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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175379
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ロボット用フィンガー装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B25J15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093121
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】加藤 諒太
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS02
3C707ES03
3C707ET02
3C707EU14
3C707HT21
3C707HT22
3C707MT10
(57)【要約】
【課題】ワークを把持する動作を実行する前に予めフィンガー片先端間を開放させておき、ワークが置かれている面までフィンガー装置を下降させたときにフィンガー片が閉じてワークを把持する動作をアクチュエータ無しで実現する。
【解決手段】鋏状に開閉自在な2つのフィンガー片60、80、閉止方向に各フィンガー片を弾性付勢する第1の弾性部材110、開放方向への操作力が入力された時に各フィンガー片を開放方向へ回動させ、開放方向への操作力が解除された時に第1の弾性部材による付勢力により各フィンガー片を閉止方向に回動させるギヤ機構150、及び該ギヤ機構に対して開放方向への操作力を入力する入力部材185、を備えたフィンガー片開閉機構50と、フィンガー片開閉機構を開閉操作する開閉操作機構200と、を備え、開閉操作機構は、初動開放ロック手段220と、ロック解除手段600と、開放状態ロック手段700と、を備えている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に把持部を備え、且つ他部に被作動部を夫々備えた2つのフィンガー片、前記各フィンガー片を夫々の中間部で略X字状に交差させた状態で鋏状に開閉自在に連結する回動支点、前記各把持部同士を圧接させる閉止方向に前記各フィンガー片を弾性付勢する第1の弾性部材、前記各被作動部に連結されると共に開放方向への操作力が入力された時に前記各フィンガー片を前記第1の弾性部材による付勢に抗して開放方向へ回動させ、前記開放方向への操作力が解除された時に前記第1の弾性部材による付勢力により前記各フィンガー片を閉止方向に回動させるギヤ機構、及び該ギヤ機構に対して前記開放方向、及び閉止方向への操作力を入力する入力部材、を備えたフィンガー片開閉機構と、
前記フィンガー片開閉機構を開閉操作する開閉操作機構と、を備え、
前記開閉操作機構は、
閉止状態にある前記各フィンガー片を開放させて初動開放ロック状態とする初動開放ロック手段と、
前記各フィンガー片の初動開放ロック状態を解除して前記第1の弾性部材の付勢力により前記各フィンガー片を閉止方向へ回動させて前記各把持部間でワークを把持させるロック解除手段と、
前記各把持部間でワークを把持した状態にある前記各フィンガー片を開放方向へ回動させ、且つ開放した状態でロックさせる開放状態ロック手段と、
前記各構成要素を支持する取付けベース部と、
を備えていることを特徴とするロボット用フィンガー装置。
【請求項2】
前記開閉操作機構は、軸芯回りに回転自在であり、且つ軸方向へ進退すると共に、突出時に前記入力部材を前記開放方向へ操作し、且つ退避時に前記入力部材を閉止方向に回動させる回転出没部材と、前記入力部材と前記回転出没部材との間において進退自在に前記取付けベース部に支持された連結部材と、該連結部材を介して該回転出没部材を退避方向へ付勢する第2の弾性部材と、前記回転出没部材の退避側において軸方向へ出没自在に配置され突出時に前記回転出没部材を突出方向へ移動させる出没部材と、該出没部材を退避方向へ付勢する第3の弾性部材と、前記出没部材に一体化されると共に前記取付けベース部により該出没部材の出没方向と並行な方向へ進退自在に支持され、常時においては前記第3の弾性部材の付勢により前記出没部材の退避方向と同方向である下方への進出位置に保持され、該第3の弾性部材に抗して前記出没部材の突出方向と同方向である退入方向へ押圧された時に該退入方向へ移動するリリース操作片と、
前記取付けベース部に固定されて前記回転出没部材、及び前記出没部材の軸方向移動をガイドするガイド突起と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロボットフィンガー装置。
【請求項3】
前記回転出没部材の下部には、その周縁に沿って配置されて軸方向下方へ延びる被係止突部と、該被係止突部の周方向に隣接配置されて軸方向上方へ延びる被係止凹部と、から成る被係止部を少なくとも一対備え、
前記出没部材の上部には、その周縁に沿って軸方向上方へ延びる係止突部と、該係止突部の周方向に隣接配置されて軸方向下方へ延びる係止凹部と、から成る係止部を少なくとも一対備え、
前記各フィンガー片が初期の閉止状態にある時に、前記出没部材は退避位置にあり、且つ、前記回転出没部材は該出没部材の前記係止突部の先部と前記被係止突部の先部とを接触、或いは近接させた状態で退避位置にあり、
前記初動開放ロック手段は、前記退避位置にあった前記出没部材が突出して前記回転出没部材を突出させつつ回転させて前記被係止突部を前記ガイド突起上に移動させて係止させることにより前記入力部材を開放方向に操作して開放姿勢に移行させ、且つ前記出没部材が退避位置に戻った時点以降にあっても該入力部材を開放姿勢に維持し、
前記ロック解除手段は、前記退避位置にあった前記出没部材が突出位置に移動したときに前記係止突部の先部により前記被係止突部を押し上げつつ回転させることにより前記ガイド突起上から離脱させて前記被係止突部が前記係止凹部内に嵌合するように前記回転出没部材を退避方向へ移動させることにより前記入力部材を閉止方向へ操作し、且つ前記第3の弾性部材により前記出没部材が退避位置に戻った時点以降にあっても前記回転出没部材を前記入力部材から離間した退避位置に保持し、
前記開放状態ロック手段は、退避位置にある前記出没部材が突出位置に達した後で前記係止突部の先部により前記被係止突部の先部を突出方向へ移動させつつ回転させて前記被係止突部の先部を前記ガイド突起上に移動させて係止させることにより前記入力部材を開放方向へ操作し、且つ前記第3の弾性部材の付勢により前記出没部材が退避位置に戻った時点以降にあっても前記回転出没部材を突出位置に保持することを特徴とする請求項2に記載のロボットフィンガー装置。
【請求項4】
前記被係止突部は、前記出没部材の係止突部の先部と接した状態において前記第2の弾性部材による退避方向への付勢力との協働により前記回転出没部材を一方向に回転させる第1の傾斜ガイド面と、第1の傾斜ガイド面の周方向終端部に設けられて前記出没部材の一部と係止して回転を停止させられるストッパ部と、該ストッパ部の下部から円周方向へ延びる第2の傾斜ガイド面と、を備え、
前記係止突部は、前記回転出没部材の前記被係止突部の先部と接した状態において前記第2の弾性部材による退避方向への付勢力との協働により前記回転出没部材を一方向に回転させる第1の傾斜ガイド面と、該傾斜ガイド面の周方向終端部に設けられて前記回転出没部材のストッパ部を係止して一方向への回転を停止させるストッパ部と、該ストッパ部の上端から円周方向へ延びる第2の傾斜ガイド面と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載のロボットフィンガー装置。
【請求項5】
前記リリース操作片には、前記各フィンガー片の把持部により把持されたワークが該リリース操作片と干渉することを回避させる非干渉空所が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のロボットフィンガー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット用フィンガー装置、特に産業ロボットや協働ロボットに適したフィンガー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ライン、物流ライン等においては、自動化のために各種ワークをピックアップしたり、ピックアップしたワークをラインに投入する等の種々の目的のために各種の産業ロボット(ハンドリングロボット)が導入されている。産業ロボットはロボットアームを備え、その先端にはワークを着脱するロボットフィンガー装置が設けられている。
【0003】
特許文献1には、鋏状に開閉する2つのフィンガー片の先端同士を閉止させる方向にバネ付勢した状態において、各フィンガー片の先端間にワークを押し当てて強制開放させることで、ばね力によってワークを保持する構成と、閉止状態にある各フィンガー片を開放方向へ作動させるリリース手段と、が開示されている。これによれば、部品点数の少ない簡素、且つ省スペースな構造でありながら、アクチュエータを用いることなくワークの把持動作、及びリリース動作を実現することができる。
しかし、各フィンガー片の先端間を押し広げてワークを挟圧保持するために各フィンガー片の先端間にV溝状の凹所を形成しておく必要があり、ピッキングできるワークの形状とサイズが限られることとなる。例えば、外面形状が曲面状でないワーク、例えば直方体状のワークをピッキングしようとした場合に各フィンガー片の先端が角部に引っ掛かりを起こしてスムーズな押し広げができなくなる。また、V溝よりも小さいサイズのワークはこれをV溝内に押し込んだとしても各フィンガー片の先端間を押し広げることができないため、ピッキングが不可能となる。
また、リリース手段がフィンガー片により把持されたワークと干渉し易い位置関係にあるため、長尺なワークをピッキングできないという問題も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2022-174518
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ワークをピッキングする動作を実行する前に予めフィンガー片先端間を開放させておき、ワークが置かれている面まで下降させたときにフィンガー片が閉じてピッキングを行う動作を、アクチュエータ無しで実現できるロボット用フィンガー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のロボット用フィンガー装置は、一部に把持部を備え、且つ他部に被作動部を夫々備えた2つのフィンガー片、前記各フィンガー片を夫々の中間部で略X字状に交差させた状態で鋏状に開閉自在に連結する回動支点、前記各把持部同士を圧接させる閉止方向に前記各フィンガー片を弾性付勢する第1の弾性部材、前記各被作動部に連結されると共に開放方向への操作力が入力された時に前記各フィンガー片を前記第1の弾性部材による付勢に抗して開放方向へ回動させ、前記開放方向への操作力が解除された時に前記第1の弾性部材による付勢力により前記各フィンガー片を閉止方向に回動させるギヤ機構、及び該ギヤ機構に対して前記開放方向、及び閉止方向への操作力を入力する入力部材、を備えたフィンガー片開閉機構と、前記フィンガー片開閉機構を開閉操作する開閉操作機構と、を備え、前記開閉操作機構は、閉止状態にある前記各フィンガー片を開放させて初動開放ロック状態とする初動開放ロック手段と、前記各フィンガー片の初動開放ロック状態を解除して前記第1の弾性部材の付勢力により前記各フィンガー片を閉止方向へ回動させて前記各把持部間でワークを把持させるロック解除手段と、前記各把持部間でワークを把持した状態にある前記各フィンガー片を開放方向へ回動させ、且つ開放した状態でロックさせる開放状態ロック手段と、前記各構成要素を支持する取付けベース部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクチュエータを用いることなくあらゆる形状、サイズのワークの把持動作、及びリリース動作を実現できるロボット用フィンガー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るロボット用フィンガー装置における各フィンガー片の初期閉止状態を示す正面側斜視図、及び前後のベース部材を除去した正面側斜視図であり、(c)及び(d)は各フィンガー片の閉止状態を示す背面側斜視図、及び前後のベース部材を除去した背面側斜視図である。
図2】(a)及び(b)は各フィンガー片が初動開放ロック状態に移行する過程を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。
図3】(a)及び(b)は各フィンガー片が初動開放ロック状態に移行を完了した状態を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。
図4】(a)及び(b)はワークを把持する動作手順を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。
図5】(a)及び(b)はワークを把持する動作手順を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。
図6】(a)及び(b)はワークを把持完了した状態を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。
図7】(a)及び(b)は各フィンガー片により把持したワークをリリースする状態を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。
図8】(a)は各フィンガー片の初期閉止状態における開閉ユニットSUの状態を示す正面図であり、(b)は各フィンガー片が初動開放ロック状態に移行する過程を示す開閉ユニットSUの正面側図であり、(c)は初動開放ロック状態への移行を完了した開閉ユニットSUの状態を示す正面図である。
図9】(a)(b)及び(c)はワークを把持する際の開閉ユニットSUの動作手順を示す正面図であり、(d)は各フィンガー片により把持したワークをリリースする開閉ユニットSUの状態を示す正面図である。
図10】(a)及び(b)は各フィンガー片が初期の閉止状態にあるときのフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)は初期の閉止状態における初動開放ロック手段の一部(回転出没部材、出没部材、ガイド突起)の状態を示す側面図、及び斜視図である。
図11】初動開放ロック手段の動作手順(初動開放ロック状態への移行過程)の説明図であり、(a)及び(b)は開閉ユニットSUに対してリリース操作片が上昇して入力部材を押し上げたときの背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時の初動開放ロック手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は回転出没部材の回転が進行して下端角部がガイド突起の上端面にオーバーハングしている状態を示す図である。
図12】(a)及び(b)は初動開放ロック状態への移行が完了した状態を示す背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時の初動開放ロック手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図である。
図13】ロック解除手順(ワーク把持手順)を示す説明図であり、(a)及び(b)はロック解除手段が初動開放ロック状態を解除してワークを把持する直前の状態を示すフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は(d)を別の角度から視た斜視図である。
図14】ロック解除手順を示す説明図であり、(a)及び(b)はロック解除手段が初動開放ロック状態を解除してワークを把持している状態を示すフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は回転出没部材の下端部がガイド突起の下部突部の上面に接した状態を示す図である。
図15】ロック解除手順を示す説明図であり、(a)及び(b)は各フィンガー片がワークを把持した状態でフィンガー装置が上方に移動した状態を示す背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は回転出没部材の下端部がガイド突起の下部突部の上面から落下した状態を示す図である。
図16】開放状態ロック手順(ワークリリース手順)を示す説明図であり、(a)及び(b)は各フィンガー片が開放して把持していたワークをリリースした状態を示すフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段(開放状態ロック手段)の一部の状態を示す側面図、及び斜視図である。
図17】シャフトホルダ内に位置している初動開放ロック状態にある回転出没部材、出没部材、及びガイド突起を示す斜視図である。
図18】(a)は開放ロック状態にある回転出没部材、出没部材、及びガイド突起を示す斜視図であり、(b)は同各部材の分解斜視図であり、(c)は出没部材の先端面の形状を示す斜視図であり、(d)は一つのガイド突起の斜視図である。
図19】フィンガー装置の正面側分解斜視図である。
図20】(a)乃至(d)は初期閉止状態にあるフィンガー片開閉ユニットを作動させてフィンガー片を初動開放ロック状態に移行させるためにロボット用フィンガー装置を移動する手順を示す図である。
図21】(a)乃至(d)は初動開放ロック状態にあるフィンガー片によりワークを把持するためにロボット用フィンガー装置を移動する手順を示す図である。
図22】(a)(b)及び(c)はフィンガー片により把持したワークをリリースさせるためにロボットフィンガー装置を移動させる手順を示す説明図である。
図23】(a)及び(b)はロボット用フィンガー装置が夫々異なった形状のワークを把持している状態を示す説明図である。
図24】ロボット用フィンガー装置の変形実施形態の説明図である。
図25】ロボット用フィンガー装置の変形実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るロボット用フィンガー装置における各フィンガー片の閉止状態を示す正面側斜視図、及び前後のベース部材を除去した正面側斜視図であり、(c)及び(d)は各フィンガー片の閉止状態を示す背面側斜視図、及び前後のベース部材を除去した正面側斜視図である。図2(a)及び(b)は各フィンガー片が初動開放ロック状態に移行する過程を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。図3(a)及び(b)は各フィンガー片が初動開放ロック状態に移行を完了した状態を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。図4(a)及び(b)はワークを把持する動作手順を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。図5(a)及び(b)はワークを把持する動作手順を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。図6(a)及び(b)はワークを把持完了した状態を前後のベース部材を除去した状態で示す正面側斜視図、及び背面側斜視図である。図7(a)及び(b)は各フィンガー片により把持したワークをリリースする状態を前後のベース部材を除去した状態で示す説明図である。図8(a)は各フィンガー片の閉止状態における開閉ユニットSUの状態を示す正面図であり、(b)は各フィンガー片が初動開放ロック状態に移行する過程を示す開閉ユニットSUの正面側図であり、(c)は初動開放ロック状態への移行を完了した開閉ユニットSUの状態を示す正面図である。図9(a)(b)及び(c)はワークを把持する際の開閉ユニットSUの動作手順を示す正面図であり、(d)は各フィンガー片により把持したワークをリリースする開閉ユニットSUの状態を示す正面図である。
【0011】
図10は(a)及び(b)は各フィンガー片が初期の閉止状態にあるときのフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)は初期の閉止状態における初動開放ロック手段の一部(回転出没部材、出没部材、ガイド突起)の状態を示す側面図、及び斜視図である。図11は初動開放ロック手段の動作手順の説明図であり、(a)及び(b)は開閉ユニットSUに対してリリース操作片が上昇して入力部材を押し上げたときの背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時の初動開放ロック手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は回転出没部材の回転が更に進行して下端角部がガイド突起の上端面にオーバーハングしている状態を示す図である。図12は初動開放ロック手段の動作手順の説明図であり、(a)及び(b)は初動開放ロック状態への移行が完了した状態を示す背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時の初動開放ロック手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図である。図13はロック解除手順(ワーク把持手順)を示す説明図であり、(a)及び(b)はロック解除手段が初動開放ロック状態を解除してワークを把持する直前の状態を示すフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は(d)を別の角度から視た斜視図である。図14はロック解除手順を示す説明図であり、(a)及び(b)はロック解除手段が初動開放ロック状態を解除してワークを把持している状態を示すフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は回転出没部材の下端部がガイド突起の下部突部の上面に接した状態を示す図である。図15(a)及び(b)は各フィンガー片がワークを把持した状態でフィンガー装置が上方に移動した状態を示す背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段の一部の状態を示す側面図、及び斜視図であり、(e)は回転出没部材の下端部がガイド突起の下部突部の上面から落下した状態を示す図である。図16(a)及び(b)は各フィンガー片が開放して把持していたワークをリリースした状態を示すフィンガー装置の背面図、及び背面側ベース板を除去した状態の背面図であり、(c)及び(d)はこの時のロック解除手段(開放状態ロック手段)の一部の状態を示す側面図、及び斜視図である。図17はシャフトホルダ内に位置していて開放ロック状態にある回転出没部材、出没部材、及びガイド突起を示す斜視図である。図18(a)は開放ロック状態にある回転出没部材、出没部材、及びガイド突起を示す斜視図であり、(b)は同各部材の分解斜視図であり、(c)は出没部材の先端面の形状を示す斜視図であり、(d)は一つのガイド突起の斜視図である。図19はフィンガー装置の正面側分解斜視図である。
図20(a)乃至(d)は初期状態にあるフィンガー片開閉ユニットを作動させてフィンガー片を初動開放ロック状態に移行させるためにロボット用フィンガー装置を移動する手順を示す図である。図21(a)乃至(d)は初動開放ロック状態にあるフィンガー片によりワークを把持するためにロボット用フィンガー装置を移動する手順を示す図である。図22(a)(b)及び(c)はフィンガー片により把持したワークをリリースさせるためにロボットフィンガー装置を移動させる手順を示す説明図である。
【0012】
[概略構成]
本発明に係るロボット用フィンガー装置(以下、フィンガー装置、という)1は、ロボットアームの先端に取付けられる取付けベース部10と、取付けベース部10の取付け部11、12に夫々ビスにより固定された正面側ベース板(ベース部材)20、及び背面側ベース板(ベース部材)30と、各ベース板20、30により支持されたフィンガー片開閉機構50と、フィンガー片開閉機構の入力部180に連結されてフィンガー片開閉機構に対して開放方向、及び閉止方向への操作力を入力する際の入力部となる入力部材185と、入力部材を介してフィンガー片開閉機構50に対して各フィンガー片60、80を開放させる方向への操作力(開放操作力)を付与したり、該開放操作力を解除する開閉操作機構(第2ユニット)200とを概略備える(図1等を参照)。
フィンガー片開閉機構50は、フィンガー片60、80、回動支点100、第1の弾性部材110、ギヤ機構(開閉力伝達機構)150、入力部材185等を備える。
取付けベース部10、ベース部材20、30、及びフィンガー片開閉機構50は、開閉ユニットSU(第1ユニット)を構成している。
開閉操作機構200は、開閉ユニットSUに対して開放操作力を付与したり解除する。
【0013】
[フィンガー片開閉機構50の構成及び動作]
図1乃至図9等に示すように、フィンガー片開閉機構50は、先端部(一部、一端部)に把持部62、82を夫々備え、且つ基端部(他部、他端部)に被作動部64、84を夫々備えた第1のフィンガー片60、及び第2のフィンガー片80と、2つのフィンガー片60、80を夫々の中間部(先端部と基端部との間)でX字状に交差させた状態で鋏状に開閉自在に連結する回動支点100と、各把持部62、82同士を圧接(接近)させる閉止方向に各フィンガー片を弾性付勢する圧接用(把持用)の第1の弾性部材(把持用弾性部材)110と、各フィンガー片の被作動部64、84に連結されると共に、開放方向への操作力が入力された時に各フィンガー片を第1の弾性部材110による付勢に抗して開放方向へ回動させ、開放方向への操作力が解除された時に第1の弾性部材による付勢力により各フィンガー片を閉止方向に回動させるギヤ機構(開閉力伝達機構)150と、ギヤ機構に対して開放方向、及び閉止方向への操作力を入力する入力部材185と、を備える。
【0014】
図19のフィンガー装置の分解斜視図にも示すように、回動支点100は、両ベース板20、30間に固定された軸部100aと、各フィンガー片の中間部に貫通形成された穴100bと、から構成され、軸部100aを各穴100bに挿通することにより、各フィンガー片は鋏状に開閉する。また、軸部100aは後述するリリース操作片450と干渉する位置にあるため、リリース操作片450の対応箇所には軸部100aを挿通する長穴458が形成されている。
【0015】
各フィンガー片の先端に設けられた把持部62、82は、閉止した状態において特許文献1のロボット用フィンガー装置のように各把持部の突き合わせ部に三角形状(V字溝状)の切欠き部(凹部)を必要としない。本例では各把持部の対向面に互いに先端で接触し合う小突起62a、82aを所定の間隔を隔てて2個ずつ配置している。
第1の弾性部材110は、被作動部64、84間に端部を固定されて各把持部間を接近させる方向へ付勢する引張りコイルバネである。
【0016】
入力部材(入力部)185は、フィンガー片開閉機構50(ギヤ機構150)への開放操作力の入力部に相当する回動軸180を介して各フィンガー片の被作動部64、84に夫々連結されている。入力部材185は、ベース板20、30に設けた軸穴21、31により回動自在に支持された回動軸180の端部にL字状に一体化されている。入力部材185は、後述する初動開放ロック手段220が各フィンガー片を開放させる開放方向へ動作する時に初動開放ロック手段220からの開放操作力をギヤ機構150を介して各フィンガー片に伝達し、第1の弾性部材110による閉止方向(各フィンガー片を閉止させる方向)への付勢力に抗して各フィンガー片を開放方向へ回動させる手段である。更に、入力部材185は、初動開放ロック手段220からの開放方向への操作力が入力されない解除時には第1の弾性部材110による付勢力を利用して各フィンガー片を閉止方向(閉止位置)へ復帰させる手段である。
また、入力部材185は、ロック解除手段600が各フィンガー片の初動開放ロック状態を解除するための動作を行う際、及び開放状態ロック手段700が各フィンガー片を開放状態にロックするための動作を行う際に、それぞれ各手段からの操作力(駆動力)をギヤ機構150に伝達する。この点についての詳細は後述する。
【0017】
ギヤ機構150は、入力部材185の回動軸180に軸芯を一体化された第1のギヤ160と、第1のフィンガー片60の被作動部64に設けた軸部64aにより一部(下部)を回動自在に軸支され、且つ他部(上部)に第1のギヤのギヤ部160aと噛合するギヤ部165aを有した第1のラックギヤ165と、ベース板20、30上の第1のギヤ160と隣接した位置に設けた軸により回動自在に軸支されて第1のギヤのギヤ部160aと噛合するギヤ部170aを有した第2のギヤ170と、第2のフィンガー片80の被作動部84に設けた軸部84aにより一部を回動自在に軸支され、且つ他部に第2のギヤのギヤ部170aと噛合するギヤ部175aを備えた第2のラックギヤ175と、を概略備えている。
【0018】
第1のラックギヤ165の下面は、ベース板30から突設された軸部により中心孔を軸支されたガイドローラ166の外周面に接しており、第1のラックギヤはガイドローラ166の外周面に沿って所定の軌道に沿って揺動する(図1乃至図7)。同様に、第2のラックギヤ175の下面は、ベース板20から突設された軸部27により中心孔を軸支されたガイドローラ176の外周面に接しており、第2のラックギヤはガイドローラ176の外周面に沿って揺動する。
【0019】
[開閉操作機構200(220、600、700)の概略的な構成、及び動作]
開閉操作機構(第2ユニット)200は、リリース操作片450の出没動作に起因して入力部材185を押圧したり、押圧を解除することにより入力部材を図1(c)(d)等に示した第1の位置(把持姿勢、閉止姿勢)と、図2(b)、図3(b)等に示した第2の位置(把持解除姿勢、開放姿勢)との間で回動させる開閉操作を行う手段である。
また、開閉操作機構200は、入力部材185を介してギヤ機構150を操作して各フィンガー片を開閉させると共に、閉止状態(初期状態)にあった各フィンガー片をワークの把持準備のために開放させてから該開放状態にてロック(維持)させる初動開放ロック手段220と、初動開放ロック手段により開放状態にロックされている各フィンガー片のロックを解除して第1の弾性部材110の付勢力により各フィンガー片を閉止方向へ回動させて各把持部間でワークWを把持させるロック解除手段600と、各把持部間でワークを把持した状態にある各フィンガー片を開放方向へ回動させてワークを離脱(リリース)させ、且つ開放した状態でロックさせる(開放ロック状態とする)開放状態ロック手段700と、前記各構成要素を支持する取付けベース部10(20、30)と、を概略備えている。
入力部材185は、前記各手段220、600、700により各フィンガー片を開放させる開放方向と各フィンガー片を閉止させる閉止方向へ夫々操作される。
初動開放ロック手段220、ロック解除手段600、及び開放状態ロック手段700は、夫々を構成する部品は同じ(共通)であり、各構成部品の動作タイミング、動作手順が手段毎に異なっているため、夫々独自の機能を発揮している。
【0020】
[開閉操作機構200の具体的な構成、及び動作]
<概要説明>
図1乃至図16に示すように、初動開放ロック手段220、ロック解除手段600、及び開放状態ロック手段700は、軸芯回りに一方向へ回転自在であり、且つ軸方向へ直線的に進退(出没)すると共に、所定距離以上突出した時に入力部材185を各フィンガー片を開放させる開放方向(リリース方向)へ操作し(作動させ)、且つ退避方向への移動時に入力部材を閉止方向(各フィンガー片を閉止させる方向)に回動させる回転出没部材300と、入力部材185と回転出没部材300との間において前記軸方向と並行な方向へ進退自在に取付けベース30により支持された連結部材250と、連結部材250を介して回転出没部材300を退避方向(没入方向、図1乃至図16では下方)へ付勢する第2の弾性部材(連結部材スプリング)260と、回転出没部材300の退避側において軸方向へ出没(進退)自在に配置され突出時に回転出没部材を突出方向(図1乃至図16では上方)へ押圧して移動させる出没部材350と、出没部材を退避方向へ付勢することにより該出没部材を退避位置に移動(停止)させている時には回転出没部材を突出方向へ移動させないようにする第3の弾性部材420と、出没部材に一体化されると共に取付けベース部20、30により該出没部材の出没方向と並行な方向へ進退自在に支持され、常時においては第3の弾性部材420の付勢により出没部材の退避方向(下方)と同方向である下方への進出位置に保持され、該第3の弾性部材に抗して出没部材の突出方向(上方)と同方向である退入方向へ押圧された時に該退入方向へ移動して出没部材を回転出没部材へ向けて移動させるリリース操作片450と、取付けベース部に固定されて回転出没部材、及び出没部材の軸方向移動をガイドするガイド突起510と、を備えている。
【0021】
本実施形態では、回転出没部材300の上端部は連結部材250の下面に設けた穴251内に回転自在な状態で入り込んでおり、しかも第2の弾性部材260により連結部材が下方へ押圧されていることにより、回転出没部材と連結部材とは常に一体的に上下動する。回転出没部材、及び出没部材はシャフトホルダ500の挿入空所504により出没方向へ常時ガイドされている。従って回転出没部材の先端部により支持された連結部材は安定した軌道で上下方向へ進退する。また、ベース部30に設けた上下方向に延びるガイドレール252が連結部材の左側面をガイドして上下動作を更に安定化させている。
なお、出没部材300の突出時に回転出没部材350を応答性よく突出させる為には、出没部材が退避位置にある待機時にも出没部材先端と回転出没部材の下部とを接触させておくのが好ましいが、接触していることは絶対要件ではなく、両者間にクリアランスがあってもよい。
更に、各手段220、600、700は、図1(c)、図10等に示すように背面側ベース板30に固定されたシャフトホルダ500を備える。シャフトホルダ500は、図17中に破線で示すように、上下方向に貫通して回転出没部材330、及び出没部材350を内部に挿通支持する円筒状の挿入空所504を備えた四角柱状の中空体である外枠体502と、挿入空所504の内壁に180度の周方向間隔で固定されたガイド突起510と、を備えている。外枠体502はネジ止め部502aを備え、ネジ止め部を用いて背面側ベース部30にネジ止め固定される。
【0022】
以上のように、回転出没部材300、及び出没部材350は、シャフトホルダ500の挿入空所504内に挿通されて直線的に上下動可能に支持されている。回転出没部材300は、リリース操作片450の出没動作に連動して、第2の弾性部材260、出没部材350、ガイド突起510(挿入空所504の内壁)の協働により一方向へ断続的に回転しながら所定の出没動作を行うことにより連結部材250を介して開閉ユニットSUを作動させる。
【0023】
<ガイド突起>
シャフトホルダ500のガイド突起510は、図10に示した各フィンガー片の初期閉止状態では最下降位置にある出没部材350との協働により、回転出没部材300を最下降位置に退避させた状態で保持している。この時、ガイド突起510はそのほぼ全長が回転出没部材の被係止凹部340内に嵌合した状態にある。
図11に示した初動開放ロック状態への移行過程、及び図12に示した初動開放ロック完了段階では、ガイド突起の上端部(上面522)で回転出没部材の下部を支持して回転出没部材が更に下降することを阻止する。
ガイド突起510は、図13図14図15の初動開放ロック状態の解除とワークを把持する行程においては、出没部材により一旦押し上げられることによりガイド突起の上端部から離脱した回転出没部材が回転しながら下降する動作を妨げないように構成されている。
各ガイド突起510は、図17図18に示すように、円筒状の挿入空所504の軸方向と並行に伸びて横断面形状が略扇形の突条部520と、突条部の下部から横方向、即ち円周方向(やや斜め下方向)へ突出した下部突部530と、を概略備える。図18等はシャフトホルダ500を構成する外枠体502を省略してガイド突起のみを示した断面図である。つまり、突条部520の外周面と下部突部530の外周面530bは実際には外枠体502(挿入空所504の内壁)に一体化されているが、図示説明の便宜により外枠体を図示省略している。
【0024】
図18(d)に示すように、突条部520の上面522の平面視形状は細長い扇形をしており、外径側から内径方向へ向けて所定の角度で下向きに傾斜した傾斜面となっている。突条部520は、扇形状のかなめ部に相当する内周部520aが挿入空所504の中心部側(内径側)に位置しており、扇形状の外周縁に相当する外周部520bが挿入空所504の外径側に位置している。
突条部520は、回転出没部材、及び出没部材がそれぞれガイド突起510に対して上下動する際に、被係止凹部340の縦壁340a、及び係止凹部390の縦壁390aと面接触しつつスムーズにガイドするように軸方向へ直線状に、且つ同一の横断面形状で軸方向に延びて構成されている。
突条部の上面522の外径側の角部522aの角度、形状は、図12図18(a)等の初動開放ロック状態において回転出没部材のストッパ部330が係止した時に抜け落ちしないようにストッパ部330の角度、形状と同等に(整合可能に)設定される。
下部突部530は、ワークをピックアップする動作を示す図14において下降してきた回転出没部材の被係止突部320の下端部を受けてから、第2の弾性部材260による下向きの圧力との協働により、回転出没部材を右方向へ回転させるために当該回転方向に沿って下向きに螺旋状に傾斜した上面530aを備えている。
【0025】
<リリース操作片、及び第3の弾性部材>
次に、図1等に示すようにリリース操作片450は、それ自体に設けた上下方向へ延びる2つの長穴452内に背面側ベース板30により支持された摺動部材454を嵌合することにより上下方向へ進退自在となっている。
リリース操作片450の下部片456は、各フィンガー片の開放方向に沿って二股に離間配置されている。これは各フィンガー片の把持部により把持された前後方向に長尺なワークと干渉させないためである。つまり、2つの下部片456は把持部62、82間に把持されたワークを回避するように充分な離間距離L(非干渉空所S)を確保して配置されている。言い換えれば、リリース操作片には、各フィンガー片の把持部により把持されたワークがリリース操作片と干渉することを回避させる非干渉空所Sが設けられている。
なお、各下部片456の下端部の位置は、図1のようにリリース操作片の進出時には各フィンガー片の把持部よりも下方へ突出し、図2のように押し込まれた退避時には各把持部と同レベルとなる。
第3の弾性部材420は、図1(c)等に示すように、リリース操作片450に設けた支持部460により下部を支持され、且つ上部をシャフトホルダ500の下部に係止、或いは当接されている。第3の弾性部材420は、常時(リリース操作片が下方へ進出している時、つまり各フィンガー片の閉止時)においては伸長した状態にあって出没部材を非押圧位置(下降位置)に退避させておく。一方、第3の弾性部材420は、図2等に示すようにフィンガー装置1全体を図20に示した突き当て部1102上に下降させることによりリリース操作片が押上げられて開閉ユニットSUが相対的に下降した時に、自らが圧縮しながら出没部材を上方へ移動させる(各フィンガー片を開放方向へ移動させる)ことを許容する解除用弾性部材(圧縮コイルバネ)である。
【0026】
<回転出没部材>
回転出没部材300は、出没部材350と一体のリリース操作片450が図1等に示した進出位置から図2等に示した退入位置との間を進退する過程において、第2の弾性部材260、出没部材に設けた2つの係止部360(係止突部370、係止凹部390)、シャフトホルダ500内に設けたガイド突起510等との協働により、軸芯回りに一方向へ回転しながら上下動する。
回転出没部材300は、図1図10図14図15等に示した退避位置(没入位置)にある時には連結部材250を押し上げていない。このため、入力部材185は各フィンガー片を閉じた状態とする下向きの閉止姿勢(第1の位置)にある。一方、回転出没部材が図2図11図12図13に示した突出位置にある時には、連結部材250を介して入力部材185を押上げ、各フィンガー片を開放させる方向へ回転させる。
回転出没部材300は、図18(a)(b)に示すように円筒状の基部302と、基部302の下部(退避側部)に180度の周方向間隔で軸方向へ突設された一対の被係止部(被係止ユニット)310と、を備える。各被係止部310は、基部302の下端面の周縁に沿って180度の周方向間隔で配置されて軸方向下方へ延びる被係止突部320と、各被係止突部の周方向に隣接配置されて軸方向上方へ延びる被係止凹部340と、を備える。つまり、2つの被係止突部320は、各被係止凹部340を間に挟んで180度の周方向間隔で配置されている。
【0027】
回転出没部材の被係止突部320は、その先端部(先部)が図11に示すように出没部材の係止突部370の先端部(先部)と接した状態において第2の弾性部材260による退避方向への付勢力との協働により(傾斜ガイド面同士の摺動により)回転出没部材を一方向(図面では右方向)に回転させる第1の傾斜ガイド面325と、第1の傾斜ガイド面の周方向終端部に設けられて出没部材の一部(ストッパ部380)と係止して回転を停止させられるストッパ部(係止側ガイド部)330と、ストッパ部の下部から円周方向へ延びる第2の傾斜ガイド面335と、を備える(図18等を参照)。
第1の傾斜ガイド面325は扇形状であり、周方向へ延びて下向きに傾斜している。ストッパ部330は第1傾斜ガイド面325の周方向端縁から下方へL字状に屈曲した段差部(屈曲部)である。第2の傾斜ガイド面335は扇形状であり、ストッパ330から周方向へ延びて下向きに傾斜している。各傾斜ガイド面の傾斜角度はほぼ同等である。各傾斜ガイド面325、335の傾斜方向は回転出没部材が右方向へ回転し易くなる下向きの方向である。
【0028】
<出没部材>
出没部材350は、図10に示した退避位置(最下降位置)にある時には回転出没部材300を突出位置に押し上げておらず、入力部材185を閉止姿勢にしている。出没部材350が図11図13図16に示した突出位置にある時には回転出没部材を押し上げて入力部材185を開放姿勢にしている。出没部材が図12に示した退避位置にある時には回転出没部材を押し上げていないが、回転出没部材はガイド突起510上に係止されているため入力部材185を開放姿勢にしている。出没部材350が図14に示した突出位置にある時には、回転出没部材が図13よりも下降した退避位置にあり、各フィンガー片の把持部間でワークWを把持しているため、入力部材は開放姿勢と閉止姿勢の中間姿勢にある。出没部材が図15に示した退避位置に移動した時には、回転出没部材は出没部材と共に下降した退避位置にあり、各フィンガー片の把持部間でワークWを把持しているため、入力部材は開放姿勢と閉止姿勢との中間姿勢にある。
出没部材350は、図18(a)(b)等に示すように円筒状の基部352と、基部の上部に180度の周方向間隔で軸方向へ突設された一対の係止部360と、を備える。各係止部360は、基部352の上端面の外周縁に沿って180度の周方向間隔で配置されて軸方向上方へ延びる係止突部370と、各係止突部の周方向に隣接配置されて軸方向下方へ延びる係止凹部390と、を備える。つまり、2つの係止突部370は、各係止凹部390を間に挟んで180度の周方向間隔で配置されている。
なお、基部352の下部にはリリース操作片に設けた支持部460に固定されるフランジ状のバネ係止部354が固定されている。バネ係止部354は、第3の弾性部材420の下部を係止する。
【0029】
出没部材の係止突部370はその先部(先端)が図11に示すように被係止突部320の先部(先端)と接した状態において第2の弾性部材260による退避方向への付勢力との協働により回転出没部材を右方向に回転させる第1の傾斜ガイド面375と、第1の傾斜ガイド面375の周方向終端部に設けられて回転出没部材の回転を停止させる上方への突起(段差部)であるストッパ部380と、ストッパ部の上端角部から円周方向へ延びる第2の傾斜ガイド面385と、を備える。
第1の傾斜ガイド面375は、図18(a)(c)等に示すように平面視形状が扇形状であり、周方向へ下向きに傾斜して延びている。ストッパ部380は、第1の傾斜ガイド面375の周方向端縁から上方へL字状に突出した段差部(屈曲部)である。第2の傾斜ガイド面385はストッパ部380から周方向へ延びた平面視形状が扇形状の下向きの傾斜面である。各傾斜ガイド面375、385の傾斜角度はほぼ同等であり、これらと接する回転出没部材の傾斜ガイド面325、335との間で滑りを起こして回転出没部材を周方向へ案内するように構成されている。
【0030】
[フィンガー装置の移動手順と入力部材の開閉動作との関係]
図20乃至図22に示したロボットアームによるフィンガー装置1の移動、操作手順と、リリース操作機構200を構成する各部品間の位置関係、つまり出没部材350、回転出没部材300、及びガイド突起510と、入力部材185の回動角度(開閉姿勢)との関係について図10乃至図16を用いて説明する。
図20図21図22はロボットアーム(図示省略)に取り付けたフィンガー装置1を、工場等のラインにおいてワークWの把持、及びリリース作業に適用する場合の構成例を示している。この例では、ベルトコンベアー1000上を搬送されるワークWの移動経路の上方にフィンガー装置1を配置すると共に、移動経路の近傍にリリース場所1100としてのボックスを配置する。符号1102は突き当て部である。なお、ロボットアームは図示を省略している。
なお、図10に示したフィンガー片の初期閉止状態は、フィンガー装置1がロボットアームに取り付けられていない状態、或いは各弾性部材のヘタリを防止するための待機状態である。
【0031】
図20(a)(b)(c)に順次示すように、各フィンガー片が閉じた初期閉止状態にあるフィンガー装置1をリリース場所1100の上方へ移動させて突き当て部1102上に下降させることによりリリース操作片450を押し込むと、リリース操作機構200を構成する各部品は図10から図11の位置関係に移行する。
図11では、リリース操作片450が上昇した退入位置にあるため出没部材350が回転出没部材300を押し上げており、係止突部370の先部(上部)が被係止突部320の先部(下部)と接して回転出没部材を突出位置に保持している。この時、入力部材185は各フィンガー片を最大限に開放させた開放姿勢(第2の位置)にある。また、図20(d)のようにフィンガー装置1を突き当て部1102から上昇させるとリリース操作片450が下降して進出位置に移動するため図12のように出没部材が退避位置に移動する。図12では、ガイド突起510の先端部である上面522が回転出没部材の被係止突部320の先部を係止しているため、入力部材185はフィンガー片を開放させる姿勢を保っている。このように各フィンガー片が最大限に開放した図11の状態で出没部材350が下降して退避位置に達すると、図12に示した初動開放ロック状態となる。これらの各状態では、入力部材185は第1の弾性部材110の付勢に抗して各フィンガー片を開放状態に保っている。ただ、同じ開放姿勢であっても、図11における入力部材185の上向き傾斜角度は最大であり、図12では傾斜角度が若干下向きとなっている。これは図11では出没部材により回転出没部材が最も高い位置に押し上げられているのに対して、図12では回転出没部材はガイド突起の突条部520の上端部に乗って係止されているために高さ位置が若干下がっているからである。
【0032】
次に、図21(a)(b)(c)に順次示すように初動開放ロック状態にあるフィンガー装置1をベルトコンベアー1000上に下降させてワークWを把持し、次いで持ち上げる場合のフィンガー装置の動作は図13図14図15に示されている。
図13ではベルトコンベアー上面によりリリース操作片450が相対的に押し上げられるため、出没部材350により回転出没部材300が図12の軸方向位置よりも更に押し上げられて突条部520の上端部から離間しており、これにより入力部材185も更に上向きに回動して開放姿勢を維持する。
具体的には図13では、回転出没部材の第2の傾斜ガイド面335(先部)が出没部材の第2の傾斜ガイド面385(先部)と接しているために回転出没部材は突出位置にあり、入力部材185が開放姿勢となるように押し上げている。
なお、実際には図13のフィンガー片の開放状態から図14のワーク把持状態へは間断なく移行するが、理解を容易にするために図13図14に分けて説明する。
【0033】
図13において出没部材の係止突部370の先部で被係止突部320の先部を押し上げた結果、第2の弾性部材260からの下向きの付勢力と、下向きに傾斜した各傾斜ガイド面335、385間の滑りにより回転出没部材が矢印で示す右方向へ回転する。この回転により、被係止突部320の第2の傾斜ガイド面335が係止突部370の第2の傾斜ガイド面385、ガイド突起の上面522を順次通過してから、図14(c)、(d)、(e)に示すように軸方向下方へ移動する。その結果、被係止突部320が係止凹部390内に落ち込んで嵌合する。
図14のように、被係止凹部340内、及び係止凹部390内に夫々係止突部370、及び被係止突部320が嵌合している嵌合時には回転出没部材は退避した軸方向位置にあり、入力部材185から離間している。この時、各フィンガー片がワークを把持しているため、入力部材185は図10に示した閉止姿勢(第1の位置)と図11に示した開放姿勢(第2の位置)との中間姿勢にある。
更に、図21(c)のようにベルトコンベアー1000上に下降しているために各構成部品が図14の状態にあったフィンガー装置1を図21(d)のように上昇させると、図15のようにリリース操作片450が下方へ進出するため出没部材350が下降して退避位置に達する。この時、各フィンガー片がワーク把持状態にあるため、入力部材185はほぼ水平な角度を保っている。
【0034】
図14では被係止突部320の下端部の第2の傾斜ガイド面335がガイド突起の下部突部530の上面530aに乗っており、しかも出没部材の係止突部370が障害となって右方向へ回転できない(図14(e))。一方、図15では出没部材が下降して退避位置にあるため、係止突部370は回転出没部材の回転の障害となっていない(図15(e))。つまり、図14の状態では出没部材は回転出没部材を押し上げることができないが、図15では被係止突部の下端部は下部突部の上面530aから滑り降りて出没部材の上昇経路中に移行している。つまり、図15の状態では、出没部材を上昇させることにより図16のように回転出没部材を押し上げることができる。
なお、図15では回転出没部材の高さ位置が図14よりも若干下がるため、図15における連結部材250の高さ位置も図14よりも若干下がっている。
【0035】
次に、図22(a)のように把持しているワークをリリースする場合には、図22(b)のようにフィンガー装置1をリリース場所1100上に下降させてリリース操作片450を押し込む。すると、図16に示すように出没部材350が上昇して回転出没部材300を押し上げるため入力部材185を押し上げて各フィンガー片を開放させてワークをリリースさせる。
なお、図16図22(b)においてワークをリリースした後で、図22(c)のようにフィンガー装置1全体を上昇させると、リリース操作片450、及び出没部材が下降して図12のように入力部材185を押し上げたままとするため、各フィンガー片を初動開放状態でロックさせることができる。つまり、図16における各部品300、350、510等の位置関係は図11と同じであるため、出没部材が退避位置に移動することにより図12の初動開放状態に移行させることができる。
【0036】
[フィンガー装置1の移動によるワーク把持動作、リリース動作手順]
以下、図1乃至図9図10乃至図16図20乃至図22を参照しながら把持(ピッキング)作業、及び把持解除(リリース)作業における各部品の動作、位置関係について説明する。
【0037】
<初動開放状態にロックする手順(把持準備動作)>
図20(a)乃至(d)は初期の閉止状態にある各フィンガー片60、80を開放させてから初動開放状態でロックさせる把持動作前の準備手順(把持準備動作手順)に係る説明図である。
この把持準備動作では、図10に示した初期閉止状態にあるフィンガー装置を図11図12に示した手順を経て各フィンガー片を開放させた状態でロックする。この初期の開放動作を初動開放動作と称し、各フィンガー片を初動開放状態で保持することを初動開放ロックと称する。
図20(a)、図10図1図8(a))に示したようにワークWを把持していない初期状態においては第1の弾性部材110の付勢力により各フィンガー片60、80は閉止状態を維持している。この時、回転出没部材300の被係止突部320がガイド突起の突条部520の側面に沿って下降した位置にあり、最下降位置にある出没部材の上部に回転出没部材の下部が接している。このため、入力部材185は回転出没部材(連結部材250)によって押し上げられておらず、各フィンガー片を閉止させる回動角度(第1の位置)にある。この時、出没部材350、及び回転出没部材300は最下降位置にある。また、回転出没部材は、被係止突部320の各傾斜ガイド面325、335と、出没部材の係止部360の各傾斜ガイド面385、375との摺動的な接触と、第2の弾性部材260からの下向きの付勢により右回転し易くなっているが、上下からの弾性付勢で押圧され、且つガイド突起の突条部520の左側の縦壁が被係止突部320と接触しているので回転できない。
【0038】
図10の初期閉止状態にあるフィンガー装置1によりワークWのピックアップ動作を開始する為には、図20(b)(c)に示すようにフィンガー装置を所定のリリース場所1100に移動して下降させて突き当て部1102上でリリース操作片450を押し込み、図11に示した把持準備状態に移行させる。この状態では、図11(c)(d)に示すように、出没部材の先部により回転出没部材の下部が押上げられる。出没部材はその上端がガイド突起の上面522を越えるまで直線的に移動して回転出没部材を押し上げる。図20(c)の状態では出没部材350が開閉ユニットSU(各フィンガー片、フィンガー片開閉機構50、入力部材)に対して相対的に上昇するため、図11(c)(d)のように出没部材の第1の傾斜ガイド面375が回転出没部材の第2の傾斜ガイド面335と接し、出没部材の第2の傾斜ガイド面385が回転出没部材300の第1の傾斜ガイド面325と接している。この時、L字状の段差部であるストッパ部330、380同士は接しておらず、両ストッパ部の間には隙間がある。
この段階では、被係止突部の第2の傾斜ガイド面385はガイド突起の突条部の上面522よりも高い位置にあり、且つストッパ部330とストッパ部380との間に周方向の隙間があるため、回転出没部材は出没部材に対してフリー(横移動可能)になり右方向へ回転可能となっている。
続いて、第2の弾性部材260からの下向きの圧力と、回転出没部材を右方向へ回転させるように下向き傾斜した第1の傾斜ガイド面375と第2の傾斜ガイド面335との摺動接触と、第2の傾斜ガイド面385と第1の傾斜ガイド面325との摺動接触の協働により、回転出没部材は右方向(ガイド突起の上面方向)に向けて回転しながら移動し、図11(e)の状態となる。この状態ではストッパ330とストッパ380とが噛み合った状態となりそれ以上の回転が阻止される。また、図11(e)の状態では、回転出没部材の下端角部338がガイド突起510の上端面にオーバーハングしており、次の行程で出没部材が下降した時に回転出没部材も下降して下部角部338の下面をガイド突起上面522に乗り移らせるための準備ができている。
【0039】
次いで、図11(e)の状態で図20(d)に示すようにリリース場所1100からフィンガー装置1を上昇させることによりリリース操作片450が下方へ進出すると、各フィンガー片は図12図3図8(c))のように開放状態(初動開放状態)にロックされる。即ち、図12では出没部材が下方へ退避するので図11(e)に示したストッパ部330、380同士の係合が解除され、且つ第2の弾性部材260による下向きの付勢と各ガイド傾斜面同士の滑りにより回転出没部材は右方向へ回転して被係止突部320の下面(第1の傾斜ガイド面325)をガイド突起の上面522に移動させる。図11(e)の段階で被係止突部320の下部角部338がガイド突起510の上面522の上方に既にオーバーハングしているので、被係止突部320の下面(第1の傾斜ガイド面325)のガイド突起の上面522への移動はスムーズになる。この時点でストッパ部330がガイド突起の角部522aに係止されることにより回転出没部材の回転は停止する。
この初動開放ロック状態では、図12に示すように出没部材が最下降位置に下降していても、第3の弾性部材により各把持部の開放状態は維持される。
【0040】
この時点では、各部品の上記動作により図10の閉止姿勢(第1の位置)にあった入力部材185が図11に示したように連結部材250を介して押し上げられて開放姿勢(第2の位置)に回動して各フィンガー片を開放させる(図2図8(b))。
入力部材185が図10に示した閉止姿勢から図11に示した開放姿勢に回動すると、図2図3に順次示すようにギヤ機構150を構成する各ギヤ160、165、170、175、及び各フィンガー片60、80は矢印で示した開放方向へ回動するため、各把持部62、82が開放される。この際、初動開放ロック手段220が作動することにより各フィンガー片は初動開放状態でロックされる(図3図8(c)、図12)。
なお、図11では回転出没部材の第2の傾斜ガイド面335が出没部材の第1の傾斜ガイド面375上に乗っているが、図12では回転出没部材が少し落下しながら第1の傾斜ガイド面325がガイド突起の上面522a上に移動しているので、落下した分だけ各フィンガー片の開放角度は図12の方が図11よりも若干狭くなる。
【0041】
<初動開放ロック状態を解除する手順>
次に、図4乃至図6図9(a)(b)(c)、図13乃至図15を用いてロック解除手段600による初動開放ロックの解除(ワーク把持)手順を図21(a)乃至(d)に示したフィンガー装置の移動手順との関係で説明する。
ロック解除手段600は、初動開放ロック手段220により図12に示した初動開放状態にロックされている各フィンガー片の開放状態を解除して第1の弾性部材110の付勢力により各フィンガー片を閉止方向へ回動させて各把持部間でワークを把持させる手段である。
ロック解除手段600によるロック解除動作では、出没部材350が退避する過程で回転出没部材300を右回転させつつ退避方向へ移動させて初動開放ロック状態を解除することにより入力部材185を閉止方向へ回動させて、各把持部を閉止方向へ移動させてワークを把持する(図12図13図14)。
【0042】
ロック解除動作では、まず図21(a)に示すようにフィンガー装置1をベルトコンベアー1000上の一つのワークWの直上に移動させる。次いで、20図(b)のようにフィンガー装置1をそのまま下降させて把持部62、82間にワークを位置させる(図4図9(a)、図13)。この時、リリース操作片450がベルトコンベアー1000の上面に接して上方へ押し込まれるため出没部材350がシャフトホルダの外枠体502内をガイド突条520に沿って上昇し、出没部材の上部にある第2の傾斜ガイド面385が回転出没部材の下部にある第2の傾斜ガイド面335に接触してこれを押し上げる。この押上げ動作により、図12においてガイド突起510の上端部により係止された状態にあった回転出没部材を出没部材が突出方向へ少しく押上げてガイド突起510の上端部から離脱させてフリーにする(図13の状態)。このため、回転出没部材は右方向に回転可能な状態となる。すると、図12におけるストッパ部330と角部522aとの係止が解除されて出没部材の上端の第2の傾斜ガイド面385と回転出没部材の下端の第2の傾斜ガイド面335との間での滑り、及び第2の弾性部材260によるテンションにより回転出没部材が右回転する。右回転の過程で被係止突部320の先部がガイド突起の上面522を通過し、出没部材の係止凹部390の垂直な内壁390aに衝突するまで右へ回転する。回転を停止してから第2の弾性部材のテンションによりガイド突起の突条部520に沿って下降する(図5図9(b)、図14(c)(d))。回転出没部材は被係止突部320の下端部(第2の傾斜ガイド面335)がガイド突起の下部突部530の上面に接触するまで下降する。
図14(e)は図14(c)(d)の角度を変えて視た図であり、被係止突部320が係止凹部390内に落ち込んだ直後の状態を示している。この落ち込んだ状態において、被係止突部320は出没部材の係止凹部390の内壁390aと接しているため、回転出没部材は右方向への回転を阻止されている。
回転出没部材が下降したことにより第2の弾性部材260により連結部材250が下降し、出没部材に掛かるテンションが無くなったことで各フィンガー片が第1の弾性部材110の付勢によりワークに衝突するまで閉じる。つまり、この段階では初動開放ロック状態が解除されており、各フィンガー片によりワークWが把持されている。各フィンガー片が閉止方向へ回動し切った後は、第1の弾性部材110のテンションにより把持状態が維持される。また、この時点で開閉ユニットSU(フィンガー開閉機構50)全体の下降限度となる。
なお、図13図14の状態でワークが存在しなければ、各フィンガー片は図10のように完全に閉じる。また、ワークのサイズに関係なく、極めて小径のワークさえも確実に把持することができる。
【0043】
図14では出没部材が上昇した位置にあるが、図21(c)(d)のようにワークWを把持したフィンガー装置を上昇させると第3の弾性部材420の付勢により出没部材が下降して内壁390aが下方へ退避するため、回転出没部材が再び右方向へ回転可能となる。すると、被係止突部320の下端部がガイド突起の上面522を滑って右方向へ回転して上面522から脱落して少し下降して出没部材の上昇経路内に停止する(図15(e))。この時、被係止突部320の先部(第2の傾斜ガイド面335)が出没部材の係止突部370の先部(第1の傾斜ガイド面375)に乗った状態となる。従って、続いて実施されるワークの把持解除操作において出没部材を上昇させることにより回転出没部材を直ちに上昇させることが可能になる。
なお、図14から図15に移行する過程で、被係止突部320の下端部がガイド突起の上面522から脱落する時に、落下した分だけ連結部材250が少し下降する。図15の時点では各フィンガー片はワークを把持した状態(半開放状態)を維持している。
図10から図15までの動作により、回転出没部材は180度回転したことになる。つまり、一サイクルで回転出没部材は半回転する。
【0044】
以上のようにロック解除手段600が作動すると、図12において初動開放ロック状態にあった各フィンガー片のロックを解除して、第1の弾性部材110の付勢により閉止方向へ回動させる(図5図14)。これにより把持部間に位置していたワークWは確実に把持される。この時、図13に示した開放姿勢にあった入力部材185は図14に示した閉止姿勢(把持姿勢)に回動する。
上記把持動作の過程では、当初図11に示した上向きに傾斜した開放姿勢にあった入力部材185は、ギヤ機構150を介して伝達される第1の弾性部材110の復帰力により図15に示した略水平な把持姿勢となる。
この過程では、入力部材185と一体の回動軸180に固定された第1のギヤ160が図4等に示した閉止方向へ回動し、第1のギヤと噛合する第1のラックギヤ165が閉止方向へ回動し、第1のフィンガー片60を閉止方向へ回動させる。また、閉止方向へ回転する第1のギヤは常時噛合している第2のギヤ170を閉止方向へ回転させるため、第2のラックギヤ175が閉止方向へ回動し、第2のフィンガー片80を閉止方向へ回動させる。第1と第2のフィンガー片の閉止動作は同時に行われる。
【0045】
<開放状態をロックする手順>
次に、図7図9(d)、図16図22(a)(b)(c)は、開放状態ロック手段700により、把持したワークをリリースさせてから各フィンガー片を開放状態にロックする手順を示す図である。
開放状態ロック手段700は、図22(a)(b)のようにフィンガー装置1をリリース場所1100の収納凹所1104内に下降させることにより、図15において下降状態にあった出没部材350を図16のように所定距離以上上昇させて回転出没部材300を上昇させることにより入力部材185を開放方向へ回動させて、各把持部を開放させてワークを離脱させ、更にその開放状態を維持する開放状態ロック動作を行う。
図16におけるリリース機構200の構成要素(回転出没部材300、出没部材350、ガイド突起510、入力部材185等)の位置関係は図11におけるものと同じであり、図22(c)のようにフィンガー装置を上昇させて出没部材を初期の退避位置に戻すことにより図12の初動開放ロック状態に移行させることができる。
図22(c)のリリース完了状態では各フィンガー片が開放状態でロックされており、リリース操作片を押し込まない限り各フィンガー片は閉じることがない。この状態は、図12図20(d)の各フィンガー片の初動開放ロック状態と同じ状態である。従って、次の把持動作に移行するために改めて各フィンガー片を開放させるための特別の動作は必要なく、図21に示したようにフィンガー装置をワーク上に移動させて下降させるという把持動作を順次実施すればよい。このため、フィンガー装置による把持動作、ワークのリリース動作という一連の作業を中断なく迅速化することができる。
【0046】
[フィンガー装置により把持するワークの種類]
本発明のフィンガー装置1によれば特許文献1のように閉じた状態にある各フィンガー片の把持部間にワークを押し込む方法を採らないため、把持できるワークの形状、サイズが各段に広がる。小径のワークは勿論、図23(a)のように四角形のワークさえも確実に把持し、リリースすることができる。
また、リリース操作片450の下部が二股に分岐して離間している2つの下部片456から構成され、下部片間にワークとの干渉を避けるための非干渉空所Sが形成されている。このため、図23(b)のように前後方向へ長尺なワークを各フィンガー片が把持している時であってもリリース操作片がワークと干渉することを防止できる。
【0047】
[変形実施形態]
図24はロボット用フィンガー装置の利用例(変形実施形態)の説明図であり、一つのロボットアーム1200に対して前後方向に長い間隔L1を空けて2つのフィンガー装置1を固定した構成例である。
図から明なようにこの構成例によれば、2つのフィンガー装置1を間隔L1を空けて並行に配置しているので、間隔L1を越えて長尺なワークWを2つのフィンガー装置により同時に安定して確実に把持し、且つリリースすることができる。特に、リリース操作片450の下部片間にワークとの干渉を避けるための非干渉空所Sが形成されていることにより、リリース操作片と干渉することなく長尺ワークを2つのフィンガー装置により把持することが可能となる。
【0048】
次に、図25はロボット用フィンガー装置の他の利用例(変形実施形態)の説明図であり、工場等のラインにおいて一つのロボットアーム1200に複数(三個)のフィンガー装置1を横並び状態で取り付けた構成例を示している。
この構成例によれば、一つのロボットアーム1200に3個のフィンガー装置1を取り付けることにより、同時に3個のワークをピッキングしてからリリース場所1100に移動し、一括してリリースすることが可能になる。
仮に、フィンガー片の開閉動作をモータ等のアクチュエータを用いて実施する構成とした場合、一つのロボットアームに複数個のフィンガー装置を搭載するとすれば、次のような問題点が発生する。
まず、ロボットアームの大型化、強度、及び出力の増大に限界がある場合には、モータ等のアクチュエータを搭載したことにより大型化したフィンガー装置は、ロボットアームに搭載する個数に制限が生じる。
また、個々のフィンガー装置を制御するための制御ポートが、搭載しようとするフィンガー装置の個数分だけ必要となるため配線が複雑化する。従って、仮に、ロボットアームの強度、出力に余裕があったとしても、ポート配線などの制限から搭載個数に制限が生じ得る。
これに対して本発明のフィンガー装置1によれば、モータ等を搭載しないために軽量化でき、ポート配線の複雑化を回避できるので、ロボットアームを大型化したり強度をアップさせることなく、複数個のフィンガー装置を容易に搭載できる。その際、フィンガー装置を単純にロボットアームに搭載すれば良く、多数のフィンガー装置を搭載したとしても、コンベア上を並行して搬送されてきたワークを一気にピックアップしたり、落下させることができる。このため、処理速度を大幅に向上できる。
【0049】
[実施形態の作用、効果]
本実施形態では、初期手順においては、各フィンガー片が閉じた状態にあるフィンガー装置を任意の突き当て部1102に下降させてリリース操作片450を押し込むことにより各フィンガー片を初動開放させ、その開放状態をロックする。ワークを把持する時にはワークが載置されたベルトコンベアー等の上にフィンガー装置を下降させてリリース操作片を押し込むことで各フィンガー片が閉じてワークを把持する。ワークを把持した後はそのまま把持し続けることができ、フィンガー装置をリリース場所1100上に移動して下降させ、且つリリース操作片を押し込むことにより把持状態を解除してワークをリリースすることができる。リリース後に開放状態にある各フィンガー片はそのまま開放状態でロックされるため、次の把持動作に直ちに移行することができる。フィンガー片を開放させるための駆動源や機構は存在しない。
また、鋏状に開閉自在に軸支された2つのフィンガー片と開閉操作機構200とをギヤ機構150により連結し、開閉操作機構によるリリース力をギヤ機構を介して各フィンガー片に伝達するように構成したため、両フィンガー片を同期して均等に開くことができ、ワークのリリースタイミングを正確に行い、正確な位置に落下させることができる。
【0050】
フィンガー装置1において各フィンガー片が把持する力を変更するには、弾性部材110の弾発力を変更したり、フィンガー片の長さを変えれば良い。モータにより各フィンガー片を開閉させるとすれば、モータの出力の計算が必要となり煩雑であるが、本実施形態ではそのような煩雑さを回避できる。
フィンガー装置を製品化するためには、耐久性を含めた各種性能の評価を行う必要がある。特に、モータ等の電磁部品についてはその評価に多大な手数を要している。本実施形態では電磁部品としてのモータを使用しないため、耐久性等の評価が非常に楽になる。
部品点数が少なく、シンプルな構造であるため、使用環境、条件に応じた設計変更が容易であり、把持力やサイズ等のカスタマイズを安価に実施できる。
アクチュエータを使用しない構造であるため、従来同様の機能を持ったフィンガー装置と比較して安価、且つ軽量である。軽量であることにより、ロボットアーム等のペイロード増加に寄与する。即ち、フィンガー装置を保持するロボットアームの強度、重量を低下させることができる。
【0051】
また、小型化することができるために省スペースであり、狭小部に進入させることができるので、用途を多様化することができる。
また、各フィンガー片を開いてワークをリリースするタイミングが作業面に近いところなのでワークに与える衝撃を小さくすることができる。
フィンガー装置自体の動作に電力を使用していない為、停電時であってもワークを落下させることが無い。
アクチュエータを使用していないため作動油が不要となり、機械油を排除したい箇所で活用することができる。そのため、対環境的な配慮が不要となり、真空、高圧、水中、高温、高湿、低温環境下で確実に動作する安価な機構を提供することができる。
【0052】
軽量であり、かつ制御が不要である為、ロボットアーム側で追加のポートを用意する必要がなく、単純に多数のフィンガー装置をロボットアームに並列に配置するだけで、多数のワークを同時にピッキングする構造を容易に構築できる。特に、ロボットアームに対して取付け角度を変えて複数のフィンガー装置を接続することで超長尺のワークもピッキングすることが可能になる。
単純な構成で、かつ比較的硬質なワークのピッキング作業にも充分に対応することが可能である。
一種類若しくはサイズ変動が小さいワークのみのピッキング作業に適すると考えられる。
また、各フィンガー片の先端形状をワークに併せて変更することにより様々なワークに対応することができる。
【0053】
次に、特許文献1に係る発明に対する改善点は次の通りである。
特許文献1のフィンガー装置にあっては、各フィンガー片の把持部間に形成されるV字状の切欠きを利用して把持部間を押し広げていた。このため、把持できるのは、小径シャフト等に限られていた。また、V字状の切欠きが必須であるため、当該切欠きの内径よりも小さいワークを把持できなかった。
これに対して本発明では、事前に各フィンガー片を開放状態でロックしておく開閉操作機構200を実現したことで、フィンガー片間にワークを押し付けて強制的に開放させる必要がなくなった。このため、フィンガー片の把持部間にV字状の切欠きを形成する必要がない。従って、各フィンガー片が拡開可能な範囲内であれば、サイズ、形状の制限なくワークを把持できるようになった。特に、特許文献1のフィンガー装置では把持できないようなかなり小径のワークさえも把持できる。
また、特許文献1のフィンガー装置では、各フィンガー片を強制的に開放させるリリース機構(解除部材)が各フィンガー片により把持される長尺のワークと干渉する位置にあったため、長尺のワークを把持することができなかった。
これに対して本発明では、フィンガー片を強制的に開放させるリリース操作片450の下部の形状を二股に分岐させて距離Lを隔てて離間配置された非干渉空所Sを設けた。非干渉空所Sは各フィンガー片により把持された長尺ワークの端部と干渉しないように設けられている。
【0054】
〔本発明の構成、作用、効果のまとめ〕
第1の本発明に係るロボット用フィンガー装置1は、一部に把持部62、82を備え、且つ他部に被作動部64、84を夫々備えた2つのフィンガー片60、80、各フィンガー片を夫々の中間部で略X字状に交差させた状態で鋏状に開閉自在に連結する回動支点100、各把持部同士を圧接させる閉止方向に各フィンガー片を弾性付勢する第1の弾性部材110、開放方向への操作力が入力された時に各フィンガー片を第1の弾性部材による付勢に抗して開放方向へ回動させ、開放方向への操作力が解除された時に第1の弾性部材による付勢力により各フィンガー片を閉止方向に回動させるギヤ機構(開閉力伝達機構)150、及び該ギヤ機構に対して開放方向への操作力を入力する入力部材185、を備えたフィンガー片開閉機構50と、フィンガー片開閉機構を開閉操作する開閉操作機構200と、を備え、開閉操作機構は、閉止状態にある各フィンガー片を開放させて初動開放ロック状態とする初動開放ロック手段220と、各フィンガー片の初動開放ロック状態を解除して第1の弾性部材の付勢力により各フィンガー片を閉止方向へ回動させて各把持部間でワークを把持させるロック解除手段600と、各把持部間でワークを把持した状態にある各フィンガー片を開放方向へ回動させ、且つ開放した状態でロックさせる開放状態ロック手段700と、各構成要素を支持する取付けベース部10と、を備えていることを特徴とする。
【0055】
ロボットアーム等の先端に取り付けて使用する際に、簡素な構造で、省スペース化を実現し、かつ過酷な環境でもワークの把持・リリース動作できる構造をアクチュエータなしで実現できる。
フィンガー装置を作業面上に下降させてリリース操作片を押し込んでから上昇させることでフィンガー片が拡開した状態でロックされる。
ワークWを把持する際にはワークに向けてフィンガー装置を下降させてリリース操作片を押し込むことにより第1の弾性部材のばね力によってワークを保持する簡単な構造としている。ワークをリリースする時には、フィンガー装置をリリース場所に下降させてリリース操作片を押し込めば良い。アクチュエータを用いることなく各フィンガー片の初動開放、ワークの把持、及びリリースを実現できる。
このため、各フィンガー片の把持部の形状を種々のワークに適合させることができるように自由に選択でき、ワークのサイズ、形状に関係なくピッキングを行うことができる。
また、ワークをピッキングして落下させた後でフィンガー片を開放状態に維持できるので、次のピッキング動作を連続して実施することができる。
【0056】
第2の本発明に係るロボット用フィンガー装置では、開閉操作機構200は、軸芯回りに回転自在であり、且つ軸方向へ進退(出没)すると共に、突出時に入力部材185を開放方向へ操作し(開放方向への操作力を発生させ)、且つ退避時に入力部材を閉止方向に回動させる回転出没部材300と、入力部材と回転出没部材との間において進退自在に取付けベース部に支持された連結部材250と、該連結部材を介して該回転出没部材を退避方向(没入方向)へ付勢する第2の弾性部材260と、回転出没部材の退避側において軸方向へ出没自在に配置され突出時に回転出没部材を突出方向へ移動させる出没部材350と、該出没部材を退避方向へ付勢することにより該出没部材が退避位置にある時には回転出没部材を突出方向へ移動させない第3の弾性部材420と、出没部材に一体化されると共に、取付けベース部により該出没部材の出没方向と並行な方向へ進退自在に支持され、常時においては第3の弾性部材420の付勢により出没部材の退避方向と同方向である下方への進出位置に保持され、該第3の弾性部材に抗して出没部材の突出方向と同方向である退入方向へ押圧された時に該退入方向へ移動する(出没部材を回転出没部材へ向けて移動させる)リリース操作片450と、取付けベース部に固定されて回転出没部材、及び出没部材の軸方向移動をガイドするガイド突起510と、を備えたことを特徴とする。
特許文献1におけるリリース機構の解除部材に代えてリリース操作片450を設け、このリリース操作片に出没部材350を固定し、出没部材を戻す第3弾性部材420を設けた。出没部材、回転出没部材、ガイド突起等の協働により、アクチュエータを用いずに小型軽量化を図りながら、ワークの把持、リリース、開放状態ロックを実現できる。
回転出没部材、出没部材、ガイド部材は、樹脂、金属等の耐久性に優れた材料から構成する。
【0057】
第3の本発明に係るロボット用フィンガー装置1では、回転出没部材の下部(退避側部)には、その周縁に沿って配置されて軸方向下方へ突出した被係止突部320と、該被係止突部の周方向に隣接配置されて軸方向上方へ延びる被係止凹部340と、から成る被係止部(被係止ユニット)310を少なくとも一対備え、出没部材の上部には、その周縁に沿って軸方向上方へ突出した係止突部370と、該係止突部の周方向に隣接配置されて軸方向下方へ延びる係止凹部390と、から成る係止部(係止ユニット)360を少なくとも一対備え、各フィンガー片が初期の閉止状態にある時に、出没部材は退避位置にあり、且つ、回転出没部材は該出没部材の係止突部370の先部と被係止突部320の先部とを接触、又は近接させた状態で退避位置にあり、初動開放ロック手段220は、退避位置にあった出没部材が突出して回転出没部材を突出させつつ回転させて被係止突部320をガイド突起510上に移動させて係止させることにより入力部材を開放方向に操作して開放姿勢に移行させ、且つ出没部材が退避位置に戻った時点以降にあっても該入力部材を開放姿勢に維持し、ロック解除手段600は、退避位置にあった出没部材が突出位置に移動したときに係止突部370の先部により被係止突部320を押し上げつつ回転させることによりガイド突起上から離脱させて被係止突部が係止凹部390内に嵌合するように回転出没部材を退避方向へ移動させることにより入力部材を閉止方向へ操作し、且つ第3の弾性部材により出没部材が退避位置に戻った時点以降にあっても回転出没部材を入力部材から離間した退避位置に保持し、開放状態ロック手段700は、退避位置にある出没部材が突出位置に達した後で係止突部370の先部により被係止突部320の先部を突出方向へ移動させつつ回転させて被係止突部の先部をガイド突起上に移動させて係止させることにより入力部材を開放方向へ操作し、且つ第3の弾性部材により出没部材が退避位置に戻った時点以降にあっても回転出没部材を突出位置に保持することを特徴とする。
開閉操作機構は、回転出没部材、回転部材、ガイド突起、連結部材、第2の弾性部材、第3の弾性部材といった必要最小数の部品により構成されているため、小型、軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0058】
第4の本発明に係るロボット用フィンガー装置1では、被係止突部320は、出没部材の係止突部370の先部と接した状態において第2の弾性部材260による退避方向への付勢力との協働により回転出没部材を一方向に回転させる第1の傾斜ガイド面325と、第1の傾斜ガイド面の周方向終端部に設けられて出没部材の一部と係止して回転を停止させられるストッパ部(係止側ガイド部)330と、該ストッパ部の下部から円周方向へ延びる第2の傾斜ガイド面335と、を備え、係止突部370は、回転出没部材の被係止突部320の先部と接した状態において第2の弾性部材260による退避方向への付勢力との協働により回転出没部材を一方向に回転させる第1の傾斜ガイド面375と、該傾斜ガイド面の周方向終端部に設けられて回転出没部材のストッパ部を係止して一方向への回転を停止させるストッパ部(係止側ガイド部)380と、該ストッパ部の上端から円周方向へ延びる第2の傾斜ガイド面385と、を備えていることを特徴とする。
回転出没部材、及び出没部材は、夫々の先部に第1及び第2の傾斜ガイド面、ストッパ部を備えており、ガイド突起との協働により、回転出没部材を軸方向へ進退させながら回転させることにより、初動開放ロック動作、ロック解除動作、及び開放状態ロック動作を実現できる。
第4の本発明に係るロボット用フィンガー装置1では、リリース操作片450には、各フィンガー片の把持部により把持されたワークが該リリース操作片と干渉することを回避させる非干渉空所Sが設けられていることを特徴とする。
非干渉空所Sは各フィンガー片により把持された長尺ワークの端部と干渉しないように設けられている。
【符号の説明】
【0059】
1…フィンガー装置(ロボット用フィンガー装置)、10…取付けベース部、20…ベース部材(ベース板)、21…軸穴、25…軸、26…軸部、27…軸部、30…背面側ベース板、50…フィンガー片開閉機構(開閉ユニットSU)、60、80…フィンガー片、62、82…把持部、62a…小突起、64…被作動部、64a…軸部、84…被作動部、84a…軸部、100…回動支点、100a…軸部、100b…穴、110…第1の弾性部材、150…ギヤ機構(開閉ユニットSU)、160…ギヤ、160a…ギヤ部、165…ラックギヤ、165a…ギヤ部、166…ガイドローラ、170…ギヤ、170a…ギヤ部、175…ラックギヤ、175a…ギヤ部、176…ガイドローラ、180…回動軸(入力部)、185…入力部材(入力部)、200…開閉操作機構(第2ユニット)、220…初動開放ロック手段、250…連結部材、260…第2の弾性部材(連結部材スプリング)、300…回転出没部材、302…基部、310…被係止部、320…被係止突部、325…第1の傾斜ガイド面、330…ストッパ部、335…第2の傾斜ガイド面、338…角部、340…被係止凹部、340a…縦壁、350…出没部材、352…基部、354…バネ係止部、360…係止部、370…係止突部、375…第1の傾斜ガイド面、380…ストッパ部、385…第2の傾斜ガイド面、390…係止凹部、390a…縦壁、420…第3の弾性部材、450…リリース操作片、456…下部片、460…支持部、500…シャフトホルダ、502…外枠体、504…挿入空所、510…ガイド突起、520…突条部、522…上面、522a…角部、530…下部突部、600…ロック解除手段、700…開放状態ロック手段、1000…ベルトコンベアー(作業面)、1100…リリース場所、1102…突き当て部(作業面)、1104…収納凹所。
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