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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175416
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20241211BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20241211BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 Z
H01M8/04537
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04302
H01M8/04303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093194
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 大作
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC07
5H127DA01
5H127DA11
5H127DB52
5H127DB63
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC43
5H127DC44
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】電圧変換器を使用せずに燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置へ供給される電力を制御し、簡易でより安価な燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システムは、FC1と、モータ2と、FC1とモータ2を接続する第1電力線3と、バッテリ4と、バッテリ4と第1電力線3を接続する第2電力線5と、第1電力線3に設けられ、抵抗値を変更可能に構成した可変抵抗器7と、FC1の電流値が許容される電流使用領域となるように可変抵抗器7の抵抗値を制御するECU10とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
負荷装置と、
前記燃料電池と前記負荷装置を接続する第1電力線と、
バッテリと、
前記バッテリと前記第1電力線を接続する第2電力線と
を備えた燃料電池システムにおいて、
前記第1電力線又は前記第2電力線に設けられ、抵抗値を変更可能に構成した可変抵抗手段と、
前記燃料電池の電流値が許容される電流使用領域となるように前記可変抵抗手段の抵抗値を制御するための制御手段と
を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記可変抵抗手段は、抵抗値を変更可能に構成した可変抵抗器である
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記可変抵抗手段は、一つの抵抗器と、その抵抗器に並列に接続された一つのリレーとを含む抵抗器・リレー回路を少なくとも一つ備え、少なくとも一つの前記リレーを開閉することにより抵抗値を多段階に変更可能に構成した抵抗装置である
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記バッテリの充電率を監視するための監視手段を更に備え、
前記制御手段は、監視される前記充電率が所定の第1充電率以下になったときは、前記抵抗値が所定の第1抵抗値となるように前記可変抵抗器を制御し、監視される前記充電率が前記第1充電率より高い第2充電率以上になったときは、前記抵抗値が前記第1抵抗値より高い所定の第2抵抗値となるように前記可変抵抗器を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、
前記バッテリの充電率を監視するための監視手段を更に備え、
前記制御手段は、監視される前記充電率が所定の第1充電率以下になったときは、前記抵抗値が所定の第1抵抗値となるように少なくとも一つの前記リレーを開制御し、監視される前記充電率が前記第1充電率より高い第2充電率以上になったときは、前記抵抗値が前記第1抵抗値より低い所定の第2抵抗値となるように前記第1充電率以下の際より少なくとも一つ以上多い前記リレーを開制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、
前記制御手段は、測定される前記電流値が前記燃料電池の前記電流使用領域における高電流側の値となるときは、前記バッテリの電圧値の許容される電圧使用領域上となるように前記可変抵抗器の抵抗値を下げるように前記可変抵抗器を制御し、測定される前記電流値が前記燃料電池の前記電流使用領域における低電流側の値となるときは、前記バッテリの電圧値の前記電圧使用領域未満又は前記燃料電池が高電圧回避となるように前記可変抵抗器の抵抗値を上げるように前記可変抵抗器を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、
前記制御手段は、測定される前記電流値が前記燃料電池の前記電流使用領域における高電流側の値となるときは、前記抵抗装置の前記抵抗値が低くなるように少なくとも一つの前記リレーを閉に制御し、測定される前記電流値が前記燃料電池の前記電流使用領域における低電流側の値となるときは、前記抵抗装置の前記抵抗値が高くなるように少なくとも一つの前記リレーを開閉制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記燃料電池の起動時又は停止時における所定時間に測定される前記電流値に応じて前記バッテリの最大電圧値以下又は前記燃料電池が高電圧回避となるように前記可変抵抗器の抵抗値を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記燃料電池の起動時又は停止時における所定時間に測定される前記電流値が前記バッテリの最大電流値を超えている場合又は前記燃料電池が高電圧回避する場合は、前記抵抗値が高くなるように少なくとも一つの前記リレーを開閉制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、電気自動車等の電源として使用され、負荷装置に接続される燃料電池と、燃料電池から負荷装置に至る放電経路に設けられ、燃料電池と並列に接続されるバッテリとを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「燃料電池システム」が知られている。このシステムは、燃料電池と、負荷装置と、燃料電池と負荷装置を接続する第1配線と、バッテリと、バッテリから第1配線に接続される第2配線とを備え、第1配線には、燃料電池の端子間電圧と負荷装置側の電圧との間で電圧変換を行う電圧変換器が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-228294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、電圧変換器は、燃料電池の上限電力を超えないように負荷装置への供給電力を制御できるものの、それ自体がシステムのコストアップ及び大型化につながる懸念があった。近年では、電気自動車等に搭載される燃料電池システムとして、簡易で安価なシステムが要望されている。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、電圧変換器を使用することなく燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置へ供給される電力の制御を可能とし、簡易でより安価な燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、燃料電池と、負荷装置と、燃料電池と負荷装置を接続する第1電力線と、バッテリと、バッテリと第1電力線を接続する第2電力線とを備えた燃料電池システムにおいて、第1電力線又は第2電力線に設けられ、抵抗値を変更可能に構成した可変抵抗手段と、燃料電池の電流値が許容される電流使用領域となるように可変抵抗手段の抵抗値を制御するための制御手段とを備えたことを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、燃料電池の電流値が許容される電流使用領域となるように制御手段により可変抵抗手段を制御することにより、 燃料電池とバッテリから負荷装置への供給電力が制御される。従って、電圧変圧器を使用することなく、バッテリの充電率が中央値に近付けられ、かつ、燃料電池が許容される電流使用領域で使用される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、可変抵抗手段は、抵抗値を変更可能に構成した可変抵抗器であることを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、可変抵抗手段を可変抵抗器にすることで、請求項1に記載の技術と同等の作用が得られる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、可変抵抗手段は、一つの抵抗器と、その抵抗器に並列に接続された一つのリレーとを含む抵抗器・リレー回路を少なくとも一つ備え、少なくとも一つのリレーを開閉することにより抵抗値を多段階に変更可能に構成した抵抗装置であることを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、可変抵抗手段を抵抗装置にすることで、請求項1に記載の技術と同等の作用が得られる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、バッテリの充電率を監視するための監視手段を更に備え、制御手段は、監視される充電率が所定の第1充電率以下になったときは、抵抗値が所定の第1抵抗値となるように可変抵抗器を制御し、監視される充電率が第1充電率より高い第2充電率以上になったときは、抵抗値が第1抵抗値より高い所定の第2抵抗値となるように可変抵抗器を制御することを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、制御手段が監視されるバッテリの充電率に応じて可変抵抗器を制御することにより、その充電率がほぼ中央値に近付けられ、燃料電池の電圧が間欠的にアイドル状態に制御される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、バッテリの充電率を監視するための監視手段を更に備え、制御手段は、監視される充電率が所定の第1充電率以下になったときは、抵抗値が所定の第1抵抗値となるように少なくとも一つのリレーを開に制御し、監視される充電率が第1充電率より高い第2充電率以上になったときは、抵抗値が第1抵抗値より低い所定の第2抵抗値となるように第1充電率以下の際より少なくとも一つ以上多いリレーを開制御することを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、制御手段が監視されるバッテリの充電率に応じて抵抗装置を制御することにより、その充電率がほぼ中央値に近付けられ、燃料電池の電圧が間欠的にアイドル状態に制御される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、制御手段は、測定される電流値が燃料電池の電流使用領域における高電流側の値となるときは、バッテリの電圧値の許容される電圧使用領域上となるように可変抵抗器の抵抗値を下げるように可変抵抗器を制御し、測定される電流値が燃料電池の電流使用領域における低電流側の値となるときは、バッテリの電圧値の電圧使用領域未満又は燃料電池が高電圧回避となるように可変抵抗器の抵抗値を上げるように可変抵抗器を制御することを趣旨とする。
【0017】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、制御手段が測定される燃料電池の電流値に応じて可変抵抗器を制御することにより、燃料電池の電流値がその電流使用領域に近付けられる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、制御手段は、測定される電流値が燃料電池の電流使用領域における高電流側の値となるときは、抵抗装置の抵抗値が低くなるように少なくとも一つのリレーを閉に制御し、測定される電流値が燃料電池の電流使用領域における低電流側の値となるときは、抵抗装置の抵抗値が高くなるように少なくとも一つのリレーを開に制御することを趣旨とする。
【0019】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、制御手段が、測定される燃料電池の電流値に応じて抵抗装置の少なくとも一つのリレーを制御することにより、燃料電池の電流値がその電流使用領域に近付けられる。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、制御手段は、燃料電池の起動時又は停止時における所定時間に測定される電流値に応じてバッテリの最大電圧値以下又は燃料電池が高電圧回避となるように可変抵抗器の抵抗値を制御することを趣旨とする。
【0021】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、燃料電池の起動時又は停止時に、制御手段が、測定される燃料電池の電流値に応じて可変抵抗器を制御することにより、バッテリの電圧がその上限値を超えないように抑えられる。
【0022】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、燃料電池の電流値を測定するための測定手段を更に備え、制御手段は、燃料電池の起動時又は停止時における所定時間に測定される電流値がバッテリの最大電流値を超えている場合又は燃料電池が高電圧回避する場合は、抵抗値が高くなるように少なくとも一つのリレーを開に制御することを趣旨とする。
【0023】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、燃料電池の起動時又は停止時に、制御手段が、測定される燃料電池の電流値に応じて抵抗装置の少なくとも一つのリレーを制御することにより、バッテリの電圧がその上限値を超えないように抑えられる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の技術によれば、電圧変換器を使用することなく燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置へ供給される電力を制御することができ、簡易でより安価な燃料電池システムを提供することができる。
【0025】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術と同等の効果を得ることができる。
【0026】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術と同等の効果を得ることができる。
【0027】
請求項4に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、バッテリの充電率に応じて可変抵抗器の抵抗値を制御することで、燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置への供給電力を制御することができる。また、燃料電池に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0028】
請求項5に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、バッテリの充電率に応じて抵抗装置の抵抗値を制御することで、燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置への供給電力を制御することができる。また、燃料電池に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0029】
請求項6に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、燃料電池の電流値に応じて可変抵抗器の抵抗値を制御することで、燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置への供給電力を制御することができる。また、燃料電池に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0030】
請求項7に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、燃料電池の電流値に応じて抵抗装置の抵抗値を制御することで、燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置への供給電力を制御することができる。また、燃料電池に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0031】
請求項8に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、燃料電池の電流値に応じて可変抵抗器の抵抗値を制御することで、燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置への供給電力を制御することができる。また、燃料電池に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0032】
請求項9に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、燃料電池の電流値に応じて抵抗装置の抵抗値を制御することで、燃料電池及びバッテリの上限電力を超えないように負荷装置への供給電力を制御することができる。また、燃料電池に高電圧がかかることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態に係り、電動カートに搭載された燃料電池システムを示すブロック図。
図2】第1実施形態に係り、電力供給制御の内容を示すフローチャート。
図3】第1実施形態に係り、バッテリの充電率に応じた要求抵抗値を求めるために参照される要求抵抗値マップ。
図4】第1実施形態に係り、(A)電動カートの車速と(B)バッテリの充電率の変化を示すタイムチャート。
図5】第1実施形態に係り、(A)電動カートの車速、(B)バッテリの充電率及び(C)可変抵抗器の抵抗値の変化を示すタイムチャート。
図6】第2実施形態に係り、電力供給制御の内容を示すフローチャート。
図7】第2実施形態に係り、(A)充電率と(B)FC電圧値の変化を簡略的に示すタイムチャート。
図8】第2実施形態に係り、(A)可変抵抗器の抵抗値と(B)バッテリの充電率の変化を示すタイムチャート。
図9】第2実施形態の変形例に係り、抵抗装置を示す回路図。
図10】第3実施形態に係り、電力供給制御の内容を示すフローチャート。
図11】第3実施形態に係り、(A)FCの電流-電圧特性と(B)バッテリの電流-電圧特性を示すグラフ。
図12】第3実施形態に係り、(A)FC電流値、(B)FC電圧値及び(C)要求抵抗値の変化を示すタイムチャート。
図13】第4実施形態に係り、電力供給制御の内容を示すフローチャート。
図14】第4実施形態に係り、FC電圧値に応じた要求抵抗値を求めるために参照される要求抵抗値マップ。
図15】第4実施形態に係り、(A)FCの電流-電圧特性と(B)バッテリの電流-電圧特性を示す図11に準ずるグラフ。
図16】第4実施形態に係り、FCの起動時に可変抵抗器が「0Ω」の場合の(A)FC電圧値と(B)バッテリ電圧値の変化を示すタイムチャート。
図17】第4実施形態に係り、FCの起動時に可変抵抗器が「1.0Ω」の場合の(A)FC電圧値と(B)バッテリ電圧値の変化を示すタイムチャート。
図18】第5実施形態に係り、電力供給制御の内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、燃料電池システムを小型電気自動車(電動カート)に具体化したいくつかの実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について図1図5を参照して詳細に説明する。
【0036】
[燃料電池システムの概要]
図1に、この実施形態の電動カートに搭載された燃料電池システムをブロック図により示す。この燃料電池システムは、燃料電池(FC)1と、電動式のモータ2と、FC1とモータ2を接続する第1電力線3と、バッテリ4と、バッテリ4と第1電力線3を接続する第2電力線5とを備える。第2電力線5は、可変抵抗器7とモータ2との間の第1電力線3に接続される。
【0037】
FC1は、燃料と酸化剤の化学エネルギーを、酸化還元反応により電気に変換する電気化学電池であり、周知の構成を備える。モータ2は、周知の構成を備え、この開示技術の「負荷装置」の一例に相当する。バッテリ4は、この実施形態では、充放電可能な二次電池により構成される。
【0038】
この実施形態において、第1電力線3には、整流用のダイオード6と、抵抗値を変更可能に構成した可変抵抗器7が設けられる。可変抵抗器7は、電気的に動作させることで抵抗値を無段階に変更可能な周知の構成を有し、この開示技術の「可変抵抗手段」の一例に相当する。燃料電池システムは、可変抵抗器7の抵抗値を制御するための電子制御装置(ECU)10を更に備える。ECU10は、演算処理を行う中央処理装置(CPU)、メモリ及び入出力ポート等を含む周知の構成を備える。ECU10は、この開示技術の「制御手段」の一例に相当する。
【0039】
この実施形態において、モータ2は、電動カートの駆動輪11に駆動連結される。ECU10にはアクセルセンサ12が接続される。アクセルセンサ12は、電動カートのユーザが操作するペダル13の操作角度をアクセル開度として検出し、その検出信号をECU10へ出力するようになっている。
【0040】
ECU10はバッテリ4に対し電気的に接続され、バッテリ4の充電率SOCを監視するようになっている。ECU10は、この開示技術の「監視手段」の一例にも相当する。また、ECU10はFC1に対し電気的に接続され、FC1の電流値を測定するようになっている。ECU10は、この開示技術の「測定手段」の一例にも相当する。
【0041】
ここで、FC1の電流値は、FC1の耐久性を考慮すると、少な過ぎても多過ぎても好ましくなく、許容される電流使用領域の範囲で使用する必要がある。そこで、この実施形態で、ECU10は、電動カートの運転時に、FC1の電流値が許容される電流使用領域となるようにするために、次のような「電力供給制御」を実行するようになっている。
【0042】
[電力供給制御について]
図2に、ECU10のメモリに格納されたこの実施形態の「電力供給制御」の内容の一例をフローチャートにより示す。
【0043】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、ECU10は、監視しているバッテリ4の充電率SOCを取り込む。
【0044】
次に、ステップ110で、ECU10は、取り込まれた充電率SOCに応じて要求抵抗値RRVを算出する。ECU10は、例えば、図3に示すような要求抵抗値マップを参照することにより、充電率SOCに応じた要求抵抗値RRVを求める。この要求抵抗値マップは、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)に近付けるように要求抵抗値RRVが設定されている。すなわち、充電率SOCが「0~100(%)」の範囲で高くなるほど、要求抵抗値RRVは「0.10~0.35(Ω)」の範囲で高くなるように設定される。
【0045】
そして、ステップ120で、ECU10、可変抵抗器7を制御することにより、可変抵抗器7の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御する。
【0046】
上記電力供給制御によれば、ECU10は、FC1の電流値が許容される電流使用領域となるように可変抵抗器7の抵抗値を制御するようになっている。具体的には、ECU10は、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)に近付けるために、可変抵抗器7を制御することで、可変抵抗器7の抵抗値を充電率SOCに応じた要求抵抗値RRVに制御するようになっている。
【0047】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムの構成によれば、FC1の電流値が許容される電流使用領域となるようにECU10により可変抵抗器7を制御することにより、 FC1とバッテリ4からモータ2への供給電力が制御される。従って、電圧変圧器を使用することなく、バッテリ4の充電率SOCが中央値(50%)に近付けられ、かつ、FC1が許容される電流使用領域で使用される。この実施形態によれば、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)に近付けるために、バッテリ4の充電率SOCを監視し、その充電率SOCに応じた要求抵抗値RRVを求め、可変抵抗器7の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御する。従って、電動カートの運転状態にかかわらず、FC1の出力を成り行きとし、可変抵抗器7の抵抗値を制御するだけで、バッテリ4の充電率を中央値(50%)に近付けることができる。また、バッテリ4の出力が上限を超えないように制御することができる。このため、電圧変換器を使用することなく、FC1及びバッテリ4の上限電力を超えないようにモータ2へ供給される電力を制御することができ、簡易でより安価な燃料電池システムを提供することができる。
【0048】
図4には、(A)電動カートの車速と(B)バッテリ4の充電率SOCの変化をタイムチャートにより示す。(B)において、太線は可変抵抗器7の抵抗値が「0.25Ω」の場合を示し、破線はその抵抗値が「0.50Ω」の場合を示し、2点鎖線はその抵抗値が「1.0Ω」の場合を示す。
【0049】
図4(A)に示すように、電動カートの運転は、加速、減速及び停止を周期的に繰り返すように行われる。このとき、図4(B)に示すように、抵抗値が「0.25Ω」の場合は、充電率SOCを「50%」以上に保てるが、抵抗値が「0.50Ω」及び「1.0Ω」の場合は、充電率SOCが「50%」を下回ることがわかる。
【0050】
図5には、(A)電動カートの車速、(B)バッテリ4の充電率SOC及び(C)可変抵抗器7の抵抗値の変化をタイムチャートにより示す。(A)において、時刻t1~t2,t5~t6は加速時であり、電動カートの制動が行われ、バッテリ4の電力が消費される。時刻t3~t4,t7~t8は減速時であり、モータ2からバッテリ4へ電力の回生が行われる。(B)において、太線は本実施形態を示し、実線は本実施形態の電力供給制御を行わない対比例を示す。図5からわかるように、本実施形態では、バッテリ4の充電率SOCに応じて可変抵抗器7の抵抗値を制御しているので、電動カートの車速の変化にかかわらず、バッテリ4の充電率SOCを対比例よりも「50%」に近付けられることがわかる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図6図8を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0052】
[電力供給制御について]
この実施形態では、電力供給制御の内容の点で第1実施形態と異なる。この実施形態では、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)付近に制御するために、次のような「電力供給制御」を実行する。図6に、この実施形態の「電力供給制御」の内容をフローチャートにより示す。
【0053】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ200で、ECU10は、監視しているバッテリ4の充電率SOCを取り込む。
【0054】
次に、ステップ210で、ECU10は、充電率SOCが所定の第2充電率C2以上か否かを判断する。ここで、第2充電率C2を例えば「70%」とすることができる。ECU10は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ220へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ240へ移行する。
【0055】
ステップ220では、ECU10は、要求抵抗値RRVを「1.0Ω」に設定する。「1.0Ω」は、この開示技術の「第1抵抗値」の一例に相当する。
【0056】
次に、ステップ230では、ECU10は、可変抵抗器7の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御し、その後の処理を終了する。
【0057】
一方、ステップ210から移行してステップ240では、ECU10は、充電率SOCが第1充電率C1以下か否かを判断する。ここで、第1充電率C1を、例えば「30%」とすることができる。ECU10は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ230へ移行する。
【0058】
ステップ250では、ECU10は、要求抵抗値RRVを「0Ω」に設定する。「0Ω」は、この開示技術の「第2抵抗値」の一例に相当する。ECU10は、その後、処理をステップ230へ移行する。
【0059】
上記電力供給制御によれば、ECU10は、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)付近に制御するために、監視される充電率SOCが第1充電率C1(30%)以下になったときは、抵抗値が「1.0Ω」となるように可変抵抗器7を制御し、監視される充電率SOCが第1充電率C1より高い第2充電率C2以上になったときは、抵抗値が「0Ω」より高い「1.0Ω」となるように可変抵抗器7を制御するようになっている。
【0060】
図7に、(A)バッテリ4の充電率SOCと(B)FC電圧値FCVVの変化をタイムチャートにより示す。この実施形態では、図7(A)に示すように、充電率SOCは、「30~70(%)」の範囲で増減し、上記電力供給制御により可変抵抗器7の抵抗値が制御されることから、FC電圧値FCVVは図7(B)に示すように変化することになる。
【0061】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムの構成によれば、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。また、この実施形態によれば、ECU10が、監視される充電率SOCに応じて可変抵抗器7を制御することにより、その充電率SOCがほぼ中央値(50%)に近付けられ、FC1の電圧が間欠的にアイドル状態に制御される。このため、バッテリ4の充電率SOCに応じて可変抵抗器7の抵抗値を制御することで、FC1及びバッテリ4の上限電力を超えないようにモータ2への供給電力を制御することができる。また、FC1に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0062】
この実施形態の構成によれば、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)付近に制御するために、充電率SOCが第2充電率C2(70%)以上になったときは、抵抗値が「1.0Ω」となるように可変抵抗器7が制御され、充電率SOCが第1充電率C1(30%)以下となったときは、抵抗値が「0Ω」となるように可変抵抗器7が制御される。この結果、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)付近に制御することができ、可変抵抗器7の抵抗値を「1.0Ω」に制御することで、FC1をアイドル状態にすることができる。このため、電動カートを間欠停止させることなくFC1をアイドル状態にすることができ、FC1の部品やスタックの耐久性を向上させることができる。
【0063】
上記電力供給制御により得られる効果を図8に示す。図8には、(A)可変抵抗器7の抵抗値と(B)バッテリ4の充電率SOCの変化をタイムチャートにより示す。図8からわかるように、上記のように可変抵抗器7の抵抗値を制御することで、図8に示すように、(A)抵抗値と(B)充電率SOCが変化し、充電率SOCが時間経過に伴って中央値(50%)に近付けられることがわかる。
【0064】
<第2実施形態の変形例>
次に、第2実施形態の変形例について図9を参照して説明する。この変形例では、主として可変抵抗手段の構成の点で第2実施形態と異なる。この変形例では、図1に示す第1電力線3には、可変抵抗器7の代わりに、図9に回路図で示す抵抗装置8が設けられる。この抵抗装置8は、一つの抵抗器21と、その抵抗器21に並列に接続された一つのリレー22とを含む抵抗器・リレー回路23を一つ備える。この抵抗装置8は、一つのリレー22を開閉することにより、抵抗装置8の抵抗値を二段階に変更可能に構成される。すなわち、リレー22を開くことで抵抗装置8の抵抗値を「1.0Ω」にし、リレー22を閉じることで抵抗装置8の抵抗値を「0Ω」に変更するように構成される。この抵抗装置8は、この開示技術の「可変抵抗手段」の一例に相当する。
【0065】
また、この変形例の「電力供給制御」では、図6のフローチャートのステップ230の代わりに、1つのリレー22を開閉することで、抵抗装置8の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御するようになっている。
【0066】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの変形例の燃料電池システムの構成によれば、第2実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。すなわち、ECU10が、監視されるバッテリ4の充電率SOCに応じて抵抗装置8のリレー22を開閉制御することにより、その充電率SOCがほぼ中央値(50%)に近付けられ、FC1の電圧が間欠的にアイドル状態に制御される。このため、バッテリ4の充電率SOCに応じて抵抗装置8の抵抗値を制御することで、FC1及びバッテリ4の上限電力を超えないようにモータ2への供給電力を制御することができる。また、FC1に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0067】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図10図12を参照して詳細に説明する。
【0068】
[電力供給制御について]
この実施形態では、電力供給制御の内容の点で前記各実施形態と異なる。図10に、この実施形態の「電力供給制御」の内容をフローチャートにより示す。
【0069】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ300で、ECU10は、測定しているFC1の電流値(FC電流値FCCV)を取り込む。
【0070】
次に、ステップ310で、ECU10は、FC電流値FCCVが第1所定値B1以上か否かを判断する。第1所定値B1は、FC1の電流使用領域における高電流側の値を意味し、例えば「40A」を採用することができる。ECU10は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ320へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ340へ移行する。
【0071】
ステップ320では、ECU10は、要求抵抗値RRVを「0.25Ω」に設定する。この要求抵抗値RRVは、バッテリ4の電圧使用領域以上となるようにするための低めの抵抗値を意味する。
【0072】
次に、ステップ330では、ECU10は、可変抵抗器7の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御し、その後の処理を終了する。
【0073】
一方、ステップ340では、FC電流値FCCVが第2所定値B2未満か否かを判断する。第2所定値B2として、例えば「10A」を採用することができる。ECU10は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ350へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ360へ移行する。
【0074】
ステップ350では、ECU10は、要求抵抗値RRVを「1.0Ω」に設定する。この要求抵抗値RRVは、バッテリ4の電圧使用領域未満となるようにするための高め抵抗値を意味する。その後、ECU10は、処理をステップ330へ移行する。
【0075】
一方、ステップ360では、ECU10は、要求抵抗値RRVを「0.5Ω」に設定し、その後、処理をステップ330へ移行する。
【0076】
上記電力供給制御によれば、ECU10は、測定されるFC電流値FCCVがFC1の電流使用領域における高電流側の値となるときは、バッテリ4の電圧使用領域以上となるように可変抵抗器7の抵抗値を下げるように可変抵抗器7を制御し、測定されるFC電流値FCCVがFC1の電流使用領域における低電流側の値となるときは、バッテリ4の電圧使用領域未満又はFC1が高電圧回避となるように可変抵抗器7の抵抗値を上げるように可変抵抗器7を制御するようになっている。
【0077】
図11には、(A)FC1の電流-電圧特性と(B)バッテリ4の電流-電圧特性をグラフに示す。図11(A)に示すように、この実施形態では、FC1は、高電圧回避電流値FIA(例えば「5A」)と最大電流値FImax(例えば「50A」)との間を電流使用領域IUAとして設定される。また、図11(B)に示すように、この実施形態では、バッテリ4は、高電圧回避電圧値BEAを、例えば「50V」とし、最低電圧値BEL(例えば「38V」)と最高電圧値BEH(例えば「42V」)との間で使用される。最高電圧値BEHは、充電率SOC「100%」の線上にあり、最低電圧値BELは充電率SOC「0%」の線上にある。
【0078】
この実施形態では、ECU10は、FC電流値FCCVが、その最大電流値FImaxにならないように、FC電流値FCCVが高いとき(例えば「40A」)は、要求抵抗値RRVを「0.25Ω」に設定し、FC電流値FCCVが低いとき(例えば「10A」)は、FC1が高電圧になることを回避するために、要求抵抗値RRVを「1.0Ω」に設定するのである。
【0079】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムの構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、ECU10が測定されるFC1の電流値に応じて可変抵抗器7を制御することにより、FC1の電流値がその電流使用領域に近付けられる。このため、FC1の電流値に応じて可変抵抗器7の抵抗値を制御することで、FC1及びバッテリ4の上限電力を超えないようにモータ2への供給電力を制御することができる。また、FC1に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0080】
図12には、(A)FC電流値FCCV、(B)FC電圧値FCVV及び(C)要求抵抗値RRVの変化をタイムチャートにより示す。図12(A),(B)において、実線は本実施形態を示し、破線は本実施形態の構成を有しない対比例を示す。この実施形態では、図12に示すように、FC電流値FCCVの変化に応じて要求抵抗値RRVを「0.25Ω」、「0.5Ω」及び「1.0Ω」の間で変更することで、FC1をその電流使用領域IUA(5~50(A))の範囲内で使用できることがわかる。
【0081】
<第3実施形態の変形例>
次に、第3実施形態の変形例について説明する。この変形例では、主として可変抵抗手段の構成の点で第3実施形態と異なる。この変形例では、図1に示す第1電力線3には、可変抵抗器7の代わりに、図9に示す抵抗器・リレー回路23を3つ直列に接続した抵抗装置8が設けられる。この抵抗装置8は、3つのリレー22を選択的に開閉することにより、抵抗装置8の抵抗値を三段階に変更可能に構成される。すなわち、3つの抵抗器・リレー回路23のリレー22の全てを開くことで抵抗値を「1.0Ω」にし、3つの抵抗器・リレー回路23のうち2つのリレー22を開くことで抵抗値を「0.5Ω」にし、3つの抵抗器・リレー回路23のうち1つのリレー22を開くことで抵抗値を「0.25Ω」にするように構成される。
【0082】
また、この変形例の「電力供給制御」では、図10のフローチャートのステップ330の代わりに、3つのリレー22を選択的に開閉することで、抵抗装置8の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御するようになっている。
【0083】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの変形例の燃料電池システムの構成によれば、第3実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。すなわち、ECU10が、測定されるFC1の電流値に応じて抵抗装置8を制御することにより、FC1の電流値がその電流使用領域に近付けられる。このため、FC1の電流値に応じて抵抗装置8の抵抗値を制御することで、FC1及びバッテリ4の上限電力を超えないようにモータ2への供給電力を制御することができる。また、FC1に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0084】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図13図17を参照して詳細に説明する。
【0085】
[電力供給制御について]
この実施形態では、電力供給制御の内容の点で前記各実施形態と異なる。図13に、この実施形態の「電力供給制御」の内容をフローチャートにより示す。
【0086】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ400で、ECU10は、FC1が起動又は停止してから所定時間内か否かを判断する。ここで、所定時間として、例えば「3秒」を採用することができる。ECU10は、この判断結果が肯定の場合は処理をステップ410へ移行し、この判断結果が否定の場合は処理をステップ440へ移行する。
【0087】
ステップ410では、ECU10は、測定しているFC電圧値FCVVを取り込む。
【0088】
次に、ステップ420で、ECU10は、FC電圧値FCVVに応じて要求抵抗値RRVを算出する。ECU10は、例えば、図14に示す要求抵抗値マップを参照することにより、FC電圧値FCVVに応じた要求抵抗値RRVを求める。この要求抵抗値マップは、バッテリ4の充電率SOCを中央値(50%)に近付ける要求抵抗値RRVが設定される。すなわち、FC電圧値FCVVが「50~80(V)」の範囲で高くなるほど、バッテリ4の最大電圧値以下となるように、要求抵抗値RRVが「0.01~0.30(Ω)」の範囲で高くなるように設定される。
【0089】
次に、ステップ430で、ECU10は、可変抵抗器7の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御し、その後の処理を終了する。
【0090】
一方、ステップ400から移行してステップ440では、ECU10は、要求抵抗値RRVを「0Ω」に設定し、処理をステップ430へ移行する。
【0091】
上記電力供給制御によれば、ECU10は、FC1の起動時又は停止時における所定時間に測定されるFC電圧値FCVVに応じてバッテリ4の最大電圧値以下又はFC1が高電圧回避となるように可変抵抗器7の抵抗値を下げるように可変抵抗器7を制御するようになっている。
【0092】
図15には、(A)FC1の電流-電圧特性と(B)バッテリ4の電流-電圧特性を図11に準ずるグラフにより示す。この実施形態では、ECU10は、FC1の起動時又は停止時に、バッテリ4の電圧が最大電圧値BEmaxを超えないように、起動時又は停止時の所定時間内に、FC電圧値FCVVに応じて要求抵抗値RRVを設定するのである。
【0093】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムの構成によれば、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。また、この実施形態によれば、FC1の起動時又は停止時に、ECU10が、測定されるFC1の電流値に応じて可変抵抗器7を制御することにより、バッテリ4の電圧がその上限値を超えないように抑えられる。このため、FC1の電流値に応じて可変抵抗器7の抵抗値を制御することで、FC1及びバッテリ4の上限電力を超えないようにモータ2への供給電力を制御することができる。また、FC1に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0094】
図16に、FC1の起動時に可変抵抗器7が「0Ω」(抵抗なし)の場合の(A)FC電圧値FCVVと(B)バッテリ電圧値BTVVの変化をタイムチャートにより示す。図17には、FC1の起動時に可変抵抗器7が「1.0Ω」の場合の(A)FC電圧値FCVVと(B)バッテリ電圧値BTVVの変化をタイムチャートにより示す。図16図17に示すように、FC1の起動時に、可変抵抗器7の抵抗値を「0Ω」から「1.0Ω」に変更すると、バッテリ電圧値BTVVを、「64.9(V)」から、上限値(例えば「55(V)」より低い「53.4(V)」に低減できることがわかる。
【0095】
<第4実施形態の変形例>
次に、第4実施形態の変形例について説明する。この変形例では、主として可変抵抗手段の構成の点で第4実施形態と異なる。この変形例では、図1に示す第1電力線3には、可変抵抗器7の代わりに、図9に示す抵抗器・リレー回路23を4つ直列に接続した抵抗装置8が設けられる。この抵抗装置8は、4つのリレー22を選択的に開閉することにより、抵抗装置8の抵抗値を四段階に変更可能に構成される。すなわち、4つの抵抗器・リレー回路23のリレー22の全てを開くことで抵抗値を「0.30Ω」にし、4つの抵抗器・リレー回路23のうち3つのリレー22を開くことで抵抗値を「0.20Ω」にし、4つの抵抗器・リレー回路23のうち2つのリレー22を開くことで抵抗値を「0.10Ω」にし、4つの抵抗器・リレー回路23のうち1つのリレー22を開くことで抵抗値を「0.01Ω」にし、4つの抵抗器・リレー回路23のリレー22の全てを閉じることで抵抗値を「0Ω」にするように構成される。
【0096】
また、この変形例の「電力供給制御」では、図13のフローチャートのステップ430の代わりに、4つのリレー22を選択的に開閉することで、抵抗装置8の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御するようになっている。
【0097】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの変形例の燃料電池システムの構成によれば、第4実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。すなわち、FC1の起動時又は停止時に、ECU10が、測定されるFC1の電流値に応じて抵抗装置8を制御することにより、バッテリ4の電圧がその上限値を超えないように抑えられる。このため、FC1の電流値に応じて抵抗装置8の抵抗値を制御することで、FC1及びバッテリ4の上限電力を超えないようにモータ2への供給電力を制御することができる。また、FC1に高電圧がかかることを抑制することができる。
【0098】
<第5実施形態>
次に、第4実施形態について図18を参照して詳細に説明する。
【0099】
[電力供給制御について]
この実施形態では、電力供給制御の内容の点で第4実施形態と異なる。図18に、この実施形態の「電力供給制御」の内容をフローチャートにより示す。図18のフローチャートでは、図13のフローチャートのステップ410を省略し、ステップ420をステップ500の処理に変更した点で異なる。すなわち、ステップ500では、ECU10は、要求抵抗値RRVを「1.0Ω」に設定するようになっている。
【0100】
上記電力供給制御によれば、ECU10は、FC1の起動時又は停止時の所定時間内にバッテリ4の電圧が上限値を超えないように可変抵抗器7の抵抗値を「1.0Ω」に上げるように可変抵抗器7を制御するようになっている。
【0101】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の燃料電池システムの構成によれば、第4実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0102】
<第5実施形態の変形例>
次に、第5実施形態の変形例について説明する。この変形例では、主として可変抵抗手段の構成の点で第5実施形態と異なる。この変形例では、第2実施形態の変形例と同様に、第1電力線3に図9に示す抵抗装置8が設けられる。
【0103】
また、この変形例の「電力供給制御」では、図18のフローチャートのステップ430の代わりに、1つのリレー22を開閉することで、抵抗装置8の抵抗値を要求抵抗値RRVに制御するようになっている。
【0104】
[燃料電池システムの作用及び効果について]
以上説明したこの変形例の燃料電池システムの構成によれば、 第5実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0105】
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0106】
(1)前記各実施形態及び各変形例では、第1電力線3(FC1の側)に可変抵抗器7又は抵抗装置8を設けたが、第2電力線(バッテリの側)に可変抵抗器又は抵抗装置を設けることもできる。
【0107】
(2)前記各実施形態及び各変形例では、負荷装置として電動式のモータ2を採用したが、その他の電動機を採用してもよい。
【0108】
(3)前記各実施形態及び各変形例では、FC1、ダイオード6及び可変抵抗器7(または抵抗装置8)を直列に接続した一組の回路をモータ2に接続して設けたが、FC、ダイオード及び可変抵抗器(または抵抗装置)を直列に接続した複数組の回路をモータに並列に接続して設けることもできる。
【0109】
(4)前記第2実施形態の変形例では、第1電力線3に、一つの抵抗器21と、その抵抗器21に並列に接続された一つのリレー22とを含む抵抗器・リレー回路23を一つ備えた抵抗装置8を設け、一つのリレー22を開閉することで抵抗装置8の抵抗値を二段階に変更可能に構成した。これに対し、第1電力線に、一つの抵抗器と、その抵抗器に並列に接続された一つのリレーとを含む抵抗器・リレー回路を複数直列に接続した抵抗装置を設け、複数のリレーを選択的に開閉することで抵抗装置の抵抗値を多段に変更可能に構成することもできる。この場合、ECUは、監視される充電率が所定の第1充電率以下になったときは、抵抗値が所定の第1抵抗値となるように少なくとも一つのリレーを開制御し、監視される充電率が第1充電率より高い第2充電率以上になったときは、抵抗値が第1抵抗値より低い所定の第2抵抗値となるように第1充電率以下の際より少なくとも一つ以上多いリレーを開制御することになる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この開示技術は、電気自動車に搭載される燃料電池システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 FC(燃料電池)
2 モータ(負荷装置)
3 第1電力線
4 バッテリ
5 第2電力線
7 可変抵抗器(可変抵抗手段)
8 抵抗装置 (可変抵抗手段)
10 ECU(制御手段、監視手段、測定手段)
21 抵抗器
22 リレー
23 抵抗器・リレー回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18