(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175344
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電力管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20241211BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241211BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241211BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20241211BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/32
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093054
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 俊介
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503DA18
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】システム停止状態の電動車両が電力調整に参加する際に、要求される電力調整の追従性を向上する。
【解決手段】電力管理システムは、電力調整の要求(例:9kWの放電)があると、電力調整に参加する電動車両10(A~C)に、指示量(3kW)を割り当てる。Aの電動車両10の充放電システムが停止中の場合、他の電動車両10(B、C)に、Aの指示量を割り振り、BおよびCの指示量を4.5kWとする。時刻t1で、Aのシステムの起動が完了すると、各電動車両10(A~C)に、指示量(3kW)を割り当て、A~Cの指示量が復帰する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両を電力調整リソースとして用いる電力管理システムであって、
前記電動車両の充放電を指示する充放電指示手段を備え、
前記充放電指示手段は、
電力調整に参加する前記電動車両毎に、充電量あるいは放電量である指示量を割り当てることと、
前記電力調整に参加する前記電動車両に、充放電システムが停止中の前記電動車両がある場合、
システム停止中の前記電動車両へ割り当てた前記指示量を、他の前記電動車両に割り振ることと、
システム停止中の前記電動車両に対して、前記指示量よりも小さな値である所定量を割り当てることと、を実行し、
システム停止中の前記電動車両の前記充放電システムの起動が完了した場合、
前記指示量を、前記電力調整に参加する前記電動車両に割り当てること、を実行する、電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2022-113460号公報(特許文献1)には、電動車両をエネルギーリソーセスとして用いる仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)の電力調整装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両は、その走行により、充放電設備との接続、切断が繰り返し行われるため、電力調整に参加する際、充放電システムの停止状態(システム停止状態)から、充放電システムを起動して、電力調整に参加する頻度が多い。システム停止状態から起動が完了するまでの間は、電動車両から充放電を行うことはできないため、システム停止状態からの起動頻度が多いと、要求される電力調整への追従性が悪化するという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、システム停止状態の電動車両が電力調整に参加する際に、要求される電力調整の追従性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力管理システムは、電動車両を電力調整リソースとして用いる電力管理システムであって、電動車両の充放電を指示する充放電指示手段を備える。充放電指示手段は、電力調整に参加する電動車両毎に、充電量あるいは放電量である指示量を割り当てる。充放電指示手段は、電力調整に参加する電動車両に、充放電システムが停止中の電動車両がある場合、システム停止中の電動車両へ割り当てた指示量を、他の電動車両に割り振り、システム停止中の電動車両に対して、指示量よりも小さな値である所定量を割り当てる。充放電指示手段は、システム停止中の電動車両の充放電システムの起動が完了した場合、指示量を、電力調整に参加する電動車両に割り当てる。
【0007】
この構成によれば、充放電指示手段は、電力調整に参加する電動車両毎に、充電量あるいは放電量である指示量を割り当て、電力調整に参加する電動車両に充放電システムが停止中の電動車両がある場合、システム停止中の電動車両へ割り当てた指示量を、他の電動車両に割り振り、システム停止中の電動車両に対して、指示量よりも小さな値である所定量を割り当てる。システム停止中の電動車両は、システムの起動が完了するまで充放電を行うことができないが、他の電動車両(充放電システムの起動が完了しており、充放電可能な電動車両)に、充放電を行うことができない電動車両(システムの起動が完了していない電動車両)の指示量を割り振りするので、システムの起動が完了していない電動車両の指示量を補って、電力調整を行うことができ、要求される電力調整への追従性を向上することができる。
【0008】
充放電指示手段は、システム停止中の電動車両の充放電システムの起動が完了した場合、電力調整に参加する電動車両に、指示量を割り当てる。システム停止中の電動車両の充放電システムの起動が完了し、電力調整に参加するすべての電動車両が充放電可能になると、各電動車両に指示量が割り当てられるので、所望の電力調整を行うことができる。また、システムの起動完了前(停止中)に、システム停止中の電動車両に対して、指示量よりも小さな値である所定量を割り当てているので、指示量を割り当てる場合(指示量を維持する場合)に比較して、充放電システムの起動完了時に、指示量の切替遅れや制御応答性に起因した、電力調整のオーバーシュートを抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、システム停止状態の電動車両が電力調整に参加する際に、要求される電力調整の追従性を向上するが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る電力管理システムの概略的な全体構成を示す図である。
【
図2】サーバによって実行される電力調整の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本実施の形態に係る電力調整を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る電力管理システムの概略的な全体構成を示す図である。
図1を参照して、電力管理システム1は、電力系統PGと、複数の電動車両10と、サーバ100と、サーバ200とを含む。
【0013】
電力系統PGは、図示しない発電所及び送配電設備によって構築される電力網であり、電力会社によって、保守及び管理される。電力会社は、電力系統PGの管理者に相当する。サーバ100は、アグリゲーションコーディネータが管理するサーバであり、電力会社の要請に応じて、電力調整量をリソーセスアグリゲータに分配する。
【0014】
サーバ200は、複数の電動車両10を管理するコンピュータであり、リソーセスアグリゲータが管理する。サーバ200は、本開示の「充放電指示手段」の一例に相当する。複数の電動車両10の各々は、たとえばBEV(電気自動車)であり、蓄電装置11を備える。各電動車両10は、電力調整リソースとして用いられ、外部充電及び外部放電を実行可能に構成される。外部充電は、電動車両10の外部から電力の供給を受けて電動車両10の蓄電装置11を充電することである。外部放電は、電動車両10の蓄電装置11から放電された電力を用いて電動車両10の外部へ給電を行なうことである。この実施の形態では、電力管理システム1に含まれる各電動車両10が同じ構成を有するものとする。しかし、電力管理システム1は、異なる構成を有する複数種の車両を含んでもよい。電力管理システム1は、個人が所有する車両(POV)と、MaaS(Mobility as a Service)事業者が管理する車両(MaaS車両)との少なくとも一方を含んでもよい。
【0015】
各充放電設備20は、住宅や各種施設の敷地内に設置された充放電設備である。充放電設備は、たとえば、V2H機器であってよい。各充放電設備20は、電力系統PGから供給される電力を蓄電装置11に充電し、蓄電装置11に蓄えられた電力を、住宅や各施設の電気負荷に給電(放電)する。また、各充放電設備20は、蓄電装置11に蓄えられた電力を、電力系統PGへ供給(逆潮流)可能とされている。充放電設備20につながる充電ケーブルが電動車両10のインレットに接続されることによって、充放電設備20と電動車両10との間で電力の授受を行なうことが可能になる。
【0016】
サーバ200は、制御装置210と、記憶装置220と、通信装置230を含み、ネットワークNWを介して、サーバ100と各電動車両10と通信可能に構成される。サーバ200は、サーバ100から分配された電力調整量に基づいて、各電動車両10の充放電計画を作成し、充放電計画に基づいて各電動車両10へ充放電の指示を行う。各電動車両10は、サーバ200の充放電指示に基づき、充放電設備20と協働して充放電を行う。
【0017】
図2は、サーバ200によって実行される電力調整の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、サーバ100から電力調整量が分配され、各電動車両10の充放電計画が作成されたあと、その処理が実行される。
【0018】
サーバ200は、サーバ100から電力調整量が分配されると、電力調整の種類(充電、あるいは、放電(給電))、電力調整時刻、調整電力量、等の情報とともに、電力調整に参加可能な電動車両10を募集する。サーバ200は、電力調整への参加を表明した各電動車両10の蓄電装置11の状態等に基づいて、サーバ100から分配された電力調整量による電力調整が可能であるか否かを判定する。電力調整が可能である場合、サーバ200は、サーバ100へ電力調整を実行する旨を回答し、充放電計画を作成し、電力調整へ参加する各電動車両10へ、電力調整時刻に、電動車両10と充放電設備20を接続するよう指示を行う。
【0019】
図2を参照して、充放電計画を作成し、電力調整時刻になると、サーバ200は、ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10において、電力調整へ参加する電動車両10毎に、蓄電装置11の充電量あるいは放電量である指示量を割り当てる。
【0020】
続くS11では、電力調整へ参加する電動車両10において、充放電システムが停止中の電動車両10が存在するか否かを判定する。たとえば、S10において、各電動車両10に指示量を割り当てた際に、電動車両10の充放電制御ECU(Electronic Control Unit)(たとえば、電池ECU)が起動していないとき(スリープ状態のとき)、充放電システムが停止中であると判定してよい。充放電システムが停止中(システム停止中)の電動車両10が存在しない場合、否定判定されS12へ進み、システム停止中の電動車両10が存在する場合、肯定判定されS13へ進む。
【0021】
S12では、S10で割り当てた指示量で充放電を実行するよう、各電動車両10へ充放電の指示を行い、本ルーチンを終了する。
【0022】
S13では、システム停止中の電動車両10の指示量を、他の電動車両10(システム停止中でない電動車両10)に割り振りする。本実施の形態では、システム停止中の電動車両10の指示量の総和を、他の電動車両10へ均等に振り分ける。たとえば、システム停止中の電動車両10の指示量の総和がSであり、他の電動車両10の台数がTであるとき、S/Tを、他の電動車両10の指示量へ加算することにより、割り振りを行う。
【0023】
S14では、システム停止中の電動車両10の指示量を、所定量αとする。所定量αは、たとえば、指示量の1/10以下の値であってよい。また、所定値αは、電力調整の種類が充電あるいは放電に拘らず、充放電システムの待機電力の大きさにほぼ等しい充電量であってよい。
【0024】
続くS15では、各電動車両10へ、充放電を実行するよう指示を行う。この指示を受けて、システム停止中の電動車両10は、充放電システムを起動し、所定量αで充放電を実行するよう制御される。他の電動車両10(システム停止中でない電動車両10)は、指示量に振り分けられた値(S/T)を加算した値で充放電を実行するよう制御される。
【0025】
S16では、S15の充放電指示がされてから、所定時間経過したか否かを判定する。充放電の指示から所定時間経過していないときは、否定判定されS17へ進む。充放電の指示から所定時間経過しているときには、肯定判定されS18へ進む。
【0026】
S17では、停止中の充放電システムの起動が完了したか否かを判定する。システム停止中のすべての電動車両10において、システムの起動が完了すると、肯定判定されS19へ進む。すべての電動車両10において、システムの起動が完了していない場合、否定判定されS16へ戻る。
【0027】
S18では、システムが起動していない電動車両10への充放電の指示を停止する。これにより、システムが起動していない電動車両10は、電力調整の対象から外される。また、システムが起動している電動車両10の指示量を、S10で割り当てた指示量に復帰させ、本ルーチンを終了する。
【0028】
S19では、電力調整に参加しているすべての電動車両10(システムが起動している電動車両10)の指示量を、S10で割り当てた指示量に復帰させ、本ルーチンを終了する。
【0029】
図3は、本実施の形態に係る電力調整を説明するタイムチャートである。
図3では、9kWの放電要求があり、電力調整に参加する電動車両10が、A、B、Cの3台から構成される例を説明する。S10で、各電動車両10に割り当てる指示量は、3kWである。Aの電動車両10の充放電システムが停止している場合、S13において、1.5kWの放電量が、BおよびCに割り振りされ、BおよびCの指示量は、4.5kWになる。また、S14において、Aの指示量が0.3kWになる。これにより、電力調整が開始された時刻t0から、Aのシステムの起動が完了する時刻t1まで、実線で示すよう、A~Cの車群の放電量は、9kWになる。時刻t1でAのシステムの起動が完了すると、S19において、A~Cの指示量は3kWになり、実線で示すよう、A~Cの車群の放電量は、9kWになる。S13において、指示量の割り振りを実施しない場合(A~Cの指示量が3kWの場合)、二点鎖線で示すように、時刻t0~t1の間は、車群の放電量は6kWであるが、本実施の形態では、時刻t1~t1の間でも、9kWの放電が行われ、要求される電力調整の追従性が向上する。
【0030】
S14において、Aの指示量を0.3kWに変更せず、3kWを維持すると、Aのシステムの起動が完了したとき(時刻t1)、指示量の切替遅れや制御応答性によって、
図3に一点鎖線で示すよう、車群の放電量が一時的の12kWまでオーバーシュートする可能性があるが、本実施の形態では、実線で示すように、9.3kWまでのオーバーシュートに収まり、オーバーシュートを抑制できる。S14において、所定量αを、Aの電動車両10の充放電システムの待機電力の大きさにほぼ等しい充電量(たとえば、0.1kWの充電)に設定した場合、充電電力によって、充放電システムの待機電力を確保できる。また、所定量αは、「0」であってもよい。なお、
図3では、電力調整が放電要求の場合を説明したが、充電要求の場合は、各電動車両10の指示量は充電量になる。
【0031】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1 電力管理システム、10 車両、11 蓄電装置、20 充放電設備、100,200 サーバ、NE ネットワーク、PG 電力系統。