(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175368
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】保守計画立案支援システム及び設備の保守計画の生成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241211BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20241211BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241211BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/30
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093105
(22)【出願日】2023-06-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 承宇
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩仁
(72)【発明者】
【氏名】永吉 勤
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠一
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴一
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC15
5L049CC41
5L050CC41
(57)【要約】
【課題】設備の保守計画の立案を支援する。
【解決手段】保守計画立案支援システムは、設備の各機器の推奨保守時期を管理するための機器状態情報を保持する。推奨保守時期は、機器の保守に要するコストが低く、かつ、故障率が低くなる時期である。保守計画立案支援システムは、設備の不具合発生の確率に関する制約条件と、推奨保守時期からずれた時期での機器の保守による経済的損失を評価する設備保守費用損失を用いて算出される評価値とを用いて、保守時期に保守を行う設備の機器のリストを探索する第1最適化問題として、設備毎に、リストを複数生成し、設備の不具合発生の確率及び機器の保守に必要なリソースに関する第2制約条件と、評価値を用いて算出される総合評価値とを用いて、複数の設備について、保守日時、リソースの割り当て、及びリストの組合せである保守計画を探索する第2最適化問題として、保守計画を複数生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスの実施に用いられ、複数の機器から構成される設備の保守計画を生成する保守計画立案支援システムであって、
プロセッサ、前記プロセッサに接続される記憶装置、及び前記プロセッサに接続されるインタフェースを有する計算機を備え、
複数の前記設備を運用するシステムと接続し、
前記設備の前記複数の機器の各々の推奨保守時期を管理するための機器状態情報を保持し、
前記推奨保守時期は、前記機器の保守に要するコストが低く、かつ、前記機器の故障率が低くなる時期であり、
前記プロセッサは、
前記設備の不具合発生の確率に関する第1制約条件と、前記推奨保守時期からずれた時期での前記機器の保守による経済的損失を評価する設備保守費用損失を用いて算出される評価値とを用いて、保守時期に保守を行う前記設備の前記機器の組合せである保守機器リストを探索する第1最適化問題として、前記設備毎に、前記保守機器リストを複数生成する第1処理と、
前記設備の不具合発生の確率の合計及び前記機器の保守に必要なリソースに関する第2制約条件と、前記評価値を用いて算出される総合評価値とを用いて、前記複数の設備の各々について、保守日時、前記リソースの割り当て、及び前記保守機器リストの組合せである保守計画を探索する第2最適化問題として、前記保守計画を複数生成する第2処理と、
を実行することを特徴とする保守計画立案支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の保守計画立案支援システムであって、
前記プロセッサは、前記第1処理において、
前記設備の候補保守機器リストを生成し、
前記設備の前記複数の機器の各々について、前記推奨保守時期に保守した場合の単位時間あたりの保守費用の最小値を第1最小費用として算出し、
前記設備の前記複数の機器の各々について、前記保守期間に保守した場合の単位時間あたりの保守費用を第1比較用費用として算出し、
前記設備の前記複数の機器の各々について、前記第1比較用費用及び前記第1最小費用の差を機器保守費用損失として算出し、
前記設備の前記複数の機器の前記機器保守費用損失の合計を前記設備保守費用損失として算出し、
前記候補保守機器リストの保守対象の前記機器の保守の作業量と、前記設備保守費用損失とを用いて前記評価値を算出し、
前記第1制約条件及び前記評価値を用いた前記第1最適化問題を解くことによって、新たな前記候補保守機器リストを生成し、
前記プロセッサは、前記第2処理において、
前記複数の設備の各々について、候補保守計画を生成し、
前記複数の候補保守計画の各々の前記保守機器リストに対応する前記評価値の合計を、前記総合評価値として算出し、
前記第2制約条件及び前記総合評価値を用いた前記第2最適化問題を解くことによって、新たな前記候補保守計画群を生成することを特徴とする保守計画立案支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の保守計画立案支援システムであって、
前記プロセッサは、前記第1処理において、
前記推奨保守時期に、前記候補保守機器リストの全ての保守対象の前記機器を保守した場合の単位時間あたりの作業の費用の最小値を第2最小費用として算出し、
前記保守時期に、前記候補保守機器リストの全ての保守対象の機器を保守した場合の単位時間あたりの作業の費用を第2比較用費用として算出し、
前記第2比較用費用及び前記第2最小費用の差を、同時に複数の前記機器を保守した場合の保守費用の低減効果を評価する設備保守費用補正値として算出し、
前記設備保守費用損失と、前記設備保守費用補正値とを足し合わせて前記評価値を算出することを特徴とする保守計画立案支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の保守計画立案支援システムであって、
前記設備の保守期限を管理するための情報を保持し、
前記プロセッサは、前記第2処理において、
前記保守期限に、前記設備の前記保守機器リストの全ての保守対象の前記機器を保守した場合の単位時間あたりの保守費用を第3最小費用として算出し、
前記保守期間に、前記設備の前記保守機器リストの全ての保守対象の前記機器を保守した場合の単位時間あたりの保守費用を第3比較用費用として算出し、
前記第3比較用費用及び前記第3最小費用の差を、前記保守期限より短い間隔で保守を行った場合の経済的損失を評価する第2設備保守費用損失として算出し、
前記複数の候補保守計画の各々の前記保守機器リストに対応する前記評価値及び前記第2設備保守費用損失の合計を、前記総合評価値として算出することを特徴とする保守計画立案支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の保守計画立案支援システムであって、
前記プロセッサは、
前記設備を選択し、
保守候補時期を生成し、
選択した前記設備の前記複数の機器の各々について、前記保守候補時期に保守した場合の故障率の合計値を、設備故障率として算出し、
選択した前記設備の前記複数の機器の各々について、前記保守候補時期に保守した場合の単位時間あたりの保守費用の合計を第2評価値として算出し、
前記設備故障率に関する制約条件及び前記第2評価値を用いて、選択した前記設備の前記複数の機器の前記保守候補期間を探索する第3最適化問題として、前記保守候補期間を決定し、
前記第3最適化問題の実行結果である前記保守候補期間を、前記推奨保守時期として前記機器状態情報に登録することを特徴とする保守計画立案支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の保守計画立案支援システムであって、
前記設備の運用計画を管理する運用情報を保持し、
前記プロセッサは、
前記第2制約条件を満たさない前記保守計画が存在する場合、運用開始日時が古い前記設備の運用計画と、運用開始日時が新しい前記設備の運用計画とを入れ替える前記運用情報の更新を実行し、
前記第1処理及び前記第2処理を再度実行することを特徴とする保守計画立案支援システム。
【請求項7】
保守計画立案支援システムが実行する、サービスの実施に用いられ、複数の機器から構成される設備の保守計画の生成方法であって、
前記保守計画立案支援システムは、
プロセッサ、前記プロセッサに接続される記憶装置、及び前記プロセッサに接続されるインタフェースを有する計算機を含み、
複数の前記設備を運用するシステムと接続し、
前記設備の前記複数の機器の各々の推奨保守時期を管理するための機器状態情報を保持し、
前記推奨保守時期は、前記機器の保守に要するコストが低く、かつ、前記機器の故障率が低くなる時期であり、
前記保守計画の生成方法は、
前記プロセッサが、前記設備の不具合発生の確率に関する第1制約条件と、前記推奨保守時期からずれた時期での前記機器の保守による経済的損失を評価する設備保守費用損失を用いて算出される評価値とを用いて、保守時期に保守を行う前記設備の前記機器の組合せである保守機器リストを探索する第1最適化問題として、前記設備毎に、前記保守機器リストを複数生成する第1のステップと、
前記プロセッサが、前記設備の不具合発生の確率の合計及び前記機器の保守に必要なリソースに関する第2制約条件と、前記評価値を用いて算出される総合評価値とを用いて、前記複数の設備の各々について、保守日時、前記リソースの割り当て、及び前記保守機器リストの組合せである保守計画を探索する第2最適化問題として、前記保守計画を複数生成する第2のステップと、
を含むことを特徴とする保守計画の生成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の保守計画の生成方法であって、
前記第1のステップは、
前記プロセッサが、前記設備の候補保守機器リストを生成するステップと、
前記プロセッサが、前記設備の前記複数の機器の各々について、前記推奨保守時期に保守した場合の単位時間あたりの保守費用の最小値を第1最小費用として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記設備の前記複数の機器の各々について、前記保守期間に保守した場合の単位時間あたりの保守費用を第1比較用費用として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記設備の前記複数の機器の各々について、前記第1比較用費用及び前記第1最小費用の差を機器保守費用損失として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記設備の前記複数の機器の前記機器保守費用損失の合計を前記設備保守費用損失として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記候補保守機器リストの保守対象の前記機器の保守の作業量と、前記設備保守費用損失とを用いて前記評価値を算出するステップと、
前記プロセッサが、前記第1制約条件及び前記評価値を用いた前記第1最適化問題を解くことによって、新たな前記候補保守機器リストを生成するステップと、を含み、
前記第2のステップは、
前記プロセッサが、前記複数の設備の各々について、候補保守計画を生成するステップと、
前記プロセッサが、前記複数の候補保守計画の各々の前記保守機器リストに対応する前記評価値の合計を、前記総合評価値として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記第2制約条件及び前記総合評価値を用いた前記第2最適化問題を解くことによって、新たな前記候補保守計画群を生成するステップと、を含むことを特徴とする保守計画の生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の保守計画の生成方法であって、
前記第1のステップは、
前記プロセッサが、前記推奨保守時期に、前記候補保守機器リストの全ての保守対象の前記機器を保守した場合の単位時間あたりの作業の費用の最小値を第2最小費用として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記保守時期に、前記候補保守機器リストの全ての保守対象の機器を保守した場合の単位時間あたりの作業の費用を第2比較用費用として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記第2比較用費用及び前記第2最小費用の差を、同時に複数の前記機器を保守した場合の保守費用の低減効果を評価する設備保守費用補正値として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記設備保守費用損失と、前記設備保守費用補正値とを足し合わせて前記評価値を算出するステップと、を含むことを特徴とする保守計画の生成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の保守計画の生成方法であって、
前記保守計画立案支援システムは、前記設備の保守期限を管理するための情報を保持し、
前記第2のステップは、
前記プロセッサが、前記保守期限に、前記設備の前記保守機器リストの全ての保守対象の前記機器を保守した場合の単位時間あたりの保守費用を第3最小費用として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記保守期間に、前記設備の前記保守機器リストの全ての保守対象の前記機器を保守した場合の単位時間あたりの保守費用を第3比較用費用として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記第3比較用費用及び前記第3最小費用の差を、前記保守期限より短い間隔で時期に保守を行った場合の経済的損失を評価する第2設備保守費用損失として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記複数の候補保守計画の各々の前記保守機器リストに対応する前記評価値及び前記第2設備保守費用損失の合計を、前記総合評価値として算出するステップと、を含むことを特徴とする保守計画の生成方法。
【請求項11】
請求項7に記載の保守計画の生成方法であって、
前記プロセッサが、前記設備を選択するステップと、
前記プロセッサが、保守候補時期を生成するステップと、
前記プロセッサが、選択した前記設備の前記複数の機器の各々について、前記保守候補時期に保守した場合の故障率の合計値を、設備故障率として算出するステップと、
前記プロセッサが、選択した前記設備の前記複数の機器の各々について、前記保守候補時期に保守した場合の単位時間あたりの保守費用の合計を第2評価値として算出するステップと、
前記プロセッサが、前記設備故障率に関する制約条件及び前記第2評価値を用いて、選択した前記設備の前記複数の機器の前記保守候補期間を探索する第3最適化問題として、前記保守候補期間を決定するステップと、
前記プロセッサが、前記第3最適化問題の実行結果である前記保守候補期間を、前記推奨保守時期として前記機器状態情報に登録するステップと、を含むことを特徴とする保守計画の生成方法。
【請求項12】
請求項7に記載の保守計画の生成方法であって、
前記保守計画立案支援システムは、前記設備の運用計画を管理する運用情報を保持し、
前記プロセッサが、前記第2制約条件を満たさない前記保守計画が存在する場合、運用開始日時が古い前記設備の運用計画と、運用開始日時が新しい前記設備の運用計画とを入れ替える前記運用情報の更新を実行するステップと、
前記プロセッサが、再度、前記第1のステップ及び前記第2のステップを実行することを特徴とする保守計画の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機器から構成される設備の保守計画の立案を支援するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モビリティ事業者は、安全性の確保及び安定した輸送を実現するために、複数の機器から構成される車両設備の保守を実施する。保守では、車両設備の各機器を検査し、検査で得た計測値が閾値より大きい場合、又は、各機器が保守時期に達した場合、機器の交換又は修繕が行われる。各機器の閾値及び交換周期は、機器の製造業者又はモビリティ事業者によって設定される。以下、本明細書では、検査、及び交換又は修繕の一連の行為を保守と記載する。
【0003】
保守計画を生成する技術として例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020―004403号公報
【特許文献2】特開2022-181069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術を組み合わせれば、リスク及びコストを考慮し、かつ、制約違反が小さい保守計画を立案できる。しかし、設備の保守を実施するためのリソースに関する制約に違反がある場合、作業時間及び実施場所を十分に確保できないため保守の遅延が発生する。
【0006】
モビリティ事業者が運用する車両設備は、保守後に運用する場合が多いため、保守の遅延は車両の運用計画に影響を及ぼす。これによって、保守作業及び車両運用の計画を調整する手間が発生する。そのため、上述の技術を用いて立案した保守計画は、実態としてリスク及びコストの観点から最適な計画とはならない。
【0007】
本発明は、リソースの制約を満たし、かつ、保守に要するコストが小さい保守計画の立案を支援する技術を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、サービスの実施に用いられ、複数の機器から構成される設備の保守計画を生成する保守計画立案支援システムであって、プロセッサ、前記プロセッサに接続される記憶装置、及び前記プロセッサに接続されるインタフェースを有する計算機を備え、複数の前記設備を運用するシステムと接続し、前記設備の前記複数の機器の各々の推奨保守時期を管理するための機器状態情報を保持し、前記推奨保守時期は、前記機器の保守に要するコストが低く、かつ、前記機器の故障率が低くなる時期であり、前記プロセッサは、前記設備の不具合発生の確率に関する第1制約条件と、前記推奨保守時期からずれた時期での前記機器の保守による経済的損失を評価する設備保守費用損失を用いて算出される評価値とを用いて、保守時期に保守を行う前記設備の前記機器の組合せである保守機器リストを探索する第1最適化問題として、前記設備毎に、前記保守機器リストを複数生成する第1処理と、前記設備の不具合発生の確率の合計及び前記機器の保守に必要なリソースに関する第2制約条件と、前記評価値を用いて算出される総合評価値とを用いて、前記複数の設備の各々について、保守日時、前記リソースの割り当て、及び前記保守機器リストの組合せである保守計画を探索する第2最適化問題として、前記保守計画を複数生成する第2処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リソースの制約を満たし、かつ、保守に要するコストが小さい保守計画を立案することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の保守計画立案支援システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】実施例1の保守計画立案支援システムを構成する計算機のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】実施例1のサービス運用情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】実施例1の線路状態情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図5】実施例1の車両設備運用情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図6】実施例1の機器状態情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】実施例1の機器仕様情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図8】実施例1の保守作業情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図9】実施例1の作業番線情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図10】実施例1の作業員情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図11】実施例1の保守期限情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図12】実施例1の保守機器リスト情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図13】実施例1の保守計画情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図14】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する処理を説明するフローチャートである。
【
図15】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する走行負荷算出処理を説明するフローチャートである。
【
図16】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する推奨保守期間算出処理を説明するフローチャートである。
【
図17】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する保守機器リストの最適化処理を説明するフローチャートである。
【
図18】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する保守評価値算出処理を説明するフローチャートである。
【
図19】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する保守計画最適化処理を説明するフローチャートである。
【
図20】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する総合評価値算出処理を説明するフローチャートである。
【
図21】実施例1の保守計画立案支援システムが実行する調整処理を説明するフローチャートである。
【
図22】実施例1の保守計画立案支援システムが提示する画面の一例を示す図である。
【
図23】実施例2の保守機器リスト情報のデータ構造の一例を示す図である。
【
図24】実施例2の保守計画立案支援システムが実行する保守評価値算出処理を説明するフローチャートである。
【
図25】実施例2の保守計画立案支援システムが実行する総合評価値算出処理を説明するフローチャートである。
【
図26】実施例2の保守計画立案支援システムが提示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0012】
以下に説明する発明の構成において、同一又は類似する構成又は機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数又は順序を限定するものではない。
【0014】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、及び範囲等は、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、及び範囲等を表していない場合がある。したがって、本発明では、図面等に開示された位置、大きさ、形状、及び範囲等に限定されない。
【0015】
本発明の実施例では、モビリティ事業の一例として鉄道事業を想定する。なお、本発明は、モビリティ事業の種別に限定されない。
【0016】
ここで、車両設備の保守計画の立案における課題を説明する。車両設備の数、車両設備を構成する機器の数、保守期間の数が多い場合、考えられる保守計画の数は非常に多くなる。モビリティ事業者が有する保守作業のリソースには上限が存在する。また、一つの車両設備について、各保守時期の保守機器を決定する必要がある。そのため、ある車両のある保守時期の保守機器を決定するためには、車両設備間及び保守時期間で調整を行う必要がある。
【0017】
例えば、n個の機器から構成される設備がN個あり、保守期間がP個ある場合、考慮すべき組合せパターンの数は2^(N×n×P)となる。
【0018】
したがって、現実的な計算量で保守計画を立案するためには、リソースの制約を考慮した上で、「各車両設備の保守機器のパターンを生成」及び「保守時期に採用するパターンの選択」を別々の問題として解くことが必要である。
【0019】
具体的には、各車両設備について複数の保守機器のパターンを生成し、ある保守時期において各車両設備の保守機器パターンを選択する。各車両についてC個の保守機器パターンが生成されている場合、保守時期に考慮すべき組合せパターンの数はNCとなる。一つの保守時期について保守機器パターンを選択する操作を繰り返し実行する。これによって、中長期的な保守計画を立案できる。
【0020】
しかし、上記手法では、機器が中長期視点で適正な時期に保守されない可能性がある。機器の最適保守時期は保守のコスト及び故障特性を考慮して定められている。すなわち、保守のコスト及び故障のリスクがともに小さくなるように定められている。したがって、最適保守時期において機器の保守を実施することが望ましい。しかし、リスク及びコストに基づいて一つの保守時期の保守計画を繰り返し生成すると、各機器を最適保守時期で保守することができなくなる。
【0021】
(ケース1)リソースの制約を満たしつつ、リスクが小さくなるように、各車両設備の保守機器を選択する場合を考える。この場合、保守時期において故障率が高い機器が優先的に保守の対象として選択され、一方、保守時期において故障率が低い機器は最適保守時期を過ぎても保守されない。すなわち、保守時期のリスクを減らすように保守機器を選択する処理を繰り返すと、各機器は最適保守時期で保守されなくなる。
【0022】
(ケース2)車両設備のリスクを一定水準以下に抑えつつ、コストを小さくするように各車両設備の保守機器を選択する場合を考える。この場合、保守コストが低い機器が優先的に保守される。一方、保守コストが高い機器はリスクが高くなっても保守されない。すなわち、保守時期のコストを減らすように保守機器を選択する処理を繰り返すと、各機器は最適保守時期で保守されなくなる。
【0023】
以上のように、単純なリスク及びコスト等の評価指標に基づいて各車両設備の保守機器の選択を繰り返す手法では、各機器を最適保守時期で保守できなくなる。
【0024】
実施例では、複数の機器から構成される車両設備を用いた鉄道事業を想定する。車両設備の保守は車両基地にて行われるものとする。車両基地には車両設備の保守を行う線路(番線)が複数あるものとする。車両基地での保守作業は作業員によって行われる。番線及び作業員は保守に用いるリソースとして扱われる。
【実施例0025】
図1は、実施例1の保守計画立案支援システムの構成の一例を示す図である。
図2は、実施例1の保守計画立案支援システムを構成する計算機のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0026】
保守計画立案支援システム100は、
図2に示すような計算機200から構成される。保守計画立案支援システム100を構成する計算機200の数は限定されない。
【0027】
計算機200は、プロセッサ201、主記憶装置202、補助記憶装置203、入力装置204、表示装置205、及び通信装置206を備える。各ハードウェア要素はバスを介して互いに接続される。
【0028】
入力装置204は、キーボード及びマウス等であり、データ及び指示の入力を受け付ける。保守業務の管理者は、入力装置204を操作して、保守計画の生成を指示する。保守計画立案支援システム100は、当該指示を受け付けた場合、車両設備の機器のリスク及びコスト、並びに、車両基地のリソースを考慮した保守計画を立案する。表示装置205は、ディスプレイ等であり、設定情報及び処理結果等を表示する。
【0029】
主記憶装置202は、メモリ等であり、プロセッサ201が実行するプログラム及びプログラムが使用するデータを格納する。主記憶装置202は、ワークエリアとしても用いられる。補助記憶装置203は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等であり、プログラム及び情報を永続的に格納する。
【0030】
補助記憶装置203は、保守機器リスト生成部101及び保守計画生成部102を実現するプログラムを格納する。また、補助記憶装置203は、サービス運用情報131、線路状態情報132、車両設備運用情報133、機器状態情報134、機器仕様情報135、保守作業情報136、作業番線情報137、作業員情報138、保守期限情報139、保守機器リスト情報140、及び保守計画情報141を格納する。
【0031】
プロセッサ201は、プログラムを実行することによって、特定の機能を実現する機能部(モジュール)として動作する。以下の説明では、機能部を主語に処理を説明する場合、プロセッサ201が当該機能部を実現するプログラムを実行していることを示す。
【0032】
通信装置206は、車両設備又はモビリティサービスを管理するシステムと通信する。
【0033】
ここで、
図3から
図13を用いて、保守計画立案支援システム100が保持する情報について説明する。
【0034】
図3は、実施例1のサービス運用情報131のデータ構造の一例を示す図である。
【0035】
サービス運用情報131は、モビリティサービスの運用計画を管理するための情報である。サービス運用情報131は、運用計画ID301、開始駅302、終了駅303、線路区間ID304、往復数305、運用方法306、及び運用負荷値307を含むエントリを格納する。一つの運用計画に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0036】
運用計画ID301は、運用計画のIDを格納するフィールドである。開始駅302は、運用計画の開始時に車両設備が存在する駅を格納するフィールドである。終了駅303は、運用計画の終了時に車両設備が存在する駅を格納するフィールドである。線路区間ID304は、車両設備が走行する区間(線路区間)のIDを格納するフィールドであり、後述する線路区間ID401と同一のフィールドである。往復数305は、車両設備が線路区間を往復する回数を格納するフィールドである。運用方法306は、車両設備の運用方法を格納するフィールドである。運用負荷値307は、運用計画の負荷を表す値(運用負荷値)を格納するフィールドである。
【0037】
サービス運用情報131は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。なお、運用負荷値307には、保守計画立案支援システム100によって算出された値が格納される。
【0038】
図4は、実施例1の線路状態情報132のデータ構造の一例を示す図である。
【0039】
線路状態情報132は、線路区間の状態を管理するための情報である。線路状態情報132は、線路区間ID401、線路区間402、区間距離403、設置日時404、検査日時405、及び劣化係数406を含むエントリを格納する。一つの線路区間に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0040】
線路区間ID401は、線路区間のIDを格納するフィールドである。線路区間402は、線路区間を格納するフィールドである。例えば、駅の組合せが線路区間を表す情報として格納される。区間距離403は、線路区間の距離を格納するフィールドである。設置日時404は、線路区間の線路が設置された日時を格納するフィールドである。検査日時405は、線路区間の線路が検査された日時を格納するフィールドである。検査日時405には、直近の検査日時が格納される。劣化係数406は、線路区間の線路の劣化が車両設備の走行に与える影響を表す劣化係数を格納するフィールドである。
【0041】
線路状態情報132は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。
【0042】
図5は、実施例1の車両設備運用情報133のデータ構造の一例を示す図である。
【0043】
車両設備運用情報133は、車両設備の運行を管理するための情報である。車両設備運用情報133は、車両設備ID501、負荷低減対象502、及び運用計画503を含むエントリを格納する。一つの車両設備に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0044】
車両設備ID501は、車両設備のIDを格納するフィールドである。負荷低減対象502は、保守計画立案支援システム100が使用するフラグを格納するフィールドである。負荷低減対象502には初期値として「無」が設定される。運用計画503は、車両設備が実施する運用計画のIDを格納するフィールドである。運用計画503は日時を表す列を含み、各列には、運用計画のIDが格納される。
【0045】
車両設備運用情報133は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。
【0046】
図6は、実施例1の機器状態情報134のデータ構造の一例を示す図である。
【0047】
機器状態情報134は、車両設備の機器の状態を管理するための情報である。機器状態情報134は、機器ID601、車両設備ID602、使用開始日時603、保守日時604、故障日時605、走行負荷累積値606、走行負荷予測値607、最適保守日時608、開始日時609、及び終了日時610を含むエントリを格納する。機器及び車両設備の組合せに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0048】
機器ID601は、車両設備の機器のIDを格納するフィールドである。本実施例では、機器のIDは機器の種別と機器の個別の番号とから構成される。車両設備ID602は車両設備ID501と同一のフィールドである。
【0049】
使用開始日時603は、機器の使用を開始した日時を格納するフィールドである。保守日時604は、故障前に保守が行われた日時を格納するフィールドである。故障日時605は、機器が故障した日時を格納するフィールドである。
【0050】
走行負荷累積値606は、使用開始日時から現在までの走行負荷の累積値を格納するフィールドである。走行負荷予測値607は、現在から保守時期までの走行負荷の予測値を格納するフィールドである。
【0051】
最適保守日時608は、保守のコスト及び故障のリスクの観点から決定される、機器の最適な交換日時を格納するフィールドである。開始日時609及び終了日時610は、機器の保守が推奨される期間(推奨保守期間)の開始日時及び終了日時を格納するフィールドである。
【0052】
機器状態情報134は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。なお、走行負荷累積値606、走行負荷予測値607、最適保守日時608、開始日時609、及び終了日時610は、保守計画立案支援システム100によって算出された値が格納される。
【0053】
図7は、実施例1の機器仕様情報135のデータ構造の一例を示す図である。
【0054】
機器仕様情報135は、機器の仕様を管理するための情報である。機器仕様情報135は、機器種別ID701、故障損失費用702、保守費用703、寿命パラメータ704、保守機能リスト705、及び保守作業リスト706を含むエントリを格納する。一種類の機器に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0055】
機器種別ID701は、機器の種別を表すIDを格納するフィールドである。故障損失費用702は、機器の故障によって発生する経済的な損失を格納するフィールドである。保守費用703は、機器の保守に要する費用を格納するフィールドである。
【0056】
寿命パラメータ704は、機器の寿命モデルを表すパラメータを格納するフィールド群である。本実施例では、ワイブル分布に従う寿命モデルのパラメータが格納される。
【0057】
保守機能リスト705は、機器の保守を行う番線に必要な機能に関する情報を格納するフィールドである。本実施例では、機能を表す列を含む。各列には、機能が必要でないことを示す「0」又は機能が必要であることを示す「1」のいずれかが設定される。
【0058】
保守作業リスト706は、機器の保守において実施が必要な作業に関する情報を格納するフィールドである。本実施例では、作業を表す列を含む。各列には、作業の実施が必要でないことを示す「0」又は作業の実施が必要であることを示す「1」のいずれかが設定される。
【0059】
機器仕様情報135は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。
【0060】
図8は、実施例1の保守作業情報136のデータ構造の一例を示す図である。
【0061】
保守作業情報136は、保守作業の詳細を管理するための情報である。保守作業情報136は、保守作業ID801、作業内容802、作業量803、並列作業ID804、及び作業費用805を含むエントリを格納する。一つの保守作業に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0062】
保守作業ID801は、保守作業のIDを格納するフィールドである。作業内容802は、保守作業の具体的な内容を格納するフィールドである。作業量803は、保守作業の作業量を格納するフィールドである。作業量803には保守作業の実施時間が格納される。並列作業ID804は、並列で実施可能な保守作業を管理するためのIDを格納するフィールドである。並列で実施可能な保守作業には同一のIDが設定される。作業費用805は、保守作業の費用を格納するフィールドである。
【0063】
保守作業情報136は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。
【0064】
図9は、実施例1の作業番線情報137のデータ構造の一例を示す図である。
【0065】
作業番線情報137は、作業番線を管理するための情報である。作業番線情報137は、番線ID901、保守機能リスト902、及び滞在可能時間903を含むエントリを格納する。一つの作業番線に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0066】
番線ID901は、作業番線のIDを格納するフィールドである。保守機能リスト902は、機器の保守に用いる機能の有無に関する情報を格納するフィールドである。本実施例では、機能を表す列を含む。各列には、機能を有しないことを示す「0」又は機能を有することを示す「1」のいずれかが設定される。滞在可能時間903は、作業番線の使用が可能な時間を格納するフィールドである。滞在可能時間903は日時を表す列を含み、各列には作業番線の使用が可能な時間が格納される。
【0067】
作業番線情報137は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。
【0068】
図10は、実施例1の作業員情報138のデータ構造の一例を示す図である。
【0069】
作業員情報138は、保守作業を実施する作業員を管理するための情報である。作業員情報138は、作業員ID1001及び勤務スケジュール1002を含むエントリを格納する。一人の作業員に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0070】
作業員ID1001は、作業員のIDを格納するフィールドである。勤務スケジュール1002は、作業員が作業可能な時間を格納するフィールドである。勤務スケジュール1002は日時を表す列を含み、各列には作業員の作業可能時間が格納される。
【0071】
作業員情報138は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。
【0072】
図11は、実施例1の保守期限情報139のデータ構造の一例を示す図である。
【0073】
保守期限情報139は、車両設備の保守期限を管理するための情報である。保守期限情報139は、車両設備ID1101、運用開始日時1102、保守日時1103、及び保守期限1104を含むエントリを格納する。一つの車両設備に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0074】
車両設備ID1101は車両設備ID501と同一のフィールドである。運用開始日時1102は、車両設備の運用を開始した日時を格納するフィールドである。保守日時1103は、保守が行われた日時を格納するフィールドである。保守日時1103には、最新の保守の実施日時が格納される。保守期限1104は、保守の実施期限となる日時を格納するフィールドである。
【0075】
保守期限情報139は、予め設定されてもよいし、外部から取得してもよい。
【0076】
図12は、実施例1の保守機器リスト情報140のデータ構造の一例を示す図である。
【0077】
保守機器リスト情報140は、保守計画立案支援システム100によって生成された保守を行う機器のリストを管理するための情報である。一つの車両設備に対して複数の保守機器リストが生成される場合もある。
【0078】
保守機器リスト情報140は、リストID1201、車両設備ID1202、保守機器リスト1203、設備保守費用損失1204、機器保守費用損失1205、設備故障率1206、設備保守費用1207、設備作業量1208、番線滞在時間1209、及び保守機能リスト1210を含むエントリを格納する。車両設備及び保守機器リストの組合せに対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0079】
リストID1201は、保守機器リストのIDを格納するフィールドである。車両設備ID1202は車両設備ID501と同一のフィールドである。保守機器リスト1203は、保守を行う機器(保守機器)のリストを格納するフィールドである。保守機器リスト1203には、機器のIDのリストが格納される。
【0080】
設備保守費用損失1204は、設備保守費用損失を格納するフィールドである。設備保守費用損失の詳細は後述する。機器保守費用損失1205は、機器保守費用損失を格納するフィールドである。機器保守費用損失の詳細は後述する。設備故障率1206は、車両設備の保守後の故障率を格納するフィールドである。
【0081】
設備保守費用1207は、全ての保守機器を保守した場合の費用を格納するフィールドである。設備作業量1208は、全ての保守機器を保守した場合の作業量を格納するフィールドである。番線滞在時間1209は、全ての保守機器を保守した場合の番線の滞在時間を格納するフィールドである。保守機能リスト1210は、全ての保守機器を保守する場合に必要な保守機能のリストを格納するフィールドである。本実施例では、機能を表す列を含む。各列には、機能が必要でないことを示す「0」又は機能が必要であることを示す「1」のいずれかが設定される。
【0082】
図13は、実施例1の保守計画情報141のデータ構造の一例を示す図である。
【0083】
保守計画情報141は、保守計画立案支援システム100によって生成されたシステムの保守計画を管理するための情報である。システムの保守計画は各車両設備の保守計画から構成される。保守計画情報141は、計画ID1301、車両設備ID1302、保守予定日時1303、番線ID1304、リストID1305、及び保守評価値1306を含む。一つの保守対象の車両設備に対して一つのエントリが存在する。なお、エントリに含まれるフィールドは一例であってこれに限定されない。前述したフィールドのいずれかを含まなくてもよいし、また、他のフィールドを含んでもよい。
【0084】
計画ID1301は、車両設備の保守計画のIDを格納するフィールドである。車両設備ID1302は保守を行う車両設備のIDを格納するフィールドである。保守予定日時1303は、保守を行う予定日時を格納するフィールドである。番線ID1304は、保守で使用する番線のIDを格納するフィールドである。リストID1305は、保守機器リストのIDを格納するフィールドである。保守評価値1306は、保守評価値を格納するフィールドである。
【0085】
図14は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する処理を説明するフローチャートである。
【0086】
保守計画立案支援システム100は、保守計画を生成する期間(立案期間)に関する情報等を受け付けた場合、以下で説明する処理を開始する。
【0087】
保守機器リスト生成部101は、車両設備を構成する機器の運用及び劣化の状態に関する情報を受け付け、各車両設備の保守機器リストを生成する。保守機器リスト生成部101は、負荷算出部111、推奨保守期間算出部112、保守機器リスト最適化部113、及び保守評価値算出部114を含む。
【0088】
負荷算出部111は、車両設備の走行負荷を算出する。推奨保守期間算出部112は、機器の推奨保守期間を算出する。保守機器リスト最適化部113は、保守評価値算出部114によって算出される第1保守評価値に基づいて、各車両設備の保守機器リストを生成する。保守評価値算出部114は、保守機器リストを評価する保守評価値を算出する。
【0089】
保守計画生成部102は、車両設備の保守機器リスト及びリソースの制約に関する情報を受け付け、リソースの制約を満たし、かつ、リスク及びコストを考慮して、車両設備の保守計画を生成する。車両設備の保守計画は、車両設備、保守日時、番線、及び保守機器リストから構成される。保守計画生成部102は、保守計画最適化部121、総合評価値算出部122、及び調整部123を含む。
【0090】
保守計画最適化部121は、総合評価値算出部122によって算出される総合評価値に基づいて、各車両設備の保守計画を生成する。総合評価値算出部122は、保守計画を評価する総合評価値を算出する。調整部123は、制約を満たすシステムの保守計画を生成できない場合、車両設備間で運用計画を調整する。
【0091】
まず、保守計画立案支援システム100が実行する処理の概要を説明する。保守計画立案支援システム100には、保守を実施する期間である保守時期に関する情報が設定されているものとする。保守時期は一定の時間間隔で設定されているものとする。
【0092】
負荷算出部111は、走行負荷算出処理を実行する(ステップS100)。次に、推奨保守期間算出部112は、推奨保守期間算出処理を実行する(ステップS200)。次に、保守機器リスト最適化部113は、保守機器リスト最適化処理を実行する(ステップS300)。保守機器リスト最適化処理では、保守評価値算出部114によって保守評価値算出処理が実行される(ステップS400)。
【0093】
次に、保守計画最適化部121は、保守計画最適化処理を実行する(ステップS500)。保守計画最適化処理では、総合評価値算出部122によって総合評価値算出処理が実行される(ステップS600)。
【0094】
保守計画最適化部121は、制約を満たすか否かを判定する(ステップS700)。
【0095】
制約を満たす場合、保守計画立案支援システム100は一連の処理を終了する。
【0096】
制約を満たさない場合、調整部123は、調整処理を実行する(ステップS800)。その後、保守計画立案支援システム100はステップS100に戻り、同様の処理を実行する。
【0097】
次に、保守計画立案支援システム100が実行する各処理の詳細について説明する。
【0098】
図15は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する走行負荷算出処理を説明するフローチャートである。
【0099】
負荷算出部111は、線路状態及び運用方法等に基づいて、各運用計画の運用負荷値を算出する(ステップS101)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0100】
(S101-1)負荷算出部111は、サービス運用情報131から一つの運用計画(エントリ)を選択する。負荷算出部111は、運用計画の往復数305の値を取得する。
【0101】
(S101-2)負荷算出部111は、線路状態情報132を参照し、線路区間ID401の値が、選択した運用計画の線路区間ID304の値と一致するエントリを検索する。負荷算出部111は、検索されたエントリの区間距離403及び劣化係数406の値を取得する。
【0102】
(S101-3)負荷算出部111は、往復数、区間距離、及び劣化係数を乗算した値を運用負荷値として算出する。負荷算出部111は、運用計画の運用負荷値307に算出した値を設定する。
【0103】
(S101-4)負荷算出部111は、全ての運用計画について処理が完了したか否かを判定する。全ての運用計画について処理が完了していない場合、負荷算出部111はS101-1に戻る。全ての運用計画について処理が完了した場合、負荷算出部111はステップS101の処理を終了する。
【0104】
次に、負荷算出部111は、各車両設備の走行負荷予測値を算出する(ステップS102)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0105】
(S102-1)負荷算出部111は、車両設備運用情報133から一つの車両設備(エントリ)を選択する。負荷算出部111は、エントリの運用計画503から、現在から立案期間の終了日時まで期間の運用計画を取得する。
【0106】
(S102-2)負荷算出部111は、運用計画のIDに基づいてサービス運用情報131を参照し、対応するエントリの運用負荷値307から値を取得する。
【0107】
(S102-3)負荷算出部111は、各運用計画の運用負荷値の合計を走行負荷予想値として算出する。負荷算出部111は、機器状態情報134を参照し、車両設備ID602に選択した車両設備のIDが格納される全てのエントリの走行負荷予測値607に、算出した値を設定する。
【0108】
(S102-4)負荷算出部111は、全ての車両設備について処理が完了したか否かを判定する。全ての車両設備について処理が完了していない場合、負荷算出部111はS102-1に戻る。全ての車両設備について処理が完了した場合、負荷算出部111はステップS102の処理を終了する。
【0109】
次に、負荷算出部111は、各車両設備について、機器の走行負荷累積値を算出する(ステップS103)。その後、負荷算出部111は走行負荷算出処理を終了する。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0110】
(S103-1)負荷算出部111は、車両設備運用情報133から一つの車両設備(エントリ)を選択する。
【0111】
(S103-2)負荷算出部111は、機器状態情報134を参照し、車両設備ID602に選択した車両設備のIDが格納されるエントリを検索し、エントリのIDのリストを生成する。
【0112】
(S103-3)負荷算出部111は、リストから一つのエントリ(機器)を選択する。
【0113】
(S103-4)負荷算出部111は、機器の運用期間を算出する。ここでは、使用開始日時603に格納される日時から現在の日時までが運用期間として算出される。
【0114】
(S103-5)負荷算出部111は、エントリの運用計画503を参照し、運用期間に実施された運用計画を特定する。負荷算出部111は、特定された運用計画の運用負荷値の合計値を走行負荷累積値として算出する。負荷算出部111は、機器のエントリの走行負荷累積値606に、算出した値を設定する。
【0115】
(S103-6)負荷算出部111は、リストの全てのエントリについて処理が完了したか否かを判定する。リストの全てのエントリについて処理が完了していない場合、負荷算出部111はS103-3に戻る。
【0116】
(S103-7)リストの全てのエントリについて処理が完了した場合、負荷算出部111は、全ての車両設備について処理が完了したか否かを判定する。全ての車両設備について処理が完了していない場合、負荷算出部111はS103-1に戻る。全ての車両設備について処理が完了した場合、負荷算出部111はステップS103の処理を終了する。
【0117】
以上で説明したように、負荷算出部111は、線路状態及び運用計画に基づいて、車両設備を構成する機器の走行負荷の累積値及び予測値を算出することができる。
【0118】
図16は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する推奨保守期間算出処理を説明するフローチャートである。
【0119】
推奨保守期間算出部112は、車両設備運用情報133から一つの車両設備(エントリ)を選択する(ステップS201)。
【0120】
推奨保守期間算出部112は、選択した車両設備の機器の故障曲線を算出する(ステップS202)。ここでは、機器の故障率の分布はワイブル分布にしたがうものとする。なお、故障率の分布はワイブル分布以外の統計分布にしたがってもよい。以下、ステップS202の詳細を説明する。
【0121】
(S202-1)推奨保守期間算出部112は、機器状態情報134を参照し、車両設備ID602に選択した車両設備のIDが格納されるエントリを検索し、エントリのIDのリストを生成する。
【0122】
(S202-2)推奨保守期間算出部112は、リストから一つのエントリ(機器)を選択する。
【0123】
(S202-3)推奨保守期間算出部112は、機器仕様情報135を参照し、選択した機器に対応するエントリの寿命パラメータ704からパラメータm、ηを取得し、式(1)に代入することによって故障率曲線を算出する。
【0124】
【0125】
ここで、iは機器の識別番号を表し、m_i及びη_iは機器iの寿命パラメータを表す。D(t)は運用時間tにおける走行負荷累積値を表し、λ_iは機器iの故障率を表す。式(1)によれば故障曲線は走行負荷値に対して算出する。機器の故障率を算出する場合、機器状態情報134の走行負荷累積値606及び走行負荷予測値607の値を取得し、式(2)にしたがってD(t)を算出する。
【0126】
【0127】
ここで、t_nowは機器の運用開始日時から現在の日時までを表す運用時間(定数)を表し、D_nowは走行負荷累積値を表し、D_futは走行負荷予測値を表し、T_inspは立案期間を表す。
【0128】
式(2)は、現在までの走行負荷の増加量を走行負荷累積値から算出し、その後の走行負荷の増加量の予測を走行負荷予測値から算出する式である。式(2)を用いて機器の走行負荷を算出することによって、式(1)を用いて各機器の故障曲線を算出できる。
【0129】
(S202-4)推奨保守期間算出部112は、リストの全てのエントリについて処理が完了したか否かを判定する。リストの全てのエントリについて処理が完了していない場合、推奨保守期間算出部112はS202-2に戻る。リストの全てのエントリについて処理が完了した場合、推奨保守期間算出部112はステップS202の処理を終了する。
【0130】
次に、推奨保守期間算出部112は、各機器の保守候補時期を設定する(ステップS203)。具体的には、推奨保守期間算出部112は、二値変数x_ijの集合を機器の保守候補時期を表す情報として設定する。二値変数x_ijは機器iを保守期間jで保守する場合「1」となり、機器iを保守期間jで保守しない場合「0」となる変数である。初回の保守候補時期はランダムに設定されてもよいし、任意のルールに従って設定されてもよい。
【0131】
推奨保守期間算出部112は、各機器について、保守候補時期にて機器の保守を行った場合の機器の平均故障率を算出する(ステップS204)。ここで、平均故障率とは、運用開始から終了までの機器の故障率の平均を表す。機器の平均故障率からリスクの平均を見積もることができる。
【0132】
具体的には、推奨保守期間算出部112は式(3)を用いて機器の平均故障率を算出する。
【0133】
【0134】
ここで、T_ijは機器iを保守期間jで保守した場合の運用時間を表し、λ_i_ave(T_ij)は平均故障率を表す。運用時間T_ijは、機器iの使用開始日時と保守期間jの開始日時との間の時間幅として算出される。
【0135】
式(3)では、機器の運用年数の分布を、運用開始から終了までの定常分布と想定して平均故障率を算出している。式(3)では機器の運用中の故障を想定しておらず、機器を利用した時間の分布、すなわち運用年数分布が運用時間までの定常分布となっていることを仮定している。実際には運用中に機器が故障する場合もあるため、運用年数分布が定常分布とならないことを考慮して平均故障率を算出することもできる。しかし、機器の故障率が十分に低ければ、運用中の故障による機器の運用年数分布の変化を無視することができ、式(3)に近似できる。
【0136】
推奨保守期間算出部112は、各機器について、単位時間あたりの保守費用を算出する(ステップS205)。ここでは、単位時間は1年とする。具体的には、推奨保守期間算出部112は、式(4)を用いて単位時間あたりの保守費用を算出する。
【0137】
【0138】
ここで、C_Rep,iは機器iの保守費用を表す。式(4)では、保守において発生する作業費用及び運用期間中の機器の故障によって発生する費用は考慮していない。これらの要素を考慮して保守費用を算出することもできるが、機器の故障率が十分低く、かつ、作業費用が機器の保守費用に比べて十分低い場合、式(4)で近似できる。
【0139】
推奨保守期間算出部112は、機器の平均故障率の和が閾値より小さく(制約条件)、かつ、式(5)を用いて算出される評価値が十分改善されているか否かを判定する(ステップS206)。なお、初回の処理では、ステップS206の処理は行わずステップS203に戻るものとする。
【0140】
【0141】
評価値の評価については、評価値が閾値より小さく、かつ、一定期間評価値が変化しない場合、評価値が十分改善されていると判定される。
【0142】
制約条件を満たさない、又は、評価値が改善していない場合、推奨保守期間算出部112はステップS203に戻る。ステップS203では、推奨保守期間算出部112は、式(6)、(7)に示す制約条件の下、式(5)を用いて算出される評価値が小さくなるように保守候補時期(x_ij)を設定する。
【0143】
【0144】
【0145】
ここで、Λ_stは設備全体で許容する平均故障率の上限値である。上限値は任意に設定できる。
【0146】
制約条件を満たし、かつ、評価値が十分改善されている場合、推奨保守期間算出部112は、各機器の最適保守日時を決定する(ステップS207)。具体的には、推奨保守期間算出部112は、保守候補時期の開始日時を最適保守日時に決定する。推奨保守期間算出部112は、機器状態情報134の最適保守日時608に、決定された最適保守日時を設定する。ステップS203からステップS207の一連の処理は、式(5)を用いて算出される評価値が最小となる保守候補時期x_ijを探索する線形最適化問題を解くことで実現できる。
【0147】
推奨保守期間算出部112は、各機器の推奨保守期間の開始日時及び終了日時を決定する(ステップS208)。
【0148】
具体的には、推奨保守期間算出部112は、機器の故障曲線を用いて、最適保守日時における故障率の定数倍(例えば、推奨保守期間の許容幅の下限で0.9倍)となる運用時間を求め、これに基づいて推奨保守期間の開始日時を算出する。また、推奨保守期間算出部112は、機器の故障曲線を用いて、最適保守日時における故障率の定数倍(例えば、推奨保守期間の許容幅の上限で1.1倍)となる運用時間を求め、これに基づいて推奨保守期間の終了日時を算出する。推奨保守期間算出部112は、機器状態情報134の開始日時609及び終了日時610に算出した日時を設定する。
【0149】
なお、機器の推奨保守期間の終了日時は、機器の故障率に対して許容する信頼性水準を与え、機器の故障曲線に基づいて、信頼性水準を満たさなくなる運用時間を求め、これに基づいて算出してもよい。
【0150】
推奨保守期間算出部112は、全ての車両設備について処理が完了したか否かを判定する(ステップS209)。
【0151】
全ての車両設備について処理が完了していない場合、推奨保守期間算出部112はステップS201に戻る。全ての車両設備について処理が完了した場合、推奨保守期間算出部112は推奨保守期間算出処理を終了する。
【0152】
以上の処理によって決定された推奨保守期間は、保守費用(コスト)及び故障率(リスク)のバランスがとれた期間となっている。したがって、推奨保守期間内で機器の保守を行うと保守費用及び故障率を低く抑えることができる。一方、推奨保守期間外で機器の保守を行うと保守費用及び故障率のいずれかが大きくなる。
【0153】
図17は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する保守機器リストの最適化処理を説明するフローチャートである。
図18は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する保守評価値算出処理を説明するフローチャートである。
【0154】
保守機器リスト最適化部113は、現在の日時に最も近い保守期間について以下で説明する処理を実行する。以下では、最も近い保守期間を対象保守期間と記載する。
【0155】
保守機器リスト最適化部113は、車両設備運用情報133から一つの車両設備(エントリ)を選択する(ステップS301)。
【0156】
保守機器リスト最適化部113は、最適化条件を設定する(ステップS302)。最適化条件は、後述する最適化問題で使用する制約条件である。線形最適化問題の場合、使用可能な番線及び車両設備の故障率の制約条件が設定される。遺伝的アルゴリズム等のヒューリスティックな最適化問題の場合、使用可能な番線、車両設備の故障率、作業量、及び番線の滞在時間の制約条件が設定される。本実施例では、線形最適化問題を例に説明をする。
【0157】
保守機器リスト最適化部113は、選択した車両設備の保守機器リストを生成する(ステップS303)。具体的には、保守機器リスト最適化部113は、二値変数x_iの集合を車両設備の保守機器リストとして生成する。二値変数x_iは機器iを保守する場合「1」となり、機器iを保守しない場合「0」となる変数である。
【0158】
車両設備を構成する機器の数が多い場合、二値変数x_iの組合せの数は非常に多くなる。そこで、本実施例では、推奨保守期間が対象保守期間に重複する機器のみを考える。これによって、二値変数x_iの組合せの数を抑えることができる。なお、現在の日時が開始日時609に達していない場合、x_iは「0」、現在の日時が終了日時610を経過している場合、x_iは「1」に設定する。
【0159】
初回の車両設備の保守機器リストは、例えば、上記のルールに従ってランダムに設定される。
【0160】
保守機器リスト最適化部113は、保守評価値算出部114に対して、保守評価値算出処理の実行を指示する(ステップS304)。このとき、保守機器リスト最適化部113は、保守機器リストを保守評価値算出部114に入力する。ここで、
図18を用いて保守評価値算出処理について説明する。
【0161】
保守評価値算出部114は、各機器について、推奨保守期間における単位時間あたりの保守費用の最小値を算出する(ステップS401)。ステップS401で算出された値を最小費用と定義する。機器iの単位時間あたりの保守費用は、式(4)と同じ形式の式(8)を用いて算出できる。
【0162】
【0163】
ここで、T_iは機器iを推奨保守期間のいずれかの日時で保守した場合の運用時間を表す。T_iは保守日時によって変わる変数である。保守日時は推奨保守期間内で変更される。なお、機器の推奨保守期間は、機器状態情報134の開始日時609及び終了日時610に基づいて算出できる。
【0164】
次に、保守評価値算出部114は、各機器について、対象保守期間において保守を行った場合の単位時間あたりの保守費用を算出する(ステップS402)。ステップS402で算出された費用を比較用費用と定義する。単位時間あたりの保守費用は式(8)を用いて算出できる。なお、T_iは、運用開始日時から対象保守期間の開始日時までの時間(定数)である。
【0165】
次に、保守評価値算出部114は、各機器について、比較用費用及び最小費用の差を機器保守費用損失として算出する(ステップS403)。機器保守費用損失は式(9)を用いて算出される。
【0166】
【0167】
ここで、AC_(Rep-now,i)は比較用費用を表し、AC_(Rep-min,i)は最小費用を表す。また、ΔAC_(Rep,i)は機器保守費用損失を表す。
【0168】
本実施例では、推奨保守期間及び対象保守期間のズレに起因する費用損失を、単位時間値の保守費用の差として算出する。単位時間値の保守費用は、保守期間に依存する値であり、かつ、異なる保守期間同士で比較することができる。
【0169】
次に、保守評価値算出部114は、各機器の機器保守費用損失の合計を設備保守費用損失として算出する(ステップS404)。設備保守費用損失は式(10)を用いて算出される。
【0170】
【0171】
ここで、ΔAC_Repは設備保守費用損失を表す。
【0172】
次に、保守評価値算出部114は、設備保守費用損失を用いて保守評価値を算出する(ステップS405)。実施例1では、設備保守費用損失が保守評価値として算出される。ここで、保守評価値をΔAC_Vehiと表記する。
【0173】
最小費用及び比較用費用は、いずれも、単位時間あたりの保守費用であり、保守期間の長さに依存しない同じ尺度の値である。そのため、機器保守費用損失は、各機器の保守を行う日時が、推奨保守期間からずれた場合の経済的な損失を見積もるための指標として用いることができる。本実施例では、推奨保守期間内で保守を行う機器が多くなるように、すなわち、保守評価値が小さくなるように保守を行う機器を決定することによって、機器の保守の優先順位を決定できる。
【0174】
保守評価値算出部114は、保守機器リスト最適化部113に保守評価値を出力し、保守評価値算出処理を終了する。
【0175】
図17の説明に戻る。保守機器リスト最適化部113は、保守に要する設備作業量を算出する(ステップS305)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0176】
(S305-1)保守機器リスト最適化部113は、機器仕様情報135を参照し、車両設備の全ての機器に対応するエントリの保守作業リスト706を取得する。保守機器リスト最適化部113は、機器iにおいて実施する保守作業jを式(11)のように定義する。u_jは二値変数であり、保守作業jを実施する場合には「1」となり、保守作業jを実施しない場合は「0」となる変数である。
【0177】
【0178】
ここで、u_ijは機器iに対応するエントリの保守作業リスト706における保守作業jの値を表す。
【0179】
(S305-2)保守機器リスト最適化部113は、車両設備の各機器の保守作業の作業量の合計を設備作業量として算出する。具体的には、式(12)を用いて設備作業量が算出される。
【0180】
【0181】
ここで、W_Vehiは設備作業量を表し、w_jは保守作業jの作業量を表す。保守作業jの作業量は、保守作業情報136の作業量803から取得される値である。
【0182】
次に、保守機器リスト最適化部113は、保守を実施する場合の番線滞在時間を算出する(ステップS306)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0183】
(S306-1)保守機器リスト最適化部113は、機器iにおいて実施する保守作業jを式(11)のように定義する。
【0184】
(S306-2)保守機器リスト最適化部113は、保守作業jの作業量に基づいて、番線滞在時間を算出する。並列で実行される保守作業群については、各保守作業の中で最大の作業量を当該保守作業群の作業量として算出すればよい。そのため、番線滞在時間は式(13)に示すように、保守作業群の作業量の合計として算出できる。
【0185】
【0186】
ここで、R_Vehiは番線滞在時間を表し、kは並列作業IDを表し、U_kは並列作業IDがkの保守作業の集合を表す。
【0187】
次に、保守機器リスト最適化部113は、車両設備の保守の実施が可能な作業番線を特定する(ステップS307)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0188】
(S307-1)保守機器リスト最適化部113は、機器仕様情報135を参照し、車両設備の全ての機器に対応するエントリの保守機能リスト705を取得する。
【0189】
(S307-2)保守機器リスト最適化部113は、式(14)を用いて、車両設備の保守に必要な作業機能を特定する。
【0190】
【0191】
ここで、lは保守機能を表す。v_ilは機器iの保守機能リスト705の機能lの値を表す。v_lは保守機能lが必要であるか否かをあらす二値変数である。保守機能が必要ない場合「0」をとり、保守機能が必要である場合「1」をとる。Eは車両設備を構成する機器の集合である。少なくとも一つの機器において保守機能lが必要である場合、式(14)の値は1となる。
【0192】
(S307-3)保守機器リスト最適化部113は、作業番線情報137の各エントリの保守機能リスト902を参照し、v_lが1である全ての保守機能が1となっている番線を特定する。保守機器リスト最適化部113は、処理結果を二値変数H_sの集合として保存する。ここで、sは作業番線を表す。二値変数H_sは作業番線sで保守を行うことができる場合「1」となり、作業番線sで保守を行うことができない場合「0」となる変数である。
【0193】
次に、保守機器リスト最適化部113は、車両設備を構成するいずれかの機器が故障する確率を設備故障率として算出する(ステップS308)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0194】
(S308-1)保守機器リスト最適化部113は、各機器について、式(15)を用いて、保守時期において機器を保守しない場合の機器の故障確率P_iを算出する。また、保守機器リスト最適化部113は、各機器について、式(16)を用いて、保守時期において機器を保守した場合の機器の故障確率P’_iを算出する。
【0195】
【0196】
【0197】
ここで、D_nowは走行負荷累積値を表し、D_futは走行負荷予測値を表す。走行負荷累積値及び走行負荷予測値は、機器状態情報134の走行負荷累積値606及び走行負荷予測値607の値である。また、故障率曲線のパラメータは、機器仕様情報135の寿命パラメータ704の値である。
【0198】
(S308-2)保守機器リスト最適化部113は、式(17)を用いて、設備故障率P_Vehiを算出する。
【0199】
【0200】
次に、保守機器リスト最適化部113は、車両設備の保守費用C_Rを算出する(ステップS309)。具体的には、保守機器リスト最適化部113は、式(18)を用いて車両設備の保守費用を算出する。
【0201】
【0202】
保守機器リスト最適化部113は、制約条件を満たし、かつ、式(19)を用いて算出される評価値ΔAC_Partが十分改善されているか否かを判定する(ステップS310)。なお、機器iについての初回の処理では、ステップS310の処理は行わずステップS303に戻るものとする。
【0203】
【0204】
ここで、αは作業量調整係数を表す。また、制約条件は式(20)、式(21)、式(22)、式(23)で与えられる。
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
ここで、H_(s_st)は作業可能番線の上限値を表し、P_(Vehi_st)は設備故障率の上限値を表し、t_start,iは機器iの推奨保守期間の開始日時を表し、t_end,iは機器iの推奨保守期間の終了日時を表す。tは保守期間の開始日時を表す。
【0210】
制約条件を満たさない、又は、評価値ΔAC_Partが十分改善されていない場合、保守機器リスト最適化部113はステップS303に戻る。ステップS303では、保守機器リスト最適化部113は、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)に示す制約条件の下、評価値ΔAC_Partを小さくするように保守機器リストを設定する。
【0211】
評価値ΔAC_Partに含まれている設備作業量は保守機器リストに対して線形ではないが、絶対値又は「max」を含む関数の和で定義された関数は、式変形をすることで線形な目的関数と線形な制約条件との和で表現できる。すなわち、評価値ΔAC_Partに基づく最適化問題は混合整数線形計画問題として表現可能であり、分枝限定法などの手法が適用可能である。
【0212】
なお、ヒューリスティックな最適化手法を用いて保守機器リストを探索してもよい。この場合は、作業可能番線及び設備故障確率に加えて、保守機器リストに対して線形ではなかった設備作業量及び番線滞在時間に対しても制約を設けることができる。評価値は保守評価値ΔAC_Vehiを用いる。すなわち、推奨保守終了日時、作業量調整係数、作業可能番線、設備交渉確率の上限値、設備作業量の上限値、番線滞在時間の上限値を用いて、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)と、式(24)、式(25)の制約条件の下、保守評価値ΔAC_Vehiが最小となる保守機器リストを探索する。
【0213】
【0214】
【0215】
制約条件を満たし、かつ、評価値ΔAC_Partが十分改善している場合、保守機器リスト最適化部113は、保守機器リスト情報140に保守機器リストを登録する(ステップS311)。ステップS303からステップS311の一連の処理は評価値ΔAC_Partが最小となる保守機器リストx_iを探索する最適化問題を解くことで実施できる。
【0216】
次に、保守機器リスト最適化部113は、新たに最適化条件を設定するか否かを判定する(ステップS312)。例えば、生成された保守機器リストの数が一定数以上の場合、又は、設定可能な全ての最適化条件について処理を実行した場合、保守機器リスト最適化部113は、新たに最適化条件を設定しない。
【0217】
新たに最適化条件を設定する場合、保守機器リスト最適化部113はステップS302に戻る。
【0218】
新たに最適化条件を設定しない場合、保守機器リスト最適化部113は、全ての車両設備について処理を実行したか否かを判定する(ステップS313)。
【0219】
全ての車両設備について処理を実行していない場合、保守機器リスト最適化部113はステップS301に戻る。全ての機器について処理を実行した場合、保守機器リスト最適化部113は保守機器リストの最適化処理を終了する。
【0220】
図19は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する保守計画最適化処理を説明するフローチャートである。
図20は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する総合評価値算出処理を説明するフローチャートである。
【0221】
保守計画最適化部121は、現在の日時と最も近い保守期間(対象保守期間)について以下で説明する処理を実行する。
【0222】
保守計画最適化部121は、検査日時毎に、作業可能時間及び作業番線の滞在可能時間を算出する(ステップS501)。
【0223】
保守計画最適化部121は、システムの保守計画を生成する(ステップS502)。システムの保守計画は、車両設備pについて保守機器リストqにしたがって検査日時rに番線sで保守を行うか否かを表す二値変数y_pqrs(車両設備の保守計画)の集合として表される。ここでは、対象保守期間において全ての車両設備を一度だけ保守を行うという条件の下でシステムの保守計画が生成されるものとする。なお、検査日時は対象保守期間内の日時を表す。
【0224】
保守計画最適化部121は、総合評価値算出部122の総合評価値算出処理の実行を指示する(ステップS503)。このとき、保守計画最適化部121は、総合評価値算出部122にシステムの保守計画を入力する。ここで、
図20を用いて総合評価値算出処理について説明する。
【0225】
総合評価値算出部122は、保守機器リスト情報140を参照し、各車両設備の保守評価値ΔAC_Vehiを取得する(ステップS601)。
【0226】
総合評価値算出部122は、保守評価値ΔAC_Vehiを用いて、総合評価値を算出する(ステップS602)。具体的には、総合評価値算出部122は、式(26)を用いて総合評価値を算出する。
【0227】
【0228】
ここで、ΔAC_Allは総合評価値を表し、ΔAC_Vehi,pqは設備pを保守機器リストqにしたがって保守を行った場合の保守評価値を表す。保守評価値は保守計画情報141の保守評価値1306の値である。本実施例では、総合評価値が小さくなるようにシステムの保守計画を作成することによって、各車両設備について優先的に実施する保守機器リストを決定できる。
【0229】
総合評価値算出部122は、保守計画最適化部121に総合評価値を出力し、総合評価値算出処理を終了する。
【0230】
図19の説明に戻る。保守計画最適化部121は、システムの保守計画における設備故障確率の合計を算出する(ステップS504)。具体的には、保守計画最適化部121は、式(27)を用いてシステムの保守計画における設備故障確率の合計を算出する。
【0231】
【0232】
ここで、P_Allは車両設備故障率の合計を表し、P_Vehi,pqは設備pを保守機器リストqにしたがって保守を行った場合の設備故障率を表す。P_Vehi,pqは、保守機器リスト情報140の車両設備ID1202及び保守機器リスト1203が、設備pの保守機器リストqに一致するエントリの設備故障率1206の値である。
【0233】
次に、保守計画最適化部121は、保守日時rにおける設備作業量の合計を算出する(ステップS505)。具体的には、保守計画最適化部121は、式(28)を用いて保守日時rにおける設備作業量の合計を算出する。
【0234】
【0235】
ここで、W_(All,r)は保守日時rにおける設備作業量の合計を表し、W_Vehi,pqは設備pを保守機器リストqにしたがって保守を行った場合の設備作業量を表す。W_Vehi,pqは、保守機器リスト情報140の車両設備ID1202及び保守機器リスト1203が、設備pの保守機器リストqに一致するエントリの設備作業量1208の値である。
【0236】
次に、保守計画最適化部121は、各保守日時について、番線sの滞在時間を算出する(ステップS506)。具体的には、保守計画最適化部121は、式(29)を用いて保守日時rの番線sの滞在時間を算出する。
【0237】
【0238】
ここで、R_(ALL,rs)は保守日時rの番線sの滞在時間を表し、R_Vehi,pqは設備pを保守機器リストqにしたがって保守を行った場合の番線の滞在時間を表す。R_Vehi,pqは、保守機器リスト情報140の車両設備ID1202及び保守機器リスト1203が、設備pの保守機器リストqに一致するエントリの番線滞在時間1209の値である。
【0239】
次に、保守計画最適化部121は、制約条件を満たすか否かを判定する(ステップS507)。なお、初回の処理では、ステップS507の処理は行わずステップS502に戻るものとする。
【0240】
ここで、制約条件は、式(30)、式(31)、式(32)、式(33)、式(34)、式(35)で与えられる。
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
ここで、P_(All_st)は設備故障確率の合計の上限値を表し、予め設定される。W_(All_st),rは保守日時rの作業可能時間の上限値を表し、ステップS501で算出された作業可能時間である。Nは車両設備の数を表す。H_pqsは設備pを保守機器リストqにしたがった保守を作業番線sで実施できるか否かを表す二値変数である。保守を実施できる場合には「1」となり、保守を実施できない場合には「0」となる変数である。R_{(ALL_st),rs}は検査日時rの作業番線sの滞在可能時間の上限値を表し、ステップS501で算出された滞在可能時間である。t(r)は検査日時rの具体的な日時を表す。t_deadline,pは車両設備の保守締切日時を表し、保守期限情報139の保守期限1104の値である。
【0248】
制約条件を満たさない場合、保守計画最適化部121は、制約条件を満たすシステムの保守計画を生成できない旨を出力し、処理を終了する。
【0249】
制約条件を満たす場合、保守計画最適化部121は、総合評価値ΔAC_Allが十分改善されているか否かを判定する(ステップS508)。
【0250】
総合評価値ΔAC_Allが十分改善されていない場合、保守計画最適化部121はステップS502に戻る。ステップS502では、保守計画最適化部121は、式(30)、式(31)、式(32)、式(33)、式(34)、式(35)に示す制約条件の下、総合評価値を小さくするようにシステムの保守計画を設定する。
【0251】
総合評価値ΔAC_Allが十分改善されている場合、保守計画最適化部121は、システムの保守計画を保守計画情報141に登録し(ステップS509)、その後、処理を終了する。ステップS502からステップS509の一連の処理は総合評価値が最小となるシステムの保守計画y_pqrsを探索する線形最適化問題を解くことで実施できる。
【0252】
図21は、実施例1の保守計画立案支援システム100が実行する調整処理を説明するフローチャートである。
【0253】
調整部123は、走行負荷を減らす車両設備を選択する(ステップS801)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0254】
(S801-1)調整部123は、車両設備運用情報133を参照し、負荷低減対象502が「無」である車両設備を特定する。
【0255】
(S801-2)調整部123は、特定された車両設備の中から一つの車両設備を選択する。例えば、調整部123は、運用開始日時が古い順に車両設備を選択する。これは、運用開始日時が古い車両設備は、運用開始日時が新しい車両設備に比べて走行負荷に対する劣化が早いため、走行負荷を減らす必要があるためである。
【0256】
次に、調整部123は、サービス運用情報131及び車両設備運用情報133を参照して、保守期間において選択された車両設備が実施する運用計画を一つ選択する(ステップS802)。運用計画は、実施順に選択されるものとする。
【0257】
次に、調整部123は、保守期間において、選択された運用計画の開始駅及び終了駅の組合せが同一である運用計画(類似運用計画)を実施する車両設備が存在するか否かを判定する(ステップS803)。
【0258】
車両設備が存在しない場合、調整部123はステップS806に進む。
【0259】
車両設備が存在する場合、調整部123は、特定された車両設備の中から、類似運用計画の運用負荷値が最も小さい車両設備を特定する(ステップS804)。運用負荷値はサービス運用情報131の運用負荷値307から取得することができる。
【0260】
次に、調整部123は、選択された車両設備の選択された運用計画と、特定された車両設備の類似運用計画と入れ替える(ステップS805)。具体的には、車両設備運用情報133の運用計画503が更新される。
【0261】
次に、調整部123は、保守期間において選択された車両設備が実施する全ての運用計画について処理を実行したか否かを判定する(ステップS806)。
【0262】
保守期間において選択された車両設備が実施する全ての運用計画について処理を実行していない場合、調整部123はステップS802に戻る。
【0263】
保守期間において選択された車両設備が実施する全ての運用計画について処理を実行した場合、調整部123は、車両設備運用情報133を参照し、選択された車両設備に対応するエントリの負荷低減対象502を「有」に更新し(ステップS807)、その後、処理を終了する。
【0264】
選択された車両設備の走行負荷は低減されるため、システム全体における車両設備の保守に要するコストは小さくなる。また、機器の故障曲線も変化する。
【0265】
図22は、実施例1の保守計画立案支援システム100が提示する画面の一例を示す図である。
【0266】
画面2200は、パラメータ入力欄2201、保守計画出力欄2202、保守機器リスト出力欄2203、及び評価値出力欄2204を含む。
【0267】
保守業務の管理者は、パラメータ入力欄2201に、パラメータを設定し、処理の開始を指示する。保守計画立案支援システム100は、各種処理を実行し、保守計画出力欄2202、保守機器リスト出力欄2203、及び評価値出力欄2204に処理結果を出力する。
【0268】
パラメータ入力欄2201は、保守計画の立案に必要なパラメータを設定するための欄である。パラメータは、例えば、リスク許容値として設定される設備全体の平均故障率Λ_st、推奨保守期間の許容幅、法定の保守周期、全設備の故障確率の許容値P_All_st等である。
【0269】
保守計画出力欄2202は、システムの保守計画を表示する欄である。本実施例では、検査日時を行、作業番線を列とする行列としてシステムの保守計画が表示される。行列の成分には、保守機器リストのIDが格納される。保守計画出力欄2202は、保守機器リストを表示する車両設備の保守計画を選択するチェック欄が設けられている。
【0270】
保守機器リスト出力欄2203は、保守計画出力欄2202にて選択された車両設備の保守計画の保守機器リストを表示する欄である。なお、保守機器リスト出力欄2203には、設備保守費用等が表示されてもよい。
【0271】
評価値出力欄2204は、保守計画出力欄2202にて選択された車両設備の保守計画の評価値を表示する欄である。評価値出力欄2204には、例えば、保守評価値及び総合評価値が表示される。また、評価値出力欄2204には、保守対象の機器の推奨保守期間の終了日時までの日数が表示されてもよい。当該日数は、推奨保守期間の終了日時から車両設備の保守予定日時までの日数である。
【0272】
実施例1によれば、制約条件を満たし、保守に要するコストが最小となるシステムの保守計画を生成できる。推奨保守期間と保守期間とのズレに起因する保守費用の損失を用いることによって、中長期視点で適切な保守時期での保守を行うシステムの保守計画を作成できる。
実施例2では、複数の機器を同時に保守した場合の保守費用の低減効果を考慮する点が実施例1と異なる。また、実施例2では、法定の保守周期の範囲内で、車両設備の検査間隔が可能な限り長くなるようにシステムの保守計画を立案する。以下、実施例1との差異を中心に実施例2について説明する。
実施例1では、機器を推奨保守期間で保守する車両設備の保守計画を生成するために、設備保守費用損失ΔAC_Repを用いて保守評価値を算出する。実施例2では、保守時に複数の機器を同時に保守した場合の保守費用の低減効果を評価する設備保守費用補正値を導入する。さらに、設備保守費用損失及び設備保守費用補正値を用いて保守評価値を算出する。
ステップS401からステップS404の処理は実施例1と同一である。ステップS404の処理の後、保守評価値算出部114は、保守機器リストの機器に対して実施する保守作業を特定する(ステップS451)。具体的には、保守評価値算出部114は、機器仕様情報135を参照し、保守対象の機器に対応するエントリの保守作業リスト706を取得する。保守評価値算出部114は、実施する保守作業を二値変数u_jの集合として表す。二値変数u_jは保守作業jを実施する場合には「1」となり、保守作業jを実施しない場合は「0」となる変数である。
保守評価値算出部114は、推奨保守期間において、保守機器の保守作業を実施した場合における単位時間あたりの作業費用の最小値を算出する(ステップS452)。ステップS452で算出された値を第2最小費用と定義する。具体的には、以下のような処理が実行される。
(S452-2)保守評価値算出部114は、式(36)を用いて、各機器について、推奨保守期間において機器iの保守作業jを実施した場合における単位時間あたりの作業費用の最小値を算出する。
ここで、T_iは機器iを推奨保守期間のいずれかの日時で保守した場合の運用時間を表す。T_iは保守日時によって変わる変数である。保守日時は推奨保守期間内で変更される。なお、機器の推奨保守期間は、機器状態情報134の開始日時609及び終了日時610に基づいて算出できる。C_(Work,j)は、保守作業jの作業費用を表す。
次に、保守評価値算出部114は、対象保守期間において、保守機器の保守作業を実施した場合における単位時間あたりの作業費用の最小値を算出する(ステップS453)。ステップS453で算出された費用を第2比較用費用と定義し、AC_(Work-now)と表記する。第2比較用費用は式(11)を用いて、全ての機器の保守に必要な作業jを算出し、これによって定まったu_jを式(37)に代入することによって求めることができる。
次に、保守評価値算出部114は、各機器について、第2比較用費用及び第2最小費用の差を設備保守費用補正値として算出する(ステップS454)。設備保守費用補正値は式(39)を用いて算出される。
ここで、第2最小費用は、保守機器の各々を推奨保守期間において保守作業を行った場合の単位時間あたりの費用を表す。第2比較用費用は、対象保守期間において同時に保守機器の保守作業を行った場合の単位時間あたりの費用を表す。したがって、第2比較用費用及び第2最小費用の差は、複数の機器を同時に保守した場合の保守費用の低減効果を評価する指標となっている。
次に、保守評価値算出部114は、各機器の設備保守費用損失及び設備保守費用補正値を用いて保守評価値を算出する(ステップS455)。具体的には、式(40)を用いて保守評価値が算出される。
実施例2では、法定の保守周期内で、車両設備の保守間隔が可能な限り長くなるようにするために、法定の保守周期より短い間隔で保守を行った場合の経済的損失を評価する第2設備保守費用損失を導入する。
ステップS601は実施例1と同一である。ステップS601の実行後、総合評価値算出部122は、対象保守期間における、車両設備の保守機器リストに基づく保守の単位時間あたりの保守費用を算出する(ステップS651)。ステップS651で算出された値を第3比較用費用と定義する。具体的には、総合評価値算出部122は、各車両設備に対して以下の処理を実行する。
ここで、C_(Work,pq)は車両設備pの保守機器リストqの設備保守費用を表し、Tは保守間隔を表す。Tは前回の保守日時から対象保守期間の開始日時までの間の時間であり、保守日時rによって定まる。AC_Insp,pqr(T)は、保守日時rで車両設備pの保守機器リストqに基づく保守を行った場合の単位時間あたりの保守費用を表す。
次に、総合評価値算出部122は、法廷の保守周期に対応する期間における、車両設備の保守機器リストに基づく保守の単位時間あたりの保守費用を算出する(ステップS652)。ステップS652で算出された値を第3最小費用と定義する。算出方法はステップS651と同一である。なお、Tは保守日時1103及び保守期限1104から求めることができる。保守期限で保守を行った場合、単位時間あたりの保守費用は最小となる。
次に、総合評価値算出部122は、第3比較用費用及び第3最小費用の差を第2設備保守費用損失として算出する(ステップS653)。第2設備保守費用損失は式(42)を用いて算出される。
ここで、T_rは保守日時rにおける保守期間を表す。AC_(insp,pqr)は、保守日時rに設備pを保守機器リストqにしたがって保守した場合の第3比較用費用を表し、AC_(insp-min,pq)は第3最小費用を表す。
次に、総合評価値算出部122は、保守評価値ΔAC_Vehi及び第2設備保守費用損失を用いて、総合評価値を算出する(ステップS602)。具体的には、総合評価値算出部122は、式(43)を用いて総合評価値を算出する。
実施例2の総合評価値は、機器の保守時期の推奨保守期間からのズレ、同時に複数の機器を保守することによる保守費用の低減効果、並びに、保守期間及び保守周期の差を考慮した指標となっている。
実施例2の画面2200の表示される欄は、実施例1の画面2200と同一である。実施例2では、評価値出力欄2204に表示される項目が実施例1と異なる。具体的には、第2保守評価値、第3保守評価値、及び期限誤差が表示される。期限誤差は、検査日時と保守期限日時との差を表す。
実施例2によれば、総合評価値は、(1)中長期視点から機器を適切な時期に保守すること、(2)複数の機器を同時に保守することによる保守費用の低減効果、(3)法定の保守周期の範囲内で、車両設備の保守間隔が可能な限り長くなるようにすることを考慮した値となっている。三つの要素は、単位時間あたりの費用として算出され、互いの要素を比較することができる。総損失評価値が小さくなるシステムの保守計画を算出すれば、上記の要素を勘案して各車両設備の保守計画の優先順位を定め、中長期視点から適正なシステムの保守計画を生成できる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Python、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
上述の実施例において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。