(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175393
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】長尺工具保持具
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20241211BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A62B35/00 A
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093157
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】永田 圭祐
【テーマコード(参考)】
2E184
5G352
【Fターム(参考)】
2E184JA04
2E184KA04
2E184KA11
2E184LA01
2E184LA21
5G352AB09
5G352AE04
5G352AE11
(57)【要約】
【課題】墜落の際に、フルハーネスに取り付けられるランヤードに、長尺工具が干渉することを防止可能な長尺工具保持具を提供することを目的とする。
【解決手段】長尺工具保持具1は、前面ベルト51,51と、後面ベルト52,52と、脚ベルト53,53と、ランヤード60を係止するために後面ベルト52,52に設けられる係止部58と、を備えるフルハーネス50の、後面ベルト52,52に着脱可能であって、長尺工具を保持する保持部2と、保持部2を後面ベルト52,52に着脱するための着脱部3を備え、着脱部3は、保持部2の上方2Uを、肩ベルト54,54に着脱する上方着脱具4と、保持部2の下方2Lを、腰ベルト57に着脱する下方着脱具8からなり、上方着脱具4と、下方着脱具8は、作業者70の右側背部又は左側背部の同じ側に配置されることで、ランヤード60に対する長尺工具の干渉を防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の前面ベルトと、一対の後面ベルトと、一対の脚ベルトと、ランヤードを係止するために前記後面ベルトに設けられる係止部と、を備えるフルハーネスの、前記後面ベルトに着脱可能な長尺工具保持具であって、
長尺工具を保持する保持部と、
前記保持部を前記後面ベルトに着脱するための着脱部を備え、
前記着脱部は、
前記保持部の上方を、前記後面ベルトを構成する肩ベルトに着脱する上方着脱具と、
前記保持部の下方を、前記後面ベルトを構成するとともに前記肩ベルトの下方に配置される胴ベルトに着脱する下方着脱具からなり、
前記上方着脱具と、前記下方着脱具は、前記フルハーネスを装着する作業者の右側背部又は左側背部の同じ側に配置されることで、前記ランヤードに対する前記長尺工具の干渉を防止することを特徴とする長尺工具保持具。
【請求項2】
前記保持部は、前記長尺工具を収容する袋状の本体を備えることを特徴とする請求項1に記載の長尺工具保持具。
【請求項3】
前記上方着脱具と、前記下方着脱具は、いずれもリリースバックルを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の長尺工具保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業において使用される長尺工具を保持する長尺工具保持具に係り、特に、フルハーネスに取り付けられるランヤードに、長尺工具が干渉することを防止可能な長尺工具保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業において、作業者は腰ベルト型の安全帯を使用していたが、法改正により、新規格に従った墜落制止用器具を使用することとなった。
腰ベルト型では、命綱であるランヤードが腰ベルトに取り付けられているから、万一の墜落時には、作業者の胴回りに衝撃が集中し、内臓や脊椎が損傷するおそれがあった。
これに対し、墜落制止用器具は、前面ベルト、背面ベルト、脚ベルト等から構成されるフルハーネス型であり、ランヤードは、例えば、左右一対の背面ベルト同士の交点に取り付けられる。そのため、墜落時には、衝撃が作業者の体全体に分散し、上記の損傷のおそれが大きく軽減されることになった。
しかし、高所作業においては、作業者が長尺工具(例えば、接地工具、検電器)を背負った状態で、鉄塔に昇塔したり、鉄塔上を移動したりする場合がある。具体的には、作業者は、長尺工具を収納する収納体と、この収納体の上方及び下方に架け渡された肩紐と、からなる収納具を用い、肩紐を左右いずれかの肩から反対側の脇部へ斜めに掛けて昇塔等を行う。このとき、長尺工具は、作業者の体軸に対して傾斜した状態、すなわち、長尺工具の途中部分が、ランヤードの背面ベルト側寄りに接触し得る状態になっている。
このような状態で墜落すると、長尺工具がランヤードに干渉し、肩紐が作業者の体から外れず、衝撃が肩紐に分散するおそれがある。この場合、ランヤードに設けられているショックアブソーバーが動作しないおそれがある。また、最悪の場合、肩紐が作業者の首に引っかかった状態になり、ショックアブソーバーの有無に関わらず、肩紐に分散した衝撃によって即死する事態も考えられる。
そのため、肩紐を用いることなく、作業者が長尺工具を背負うことができる保持具の開発が望ましい。
そこで、近年、長尺工具ではないが、ボルト等や長尺でない工具類を収納する袋を、肩紐を用いることなく、ハーネス式のベルトに装着できる装着具に関する発明が開発されている。
【0003】
特許文献1には「ボルト・ナット等や工具類の落下防止用装着具」という名称で、高所作業において、ハーネス式のベルトに取り付ける落下防止用装着具に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、ハーネス式のベルトを用いて所定の袋を作業員の前側に配置することができるボルト・ナット等や工具類の落下防止用装着具であり、ハーネス式のベルトは、作業員の背中側で交差して作業員の両肩に掛ける一対の長ベルト体により構成され、一対の長ベルト体の先端側部分は、作業員の両肩を越えて作業員の腹側に配置された状態で袋を吊り下げ、一対の長ベルト体の後端側部分は、作業員の背中側から胴に巻き付くように作業員の腹側に配置された状態で接合することを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、袋は、具体的には、方形の箱状に形成されたものであり、短い接続片等によって作業員の前側に吊り下げられている。そのため、墜落の際に、袋がランヤードに干渉することはない。よって、衝撃が肩紐に分散することによる前述のような不利益も発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、袋を作業者の前側に配置するものであるから、これを直ちに長尺工具の保持具として適用できないことは明らかである。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、肩紐を用いることなく長尺工具を背負うことができるために、墜落の際に、フルハーネスに取り付けられるランヤードに、長尺工具が干渉することを防止可能な長尺工具保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、一対の前面ベルトと、一対の後面ベルトと、一対の脚ベルトと、ランヤードを係止するために後面ベルトに設けられる係止部と、を備えるフルハーネスの、後面ベルトに着脱可能な長尺工具保持具であって、長尺工具を保持する保持部と、保持部を後面ベルトに着脱するための着脱部を備え、着脱部は、保持部の上方を、後面ベルトを構成する肩ベルトに着脱する上方着脱具と、保持部の下方を、後面ベルトを構成するとともに肩ベルトの下方に配置される胴ベルトに着脱する下方着脱具からなり、上方着脱具と、下方着脱具は、フルハーネスを装着する作業者の右側背部又は左側背部の同じ側に配置されることで、ランヤードに対する長尺工具の干渉を防止することを特徴とする。
【0008】
このような構成の発明において、一対の背面ベルトは、Y字型やX字型のいずれであってもよい。なお、本願において、フルハーネスとは、フルハーネス型の墜落制止用器具を意味している。
また、ランヤードは、従来、後面ベルトに係止されるロープと、ロープの先端に設けられるフックと、ロープの途中に墜落時の衝撃を吸収するショックアブソーバーと、を備えるものが使用される場合が多い。ただし、ショックアブソーバーは、省略される場合がある。
【0009】
次に、保持部は、長尺の袋体であるほか、長尺工具を巻回して保持する帯状体であることが考えられる。
そして、胴ベルトとは、肩ベルトに連なり、肩ベルトと脚ベルトを連結する連結ベルトや、作業者の胴回りに巻回される腰ベルトをいう。
また、上方着脱具と、下方着脱具としては、例えば、リリースバックルのほか、カラビナが使用される。
【0010】
上記構成の発明においては、着脱部は、保持部の上方を、肩ベルトに着脱する上方着脱具と、保持部の下方を、胴ベルトに着脱する下方着脱具からなるため、保持部に保持される長尺工具が、背面ベルト上の離れた二点で保持される。
また、上方着脱具と、下方着脱具は、フルハーネスを装着する作業者の右側背部又は左側背部の同じ側に配置されるので、長尺工具が作業者の体軸に対してほぼ平行になっている。すなわち、長尺工具の途中部分が、ランヤードに接触しない状態になっている。これにより、墜落時において、ランヤードに対する長尺工具の干渉が防止される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、保持部は、長尺工具を収容する袋状の本体を備えることを特徴とする。
このような構成において、本体は、長尺工具を出し入れするための出し入れ口が、例えば、本体の上端や、側縁に形成されるとともに、この出し入れ口を閉止するための閉止具が設けられる。この閉止具としては、例えば、ファスナーや紐体が用いられる。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、長尺工具が袋状の本体に収容されるため、昇塔時等に、長尺工具が作業者の背部や周囲の構造物に衝突したり、引っかかったりすることが防止される。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上方着脱具と、下方着脱具は、いずれもリリースバックルを備えることを特徴とする。
このような構成において、リリースバックルは、サイドリリースバックルや、フロントリリースバックルが用いられる。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、簡単な操作で、保持部を背面ベルトに着脱できる。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、保持部に保持される長尺工具が、背面ベルト上の二点で保持されるので、長尺工具を安定的に運搬することができる。また、上方着脱具と、下方着脱具は、フルハーネスを装着する作業者の右側背部又は左側背部の同じ側に配置されるために、墜落時において、ランヤードに対する長尺工具の干渉を防止することができる。したがって、高所作業で長尺工具を使用する作業者の安全性を大きく向上させることができる。
さらに、第1の発明は、保持部と、着脱部を備え、簡易な構成であるため、製造コストが廉価となり、導入が容易になる。
【0014】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、昇塔時等に、長尺工具が作業者の背部や周囲の構造物に衝突等することが防止されるため、作業者の安全性が一層高まるとともに、長尺工具の損傷も防止することができる。
【0015】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、リリースバックルを備えることにより、簡単な操作で保持部を背面ベルトに着脱できるから、作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例に係る長尺工具保持具の使用状態図である。
【
図2】実施例に係る長尺工具保持具の外観を示す平面図である。
【
図3】(a)は実施例の変形例に係る長尺工具保持具の使用状態図であり、(b)は同長尺工具保持具の外観の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0017】
本発明の実施の形態に係る長尺工具保持具について、
図1乃至
図3を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係る長尺工具保持具の使用状態図である。
まず、フルハーネス50の構成について、
図1を用いて説明する。
図1に示すように、フルハーネス50は、一対の前面ベルト51,51と、一対の後面ベルト52,52と、環状をなす一対の脚ベルト53,53と、ランヤード60を係止するために後面ベルト52,52に設けられる係止部58と、後面ベルト52,52を途中で分岐させる分岐部59を備える。なお、係止部58と、分岐部59は、いずれもバックルである。
【0018】
前面ベルト51,51は、一端51a,51aが脚ベルト53,53にそれぞれ縫着されるとともに、他端51b,51bが後面ベルト52,52に連なる。よって、前面ベルト51,51は、作業者70前面の骨盤部から肩部にかけて配置されている。
また、後面ベルト52,52は、一対の肩ベルト54,54と、この肩ベルト54,54の下方に配置される一対の胴ベルト55,55と、からなる。
詳細には、肩ベルト54,54は、作業者70後面で、その肩部に沿って下降すると係止部58において1本にまとめられる。そのため、後面ベルト52,52は、Y字型を呈している。
また、胴ベルト55,55は、肩ベルト54,54と脚ベルト53,53をそれぞれ連結する一対の連結ベルト56,56と、作業者70の胴回りに巻回される腰ベルト57と、からなる。
このうち、連結ベルト56,56は、1本にまとめられた肩ベルト54,54が下降して、分岐部59において二本に分岐されたものである。
【0019】
次に、ランヤード60は、墜落時の衝撃を吸収するショックアブソーバー61と、ショックアブソーバー61の一端61aを係止部58に係止する係止具62と、ショックアブソーバー61の他端61bに連結具63aを介して連結されるロープ63と、ロープ63を鉄塔等の固定用構造物に係止するフック64と、を備える。
具体的には、係止具62は、係止部58において、1本にまとめられた肩ベルト54,54が通過する金属製のD環と、ショックアブソーバー61の一端61aに設けられ、このD環に連結される金属製のリングである。また、連結具63aも、金属製のリングである。
【0020】
次に、実施例に係る長尺工具保持具について、
図2を用いて詳細に説明する。
図2は、実施例に係る長尺工具保持具の外観を示す平面図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、実施例に係る長尺工具保持具1は、フルハーネス50の後面ベルト52,52(
図1参照)に着脱可能であって、長尺工具(図示せず)を保持する保持部2と、保持部2を後面ベルト52,52に着脱するための着脱部3を備える。
保持部2は、長尺工具を収容する袋状の本体2aと、閉止具2bからなる。この閉止具2bとして、例えば、本体2aに縫着される一対の紐体が用いられる。また、本体2aと、閉止具2bは、いずれも合成樹脂製の布体からなる。
【0021】
このうち、本体2aは、二枚の布体2a1,2a2が、長尺工具を出し入れするための出し入れ口2cと、蓋体2dと、を形成するように重ねられ、次いで布体2a1,2a2の各三辺が縫合や熱溶着等によって接合されたものである。よって、本体2aには、出し入れ口2cに対向する底部2eが形成される。なお、蓋体2dは、出し入れ口2cを閉止具2bとともに閉止するための構成要素である。
【0022】
さらに、本体2aのサイズは、保持部2の短手方向Xに沿った幅が30cmであり、保持部2の長手方向Yに沿った長さが1.5mである。特に、蓋体2dを折り畳んで出し入れ口2cを閉止した場合では、本体2aの長さは、1.3mとなる。ただし、本体2aは、長尺工具の種類に応じて、上記以外のサイズに変更することができる。
【0023】
続いて、着脱部3は、保持部2の上方2Uを、肩ベルト54,54に着脱する上方着脱具4と、保持部2の下方2Lを、肩ベルト54,54の下方に配置される胴ベルト55,55のうちの腰ベルト57に着脱する下方着脱具8からなる。上方着脱具4と、下方着脱具8との間隔は、例えば、50~80cm程度であり、フルハーネス50の肩ベルト54,54と、腰ベルト57との間隔に依存している。
なお、保持部2の上方2Uとは、長手方向Yについて、特定の位置を指しているものではなく、蓋体2d以外の保持部2のうち、出し入れ口2c寄りになる任意の箇所をいう。保持部2の下方2Lもこれと同様に、保持部2のうち、底部2e寄りになる任意の箇所をいう。また、前述したように、肩ベルト54,54と、胴ベルト55,55は、いずれも後面ベルト52,52を構成している。
【0024】
次に、上方着脱具4は、プラグ5Aと、このプラグ5Aが差し込まれて係合されるソケット5Bと、からなるサイドリリースバックル5と、プラグ5Aを本体2aに取り付けるためのプラグ取付ベルト6と、ソケット5Bを肩ベルト54,54に取り付けるためのソケット取付ベルト7を備える。
【0025】
プラグ取付ベルト6は、合成樹脂製の布体であって、その長手方向の最大長さは20cmである。そして、その一端6aは本体2aに縫着され、他端6bはプラグ5Aに形成される通し穴5aに挿通されている。よって、プラグ取付ベルト6の全長が、通し穴5aに挿通された他端6bを、通し穴5aに対してスライド移動させることで、調整される。すなわち、一端6aと、他端6bとの間は、長さ調整部6cとして機能する。
また、プラグ取付ベルト6では、その長手方向が短手方向Xに対して約30度傾斜し、プラグ5Aが出し入れ口2cに近づくように、一端6aが本体2aに縫着されている。これは、肩ベルト54,54の作業者70の体軸に対する傾斜を考慮したものである。
【0026】
さらに、ソケット取付ベルト7も、合成樹脂製の布体であって、その長手方向の最大長さは5cmである。さらに、ソケット取付ベルト7は、一端7aが肩ベルト54,54のいずれか一方に縫着され、他端7bはソケット5Bに形成される通し穴5bに挿通されたのち環状に縫い合わされ、他端7bがこの通し穴5bから抜け出し不能に構成される。ただし、ソケット取付ベルト7は、長さ調整部を有していない。
【0027】
そして、下方着脱具8は、上方着脱具4と同様の構成である。すなわち、下方着脱具8は、プラグ9Aと、ソケット9Bと、からなるサイドリリースバックル9と、プラグ9Aを本体2aに取り付けるためのプラグ取付ベルト10と、ソケット9Bを腰ベルト57に取り付けるためのソケット取付ベルト11を備える。
【0028】
このうち、プラグ取付ベルト10は、本体2aに縫着される一端10aと、プラグ9Aに形成される通し穴9aに挿通される他端10bと、を備え、一端10aと、他端10bとの間は、長さ調整部10cとして機能する。
ただし、プラグ取付ベルト10は、その長手方向が保持部2の短手方向Xに対してほぼ平行となるように、一端10aが本体2aに縫着されている。これは、腰ベルト57が作業者70の体軸に直交して配置されることを考慮したものである。
【0029】
また、ソケット取付ベルト11は、腰ベルト57に縫着される一端11aと、ソケット9Bに形成される通し穴9bに挿通されて、この通し穴9bから抜け出し不能に構成される他端11bを備える。
【0030】
図1に戻ると、上方着脱具4と、下方着脱具8は、フルハーネス50を装着する作業者70の左側背部の同じ側に配置されている。逆に、上方着脱具4と、下方着脱具8は、フルハーネス50を装着する作業者70の右側背部の同じ側に配置されてもよい。よって、上記のいずれの場合であっても、墜落時に、長尺工具の途中部分がランヤード60に接触し得る状態にならない。
【0031】
また、上方着脱具4を構成するソケット取付ベルト7は、その長手方向が肩ベルト54の長手方向に対してほぼ直交するように、一端7aが肩ベルト54に縫着されている。
さらに、下方着脱具8を構成するソケット取付ベルト11は、その長手方向が腰ベルト57の長手方向に対してほぼ平行するように、一端11aが腰ベルト57に縫着されている。
したがって、プラグ取付ベルト6の長手方向が保持部2の短手方向Xに対して傾斜していることと、プラグ取付ベルト10の長手方向がこの短手方向Xに対してほぼ平行であることと相まって、プラグ取付ベルト6,10の長さをいずれも短く調整したときに、無理なく保持部2を作業者70の体軸にほぼ平行となるように保持することができる。
【0032】
以上説明したように、実施例に係る長尺工具保持具1によれば、上方着脱具4と、下方着脱具8は、フルハーネス50を装着する作業者70の右側背部又は左側背部の同じ側に配置されることで、墜落時に、長尺工具の途中部分がランヤード60に接触し得る状態にならないから、ランヤード60に対する長尺工具の干渉を防止することができる。
したがって、長尺工具の干渉によってランヤード60のショックアブソーバー61が動作しないおそれが解消されるとともに、肩紐に分散した衝撃によって即死するような事態も発生しないため、高所作業で長尺工具を使用する作業者70の安全性を大きく向上させることができる。
また、保持部2を作業者70の体軸にほぼ平行となるように保持することができるので、上記の干渉が一層防止されることに加えて、保持部2が作業者70の動作に追随し、これを阻害し難い。
【0033】
さらに、長尺工具が袋状の本体2aに収容されるため、昇塔時等に、長尺工具が作業者70の背部や周囲の構造物に衝突したり、引っかかったりすることが防止される。よって、作業者70の安全性が一層高まるとともに、長尺工具の損傷も防止することができる。
【0034】
加えて、上方着脱具4と、下方着脱具8は、それぞれサイドリリースバックル5,9を備えることから、簡単な操作で、保持部2を肩ベルト54,54と腰ベルト57に着脱できる。よって、作業性が良好であるとともに、作業時間の短縮が可能である。
さらに、上方着脱具4と、下方着脱具8は、それぞれプラグ取付ベルト6,10に長さ調整部6c,10cを備えるため、作業者70が、自身の背中と保持部2との間隔を最適な状態に微調整することができる。よって、例えば、保持部2に収容した長尺工具が、作業者70の動きに伴って過度に揺れ動くことを防止できたり、作業者70の手が届き易い位置に保持部2を配置したりすることが可能である。
【0035】
次に、実施例の変形例に係る長尺工具保持具について、
図3を用いて説明する。
図3(a)は実施例の変形例に係る長尺工具保持具の使用状態図であり、
図3(b)は同長尺工具保持具の外観の一部を示す平面図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)に示すように、実施例の変形例に係る長尺工具保持具1Aは、フルハーネス50Aの後面ベルト52,52に着脱可能である。
フルハーネス50Aは、フルハーネス50が備える胴ベルト55,55のうちの腰ベルト57と、分岐部59が省略されている。また、フルハーネス50Aの肩ベルト54,54は、係止部58において交差したあと、連結ベルト56,56となる。すなわち、後面ベルト52,52は、X字型を呈している。これ以外のフルハーネス50Aの構成は、フルハーネス50の構成と同様である。
図3(b)に示すように、実施例の変形例に係る長尺工具保持具1Aは、下方着脱具8を構成するプラグ取付ベルト10の長手方向が、保持部2の短手方向Xに対して約50度傾斜したものである。これは、係止部58よりも下方の連結ベルト56,56が、作業者70の体軸に対して傾斜していることを考慮したものである。これ以外の長尺工具保持具1Aの構成は、長尺工具保持具1の構成と同様である。
【0036】
長尺工具保持具1Aにおいては、プラグ取付ベルト10の長手方向が保持部2の短手方向Xに対して約50度傾斜しているため、X字型を呈する後面ベルト52,52に対しても、無理なく保持部2を作業者70の体軸にほぼ平行となるように保持することができる。これ以外の長尺工具保持具1Aの作用及び効果は、長尺工具保持具1の作用及び効果と同様である。
【0037】
なお、本発明に係る移動ケーブル用架台は、実施例に示すものに限定されない。例えば、プラグ取付ベルト6は、その長手方向が保持部2の短手方向Xに対して平行であってもよく、ソケット取付ベルト7は、その長手方向が肩ベルト54の長手方向に対して直交していなくてもよい。
また、プラグ取付ベルト6,10の一端6a,10aと、ソケット取付ベルト7,11の一端7a,11aは、それぞれ本体2aと、肩ベルト54等に縫着される代わりに、例えば、リング状の連結具を介して取り付けられてもよい。
さらに、プラグ取付ベルト6、10の長さ調整部6c,10cは、省略されてもよく、逆にソケット取付ベルト7,11に長さ調節部が設けられてもよい。