(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175328
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】閉塞検知システム及び閉塞検知方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20241211BHJP
G08B 21/18 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E04D13/04 Z
G08B21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093027
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 弘
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA41
5C086AA43
5C086BA20
5C086CA01
5C086CA11
5C086DA08
5C086FA06
5C086FA11
5C086FA17
5C086FA18
(57)【要約】
【課題】ルーフドレンの周囲に堆積する堆積物を検知することで、建物内への漏水を確実に防止できる閉塞検知システム及び閉塞検知方法を提供する。
【解決手段】閉塞検知システム1は、ルーフドレンの開口部を囲んで設置され、上面と、水が通過可能な側面と、を有するカバー2と、カバー2の側面に取り付けられ、側面の外方に堆積する堆積物を検知した場合に検知信号をそれぞれ出力する第1乃至第4のセンサー5A~5Dと、検知信号を受信して、この検知信号に基づいて堆積物による閉塞の有無を判定し、少なくとも、閉塞が有とする旨の閉塞有信号を出力する判定部7aと、閉塞有信号を受信する場合に、警報を報知する報知部9を備え、判定部7aは、第1乃至第4のセンサー5A~5Dのすべてが出力する複数の検知信号を受信する場合に閉塞が有と判定し、閉塞有信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフドレンの周囲に堆積する堆積物による前記ルーフドレンの閉塞を検知する閉塞検知システムであって、
前記ルーフドレンの開口部を囲んで設置され、上面と、この上面を支持し、水が通過可能な側面と、を有するカバーと、
前記カバーの前記側面に取り付けられ、この側面の外方に堆積する前記堆積物を検知した場合に検知信号をそれぞれ出力する複数のセンサーと、
前記検知信号を受信して、この検知信号に基づいて前記堆積物による前記閉塞の有無を判定し、少なくとも、前記閉塞が有とする旨の閉塞有信号を出力する判定部と、
前記閉塞有信号を受信する場合に、警報を報知する報知部を備え、
前記判定部は、複数の前記センサーのすべてが出力する複数の前記検知信号を受信する場合に前記閉塞が有と判定し、前記閉塞有信号を出力することを特徴とする閉塞検知システム。
【請求項2】
前記センサーは、照度センサー、又は近接センサー、又は照度・近接センサーであることを特徴とする請求項1に記載の閉塞検知システム。
【請求項3】
前記センサーを、前記側面に移動可能に取り付けるための取付具を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の閉塞検知システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の閉塞検知システムを用いる閉塞検知方法であって、
複数の前記センサーが、前記堆積物を検知した場合に、前記検知信号をそれぞれ出力する検知工程と、
前記検知信号を受信して、この検知信号に基づいて前記閉塞の有無を判定し、少なくとも、前記閉塞が有とする旨の前記閉塞有信号を出力する判定工程と、
前記閉塞有信号を受信する場合に、前記警報を報知する報知工程を備え、
前記判定工程は、複数の前記センサーのすべてが出力する複数の前記検知信号を受信する場合に前記閉塞が有と判定し、前記閉塞有信号を出力することを特徴とする閉塞検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積物によるルーフドレンの閉塞を検知する閉塞検知システム及び閉塞検知方法に係り、特に、屋上からの建物内への漏水を確実に防止できる閉塞検知システム及び閉塞検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所では、発電所構内の建物内への漏水防止を図るため、半期に一度、建物の屋上へ上がり、ルーフドレン周辺の砂塵や落ち葉等を清掃し、その閉塞を解消している。建物の配置によっては閉塞し難いルーフドレンも存在するため、過去の保守実績に鑑み、建物に応じて保守頻度を見直すことも考えられる。
ただし、重要機器等を設置している建物も多く、漏水による機器故障のリスクを考慮し、全建物の清掃頻度を半期に一度で統一している。しかし、効率的な保守のためには、清掃頻度を統一するのではなく、ルーフドレンの閉塞を直ちに検知することが望ましい。
そこで、近年、ルーフドレン毎に、その閉塞を直ちに検知するための技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「ドレン詰まり通報装置」という名称で、建築物の屋上のドレンの詰まりを早期に発見するドレン詰まり通報装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、屋上に設けられたドレンが詰まって屋上に水が溜まったときに、それを通報するドレン詰まり通報装置であって、ドレン、水検知器、及びこの水検知器と電気的に接続される送信機を含み、ドレンは、ドレン本体、防水層押え及びストレーナを含むか、またはドレン本体及びドレンキャップを含み、水検知器は第一の電極と第二の電極を含み、防水層押えまたはドレンキャップの下面から第一の距離だけ上に離れた位置に取り付けられ、さらに雨水がかからないように雨水防止カバーで保護され、ドレンが詰まって屋上に水が溜まり、水位が第一の距離を超えたときに、送信機が信号を発信することを特徴とする。
このような構成の発明においては、ドレンが詰まって屋上に水が溜まり、水位が第一の距離だけ上に離れた位置を超えると、水検知器に水が浸入し、第一の電極と第二の電極が電池として機能する。これにより、この電池を電源とした送信機が駆動し、信号を発信し、屋上に水が溜まったことを通報する。
【0004】
特許文献2には「排水状態検知システムおよび排水状態検知方法」という名称で、排水状態の危険度合を判断することができて室内への漏水を防止可能な排水状態検知システム等に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、ルーフドレンの開口部に配置されるドレンカバーを囲んで設置されるカバーと、カバーの外方に設置され、水を検知した場合に第1の信号を発生する第1のセンサーと、カバーとドレンカバーの間に設置され、水を検知した場合に第2の信号を発生する第2のセンサーを備える排水検知装置と、第1及び第2のセンサーとそれぞれ通信可能に接続され、第1及び第2の信号の少なくともいずれかからなる第1の検知信号を受送信可能な通信部と、通信部が送信した第1の検知信号を受信して報知する報知部を備え、第2のセンサーの鉛直方向高さ位置は、第1のセンサーの鉛直方向高さ位置よりも低いことを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1の検知信号が第2の信号のみからなる場合、水が開口部から正常に排水されていると判断される。また、第1の検知信号が第1の信号のみからなる場合、水が水通過部を通過できずにカバーの外方に滞留していると判断される。
よって、カバーの外方に滞留している水の存在をリアルタイムで知ることができるため、堆積物を除去するタイミングを正確に認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-92094号公報
【特許文献2】特開2021-188259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、水検知器に水が浸入することで、送信機が屋上に水が溜まったことを通報する。すなわち、水検知器はドレンの詰まりを検知するものでなく、詰まりによって屋上に溜まった水を検知するため、詰まりの発生から水の検知までに時間的なずれが生じる。よって、送信機が通報する時点では、すでに建物内へ漏水している可能性があるから、漏水を確実に防止できないおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に開示された発明においては、堆積物がカバーの外方に堆積して水が水通過部を通過しなくなったことで、第1のセンサーがカバーの外方に滞留した水を検知する。すなわち、第1のセンサーは、堆積物を検知するものでなく、堆積物によって屋上に溜まった水を検知するため、やはり堆積物の発生から水の検知までに時間的なずれが生じる。よって、特許文献2に開示された発明においても、特許文献1に開示された発明と同様に、漏水を確実に防止できないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、ルーフドレンの周囲に堆積する堆積物を検知することで、屋上からの建物内への漏水を確実に防止できる閉塞検知システム及び閉塞検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、ルーフドレンの周囲に堆積する堆積物によるルーフドレンの閉塞を検知する閉塞検知システムであって、ルーフドレンの開口部を囲んで設置され、上面と、この上面を支持し、水が通過可能な側面と、を有するカバーと、カバーの側面に取り付けられ、この側面の外方に堆積する堆積物を検知した場合に検知信号をそれぞれ出力する複数のセンサーと、検知信号を受信して、この検知信号に基づいて堆積物による閉塞の有無を判定し、少なくとも、閉塞が有とする旨の閉塞有信号を出力する判定部と、閉塞有信号を受信する場合に、警報を報知する報知部を備え、判定部は、複数のセンサーのすべてが出力する複数の検知信号を受信する場合に閉塞が有と判定し、閉塞有信号を出力することを特徴とする。
【0010】
このような構成の発明において、ルーフドレンは、屋上の床面に設置される縦引きルーフドレンと、屋上の壁面に設置される横引きルーフドレンのいずれでもよい。
また、カバーの上面は、円形、楕円形、多角形状のいずれでもよく、カバーの側面は、縦引きルーフドレンの場合は上面の全周に亘って設けられる。一方、横ルーフドレンの場合は、カバーの側面は必ずしも上面の全周に亘って設けられなくてもよい。
さらに、カバーの側面は、縦枠と、横枠が格子状に組み合わされる構造のほか、複数の縦枠が並列する構造であってもよい。
【0011】
また、センサーとして、例えば、堆積物に直接接触しなくてもその存在を検知可能な非接触センサーが使用される。そして、このようなセンサーが、例えば、検知面をカバーの外方に向けて配置されることにより、カバーの側面の外方に堆積する堆積物を検知する。
さらに、センサーは複数設けられ、これらは、例えば、カバーの側面の異なる位置にそれぞれ配置される。これにより、複数のセンサーは、カバーの側面の外方において、異なる位置に堆積する堆積物毎に、その有無を検知する。
【0012】
上記構成の発明においては、堆積物が、カバーの側面を取り囲んで堆積している場合(以下、このような場合をルーフドレンの閉塞という。)は、複数のセンサーのすべてが検知信号を出力する。この場合、判定部は、複数のセンサーのすべてが出力する複数の検知信号を受信して、少なくとも、閉塞が有とする旨の閉塞有信号を出力する。
【0013】
これに対し、カバーの側面を取り囲むように堆積物が堆積していない場合(以下、このような場合を正常時という。)は、複数のセンサーのすべてが堆積物を検知せず検知信号を出力しない。よって、判定部は、検知信号を受信しない。
または、複数のセンサーのすべてではないが、一以上のセンサーが堆積物を検知して検知信号を出力する。この場合も出力された検知信号は、判定部が受信する。
ただし、このように判定部が検知信号を受信する場合、判定部は、閉塞が無とする旨の閉塞無信号を出力しても、しなくてもよい。すなわち、「少なくとも、閉塞が有とする旨の閉塞有信号を出力する。」とは、閉塞が発生しているときの閉塞有信号のみならず、正常時においても、閉塞無信号を出力してもよいという意味である。
また、報知部は、閉塞有信号を受信して警報を報知するほか、閉塞有信号を受信して、これを警報に非該当の情報として報知してもよい。
したがって、第1の発明においては、複数のセンサーと、判定部が、ルーフドレンの周囲に堆積する堆積物を検知して、閉塞発生時に閉塞有信号を出力し、報知部がこの閉塞有信号に応じて警報を報知する。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、センサーは、照度センサー、又は近接センサー、又は照度・近接センサーであることを特徴とする。
このような構成の発明において、照度センサーとは、この照度センサーに入力する光が堆積物によって遮られることで、ルーフドレンの周囲の照度が一定以下となる場合に、検知信号を出力するものをいう。
そして、近接センサーとは、可動部による機械的接触なしに動作する位置検出用センサーである。近接センサーの例として、この近接センサーの周囲に堆積物が存在する場合に、堆積物の存在を電気信号に置き換えて検知信号として出力したり、この近接センサーから堆積物までの距離を測定し、この測定した距離が一定以上である場合に検知信号を出力したりするものが挙げられる。
【0015】
また、照度・近接センサーとは、照度センサーと近接センサーを合わせ備えたセンサーであり、それぞれの作用は上述のとおりである。但し、照度センサーと近接センサーからの検知信号の両方が出力されると、照度・近接センサーとしての検知信号が出力される。したがって、照度センサーが汚れなどで暗さを検知して誤って検知信号を出力した場合でも、近接センサーは汚れのみでは検知信号が出力されず、照度・近接センサーとしては堆積物が存在しない場合に検知信号を出力することがない。
なお、これらの照度センサー、近接センサー及び照度・近接センサーの具体的な動作原理や構造は、特に限定されない。
そして、一つのカバーにおいて、照度センサーと、近接センサーと、照度・近接センサーとが、混合して取り付けられても、混合されずに取り付けられてもよい。これらのいずれを選択するかは、例えば、カバーに対する日当たりの状態、積雪の頻度や量といった環境条件に基づいて決定することができる。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、照度センサー等が、ルーフドレンの周囲に堆積する堆積物による照度の変化や、堆積物自体を検知する。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、センサーを、側面に移動可能に取り付けるための取付具を備えることを特徴とする。
このような構成の発明において、取付具として、例えば、センサーを保持し、かつ、カバーの側面を構成する縦枠、又は横枠、又は縦枠と横枠に着脱可能に係止される枠体が考えられる。
上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、取付具が、複数のセンサーを側面に移動可能に取り付けるため、複数のセンサーの取付位置をそれぞれ細かく調整可能である。
【0017】
第4の発明は、第1又は第2に記載の発明を用いる閉塞検知方法であって、複数のセンサーが、堆積物を検知した場合に、検知信号をそれぞれ出力する検知工程と、検知信号を受信して、この検知信号に基づいて閉塞の有無を判定し、少なくとも、閉塞が有とする旨の閉塞有信号を出力する判定工程と、閉塞有信号を受信して、警報を報知する報知工程を備え、判定工程は、複数のセンサーのすべてが出力する複数の検知信号を受信する場合に閉塞が有と判定し、閉塞有信号を出力することを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1又は第2に記載の発明の作用と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明においては、複数のセンサーは、カバーの側面の外方に堆積する堆積物を検知する。すなわち、複数のセンサーは、堆積物によるルーフドレンの閉塞で屋上に溜まった水を検知するものではないため、判定部が、屋上に水が貯留するよりも前の時点でルーフドレンの閉塞の有無を判定することができる。
そして、報知部は、判定部が出力する閉塞有信号を受信する場合に警報を報知するから、作業者が堆積物の存在を直ちに認識し、清掃作業に取り掛かることができる。したがって、第1の発明によれば、屋上から建物への漏水を確実に防止できる。
また、第1の発明によれば、カバーと、複数のセンサーと、判定部と、報知部を備え、比較的簡易な構成である。そのため、保守費用の低減が可能となる。
【0019】
第2の発明によれば、照度センサー等により、堆積物による照度の変化や、堆積物自体を検知するので、ルーフドレンの閉塞を精度良く検知することができる。
また、センサーとして照度・近接センサーを採用すると、照度センサーと近接センサーがともに設置されていることになるため、照度センサーが出力する検知信号と、近接センサーが出力する検知信号との論理積(AND演算)が検知信号として出力される。よって、照度センサーの汚れによる誤信号の排除ができるとともに、照度センサー、近接センサーを別々に採用する場合と比較して、検知の精度がより高いものとなる。
【0020】
第3の発明によれば、第1又は第2に記載の発明の効果に加えて、複数のセンサーの取付位置をそれぞれ細かく調整可能であるため、例えば、カバー毎の堆積物の堆積速度の大小や、カバーが重要機器等を設置している建物に設けられるものであるか否か、という条件に応じて、取付位置を選択できる。
【0021】
第4の発明によれば、第1又は第2に記載の発明の効果と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1に係る閉塞検知システムの構成図である。
【
図2】実施例1に係る閉塞検知システムを構成するカバーの斜視図である。
【
図3】(a)は、
図2におけるA方向透視図であり、(b)及び(c)はそれぞれ実施例1に係る閉塞検知システムを構成する取付具の斜視図である。
【
図5】実施例2に係る閉塞検知システムを構成するカバーの斜視図である。
【
図9】実施例3に係る閉塞検知方法のフロー図である。
【
図10】(a)及び(b)は、実施例3に係る閉塞検知方法を構成する検知工程を説明するための、
図5におけるE方向透視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0023】
本発明の第1の実施の形態に係る閉塞検知システムについて、
図1乃至
図4を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例1に係る閉塞検知システムの構成図である。
図1に示すように、実施例1に係る閉塞検知システム1は、堆積物によるルーフドレンの閉塞を検知するシステムであって、カバー2と、検知部5と、制御装置6と、通信手段10を備える。
このうち、カバー2は、縦引きルーフドレン50の開口部50aを囲んで(
図3参照)、屋上51の床面51aに設置される(
図4参照)。また、カバー2は、上面3と、この上面3を支持し、水が通過可能な側面4と、を有する。この上面3及び側面4の詳細な構成については、
図2、
図3(a)及び
図4を用いて、後に説明する。
【0024】
また、検知部5は、第1乃至第4のセンサー5A~5Dからなり、カバー2の側面4に取り付けられる。これらの第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、側面4の外方に堆積する堆積物を検知した場合に検知信号をそれぞれ出力する。第1乃至第4のセンサー5A~5Dとして、例えば、照度センサー、又は近接センサー、又は照度・近接センサーが用いられる。なお、検知部5自体は、構造物に対する取付構造を有していない。
【0025】
制御装置6は、建物の屋内に設置されて、判定部7aを有する制御部7と、通信部8と、報知部9を備える。具体的には、制御装置6として、例えば、パーソナルコンピューターや、タブレットが用いられる。
制御装置6のうち、通信部8は、ネットワーク60と、通信手段10を介し、制御部7からの検知指令を検知部5に送信するとともに、検知部5が出力する検知信号を受信して制御部7に伝達する。
制御部7は、検知部5、通信部8及び報知部9の動作をそれぞれ制御するCPUである。具体的には、制御部7は、検知部5を構成する第1乃至第4のセンサー5A~5Dに対し、例えば、1日に1回、特定の時刻に堆積物を検知するよう検知指令を送信することができる。
【0026】
判定部7aは、第1乃至第4のセンサー5A~5Dの少なくともいずれかが出力する検知信号を受信して、この検知信号に基づいて堆積物によるルーフドレン50の閉塞の有無を判定する。詳細には、判定部7aは、第1乃至第4のセンサー5A~5Dのすべてが出力する複数の検知信号を受信する場合に閉塞が有と判定し、閉塞有信号を出力する。
なお、判定部7aは、閉塞有信号を出力することに加えて、ルーフドレン50の閉塞がないと判定した場合に、閉塞が無とする旨の閉塞無信号を出力してもよい。
【0027】
報知部9は、判定部7aが出力する閉塞有信号を受信する場合に、警報を報知する。このほか、報知部9は、判定部7aが出力する閉塞無信号を受信する場合に、警報に非該当の正常時に関する情報を報知してもよい。具体的には、報知部9は、例えば、警報を音声として報知するスピーカーや、光、文字として報知するモニターである。
また、通信手段10は、建物の屋上51又は建物の屋内に設置されて、ネットワーク60を介し、検知部5と通信部8との無線通信を可能とする。
【0028】
続いて、実施例1に係る閉塞検知システムを構成するカバーの構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施例1に係る閉塞検知システムを構成するカバーの斜視図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、閉塞検知システム1を構成するカバー2は、上面3と、この上面3を支持し、水が通過可能な側面4と、を有する。上面3は円板状であり、側面4は略円筒状である。
また、カバー2は、側面4の最小直径が上面3の直径よりも小さく、上面3に庇構造3aを形成している。これは、側面4に取り付けられる第1乃至第4のセンサー5A~5D(
図3及び
図4参照)に、雨水や雪が当たり難いようにするためである。
【0029】
さらに、上面3には、表側にソーラーパネル3bが敷設され、裏側に蓄電池及び配線(いずれも図示せず)が設置される。よって、この蓄電池により、配線を介して第1乃至第4のセンサー5A~5Dが給電される。
また、側面4は、複数の縦枠4aと、複数の横枠4bが複数の格子4cを形成するように組み合わされてなる。各格子4cのサイズは、例えば約5mm×5mm以上である。
【0030】
次に、カバーと、第1乃至第4のセンサーと、取付具の構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3(a)は、
図2におけるA方向透視図であり、
図3(b)及び
図3(c)はそれぞれ実施例1に係る閉塞検知システムを構成する取付具の斜視図である。
図4は、
図2におけるB方向透視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3及び
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、ソーラーパネル3bの図示も省略する。
図3(a)に示すように、閉塞検知システム1は、第1乃至第4のセンサー5A~5Dをカバー2の側面4にそれぞれ移動可能に取り付けるための4個の取付具11を備える。4個の取付具11は、側面4の中心軸A
4を中心として、90度毎に側面4に配置される。なお、カバー2は、縦引きルーフドレン50の開口部50aに被せられる既設のルーフドレンカバー52の、さらに外側に設置される。
また、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、例えば、いずれも照度センサーであって、それぞれの検知面5a~5dが側面4の外方に向けて配置される。
【0031】
次に、
図3(b)及び
図3(c)に示すように、取付具11は、図示しないネジを用いて第1のセンサー5Aを保持する四角形状の保持枠11aと、縦枠4a,4aにそれぞれ係止可能な爪部11b,11bからなる。この取付具11は、例えば、可撓性を有する金属製であって、爪部11b,11b同士の間隔を広げることができる。また、保持枠11aは、ねじや、給電及び検知信号送信用の配線が挿通される孔部k,kが形成されている。
よって、
図3(c)に示すように、取付具11は、爪部11b,11bを縦枠4a,4aにそれぞれ係止して、格子4cへ第1のセンサー5Aを嵌め込んで固定したり、逆に、第1のセンサー5Aを格子4cから取り外したりすることができる。これは、第2乃至第4のセンサー5B~5Dについても同様である。
【0032】
続いて、
図4に示すように、第1のセンサー5Aと、第3のセンサー5Cは、屋上51の床面51aから上面3の裏面までの高さをH
3とすると、取付具11によって、例えば、床面51aからおよそH
3/3の高さ位置に取り付けられる。図示は省略するが、第2のセンサー5Bと、第4のセンサー5Dも、床面51aからおよそH
3/3の高さ位置に取り付けられる。具体的には、H
3/3は、例えば、30mmである。
【0033】
また、
図3(c)で説明したように、取付具11は、第1乃至第4のセンサー5A~5Dを格子4cへ取り外し可能に嵌め込むから、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、床面51aからの各高さ位置を、縦枠4aに沿って(図中矢印方向)変更可能である。
なお、ルーフドレンカバー52の床面51aからの最大高さをH
52、最大直径をD
52とし、カバー2の上面3の直径をX
3、側面4の最大直径をX
4、側面4の最小直径をX
4´とすると、例えば、X
3=X
4+100mm、X
4=D
52+100mm、H
3=H
52+50mmに設計することができる。そして、前述の上面3の庇構造3aの幅(X
3-X
4´)/2は、上面3の全周において約50mmとなる。ただし、カバー2は、ルーフドレンカバー52のサイズに応じ、上記以外のサイズのものが用いられてもよい。
【0034】
上記構成の閉塞検知システム1においては、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、それぞれの検知面5a~5dが側面4の外方に向けて配置されるため、側面4の外方に堆積する堆積物を検知する。
また、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、4個の取付具11を介し、側面4の中心軸A4を中心として、90度毎に側面4に配置される。これにより、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、側面4の周囲4方向の異なる位置に堆積する堆積物毎に、その有無を検知する。
【0035】
さらに、第1乃至第4のセンサー5A~5Dとして、例えば、複数の照度センサー、又は複数の近接センサー、又は複数の照度・近接センサーを用いることができる。
よって、第1乃至第4のセンサー5A~5Dが、照度センサーの場合では、受光素子が光を受光して電流に変換する。この場合、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、縦引きルーフドレン50の周囲に堆積する堆積物によって、例えば、光が変換された電流が任意に設定した閾値以下になった場合に、それぞれ検知信号を出力する。
また、第1乃至第4のセンサー5A~5Dが、近接センサーの場合では、例えば、静電容量型近接センサーが使用される。この場合、第1乃至第4のセンサー5A~5Dが、その発生させた電界に堆積物が侵入したときの静電容量の変化を捉え、それぞれ検知信号を出力する。
そして、第1乃至第4のセンサー5A~5Dが、照度・近接センサーの場合では、照度センサーと、近接センサーとの一体型になっている。この場合、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、上記の例では、電流の減少を計測し、かつ、静電容量の変化を捉えた場合に、それぞれ検知信号を出力する。
なお、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、照度センサーと、近接センサーと、照度・近接センサーのうちから、任意に選択されたものが混合されたものであってもよい。
【0036】
また、取付具11が、第1乃至第4のセンサー5A~5Dを側面4に移動可能に取り付けるため、その取付位置をそれぞれ簡単に細かく調整可能である。
【0037】
以上説明したように、閉塞検知システム1によれば、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、側面4の周囲4方向の異なる位置に堆積する堆積物毎に、その有無を検知する。さらに、判定部7aは、第1乃至第4のセンサー5A~5Dのすべてが出力する複数の検知信号を受信する場合に縦引きルーフドレン50の閉塞が有と判定し、閉塞有信号を出力するため、閉塞が発生している異常時と、カバー2の側面4を取り囲むように堆積物が堆積していない正常時と、を正確に判別できる。
【0038】
また、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、堆積物による照度の変化や、堆積物自体を検知するものである。そのため、縦引きルーフドレン50の閉塞を精度良く検知することができる。さらにいえば、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、堆積物による縦引きルーフドレン50の閉塞で屋上51に溜まった水を検知するものではない。よって、判定部7aが、屋上51に水が貯留するよりも前の時点で縦引きルーフドレン50の閉塞の有無を判定することができる。
そして、報知部9は、判定部7aが出力する閉塞有信号を受信する場合に警報を報知するから、作業者が堆積物の存在を直ちに認識し、清掃作業に取り掛かることができる。
【0039】
したがって、閉塞検知システム1によれば、第1乃至第4のセンサー5A~5Dが検知信号をそれぞれ出力する時点では、すでに建物内へ漏水している可能性が極めて低いため、警報直後の清掃作業により、屋上51から建物への漏水を確実に防止できる。
加えて、報知部9が出力する警報によって清掃作業が必要なタイミングを認識できるので、清掃を効率的に実施することができ、作業負担の軽減が期待できる。
また、閉塞検知システム1によれば、カバー2と、検知部5と、制御装置6と、通信手段10と、取付具11を備え、比較的簡易な構成である。そのため、保守費用の低減が可能となる。
【0040】
さらに、取付具11によって、側面4に対する第1乃至第4のセンサー5A~5Dの取付位置をそれぞれ細かく調整可能であるため、例えば、複数箇所に設置される閉塞検知システム1について、そのカバー2毎の堆積物の堆積速度の大小や、カバー2が重要機器等を設置している建物に設けられるものであるか否か、という条件に応じて、第1乃至第4のセンサー5A~5Dの取付位置を選択できる。
前者の場合、例えば、複数の閉塞検知システム1について特定の時間に検知部5を一斉に稼働させても、堆積速度の大小に関わらず、各カバー2に取り付けられる第1乃至第4のセンサー5A~5Dが必ず閉塞を検知するので、閉塞の見落としを防止可能である。
後者の場合、重要機器等を設置している建物については、例えば、第1乃至第4のセンサー5A~5Dを取り付ける高さ位置を、重要機器等を設置していない建物の場合よりも低くすることで、閉塞をより早くかつ確実に検知することができる。
また、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、取付具11を着脱することで、床面51aからの各高さ位置を、例えば、縦枠14aに沿って(図中矢印方向)変更可能である。
なお、ルーフドレンカバー54の床面51aからの最大高さをH54、最大奥行をD54とし、カバー12の上面13の奥行をY、側面14A,14Cの奥行をY´とすると、例えば、Y=Y´+50mm、Y´=D54+50mm、H13=H54+50mmに設計することができる。この場合、前述の上面13の庇構造13aの幅(Y-Y´)は、50mmとなる。
上記構成の閉塞検知システム1Aにおいては、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、4個の取付具11を介し、カバー12の側面14A~14Cに移動可能に取り付けられるため、第1乃至第4のセンサー5A~5Dは、側面14A~14Cの周囲3方向の異なる位置に堆積する堆積物毎に、その有無を検知する。よって、閉塞検知システム1Aによれば、横引きルーフドレン53の閉塞を精度良く検知することができる。これ以外の閉塞検知システム1Aの作用及び効果は、閉塞検知システム1の作用及び効果と同様である。
まず、ステップS1の検知指令工程は、制御部7が、通信部8と、ネットワーク60と、通信手段10を介し、第1乃至第4のセンサー5A~5Dに対して堆積物の検知を開始するよう指令する検知指令を送信する工程である。本工程は、例えば、制御部7が有するタイマー機能を利用して、1日のうちの特定の時間に実行されるよう予め設定されるほか、タイマー機能を利用せず所望の時間に実行されてもよい。また、本工程は、第1乃至第4のセンサー5A~5Dが、堆積物を常時検知するよう設定されている場合は、省略されてもよい。
次に、ステップS2の検知工程は、第1乃至第4のセンサー5A~5Dが、制御部7からの検知指令を受信して堆積物の検知を開始し、堆積物を検知した場合に、検知信号をそれぞれ出力する工程である。
続くステップS3の判定工程は、判定部7aが、通信手段10と、ネットワーク60と、通信部8を介し、第1乃至第4のセンサー5A~5Dがそれぞれ出力する検知信号を受信して、この検知信号に基づいて縦引きルーフドレン50又は横引きルーフドレン53の閉塞の有無を判定し、少なくとも、閉塞が有とする旨の閉塞有信号を出力する工程である。
そして、ステップS4の報知工程は、報知部9が、判定部7aが出力する閉塞有信号を受信する場合に、警報を報知する工程である。なお、本工程は、報知部9が、判定部7aが出力する閉塞無信号を受信する場合に、例えば「異常なし」といった正常時に関する情報を報知する工程を含んでもよい。
また、閉塞検知方法20においては、ステップS4の報知工程の後は、ステップS1の検知指令工程が繰り返される。
よって、閉塞検知方法20によれば、堆積物55が、カバー2の側面4のうち、一部の外方に堆積する場合には警報を発することがない。そのため、精度良く閉塞を検知可能であるとともに、過剰に清掃作業が発生することを防止できる。
また、ステップS1の検知指令工程は、1日のうちの特定の時間や、所望の時間に実行されるため、例えば、降水量の多い時期には、検知指令の頻度を増加させるといった調整が可能である。よって、閉塞検知方法20によれば、清掃作業が不足することも防止できる。これ以外の閉塞検知方法20の作用及び効果は、閉塞検知システム1,1Aの作用及び効果と同様である。
なお、本発明に係る閉塞検知システム及び閉塞検知方法は、実施例に示すものに限定されない。例えば、検知部5の個数は、4個以外の複数であってもよい。また、検知部5として、画像判別センサーや、超音波センサーといった非接触センサーが使用されてもよい。
さらに、カバー2,12をそれぞれ構成する縦枠4a,14aを、側面4,14A~14Cの内方に突出するレール構造とし、取付具をこのレール構造に沿ってスライド移動可能に構成してもよい。このほか、検知部5自体が、構造物に対する取付構造を有する場合は、取付具11は省略されてもよい。