(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175402
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20241211BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241211BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241211BHJP
【FI】
B60H1/22 ZHV
H02J7/00 P
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093172
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 陽一
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】向井 大介
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 浩
【テーマコード(参考)】
3D235
3L211
5G503
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB53
3D235CC14
3D235DD35
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA60
3L211DA99
3L211EA86
3L211FB05
3L211GA93
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB11
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】搭乗空間を昇温することに起因して車両が電欠するのを抑制することが可能な車両を提供する。
【解決手段】車両100は、バッテリ21(二次電池)が収容されるバッテリパック20(電池室)と、搭乗者が搭乗するキャビン10(搭乗空間)とを備える。また、車両100は、バッテリパック20とキャビン10との間が連通している状態と、バッテリパック20とキャビン10との間が非連通である状態とを切り替え可能な電磁弁71(切替機構)を備える。バッテリ21の温度が所定温度よりも高く、かつ、バッテリ21のSOCが所定値よりも小さい場合に、電磁弁71がバッテリパック20とキャビン10とを連通させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池が収容される電池室と、
搭乗者が搭乗する搭乗空間と、
前記電池室と前記搭乗空間との間が連通している状態と、前記電池室と前記搭乗空間との間が非連通である状態とを切り替え可能な切替機構と、を備え、
前記二次電池の温度が所定温度よりも高く、かつ、前記二次電池のSOCが所定値よりも小さい場合に、前記切替機構が前記電池室と前記搭乗空間とを連通させる、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-238401号公報(特許文献1)には、電池室と車室とを連通させるメイン流通路と、メイン流通路から分岐して外気に連通する分岐流通路と、メイン流通路および分岐流通路の一方と電池室とを連通させる切替手段とが備えられている車両が開示されている。電池の充電時または放電時において車室の温度が所定値以下の場合に、メイン流通路と電池室とが連通される。この場合、電池の熱により車室が暖められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、メイン流通路と電池室とを連通させる条件として、電池のSOC(State Of Charge)が考慮されていない。すなわち、SOCの大きさに拘わらず、メイン流通路と電池室との連通状態が制御される。このため、SOCの大きさに拘わらず、メイン流通路と電池室とが非連通状態にされ、電気ヒータ等が暖房に使用される場合がある。その結果、車両が電欠する場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、搭乗空間を昇温することに起因して車両が電欠するのを抑制することが可能な車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係る車両は、二次電池が収容される電池室と、搭乗者が搭乗する搭乗空間と、電池室と搭乗空間との間が連通している状態と、電池室と搭乗空間との間が非連通である状態とを切り替え可能な切替機構と、を備える。二次電池の温度が所定温度よりも高く、かつ、二次電池のSOCが所定値よりも小さい場合に、切替機構が電池室と搭乗空間とを連通させる。
【0007】
本開示の一の局面に係る車両では、上記のように、二次電池の温度が所定温度よりも高く、かつ、二次電池のSOCが所定値よりも小さい場合に、電池室と搭乗空間とが切替装置により連通される。これにより、SOCが所定値よりも小さい場合には搭乗空間の昇温に二次電池の熱を利用することができる。その結果、SOCが所定値よりも小さい場合に、搭乗空間の昇温(暖房)に利用されている電気ヒータ等の出力を低減することができる。これにより、SOCが所定値よりも小さい状態からSOCが更に低下するのを抑制することができる。その結果、搭乗空間を昇温することに起因して車両が電欠するのを抑制することができる。
【0008】
本開示によれば、搭乗空間を昇温することに起因して車両が電欠するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による車両の構成を示す図である。
【
図2】一実施形態による車両のECUによる制御を示すフロー図である。
【
図3】一実施形態の変形例による車両のECUによる制御を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る車両100の全体構成を示す概略図である。車両100は、たとえば、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、BEV(Battery Electric Vehicle)、および、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)を含む。
【0012】
車両100は、キャビン10と、バッテリパック20と、監視モジュール30と、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)40と、暖房電気ヒータ50と、ヒートポンプ回路60と、流路70と、を備える。なお、キャビン10およびバッテリパック20は、それぞれ、本開示の「搭乗空間」および「電池室」の一例である。
【0013】
キャビン10は、搭乗者が搭乗する空間(車室)である。キャビン10には、キャビン10内の温度を測定する図示しない温度センサが設けられている。
【0014】
バッテリパック20は、バッテリ21と、ブロワ22とを収容する。バッテリ21には、車両100の走行に用いられる電力が蓄えられている。ブロワ22は、バッテリパック20内の空気を流路70に吹き込む機能を有する。なお、バッテリ21は、本開示の「二次電池」の一例である。
【0015】
監視モジュール30は、バッテリ21の状態(たとえば、電圧、電流、および温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU40へ出力する。監視モジュール30は、上記センサ機能に加えて、バッテリ21のSOCを推定する機能を有する。また、監視モジュール30は、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、および通信機能をさらに有していてもよい。
【0016】
ECU40は、バッテリ21の充電制御を行う。また、ECU40は、キャビン10の暖房(昇温)に関する後述の各種制御を行う。
【0017】
暖房電気ヒータ50は、図示しない冷媒経路を流れる冷媒の温度を昇温する機能を有する。暖房電気ヒータ50により昇温された冷媒は、キャビン10に流入する空気に熱を供給する。これにより、キャビン10に温風が吹き込まれる。
【0018】
ヒートポンプ回路60は、図示しないコンプレッサおよび蒸発器等を含む。ヒートポンプ回路60は、外気から熱を受け取った冷媒を圧縮することにより冷媒を昇温する。昇温された冷媒の熱によりキャビン10内の空気が暖められる。
【0019】
流路70は、バッテリパック20とキャビン10とを接続している。ブロワ22は、バッテリパック20内の空気を流路70に吹き出すように構成されている。
【0020】
流路70には、電磁弁71が設けられている。電磁弁71は、バッテリパック20とキャビン10との間が連通している状態と、バッテリパック20とキャビン10との間が非連通である状態とを切り替え可能に構成されている。具体的には、電磁弁71が開状態の時、バッテリパック20とキャビン10との間が連通する。電磁弁71が閉状態の時、バッテリパック20とキャビン10との間が非連通状態となる。
【0021】
電磁弁71が開状態の時、ブロワ22から流路70に吹き込まれたバッテリパック20内の空気は、流路70を通ってキャビン10に流入する。一方、電磁弁71が閉状態の時、流路70における空気の流通が電磁弁71により防止される。なお、電磁弁71の開閉状態は、ECU40により制御される。
【0022】
バッテリパック20内の空気がキャビン10に供給されることにより、バッテリ21の熱が空気と共にキャビン10に移動する。これにより、キャビン10が昇温される。
【0023】
ここで、従来の車両では、バッテリパックとキャビンとを連通させる条件として、バッテリのSOCが考慮されていない。すなわち、SOCの大きさに拘わらず、バッテリパックとキャビンとの連通状態が制御される。このため、SOCの大きさに拘わらず、バッテリパックとキャビンとが非連通状態にされ、暖房電気ヒータ等が暖房に使用される場合がある。その結果、車両が電欠する場合がある。
【0024】
そこで、本実施形態では、バッテリ21の温度が所定温度(たとえば40℃)よりも高く、かつ、バッテリ21のSOCが所定値(たとえば10%)よりも小さい場合に、電磁弁71がバッテリパック20とキャビン10とを連通させる。すなわち、ECU40は、バッテリ21の温度が所定温度よりも高く、かつ、バッテリ21のSOCが所定値よりも小さい場合に、電磁弁71を開状態にする。
【0025】
なお、上記所定温度および上記所定値は、ディープラーニング(深層学習)などの機械学習の技術により生成された学習済みモデルを用いて適宜算出されてもよい。
【0026】
<ECUの制御フロー>
次に、
図2を参照して、キャビン10の暖房(昇温)に関するECU40の制御フローについて説明する。なお、下記の各ステップにおける処理は、ECU40の図示しないプロセッサにより実行される。また、
図2の制御フローは、所定の周期毎(たとえば1分毎)に実行されてもよい。
【0027】
ステップS1において、ECU40は、暖房要求があるか否かを判定する。たとえば、ECU40は、暖房を作動させるボタン(図示せず)がユーザにより押下されたことに応じて出力される信号を検知することにより、暖房要求があると判定する。暖房要求がないと判定された場合(S1においてNo)、処理はステップS2に進む。暖房要求があると判定された場合(S1においてYes)、処理はステップS3に進む。
【0028】
ステップS2において、ECU40は、暖房運転を停止する処理を行う。なお、ECU40は、暖房運転が既に停止状態の場合は、暖房運転の停止状態を継続させる。
【0029】
ステップS3において、ECU40は、バッテリ21の温度が所定温度(たとえば40℃)よりも大きいか否かを判定する。ECU40は、監視モジュール30からバッテリ21の温度の情報を取得する。バッテリ21の温度が所定温度よりも大きい場合(S3においてYes)、処理はステップS4に進む。バッテリ21の温度が所定温度以下の場合(S3においてNo)、処理はステップS7に進む。
【0030】
ステップS4において、ECU40は、バッテリ21のSOCが所定値(たとえば10℃)よりも小さいか否かを判定する。ECU40は、監視モジュール30からバッテリ21のSOCの情報を取得する。バッテリ21のSOCが所定値よりも小さい場合(S4においてYes)、処理はステップS5に進む。バッテリ21のSOCが所定値以上の場合(S4においてNo)、処理はステップS7に進む。
【0031】
ステップS5において、ECU40は、キャビン10とバッテリパック20とを連通させる処理を行う。具体的には、ECU40は、電磁弁71を開状態にする。また、ECU40は、バッテリパック20のブロワ22を作動させる。
【0032】
ステップS6において、ECU40は、ヒートポンプ回路60を停止させる。これにより、ヒートポンプ回路60による暖房動作が停止される。具体的には、ECU40は、ヒートポンプ回路60の図示しないコンプレッサを停止させてもよい。また、ECU40は、暖房電気ヒータ50を停止させる。これにより、バッテリ21において発生した熱のみが、キャビン10の昇温に用いられる。なお、ヒートポンプ回路60および暖房電気ヒータ50の各々が既に停止状態の場合は、ECU40は、ヒートポンプ回路60および暖房電気ヒータ50の各々の停止状態を継続させる。
【0033】
ステップS7において、ECU40は、ヒートポンプ回路60(コンプレッサ)および暖房電気ヒータ50の各々を作動させる。ステップS7では、電磁弁71が閉状態であるので、ヒートポンプ回路60および暖房電気ヒータ50の各々からの熱のみがキャビン10の暖房に用いられる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、バッテリ21の温度が所定温度よりも高く、かつ、バッテリ21のSOCが所定値よりも小さい場合に、電磁弁71がバッテリパック20とキャビン10とを連通させる。これにより、SOCが所定値よりも小さい場合にバッテリ21の熱によってキャビン10を暖めることができる。その結果、暖房電気ヒータ50およびヒートポンプ回路60(コンプレッサ)の発熱量を低減させることができるので、車両100における消費電力を低減することができる。これにより、車両100が電欠するのを抑制することができる。その結果、車両100の航続距離が低下するのを抑制することができる。これらにより、SOCが低い状態で走行中に、車両100の走行(動力)と空調とを両立させることが可能な時間を拡大することができる。
【0035】
また、バッテリ21の温度が所定温度よりも高い場合にバッテリ21の熱がキャビン10の昇温に利用されるので、バッテリ21の温度が過度に低温になるのを抑制することができる。
【0036】
上記実施形態では、監視モジュール30により取得(推定)されたSOCが所定値よりも小さい場合にバッテリパック20とキャビン10とを連通させる例を示したが、本開示はこれに限られない。SOCを直接的に参照せずに上記制御を行ってもよい。
【0037】
たとえば、
図3に示す変形例では、上記実施形態のステップS4に代えてステップS14の処理が実行される。ステップS14では、Wout(放電制御制限電力)が所定の閾値(たとえば3kW)よりも小さいか否かが判定される。Woutが閾値よりも小さい場合(S14においてYes)、処理はステップS5に進む。Woutが閾値以上の場合(S14においてNo)、処理はステップS7に進む。なお、Woutは、SOCの低下に応じて小さくなる。したがって、Woutが閾値よりも小さいことを判定することは、SOCが所定値よりも低いことを判定することに相当する処理である。なお、上記閾値は、ディープラーニング(深層学習)などの機械学習の技術により生成された学習済みモデルを用いて適宜算出されてもよい。
【0038】
上記実施形態では、バッテリパック20とキャビン10との連通状態を切り替える電磁弁71が設けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。キャビン10と連通する対象を、バッテリパック20と他の構成部品(たとえば暖房電気ヒータ50やヒートポンプ回路60)との間で切り替える切替弁が設けられていてもよい。
【0039】
上記実施形態では、車両100が暖房電気ヒータ50およびヒートポンプ回路60の両方を備える例を示したが、本開示はこれに限られない。車両が暖房電気ヒータ50およびヒートポンプ回路60のうちのいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0040】
上記実施形態では、バッテリ21の温度およびSOCに基づいて電磁弁71が制御される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、バッテリ21の温度およびSOCに加えて、キャビン10の室温等も考慮して電磁弁71を制御してもよい。
【0041】
上記実施形態では、キャビン10とバッテリパック20とを連通させる場合に、ヒートポンプ回路60および暖房電気ヒータ50の各々を停止させる例を示したが、本開示はこれに限られない。キャビン10とバッテリパック20とを連通させる場合に、ヒートポンプ回路60および暖房電気ヒータ50の一方を停止させてもよい。また、キャビン10とバッテリパック20とを連通させる場合に、ヒートポンプ回路60および暖房電気ヒータ50の少なくとも一方の出力を低下させてもよい。
【0042】
なお、上記の実施形態および上記の各変形例の構成が、互いに組み合わされていてもよい。
【0043】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
20 バッテリパック(電池室),21 バッテリ(二次電池),50 暖房電気ヒータ,60 ヒートポンプ回路,71 電磁弁(切替機構),100 車両。