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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175386
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241211BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 401
B41J2/17 201
B41J2/165 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093136
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑幸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA17
2C056EC08
2C056EC23
2C056EC31
2C056EC56
2C056FA13
2C056JA01
2C056JB04
2C056JB08
2C056JB15
2C056JC13
2C056JC25
(57)【要約】
【課題】記録ヘッドに固着したインクを確実に除去できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル面Nが設けられた記録ヘッド37と、前記ノズル面Nに洗浄液を付与しながら該ノズル面Nに沿ってブレード71を移動させるワイピング動作を行うことで前記ノズル面Nを拭き取るワイプユニット53と、前記ワイピング動作を行う第1メンテナンス動作と、前記第1メンテナンス動作の後に、前記ノズル面Nからインクを押し出した後で前記ワイピング動作を行う第2メンテナンス動作とを実行するように、前記記録ヘッド37及び前記ワイプユニット53を制御する制御部と、を備え、前記第2メンテナンス動作時には、先に前記ノズル面Nに付与される洗浄液を供給し、その後で前記ノズル面Nからインクを押し出して前記ワイピング動作を行う。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられた記録ヘッドと、
前記ノズル面に洗浄液を付与しながら該ノズル面に沿ってブレードを移動させるワイピング動作を行うことで前記ノズル面を拭き取るワイプユニットと、
前記ワイピング動作を行う第1メンテナンス動作と、前記第1メンテナンス動作の後に、前記ノズル面からインクを押し出した後で前記ワイピング動作を行う第2メンテナンス動作とを実行するように、前記記録ヘッド及び前記ワイプユニットを制御する制御部と、を備え、
前記第2メンテナンス動作時には、先に前記ノズル面に付与される洗浄液を供給し、その後で前記ノズル面からインクを押し出して前記ワイピング動作を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記ブレードの移動開始位置と前記ノズル面との間の洗浄液供給位置において、前記ノズル面に付与する洗浄液を供給する洗浄液供給部材を更に備え、
前記洗浄液供給部材は、前記洗浄液供給位置から離間可能であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記洗浄液供給部材には、前記洗浄液供給位置から離間した位置において、前記洗浄液が供給されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ワイプユニットは、前記記録ヘッドの下方に位置して前記ワイピング動作を実行可能なワイプ位置と、前記記録ヘッドの下方から離間した待機位置と、の間を移動可能であり、
前記洗浄液供給部材は前記ワイプユニットと一体に移動可能に設けられ、
前記ワイプユニットが前記ワイプ位置に移動すると、前記洗浄液供給部材が前記洗浄液供給位置に移動し、前記ワイプユニットが前記待機位置に移動すると、前記洗浄液供給部材が前記洗浄液供給位置から離間することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ワイプユニットは、前記ワイピング動作によって拭き取られたインクが落下する廃液トレイを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第1メンテナンス動作時に前記ブレードが移動する第1速度は、前記第2メンテナンス動作時に前記ブレードが移動する第2速度よりも遅いことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのインク吐出口を拭き取るワイプユニットを備えるインクジェット式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、記録ヘッドのノズルのインク吐出口を拭き取るワイプユニットが備えられている。ワイプユニットは、インク吐出口が開口するノズル面に接触するブレードを有し、移動開始位置から移動終了位置までブレードを移動させるワイピング動作を行うことで、インク吐出口を拭き取る。
【0003】
しかし、このようなワイピング動作を行っても、インク吐出口に付着したインクが乾燥して固着する場合がある。そこで、特許文献1に記載の液滴吐出装置(インクジェット記録装置に対応)は、固着物の位置を特定する特定手段を備え、特定手段によって特定された位置において、ワイピン動作時のブレードの移動速度を遅くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-69837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクの固着が進んだ場合等には、上記特許文献1に記載の液滴吐出手段のようにブレードの移動速度を遅くしたのみでは、固着したインクを除去するには不十分である。
【0006】
そこで、本発明は上記事情を鑑み、記録ヘッドに固着したインクを確実に除去できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のインクジェット記録装置は、複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル面が設けられた記録ヘッドと、前記ノズル面に洗浄液を付与しながら該ノズル面に沿ってブレードを移動させるワイピング動作を行うことで前記ノズル面を拭き取るワイプユニットと、前記ワイピング動作を行う第1メンテナンス動作と、前記第1メンテナンス動作の後に、前記ノズル面からインクを押し出した後で前記ワイピング動作を行う第2メンテナンス動作とを実行するように、前記記録ヘッド及び前記ワイプユニットを制御する制御部と、を備え、前記第2メンテナンス動作時には、先に前記ノズル面に付与される洗浄液を供給し、その後で前記ノズル面からインクを押し出して前記ワイピング動作を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記ブレードの移動開始位置と前記ノズル面との間の洗浄液供給位置において、前記ノズル面に付与する洗浄液を供給する洗浄液供給部材を更に備え、前記洗浄液供給部材は、前記洗浄液供給位置から離間可能であることを特徴としてもよい。
【0009】
本発明において、前記洗浄液供給部材には、前記洗浄液供給位置から離間した位置において、前記洗浄液が供給されることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明において、前記ワイプユニットは、前記記録ヘッドの下方に位置して前記ワイピング動作を実行可能なワイプ位置と、前記記録ヘッドの下方から離間した待機位置と、の間を移動可能であり、前記洗浄液供給部材は前記ワイプユニットと一体に移動可能に設けられ、前記ワイプユニットが前記ワイプ位置に移動すると、前記洗浄液供給部材が前記洗浄液供給位置に移動し、前記ワイプユニットが前記待機位置に移動すると、前記洗浄液供給部材が前記洗浄液供給位置から離間することを特徴としてもよい。
【0011】
本発明において、前記ワイプユニットは、前記ワイピング動作によって拭き取られたインクが落下する廃液トレイを更に備えることを特徴としてもよい。
【0012】
本発明において、前記第1メンテナンス動作時に前記ブレードが移動する第1速度は、前記第2メンテナンス動作時に前記ブレードが移動する第2速度よりも遅いことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第2メンテナンス動作時に先に洗浄液を供給することで、ノズル面からインクを押し出した後すぐにワイピング動作を行うことができるので、インクの乾燥を抑制する効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構造を模式的に示す正面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット及びメンテナンスユニットを模式的に示す平面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット及びメンテナンスユニットを模式的に示す正面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の記録ヘッドを示す側面図である。
図3B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の記録ヘッドを示す下面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置のキャップユニットを示す斜視図である。
図5A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプユニット(移動開始位置に移動したキャリッジ、廃液トレイ)を示す斜視図である。
図5B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプユニット(移動終了位置に移動したキャリッジ、廃液トレイ)を示す斜視図である。
図6A】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、待機位置に移動したワイプユニットを模式的に示す側面図である。
図6B】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において、ワイプ位置に移動したワイプユニットを模式的に示す側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の制御部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
【0016】
最初に、図1図2A及び図2Bを参照して、インクジェット記録装置1の全体の構成について説明する。図1はインクジェット記録装置1の内部を模式的に示す正面図である。図2Aはヘッドユニット11及びメンテナンスユニット13を模式的に示す平面図、図2Bはヘッドユニット11及びメンテナンスユニット13を模式的に示す側面図である。以下、図1における紙面手前側をインクジェット記録装置1の正面側(前側)とする。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0017】
図1に示されるように、インクジェット記録装置1は、インクを吐出することで画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。インクジェット記録装置1は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3の内部の下部には、普通紙、コート紙等のシートが収容される給紙カセット5と、給紙カセット5からシートを送り出す給紙ローラー7と、が設けられている。給紙カセット5の上方には、シートを搬送する搬送ユニット9が設けられている。搬送ユニット9の上方には、4個のヘッドユニット11M、11C、11Bk、11Y(ヘッドユニット11と総称する)と4個のメンテナンスユニット13とが設けられている(図2A及び図2Bも参照)。本体ハウジング3の左上部には、画像が形成されたシートを排出する排出ローラー対15と、排出されたシートが積載される排出トレイ17と、が設けられている。
【0018】
本体ハウジング3の内部には、給紙カセット5から搬送ユニット9を経て排出ローラー対15に至る搬送路19が設けられている。搬送路19には、シートを搬送する複数の搬送ローラー対21が設けられている。
【0019】
次に、搬送ユニット9について、図1を参照して説明する。搬送ユニット9は、無端状の搬送ベルト25を備えている。搬送ベルト25には、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔が開けられている。搬送ベルト25は、左右に離間して配置された駆動ローラー27Aと従動ローラー27Bとに巻き掛けられている。駆動ローラー27Aは、モーター(図示省略)により駆動されて回転する。駆動ローラー27Aが回転することで、搬送ベルト25は図1の反時計回り方向に走行する。上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25が、図1の右から左に向かう搬送方向に沿ってシートが搬送される搬送路19を形成している。
【0020】
搬送ベルト25の中空部には、搬送板29と、吸引装置31と、が備えられている。搬送板29には、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔が開けられている。搬送板29は、上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25の内面に接触する。吸引装置31は、搬送板29の下方に設けられて、搬送ベルト25の貫通孔と搬送板29の貫通孔を介して空気を吸引することで、シートを搬送ベルト25に引き付ける。
【0021】
次に、ヘッドユニット11について説明する。4個のヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mは、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクに対応しており、搬送ユニット9の上方に、搬送方向に沿って所定の間隔を開けて配置されている。4個のヘッドユニット11には、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ33Y、33Bk、33C、33Mが接続されている。各ヘッドユニット11は、図2A及び図2Bに示されるように、3個の記録ヘッド37と、3個の記録ヘッド37を支持するプレート39と、を備える。
【0022】
記録ヘッド37について、図3A及び図3Bを参照して説明する。図3Aは記録ヘッド37を示す側面図、図3Bは記録ヘッド37を示す下面図である。記録ヘッド37は、シートの搬送方向と交差する幅方向(前後方向)に長い直方体形状を有している。記録ヘッド37は、インクが供給される多数のノズル(図示省略)と、ノズルごとに設けられた圧電素子(図示省略)と、を備えている。多数のノズルの吐出口は、記録ヘッド37の下面に開口している。圧電素子が駆動されることで、ノズル内のインクが吐出口から下方に吐出される。図3Bに示されるように、吐出口が開口した領域Nを含む面をノズル面Nとする。3個の記録ヘッド37は、制御部201(図7参照)と電気的に接続している。
【0023】
3個の記録ヘッド37は、図2Aに示されるように、幅方向(前後方向)に沿って千鳥状に配置されている。詳細には、2個の記録ヘッド37が幅方向に並んで配置され、1個の記録ヘッド37が2個の記録ヘッド37に搬送方向に隣接して配置されている。記録ヘッド37は、図3Aに示されるように、下端部がプレート39から突き出るように支持されている。
【0024】
4個のヘッドユニット11のそれぞれは、ヘッドユニット昇降機構41(図7参照)によって、印字位置と退避位置との間を昇降可能に支持されている。印字位置は、ヘッドユニット11の記録ヘッド37のノズル面Nが、上側の軌道に沿って走行する搬送ベルト25と、所定の間隔(例えば1mm)を開けて対向する位置である(図1参照)。退避位置は、ヘッドユニット11の記録ヘッド37のノズル面Nが、搬送ベルト25に対して印字位置よりも上方に離間して、搬送ユニット9の上方に、後述するメンテナンスユニット13のキャップユニット51及びワイプユニット53が収容可能な空間を形成する位置である。ヘッドユニット昇降機構41は、制御部201(図7参照)と電気的に接続している。
【0025】
次に、メンテナンスユニット13について説明する。4個のメンテナンスユニット13は、同じ構造を有し、4個のヘッドユニット11毎に設けられている。メンテナンスユニット13は、対応するヘッドユニット11に搬送方向に隣接して配置されている。この例では、対応するヘッドユニット11の下流側(左側)配置されている。
【0026】
図2Bに示されるように、メンテナンスユニット13は、ヘッドユニット11の3個の記録ヘッド37のノズル面Nを覆うキャップユニット51と、ヘッドユニット11の3個の記録ヘッド37のノズル面Nを清掃するワイプユニット53と、ワイプユニット53に洗浄液を供給する洗浄液供給部55と、を備えている。
【0027】
キャップユニット51、ワイプユニット53、洗浄液供給部55は、ハウジング57に支持されている。ハウジングは、対応するヘッドユニット11の下流側(左側)に配置されている。ハウジング57は、幅方向に長い中空の直方体状を有し、対応するヘッドユニット11に対向する面(右側の面)は開口している。
【0028】
まず、キャップユニット51について、図4を参照して説明する。図4はキャップユニット51を示す斜視図である。キャップユニット51は、3個の記録ヘッド37のノズル面Nを覆う3個のキャップ61を備えている。3個のキャップ61は、ヘッドユニット11の3個の記録ヘッド37に対応するように幅方向に沿って千鳥に配置されて、支持プレート63に支持されている。各キャップ61は、上面が開口した凹部61aと、凹部61aの底部に設けられた排出口(図示省略)と、を備えている。
【0029】
キャップユニット51は、キャップユニット移動機構(図示省略)によって、待機位置(図1図2A及び図2B参照)とキャップ位置との間を、搬送方向及びその反対方向(左右方向)に移動可能である。待機位置は、キャップユニット51がハウジング57の下部空間に収容される位置である。キャップ位置は、退避位置に上昇したヘッドユニット11の下方の空間に収容される位置である。キャップユニット51がキャップ位置に移動し、ヘッドユニット11が所定の高さまで下降することで、3個の記録ヘッド37のノズル面Nが3個のキャップ61で覆われるようになっている。キャップユニット51は、ハウジング57の右開口を通って、キャップ位置と待機位置との間を移動可能である。
【0030】
次に、ワイプユニット53について、図5A図5B図6A図6Bを参照して説明する。図5A及び図5Bは、ワイプユニット53を示す斜視図である。図5Aは移動開始位置に移動したキャリッジ91を示し、図5Bは移動終了位置に移動したキャリッジ91を示す。図6A及び図6Bは、ワイプユニット53を模式的に示す側面図である。図6Aは待機位置P1に移動したワイプユニット53を示し、図6Bはワイプ位置P2に移動したワイプユニット53を示す。
【0031】
ワイプユニット53は、3個の記録ヘッド37のノズル面Nを拭き取る3個のブレード71(図5Bには図示省略)と、3個の記録ヘッド37のノズル面Nに付与される洗浄液を供給する3個の洗浄液供給部材73と、3個のブレード71及び3個の洗浄液供給部材73が支持されると共に拭き取られたインク及び洗浄液が落下する廃液トレイ75と、を備えている。
【0032】
最初に、廃液トレイ75について説明する。廃液トレイ75は、底板と、底板の外周に沿って設けられた側板と、を有している。
【0033】
廃液トレイ75は、図5A及び図5Bに示されるように、前述のブレード71を前後方向に沿って案内する3本のレール81を備えている。3本のレール81は、記録ヘッド37のノズル面Nよりも長い長さを有し、3個の記録ヘッド37に対応するように配置されている。
【0034】
図6A及び図6Bに示されるように、廃液トレイ75の底板には排水口83が形成されている。排水口83は、底板の略中央に配置されている。底板は排水口83に向かって下方に傾斜するように形成されている。排水口83は、排水管85を介して廃液タンク87に接続している。排水管85には、排水ポンプ89が備えられている。廃液タンク87及び排水ポンプ89と、廃液タンク87と排水ポンプ89間の排水管85は、ハウジング57の近傍に固定されている。一方で、排水口83と排水ポンプ89との間の排水管85は可撓性を有し、後述するように所定の長さを有している。排水ポンプ89は、制御部201(図7参照)と電気的に接続している。
【0035】
次に、ブレード71について説明する。ブレード71は、記録ヘッド37のノズル面Nの幅よりも広い幅を有する板状の部材であり、可撓性を有する樹脂等で作成されている。3個のブレード71の下端部は、それぞれキャリッジ91(図5A及び図5B参照)に支持されている。
【0036】
キャリッジ91は、廃液トレイ75に備えられたレール81に係合して、キャリッジ移動機構93(図7参照)によって、移動開始位置(図5A参照)と移動終了位置(図5B参照)との間を、幅方向(前後方向)に沿って移動可能である。移動開始位置から移動終了位置へ向かう方向(この例では、後から前へ向かう方向)を、キャリッジ91の移動方向(ワイピング方向ともいう)とする。キャリッジ移動機構93は、制御部201(図7参照)と電気的に接続している。
【0037】
次に、洗浄液供給部材73について説明する。図5A及び図5Bに示されるように、洗浄液供給部材73は、キャリッジ91の移動開始位置よりも移動方向の後方に配置されて、廃液トレイ75に移動不能に支持されている。洗浄液供給部材73は、キャリッジ91の移動方向の前方に延びる供給部を有している。供給部には、上下方向に貫通する洗浄液供給孔95が形成されている。この洗浄液供給孔95に、後述する洗浄液供給部55から洗浄液が供給されるようになっている。洗浄液供給孔95が開口する供給部の下面を、洗浄液の供給面とする。キャリッジ91が移動開始位置に移動した状態(図5A参照)では、供給部はブレード71の上方を通って前方に延び、洗浄液供給孔95がブレード71よりも前方に位置している。洗浄液供給部材73は前述のように廃液トレイ75に移動不能に支持されているので、キャリッジ91が移動しても、洗浄液供給部材73は移動しない(図5B参照)。
【0038】
ワイプユニット53(ブレード71、洗浄液供給部材73、廃液トレイ75)は、ワイプユニット移動機構101(図7参照)によって、待機位置P1(図2B図6A参照)とワイプ位置P2(図6B参照)との間を、搬送方向及びその反対方向(左右方向)に移動可能である。待機位置P1は、ワイプユニット53がハウジング57の上部空間に収容される位置である。ワイプ位置P2は、退避位置に上昇したヘッドユニット11の下方の空間にワイプユニット53が収容される位置である。ヘッドユニット11が退避位置に移動した後でワイプユニット53がワイプ位置P2に移動し、ヘッドユニット11が所定の高さまで下降することで、記録ヘッド37のノズル面Nに、ブレード71が接触可能となる。ワイプユニット53は、ハウジング57の右開口を通って、待機位置P1とワイプ位置P2との間を移動可能である。ワイプユニット移動機構101は、制御部201(図7参照)と電気的に接続している。
【0039】
このようにワイプユニット53は待機位置P1とワイプ位置P2との間を移動する。このため、前述のように、廃液タンク87及び排水ポンプ89と、廃液タンク87と排水ポンプ89間の排水管85は、ワイプユニット53の待機位置P1の近傍(ハウジング57の近傍)に固定されている。一方で、排水ポンプ89と排水口83との間の排水管85は、前述のように可撓性を有し、ワイプユニット53の移動距離よりも長い長さを有している。したがって、ワイプユニット53がワイプ位置P2に移動すると、排水ポンプ89と排水口83との間の排水管85はほぼ真っすぐに延びる。一方で、ワイプユニット53が待機位置P1に移動すると、排水ポンプ89と排水口83との間の排水管85は、ジグザグ状や螺旋状に湾曲する。
【0040】
次に、洗浄液供給部55について説明する。図6Aに示されるように、洗浄液供給部55は、ワイプユニット53の3個の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95と連通可能な3個の供給口111と、洗浄液タンク113と、洗浄液タンク113と供給口111との間に設けられる配管115と、配管115に設けられたポンプ117と、を備えている。洗浄液供給部55は、ハウジング57の近傍に設けられる。
【0041】
3個の供給口111は、待機位置P1に移動したワイプユニット53の3個の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に対応するように配置されて、例えば、ハウジング57に設けられたフレーム状の支持部材(図示省略)に支持されている。ワイプユニット53が待機位置P1に移動すると、3個の供給口111は、ワイプユニット53の3個の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に連通する(図6A参照)。
【0042】
洗浄液タンク113には、洗浄液が貯留されている。洗浄液は、例えば、インクから色材を除いた、溶剤及び水を主成分とする液体である。また、必要に応じて界面活性剤や防腐剤等を添加してもよい。
【0043】
配管115は、洗浄液タンク113から水平方向に沿って延びる主配管と、主配管からジョイント(図示省略)を介して分岐する3本の分岐配管と、を有している。3本の分岐配管の先端部は下方に略直角に屈曲して、3個の供給口111に接続している。
【0044】
ポンプ117は、洗浄液タンク113とジョイントとの間の配管115に設けられて、洗浄液タンク113から配管115に洗浄液を汲み上げる。汲み上げられた洗浄液は、配管115を通って3個の供給口111に送られる。ポンプ117は、制御部201(図7参照)と電気的に接続している。
【0045】
なお、ポンプ117と3個の供給口111までの配管115の長さが異なっているので、各供給口111からの洗浄液の供給量(単位時間当たりの供給量)が同じとなるように、配管115の径等が設定されている。
【0046】
次に、図7のブロック図を参照して、制御部201について説明する。制御部201は、シートに画像を形成する印字動作と、ヘッドユニット11の3個の記録ヘッド37を清掃するヘッドクリーニング動作と、を実行する。印字動作における制御部201の動作については説明を省略する。
【0047】
制御部201は、記録ヘッド37を制御して、ノズル面からのインクの吐出動作や、所定の量のインクをノズル面から押し出して保持させるインク保持動作を実行する。さらに、制御部201は、ヘッドユニット昇降機構41を制御して、ヘッドユニット11を退避位置と印字位置とに昇降させる。さらに、制御部201は、印字位置と退避位置との間のクリーニング位置にヘッドユニット11を昇降させる。
【0048】
さらに、制御部201は、排水ポンプ89を制御して、廃液トレイ75に落下した廃液を、排水管85を通して廃液タンク87に送り込む。
【0049】
さらに、制御部201は、キャリッジ移動機構93を制御して、キャリッジ91を移動開始位置と移動終了位置とに移動させる。
【0050】
さらに、制御部201は、ワイプユニット移動機構101を制御して、ワイプユニット53を待機位置P1とワイプ位置P2との間を移動させる。
【0051】
さらに、制御部201は、ポンプ117を制御して、洗浄液タンク113から配管115へ洗浄液を汲み上げる。
【0052】
次に、上記構成を有するインクジェット記録装置1の印字動作とヘッドクリーニング動作とについて説明する。
【0053】
まず、印字動作について、図1を参照して説明する。印字動作時、ヘッドユニット11は印字位置に下降し、キャップユニット51及びワイプユニット53は待機位置に移動している。洗浄液供給部55の3個の供給口111は、ワイプユニット53の3個の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に連通している(図6A参照)。
【0054】
まず、給紙ローラー7によって給紙カセット5からシートが給紙される。給紙されたシートは、搬送ローラー対21によって搬送路19に沿って搬送ユニット9に搬送される。シートは搬送ユニット9の搬送ベルト33の上側の軌道に沿って搬送される。この際、画像データに対応するヘッドユニット11の記録ヘッド37からシートにインクが吐出されて、シートに画像が形成される。その後、シートは、搬送ローラー対21によって搬送路19に沿って搬送され、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0055】
印字動作の終了後、ヘッドクリーニング動作が実行される(キャップ動作については説明を省略する)。前述のように、ワイプユニット53は待機位置P1に移動している。図6Aに示されるように、供給口111は、ワイプユニット53の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に連通している。
【0056】
最初に、制御部201は、ヘッドユニット昇降機構41を制御して、ヘッドユニット11を退避位置に上昇させる。
【0057】
その後、制御部103は、洗浄液供給部55のポンプ117を制御して、洗浄液タンク113から配管115に洗浄液を汲み上げる。洗浄液は、配管115から3個の供給口111を通って、3個の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に供給される。制御部201は、供給された洗浄液が、洗浄液供給孔95から半球状に突出した状態に保持されるまで洗浄液を汲み上げるようにポンプ117を駆動した後、ポンプ117の駆動を停止する。なお、洗浄液は、ヘッドクリーニング動作以外では、洗浄液供給孔95の内部で凹状のメニスカスを形成して、内部に保持される。
【0058】
その後、制御部201は、ワイプユニット移動機構101を制御して、ワイプユニット53(ブレード71、洗浄液供給部材73、廃液トレイ75)を待機位置P1からワイプ位置に移動させる。この際、洗浄液供給部材73は、洗浄液供給孔95から洗浄液が半球状に突出した状態のまま移動する。その後、制御部201は、ヘッドユニット昇降機構41を制御して、ヘッドユニット11をクリーニング位置に下降させる。これにより、図6Bに示されるように、3個の記録ヘッド37のノズル面Nは、ワイプユニット53の3個の洗浄液供給部材73の前方において該洗浄液供給部材73の洗浄液供給面と同じ高さ位置まで下降し、ノズル面Nと洗浄液供給面とがほぼ隙間なく連続する。言い換えると、洗浄液供給部材73の供給面は、ブレード71の移動開始位置とノズル面Nとの間に位置する。この位置は、本発明における洗浄液供給位置の一例である。
【0059】
その後、制御部201は、キャリッジ移動機構93を制御して、キャリッジ91を移動開始位置から移動終了位置へ移動させる。これにより、ブレード71が、洗浄液供給部材73の供給面を通ってノズル面Nに沿って移動するワイピング動作が行われる。このワイピング動作によって、ノズル面Nに残留したインクが、供給面に供給された洗浄液と共にブレード71によって拭き取られる。これにより、第1メンテナンス動作が実行される。拭き取られたインク及び洗浄液は、ブレード71の下端縁や側縁から下方の廃液トレイ75に落下する。
【0060】
その後、制御部201は、ヘッドユニット昇降機構41を制御して、ヘッドユニット11を印字位置から待機位置に上昇させた後、キャリッジ移動機構93を制御して、キャリッジ91を移動終了位置から移動開始位置へ移動させる。その後、制御部201は、ワイプユニット移動機構101を制御して、ワイプユニット53(ブレード71、洗浄液供給部材73、廃液トレイ75)をワイプ位置P2(図6B参照)から待機位置P1(図6A参照)に移動させる。これにより、3個の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95が、洗浄液供給部55の3個の供給口111に連通する。
【0061】
その後、制御部201は、第1メンテナンス動作時と同様に、洗浄液供給部55のポンプ117を制御して、洗浄液タンク113から配管115に洗浄液を汲み上げる。汲み上げられた洗浄液は、配管115から供給口111を通って洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に供給される。制御部201は、洗浄液供給孔95に供給された洗浄液が、洗浄液供給孔95から半球状に突出した状態に保持されるまで洗浄液を汲み上げるようにポンプ117を駆動した後、ポンプ117の駆動を停止する。
【0062】
その後、制御部201は、ワイプユニット移動機構101を制御して、ワイプユニット53(ブレード71、洗浄液供給部材73、廃液トレイ75)を待機位置P1からワイプ位置P2に移動させる。この際、洗浄液供給部材73は、洗浄液供給孔95から洗浄液が半球状に突出した状態のまま移動する。その後、制御部201は、ヘッドユニット昇降機構41を制御して、ヘッドユニット11をクリーニング位置に下降させる。前述のように、3個の記録ヘッド37のノズル面Nは、ワイプユニット53の3個の洗浄液供給部材73の前方において該洗浄液供給部材73の供給面と同じ高さ位置まで下降し、ノズル面Nと洗浄液供給面とがほぼ隙間なく連続する(図6B参照)。
【0063】
その後、制御部201は、3個の記録ヘッド37を制御して、所定の量のインクをノズル面から押し出して保持させる。その後、制御部201は、キャリッジ移動機構93を制御して、キャリッジ91を移動開始位置から移動終了位置へ移動させてワイピング動作を行う。このワイピング動作によって、ノズル面Nに保持されたインクが、洗浄液供給部材73の供給面に供給された洗浄液と共にブレード71によって拭き取られる。つまり、洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に洗浄液を保持させた後で、ノズル面Nからインクを押し出し、その後で、ワイピング動作が行われる。これにより、第2メンテナンス動作が実行される。拭き取られたインク及び洗浄液は、ブレード71の下端縁や側縁から下方の廃液トレイ75に落下する。
【0064】
その後、制御部201は、ヘッドユニット昇降機構41を制御してヘッドユニット11を待機位置に上昇させ、キャリッジ移動機構93を制御してキャリッジ91を移動開始位置へ移動させた後、ワイプユニット移動機構101を制御して、ワイプユニット53をワイプ位置P2から待機位置P1に移動させる。
【0065】
また、制御部201は、廃液トレイ75に所定量の廃液が溜まると、ポンプ89を駆動して廃液トレイ75から廃液タンク87に溜まった廃液を回収する。
【0066】
上記説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、第1メンテナンス動作によって、ノズル面Nやノズルの内壁に洗浄液が供給され、ノズル面Nやノズルの内壁に固着したインクの溶解が促進される。そして、第1メンテナンス動作の後で実行される第2メンテナンス動作によって、溶解したインクを確実に除去することができる。
【0067】
また、第2メンテナンス動作時には、洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に洗浄液を保持させた後で、ノズル面Nからインクを押し出し、ワイピング動作が行われる。このように、先に洗浄液を供給することで、ノズル面Nからインクを押し出した後すぐにワイピング動作を行うことができる。つまり、ノズル面Nから押し出されたインクが外気に触れる時間をできるだけ短くすることができるので、特にインクが乾燥しやすい場合には、インクの乾燥を抑制する効果が高まる。
【0068】
また、3個の洗浄液供給部材73がワイプユニット53に含まれるので、ワイプユニット53がワイプ位置に移動すると、洗浄液供給部材73の供給面がブレード71の移動開始位置とノズル面Nとの間の洗浄液供給位置に移動し、ワイプユニット53が待機位置に移動すると、洗浄液供給位置から離間する。したがって、洗浄液供給部材73が汚れた場合には、ワイプユニット53を待機位置P1に移動させた後で洗浄することができる。
【0069】
さらに、ワイプユニット53が待機位置P1に移動した状態において、洗浄液供給部55から洗浄液供給部材73に洗浄液が供給されて保持されるので、洗浄液供給部55をハウジング57の近傍に固定することができる。したがって、ワイプユニット53の移動に伴って、洗浄液供給部55の配管115が湾曲したり伸長したりしない。したがって、配管115の挟み込み等を防止したり、配管115の移動空間を確保する必要がなくなったりするので、配管115の処理を容易にできる。
【0070】
さらに、ワイプユニット53は、拭き取られたインクが落下する廃液トレイ75を備えるので、廃液(洗浄液及びインク)を確実に回収することができ、機内の汚れを防止できる。
【0071】
また、第1メンテナンス動作時にブレード71が移動する第1速度は、第2メンテナンス動作時にブレード71が移動する第2速度よりも遅いことが好ましい。ブレード71の移動時間を遅くするほど、固着したインクと洗浄液との接触時間が長くなるので、固着したインクを溶解させやすくなる。しかし、ブレード71の移動時間を遅くすると、ワイピング動作の作業性が低下する。そこで、第1メンテナンス動作時には、ブレード71の移動速度を遅くして固着したインクの溶解を速める一方で、第2ワイピング動作時はブレード71の移動速度を第1ワイピング動作よりも遅くすることで、ワイピング動作の作業性の低下度合いを補うことができる。
【0072】
また、洗浄液供給部55の3個の供給口111(3個の供給口111が支持される支持部材)を、上下方向に移動可能に支持してもよい。この場合、ワイプユニット53が待機位置P1に移動すると、3個の供給口111を下降させて3個の洗浄液供給部材73の洗浄液供給孔95に連通させ、ワイプユニット53をワイプ位置P2に移動させる際に、3個の供給口111を上昇させる。これにより、供給口111と洗浄液供給孔95を確実に連通させることができると共に、ワイプユニット53の移動時にワイプユニット53が供給口111に干渉しないので、ワイプユニット53を円滑に移動できる。
【0073】
また、本実施形態では、メンテナンスユニット13がヘッドユニット11毎に設けられている例を説明したが、4個のヘッドユニット11に対して1個のメンテナンスユニット13が設けられてもよい。この場合、1個のメンテナンスユニット13に、4個のキャップユニット51と、4個のワイプユニット53及び洗浄液供給部55が設けられる。そして、4個のキャップユニット51がキャップ位置と待機位置との間を移動し、4個のワイプユニット53及び洗浄液供給部55がワイプ位置と待機位置との間を移動する。
【0074】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 インクジェット記録装置
37 記録ヘッド
53 ワイプユニット
71 ブレード
73 洗浄液供給部材
75 廃液トレイ
201 制御部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7