(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175343
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】冷却器および冷却器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 3/00 20060101AFI20241211BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F28F3/00 301Z
F28F21/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093053
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100182925
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】窪田 信平
(72)【発明者】
【氏名】村上 真
(72)【発明者】
【氏名】森弘 将史
(57)【要約】
【課題】冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率の向上を図ることのできる冷却器を提供する。
【解決手段】熱媒体が流通する熱媒体流通路2を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の冷却器1であって、底部11a、一対の側壁部11bおよび開口部11cを有する溝11が形成されたベース部材10と、溝11の底部11a側に向かって張り出す曲面形状を有し、ベース部材10に対して接合することによって、溝11の開口部11cを閉鎖する閉鎖部材20と、を備え、熱媒体流通路2は、ベース部材10の溝11の底部11aおよび一対の側壁部11bと、閉鎖部材20と、に囲まれる空間に形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流通する熱媒体流通路を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の冷却器であって、
底部、一対の側壁部および開口部を有する溝が形成されたベース部材と、
前記溝の前記底部側に向かって張り出す曲面形状を有し、前記ベース部材に対して接合することによって、前記開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を備え、
前記熱媒体流通路は、前記ベース部材における前記溝の前記底部および一対の前記側壁部と、前記閉鎖部材と、に囲まれる空間に形成されている
冷却器。
【請求項2】
前記溝は、一対の前記側壁部の間隔が、前記底部側に対して、前記開口部側が大きく形成され、
前記閉鎖部材は、一対の前記側壁部の前記開口部側に保持される
請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記溝は、前記熱媒体流通路を流れる熱媒体の流れに乱流を生じさせる乱流生成部を有している
請求項1に記載の冷却器。
【請求項4】
前記溝は、前記ベース部材の外面側における、一の平面と、一の前記平面に隣接し、一の前記平面に対して所定の角度をなす他の平面と、にわたって形成されている
請求項1に記載の冷却器。
【請求項5】
前記ベース部材には、幅方向に配置された一対の前記溝が形成され、
一対の前記溝のそれぞれの前記開口部は、一の前記閉鎖部材によって閉鎖される
請求項1に記載の冷却器。
【請求項6】
熱媒体が流通する熱媒体流通路を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の冷却器の製造方法であって、
底部、一対の側壁部および開口部を有する溝が設けられたベース部材を形成するベース部材形成工程と、
前記溝の前記底部側に向かって張り出す曲面形状を有し、前記ベース部材における前記溝の前記開口部を閉鎖する閉鎖部材を、前記溝に配置する閉鎖部材配置工程と、
前記ベース部材に対して前記閉鎖部材を接合する閉鎖部材接合工程と、を含む
冷却器の製造方法。
【請求項7】
前記ベース部材形成工程においては、前記ベース部材を鋳造によって形成する
請求項6に記載の冷却器の製造方法。
【請求項8】
前記閉鎖部材接合工程においては、摩擦攪拌接合によって前記閉鎖部材を前記ベース部材に接合する
請求項6に記載の冷却器の製造方法。
【請求項9】
前記ベース部材形成工程においては、前記ベース部材に、前記溝の両側に沿って他の部分よりも外側に張り出す凸部を形成し、
前記閉鎖部材接合工程においては、前記凸部を、溶融させて前記溝と前記閉鎖部材との隙間に流入させる
請求項8に記載の冷却器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の冷却対象物から放出された熱を吸収することによって冷却対象物を冷却するための冷却器および冷却器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却器としては、凹溝が形成されたベース部材と、凹溝に配置され、熱媒体を流通させるための熱媒体用管と、を備え、熱媒体用管と凹溝との隙間に、摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の冷却器は、熱媒体用管と凹溝との隙間を小さくすることによって、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率を向上させている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の冷却器は、熱媒体用管と凹溝との隙間に塑性流動材を流入させることによって、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率を向上させているが、熱媒体用管と凹溝との隙間を完全になくすことはできない。このため、特許文献1に記載の冷却器は、熱媒体用管と凹溝との界面における接触熱抵抗が依然として大きく、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率の向上を図ることが困難である。
【0004】
そこで、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率の向上が可能な冷却器としては、熱媒体の流路となる第1の溝および第1の溝よりも幅方向が大きい第2の溝が形成された本体と、本体の第2の溝に嵌合した状態で第1の溝を覆う蓋と、を備え、本体に対して蓋を摩擦攪拌接合によって接合するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5195098号公報
【特許文献2】特許第3818084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の冷却器は、特許文献1に記載の冷却器と比較して、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率の向上を図ることが可能であるが、熱媒体の流路が、平面によって囲むことによって形成されているため、熱媒体の流路の壁面と熱媒体との接触面積が小さく、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率を十分に向上させることが出来ない可能性がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率の向上を図ることのできる冷却器および冷却器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷却器は、熱媒体が流通する熱媒体流通路を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の冷却器であって、底部、一対の側壁部および開口部を有する溝が形成されたベース部材と、前記溝の前記底部側に向かって張り出す曲面形状を有し、前記ベース部材に対して接合することによって、前記開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を備え、前記熱媒体流通路は、前記ベース部材における前記溝の前記底部および一対の前記側壁部と、前記閉鎖部材と、に囲まれる空間に形成されている。
【0009】
また、本発明に係る冷却器は、前記溝が、一対の前記側壁部の間隔が、前記底部側に対して、前記開口部側が大きく形成され、前記閉鎖部材は、一対の前記側壁部の前記開口部側に保持される、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る冷却器は、前記溝が、前記熱媒体流通路を流れる熱媒体の流れに乱流を生じさせる乱流生成部を有している、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る冷却器は、前記溝が、前記ベース部材の外面側における、一の平面と、一の前記平面に隣接し、一の前記平面に対して所定の角度をなす他の平面と、にわたって形成されている、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る冷却器は、前記ベース部材に、幅方向に配置された一対の前記溝が形成され、一対の前記溝のそれぞれの前記開口部が、一の前記閉鎖部材によって閉鎖される、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る冷却器の製造方法は、熱媒体が流通する熱媒体流通路を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の冷却器の製造方法であって、底部、一対の側壁部および開口部を有する溝が設けられたベース部材を形成するベース部材形成工程と、前記溝の前記底部側に向かって張り出す曲面形状を有し、前記ベース部材における前記溝の前記開口部を閉鎖する閉鎖部材を、前記溝に配置する閉鎖部材配置工程と、前記ベース部材に対して前記閉鎖部材を接合する閉鎖部材接合工程と、を含む。
【0014】
また、本発明に係る冷却器の製造方法は、前記ベース部材形成工程において、前記ベース部材を鋳造によって形成する、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る冷却器の製造方法は、前記閉鎖部材接合工程において、摩擦攪拌接合によって前記閉鎖部材を前記ベース部材に接合する、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る冷却器の製造方法は、前記ベース部材形成工程において、前記ベース部材に、前記溝の両側に沿って他の部分よりも外側に張り出す凸部を形成し、前記閉鎖部材接合工程において、前記凸部を、溶融させて前記溝と前記閉鎖部材との隙間に流入させる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベース部材の溝に、底部側に向かって張り出す曲面形状を有する閉鎖部材を配置した状態で接合することによって、熱媒体流通路の壁面と熱媒体との接触面積を増大させることが可能となるので、熱媒体用管を用いた熱媒体流通路または断面矩形状の熱媒体流通路と比較して熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷却器の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係るベース部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係るベース部材の平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る
図3のA-A断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係るベース部材に閉鎖部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係るベース部材の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係るベース部材の平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る
図7のB-B断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施形態に係るベース部材の平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第4実施形態に係る冷却器の斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4実施形態に係るベース部材の斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4実施形態に係るベース部材に閉鎖部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の第5実施形態に係る冷却器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1乃至
図5は、本発明の第1実施形態を示すものである。
図1は冷却器の斜視図であり、
図2はベース部材の斜視図であり、
図3はベース部材の平面図であり、
図4は
図3のA-A断面図であり、
図5はベース部材に閉鎖部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0020】
本実施形態の冷却器1は、例えば、外面側に設置された電子部品等の冷却対象物から放出された熱を吸収することによって、冷却対象物を冷却するためのものである。冷却器1の内側には、熱媒体が流通する熱媒体流通路2が形成され、熱媒体流入口2aを介して熱媒体流通路2に熱媒体を流入させ、熱媒体流出口2bを介して熱媒体流通路2から熱媒体を流出させる。また、冷却器1の外面側には、冷却対象物から放出された熱を吸収するための吸熱面3が設けられている。冷却器1は、吸熱面3に冷却対象物を設置した状態で、冷却対象物と熱媒体との間で熱交換を行う。ここで、本実施形態では、熱媒体流通路2を流通する熱媒体として水が用いられる。
【0021】
冷却器1は、
図2乃至
図4に示すように、溝11が形成されたベース部材10と、
図4および
図5に示すように、溝11を閉鎖する閉鎖部材20と、を備え、ベース部材10に対して閉鎖部材20を摩擦攪拌接合によって接合する。ここで、摩擦攪拌接合とは、ベース部材10と閉鎖部材20との接合部に工具を押し当てながら回転させることで、ベース部材10と閉鎖部材20との接合部を摩擦熱によって溶解させて混合し、ベース部材10と閉鎖部材20とを一体化させる接合方法である。
【0022】
ベース部材10は、
図2乃至
図4に示すように、加熱して溶融させたアルミニウムまたはアルミニウム合金を鋳型に流し込むことによって形成される鋳造の板状部材である。ベース部材10の厚さ方向の一方の面側には、熱媒体通路となる溝11が形成されている。
【0023】
溝11は、ベース部材10の厚さ方向の一方の面側に設けられている。溝11は、ベース部材10の幅方向にそれぞれ配置され、互いに平行をなして前後方向に直線状に延在する複数の直線部と、隣り合う直線部の端部同士を接続する湾曲部と、からなり、蛇行しながらベース部材10の幅方向に延びるように形成されている。また、溝11は、底部11a、一対の側壁部11bおよび開口部11cを有している。一対の側壁部11bは、底部11a側の間隔に対して開口部11c側の間隔が大きく形成されている。一対の側壁部11bの開口部11c側には、閉鎖部材20が保持される。
【0024】
閉鎖部材20は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる外周部が円形状の棒状の部材であり、ベース部材10の溝11の開口部11cを閉鎖した状態で、溝11の底部11a側に向かって張り出す曲面形状を有している。閉鎖部材20は、溝11の全長と同じ長さに形成され、溝11の一対の側壁部11bの開口部11c側に嵌合するように屈曲されている。
【0025】
ここで、熱媒体流通路2は、ベース部材10の溝11の底部11aおよび一対の側壁部11bと、閉鎖部材20と、に囲まれる空間に形成される。
【0026】
以下に、冷却器1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、ベース部材形成工程として、溝11が設けられたベース部材10を鋳造によって形成する。
【0028】
次に、閉鎖部材配置工程として、閉鎖部材20を、ベース部材10の溝11に配置する。
【0029】
さらに、閉鎖部材接合工程として、ベース部材10に対して閉鎖部材20を摩擦攪拌接合によって接合する。
【0030】
最後に、ベース部材10の幅方向一方側に位置する熱媒体流通路2の一端部に熱媒体流入口2aを形成し、ベース部材10の幅方向他方側に位置する熱媒体流通路2の他端部に熱媒体流出口2bを形成する。
【0031】
以上のように構成された冷却器1において、熱媒体流入口2aから熱媒体流通路2に熱媒体を流入させ、熱媒体流通路2を流通した熱媒体を熱媒体流出口2bから流出させる。このとき、熱媒体流通路2を流通する熱媒体は、ベース部材10の溝11の底部11aおよび一対の側壁部11bの底部11a側に接触するとともに、閉鎖部材20の溝11の底部11a側に向かって張り出す曲面に接触する。これにより、冷却器1の吸熱面3に設置された冷却対象物から放出された熱が、吸熱面3を介して熱媒体流通路2を流通する熱媒体に吸収され、冷却対象物が冷却される。
【0032】
このように、本実施形態の冷却器によれば、熱媒体が流通する熱媒体流通路2を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の冷却器1であって、底部11a、一対の側壁部11bおよび開口部11cを有する溝11が形成されたベース部材10と、溝11の底部11a側に向かって張り出す曲面形状を有し、ベース部材10に対して接合することによって、溝11の開口部11cを閉鎖する閉鎖部材20と、を備え、熱媒体流通路2は、ベース部材10の溝11の底部11aおよび一対の側壁部11bと、閉鎖部材20と、に囲まれる空間に形成されている。
【0033】
また、本実施形態の冷却器の製造方法によれば、熱媒体が流通する熱媒体流通路2を有するアルミニウム製またはアルミニウム合金製の冷却器1の製造方法であって、底部11a、一対の側壁部11bおよび開口部11cを有する溝11が設けられたベース部材10を形成するベース部材形成工程と、溝11の底部11a側に向かって張り出す曲面形状を有し、ベース部材10における溝11の開口部11cを閉鎖する閉鎖部材20を、溝11に配置する閉鎖部材配置工程と、ベース部材10に対して閉鎖部材20を接合する閉鎖部材接合工程と、を含む。
【0034】
これにより、ベース部材10の溝11に、底部11a側に張り出す曲面形状を有する閉鎖部材20を配置した状態で接合することによって、熱媒体流通路2の壁面と熱媒体との接触面積を増大させることが可能となるので、熱媒体用管を用いた熱媒体流通路または断面矩形状の熱媒体流通路と比較して熱交換効率の向上を図ることが可能となる。また、ベース部材10の溝11に、外周部が円形状の閉鎖部材20を配置した状態で接合することによって、高精度の加工を要することなく熱媒体流通路2を形成することが可能となるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の冷却器によれば、溝11の一対の側壁部11bの間隔が、底部11a側に対して、開口部11c側が大きく形成され、閉鎖部材20は、一対の側壁部11bの開口部11c側に保持される、ことが好ましい。
【0036】
これにより、閉鎖部材20をベース部材10の溝11に配置することによって、閉鎖部材20を溝11の一対の側壁部11bの開口部11c側に位置決めすることが可能となるので、ベース部材10に対する閉鎖部材20の組付けが容易となり、組付け工数の低減を図ることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態の冷却器の製造方法によれば、ベース部材形成工程においては、ベース部材10を鋳造によって形成する、ことが好ましい。
【0038】
これにより、溝11の形状が複雑な場合であっても容易にベース部材10を形成することが可能となるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の冷却器の製造方法によれば、閉鎖部材接合工程においては、摩擦攪拌接合によって閉鎖部材20をベース部材10に接合する、ことが好ましい。
【0040】
これにより、溶接によってベース部材に閉鎖部材を接合する場合と比較して、歪量が小さく確実にベース部材10に閉鎖部材20を接合することが可能なる。
【0041】
<第2実施形態>
図6乃至
図8は、本発明の第2実施形態を示すものである。
図6はベース部材の斜視図であり、
図7はベース部材の平面図であり、
図8は
図7のB-B断面図である。尚、第1実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0042】
本実施形態の冷却器1は、溝11の底部11a側に、熱媒体流通路2を流れる熱媒体の流れに乱流を生じさせる乱流生成部11dが設けられている。
【0043】
乱流生成部11dは、溝11の底部11aおよび側壁部11bの底部11a側から熱媒体流通路2内に張り出す複数の突起部11d1を有している。複数の突起部11d1は、熱媒体流通路2の延在する方向に沿って、間隔をおいて配置されている。
【0044】
以上のように構成された冷却器1において、熱媒体流入口2aから熱媒体流通路2に熱媒体を流入させると、第1実施形態と同様に、冷却器1の吸熱面3に設置された冷却対象物から放出された熱が、吸熱面3を介して熱媒体流通路2を流通する熱媒体に吸収され、冷却対象物が冷却される。このとき、熱媒体流通路2を流通する熱媒体のうち、溝11の底部11aおよび側壁部11bの底部11a側に沿って流通する熱媒体は、乱流生成部11dを構成する突起部11d1に接触して流通方向が変化し、流れが乱流となる。これにより、熱媒体流通路2を流通する熱媒体は、熱媒体流通路2において攪拌された状態となり、冷却対象物と熱媒体との熱交換効率が向上する。
【0045】
このように、本実施形態の冷却器によれば、第1実施形態と同様に、ベース部材10の溝11に、底部11a側に張り出す曲面形状を有する閉鎖部材20を配置した状態で接合することによって、熱媒体流通路2の壁面と熱媒体との接触面積を増大させることが可能となるので、熱媒体用管を用いた熱媒体流通路または断面矩形状の熱媒体流通路と比較して熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の冷却器によれば、溝11は、熱媒体流通路2を流れる熱媒体の流れに乱流を生じさせる乱流生成部11dを有している、ことが好ましい。
【0047】
これにより、熱媒体流通路2を流通する熱媒体が、乱流生成部11dによって乱流となって攪拌された状態となり、冷却対象物と熱媒体との間の熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0048】
尚、第2実施形態では、熱媒体流通路2を流れる熱媒体の流れに乱流を生じさせる乱流生成部11dとして、溝11に複数の突起部11d1を形成したものを示したが、これに限られるものではない。乱流生成部11dは、熱媒体流通路2を流れる熱媒体の流れに乱流を生じさせることが可能であれば、例えば、溝11に複数の凹部を形成してもよいし、溝11の底部11aおよび側壁部11bに粗化処理を施すようにしてもよい。
【0049】
<第3実施形態>
図9および
図10は、本発明の第3実施形態を示すものである。
図9はベース部材の平面図であり、
図10は
図9のC-C断面図である。尚、第1実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0050】
本実施形態の冷却器1は、ベース部材形成工程においてベース部材10を形成する際に、ベース部材10の厚さ方向の一方の面側において溝11の幅方向両側のそれぞれに沿って、他の部分よりも厚さ方向の外側に張り出す凸部12を形成する。
【0051】
以上のように形成されたベース部材10において、閉鎖部材配置工程では、第1実施形態と同様に、ベース部材10の溝11に閉鎖部材20を配置する。また、閉鎖部材接合工程では、ベース部材10に閉鎖部材20を接合する際に、摩擦攪拌接合によってベース部材10の凸部12を溶融させて溝11と閉鎖部材20との隙間に流入させ、凸部12を構成する部材によって溝11と閉鎖部材20との隙間を埋設する。
【0052】
このように、本実施形態の冷却器の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、ベース部材10の溝11に、底部11a側に張り出す曲面形状を有する閉鎖部材20を配置した状態で接合することによって、熱媒体流通路2の壁面と熱媒体との接触面積を増大させることが可能となるので、熱媒体用管を用いた熱媒体流通路または断面矩形状の熱媒体流通路と比較して熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の冷却器の製造方法によれば、ベース部材形成工程においては、ベース部材10に、溝11の両側に沿って他の部分よりも外側に張り出す凸部12を形成し、閉鎖部材接合工程においては、凸部12を溶融させて溝11と閉鎖部材20との隙間に流入させる、ことが好ましい。
【0054】
これにより、閉鎖部材接合工程において、ベース部材10の溝11と閉鎖部材20との隙間を、凸部12を構成する部材によって確実に埋設することが可能となるので、ベース部材10の厚さ方向の一方の面側の表面処理を容易に行うことが可能となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0055】
<第4実施形態>
図11乃至
図13は、本発明の第4実施形態を示すものである。
図11は冷却器の斜視図であり、
図12はベース部材の斜視図であり、
図13はベース部材に閉鎖部材を取り付けた状態を示す斜視図である。尚、第1実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0056】
本実施形態の冷却器1は、前後方向の中央部側が屈曲され、前後方向の一方側と他方側との間で段差が形成された板状のベース部材30を備えている。ベース部材30の厚さ方向の一方の面側には、
図12に示すように、第1平面30aと、第1平面30aに隣接し、第1平面30aに対して所定の角度をなす第2平面30bと、第2平面30bに隣接し、第2平面30bに対して所定の角度をなす第3平面30cと、が形成されている。
【0057】
溝31は、
図12に示すように、ベース部材30の厚さ方向の一方の面側における、第1平面30a、第2平面30bおよび第3平面30cにわたって形成されている。即ち、溝31は、厚さ方向の一方の面側に沿って屈曲されるとともに、蛇行しながらベース部材30の幅方向に延在している。
【0058】
また、閉鎖部材20は、厚さ方向の一方の面側に沿って屈曲されるとともに、蛇行しながらベース部材30の幅方向に延びる溝31の開口部31c側に嵌合する形状を有している。
【0059】
以上のように構成された冷却器1において、第1実施形態と同様に、熱媒体流入口2aから熱媒体流通路2に熱媒体を流入させ、熱媒体流通路2を流通した熱媒体を熱媒体流出口2bから流出させる。これにより、冷却器1の吸熱面3に設置された冷却対象物から放出された熱が、吸熱面3を介して熱媒体流通路2を流通する熱媒体に吸収され、冷却対象物が冷却される。
【0060】
このように、本実施形態の冷却器によれば、第1実施形態と同様に、ベース部材30の溝31に、底部31a側に張り出す曲面形状を有する閉鎖部材20を配置した状態で接合することによって、熱媒体流通路2の壁面と熱媒体との接触面積を増大させることが可能となるので、熱媒体用管を用いた熱媒体流通路または断面矩形状の熱媒体流通路と比較して熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態の冷却器によれば、溝31は、ベース部材30の外面側における、一の平面30a,30bと、一の平面30a,30bに隣接し、一の平面30a,30bに対して所定の角度をなす他の平面30b,30cと、にわたって形成されている、ことが好ましい。
【0062】
これにより、ベース部材30の厚さ方向に屈曲する熱媒体流通路2を形成することが可能となり、様々な形状の冷却器1を形成することが可能となる。
【0063】
<第5実施形態>
図14は、本発明の第5実施形態を示すものであり、冷却器の断面図である。尚、第1実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0064】
本実施形態の冷却器1のベース部材40には、幅方向に配置された一対の溝41が形成されている。
【0065】
一対の溝41は、それぞれ、底部41a、一対の側壁部41bおよび開口部41cを有している。一対の溝41のそれぞれの開口部41cは、一の閉鎖部材20によって閉鎖される。
【0066】
熱媒体流通路2は、一対の開口部41cを一の閉鎖部材20によって閉鎖することによって、一対の溝41のそれぞれに形成される。
【0067】
以上のように構成された冷却器1において、第1実施形態と同様に、冷却器1の吸熱面に設置された冷却対象物から放出された熱が、吸熱面を介して熱媒体流通路2を流通する熱媒体に吸収され、冷却対象物が冷却される。
【0068】
このように、本実施形態の冷却器によれば、第1実施形態と同様に、ベース部材40の溝41に、底部41a側に張り出す曲面形状を有する閉鎖部材20を配置した状態で接合することによって、熱媒体流通路2の壁面と熱媒体との接触面積を増大させることが可能となるので、熱媒体用管を用いた熱媒体流通路または断面矩形状の熱媒体流通路と比較して熱交換効率の向上を図ることが可能となる。
【0069】
ベース部材40には、幅方向に配置された一対の溝41が形成され、一対の溝41のそれぞれの開口部41cは、一の閉鎖部材20によって閉鎖される、ことが好ましい。
【0070】
これにより、一対の溝41を一の閉鎖部材20によって閉鎖することにより、部品点数を少なくすることが可能となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0071】
尚、第1乃至第5実施形態では、外周部が円形状に形成された棒状の閉鎖部材20を示したが、これに限られるものではない。閉鎖部材としては、例えば、外周部が円形状の管状の部材であってもよい。また、閉鎖部材は、外周部が円形状を有するものに限られず、溝11,31,41の底部11a,31a,41a側に向かって張り出す曲面形状を有する部材であれば、例えば、円弧と直線とからなる断面半円形状の棒状の部材であってもよい。
【0072】
また、第1乃至第5実施形態では、熱媒体流通路2を流通する熱媒体として、水を示したが、これに限られるものではなく、例えば、エチレングリコールを含む不凍液を熱媒体として用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 冷却器
10 ベース部材
11 溝
11a 底部
11b 側壁部
11c 開口部
20 閉鎖部材
30 ベース部材
30a 第1平面
30b 第2平面
30c 第3平面
31 溝
31c 開口部
40 ベース部材
41 溝
41a 底部
41b 側壁部
41c 開口部