(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175385
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093135
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 俊介
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅彦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA21
2C056EA23
2C056EB13
2C056EB46
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC33
2C056FA13
2C056HA12
(57)【要約】
【課題】省スペース性と耐久性を低下させずにインクジェットヘッドのギャップ調整を行うことを目的とする。
【解決手段】インクジェット記録装置は、1つ以上のインクジェットヘッドを備えるヘッドユニットと、シートが搬送される搬送路に対するヘッドユニットのギャップを調整するギャップ調整装置50と、を備え、ギャップ調整装置50は、軸51Aと、軸51Aと交差する交差面51Cを有し、軸51A周りに回転可能な回転部材51と、交差面51Cに設けられ、周方向に階段状に高さが変化する階段部51Sと、互いに表裏をなす一面と他面542とを有し、一面が交差面51Cに対向し、他面542がヘッドユニット11に接触し、軸51A方向に移動可能なギャップ調整部材54と、一面と交差面51Cとに挟まれた球体と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のインクジェットヘッドを備えるヘッドユニットと、
シートが搬送される搬送路に対する前記ヘッドユニットのギャップを調整するギャップ調整装置と、を備え、
前記ギャップ調整装置は、
軸と、
前記軸と交差する交差面を有し、前記軸周りに回転可能な回転部材と、
前記交差面に設けられ、周方向に階段状に高さが変化する階段部と、
互いに表裏をなす一面と他面とを有し、前記一面が前記交差面に対向し、前記他面が前記ヘッドユニットに接触し、軸方向に移動可能なギャップ調整部材と、
前記一面と前記交差面とに挟まれた球体、又は、前記一面から突出して前記交差面に接触する突起部と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
同一パターンの前記階段部が、前記交差面の前記周方向の複数箇所に設けられ、
複数の前記階段部の各々に1つの前記球体又は1つの前記突起部が配置され、
複数の前記階段部において同一高さの段に前記球体又は前記突起部が接触することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
同一パターンの前記階段部が、前記交差面の前記周方向の3箇所に設けられ、
3つの前記階段部の各々に1つの前記球体又は1つの前記突起部が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ギャップ調整装置は、前記ヘッドユニットの長手方向の一端部側の少なくとも2箇所と、他端部側の少なくとも1箇所と、に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ヘッドユニットは、複数の前記ギャップ調整部材にそれぞれ接触する複数の接触部を備え、
複数の前記ギャップ調整部材のいずれか1つは、前記軸と交差する方向の前記接触部の移動を規制する規制部を備え、
前記ヘッドユニットの長手方向の両端部のうち前記規制部が設けられていない側の端部に設けられた前記ギャップ調整装置のうちのいずれか1つは、前記長手方向と交差する所定方向に前記接触部を移動させるアライメント調整装置を備えることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記アライメント調整装置は、
前記ギャップ調整部材を付勢する付勢部と、
前記付勢部に抗して前記ギャップ調整部材を押圧する押圧部と、を備えることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
シートの厚みに応じて前記回転部材を回転させる駆動部を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記階段部は、隣り合う段をつなぐ斜面を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において良好な画質を得るには、搬送されるシートとインクジェットヘッドとの間隔を適正化する必要がある。そこで、従来、シートの厚みに応じてインクジェットヘッドの高さを調整する技術が検討されている。例えば、特許文献1、2では、シートの上面に接触する部材をインクジェットヘッドが備え、搬送されるシートによって部材ともにインクジェットヘッドが持ち上げられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-72055号公報
【特許文献2】特開2007-190737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2で開示された構成では、部材の接触がシートの搬送に対する負荷となる。そのため、搬送速度が変化し、印刷位置ずれや色ずれが発生するおそれがある。シートに部材を接触させない構成としては、インクジェットヘッドの下方に設けられた階段状部材にインクジェットヘッドを載せ、階段状部材を直線的にスライドさせることでインクジェットヘッドの高さを調整する構成が考えられる。しかし、その場合、階段状部材のストローク分の空間が必要なため、装置のサイズが大きくなってしまう。また、インクジェットヘッドが階段状部材の段差を乗り越える際に衝撃が発生し、耐久性が低下してしまう。衝撃を回避するためには、インクジェットヘッドを一時的に退避させる構成が考えられるが、退避と復帰のための時間を要するため、印刷開始が遅れてしまう。また、階段状部材が往復運動するため、階段状部材を駆動するギアのバックラッシュによる衝撃が発生する。バックラッシュによる衝撃を抑制する対策は可能であるが、構成が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、省スペース性と耐久性を低下させずにインクジェットヘッドのギャップ調整を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るインクジェット記録装置は、1つ以上のインクジェットヘッドを備えるヘッドユニットと、シートが搬送される搬送路に対する前記ヘッドユニットのギャップを調整するギャップ調整装置と、を備え、前記ギャップ調整装置は、軸と、前記軸と交差する交差面を有し、前記軸周りに回転可能な回転部材と、前記交差面に設けられ、周方向に階段状に高さが変化する階段部と、互いに表裏をなす一面と他面とを有し、前記一面が前記交差面に対向し、前記他面が前記ヘッドユニットに接触し、軸方向に移動可能なギャップ調整部材と、前記一面と前記交差面とに挟まれた球体、又は、前記一面から突出して前記交差面に接触する突起部と、を備える。
【0007】
同一パターンの前記階段部が、前記交差面の前記周方向の複数箇所に設けられ、複数の前記階段部の各々に1つの前記球体又は1つの前記突起部が配置され、複数の前記階段部において同一高さの段に前記球体又は前記突起部が接触してもよい。
【0008】
同一パターンの前記階段部が、前記交差面の前記周方向の3箇所に設けられ、3つの前記階段部の各々に1つの前記球体又は1つの前記突起部が配置されていてもよい。
【0009】
前記ギャップ調整装置は、前記ヘッドユニットの長手方向の一端部側の少なくとも2箇所と、他端部側の少なくとも1箇所と、に設けられていてもよい。
【0010】
前記ヘッドユニットは、複数の前記ギャップ調整部材にそれぞれ接触する複数の接触部を備え、複数の前記ギャップ調整部材のいずれか1つは、前記軸と交差する方向の前記接触部の移動を規制する規制部を備え、前記ヘッドユニットの長手方向の両端部のうち前記規制部が設けられていない側の端部に設けられた前記ギャップ調整装置のうちのいずれか1つは、前記長手方向と交差する所定方向に前記接触部を移動させるアライメント調整装置を備えていてもよい。
【0011】
前記アライメント調整装置は、前記ギャップ調整部材を付勢する付勢部と、前記付勢部に抗して前記ギャップ調整部材を押圧する押圧部と、を備えていてもよい。
【0012】
前記ギャップ調整装置は、シートの厚みに応じて前記回転部材を回転させる駆動部を備えていてもよい。
【0013】
前記階段部は、隣り合う段をつなぐ斜面を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、省スペース性と耐久性を低下させずにインクジェットヘッドのギャップ調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るヘッドユニットを示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るヘッドユニットを示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る調整装置を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るギャップ調整装置を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る回転部材と球体と保持器を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る回転部材と球体を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る回転部材を示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る回転部材を示す平面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る規制部を示す斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る規制部を示す斜視図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る調整装置を示す斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るアライメント調整装置を示す斜視図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係るアライメント調整装置を示す底面図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る規制部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。
【0017】
図1は、画像形成システム100の外観を示す斜視図である。
図2は、インクジェット記録装置1の内部構成を模式的に示す正面図である。
図3、4は、ヘッドユニット11を示す斜視図である。以下、
図2における紙面手前側をインクジェット記録装置1の正面側(前側)とし、左右の向きはインクジェット記録装置1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0018】
画像形成システム100(
図1参照)は、給紙装置110と、インクジェット記録装置1と、乾燥装置120と、後処理装置130と、を含む。給紙装置110は、数千枚のシートSを収容し、インクジェット記録装置1にシートSを供給する。インクジェット記録装置1は、インクジェット方式でシートSに画像を形成する。乾燥装置120は、シートSに吐出されたインクを加熱して乾燥させる。後処理装置130は、シートSに穿孔、ステープル綴じ、折畳み等の後処理を施す。
【0019】
インクジェット記録装置1(
図2参照)は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3内の中央部には、シートSを吸着してY方向に搬送する搬送ユニット7が設けられている。搬送ユニット7の上方には、インクを吐出して画像を形成する作像ユニット6が設けられている。本体ハウジング3の右側面には、給紙装置110からシートSを導入する給紙口8が設けられている。本体ハウジング3の左側面には、画像が形成されたシートSを乾燥装置120へ排出する排出口9が設けられている。
【0020】
本体ハウジング3の内部には、給紙口8から搬送ユニット7と作像ユニット6との間隙を経て排出口9に至る搬送路10が設けられている。搬送ユニット7よりも搬送方向Y上流側には、レジストローラー18が設けられている。
【0021】
搬送ユニット7は、無端の搬送ベルト21と、吸引部24と、を備える。搬送ベルト21は、多数の通気孔(図示省略)を有し、駆動ローラー25と従動ローラー22に巻き掛けられている。吸引部24の上面は、多数の通気孔(図示省略)を有し、搬送ベルト21の内面に接触している。吸引部24が搬送ベルト21の通気孔と吸引部24の通気孔とを介して空気を吸引することで、シートSを搬送ベルト21に吸着させる。モーターと減速ギアとを含む駆動部(図示省略)により駆動ローラー25が反時計回り方向に駆動されることで搬送ベルト21が反時計回り方向に回転し、搬送ベルト21に吸着されたシートSが搬送される。
【0022】
作像ユニット6は、複数(本実施形態では、4つ)のヘッドユニット11を備える。ヘッドユニット11(
図3、4参照)は、1つ以上のインクジェットヘッド12(本実施形態では、千鳥に配置された3つのインクジェットヘッド12)を備える。4つのヘッドユニット11には、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクが充填されたインクコンテナ20が接続されている。各ヘッドユニット11の右方には、インクジェットヘッド12のメンテナンスを行うメンテナンス装置30が設けられている。
【0023】
制御部2(
図2参照)は、演算部と記憶部とを備える(図示省略)。演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。演算部は、記憶部に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部2は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0024】
本体ハウジング3の上部には、表示操作部19が設けられている(
図2参照)。表示操作部19は、表示パネルと、表示パネルに積層されたタッチパネルと、キーパッドと、を備える(図示省略)。制御部2は、インクジェット記録装置1の操作メニューやステータス等を表す画面を表示パネルに表示させ、タッチパネル及びキーパッドで検知された操作に応じてインクジェット記録装置1の各部を制御する。
【0025】
インクジェット記録装置1の基本的な画像形成動作は、次のとおりである。表示操作部19や外部のコンピューター等からインクジェット記録装置1に画像形成ジョブが入力されると、給紙装置110が給紙口8を通じて搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー18がシートSの斜行を補正する。レジストローラー18が所定のタイミングで搬送ユニット7にシートSを送り出すと、搬送ユニット7が搬送ベルト21にシートSを吸着してY方向に搬送する。シートSには、ノズルからインクが吐出され、画像が形成される。画像が形成されたシートSは、排出口9を通じて乾燥装置120に排出される。
【0026】
次に、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
図5は、調整装置40を示す斜視図である。
図6は、ギャップ調整装置50を示す斜視図である。
図7は、回転部材51と球体52Bと保持器53を示す斜視図である。
図8は、回転部材51と球体52Bを示す斜視図である。
図9は、回転部材51を示す斜視図である。
図10は、
図6のI-I断面を示す断面図である。
図11は、回転部材51を示す平面図である。
図12は、
図11のII-II断面を示す断面図である。
図13、14は、規制部54Rを示す斜視図である。
【0027】
本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、1つ以上のインクジェットヘッド12を備えるヘッドユニット11と、シートSが搬送される搬送路10に対するヘッドユニット11のギャップを調整するギャップ調整装置50と、を備え、ギャップ調整装置50は、軸51Aと、軸51Aと交差する交差面51Cを有し、軸51A周りに回転可能な回転部材51と、交差面51Cに設けられ、周方向に階段状に高さが変化する階段部51Sと、互いに表裏をなす一面541と他面542とを有し、一面541が交差面51Cに対向し、他面542がヘッドユニット11に接触し、軸51A方向に移動可能なギャップ調整部材54と、一面541と交差面51Cとに挟まれた球体52Bと、を備える。具体的には、以下のとおりである。
【0028】
[調整装置]
ヘッドユニット11(
図3、4参照)は、千鳥に配置された3つのインクジェットヘッド12と、3つのインクジェットヘッド12を支持する枠体11Fと、を備える。枠体11Fの底部の前後両端部には、それぞれ左右方向の2箇所に接触部11Cが設けられている。接触部11Cは、例えば、下方に突出したピンである。枠体11Fの後端部の下方には、調整装置40が設けられている。枠体11Fの前端部の下方には、調整装置60が設けられている。調整装置40、60は、接触部11Cを介してヘッドユニット11を支持する。
【0029】
[ギャップ調整装置]
調整装置40(
図5参照)は、左右方向を長手方向とする直方体状の筐体41を有する。筐体41の内部には、ギャップ調整装置50(
図6参照)が収容されている。ギャップ調整装置50は、左右方向の2箇所に設けられている。ギャップ調整装置50の上方は、蓋42で覆われている。
【0030】
ギャップ調整装置50(
図6乃至12参照)は、軸51Aと、回転部材51と、ギャップ調整部材54と、球体52Bと、保持器53と、を備える。軸51Aは、上下方向を軸方向として筐体41に支持されている。回転部材51は、例えば、平歯車である。
【0031】
回転部材51の上面(
図9、11、12参照)は、軸51Aと交差する交差面51Cの一例である。交差面51Cには、周方向に階段状に高さが変化する階段部51Sが設けられている。同一パターンの階段部51Sが、交差面51Cの周方向の複数箇所に設けられている。本実施形態では、同一パターンの階段部51Sが、交差面51Cの周方向の3箇所に設けられている。
【0032】
階段部51Sは、周方向に並ぶ5つの段51Hと、隣り合う段51Hをつなぐ4つの斜面51Gと、を備える。5つの段51Hは、反時計回りに段階的に高さが高くなるように設けられている。3つの階段部51Sは、周方向に等間隔に設けられている。換言すれば、交差面51Cは、120°周期で同一パターンの階段状の高さの変化が反復されるように構成されている。
【0033】
ギャップ調整部材54(
図6参照)は、全体として直方体のブロック状に形成されている。ギャップ調整部材54は、回転部材51の上方に設けられている。ギャップ調整部材54の一面541(例えば、下面)は、回転部材51の交差面51Cに対向し、ギャップ調整部材54の他面542(例えば、上面)は、枠体11Fの底部に対向している。ギャップ調整部材54は、筐体41と軸51Aとに支持され、軸51A方向にスライド可能である。
【0034】
ギャップ調整部材54の一面541と交差面51Cとの間には、球体52B(
図7、8参照)が設けられている。複数の階段部51Sの各々に1つの球体52Bが配置され、複数の階段部51Sにおいて同一高さの段51Hに球体52Bが接触する。球体52Bは、保持器53によって保持される。保持器53は、保持器53に対する球体52Bの相対的な移動を規制する。保持器53は、円板状に形成され、上面と下面から球体52Bの一部が突出している。保持器53は、筐体41と軸51Aによって支持され、軸51A方向にスライド可能であるが、軸51A周りの回転は規制されている。回転部材51の回転に伴って球体52Bに接触する段51Hの高さが変化するため、ギャップ調整部材54が球体52B及び保持器53とともに軸51A方向に移動する。
【0035】
蓋42には、ギャップ調整部材54に対応する2箇所に、開口部42Aが設けられている。開口部42Aでは、ギャップ調整部材54の他面542(上面)の一部が露出している。2つのギャップ調整装置50のうち、左方のギャップ調整装置50のギャップ調整部材54には、規制部54Rが設けられている。規制部54Rは、ギャップ調整部材54の他面542に設けられ、蓋42の開口部42Aから突出している。規制部54Rは、ロート状(
図13参照)又は円筒状(
図14参照)に凹んだ形状を有する。規制部54Rにヘッドユニット11の接触部11Cが収容されることで、軸51Aに交差する方向の接触部11Cの移動が規制される。
【0036】
左方のギャップ調整装置50のギャップ調整部材54の後方には、左右方向を軸方向とするローラー56が設けられている。ローラー56は、ギャップ調整部材54の後面に接触し、ギャップ調整部材54の後方への逸脱を防止するとともに、ギャップ調整部材54の軸51A方向の移動における摩擦抵抗を軽減する。
【0037】
駆動部55(
図4参照)は、モーター、ウォームギア、ギア列等(図示省略)を含み、回転部材51を駆動する。制御部2には、シートSの厚みと回転部材51の回転角とを関連付けた変換情報が記憶されている。制御部2は、搬送路10に供給されるシートSの厚みに応じた回転角を変換情報から求めて、駆動部55により回転部材51を駆動する。回転部材51の回転に伴って球体52Bに接触する段51Hの高さが変化するため、ギャップ調整部材54が球体52B及び保持器53とともに軸51A方向に移動する。ギャップ調整部材54の移動に伴ってヘッドユニット11が軸51A方向に移動する。こうして、シートSの厚みに応じて、搬送路10に対するヘッドユニット11のギャップが調整される。
【0038】
[アライメント調整装置]
図15は、調整装置60を示す斜視図である。
図16は、アライメント調整装置70を示す斜視図である。
図17は、アライメント調整装置70を示す底面図である。
図18は、規制部54Rを示す斜視図である。
【0039】
調整装置60(
図15乃至17参照)は、左右方向を長手方向とする直方体状の筐体61を有する。筐体61の内部には、ギャップ調整装置50が収容されている。ギャップ調整装置50の上方は、蓋62で覆われている。調整装置60は、ギャップ調整装置50に加えて、シートSの搬送方向Yに対するヘッドユニット11の向きを調整するアライメント調整装置70を備えている。
【0040】
ギャップ調整装置50は、調整装置40に設けられたギャップ調整装置50と同様の基本構成を有するが、ギャップ調整部材54の構成が異なっている。ギャップ調整部材54は、軸51A方向及び左右方向に移動可能である。ギャップ調整部材54は、上下方向から見て、長方形の左前方及び右前方の隅角部が削られた形状を有する。ギャップ調整部材54の後方には、左右方向を軸方向とするローラー71が設けられている。ローラー71は、ギャップ調整部材54の後面に接触し、ギャップ調整部材54の後方への逸脱を防止するとともに、ギャップ調整部材54の軸51A方向の移動における摩擦抵抗を軽減する。
【0041】
アライメント調整装置70は、付勢部72、押圧部73、偏心カム74、ウォームギア75、駆動部76を備える。付勢部72は、ギャップ調整部材54の左前方に設けられ、ギャップ調整部材54を右後方に付勢する。付勢部72は、例えば、プランジャーである。
【0042】
押圧部73は、ギャップ調整部材54の右方に設けられ、ギャップ調整部材54を左方に押圧する。押圧部73は、ブロック73Bと、ローラー73Rと、を備える。ブロック73Bは、筐体61に支持され、左右方向にスライド可能である。ローラー73Rは、前後方向を軸方向としてブロック73Bに支持されている。ローラー73Rの外周面は、ブロック73Bの左方に露出しており、ギャップ調整部材54の右側面に接触する。
【0043】
ウォームホイール75Hは、上下方向を軸方向として筐体61に支持されている。ウォーム75Wは、前後方向を軸方向として筐体61に支持されている。偏心カム74は、ウォームホイール75Hの下方にウォームホイール75Hと同軸に設けられ、ブロック73Bの右側面に接触している。ウォーム操作部75Mは、ウォーム75Wの前側にウォーム75Wと同軸に設けられている。ウォーム操作部75Mの前端部には、プラスドライバーの先端部が挿入される十字穴75Cが設けられている。ギャップ調整部材54の左方には、ギャップ調整装置50の回転部材51を駆動する駆動部76が設けられている。
【0044】
蓋62には、ギャップ調整部材54に対応する箇所に、開口部62Aが設けられている。ギャップ調整部材54には、規制部54Rが設けられている。規制部54Rは、ギャップ調整部材54の他面542(上面)に設けられ、蓋62の開口部62Aから突出している。規制部54Rは、前後方向を長手方向とするV字形の溝状(
図16参照)、又は、前後方向を長手方向とする長孔状(
図18参照)に凹んだ形状を有する。規制部54Rにヘッドユニット11の接触部11Cが収容されることで、規制部54Rに対する接触部11Cの左右方向の相対的な移動が規制される。一方、規制部54Rに対する接触部11Cの前後方向の相対的な移動は規制されない。
【0045】
付勢部72がギャップ調整部材54を右後方に付勢し、押圧部73が付勢部72に抗してギャップ調整部材54を左方に押圧することで、ギャップ調整部材54の左右方向の位置決めがなされる。ウォーム操作部75Mの操作によりウォーム75Wが回転すると、ウォームホイール75Hが回転し、ウォームホイール75Hとともに偏心カム74が回転する。偏心カム74の回転により、ブロック73Bとともにギャップ調整部材54が左右方向にスライドする。一方、前述のとおり、ヘッドユニット11の後端部における2つの接触部11Cのうちの1つは、軸51Aに交差する方向の移動が規制されている。そのため、ギャップ調整部材54を左右方向に移動させた場合、ヘッドユニット11は、軸51Aに交差する方向の移動が規制された接触部11Cを中心とした円運動を行う。規制部54Rは、接触部11Cの前後方向の移動を規制しないから、接触部11Cに対する抵抗が生じることなくスムーズに位置決めが可能となる。
【0046】
以上説明した本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、1つ以上のインクジェットヘッド12を備えるヘッドユニット11と、シートSが搬送される搬送路10に対するヘッドユニット11のギャップを調整するギャップ調整装置50と、を備え、ギャップ調整装置50は、軸51Aと、軸51Aと交差する交差面51Cを有し、軸51A周りに回転可能な回転部材51と、交差面51Cに設けられ、周方向に階段状に高さが変化する階段部51Sと、互いに表裏をなす一面541と他面542とを有し、一面541が交差面51Cに対向し、他面542がヘッドユニット11に接触し、軸51A方向に移動可能なギャップ調整部材54と、一面541と交差面51Cとに挟まれた球体52Bと、を備える。この構成によれば、回転部材51を回転させることでギャップ調整を行うことができるから、直線的に階段が形成された部材をスライドさせる構成と比べて省スペース性に優れている。また、回転部材51を一方向に回転させることでギャップの増減が可能だから、バックラッシュによる衝撃が発生しない。よって、本実施形態によれば、省スペース性と耐久性を低下させずにヘッドユニット11のギャップ調整を行うことができる。また、一面541と交差面51Cとの間に球体52Bを備える構成の場合、交差面51Cの段差を乗り越える際の抵抗を低減することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、同一パターンの階段部51Sが、交差面51Cの周方向の複数箇所に設けられ、複数の階段部51Sの各々に1つの球体52B又は1つの突起部52Pが配置され、複数の階段部51Sにおいて同一高さの段51Hに球体52B又は突起部52Pが接触する。この構成によれば、回転部材51及びギャップ調整部材54にかかる荷重が複数箇所に分散するから、応力集中を抑制することができる。また、荷重が軸51Aの周囲に分散するから、荷重の偏りによる回転部材51の歪みや、ギャップ調整の誤差を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、同一パターンの階段部51Sが、交差面51Cの周方向の3箇所に設けられ、3つの階段部51Sの各々に1つの球体52B又は1つの突起部52Pが配置されている。この構成によれば、ギャップ調整部材54の姿勢を安定させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、ギャップ調整装置50は、ヘッドユニット11の長手方向の一端部側の少なくとも2箇所と、他端部側の少なくとも1箇所と、に設けられている。この構成によれば、ヘッドユニット11の姿勢を安定させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、ヘッドユニット11は、複数のギャップ調整部材54にそれぞれ接触する複数の接触部11Cを備え、複数のギャップ調整部材54のいずれか1つは、軸51Aと交差する方向の接触部11Cの移動を規制する規制部54Rを備え、ヘッドユニット11の長手方向の両端部のうち規制部54Rが設けられていない側の端部に設けられたギャップ調整装置50のうちのいずれか1つは、長手方向と交差する所定方向に接触部11Cを移動させるアライメント調整装置70を備える。この構成によれば、ギャップ調整装置50を利用してアライメント調整を行うことができるから、ギャップ調整装置50と別個にアライメント調整の構成を設ける場合と比べて部品数を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、アライメント調整装置70は、ギャップ調整部材54を付勢する付勢部72と、付勢部72に抗してギャップ調整部材54を押圧する押圧部73と、を備える。この構成によれば、簡潔な構成でアライメント調整を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、ギャップ調整装置50は、シートSの厚みに応じて回転部材51を回転させる駆動部55を備える。この構成によれば、迅速にギャップ調整を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、階段部51Sは、隣り合う段51Hをつなぐ斜面51Gを備える。この構成によれば、球体52Bがスムーズに段差を乗り越えることができる。
【0054】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0055】
上記実施形態では、回転部材51が平歯車である例が示されたが、回転部材51は、軸51A周りに回転駆動されるように構成されていればよく、回転部材51自体は歯車でなくてもよい。例えば、板状部材と、板状部材の下面に接合された歯車と、で構成されていてもよい(図示省略)。
【0056】
上記実施形態の球体52Bに代えて、ギャップ調整部材54の一面541から突出して交差面51Cに接触する突起部52P(図示省略)が設けられていてもよい。この場合、保持器53は不要である。複数の階段部51Sの各々に1つの突起部52Pが配置され、複数の階段部51Sにおいて同一高さの段51Hに突起部52Pが接触する。この構成によっても、回転部材51の回転に伴って突起部52Pに接触する段51Hの高さが変化するため、ギャップ調整部材54が軸51A方向に移動する。
【0057】
上記実施形態では、付勢部72の一例としてプランジャーが示されたが、付勢部72は圧縮コイルばねでもよい。上記実施形態では、偏心カム74とウォームギア75を用いて押圧部73を駆動する例が示されたが、送りねじを用いて押圧部73を駆動してもよい。
【符号の説明】
【0058】
11 ヘッドユニット
11C 接触部
12 インクジェットヘッド
10 搬送路
50 ギャップ調整装置
51 回転部材
51A 軸
51C 交差面
51H 段
51G 斜面
51S 階段部
52B 球体
52P 突起部
54 ギャップ調整部材
541 一面
542 他面
54R 規制部
55 駆動部
70 アライメント調整装置
72 付勢部
73 押圧部