固定でき、かつ、使用時に分離するおそれも各段に少ない点で優れる。スペーサー31の素材は限定されないが、鉄、ステンレス等の適宜の金属等、セラミック、木材等の硬質素材が好適に使用される。また、図示の形態では、二枚のスペーサー31,31を用いているが、三枚、四枚のスペーサー31を用いてもよい。刃の間に複数のスペーサー31を配することもできる。
【0031】
この剃刀1は、図10図12に示すように、刃30の刃先32と反対側の縁より後方位置にある第一シート材10又は第一シート材10と第二シート材20の双方を折り曲げるヘッド部折り線9で、第一シート材10又は第一シート材10と第二シート材20とが、90度以上の角度をもって折り曲げられて、ヘッド部折り線9より前方側部分10A,20Aによってヘッド部が構成されている。図4及び図5に示されるように、図示の形態のシート体5は、刃30の後方位置より第二シート材20が延出する部分が短く、ヘッド部折り線9は、第一シート材10のみに形成されている例を示している。この形態では、ヘッド部折り線9で折り曲げることで、第一シート材10が折り曲げられるとともに、このヘッド部折り線9より前方位置の第一シート材10の折り曲げられた部分に第二シート材20が重ねられた形態となる。なお、図示はしないが、刃30の後方位置より第二シート材20が延出する部分が長い場合は、第一シート材10とともに第二シート材20の一部もヘッド部折り線9で折り曲げられた形態とすることができる。
【0032】
他方で、第一シート材10は、特に図4及び図6に示すように、シート体5の形態時において、刃30の刃先32より前方に延出する第一前方延出部10Aと、第一前方延出部10Aを折り返す第一折り線11と、刃30より後方に延出する第一後方延出部10Bとを有している。
【0033】
第一折り線11は、刃先32の直下近傍位置で、刃先32と平行に配置されている。第一前方延出部10Aの具体的な形状は、必ずしも限定されない。略長方形の刃30よりやや幅広の全体として略長方形や台形等をなす形状が例示できる。第一前方延出部10Aは、図1及び図10図12に示されるように、第一折り線11で刃と反対側に折り曲げられることで、ヘッド部1Aの下部を構成している。
【0034】
第一後方延出部10Bは、図1図5及び図10図12に示されるように、ヘッド部1Aの後部からハンドル部1Bを構成する部分であり、第一前方延出部10Aよりも刃からの延出長が長くなっている。この第一後方延出部10Bは、刃先32に対して直交する方向に延在する中央領域12と、側部折り線13,13を介して中央領域12の両側に各々連接する一対の側部領域14,14とを有している。
【0035】
中央領域12は、主にハンドル部1Bの背側を構成する部分であり、その具体的な形状は限定されないが、一形態としては細長矩形が例示できる。図示の形態では、長手方向の中央部において、長手方向に直交する短手方向が狭くなる絞り部12Sを有する形状となっている。
【0036】
側部領域14は、主にハンドル部1Bの側部を構成する部分であり、その具体的な形状は限定されないが、一形態として細長矩形が例示できる。図示の形態では、第一後方延出部10Bの縁でもある側部領域14の縁14Eがアーチ状に湾曲された形状となっているが、必ずしもこの形状に限定されない。
【0037】
剃刀1のハンドル部1Bは、側部領域14が側部折り線13で中央領域12の側部から立設するように折り曲げられて形成されている。つまり、シート体5の形態の第一後方延出部10Bが側部折り線13で断面略コ字型に折り曲げられて形成されている。
【0038】
他方で、この剃刀1は、特に、図1~3及び図10図12に示されるように、ヘッド部1Aの下部に位置された第一前方延出部10Aと、ハンドル部1Bの側部領域14とにおいて、ヘッド部1Aとハンドル部1Bとが、連結されている。連結形態は、必ずしも限定されない。接着剤や粘着テープの化学的な固定手段、カシメやハトメ、ステープル、クリップ等の機械的な固定手段等によって連結することができる。好ましくは、シート材10,20の所定部分同士を係止させる係止手段によって連結するのが望ましい。シート材10,20以外の別途の固定手段が不要であり、組み立てが容易となる。例えば、第一前方延出部10Aに形成されるヘッド部側係止部15と、第一後方延出部10Bに形成されるハンドル部側係止部16とが、係止されることで連結されるようにするのが望ましい。
【0039】
ヘッド部側係止部15としては、例えば、第一折り線11で刃30の下方に折り曲げられる第一前方延出部10Aの前方縁部にスリットを形成したり、前方縁を凹凸に形成するなどして、他のシート材の部分の縁が引っ掛かりやすい形状とすることで構成できる。他方で、ハンドル部側係止部16は、側部折り線13で折り曲げられる側部領域14の前方縁部となる部分にスリットを形成したり、前方縁を凹凸に形成するなどして、他のシート材の部分の縁が引っ掛かりやすい形状とすることで構成できる。第一前方延出部10Aの前方と側部領域14の前方とが付き合わされる位置にこれらのスリットや凹凸を形成して、スリット同士、凹凸同士又はスリットと凹凸とが掛かり合うようにして係止されるようにすればよい。
【0040】
特に、図示の形態の剃刀1は、好ましい形態として、第一前方延出部10Aに、刃先32及び第一折り線11と平行にさらに第三折り線17を有し、さらにこの第三折り線17に連接するスリット18や刳り貫きにより形成される開口部19が配されている。そして、この剃刀1は、第三折り線17より前方部分が第三折り線17で折り曲げられことで、スリット18や刳り貫きによる開口部19の縁が切り起こされてヘッド部側係止部15が形成されている。
【0041】
この図示の形態の剃刀1は、第三折り線17より前方に位置する部分が第一折り線11と同方向に折り曲げられて、図3及び図12に示すように、第一前方延出部10Aが、刃30の下側に略三角柱状の立体的なヘッド部1Aの下部を構成している。よって、ヘッド部1Aとハンドル部1Bとが紙素材同士の係止によって連結されているとともに、刃30の下部側に立体的な三角柱形状部分が形成され強固なヘッド部1Aが構成される。但し、本発明に係る剃刀1は、必ずしも第三折り線17及び第三折り線17で折り曲げられる部分を有さなくともよい。
【0042】
他方で、第二シート材20は、特に、図1図4図5及び図7に示すように、シート体5の形態時において、刃先32より前方に延出する第二前方延出部20Aと、第二前方延出部20Aを折り返す第二折り線21とを有している。また、第二前方延出部20Aには、さらに、第二前方延出部20Aを刃30の上に重ねるように折り返した際に、刃先32が露出される開口部22と、刃先32より延出する舌片23とが形成される第二切断部20Cとが形成されている。既述のとおり、図示の形態のシート体5では、第二シート材20は、ヘッド部折り線9より刃先側において第一シート材10と固定されている。
【0043】
第二切断部20Cは、シート体5の形態において、例えば、後方側から前方側に向かって凸となる形状のスリットで形成され、第二折り線21は、このスリットの端から第二シート材20の刃先32の延在方向の端に至るように形成される。図示の形態では、第二切断部20Cは、刃先32より前方で刃先32と所定距離離間した位置で刃先32と平行方向に配された側部方向の切断部20C1と、側部方向の切断部の端又は端部から刃先側に向かう前後方向の切断部20C2とを有する略コ字型のスリットで構成され、そのスリットの端に第二折り線21が連続するように配されている。
【0044】
実施形態の剃刀1は、第二前方延出部20Aが第二折り線21で第二切断部20Cより前方部分が刃の上に重なるように折り返されてヘッド部1Aの上部が構成されている。また、略コ字型の第二切断部20Cで囲まれる部分が折り返されずに切り起こされて残り、刃30の下層位置で舌片23として形成されている。さらに、この舌片23として形成される部分が残ることにより形成される開口部22から刃先32を露出されている。刃先32の直下に舌片23が形成されることで、髭等の毛を剃る際に舌片23が肌に面で接触し、スムーズに肌に沿うようにヘッド部1Aを移動させることができるとともに、刃先32が肌に食い込まないようになり安全性が高い剃刀1となる。なお、シート体5の形態における第二切断部20Cは、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜の形状とすることができる。スリットの幅も限定されない。さらに、第二切断部20Cは、スリットではなくミシン目や図7に示すように適宜の形状の刳り貫き部分やスリットとの併用によって設けることができる。また、図示の形態の剃刀1では、シート体5の形態における第二切断部20Cの特に側部方向の切断部20C1が直線となっているが、この部分を波型など適宜の形状にしてもよい。この場合、舌片23の先端縁が波型等の適宜の形状に形成される。
【0045】
剃刀1における舌片23の刃先32より前方に突出する長さは適宜の設計事項であり、限定されるものではない。また、剃刀1における舌片23は、刃側が凸となる湾曲面となるように反り曲げられていてもよい。肌に舌片23を接触させる際に、舌片23の先端縁が肌に突き当たり難くなり、使用感が良好な剃刀1となる。ここで、このような舌片23の曲げを容易に行えるように、特に図4及び図12に示すように、シート体5の形態における第二前方延出部20Aの第二切断部20Cで囲まれる範囲に、刃先32と平行に複数の折り線24,24を配するのが望ましい。
【0046】
他方で、実施形態の剃刀1のヘッド部1Aは、好ましい形態として、第二前方延出部20Aの特に先端部が第一シート材10に差し込まれて固定されて上部を構成している。この差し込みによって第二前方延出部20Aが固定される形態では、シート材以外の別途の固定手段が不要であり、組み立てが容易となる。この剃刀1は、図4及び図5に示すように、シート体5の形態時において、第二シート材20の第二前方延出部20Aの先端部が先端に向かって先細の差込片20Eとなっているとともに、第一シート材10の刃30よりも後方位置に前記差込片20Eが差し込まれるスリット状の差込部10Sが設けられており、第二前方延出部20Aが第二折り線21で折り返されて差込片20Eが刃30の後方位置にまで折り返された位置で、差込部10Sに差し込まれて固定されている。図示の形態の剃刀1では、差込片20Eを差込部10Sに差し込みやすいように差込片10Eを折り曲げるための折り線25が配されている。また、図示の形態の差込部10Sは、ヘッド部折り線9の一部が切断されて形成されている。但し、差込片20Eの形状や差込部10Sの位置はこの形態に限定されない。ヘッド部折り線9より前方又は後方にスリットや貫通孔を設けて差込部としてもよい。また、図示の形態では、第一シート材10のみに差込部10Sが形成されているが、例えば、第二シート材20が刃30の後方位置に長く延出している形態であれば差込部10Sは、第二シート材20と第一シート材10を貫通するスリットや貫通孔として形成することができる。なお、本発明の剃刀1において第二前方延出部20Aを刃30の上に折り返した状態で固定する方法は、差込片20Eと差込部10Sとによるものに限定されない。接着剤や粘着テープの化学的な固定手段、カシメやハトメ、ステープル、クリップ等の機械的な固定手段等によって固定してもよい。接着剤によって固定するのであれば、水性又は油性の耐水性を有する接着剤を用いるのが望ましい。
【0047】
他方で、実施形態の剃刀1のヘッド部1Aは、好ましい形態として、刃30が曲面に追従できる首振り機構を有している。この剃刀1は、図4及び図5に示すように、ハンドル部側係止部16の縁が湾曲縁16Eを有しているとともに、ヘッド部側係止部15の縁が凹溝15Eを有しており、特に図1図3及び図10図12に示されるように、ヘッド部側係止部15の凹溝15Eに、ハンドル部側係止部16の湾曲縁16Eが嵌合して、ハンドル部1Bとヘッド部1Aとが連結されている。そして、ヘッド部折り線9でシート材10,20が弾性を有しつつ折り曲げられており、ヘッド部側のヘッド部側係止部15の凹溝15Eの底部が、ハンドル部側係止部16の湾曲縁16Eに沿って移動することで、ヘッド部1Aがハンドル部1Bに対して揺動可能とされ、首振り機構が構成されている。ヘッド部1Aの揺動の強弱は、シート材10,20の剛性、コシ等のシート材10,20の弾性変形性を主として、ヘッド部側係止部15の凹溝15Eの底部とハンドル部側係止部16の湾曲縁16Eとの摩擦によって調整することができる。剃刀1の全体形状も考慮される。なお、本発明に係る剃刀1においては首振り機構を有さないようにしてもよい。例えば、図13に示す他の第一シート材10では、ハンドル部側係止部16をフック状に形成し、ヘッド部側係止部15の凹溝15Eに引っ掛けるようにして係合される形態として、首振り機構を有さずにヘッド部とハンドル部とを連結した形態とすることができる。
【0048】
また、実施形態の剃刀1のヘッド部1Aは、好ましい形態として、刃30によって切断された体毛等を排出する排出口を有している。この剃刀1は、シート体の形態時において、第二シート材の刃と重なる位置に第二貫通孔28が設けられており、さらに、第一シート材のこの貫通孔と重なる位置に第一貫通孔が設けられている。排出口は、この第二貫通孔と第一貫通孔によって構成される。図示の形態は、第一シート材の第一貫通孔は、縁がヘッド部側係止部となる第三折り線に連接するように刳り貫きにより形成される開口部を兼ねている。また、この剃刀1は、第二シート材の第二貫通孔28より刃先側は、刃と接着されておらず自由となっている。このため、この剃刀1は、刃によって切断された体毛等が舌片側から刃と第二シート材との間に入り込んでも排出口を介してヘッド部下部へと排出され、毛詰まりが生じ難いものとなっている。
【0049】
本実施形態の剃刀1は、上記のとおり展開状態がシート状であり、特に、紙製の第一シート材10と、第一シート材10より上層に位置する紙製の第二シート材20と、第二シート材20より上層に位置する金属製の刃30とが積層されているシート体5から組み立てられ、金属素材と紙素材とで構成することができるため、プラスチック素材の分別を不要に廃棄やリサイクルすることができる。特にリサイクルに関しては、例えば、特開2020-24485「機密古紙のリサイクル方法及び機密古紙のリサイクルシステム」に開示されるように、古紙パルプ製造工程では、金属等の重量異物を選別する工程が備わっているものがあり、金属製の刃は資源として回収してリサイクルすることが可能である。したがって、本発明に係る剃刀1は、素材ごとや部位ごとに分解・分別することなく、リサイクルすることが可能であり、資源の有効活用の点で優れる。
【0050】
ここで剃刀1の大きさは、一般的な剃刀の大きさとすることができ限定されない。組み立て後の全長L1が80~100mm、ヘッド部の幅L2が、35~49mm、柄体の幅L3は15~20mmとするのがよい。この大きさであれば、一般的な剃刀1の大きさであり、また、シート体5から十分に実用できる強度の剃刀1を構成できる。
【0051】
本発明に係る剃刀1を組み立てるために、シート体5の形態時の第一シート材10及び第二シート材20に設けられている各種の折り線は、シート材10,20の折り返しや折り曲げを容易に行えるようにするための線であり、好ましくは、折筋とも称される罫線、ミシン目、ハーフスリットのなかから1種又は2種以上が選択される。折り線は、すべてが同種の線である必要はなく、必要な強度や折り曲げに必要な応力を考慮して適宜に配することができる。また、ミシン目とする場合のカットタイ比、ハーフスリットとする場合のスリット深さも同一にする必要はない。さらに、一部がミシン目で一部がハーフスリットなど異なる種類の組み合わせで折り線が構成されていてもよい。例えば、図示の形態では、側部折り線13は、上方側の一部がスリット、下方側の一部が罫線で構成されている。また、各折り線は、位置決めのための単なる印刷による線であってもよい。
【0052】
次いで、剃刀1に係るシート体5を構成する第一シート材10及び第二シート材20に好適な紙素材について説明する。本実施形態に係る第一シート材10及び第二シート材20は、輸送や保管が容易となる一枚の紙製のシート形状の素材であればよい。第一シート材10及び第二シート材20は、耐水性や耐油性を有するものであってもよい。第一シート材10及び第二シート材20の具体例としては、段ボール紙、コートボール紙、複数の紙層が積層されている多層紙が例示できる。紙を構成する繊維は、脱プラスチックの観点から、天然繊維のみであるのが望ましく、特にパルプ繊維100%の紙であるのが望ましい。好ましい紙素材は、三以上の紙層を有する多層紙であり、特に好ましい紙素材は、バージンパルプのみからなる複数の紙層が積層されている多層紙である。
【0053】
多層紙は、図15に示すように、複数の紙層が積層されているため各層の特性を変えることができ、強度を有しつつ折り曲げやすくできる。例えば、耐水性や耐摩耗性に優れるものの硬いが折れ易い傾向の一対の表層91に柔軟な中層92を組み合わせたり、反対に耐水性や耐摩耗性に優れるものの柔軟な傾向の一対の表層91に硬く折れやすい中層92を組み合わせたりすることで、強靭性や耐久性に優れるようになり、強度を有しつつ折り曲げたり、組み立てやすくしたりすることができる。また、折り線をハーフスリットとした際に表層を含む複数層が完全に切断されないようにすることができ、各折り線における破断の恐れが格段に小さくなるとともに撓りを持たせることができる。なお、多層紙90は、多層抄きによって製造することができる。また、多層紙90は、市販されているものであってよく、例えば、大日製紙株式会社製のエリプラペーパー、エリプラプラス等が例示できる。
【0054】
特に本発明に係る剃刀1の構造において、第一シート材10及び第二シート材20が多層紙であると、適度なシート材の撓りと弾性によって首振り機構によるヘッド部1Aの肌への追従性が良好なものとすることができる。また、中央領域12から側部領域14を折り曲げた断面略コ字型のハンドル部1Bにおいて、特に各側部領域14を親指と人差し指で挟みように掴んだ際に適度な弾性が得られ操作性に優れるものとすることができる。この首振り機構やハンドル部1Bの操作性は、下記の特に好ましい多層紙の形態においてより優れるようになる。
【0055】
第一シート材10及び第二シート材20の紙素材は、同種類であっても異なるものであってもよい。一実施形態として、ハンドル部1Bに係る部分も構成する第一シート材10に係る紙素材の坪量は、好ましくは380g/m以上1400g/m以下、より好ましくは450g/m以上1240g/m以下、特に好ましくは500g/m以上900g/m以下である。この坪量であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすく、また組み立て後のハンドル部及びヘッド部下部の剛性や強度を十分なものとすることができる。特に、多層紙の場合には、ハンドル部において中央領域12から側部折り線13を介して立設する側部領域14,14を指で挟むように持った際に、側部折り線13における適度な撓りが得られやすくなり、操作性のよいハンドル部とすることができる。また、坪量が1400g/mまでであれば、抄造時にカレンダーロール等で折れジワが発生し難く製造がしやすい。第一シート材10に係る紙素材の紙厚については、400μm以上1,500μm以下が好ましく、より好ましくは500μm以上1,350μm以下、特に好ましくは、680μm以上1150μm以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0056】
また、一実施形態として、ヘッド部1Aの上部、特に肌に当たりやすい部分も構成する第二シート材20に係る紙素材の坪量は、好ましくは150g/m以上600g/m以下、より好ましくは200g/m以上500g/m以下、特に好ましくは330g/m以上430g/m以下である。この坪量であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすく、しかも十分な剛性及び強度としやすい。特に第二シート材20は、折り線間の距離を短く折り曲げてヘッド部上部に係る部分を構成するため第一シート材10よりも坪量の小さいものとするのがよい。さらに、この坪量の範囲であれば十分な強度で紙厚を薄くでき、特に刃先32が露出される開口部22の縁を薄くできるため、肌当たりのよいヘッド部1Aの上部とすることができる。紙厚については、200μm以上800μm以下が好ましく、より好ましくは250μm以上650μm以下、特に好ましくは350μm以上450μm以下である。なお、第一シート材10と同様に、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0057】
また、第一シート材10及び第二シート材20に係る紙素材は、特に密度が高いものが望ましい。具体的には、好ましくは0.6g/cm以上、より好ましくは0.7g/cm以上である。上限値については過度に剛直にならず折り曲げ可能な程度とすることができる。一実施形態としては1.1g/cmを上限とすることができる。
【0058】
第一シート材10及び第二シート材20に係る紙の構成パルプ繊維は、必ずしも限定されないが、好ましい構成パルプ繊維は、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的に又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。強度を発現させやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、第一シート材10及び第二シート材20ともに針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましいが、第二シート材20については肌に当たる部分であるため地合に優れる広葉樹クラフトパルプ100%としてもよい。また、漂清潔感及び硬質感のある意匠性を有する剃刀とするならば、白パルプであり白色度が高い、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いることが特に好ましい。
【0059】
第一シート材10及び第二シート材20を多層紙90とする場合、その層数は、限定されないものの、五~九層とし、中層92の層数を三層以上として、特に五層以上とするのがよい。特に図15に示す形態は、三層の中層92を有するものとなっている。中層92の総数が三層以上であると、多層紙90の強靭性や耐久性がより発現しやすいとされている。中層92の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、七層以下であることが好ましい。また、三層~七層は、円網多筒式抄き合わせ抄紙機を使用する場合における層間強度を維持しながら操業を行いやすい。但し、第二シート材20については、特に坪量が300g/m以下とするならば、表層のみ二層や三層とするのもよい。
【0060】
また、第一シート材10及び第二シート材20を多層紙90とする場合、表層91及び中層92の坪量は、上記の全体の坪量の範囲で調整することができ、特に限定されないが、第一シート材10は、好ましくは、表層91の坪量としては、1層あたり50.0g/m以上150.0g/m以下、特には100~145g/mが好ましい。また、中層92の坪量としては、好ましくは1層あたり50g/m以上1280g/m以下である。中層92は、特に層数や全体の坪量から適宜に調整すればよい。
【0061】
さらに、第一シート材10及び第二シート材20を多層紙90とする場合、その多層紙90全体の坪量に対する一対の表層91,91の合計の坪量の割合が、15.0%以上40.0%以下のものであるのが好ましい。一対の表層91の剛直性が高く、中層92の柔軟性が優れるようになる。よって、折り線位置で折り曲げやすく、折り線以外の位置で折れ曲がり難くなり、強度と組み立て易さに優れる剃刀1としやすい。
【0062】
第一シート材10及び第二シート材20を多層紙90とする場合、その多層紙90における各層のパルプ繊維の配合は、表層91は針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比(%)が0/100以上15/85以下であるのが好ましい。また、この配合の表層91ととともに、中層92は、針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)を15/85以上35/65以下であるのが好ましい。高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプが多く含有されることで表層が剛直な特性となるとともに、中層が表層よりも粗となりやすい針葉樹クラフトパルプを多く含有するため、組み立て時の各折り線での折り曲げや繰り返しの折り曲げがあっても撓りが継続され、強度が低下しがたい剃刀1となりやすい。
【0063】
また、第一シート材10及び第二シート材20を多層紙90とする場合、その多層紙90は、特に、製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加されているのが望ましい。所望の強度に調整しやすい。なお、多層紙90には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲でその他の各種添加剤を含有させることができる。例えば、ポリビニルアルコールやワックス等を塗布することができる。特に、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂と、スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンとが外添塗布されているのが望ましい。さらに、パラフィンワックスを外添塗布されているのが望ましい。これらの外添塗布によって、特に、耐油性が向上する。剃刀1は、使用時に水に加えて、せっけん水、洗浄剤、シェービングフォーム等の油性成分と接触する可能性が高いため、耐油性が向上されているのが望ましい。
【0064】
多層紙90に添加される前記サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。ロジンサイズ剤は、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、ロジンサイズ剤には、これらの単独又はその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。
【0065】
多層紙90に添加される前記紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドとアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。特に両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤とともに含むことでこれを安定的に定着させることができる。第一シート材と第二シート材に添加されている紙力増強剤の種類は、同一であっても異なるものであってもよい。
【0066】
サイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の添加量をこの範囲とすると、耐水性が高まり、十分な強度を保持しやすい。
【0067】
また、第一シート材10及び第二シート材20を多層紙90とする場合、その多層紙90は、表層91及び中層92の各層に製紙用添加剤として上記のサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。この場合、表層91のサイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層92のサイズ剤の添加量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、各層の紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。
【0068】
なお、第一シート材10及び第二シート材20を多層紙90とする場合、同種の多層紙でも、異なる多層紙であってもよい。例えば、第一シート材及び第二シート材における多層化には、坪量、厚み、層数、添加剤の量、層の厚、繊維種等において、同一でも異なっていてもよい。何れか一つのみ異なっていてもよいし、いくつかの構成が異なっていてもよい。
【0069】
他方で、剃刀1は、シロキサン化合物が含有されているのが望ましい。シロキサン化合物が含有されていると、シロキサン結合によって剛度、強度、耐水性が高まる。シロキサン化合物は、シロキサン結合を有するものであれば、必ずしも限定されないが、剃刀1は、人体等の生体に接することが想定されるため、生体に対して毒性が無いか、低いものが望ましい。特に人体に毒性がないか低いものが望ましい。シロキサン化合物は、組み立て後の剃刀1にシロキサン化合物を塗工したり、剃刀1をシロキサン化合物にドブ付けしたりするなどして付与する態様のほか、組み立て前の第一シート材10、第二シート材20やシート体5、さらにこれらの素材となる裁断前の単なるシートに対して、適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品を含侵させた後、加温や加熱して含有させてもよい。このようにすると、シロキサン化合物が、パルプ繊維自体に結合したり、パルプ繊維をコーティングしたりする態様で含有されるようになるため望ましい。
【0070】
さらに、本実施形態に係る剃刀1は、摩擦係数や表面粗さや折り畳み適性を過度に変化させず、剃刀1の機能及び本発明の効果を妨げない範囲で、表面保護剤や抗菌剤、抗ウィルス剤を塗布したり、含浸させたりしても良い。
【0071】
さらに、第一シート材10及び第二シート材20に係る紙素材は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18-1:2000に準拠して測定されるZ軸強度が400kN/m以上、好ましくは450kN/m以上であるのが望ましい。トムソン加工等の打ち抜き、カッティングプロッター等のカッティングによって展開状態の第一シート材10及び第二シート材20の適宜の形態に裁断しやすい。
【0072】
第一シート材10及び第二シート材20に係る紙素材は、JIS P 8147 ISO水平法による静摩擦係数が、0.15~0.65であるのが望ましい。使用時にヘッド部1Aと肌との擦れがスムーズとなりやすい。なお、本測定法は、シート材の裏面同士、表面同士で各3回の測定を行い、裏面同士、表面同士の3回目の測定値がいずれも上記範囲であるのが望ましい。ISO水平法は,最初の滑りの静摩擦係数、3回目の滑りの静摩擦係数又は3回目の滑りの動摩擦係数の少なくとも一つを測定すればよく、最初の静摩擦係数よりも3回目の静摩擦係数が小さくなる傾向にあり、また、3回目の静摩擦係数の方がばらつきは小さくなる。
【0073】
第一シート材10及び第二シート材20に係る紙素材は、JIS P 8151に準拠するPPS(パーカープリントサーフラフネス)が、表面及び裏面ともに好ましくは1~8μm、より好ましくは4~7μmであるのがよい。使用時に正面と肌との擦れがスムーズとなりやすい。
【0074】
第一シート材10及び第二シート材20に係る紙素材は、MMDの値が、表面及び裏面ともに好ましくは5~25である。使用時に正面と肌との擦れがスムーズとなりやすい。MMDの測定は、摩擦感テスター(KES-SE、カトーテック社製)及びその相当機を用いて測定する。なお、摩擦子は、標準付属の直径0.5mmのピアノ線を20本隣接させて構成された、長さ及び幅がともに10mmの接触面を有するものを用いる。
【0075】
さらに、第一シート材10及び第二シート材20に係る紙素材は、JIS K 7171に基づく「曲げ強さ」は、39~55MPaであるのが望ましい。この範囲であれば、首振り機構やハンドル部に係る弾性付勢力を好適に発揮でき、ヘッド部1Aが肌の曲面に追従しやすく、しかも、過度の面圧とならないものとすることができる。さらに、JIS K 7171に基づく「曲げ弾性率」は、6500MPa~9500Paであるのが望ましい。この範囲であれば、首振り機構やハンドル部に係る弾性付勢力を好適に発揮でき、ヘッド部が肌の曲面に追従しやすく、しかも、過度の面圧とならないものとすることができる。なお、「曲げ強さ」及び「曲げ弾性率」は、試験速度2mm/min、支点間距離64mで測定し、測定値は5回の平均値とする。
【0076】
さらに、特に使用時に力が加わりやすいハンドル部等を構成する第一シート材10に係る紙素材は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定された縦方向の引張強度が、50kN/m以上、横方向の引張強度が20kN/m以上であるのが望ましい。この引張強度を有していれば、組み立てに適する。
【0077】
また、特に使用時に力が加わりやすいハンドル部等を構成する第一シート材10に係る紙素材は、JIS P 8125(2000)に準拠して測定されたテーバー剛度が縦方向で60mN・m以上であり、横方向で20mN・m以上であるのが望ましい。この範囲であれば、組み立てやすい。
【0078】
以上詳述のとおり、本実施形態に係る剃刀1では、プラスチックを使用することなく製造でき、剃刀ヘッドと柄体とを分別したり、剃刀ヘッドのプラスチック部分を分別したりすることなく、廃棄やリサイクルすることが可能であり、さらに、剃刀ヘッドと柄体とが一体のシート形状から簡易に組み立てることができる剃刀が提供され、さらに、加えて刃が曲面に追従できる首振り機構を有する剃刀が提供される。
【符号の説明】
【0079】
1…剃刀、1A…ヘッド部、1B…ハンドル部、5…シート体、9…ヘッド部折り線、10…第一シート材、10H…位置決め孔、10A…第一前方延出部、11…第一折り線、10B…第一後方延出部、12…中央領域、12S…絞り部、13…側部折り線、14…側部領域、14E…側部領域の縁、15…ヘッド部側係止部、15E…凹溝、16…ハンドル部側係止部、16E…湾曲縁、17…第三折り線、18…スリット、19…開口部、10S…差込部、20…第二シート材、20H…位置決め孔、20A…第二前方延出部、20E…第二前方延出部の先端部(差込片)、20C…第二切断部、21…第二折り線、22…開口部、23…舌片、24,25…折り線、28…第二貫通孔、30…刃、30H…カシメ穴、31…スペーサー、32…刃先、40…カシメ、L1…剃刀の全長、L2…ヘッド部の幅、L3…柄体の幅、90…多層紙、91…表層、92…中層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15