(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175378
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241211BHJP
F26B 13/02 20060101ALI20241211BHJP
F26B 3/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B41J2/01 125
F26B13/02
F26B3/04
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093118
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川北 純
(72)【発明者】
【氏名】小久保 洋
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝平
(72)【発明者】
【氏名】原 義明
(72)【発明者】
【氏名】貞光 雄志
【テーマコード(参考)】
2C056
3L113
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA32
2C056HA47
3L113AA02
3L113AB02
3L113AC36
3L113AC48
3L113BA30
3L113CB22
3L113DA30
(57)【要約】
【課題】空気の吹き付けによりシートを乾燥させながらも、シートの浮き上がりを抑制する。
【解決手段】複数の吹付ノズル10Aと第1送風ダクト14Aとを有する温風吹付ユニット8Aと、シート搬送方向D1に関して温風吹付ユニット8Aの下流に隣接して配置され、複数の吹付ノズル10Bと第2送風ダクト14Bとを有する温風吹付ユニット8Bとを備える。複数の吹付ノズル10Aのうち、任意の第1穴10aと、第1穴10aのシート搬送方向D1の下流に位置し、第1穴10aとのシート搬送方向D1に関する距離が最も短くなる第2穴10bとのピッチを第1ピッチp1とした場合に、シート搬送方向D1に関し、複数の吹付ノズル10Aのうちの最下流に位置する最下流穴10Aaと、複数の吹付ノズル10Bのうちの最上流に位置する最上流穴10Baとのピッチである第2ピッチp2は、第1ピッチp1以下である。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して画像が形成されたシートに温風を吹き付けてシートを乾燥させる乾燥装置であって、
シートを搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第1吹出穴と、前記第1吹出穴に空気を案内する第1ダクトと、を有する第1送風ユニットと、
シート搬送方向に関して前記第1送風ユニットの下流に隣接して配置され、前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第2吹出穴と、前記第2吹出穴に空気を案内する第2ダクトと、を有する第2送風ユニットと、を備え、
前記複数の第1吹出穴のうち、任意の第1穴と、前記第1穴の前記シート搬送方向の下流に位置し、且つ、前記第1穴との前記シート搬送方向に関する距離が最も短くなる第2穴とのピッチを第1ピッチとした場合に、前記シート搬送方向に関し、前記複数の第1吹出穴のうちの最下流に位置する最下流穴と、前記複数の第2吹出穴のうちの最上流に位置する最上流穴とのピッチである第2ピッチは、前記第1ピッチ以下である、
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記第1送風ユニットは、前記搬送ベルトに対向して配置され、前記複数の第1吹出穴が形成された第1吹出面を有し、
前記第2送風ユニットは、前記搬送ベルトに対向して配置され、前記複数の第2吹出穴が形成された第2吹出面を有し、
前記第1吹出面の前記シート搬送方向の下流端部は、前記最下流穴が形成された第1部分と、前記第1部分よりも前記シート搬送方向の上流側に位置する第2部分とを有し、
前記第2吹出面の前記シート搬送方向の上流端部は、前記最上流穴が形成された第3部分と、前記第3部分よりも前記シート搬送方向の下流側に位置する第4部分とを有し、
前記シート搬送方向に関して、前記第1部分が前記第4部分に対向し、前記第2部分が前記第3部分に対向し、
前記シート搬送方向に交差するシート幅方向から見た場合に、前記第1部分の少なくとも一部と前記第3部分の少なくとも一部とが重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記第1部分は、複数あり、
前記第3部分は、複数あり、
複数の前記第1部分と複数の前記第3部分は、前記シート幅方向に関して交互に配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記第1送風ユニットの前記複数の第1吹出穴は、前記シート搬送方向に沿って一列に並んで配置された前記第1吹出穴を含む第1グループと、前記第1グループとは前記シート搬送方向に交差するシート幅方向に異なる位置で前記シート搬送方向に沿って一列に並んで配置された前記第1吹出穴を含む第2グループとを有し、
前記シート幅方向から見て、前記第1グループの前記吹出穴と前記第2グループの前記吹出穴とは前記シート搬送方向に交互に配置され、
前記第1ピッチは、前記シート幅方向から見て、前記第1グループの前記吹出穴と、該吹出穴に対して前記シート搬送方向に並ぶ前記第2グループの前記吹出穴との前記シート搬送方向に関するピッチである、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記第1ピッチは、5mm以上、10mm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項6】
インクを吐出して画像が形成されたシートに温風を吹き付けてシートを乾燥させる乾燥装置であって、
シートを搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第1吹出穴と、前記第1吹出穴に空気を案内する第1ダクトと、を有する第1送風ユニットと、
シート搬送方向に関して前記第1送風ユニットの下流に隣接して配置され、前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第2吹出穴と、前記第2吹出穴に空気を案内する第2ダクトと、を有する第2送風ユニットと、を備え、
前記複数の第1吹出穴の前記シート搬送方向におけるピッチの平均長さは、前記シート搬送方向に関し、前記複数の第1吹出穴のうちの最下流に位置する最下流穴と、前記複数の第2吹出穴のうちの最上流に位置する最上流穴とのピッチ以上である、
ことを特徴とする乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクにより画像が形成されたシートを乾燥させる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクにより画像を形成する画像形成システムにおいては、シートを乾燥させる工程やシートに空気を吹き付ける工程がある。例えば、特許文献1には、シートをベルトにより搬送し、そのシートに対して温風を吹き付けることでシートを乾燥させる乾燥装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにインクを吐出して画像が形成されたシートに温風を吹き付けてシートを乾燥させる乾燥装置では、例えば、カットシートを乾燥させる場合に温風によってシートがベルト面から舞い上がってしまう虞がある。シートがベルト面から舞い上がると、乾燥装置でシート詰まりを発生し、下流の装置に搬送されなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、空気の吹き付けによりシートを乾燥させながらも、シートの浮き上がりを抑制可能な乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乾燥装置は、インクを吐出して画像が形成されたシートに温風を吹き付けてシートを乾燥させる乾燥装置であって、シートを搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第1吹出穴と、前記第1吹出穴に空気を案内する第1ダクトと、を有する第1送風ユニットと、シート搬送方向に関して前記第1送風ユニットの下流に隣接して配置され、前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第2吹出穴と、前記第2吹出穴に空気を案内する第2ダクトと、を有する第2送風ユニットと、を備え、前記複数の第1吹出穴のうち、任意の第1穴と、前記第1穴の前記シート搬送方向の下流に位置し、且つ、前記第1穴との前記シート搬送方向に関する距離が最も短くなる第2穴とのピッチを第1ピッチとした場合に、前記シート搬送方向に関し、前記複数の第1吹出穴のうちの最下流に位置する最下流穴と、前記複数の第2吹出穴のうちの最上流に位置する最上流穴とのピッチである第2ピッチは、前記第1ピッチ以下であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の乾燥装置は、インクを吐出して画像が形成されたシートに温風を吹き付けてシートを乾燥させる乾燥装置であって、シートを搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第1吹出穴と、前記第1吹出穴に空気を案内する第1ダクトと、を有する第1送風ユニットと、シート搬送方向に関して前記第1送風ユニットの下流に隣接して配置され、前記搬送ベルトによって搬送されるシートに向けて空気を吹き出す複数の第2吹出穴と、前記第2吹出穴に空気を案内する第2ダクトと、を有する第2送風ユニットと、を備え、前記複数の第1吹出穴の前記シート搬送方向におけるピッチの平均長さは、前記シート搬送方向に関し、前記複数の第1吹出穴のうちの最下流に位置する最下流穴と、前記複数の第2吹出穴のうちの最上流に位置する最上流穴とのピッチ以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空気の吹き付けによりシートを乾燥させながらも、シートの浮き上がりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る画像形成システムを示す概略構成断面図である。
【
図2】実施形態に係る乾燥モジュールとプリントモジュールと定着モジュールとを示す概略構成断面図である。
【
図3】実施形態に係る乾燥モジュールにおいて上扉を開いた状態を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る温風吹付ユニットの乾燥部を側面から見た状態を示す概略構成断面図である。
【
図5】実施形態に係る温風吹付ユニットの乾燥部を正面から見た状態を示す概略構成断面図である。
【
図6】実施形態に係る温風吹付ユニットの吹付ノズルとシートを示す概略構成断面図である。
【
図7】実施形態に係る温風吹付ユニットの吹付ノズルとシートを拡大して示す概略構成断面図である。
【
図8】実施形態に係る温風吹付ユニットの吹付ノズルとシートを更に拡大して示す概略構成断面図である。
【
図9】実施形態に係る吹付ノズルの第1ピッチとシート浮き上がりとの関係を示す表である。
【
図10】実施形態に係る隣接する温風吹付ユニットの吹付ノズルの配置を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態について、図を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成システムの概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0011】
[画像形成システム]
本実施形態のインクジェット記録システム100は、インクを吐出してシートに画像を形成するインクジェット記録方式を用いており、反応液とインクとの2液を用いてシートにインク像を形成する所謂枚葉式のインクジェット記録装置である。シートは、例えば普通紙や厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート、並びに布など、インクを受容可能な記録材であればよい。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録システム100は、給送モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000を備える。更に、インクジェット記録システム100は、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000を備える。給送モジュール1000から供給されるシートSは、各モジュール内を搬送経路に沿って搬送される際に各種処理が行われ、最終的に積載モジュール7000に排出される。
【0013】
なお、給送モジュール1000から積載モジュール7000まで、それぞれが別々の筐体を有し、それら筐体が連結されてインクジェット記録システム100を構成してよい。あるいは、1つの筐体に給送モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000が配置されていてもよい。
【0014】
給送モジュール1000は、シートSを収容する収納庫1500a、1500b、1500cを有し、収納庫1500a~1500cはシートSを収容するために装置正面側へ引き出し可能に設けられている。シートSは、各収納庫1500a~1500cにおいて分離ベルト及び搬送ローラにより1枚ずつ給送されて、プリントモジュール2000へ搬送される。なお、収納庫1500a~1500cは3つであることに限定されず、1つや2つあるいは4つ以上を有していてよい。
【0015】
画像形成部としてのプリントモジュール2000は、作像前レジ補正部(不図示)、プリントベルトユニット2010、記録部2020を有する。給送モジュール1000から搬送されたシートSは、作像前レジ補正部により傾きや位置が補正されてプリントベルトユニット2010へ搬送される。搬送経路に対し、記録部2020はプリントベルトユニット2010と対向する位置に配置されている。記録部2020は、搬送されるシートSに対して上方から記録ヘッドによりシートS上にインクを吐出することにより画像を形成するインクジェット記録部である。インクを吐出する記録ヘッドは、搬送方向に沿って複数並べられている。本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の4色に加えて、反応液に対応した合計で5つのライン型記録ヘッドを有する。シートSは、プリントベルトユニット2010により吸着搬送されることにより、記録ヘッドとのクリアランスが確保されている。
【0016】
なお、インクの色数及び記録ヘッドの数は、上記した5つに限定されない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンク(不図示)からそれぞれインクチューブを介して記録ヘッドに供給される。インクはインク全質量を基準として、「0.1質量%~20.0質量%」の樹脂成分と水及び水溶性有機溶剤、色材、ワックス、添加剤等を含有するものである。
【0017】
記録部2020により画像形成されたシートSは、プリントベルトユニット2010により搬送される際に、シートSの搬送方向において記録部2020の下流側に配置されたインラインスキャナ(不図示)により検知される。ここでは、シートSに形成された画像のズレや色濃度が検知され、この画像のズレや色濃度に基づき、シートSに形成する画像や濃度等の補正が行われる。
【0018】
乾燥モジュール3000は、乾燥装置の一例であり、インクを吐出して画像が形成されたシートSに温風を吹き付けてシートSを乾燥させる。
図2に示すように、乾燥モジュール3000は、デカップリング部40、乾燥ベルトユニット5、温風吹付ユニット8を有する。乾燥モジュール3000は、後続の定着モジュール4000によるシートSへのインクの定着性を高めるために、シートSに塗布されたインク及び反応液の液体分を減少させる。画像形成されたシートSは、乾燥モジュール3000内に配置されたデカップリング部40に搬送される。デカップリング部40では、上方から吹き付けられる風の風圧によりシートSとベルトとの間に摩擦力を生じさせ、ベルトによりシートSを搬送させている。こうして、ベルト上に載置されたシートSを摩擦力により搬送させることで、シートSがプリントベルトユニット2010とデカップリング部40に亘って搬送される際のシートSのズレを防ぐようにしている。デカップリング部40から搬送されたシートSは、乾燥ベルトユニット5にて吸着搬送されて、ベルト上方に配置された温風吹付ユニット8から熱風が吹き付けられることにより、シートSに塗布されたインク及び反応液を乾燥させる。
【0019】
こうして、乾燥モジュール3000によりシートSに塗布されたインク及び反応液が加熱され水分の蒸発が促進されることで、シートSにインクが飛び散って周囲に縁取りのような線ができる所謂コックリングが生じるのを抑制できる。なお、空気を加熱するヒータとしては、例えば電熱線、赤外線ヒータによる加熱が安全性やエネルギ効率の点から好ましい。また、乾燥方式は、熱風を付与する方式に加えて、電磁波(紫外線や赤外線など)をシートS表面に照射する方式や、発熱体の接触による伝導伝熱方式を組み合わせて構成してもよい。
【0020】
図1に示すように、定着システムとしての定着モジュール4000は、定着装置としての定着ベルトユニット4100を有する。定着ベルトユニット4100は、乾燥モジュール3000から搬送されたシートSを、加熱した上ベルトユニットと下ベルトユニットの間を通過させることによりインクをシートSに定着させる。定着ベルトユニット4100については、詳細な説明を後述する。
【0021】
冷却モジュール5000は冷却部5001を複数有し、冷却部5001により定着モジュール4000から搬送された高温のシートSを冷却する。冷却部5001は、例えば外気をファンで冷却ボックス内に取り込んで冷却ボックス内の圧力を高め、冷却ボックスから圧力によりノズルを介して噴き出す風をシートSに当ててシートSを冷却する。冷却部5001は、シートSの搬送経路に対し両側に配置され、シートSの両面を冷却する。
【0022】
冷却モジュール5000には、搬送経路切換え部5002が設けられている。搬送経路切換え部5002は、反転モジュール6000にシートSを搬送する場合と、シートSの両面に画像形成する両面印刷のために両面搬送経路にシートSを搬送する場合とに応じて、シートSの搬送経路を切り換える。
【0023】
反転モジュール6000は、反転部6400を有する。反転部6400は搬送されるシートSの表裏を反転させて、積載モジュール7000に排出する際のシートSの表裏向きを変更する。積載モジュール7000は、トップトレイ7200と積載部7500を有し、反転モジュール6000から搬送されたシートSを積載する。
【0024】
両面印刷時、シートSは搬送経路切換え部5002により冷却モジュール5000の下方の搬送経路に搬送される。その後、シートSは定着モジュール4000、乾燥モジュール3000、プリントモジュール2000、給送モジュール1000の両面搬送経路を通って、プリントモジュール2000へ戻される。定着モジュール4000の両面搬送部には、シートSの表裏を反転させる反転部4200が設けられている。プリントモジュール2000へ戻されたシートSは、画像形成されていない他方の面にもインクにより画像が形成され、乾燥モジュール3000から反転モジュール6000を経て積載モジュール7000に排出される。
【0025】
[乾燥モジュール]
次に、乾燥モジュール3000について、
図2~
図10を用いて詳細に説明する。
図2は、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000が連結された状態を示す概略図である。
図3は、乾燥モジュール3000を示す斜視図である。尚、
図3中、インクジェット記録システム100の手前側を前方向F、背面側を後方向B、向かって右側を右方向R、向かって左側を左方向L、上側を上方向U、下側を下方向Dと表記する。
【0026】
図2に示すように、乾燥モジュール3000は、デカップリング部40、乾燥ベルトユニット5、温風吹付ユニット8を有する。これらをまとめて乾燥機能部300とする。乾燥機能部300は、乾燥モジュール3000の上部に配置されており、プリントモジュール2000から排出されたシートSを受け取り、乾燥を行なってから、定着モジュール4000にシートSを受渡すための直線的なシート搬送経路1を有する。このシート搬送経路1におけるシート搬送方向に関して、乾燥機能部300の上流部と下流部とでは、機能が異なっている。
【0027】
乾燥機能部300の上流部は、空気吹付装置としてのデカップリング部40が配置されている。デカップリング部40は、シート搬送部としてのデカップリングベルトユニット2と、空気吹付部としての冷風吹付ユニット3とを有する。冷風吹付ユニット3は、デカップリングベルトユニット2の鉛直方向上方に配置されており、デカップリングベルトユニット2は、シートSを略水平方向に搬送する。冷風吹付ユニット3は、シート搬送方向に沿って複数隣接して配置されている。デカップリングベルトユニット2は、回転する無端状のベルト2aを有する。そして、デカップリングベルトユニット2の上側から冷風吹付ユニット3により冷風(空気)を吹き付けることで、シートSをベルト2aに押し付けて搬送を行う。デカップリングベルトユニット2には、冷風吹付ユニット3から吹き付けられた風を吹き付け面からベルト対向側に抜くための複数の穴が設けられる。なお、以下では、ヒータなどにより加熱されていない空気を「冷風」ともいう。
【0028】
シートSの先端が乾燥モジュール3000のデカップリングベルトユニット2へ到達した時、シートSの後端側は、まだプリントモジュール2000のプリントベルトユニット2010上にある。プリントベルトユニット2010は、シートを吸引して搬送する無端状のプリントベルト4(
図1)を有する。プリントベルト4上では、シートSに画像形成が行われており、そのシートSはプリントベルト4上で吸引搬送されている。この画像形成工程に外乱を与えないために、シートSをベルト2aに対して押し付ける力はプリントベルト4の吸引力より弱く、かつ、ベルト2aはプリントベルト4よりも僅かに速い速度で駆動されている。即ち、シートSの後端側がプリントベルト4上にある間は、シートSは常にベルト2aに対して滑るようになっている。
【0029】
一方、シートSの後端がプリントベルト4の領域から抜けた瞬間、シートSの搬送はベルト2aに依存することになる。この時、搬送抵抗に負けてシートSが滑らないように、冷風吹付ユニット3の空気の吹き付け力を制御する必要がある。そこで、冷風吹付ユニット3からベルト2a上を搬送されるシートSに吹き付けられる風速は、冷風吹付ユニット3の内部に設けた圧力センサ(不図示)と、吸気部に設けた吸気ファン(不図示)とを用いて所定の圧力に制御されている。冷風吹付ユニット3は、シートSに均一に押し付け力を与えられるように、空気を通すための多数の吹付穴が設けられた吹付面を有する。
[乾燥部]
次に、乾燥部6について、
図2及び
図4を用いて説明する。乾燥機能部300の下流部には、乾燥部6が配置されている。乾燥部6は、乾燥ベルトユニット5と、温風吹付ユニット8とを有する。温風吹付ユニット8は、乾燥ベルトユニット5の鉛直方向上方に配置されており、シート搬送方向に沿って複数隣接して配置されている。乾燥ベルトユニット5は、シート搬送部の一例であり、シートSを略水平方向に搬送する。
【0030】
[温風吹付ユニット]
次に、温風吹付ユニット8について、
図4を用いて説明する。
図4に示す矢印は、空気の流れを示している。温風吹付ユニット8は、送風ファン13、送風ダクト14、ヒータ15、温度センサ16、吸気ダクト17などを有している。本実施形態では、送風ファン13は軸流ファンとしている。但し、軸流ファンには限られず、シロッコファンなど他の送風源でも良い。ヒータ15はシーズヒータとしている。但し、シーズヒータには限られず、カンタルヒータなど他の発熱源でも良い。吸気ダクト17は、送風ファン13の吸気側に連結される。
【0031】
送風ダクト14は、内部にヒータ15及び温度センサ16を備え、送風ファン13の排気側が送風ダクト14の端部に接続される。即ち、送風ファン13は、送風ダクト14の上流端部に設けられている。ヒータ15は、送風ファン13の送風経路の下流側に配置される。ヒータ15は加熱部の一例であり、送風ダクト14において送風ファン13より下流に設けられ、送風ダクト14を送風される空気を加熱する。
【0032】
ヒータ15の更に下流のシートSに対向する面は吹出面12となっており、複数の吹付ノズル10が形成されている。温度センサ16は、送風ダクト14における吹付ノズル10に対向する上面に取り付けられている。制御部(不図示)により、温度センサ16の温度に応じて、ヒータ15を発熱するための電流が制御される。
【0033】
[乾燥ベルトユニット]
次に、乾燥ベルトユニット5について、
図2を用いて説明する。乾燥ベルトユニット5は、回転する無端状の搬送ベルトである乾燥ベルト7と、乾燥ベルト7を張架する複数の張架ローラ9と、乾燥ベルト7を加熱するためのベルトヒータ9aと、を有し、乾燥ベルト7によりシートを加熱しつつ搬送する。ベルトヒータ9aは、複数の張架ローラ9のうちの何れかの張架ローラ9の内部に配置されたハロゲンヒータであり、張架ローラ9を介して乾燥ベルト7を加熱する。本実施形態では、温風吹付ユニット8と対向する面を張架する一対の張架ローラ9のうち、シート搬送方向上流側の張架ローラ9の内部にベルトヒータ9aを配置している。
【0034】
更に、乾燥ベルトユニット5は、乾燥ベルト7の内周側に配置された吸引ボックス(不図示)と、吸引ボックスに接続された吸引ファン(不図示)とを有している。乾燥ベルト7は、吸引ファンにより空気が吸引される複数の吸引穴を有する。吸引ボックスは、乾燥ベルト7と対向する面に吸引口が形成されている。そして、吸引ファンにより吸引ボックスを介して空気を吸引することで、乾燥ベルト7の複数の吸引穴から空気が吸引されて、シートSを乾燥ベルト7の表面に吸着する構成となっている。
【0035】
乾燥部6では、乾燥ベルトユニット5でシートSを吸引することでシートSを乾燥ベルト7上に吸着しつつ、鉛直方向上側から温風吹付ユニット8により温風を吹き付けることでシートSを乾燥させ、コックリングと呼ばれる波うちを抑制しつつ搬送を行う。シートSを素早く乾燥させるために乾燥ベルト7の表面温度は、乾燥ベルトユニット5の内部に設けた温度センサ(不図示)により検知した温度に基づいて、張架ローラ9の内部に配置されたベルトヒータ9aを制御することで所定の温度に調整されている。これにより、乾燥ベルト7により搬送されるシートSを加熱するようにしている。
【0036】
一方、温風吹付ユニット8内の温風温度は、ユニット内部に設けた温度センサ16と、ヒータ15を用いて所定の温度に制御されている。また、温風吹付ユニット8の吹付ノズル10から出る風速は、ユニット内部に設けた圧力センサ(不図示)と、吸引ファンを用いて所定の圧力に制御されている。温風吹付ユニット8は、このような構成でシートS上のインクを乾燥する。
【0037】
シートSを乾燥ベルト7上に固定するために、乾燥ベルト7上面の吸引圧は、吸引ボックスの内部に設けた圧力センサ(不図示)により検知した圧力に基づいて、吸引ファンを制御することで所定の圧力に調整されている。これにより、温風吹付ユニット8は、温風を吹き付けてシートSを乾燥ベルト7上に押し付ける。なお、プリントベルト4の吸引終了位置から乾燥ベルト7の吸引開始位置までの距離が最大シート長さよりも長くなるように設定している。
【0038】
[吹付ノズル]
次に、温風吹付ユニット8に設けられた吹付ノズル10の概要について、
図4を用いて説明する。
図4に示すように、吹付ノズル10は、それぞれ上下方向を中心軸とする略円柱形状であり、搬送方向のノズル同士が円柱と同じ高さのリブ30(
図5参照)で繋がれている。また、吹付ノズル10は、吹出面12の単位面積当たりの穴の密度が均一になるように、シート搬送方向D1(左方向L)、搬送方向に直交するシート幅方向W(前後方向)に、それぞれ等間隔に配置される。具体的には、円柱形状は、高さ5mm、穴径2mmで、穴同士のシート搬送方向D1に関するピッチは14mm、穴同士のシート幅方向Wに関するピッチは14mmである(
図10参照)。尚、ピッチとは、穴の中心と穴の中心との間隔を意味する。
【0039】
シート幅方向Wの穴の列同士は、左右でシート搬送方向D1に7mmずらして配置されている(
図10参照)。また、吹付ノズル10のノズル先端と乾燥ベルト7との距離L1は10mm、吹出面12と乾燥ベルト7との距離L2は15mmである。吹付ノズル10の風速は約33m/sであり、シートの搬送速度は700mm/sである。シート幅方向Wに関し、搬送されるシートSの最大サイズよりも広い領域に空気を吹き付けられるように、吹付ノズル10はシートSの最大サイズ幅よりも広い領域まで設けられている。
【0040】
ここで、本実施形態が解決しようとしている課題について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5に、乾燥部6を本体正面から見たときの詳細図を示す。
図6は、
図5のシートSの先端部を拡大した図である。
図5及び
図6に示すように、温風吹付ユニット8から吹き出された空気は、シートSが温風吹付ユニット8の下側に存在しない場合は、温風吹付ユニット8の下方に対向する乾燥ベルト7に向かって方向f1(
図6参照)に吹き付けられる。吹き付けられた空気は、乾燥ベルト7のベルト面に衝突し、ベルト面に平行な方向f2(
図6参照)に空気の流れる向きを変えることになる。ここで、シートSの先端に上方向Uに向かってカールが発生している場合について考察する。シートSにカールが発生している場合、乾燥ベルト7とシートSの間に、空間Sp1(
図6参照)が生じる。空間Sp1に向けて方向f2に空気が流れ、シートSのカール部分を捲り上がらせることで、シートSを正常に搬送することができなくなる虞がある。これが、本実施形態が解決しようとしている課題である。
【0041】
[本実施形態の特徴的構成]
一方、
図6の方向f1の空気の流れは、シートSの真上から吹き付けることで、シートSを乾燥ベルト7のベルト面に押し付け、シートSの浮き上がりを防止している。本実施形態での構成の詳細及び効果を説明するために、
図7及び
図8を用いて、方向f2に流れる空気及び方向f1に流れる空気がシートSに与える影響とシートSが捲り上がらないための条件について詳しく説明する。
図7は、シートSのカール部分を拡大したものであり、
図8は、シートSを簡略化したモデルの図となっている。
【0042】
図8に示すように、方向f2に流れる空気がシートSを捲り上げる力のモーメントをM2とし、方向f1に流れる空気がシートSを押さえ付ける力のモーメントをM1とする。このとき、シートSが捲り上がらないための条件は、数式1となる。
M2<M1 ・・・(数式1)
【0043】
ここで、
図8を用いて、M2とM1について詳しく説明する。なお、
図8では、シートSのカール部分が、カールの起点をOとして乾燥ベルトユニット5のベルト面から角度θだけ傾斜した直線であると仮定している。
【0044】
まず、M2について説明する。M2は、方向f2に流れる空気がシートSに与える力F2とL20(OからシートSのカール部分中央までの距離)との積によって表されるため、数式2となる。
M2=F2×L20 ・・・(数式2)
ここで、方向f2に流れる空気の圧力をP2とし、カール部のシートSの面積をSsとすると、数式3となる。
F2=P2×Ss ・・・(数式3)
ただし、P2は、数式4となる。
P2=0.5×ρ×(V2*sinθ)2×CD ・・・(数式4)
ρ:空気の密度[N/m3]=11.4
V2:方向f2に流れる空気の風速[m/s]
CD:空気抵抗係数
数式2~数式4により、M2はシートSの位置によらず一定であることが分かる。
【0045】
次に、M1について説明する。M1は、方向f1に流れる空気がシートSに与える力F1と、L11及びL12(Oと方向f1の空気がシートSに当たる位置までの距離)との積によって表されるため、数式5となる。
M1=F1*L11+F1*L12 ・・・(数式5)
ここで、方向f1に流れる空気の圧力をP1とし、方向f1に流れる空気がシートSに当たる面積をScとすると、数式6となる。
F1=P1*Sc ・・・(数式6)
ただし、P1は、数式7となる。
P1=0.5×ρ×(V1×cosθ)2×CD (数式7)
ρ:空気の密度[N/m3]=11.4
V1:方向f1に流れる空気の風速[m/s]
CD:空気抵抗係数
【0046】
数式5~数式7により、M1は方向f1に流れる空気が当たる位置(L11,L12)が変わると、変化する値であることが分かる。M1は、L11及びL12が最大の時、即ち、方向f1に流れる空気のシートSに当たる位置がシートSの先端であるほど、大きな値をとる。ここで、数式1を鑑みると、本実施形態が着目している課題を解決するためには(即ち、シートSが捲り上がらないようにするためには)、L11,L12を大きくし、シートSのなるべく先端を方向f1の風で押さえることが重要であることが分かる。
【0047】
L11及びL12は、シートSと吹付ノズル10との位置関係によって決まる値である。即ち、シートSが搬送される場合、L11とL12はシートSの搬送中の位置によって、時系列的に変化し、M1も時系列的に変化する。シートSが搬送中に常に捲り上がらないようにするためには、時系列的にM1が変化しても、常に数式1が満たされることが必要である。
【0048】
ここで、M1が最も小さくなる時は、
図8に示すように、シートSの先端に方向f1に流れる空気が当たらず、吹付ノズル10が、シート先端のすぐ下流側(
図8のXの位置)に配置される場合である。
図8の位置にシートSがある場合、カール部の長さをL10とすると、L11とL12は数式8のように表される。尚、p1は、吹付ノズル10のシート搬送方向D1における第1ピッチである。
L11=L10-(2×p1)/cosθ
L12=L10-p1/cosθ ・・・(数式8)
【0049】
したがって、これらを数式5に代入すると、M1は数式9のように第1ピッチp1の式で表される。
M1=F1×(L10-(2×p1)/cosθ)+F1×(L10-p1/cosθ)
=F1×(2・L10-3×p1/cosθ) ・・・(数式9)
以上により、M1を大きくして数式1が成り立つようにするためには、吹付ノズル10の第1ピッチp1を小さくすることが重要となる。
【0050】
本実施形態において、
図8に示すようにシートSを配置し、温風吹付ユニット8から空気を吹き付けた時に、シートSの浮き上がりが発生するか否かの実験を行った。実験条件は、風速v:33m/s、シート:GFC-081、カール高さ:10mm(θ=20°)とした。その結果を
図9に示す。
【0051】
図9に示すように、第1ピッチp1が10mm以下であればシートSの浮き上がりは発生せず、10mmを超えると浮き上がりが発生した。即ち、第1ピッチp1は、10mm以下であることが望ましい。第1ピッチp1は、小さければ小さいほどシートSの浮きに対しては有利となる。
【0052】
一方、第1ピッチp1を小さくすると、吹出面12における吹付ノズル10の数が増えることで、総開口面積が大きくなり、風量が同一の場合に風速が低下する問題が発生する。風速が小さくなると、シートSを押さえ付ける力が小さくなりシートの搬送が不安定になることや、乾燥能力が低下する虞がある。更に、シートSを押さえ付ける力が小さくなることにより、シートSが搬送されることにより搬送方向下流側の空気に当たる自走風の影響が相対的に大きくなる。これらを踏まえ、第1ピッチp1の下限は、上限である10mmの半分程度の5mmであることが好ましく、浮き上がりを考慮しなければより好ましくは7mmである。したがって、本実施形態では、第1ピッチp1は、5mm以上、10mm以下としている。但し、これらの具体的な数値は、シートSの搬送速度や材質、温風吹付ユニット8から吹き出す風速など、各種の条件によって変化するものであるため、上記の数値に限られない。
【0053】
[隣接する吹付ユニットの温風吹付穴の配置]
ここで、本実施形態では、
図5に示すように、装置の組み立てや部品の生産を考慮し、乾燥部6の温風吹付ユニット8は1つではなく、複数の温風吹付ユニット8(例えば、8A,8B)をシート搬送方向D1に並べて連結することで構成している。この場合、隣り合う温風吹付ユニット8A,8Bとの間は部品の取り付け上、ある程度の隙間G1を空けざるを得ない。したがって、隣り合う温風吹付ユニット8A,8Bの間のみ、ピッチが他の箇所の第1ピッチp1より大きくなる虞がある。温風吹付ユニット8A,8Bの間の吹付ノズル10のピッチが大きくなると、その部分ではシートSの先端の浮き上がり抑制効果が小さくなるため、ジャムを発生しやすくなる虞がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、連結される温風吹付ユニット8A,8Bにおいて、吹出面12を
図10に示す構成としている。
図10は、互いに連結された温風吹付ユニット8A,8Bを下方から見たときの図である。温風吹付ユニット8A,8Bはそれぞれ第1送風ダクト14A,第2送風ダクト14Bを有している。送風ダクト14Aは、第1ダクトの一例であり、第1吹出面12Aを有し、送風ダクト14Bは、第2ダクトの一例であり、第2吹出面12Bを有している。
図10に示すように、上流の温風吹付ユニット8Aと下流の温風吹付ユニット8Bとの境界部は、直線ではなく凹凸がある面となっている。尚、温風吹付ユニット8A,8Bの送風ダクト14の側面も同様に凹凸となっている。但し、これには限られず、温風吹付ユニット8A,8Bの送風ダクト14の側面は平坦面であり、第1吹出面12Aや第2吹出面12Bを構成するダクト下端部のみがこのような凹凸形状を有するようにしてもよい。
【0055】
ここで、温風吹付ユニット8Aは、第1送風ユニットの一例であり、複数の吹付ノズル10Aを有する。複数の吹付ノズル10Aは、複数の第1吹出穴の一例であり、シートSを乾燥ベルト7に押し付けるために乾燥ベルト7に向けて空気を吹き出す。即ち、複数の吹付ノズル10Aは、第1送風ダクト14Aにより案内された空気を、乾燥ベルト7によって搬送されるシートSに向けて吹き出す。温風吹付ユニット8Bは、第2送風ユニットの一例であり、乾燥ベルト7によるシート搬送方向D1に関して温風吹付ユニット8Aの下流に隣接して配置され、複数の吹付ノズル10Bを有する。複数の吹付ノズル10Bは、複数の第2吹出穴の一例であり、シートSを乾燥ベルト7に押し付けるために乾燥ベルト7に向けて空気を吹き出す。即ち、複数の吹付ノズル10Bは、第2送風ダクト14Bにより案内された空気を、乾燥ベルト7によって搬送されるシートSに向けて吹き出す。
【0056】
そして、複数の吹付ノズル10Aのうち、任意の第1穴10aと、第1穴10aのシート搬送方向D1の下流に位置し、且つ、第1穴10aとのシート搬送方向D1に関する距離が最も短くなる第2穴10bとのピッチを第1ピッチp1とする。また、シート搬送方向D1に関し、複数の吹付ノズル10Aのうちの最下流に位置する最下流穴10Aaと、複数の吹付ノズル10Bのうちの最上流に位置する最上流穴10Baとのピッチを第2ピッチp2とする。この場合に、第2ピッチp2は、第1ピッチp1以下(第1ピッチ以下)の長さとなるようにしている。本実施形態では、第2ピッチp2を第1ピッチp1と同じに設定している。つまり、本実施形態では、シート搬送方向D1において、第1穴10aと第2穴10bとの最短距離を、第2ピッチp2と定義する。また、複数の吹付ノズル10Aのシート搬送方向D1における第1ピッチp1の平均長さは、第2ピッチp2以上(ピッチ以上)である。
【0057】
温風吹付ユニット8Aは、乾燥ベルト7に対向して配置され、複数の吹付ノズル10Aが形成された第1吹出面12Aを有する。第1吹出面12Aのシート搬送方向D1の下流端部は、最下流穴10Aaが形成された第1部分12A1と、第1部分12A1よりもシート搬送方向D1の上流側に位置する第2部分12A2とを有する。温風吹付ユニット8Bは、乾燥ベルト7に対向して配置され、複数の吹付ノズル10Bが形成された第2吹出面12Bを有する。第2吹出面12Bのシート搬送方向D1の上流端部は、最上流穴10Baが形成された第3部分12B3と、第3部分12B3よりもシート搬送方向D1の下流側に位置する第4部分12B4とを有する。
【0058】
温風吹付ユニット8A,8B間をこのような構成にすることで、隙間G1の影響によりピッチがダクト間で長くなってしまうことを回避することができる。具体的には、下流の温風吹付ユニット8Bの最上流穴10Baが上流の温風吹付ユニット8Aの最下流穴10Aaにシート搬送方向D1に近づけて配置することができる。
【0059】
また、シート搬送方向D1に関して、第1部分12A1が第4部分12B4に対向し、第2部分12A2が第3部分12B3に対向する。そして、シート搬送方向D1に交差するシート幅方向Wから見た場合に、第1部分12A1の少なくとも一部と第3部分12B3の少なくとも一部とが重なるように配置されている。
【0060】
更に、第1部分12A1は複数設けられ、第3部分12B3は複数設けられている。そして、複数の第1部分12A1と複数の第3部分12B3は、シート幅方向Wに関して交互に配置されている。
【0061】
また、本実施形態では、温風吹付ユニット8Aの複数の吹付ノズル10Aは、第1グループ10G1と第2グループ10G2を含む複数のグループに分けられている。第1グループ10G1は、シート搬送方向D1に沿って一列に並んで配置された吹付ノズル10Aを含むグループである。第2グループ10G2は、第1グループ10G1とはシート幅方向Wに異なる位置でシート搬送方向D1に沿って一列に並んで配置された吹付ノズル10Aを含むグループである。第1グループ10G1と第2グループ10G2とは、吹付ノズル10の配置が長方形の頂点のような配置ではなく、シート搬送方向D1にずれて互い違いになるように配置されている。即ち、シート幅方向Wから見て、第1グループ10G1の吹付ノズル10Aと第2グループ10G2の吹付ノズル10Aとは、シート搬送方向D1に交互に配置されている。第1ピッチp1は、シート幅方向Wから見て、第1グループ10G1の任意の吹付ノズル10Abと、該吹付ノズル10Abに対してシート搬送方向D1に並ぶ第2グループ10G2の吹付ノズル10Acとのシート搬送方向D1に関するピッチである。
【0062】
上述したように、本実施形態の乾燥モジュール3000によれば、隣り合う温風吹付ユニット8A,8Bの吹付ノズル10のピッチである第2ピッチp2を、第1ピッチp1以下の長さとなるようにしている。これにより、温風吹付ユニット8A,8B間であるにも関わらず、ピッチが長くなることがなくなり、空気の吹き付けによりシートSを乾燥させながらも、シートSの浮き上がりを抑制することができる。
【0063】
尚、本実施形態では、第1吹出面12Aのピッチはすべて等間隔としている。しかしながら、これには限られず、シートSの浮き上がりが起こらない程度に異なる間隔であってもよい。さらに、第1ピッチp1は、第1吹出面12Aのピッチを指しているが、第1吹出面12A内のピッチを平均して算出されてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、第1部分12A1は複数設けられ、第3部分12B3は複数設けられている。このため、シート幅方向Wの広域に亘ってシートSをベルト面に押さえることができ、シートSの浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0065】
尚、上述した実施形態では、第1グループ10G1の吹付ノズル10Aと第2グループ10G2の吹付ノズル10Aとは、シート幅方向Wから見てシート搬送方向D1に交互に配置されている場合について説明したが、これには限られない。例えば、全ての吹付ノズル10が長方形の頂点となる位置に配置されるようにしたり、正六角形の頂点となる位置に配置されるようにしてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、
図1に示されるような枚葉紙印刷用の画像形成システムの構成について説明した。しかしながら、画像形成システムは、枚葉紙印刷機に限定されず、連帳印刷機においても適用できる。連帳印刷機では、シートの最先端部において本実施形態の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
7…乾燥ベルト(搬送ベルト)、8A…温風吹付ユニット(第1送風ユニット)、8B…温風吹付ユニット(第2送風ユニット)、10a…第1穴、10b…第2穴、10A…吹付ノズル(第1吹出穴)、10Aa…最下流穴、10B…吹付ノズル(第2吹出穴)、10Ba…最上流穴、10G1…第1グループ、10G2…第2グループ、12A…第1吹出面、12A1…第1部分、12A2…第2部分、12B…第2吹出面、12B3…第3部分、12B4…第4部分、14A…第1送風ダクト(第1ダクト)、14B…第2送風ダクト(第2ダクト)、3000…乾燥モジュール(乾燥装置)、p1…第1ピッチ、p2…第2ピッチ、S…シート