(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175414
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】流体置換装置
(51)【国際特許分類】
G21F 7/01 20060101AFI20241211BHJP
G21F 9/22 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G21F7/01
G21F9/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093192
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂薗 美礼
(57)【要約】
【課題】耐圧性容器内の液体等の試料を注入・排出できる流体置換装置を提供する。
【解決手段】本発明の流体置換装置Rは、内部に流体が入れられる耐圧性容器100と、耐圧性容器100が内部に収容される収納容器1と、収納容器1を貫通するように設けられ、耐圧性容器100を開閉可能な開閉工具10と、開閉工具10と収納容器1との間のすき間を封止する第一の気密部21Aと、収納容器1を貫通するように設けられ、耐圧性容器100の開口部102a1を経由して耐圧性容器100の内部まで達することができる1本または複数本の配管30と、配管30と収納容器1との間のすき間を封止する第二の気密部22とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が入れられる耐圧性容器と、
前記耐圧性容器が内部に収容される収納容器と、
前記収納容器を貫通するように設けられ、前記耐圧性容器を開閉可能な開閉工具と、
前記開閉工具と前記収納容器との間のすき間を封止する第一の気密部と、
前記収納容器を貫通するように設けられ、前記耐圧性容器の開口部を経由して前記耐圧性容器の内部まで達することができる1本または複数本の配管と、
前記配管と前記収納容器との間のすき間を封止する第二の気密部とを
備えていることを特徴とする流体置換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体置換装置において、
前記開閉工具は、
前記耐圧性容器側に突出する方向に付勢されるとともに、突出した状態で前記開閉工具の軸周りの回転が拘束される蓋保持ねじを有していることを特徴とする流体置換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体置換装置において、
前記蓋保持ねじは、
前記耐圧性容器側の端部に配置されて前記耐圧性容器の蓋と係合可能な雄ねじを前記耐圧性容器側の一方側に有し、他方側にねじ嵌合部を有しているとともに、
前記雄ねじの径は前記蓋と前記耐圧性容器の本体との間に設けられるねじの径よりも小さく、
前記ねじ嵌合部は前記開閉工具に設けられた溝に嵌合する構造であり、前記蓋保持ねじが圧縮ばねにより前記開閉工具から突出した状態では前記ねじ嵌合部が前記溝と嵌合して前記蓋保持ねじと前記開閉工具が一体となって回転する一方、
前記圧縮ばねが一定以上に縮められて前記蓋保持ねじが前記開閉工具から突出しない状態では前記ねじ嵌合部が前記溝から離れて前記蓋保持ねじが前記開閉工具とは独立して回転可能であることを特徴とする流体置換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流体置換装置において、
前記第一の気密部は、
前記収納容器に対して前記開閉工具の軸方向変位と軸周り回転が可能に前記開閉工具を支持する2つ以上の滑り軸受と、前記収納容器と前記開閉工具の間のすき間に設けられる軟質高分子部材とを有していることを特徴とする流体置換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の流体置換装置において、
前記第二の気密部は、
前記配管と前記収納容器の間のすき間に設けられる2つ以上の軟質高分子部材を有していることを特徴とする流体置換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の流体置換装置において、
前記配管は、
前記第二の気密部と接する剛直管部と、
前記剛直管部より前記耐圧性容器側に設けられる柔軟管部とを有していることを特徴とする流体置換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の流体置換装置において、
前記剛直管部は、
前記耐圧性容器の開口部に向かって配置されるとともに、
前記柔軟管部の先端が前記耐圧性容器の底面に接した状態で、前記第二の気密部との接触を維持できる長さであることを特徴とする流体置換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体置換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチニウム225の製造法のひとつは、ラジウム226に制動放射線を照射する方法である。ラジウム226への照射による光核反応で得たラジウム225を自然崩壊させるとアクチニウム225が得られる。ラジウム226への照射の際、ラジウムを収容している容器は高温となって内部に封入されているガスが膨張する。そのため、当該容器には耐圧性が求められる。
【0003】
また、ラジウム226は自然崩壊してラドン222に壊変する。ラドン222は気体状の放射性物質であることから、特定の空間内に封止する必要がある。そのため、容器にラジウム226を封入したり、制動放射線を照射後にラジウム226を封入した容器を開封したりするときには、放射性気体が漏洩しないように閉止された空間内で作業することが求められる。
【0004】
かような容器の取扱作業をする装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、前記の容器に該当する残渣受容器に子蓋を設け、閉止された空間内で子蓋を開けて残渣受容器に残渣を落下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、子蓋の開閉装置を残渣の流路内に配置したり、残渣受容器のネジ蓋を開閉する器具を別途用意したりする必要がある。また、有害ガスが触れる領域や、触れる恐れがある領域が広くなる可能性や、子蓋の開閉装置の修理やメンテナンスが困難となる可能性があった。また、残渣受容器から試料を取り出すことができなかった。
【0007】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、耐圧性容器がある領域内に修理やメンテナンスが必要な装置を配置することなく、耐圧性容器内の液体等の試料を注入・排出できる流体置換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の流体置換装置は、内部に流体が入れられる耐圧性容器と、前記耐圧性容器が内部に収容される収納容器と、前記収納容器を貫通するように設けられ、前記耐圧性容器を開閉可能な開閉工具と、前記開閉工具と前記収納容器との間のすき間を封止する第一の気密部と、前記収納容器を貫通するように設けられ、前記耐圧性容器の開口部を経由して前記耐圧性容器の内部まで達することができる1本または複数本の配管と、前記配管と前記収納容器との間のすき間を封止する第二の気密部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐圧性容器がある領域内に修理やメンテナンスが必要な装置を配置することなく、耐圧性容器内の液体試料を注入・排出できる流体置換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体置換装置の断面図。
【
図4】蓋保持ねじ、ねじ嵌合部、フランジ、位置決めボスを有する蓋保持部材の斜視図。
【
図5】耐圧性容器の蓋が外れた状態でソケットを上端まで引き上げた状態を示す図。
【
図7】ソケットの蓋保持ねじを蓋に取り付ける状態の断面図。
【
図8】収納容器の気密を確保する状態を示す断面図。
【
図9】収納容器の気密を確保する状態を示す断面図。
【
図10】収納容器の気密を確保する状態を示す断面図。
【
図11】配管を通して試料室の流体を出し入れする状態を示す断面図。
【
図12】流体を試料室に出し入れした後の状態を示す断面図。
【
図14】ソケットが蓋とかみ合うように下す状態を示す断面図。
【
図17】耐圧性容器を所定の場所に運ぶ状態を示す断面図。
【
図18】耐圧性容器を所定の場所に運ぶ状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
図1に、本発明の実施形態に係る流体置換装置Rの断面図を示す。なお、
図1では、収納容器1に収容している耐圧性容器100が閉じた状態を示す。
実施形態の流体置換装置Rの収納容器1には、耐圧性容器100が収容されている。
流体置換装置Rは、放射性等の流体を、収納容器1の内部で外界から遮断した状態で耐圧性容器100から出し入れするための装置である。
【0012】
収納容器1の内部には、耐圧性容器100と、耐圧性容器100を内部から取り出す開閉工具10とを備えている。
耐圧性容器100は、試料室101と、接続部102と、ガスケット103と、蓋104とを有している。試料室101は、流体の試料を収容する空間である。試料室101は、円筒状や矩形筒状等の室を有している。
接続部102は、試料室101と一体に形成されている。接続部102は、外形102bが略六角ナット形であり、内周が蓋104の雄ねじ104aと係合可能な雌ねじ102aを備えている。
【0013】
蓋104は、円柱状の雄ねじ104aとねじ頭104bとを有している。
雄ねじ104aは、外周に雄ねじが螺刻されている。
ねじ頭104bは外周104b1が六角柱状に形成され、上部中央には、雌ねじ104b3が螺刻されている。
つまり、蓋104は略六角ボルト形であり、後記する蓋保持ねじ12と係合可能な雌ねじ104b3を頂部に備えている。
【0014】
蓋104の雄ねじ104aの外周は耐圧性容器100の接続部102の雌ねじ102aに螺着(嵌合)される。
ガスケット103は、略円環形状を有している。ガスケット103は、例えばメタルガスケットである。ガスケット103は、接続部102と蓋104の間で挟まれることで耐圧性容器100に気密性を持たせる。なお、試料室101と接続部102で構成される部位を耐圧性容器100の本体1hと称する。
【0015】
<収納容器1の全体>
収納容器1は、少なくとも、底面板2、1つ以上の第三の気密部3、下部側面板4、支持部材5、上部側面板6、配管貫通部7、天面板8、開閉工具10、および1本または複数本の配管30を備えている。
底面板2、下部側面板4、支持部材5、上部側面板6、および天面板8は、耐圧性容器100を外部空間から遮蔽する部材である。
【0016】
<第三の気密部3>
第三の気密部3は、収納容器1において、ある部材と他の部材の間の隙間に嵌入されて、収納容器1のすき間を封止する部品である。第三の気密部3として、例えば、オーリング(Oリング)が用いられる。
底面板2は略円板形状を有している。下部側面板4は略円筒状に形成されている。支持部材5は内面が六角柱の筒状に形成されている。配管貫通部7は、内部を後記の剛直管33が挿通する略円筒状の形状を有している。配管貫通部7は、上部側面板6を貫通する穴に挿入されている。
【0017】
上部側面板6は略筒状の形状を有している。天面板8は板形状を有している。
第三の気密部3は、例えば、下部側面板4と底面板2との間、下部側面板4と支持部材5との間、配管貫通部7と上部側面板6との間、天面板8と上部側面板6との間に用いられている。
第三の気密部3によって収納容器1の内部を気密にできる。
【0018】
<支持部材5>
支持部材5は、耐圧性容器100の接続部102の六角形の外形102bと下方から嵌合して耐圧性容器100を支持する。
【0019】
<耐圧性容器100>
耐圧性容器100の本体1hは、底面板2と下部側面板4と支持部材5と第三の気密部3で構成される空間の内部に収容される。
蓋104は、支持部材5と筒状の上部側面板6と配管貫通部7と天面板8と第三の気密部3で構成される空間の内部に収容されている。
【0020】
<開閉工具10>
図1に示す開閉工具10は、拘束溝材11(
図2参照)と、蓋保持ねじ12と、ねじ嵌合部13と、圧縮ばね14と、ソケット15(
図3参照)とを備えている。
【0021】
図2に、拘束溝材11の斜視図を示す。
図3に、ソケット15と作用部17の斜視図を示す。
ソケット15は、長尺の2段の円筒状の部材である。ソケット15は耐圧性容器100の蓋104を回して、蓋104を耐圧性容器100の接続部102に取り付けたり、取り外したりする部材である。蓋104を取り外した状態で、耐圧性容器100の試料室101への試料(流体等)の出し入れが行われる。なお、
図1に示されるソケット15と
図3に示されるソケット15は、作図の都合上、縦と横の比率を適宜デフォルメしている。
【0022】
ソケット15は、上端に作用部17を有し、下端に蓋104(
図1参照)と嵌合する略正六角形の穴15aを有している。
作用部17の下方にはソケット15の中間付近よりも外径が大きなスナップリング16(
図1参照)を有する。スナップリング16は天面板8などと干渉して、ソケット15が下方に移動する範囲を制限する。
図3に示すソケット15の下端の略正六角形の穴15aより上方に、拘束溝材11が嵌合される穴15b、および蓋保持ねじ12、ねじ嵌合部13、圧縮ばね14を収容できる穴を有している。
【0023】
<拘束溝材11>
図2に示す拘束溝材11は、略円筒形状の部材であり、内面は略六角柱形の空間の溝(穴)11aが形成されている。拘束溝材11には、ソケット15に螺着される止めねじが突き当てられる穴11bが設けられている。
拘束溝11は、ソケット15の穴15b(
図3参照)に固定される。
【0024】
<蓋保持部材F>
図4に、蓋保持ねじ12、ねじ嵌合部13、フランジ13a、位置決めボス13bを有する蓋保持部材Fの斜視図を示す。
蓋保持部材Fは、蓋保持ねじ12、ねじ嵌合部13、フランジ13a、および位置決めボス13bが一体に形成されている。
【0025】
位置決めボス13b(
図1参照)は、ソケット15の穴15dに移動可能に嵌合されている。位置決めボス13bは、蓋保持部材Fがソケット15の穴15dに案内される役割をもつ。
図4に示す蓋保持ねじ12は、外周に雄ねじ12mが螺刻されている。蓋保持ねじ12の雄ねじ12mは、蓋保持ねじ12がソケット15内で固定されることで、蓋104の雌ねじ104b3(
図1参照)に螺着される。これにより、蓋保持ねじ12で蓋104を保持できる。
【0026】
ねじ嵌合部13は、拘束溝材11の略六角柱形の空間と嵌合可能な略六角柱形に形成されている。
ねじ嵌合部13は、蓋保持ねじ12と一体に形成されている。
【0027】
図1に示すように、圧縮ばね14がソケット15の中に配置されている。圧縮ばね14の一端はソケット15に接している。圧縮ばね14の他端は、ねじ嵌合部13と一体に形成されるフランジ13aと接している。
圧縮ばね14は、前記の位置決めボス13bが中央に挿通されている。
【0028】
図1に示すように、蓋保持ねじ12とねじ嵌合部13は、圧縮ばね14の弾性力を受けつつ、ソケット15の軸方向である上下方向に移動可能とされている。
蓋保持ねじ12とねじ嵌合部13の下限位置は、ねじ嵌合部13のフランジ13aと拘束溝材11が当接する位置(
図13参照)である。
【0029】
蓋保持ねじ12とねじ嵌合部13の上限位置は、
図1に示すように、ねじ嵌合部13のフランジ13aとソケット15が当接する位置である。なお、
図1は、蓋保持ねじ12とねじ嵌合部13のほぼ上限位置を示す。
【0030】
<圧縮ばね14>
圧縮ばね14は、蓋保持ねじ12とねじ嵌合部13の下限位置(
図13参照)でもねじ嵌合部13を拘束溝材11に押し付ける荷重を生じることが可能な自然長を有している。
圧縮ばね14は、蓋保持ねじ12とねじ嵌合部13の上限位置(
図1参照)までねじ嵌合部13が移動可能な圧縮量を有している。
【0031】
<第一の気密部21>
図1に示すように、ソケット15と天面板8との間には、これらのすき間を封止する第一の気密部21Aである気密部21と一対の滑り軸受22とを備えている。第一の気密部21Aにより、回転しつつ上下動するソケット15と天面板8との間を封止できる。
滑り軸受22は、天面板8に対してソケット15をその軸方向変位と軸周り回転を可能に支持する。滑り軸受22は、例えば、焼結含油軸受である。滑り軸受22により、ソケット15は円滑に上下動および回転動作を行える。
気密部21は、例えば、ピストン用のゴムパッキンのような、軟質高分子部材である。
【0032】
<配管30>
図1に示す配管30は、柔軟管部31と剛直管部33とを備えている。
図1に示す断面図では、配管貫通部7と配管30は1組のみ表記している。
上部側面板6には、筒状の配管貫通部7が固定されている。配管貫通部7には、剛直管部33が貫通するように配置されている。剛直管部33は、十分な強度を有するパイプである。
【0033】
配管貫通部7と剛直管部33との間のすき間には、一対の第二の気密部32が嵌入されている。第二の気密部32は、例えば、オーリング(Oリング)のような、軟質高分子部材である。第二の気密部32は、2つ以上設けられる。
図1では、第二の気密部32は、2つ設けた場合を示している。第二の気密部32により、配管30と上部側面板6との気密が保てる。
柔軟管部31は、剛直管部33の収納容器1の内部側である一方側33aに接続されている。柔軟管部31は、例えば、シリコンチューブのような、軟質高分子部材である。
【0034】
剛直管部33の他方側33b(
図1参照)は、液体試料の注入・排出装置、あるいは、有害ガスの処理・回収装置に接続される。
剛直管部33は、柔軟管部31の先端31s(
図5参照)が耐圧性容器100の底面に接した状態で、第二の気密部32との接触を維持できる長さである。これにより、配管30の出し入れに係わらず、配管30と上部側面板6との気密が保てる。
剛直管部33を設けることで、配管30の上部側面板6からの出し入れが円滑にできる。また、柔軟管部31により耐圧性容器100への流体の出し入れがスムーズに行える。
【0035】
配管30には、収納容器1の内部の気体を排出する機能と、排出されたのと略同量の気体を供給する機能と、耐圧性容器100に液体を注入したり排出する機能がある。それぞれの機能をもつ配管30を設けても良く、配管30内を3つに区分して1本の配管を設けても良い。複数本の配管を設ける場合、いずれも構造は同一であるが、流量等に応じて寸法を変更しても良い。例えば、流量が大きい場合は配管30の内径を相対的に大きくする。流量が少ない場合は配管30の内径を相対的に小さくする。
【0036】
なお、
図1には、配管貫通部7を上部側面板6に配置する実施例を示したが、配管貫通部7を天面板8に配置しても良い。
<第三の気密部3>
【0037】
図1には、収納容器1を複数の第三の気密部3を介して接続される複数の部品で構成される実施例を示している。しかしながら、天面板8以外を1つ、または、
図1に示す部品より少ない複数の部品となるように形成して、第三の気密部3を少なく配置してもよい。
【0038】
<ソケット15が移動範囲の下端に位置する状態>
図1は、ソケット15が移動範囲の下端に位置する状態を示している。
ソケット15が移動範囲の下端に位置する状態では、ソケット15の穴15a(
図3参照)で、蓋104を、耐圧性容器100の接続部102の雌ねじ102aにネジ締めするか、ネジを緩める状態にある。
図1に示すように、ソケット15が移動範囲の下端に位置する状態では、蓋保持ねじ12は、蓋104と係合した状態にある。
【0039】
蓋104のねじ頭104bはソケット15の中に入り、ソケット15の略正六角形の穴15aに嵌合している。そのため、圧縮ばね14はねじ嵌合部13のフランジ13aに押されて最も圧縮された状態となっている。
【0040】
剛直管部33は収納容器1の最も外側に引き抜かれた位置に存在する。柔軟管部31は、略円柱状のソケット15と、筒状の上部側面6との間に収まっている。
【0041】
<耐圧性容器100に液体試料を注入・排出する手順>
上述した収納容器1を用いて、耐圧性容器100を開封し、液体試料を注入・排出する手順を説明する。
【0042】
図1の状態で作用部17を把持して開閉工具10を反時計廻り(
図1の矢印α1)に回転させる。ソケット15と蓋104は、ソケット15の穴15aと蓋104のねじ頭の外周104b1が嵌合している。
そのため、蓋104が接続部102に対して反時計廻り(
図1の矢印α1)に回転して、最終的には蓋104が、接続部102から外れる。なお、蓋104の回転に必要なトルクを受ける支持部5に、床Y(
図1参照)等に固定するための部材を接続しても良い。
【0043】
図5に、流体置換装置Rの蓋104が外れた状態でソケット15を上端まで引き上げた状態を示す。
図5に示すスナップリング16と天面板8の間には筒状の保持具23が挿入される。筒状の保持具23は、天面板8に対するソケット15の位置を拘束している。
蓋104と、蓋104に係合されている蓋保持ねじ12と、蓋保持ねじ12と一体成型されているねじ嵌合部13は自重、ならびに、圧縮ばね14の荷重によって、
図1の状態と比較してソケット15に対して相対的に下方に下がっている。
【0044】
この際、略六角形状のねじ嵌合部13は、拘束溝材11の略六角柱形の溝(穴)11a(
図2参照)と嵌合していて、ソケット15に対する蓋保持ねじ12の回転は拘束されている。一方、蓋保持ねじ12と嵌合している蓋104は、蓋保持ねじ12とともに相対的に下方に下がり、ソケット15から下方に離れている。
【0045】
蓋104が接続部102から離れて、耐圧性容器100が開放した状態で、剛直管部33を耐圧性容器100の方向へ挿入する。そして、柔軟管部31は、耐圧性容器100の開口部102a1を挿通して耐圧性容器100内に入れられ、柔軟管部31の先端31sは試料室101の底部に到達可能となる。
【0046】
なお、気体を扱う場合、気体は空間に広がるので、配管30のうち、収納容器1の内部の気体を排出する配管と、排出されたのと略同量の気体を供給する配管については、柔軟管部31の先端31sを試料室101の底部まで挿入する必要が無い。そのため、剛直管部33の挿入量を少なくしたり、あるいは、柔軟管部31を短くしたりしても良い。また、気体の供給用の配管30と排出用の配管30との先端位置を揃える必要が無いので、両者の挿入量、あるいは、長さを変えても良い。
【0047】
以上説明した手順に従えば、本発明の収納容器1を用いることで、耐圧性容器100の内部に有害ガスが存在したり、液体試料から有害ガスが生成されたりする環境下でも、有害ガスを収納容器1と有害ガスの処理・回収装置以外に流出または漏出させることなく、耐圧性容器100を開封し、耐圧性容器100の内部に液体試料を注入・排出する作業を実施することが可能となる。
【0048】
<収納容器1の操作手順>
次に、収納容器1の操作手順について説明する。
図6に、収納容器1の初期状態の断面図を示す。
初期状態では、封止された状態の耐圧性容器100が床Y上に置かれている。
蓋保持ねじ12は、圧縮ばね14の弾性力で押圧され、ソケット15から下方に突出している。
【0049】
そして、ソケット15に固定されている拘束溝材11と、蓋保持ねじ12と一体であるねじ嵌合部13とがかみ合い、ソケット15に同期して蓋保持ねじ12は回転する。
図7に、ソケット15の蓋保持ねじ12を蓋104に取り付ける状態の断面図を示す。
続いて、作用部17を把持してソケット15を時計廻りに回して(
図7の矢印α4)、蓋保持ねじ12を蓋104の雌ねじ104b3にねじ込む。
【0050】
図8に、収納容器1の気密を確保する状態の断面図を示す。
続いて、止め具(図示せず)で平板の天面板8を筒状の上部側面板6に押し付け、収納容器1の気密を確保する。この際、接続部102は下方から支持部材5がはめ込まれる。
【0051】
図9に、収納容器1の気密を確保する状態の断面図を示す。
ソケット15が蓋104とかみ合う位置までソケット15を回してから、ソケット15を下方向に動かして、ソケット15の略正六角形の穴15a(
図3参照)を蓋104の外周部104gにはめ込む。
その後、ソケット15を半時計方向(
図9のα5方向)に回して蓋104の雄ねじ104aと接続部102の雌ねじ102aのネジ締めを緩め、蓋104を接続部102から外す。
【0052】
図10に、収納容器1の気密を確保する状態の断面図を示す。
作用部17を把持してソケット15を持ち上げ保持具23を天面板8とスナップリング16との間に入れ、保持具23でソケット15の位置を固定する。
ソケット15とともに蓋104、蓋保持ねじ12も持ち上がるが、圧縮ばね14によって下方に押されるので、蓋104の上方への移動距離はソケット15の上方への移動距離より短い。
【0053】
図11に、配管30を通して試料室101の流体を出し入れする状態の断面図を示す。
剛直管部33を収納容器1の内部に挿入してから、柔軟管部31が耐圧性容器100の開口部102a1を挿通して耐圧性容器100内に入れられ、配管30を通して試料室101に対して流体を出し入れする。
【0054】
図12に、流体を試料室101に出し入れ後の状態の断面図を示す。
剛直管部33を初期位置まで引き抜く。
図13に、保持具23を外した状態の断面図を示す。
保持具23(
図12参照)を外して、蓋104が接続部102に当たるまでソケット15を下す。
【0055】
図14に、ソケット15が蓋104とかみ合うように下した状態の断面図を示す。
ソケット15が蓋104とかみ合うようにソケット15を回しながら下す。この過程で、蓋104とソケット15の間の摩擦力の方が、蓋104と接続部102の間の摩擦力よりも大きいと、蓋104が接続部102にねじ込まれる可能性があるが、問題ない。
【0056】
図15に、蓋104を接続部102にねじ込む状態の断面図を示す。
続いて、ソケット15を回して蓋104の雄ねじ104aを接続部102の雌ねじ102aにねじ込む。
【0057】
図16に、天面板8を持ち上げた状態の断面図を示す。
図示しない止め具を外してから、天面板8を持ち上げる。蓋保持ねじ12や耐圧性容器100の上方への移動距離は、圧縮ばね14と重力の作用により、天面板8やソケット15の上方への移動距離よりも短い。
【0058】
図17に、耐圧性容器100を所定の場所に運ぶ状態の断面図を示す。
作用部17を把持して天面板8やソケット15と共に耐圧性容器100を所定の場所に運ぶ。
【0059】
図18に、耐圧性容器100を所定の場所に運ぶ状態の断面図を示す。
耐圧性容器100を保持した状態でソケット15を回すことで、蓋保持ねじ12を蓋104の雌ねじ104b3から外す。その後、耐圧性容器100を次の工程に引き渡す。
以上が収納容器1の操作手順である。
【0060】
<液体等の試料を注入・排出した後の耐圧性容器100を封止する手順>
次に、液体等の試料を耐圧性容器100に注入・排出した後に、耐圧性容器100を封止する手順をより詳細に説明する。
【0061】
図5の状態から、剛直管部33を元の位置まで引き抜く(
図10参照)。そして、保持具23を外し、
図13に示すように、蓋104と接続部102が当接する位置までソケット15を下げる。この状態では、ねじ嵌合部13は拘束溝材11と嵌合しており、ソケット15と蓋104は同期して回転する。
【0062】
すなわち、蓋104の雄ねじ104aと、接続部102の雌ねじ102aが係合するようにソケット15の時計廻りの回転(
図5の矢印α2)と、下降(
図5の矢印α3)を同時に行う。これにより、蓋104は低いトルクで接続部102に締め込まれる。
該締め込みが完了した後、
図15に示すように、ソケット15を回転させずに下降させることで圧縮ばね14が収縮してねじ嵌合部13が拘束溝材11に対して相対的に上方に移動する。これにより、ねじ嵌合部13は拘束溝材11から外れ、蓋104に対してソケット15が相対的に回転可能となる。この状態でソケット15を回転させながら下降させることで、ソケット15の略六角形の穴15a(
図3参照)に蓋104の頭部が入り込み、
図1に示す状態と等価になる。
【0063】
したがって、作用部17を把持してソケット15を、規定のトルクで締め付けることで、蓋104が必要なトルクで接続部102に締め込まれる。ねじ嵌合部13が拘束溝材11から外れることで、ソケット15で蓋104を規定トルクで接続部102に締め込むことができる。
その後、必要に応じて、
図1に示す元の位置まで引き抜いた状態の配管30を使って収納容器1の内部に残留している有害ガスを処理・回収装置へ排出する。
【0064】
以上説明した手順に従えば、
図1に示すように、液体試料の注入や排出した後の耐圧性容器100を封止するとともに、収納容器1の内部から有害ガスを除去することが可能となる。
これらの操作の後、図示しない止め具を解除して、上部側面板6から天面板8を分離可能な状態としてから、
図16に示すように、天面板8を上方に持ち上げることで、天面板8、開閉工具10がつながった状態で耐圧性容器100を収納容器から取り出す(
図17参照)ことが可能になる。有害ガスが触れていた耐圧性容器100の表面に汚染物質が残留している場合、天面板8、あるいは、開閉工具10を把持した状態で耐圧性容器100の表面を除染することができる。
【0065】
上記構成によれば、閉止した状態の流体置換装置Rの収納容器1内で耐圧性のある耐圧性容器100を開閉することで有害ガスが触れる領域を収納容器1内に限定できる(
図5参照)。また、収納容器1の領域内に修理やメンテナンスが必要な装置を配置することなく、耐圧性容器100内の液体等の試料を注入したり排出できる。
【0066】
換言すれば、有害ガスが触れる領域を耐圧性容器100の内外表面と収納容器1の内表面と収納容器1の内部ガスの処理系内表面に限定した状態で、耐圧性容器100を開閉するとともに、耐圧性容器100に液体等の試料を注入したり排出することができる。
【0067】
なお、本発明は、前記した実施形態、変形例の構成に限られることなく、添付の特許請求の範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 収納容器
3 第三の気密部
7 配管貫通部
8 天面板
10 開閉工具
11 拘束溝材
11a 溝
12 蓋保持ねじ
12m 雄ねじ
13 ねじ嵌合部
14 圧縮ばね
21A 第一の気密部
21 気密部(第一の気密部)
22 滑り軸受(第一の気密部)
30 配管
31 柔軟管部(配管)
31s 柔軟管部の先端(配管)
32 第二の気密部
33 剛直管部(配管)
100 耐圧性容器
101 試料室
102 接続部
102a1 開口部
103 ガスケット
104 蓋
R 流体置換装置