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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175361
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】大腿部用サポーター
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/06 20060101AFI20241211BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20241211BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20241211BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A41D13/06 105
A41D13/05 143
A41D13/00 115
A61F13/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093087
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】細江 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】石垣 美鈴
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓二
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA12
3B211AA13
3B211AB18
3B211AC17
3B211AC18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】着用者の動きに応じた大腿部の筋肉の働きを補助することのできる大腿部用サポーターを提供する。
【解決手段】大腿部用サポーター100は筒状編地からなり、大腿部を支持し、筒状編地の上端に編成され、大腿部上部に筒状編地を締着させる上部アンカー1と、筒状編地の下端に編成され、大腿部下部に筒状編地を締着させる下部アンカー2と筒状編地のベース生地9より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が筒状編地の正面側の下部アンカーから上部アンカーを経由して筒状編地の一方の側部3aをまわり、筒状編地の背面側の下部アンカーまで配設される第の強伸縮部4と筒状編地のベース生地より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が筒状編地の正面側の下部アンカーから、第1の強伸縮部4と交差し、上部アンカーを経由して筒状編地の他方の側部3bをまわり筒状編地の背面側の下部アンカーまで配設される第2の強伸縮部5を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状編地からなり、着用者の大腿部を支持する大腿部用サポーターであって、
前記筒状編地の上端に編成され、着用者の大腿部上部に前記筒状編地を締着させる上部アンカーと、
前記筒状編地の下端に編成され、着用者の大腿部下部に前記筒状編地を締着させる下部アンカーと、
前記筒状編地のベース生地より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が前記筒状編地の正面側の前記下部アンカー近傍から、前記上部アンカー近傍を経由して前記筒状編地の一方の側部をまわり、前記筒状編地の背面側の前記下部アンカー近傍まで配設される第1の強伸縮部と、
前記筒状編地のベース生地より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が前記筒状編地の正面側の前記下部アンカー近傍から、前記第1の強伸縮部と交差しつつ、前記上部アンカー近傍を経由して前記筒状編地の他方の側部をまわり、前記筒状編地の背面側の前記下部アンカー近傍まで配設される第2の強伸縮部とを備えることを
特徴とする大腿部用サポーター。
【請求項2】
請求項1に記載の大腿部用サポーターにおいて、
前記第1の強伸縮部又は前記第2の強伸縮部の少なくとも一方が、逆V字形状に形成されることを
特徴とする大腿部用サポーター。
【請求項3】
請求項1に記載の大腿部用サポーターにおいて、
前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部が、前記筒状編地の正面側で交差してX字形状を形成していることを
特徴とする大腿部用サポーター。
【請求項4】
請求項3に記載の大腿部用サポーターにおいて、
前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部で形成されるX字形状の交差部分が、着用者の大腿直筋に対応する部分、又はその近傍に形成されることを
特徴とする大腿部用サポーター。
【請求項5】
請求項1に記載の大腿部用サポーターにおいて、
前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部が、前記筒状編地の背面側でV字形状を形成していることを
特徴とする大腿部用サポーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の動きに応じた大腿部の筋肉の働きを補助することのできる大腿部用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
大腿部の筋肉は、前面にある伸筋群と、内側にある内転筋群と、後面にある屈筋群とに分けられる。例えば、大腿四頭筋は伸筋群に、薄筋は内転筋群に、大腿二頭筋や半腱様筋は屈筋群に分類される。
大腿四頭筋や、大腿二頭筋、半腱様筋等(以下、ハムストリングともいう)は、股関節と膝関節との二つの関節をまたぐ筋肉であることから二関節筋とも呼ばれている。
【0003】
大腿四頭筋は、大腿直筋、中間広筋、内側広筋及び外側広筋から構成され、中でも大腿直筋は、腸骨の下前腸骨棘から起こり脛骨粗面についているため、大腿四頭筋の中で唯一の二関節筋となっている。そのため、大腿直筋は、股関節の屈曲と膝関節の伸展とに関与し、例えば、日常動作時には起立、着座、歩行などの主動作筋、スポーツ時にはキック、ジャンプ、ランニングなどの主動作筋として働くこととなる。
【0004】
一方で、ハムストリングは、大腿四頭筋の拮抗筋であることから、股関節の伸展と膝関節の屈曲とに関与し、例えば、日常動作時には歩行や前傾した上半身の持ち上げなどの主動作筋、スポーツ時にはブレーキ動作などの主動作筋として働くこととなる。
【0005】
このように、大腿部の筋肉は、各種動作時の主動作筋として使用されていることから、これら大腿部の筋肉を適切に支持することができれば、股関節及び膝関節の屈曲、伸展を補助し、日常動作や運動をサポートすることができる。
【0006】
このような大腿部を支持するものとして、例えば、従来のボトム衣類は、大腿部の前側であって人体の腸棘点と膝蓋中央点との中間点に対応する部分に緊締部を有する(特許文献1参照)。
【0007】
また、従来のコンプレッションウェアは、伸縮性を有する生地で形成された素材本体と、前記素材本体の表裏の少なくとも一方の面の少なくとも一部の領域に施されるプリント層と、を備え、前記プリント層は、基地と、前記基地に保持される圧電体としての水晶粒子と、を備え、前記基地は、前記素材本体の伸縮に伴って伸縮して、厚さ方向には圧縮力Fcが生じ、前記水晶粒子は、前記圧縮力Fcが付与されることで発熱する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3924586号公報
【特許文献2】特許第6339522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示のボトム衣類は、大腿部の前側中央付近で二つの当て布を交差させ、この菱形の交差部分で大腿直筋に刺激を与え、膝の伸展運動を増大させるとするものである。
しかしながら、この特許文献1には、大腿直筋に刺激を付与することは記載されているものの、ハムストリングの働きをサポートすることについては、何ら開示されていない。
【0010】
また、特許文献2に開示のコンプレッションウェア(コンプレッションパンツ)は、ハムストリングに沿った第3サポートプリントを備え、この第3サポートプリントに分散された圧電体粒子の圧電効果を利用して発熱させて、着用者の血流を促進して筋肉により多くの酸素を供給し、乳酸や老廃物の排出が促進される結果、より高いパフォーマンスで運動することをサポートするとするものである。
しかしながら、この特許文献2は、着用者のハムストリングを衣服の着圧によってサポートするものではないため、着用者のハムストリングを適切にサポートすることは困難である。
【0011】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、着用者の動きに応じた大腿部の筋肉の働きを補助することのできる大腿部用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る大腿部用サポーターは、筒状編地からなり、着用者の大腿部を支持する大腿部用サポーターであって、前記筒状編地の上端に編成され、着用者の大腿部上部に前記筒状編地を締着させる上部アンカーと、前記筒状編地の下端に編成され、着用者の大腿部下部に前記筒状編地を締着させる下部アンカーと、前記筒状編地のベース生地より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が前記筒状編地の正面側の前記下部アンカー近傍から、前記上部アンカー近傍を経由して前記筒状編地の一方の側部をまわり、前記筒状編地の背面側の前記下部アンカー近傍まで配設される第1の強伸縮部と、前記筒状編地のベース生地より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が前記筒状編地の正面側の前記下部アンカー近傍から、前記第1の強伸縮部と交差しつつ、前記上部アンカー近傍を経由して前記筒状編地の他方の側部をまわり、前記筒状編地の背面側の前記下部アンカー近傍まで配設される第2の強伸縮部とを備えるものである。
【0013】
このように本発明においては、前記上部アンカーと、前記下部アンカーと、前記第1の強伸縮部と、前記第2の強伸縮部とを備え、前記第1の強伸縮部が筒状編地の正面側の前記下部アンカー近傍から、前記上部アンカー近傍を経由して筒状編地の一方の側部をまわり、筒状編地の背面側の前記下部アンカー近傍まで配設され、前記第2の強伸縮部が筒状編地の正面側の前記下部アンカー近傍から、前記第1の強伸縮部と交差しつつ、前記上部アンカー近傍を経由して筒状編地の他方の側部をまわり、筒状編地の背面側の前記下部アンカー近傍まで配設される場合には、股関節の屈曲や伸展、膝関節の屈曲や伸展に作用する大腿四頭筋や内転筋群、ハムストリングなどを筒状編地の正面側から背面側にかけて連続して配設された前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部で大腿部の全周にわたって押圧支持できるとともに、着用者の前大腿部では、前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部が交差状態で強く前大腿部全体を押圧支持できることとなり、着用者の各種動作に対応したこれら大腿部の筋肉の働きをサポートすることができる。
【0014】
また、前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部それぞれが筒状編地の正面側から背面側にかけて連続、又はほぼ連続して配設されていることから、膝関節を伸展させた状態で固定して股関節を伸展させる(股関節を背面側に動かす)ような場合に、拮抗筋としながらも同時収縮する大腿四頭筋やハムストリングを前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部それぞれが正面側と背面側とで一体的に押圧支持できることとなり、これら大腿部の筋肉の働きをサポートすることができる。
【0015】
本発明に係る大腿部用サポーターは、必要に応じて、前記第1の強伸縮部又は前記第2の強伸縮部の少なくとも一方が、逆V字形状に形成されるものである。
【0016】
このように本発明においては、前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部の少なくともいずれか一方が逆V字状に編成されている場合には、筒状編地の正面側から背面側までの周方向に沿って、前記下部アンカーとともにトラス構造を形成することとなり、大腿部用サポーターを装着した際に、当該大腿部用サポーターを形状保持し、長手方向及び周方向への位置ズレを抑制することができる。
【0017】
本発明に係る大腿部用サポーターは、必要に応じて、前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部が、前記筒状編地の正面側で交差してX字形状を形成しているものである。
【0018】
このように本発明においては、筒状編地の正面側で前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部が交差してX字形状を形成している場合には、前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部が着用者の前大腿部全体に対して大腿部背面側に向けた押圧力を付与することとなり、着用者の前大腿部(大腿四頭筋や内転筋)を押圧支持することができる。
【0019】
本発明に係る大腿部用サポーターは、必要に応じて、前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部で形成されるX字形状の交差部分が、着用者の大腿直筋に対応する部分、又はその近傍に形成されるものである。
【0020】
このように本発明においては、着用者の大腿直筋に対応する部分、又はその近傍に前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部で形成されるX字形状の交差部分が形成される場合には、股関節の屈曲と膝関節の伸展とに関与する大腿直筋を押圧力の大きい交差部分で支持できることとなり、大腿直筋の働きをサポートすることができる。
【0021】
本発明に係る大腿部用サポーターは、必要に応じて、前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部が、前記筒状編地の背面側でV字形状を形成しているものである。
【0022】
このように本発明においては、筒状編地の背面側で前記第1の強伸縮部及び前記第2の強伸縮部がV字形状を形成していることから、薄筋及び/又はハムストリングを持ち上げるように囲んで支持できるとともに、薄筋及び/又はハムストリングの停止部近傍で押圧支持できることとなり、着用者の各種動作に対応した薄筋及び/又はハムストリングの働きをサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る大腿部用サポーターの正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る大腿部用サポーターの背面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る大腿部用サポーターの前大腿部に対する作用を説明するための概略図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る大腿部用サポーターの他の例を示す背面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る大腿部用サポーターの後大腿部に対する作用を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る大腿部用サポーターについて、図1ないし図5を用いて説明する。本実施形態の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
なお、本明細書において、「左」、「右」とは、着用者を中心としてみたときの「左」、「右」と同一である。
【0025】
本実施形態に係る大腿部用サポーター100は、着用者の体表に密着して大腿部に締着されるものであり、丸編みによって編成された筒状編地として形成される。
大腿部用サポーター100は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成される編地であるベース生地(編地)部9に対して異なる編み立てを施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。
【0026】
大腿部用サポーター100は、筒状編地の上端を周回して編成され、着用者の大腿部上部に筒状編地を締着させる上部アンカー1と、筒状編地の下端を周回して編成され、着用者の大腿部下部に筒状編地を締着させる下部アンカー2と、上部アンカー1及び下部アンカー2の間に編成される本体部3とを備える。
【0027】
上部アンカー1及び下部アンカー2は、筒状編地の周方向における伸縮抵抗が、周方向におけるベース編地部9の伸縮抵抗より大きく編成され、周方向に強い締付力を有している。
【0028】
また、上部アンカー1は、下端から編み立てられ、上端で折り返されることで、二重の編地とされる。これにより、上部アンカー1は、周方向における伸縮抵抗をベース編地部9の筒状編地の周方向における伸縮抵抗よりも大きくできる。
同様に、下部アンカー2は、上端から編み立てられ、下端で折り返されることで、二重の編地とされる。これにより、下部アンカー2は、周方向における伸縮抵抗をベース編地部9の筒状編地の周方向における伸縮抵抗よりも大きくできる。
【0029】
上部アンカー1及び下部アンカー2は、例えば、鹿の子編みで編成される。
【0030】
このように、上部アンカー1は、着用者の大腿部上部を周回して編成され、周方向における伸縮抵抗が、周方向におけるベース編地部9の伸縮抵抗より大きく形成されることから、着用者の大腿部上部に大腿部用サポーター100を固定(位置決め)し、大腿部用サポーター100の上端のずり下がりを抑制することができる。
また、上部アンカー1近傍には、後述する第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5が配設されており、この第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5のアンカーとしても機能する。なお、上部アンカー1には、後述するように、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5が連設されていてもよい。
【0031】
また、下部アンカー2は、着用者の大腿部下部を周回して編成され、周方向における伸縮抵抗が、周方向におけるベース編地部9の伸縮抵抗より大きく形成されることから、着用者の大腿部下部に大腿部用サポーター100を固定(位置決め)し、大腿部用サポーター100の下端のずり上がりを抑制することができる。
また、下部アンカー2近傍には、後述する第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5が配設されており、この第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5のアンカーとしても機能する。なお、下部アンカー2には、後述するように、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5が連設されていてもよい。
【0032】
本体部3は、筒状編地のベース編地部9より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が筒状編地の正面側の下部アンカー2近傍から、上部アンカー1を経由して筒状編地の左側部3aをまわり、筒状編地の背面側の下部アンカー2近傍まで配設される第1の強伸縮部4と、筒状編地のベース編地部9より伸縮抵抗が大きい帯状体で形成され、当該帯状体が筒状編地の正面側の下部アンカー2近傍から、第1の強伸縮部4と交差しつつ、上部アンカー1を経由して筒状編地の右側部3bをまわり、筒状編地の背面側の下部アンカー2近傍まで配設される第2の強伸縮部5とを備える。
ここで、帯状体とは、一端から他端まで連続して編成されているものであってもよいし、その一部に伸縮抵抗の小さい編成部分を数コース有するものの、着用者の大腿部の筋肉の働きを補助できる程度にその伸縮抵抗の小さい編成部分の両側に伸縮抵抗の大きい編成部分が近接して配設されているものも含むものである。
【0033】
第1の強伸縮部4は、着用者の前大腿部から後大腿部にかけて、逆V字状に編成される。
具体的には、第1の強伸縮部4は、大腿部用サポーター100の正面側において、下部アンカー2の右上端2a近傍に配設され、当該下部アンカー2の右上端2aから上部アンカー1の左下端1a近傍まで延在する、帯状の第1領域4aと、上部アンカー1の左下端1a近傍から筒状編地の左側部3aをまわって、大腿部用サポーター100の背面側において、下部アンカー2の中央上端2cまで延在する、帯状の第2領域4bとを有して構成される。
【0034】
なお、第1領域4a及び第2領域4bは、直線状に編成されていてもよいし、上方向又は下方向のいずれかに凸の湾曲状に編成されていてもよい。
【0035】
第2の強伸縮部5は、第1の強伸縮部4と同様に、着用者の前大腿部から後大腿部にかけて、逆V字状に編成される。
具体的には、第2の強伸縮部5は、大腿部用サポーター100の正面側において、下部アンカー2の左上端2b近傍に配設され、当該下部アンカー2の左上端2bから上部アンカー1の右下端1b近傍まで延在する、帯状の第1領域5aと、上部アンカー1の右下端1b近傍から筒状編地の右側部3bをまわって、大腿部用サポーター100の背面側において、下部アンカー2の中央上端2cまで延在する、帯状の第2領域5bとを有して構成される。
【0036】
なお、第1領域5a及び第2領域5bは、直線状に編成されていてもよいし、上方向又は下方向のいずれかに凸の湾曲状に編成されていてもよい。
【0037】
第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5は、上部アンカー1及び下部アンカー2が第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5のアンカーとして機能するように、数コース分の編成部分を隔てて上部アンカー1及び下部アンカー2に近接した状態で配設されている。このとき、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5と、上部アンカー1及び下部アンカー2との間の編成部分は、少なくとも筒状編地の上下方向に伸縮抵抗の大きいものとすることもできる。
なお、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5は、上部アンカー1及び下部アンカー2に連設されていてもよい。
【0038】
以上のように、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5の少なくともいずれか一方が逆V字状に編成されていることから、筒状編地の正面側から背面側までの周方向に沿って、下部アンカー2とともにトラス構造を形成することとなり、大腿部用サポーター100を装着した際に、当該大腿部用サポーター100を形状保持し、長手方向及び周方向への位置ズレを抑制することができる。
【0039】
なお、伸縮抵抗の大きい強伸縮部のみでトラス構造を形成するために、下部アンカー2上方に周方向に沿って強伸縮部を編成してもよい。すなわち、第1の強伸縮部4及び/又は第2の強伸縮部5を三角形状に編成することもできる。
【0040】
第1の強伸縮部4は、筒状編地の長さ方向(大腿部の軸方向)における伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース編地部9の伸縮抵抗よりも大きく形成される。すなわち、第1の強伸縮部4は、ベース編地部9と比較して、長さ方向に強い締付力を持つように形成される。
また、第1の強伸縮部4は、筒状編地の長さ方向における伸縮抵抗が、第1の強伸縮部4の周方向における伸縮抵抗よりも大きく形成される。
【0041】
同様に、第2の強伸縮部5は、筒状編地の長さ方向(大腿部の軸方向)における伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース編地部9の伸縮抵抗よりも大きく形成される。すなわち、第2の強伸縮部5は、ベース編地部9と比較して、長さ方向に強い締付力を持つように形成される。
また、第2の強伸縮部5は、筒状編地の長さ方向における伸縮抵抗が、第2の強伸縮部5の周方向における伸縮抵抗よりも大きく形成される。
【0042】
また、第1の強伸縮部4の第1領域4aと第2の強伸縮部5の第1領域5aは、筒状編地の正面側において互いに交差して、X字形状を形成している。
第1領域4a及び第1領域5aで形成されるX字形状の交差位置は、本体部3の正面側であれば特に制限されないが、着用者の大腿四頭筋を構成する筋のうち、大腿直筋に対応する部分、又はその近傍である本体部3の中央近傍であることが好ましい。
【0043】
この第1の強伸縮部4の第1領域4aと第2の強伸縮部5の第1領域5aとで形成されるX字形状の大腿部への作用について、図3を用いて説明する。
【0044】
大腿部用サポーター100を着用者が装着した状態において、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5は、着用者の大腿部に密着して引き伸ばされ、緊張状態となっている。加えて、着用者の大腿部左側面において、第1の強伸縮部4の第1領域4aの上部には、上部アンカー1及び第1の強伸縮部4の第2領域4bにより背面側に引っ張られて背面方向への力FA1が作用し、同様に、着用者の大腿部右側面において、第2の強伸縮部5の第1領域5aの上部には、上部アンカー1及び第2の強伸縮部5の第2領域5bにより背面側に引っ張られて背面方向への力FA2が作用している。また、着用者の大腿部左側面において、第1の強伸縮部4の第1領域4aの下部には、下部アンカー2により背面側に引っ張られて背面方向への力FA3が作用し、同様に、着用者の大腿部右側面において、第2の強伸縮部5の第1領域5aの下部には、第2の強伸縮部5の第2領域5bにより背面側に引っ張られて背面方向への力FA4が作用している。
【0045】
このように、第1の強伸縮部4の第1領域4aと第2の強伸縮部5の第1領域5aとは、装着状態において、それぞれ略半円のアーチ形状を形成して、大腿部背面側に力FA1ないしFA4により引っ張られる。これにより、第1の強伸縮部4の第1領域4aと第2の強伸縮部5の第1領域5aとの交差部分6には、背面方向へ向けて作用する力FA1ないしFA4の合力として背面方向への力FAが作用し、着用者の前大腿部(大腿四頭筋や内転筋)に対して大腿部背面側に向けて押圧力を付与することとなる。
【0046】
特に、この交差部分6が本体部3の中央近傍に配設されている場合には、大腿四頭筋を構成する大腿直筋に対して押圧力をかけることとなる。すなわち、第1の強伸縮部4の第1領域4aと第2の強伸縮部5の第1領域5aとで、前大腿部(大腿四頭筋や内転筋)を全体的に押圧支持するとともに、第1の強伸縮部4の第1領域4aと第2の強伸縮部5の第1領域5aとの交差部分6で大腿四頭筋を構成する筋肉の一つである大腿直筋を押圧支持することとなる。
【0047】
この前大腿部に対する第1の強伸縮部4の第1領域4aと第2の強伸縮部5の第1領域5aとによる押圧支持により、着用者の各種動作に対応した大腿四頭筋や内転筋の働きをサポートすることができるものである。
【0048】
このように、筒状編地の正面側で第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5が交差してX字形状を形成している場合には、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5が着用者の前大腿部全体に対して大腿部背面側に向けた押圧力を付与することとなり、着用者の前大腿部(大腿四頭筋や内転筋)を押圧支持することができる。
【0049】
また、着用者の大腿直筋に対応する部分、又はその近傍に第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5で形成されるX字形状の交差部分6が形成される場合には、股関節の屈曲と膝関節の伸展とに関与する大腿直筋を押圧力の大きい交差部分6で支持できることとなり、大腿直筋の働きをサポートすることができる。
【0050】
一方で、第1の強伸縮部4の第2領域4bと第2の強伸縮部5の第2領域5bは、筒状編地の背面側において、V字形状を形成している。
なお、第1の強伸縮部4の第2領域4bと第2の強伸縮部5の第2領域5bは、図4(a)に示すように、その下部が連設していないV字形状(逆ハの字形状)であってもよいし、図4(b)に示すように、その下部が交差したX字形状であってもよい。
【0051】
この第1の強伸縮部4の第2領域4bと第2の強伸縮部5の第2領域5bとで形成されるV字形状の大腿部への作用について、図5を用いて説明する。
【0052】
大腿部用サポーター100は、当該大腿部用サポーター100を着用者が装着した状態において、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5は、着用者の大腿部に密着して引き伸ばされ、緊張状態となっている。加えて、第1の強伸縮部4の第2領域4b下端及び第2の強伸縮部5の第2領域5b下端は、下部アンカー2をアンカーとして支持されるとともに、着用者の大腿部左側面において、第1の強伸縮部4の第2領域4bの上部には、第1の強伸縮部4の第1領域4aにより正面側に引っ張られて正面方向への力FB1が作用し、同様に、着用者の大腿部右側面において、第2の強伸縮部5の第2領域5bの上部には、第2の強伸縮部5の第1領域5aにより正面側に引っ張られて正面方向への力FB2が作用している。この正面方向に向けて作用する力FB1及びFB2により、下部アンカー2による支持部分を起点として、第1の強伸縮部4の第2領域4b及び第2の強伸縮部5の第2領域5b全体で後大腿部に対して押圧力を付与している。
【0053】
すなわち、ハムストリングは、第1の強伸縮部4の第2領域4b及び第2の強伸縮部5の第2領域5bで形成されるV字形状に囲まれ、ハムストリングを持ち上げるようにして支持されることにより、ハムストリングの左右の振れを抑えて、安定性を確保するこができる。
【0054】
ところで、ハムストリングのうち、例えば、外側ハムストリングスである大腿二頭筋は、長頭が坐骨結節、短頭が大腿骨後面の粗線外側唇から起こり、膝窩の外側をとおって腓骨頭につく。また、内側ハムストリングである半腱様筋は、表層で坐骨結節より起こり、脛骨粗面の内側につく。
このように、ハムストリングを構成する大腿二頭筋及び半腱様筋は、後大腿部を下方に向かって走り、膝窩の外側又は内側に案内されるようにして配置されている。
【0055】
そのため、着用者が大腿部用サポーター100を左大腿部に装着した場合であれば、第1の強伸縮部4の第2領域4b下部は、大腿二頭筋の停止部近傍に対応する部分にて、当該大腿二頭筋と交差するようにして重なり、第2の強伸縮部5の第2領域5b下部は、半腱様筋や半膜様筋の停止部近傍に対応する部分にて、当該半腱様筋や半膜様筋と交差するようして重なる。
この第1の強伸縮部4の第2領域4b及び第2の強伸縮部5の第2領域5bとの重なりによる押圧支持により、着用者の各種動作に対応したハムストリングの働きをサポートすることができるものである。
【0056】
以上のように、筒状編地の背面側で第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5がV字形状を形成していることから、ハムストリングを持ち上げるように囲んで支持できるとともに、ハムストリングの停止部近傍で押圧支持できることとなり、着用者の各種動作に対応したハムストリングの働きをサポートすることができる。
【0057】
また、上記第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5による大腿部への押圧支持は、第1の強伸縮部4における第1領域4aと第2領域4b、及び第2の強伸縮部5における第1領域5aと第2領域5bが、大腿部の正面側及び背面側において連続、又はほぼ連続して編成されていることで、これらが協働して作用し、連続して編成されていない場合と比して、前大腿部及び後大腿部それぞれに及ぼす伸縮抵抗を大きくすることができ、各種動作における主動作筋を支持できるものである。
【0058】
第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5は、例えば、タック編みと添え糸編みとを併用した編地とすることができる。
【0059】
着用者の後大腿部に対応する大腿部用サポーター100の背面側には、上部アンカー1、第1の強伸縮部4の第2領域4b、及び第2の強伸縮部5の第2領域5bとで囲まれるようにして、蛇腹部7が編成されている。
【0060】
蛇腹部7は、五角形状(ホームベース状)に形成され、ベース編地部9に対し、大腿部用サポーター100の周方向に延在する複数のメッシュ編地部8が等間隔に並設された蛇腹状編地となっている。
【0061】
この蛇腹状編地は、ベース編地部9に対してメッシュ編地部8の厚みが薄いために、メッシュ編地部8の部分が凹状となり、大腿部用サポーター100の表裏面に凹凸が生じている。このため、蛇腹状編地は、着用者の体表との接触面積が狭いことによる着用者の後大腿部と蛇腹部7との間の摩擦抵抗が小さいうえに、メッシュ編地部8の編み目が大きいことによる隣接する糸間の摩擦抵抗が小さいために、伸縮性が高い編地となっている。
【0062】
蛇腹部7は、上述したように、通気性に優れた編組織であるメッシュ編みで編成されたメッシュ編地部8を有することにより、筒状編地の長さ方向における伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース編地部9の伸縮抵抗よりも小さく形成されている。
【0063】
このように本実施形態に係る大腿部用サポーター100は、上部アンカー1と、下部アンカー2と、第1の強伸縮部4と、第2の強伸縮部5とを備え、第1の強伸縮部4が筒状編地の正面側の下部アンカー2近傍から、上部アンカー1近傍を経由して筒状編地の一方の側部3aをまわり、筒状編地の背面側の下部アンカー2近傍まで配設され、第2の強伸縮部5が筒状編地の正面側の下部アンカー2近傍から、第1の強伸縮部4と交差しつつ、上部アンカー1近傍を経由して筒状編地の他方の側部3bをまわり、筒状編地の背面側の下部アンカー2近傍まで配設されることから、股関節の屈曲や伸展、膝関節の屈曲や伸展に作用する大腿四頭筋や内転筋群、ハムストリングなどを筒状編地の正面側から背面側にかけて連続して配設された第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5で大腿部の全周にわたって押圧支持できるとともに、着用者の前大腿部では、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5が交差状態で強く前大腿部全体を押圧支持できることとなり、着用者の各種動作に対応したこれら大腿部の筋肉の働きをサポートすることができる。
【0064】
また、第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5それぞれが筒状編地の正面側から背面側にかけて連続、又はほぼ連続して配設されていることから、膝関節を伸展させた状態で固定して股関節を伸展させる(股関節を背面側に動かす)ような場合に、拮抗筋としながらも同時収縮する大腿四頭筋やハムストリングを第1の強伸縮部4及び第2の強伸縮部5それぞれが正面側と背面側とで一体的に押圧支持できることとなり、これら大腿部の筋肉の働きをサポートすることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 上部アンカー
1a 左下端
1b 右下端
2 下部アンカー
2a 右上端
2b 左上端
2c 中央上端
3 本体部
3a 左側部
3b 右側部
4 第1の強伸縮部
4a 第1領域
4b 第2領域
5 第2の強伸縮部
5a 第1領域
5b 第2領域
6 交差部分
7 蛇腹部
8 メッシュ編地部
9 ベース編地部
100 大腿部用サポーター
FA、FA1~FA4、FB1、FB2 力

図1
図2
図3
図4
図5