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特開2024-175353コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175353
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20241211BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241211BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20241211BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20241211BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61K8/365
A61P1/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/194
A61K31/19
A61Q11/00
A61K8/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093067
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浦川 李花
(72)【発明者】
【氏名】有田 卓矢
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC301
4C083AC302
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC41
4C083DD23
4C083EE33
4C083FF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA14
4C206DA34
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA77
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA67
4C206ZC20
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮するコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物を提供する。
【解決手段】本発明のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤は、0.35質量%以上のクエン酸類を含有する。また、本発明のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤は、0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有する。また、本発明の液体口腔用組成物は、0.35質量%以上のクエン酸類を含有する。また、本発明の口腔用組成物は、0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.35質量%以上のクエン酸類を含有することを特徴とするコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項2】
0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有することを特徴とするコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項3】
歯周組織の破壊抑制・再生促進剤、歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進剤、歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進剤、又は歯周ポケットの深化抑制・修復促進剤である請求項1又は2に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤。
【請求項4】
0.35質量%以上のクエン酸類を含有することを特徴とする液体口腔用組成物。
【請求項5】
0.35質量%以上のクエン酸類を含有し、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であることを特徴とする液体口腔用組成物。
【請求項6】
0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項7】
0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有し、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であることを特徴とする口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に生体は、硬い骨や歯等の硬組織と、それを包んだり、つないだりして運動を助ける柔らかい靭帯、腱、滑膜、歯根膜等の軟組織とにより、基本的な骨格が形成されている。その硬組織と軟組織とを付着構造がつないでおり、両組織を別々ではなくひとつの複合組織として機能することを助けている。また一方で、これら付着構造において、その組織の改変や再構築、又はリューマチ、関節炎、歯周病等の炎症性疾患において、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が強く関与していることが知られている。
【0003】
MMPは、活性部位に亜鉛(II)イオンを保有することを特徴とする細胞外マトリックス分解酵素の総称である。MMPとしては、コラゲナーゼ型(MMP-1,8,13)、ストロメライシン型(MMP-3)、ゼラチナーゼ型(MMP-2,9)等の20種類以上の酵素分子種が知られ、これらは多くの種類の細胞によって産生される。
【0004】
コラゲナーゼ型MMPとしては、線維芽細胞及びマクロファージから産生される組織コラゲナーゼであるMMP-1、好中球コラゲナーゼであるMMP-8、及び軟骨細胞から産生されるMMP-13等が知られている。
【0005】
歯周炎等の歯周病において、コラゲナーゼ型MMPの発現異常にもとづく歯周組織の合成・分解の代謝バランスの崩れによって生ずる組織破壊が大きく関与している。例えば、歯周ポケットの細菌に反応して好中球が歯肉溝浸出液中に浸潤・集積し、MMP-8を産生する。これにより歯周ポケットの結合組織性付着が破壊され、ポケット深さの増大や、歯肉退縮につながり、さらに症状が進行することにより、歯牙の動揺、脱落へと進むことになる。これらのコラゲナーゼ型MMPの働きを阻害することにより、歯周組織を構成するコラーゲンの分解を抑制することができる。
【0006】
従来より、例えば特許文献1に開示されるMMP阻害剤が知られている。かかるMMP阻害剤は、酵素活性部位の亜鉛イオンと配位結合可能な官能基を含む保護剤を表面に有する金ナノ粒子からなる成分について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-138091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コラゲナーゼ型MMPの働きを阻害することが、歯周病の予防、及び歯周病の進行につながると考えられる。優れたコラゲナーゼ型MMP活性阻害作用を発揮するコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤及び口腔用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定濃度以上のクエン酸が、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮することを新たに見出した。
【0010】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤は、0.35質量%以上のクエン酸類を含有することを特徴とする。
【0011】
態様2のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤は、0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有することを特徴とする。
【0012】
態様3は、態様1又は2に記載のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤において、歯周組織の破壊抑制・再生促進剤、歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進剤、歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進剤、又は歯周ポケットの深化抑制・修復促進剤である。
【0013】
態様4の液体口腔用組成物は、0.35質量%以上のクエン酸類を含有することを特徴とする。
態様5の液体口腔用組成物は、0.35質量%以上のクエン酸類を含有し、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であることを特徴とする。
【0014】
態様6の口腔用組成物は、0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有することを特徴とする。
態様7の口腔用組成物は、0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含有し、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明のコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害剤(以下、「MMP活性阻害剤」という)、及び液体口腔用組成物を具体化した第1実施形態を説明する。
【0017】
本実施形態のMMP活性阻害剤に含まれる成分は、クエン酸類である。
本実施形態の液体口腔用組成物は、上記MMP活性阻害剤と同様の成分を含有している。MMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物は、上記成分のうち一種のみを含有していてもよいし、上記成分のうち二種を組み合わせて含有していてもよい。液体口腔用組成物は、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であってもよい。
【0018】
MMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物が含有する上記成分について説明する。MMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物は、上記の同じ成分を含有しているため、以下では、液体口腔用組成物について説明する。MMP活性阻害剤については液体口腔用組成物と異なる点を説明する。なお、本発明において、液体口腔用組成物とは、主として口腔内で使用することを目的とするものを意味するものとする。使用後は口腔内から排出される口腔用製剤だけでなく、摂取可能な飲食品を含むものとする。MMP活性阻害剤は、口腔内で使用することを目的とするものに限定されない。
【0019】
<クエン酸類>
液体口腔用組成物に含有されるクエン酸類は、クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種である。クエン酸塩としては、例えばクエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。クエン酸塩の具体例としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
【0020】
液体口腔用組成物中におけるクエン酸類の含有量の下限は、0.35質量%であり、好ましくは0.4質量%である。かかる含有量の下限が0.35質量%の場合、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【0021】
液体口腔用組成物中におけるクエン酸類の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%、より好ましくは4質量%である。かかる含有量の上限が5質量%の場合、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を効率的に発揮できる。
【0022】
クエン酸類の含有量の上限値又は下限値は、例えば、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0質量%であってもよい。尚、クエン酸類の含有量は、クエン酸に換算した含有量を示す。
【0023】
<その他成分>
液体口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば界面活性剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、粘結剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、キレート剤、薬効成分、基剤、研磨剤、安定化剤等が挙げられる。その他成分は、液体口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。液体口腔用組成物は、上記のその他成分のそれぞれについて、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
【0024】
界面活性剤としては、たとえば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0025】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0026】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。
【0027】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0028】
香味剤の具体例としては、例えばメントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、アニス油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0029】
甘味剤の具体例としては、例えばサッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
【0030】
湿潤剤の具体例としては、例えばソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
【0031】
粘結剤の具体例としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等のセルロース誘導体、キサンタンガム等の微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、グアーガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子又は天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、増粘性シリカ、ビーガム等の無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性粘結剤等が挙げられる。
【0032】
防腐剤の具体例としては、例えばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0033】
着色剤の具体例としては、例えば青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。
pH調整剤の具体例としては、例えばクエン酸、リン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
キレート剤の具体例としては、例えばエデト酸、エデト酸ナトリウム塩、エデト酸カリウム塩、フィチン酸等が挙げられる。
薬効成分の具体例としては、例えば酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、又はニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、又はリン酸アスコルビルマグネシウム等のビタミンC類、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6類、グリチルリチン酸塩とその誘導体、グリチルレチン酸、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の非イオン性殺菌剤、ココイルサルコシンナトリウム、ソルビン酸等のアニオン系殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、ヒノキチオール、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等が挙げられる。
【0035】
基剤の具体例としては、例えばアルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等が挙げられる。
【0036】
アルコール類の具体例としては、例えばエチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
研磨剤の具体例としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0037】
安定化剤の具体例としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
<適用形態、用途、及び剤形>
MMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品等として使用することができる。MMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物の用途としては、液体の剤型として用いられる公知の用途を適宜採用することができる。具体的には、例えば咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が挙げられる。MMP活性阻害剤は、さらに練歯磨剤、義歯装着剤を用途としてもよい。
【0038】
MMP活性阻害剤及び液体口腔用組成物は、例えば水、アルコール等の溶媒を含有する。MMP活性阻害剤の剤形は、特に限定されず、例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)等に適用することができる。
【0039】
<作用>
MMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物は、上述した成分により優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮する。コラゲナーゼ型MMPとしては、具体的にはMMP-1,MMP-8,MMP-13が挙げられる。これらの中で、MMP-8に対してより優れた活性阻害作用を発揮する。
【0040】
歯周炎等の歯周病において、コラゲナーゼ型MMPの発現異常にもとづく歯周組織の合成・分解の代謝バランスの崩れによって生ずる組織破壊が大きく関与している。コラゲナーゼ型MMPの働きを阻害することにより、歯周組織を構成するコラーゲンの分解を抑制することができる。
【0041】
MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により、例えば付着上皮、歯肉溝上皮、歯根膜等の歯周組織の破壊抑制・再生促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯周組織の破壊抑制・再生促進剤として好ましく適用することができる。また、MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯周組織コラーゲンの分解抑制・再生促進剤として好ましく適用することができる。また、MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯肉コラーゲンの分解抑制・再生促進剤として好ましく適用することができる。
【0042】
また、歯周病等の炎症疾患において、例えば歯周ポケットの細菌に反応して好中球が歯肉溝浸出液中に浸潤・集積し、MMP-8を産生する。これにより歯周ポケットの結合組織性付着が破壊され、ポケット深さの増大や、歯肉退縮につながり、さらに症状が進行することにより、歯牙の動揺、脱落へと進むことになる。MMP活性阻害剤は、MMP活性阻害作用により、既に産生された好中球コラゲナーゼの活性を阻害する。それにより歯周ポケットの深化抑制・修復促進作用を発揮する。つまり、MMP活性阻害剤は、歯周ポケットの深化抑制・修復促進剤として好ましく適用することができる。
【0043】
以上の作用により、本実施形態のMMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物は、歯肉退縮抑制、歯肉破壊抑制、歯周組織破壊抑制、歯茎下がり抑制、歯肉コラーゲン分解抑制、アタッチメントロス抑制、歯周組織コラーゲン保護、慢性炎症に伴う歯周組織の破壊抑制、及び/又は象牙質コラーゲンの保護等のために用いることができる。
【0044】
なお、本明細書において、「アタッチメントロス抑制」とは、歯肉の付着上皮が歯の表面から剥離し、歯肉と歯の付着位置が歯根側に移行していくことを抑制することを意味する。また、「歯肉退縮抑制」とは、歯肉全体が歯根側に移動することを抑制することを意味する。また、「歯茎下がり抑制」とは、歯肉全体の歯根側への移動に伴う歯根部の露出を抑制することを意味する。
【0045】
本実施形態の効果について説明する。
(1-1)本実施形態のMMP活性阻害剤、及び液体口腔用組成物では、0.35質量%以上のクエン酸類を含んで構成されている。したがって、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【0046】
(1-2)コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害することで、歯肉退縮抑制、歯肉破壊抑制、歯周組織破壊抑制、歯茎下がり抑制、歯肉コラーゲン分解抑制、アタッチメントロス抑制、歯周組織コラーゲン保護、慢性炎症に伴う歯周組織の破壊抑制、及び/又は象牙質コラーゲンの保護等の効果が期待される。
【0047】
(第2実施形態)
本発明のMMP活性阻害剤及び口腔用組成物を具体化した第2実施形態を説明する。以下、上述した第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態のMMP活性阻害剤に含まれる成分は、クエン酸類及びβ-グリチルレチン酸である。
本実施形態の口腔用組成物は、上記MMP活性阻害剤と同様の成分を含有している。MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物は、上記成分のうち一種のみを含有していてもよいし、上記成分のうち二種を組み合わせて含有していてもよい。口腔用組成物は、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害用であってもよい。
【0049】
<クエン酸類>
クエン酸類の具体例は、第1実施形態のクエン酸類の説明と同様である。
本実施形態の口腔用組成物中におけるクエン酸類の含有量の下限は、0.05質量%であり、好ましくは0.1質量%である。かかる含有量の下限が0.05質量%の場合、β-グリチルレチン酸との併用により優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【0050】
口腔用組成物中におけるクエン酸類の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%、より好ましくは4質量%である。かかる含有量の上限が5質量%の場合、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を効率的に発揮できる。
【0051】
クエン酸類の含有量の上限値又は下限値は、例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0質量%であってもよい。尚、クエン酸類の含有量は、クエン酸に換算した含有量を示す。
【0052】
<β-グリチルレチン酸>
β-グリチルレチン酸は、マメ科カンゾウ属の植物が含有する成分である。β-グリチルレチン酸は、グリチルリチン酸のアグリコンである。
【0053】
口腔用組成物中におけるβ-グリチルレチン酸の含有量の下限は、0.025質量%であり、好ましくは0.03質量%である。かかる含有量の下限が0.025質量%の場合、クエン酸類との併用により優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【0054】
口腔用組成物中におけるβ-グリチルレチン酸の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは2質量%、より好ましくは1質量%である。かかる含有量の上限が2質量%の場合、コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を効率的に発揮できる。
【0055】
β-グリチルレチン酸の含有量の上限値又は下限値は、例えば、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、又は2質量%であってもよい。
【0056】
<その他成分>
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば界面活性剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、粘結剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、キレート剤、薬効成分、基剤、研磨剤、安定化剤等が挙げられる。その他成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。口腔用組成物は、上記のその他成分のそれぞれについて、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。その他成分の具体例は、第1実施形態の説明と同様である。
【0057】
<適用形態、用途、及び剤形>
MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品等として使用することができる。MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物の用途としては、公知の用途を適宜採用することができる。具体的には、例えば咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、練歯磨剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が挙げられる。
【0058】
MMP活性阻害剤、及び口腔用組成物の剤形は、特に限定されず、例えば水、アルコール等の溶媒を含有することにより、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)等に適用することができる。
【0059】
<作用>
第1実施形態の説明と同様である。
本実施形態の効果について説明する。
【0060】
(2-1)本実施形態のMMP活性阻害剤、及び口腔用組成物では、0.05質量%以上のクエン酸類及び0.025質量%以上のβ-グリチルレチン酸を含んで構成されている。したがって、優れたコラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害作用を発揮できる。
【0061】
(2-2)コラゲナーゼ型マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性阻害することで、歯肉退縮抑制、歯肉破壊抑制、歯周組織破壊抑制、歯茎下がり抑制、歯肉コラーゲン分解抑制、アタッチメントロス抑制、歯周組織コラーゲン保護、慢性炎症に伴う歯周組織の破壊抑制、及び/又は象牙質コラーゲンの保護等の効果が期待される。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・ヒト以外のペット、家畜等の飼養動物に適用してもよい。
【実施例0063】
本実施形態のMMP活性阻害剤及び口腔用組成物について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、MMP活性阻害剤及び口腔用組成物は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
【0064】
<試験例1:クエン酸類によるMMP-8活性阻害試験>
(調製)
MMP-8活性阻害剤として、実施例1,2及び比較例1~3のサンプル溶液をそれぞれ調製した。実施例1,2及び比較例1~3のサンプル溶液が含有する各素材の種類は、下記表1に示すとおりである。実施例1,2及び比較例1~3のサンプル溶液は、各素材の濃度が表1に示す濃度になるように後述するキット付属のバッファー+5%DMSO溶液で希釈した。
【0065】
(MMP-8活性阻害の測定)
MMP-8(好中球コラゲナーゼ)活性は、MMP-8 fluorimetricdrug discovery kit(Enzo Life Sciences,Inc.製)を使用し、測定は、基本的に説明書に記載の使用方法に従った。
【0066】
すなわち、上記のように調製された各例の溶液70μLに、200倍に希釈したMMP-8を20μL添加し、37℃で60分間反応させた。このとき、陽性コントロールとして素材を添加せずバッファーを等量加えたサンプル、また基質のみのバックグラウンドの測定のためにMMP-8を添加せずバッファーを等量加えたサンプルを用意した。
【0067】
蛍光基質(メチルクマリンアミド蛍光基質:Mca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dpa-Ala-Arg-NH2)を溶かし、バッファーを用いて10倍希釈した(濃度40μM)。希釈した蛍光基質10μLを添加し、37℃で20分反応させた後に、励起光:328nm、放出光:420nmの蛍光強度を測定した。陽性コントロールサンプルの蛍光強度から基質のみの蛍光強度をバックグラウンドとして引いた値(NC)を100%として、各例のサンプルの蛍光強度から基質のみの蛍光強度をバックグラウンドとして引いた値の比率を酵素活性として算出した。比率の値が低いほど、MMP-8活性阻害が強いことを示す。N=3として測定し、算出した平均値と標準偏差(SD)を表1に示す。
【0068】
【表1】
表1に示されるように、実施例1,2の所定濃度のクエン酸溶液は、優れたMMP-8活性阻害作用を発揮することが確認された。一方、クエン酸濃度が低い比較例2,3は、いずれもMMP-8活性阻害作用が低い結果であった。
【0069】
<試験例2:クエン酸類及びβ-グリチルレチン酸によるMMP-8活性阻害試験>
(調製)
MMP-8活性阻害剤として、実施例3,4及び比較例4,5のサンプル溶液をそれぞれ調製した。実施例3,4及び比較例4,5のサンプル溶液が含有する各素材の種類は、下記表2に示すとおりである。実施例3,4及び比較例4,5のサンプル溶液は、各素材の濃度が表2に示す濃度になるように後述するキット付属のバッファー+5%DMSO溶液で希釈した。
【0070】
(MMP-8活性阻害の測定)
試験例1と同様の方法にて測定した。N=3として測定し、算出した平均値と標準偏差(SD)を表2に示す。
【0071】
【表2】
表2に示されるように、β-グリチルレチン酸を単独で使用する比較例5は、MMP-8活性阻害作用が低い結果であった。一方、β-グリチルレチン酸と、クエン酸を試験例1の比較例2又は比較例3と同じ濃度で併用した実施例3又は実施例4は、優れたMMP-8活性阻害作用を発揮することが確認された。