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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175421
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241211BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20241211BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241211BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/205
H01L21/31 C
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093200
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】上藤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄基
(72)【発明者】
【氏名】板倉 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 康介
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
(72)【発明者】
【氏名】吉井 雄一
【テーマコード(参考)】
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045AF03
5F045BB11
5F045EJ03
5F045EM02
5F045EM05
5F045EM07
5F045EM09
5F131AA03
5F131BA04
5F131CA08
5F131CA33
5F131CA42
5F131EA03
5F131EB04
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB43
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】基板に加えられる支持力のバランスを保ち、基板の撓みを抑制することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に形成された複数のシールリング150と、誘電体基板100に形成された複数のドット160と、を備える。複数のシールリング150のうち、第1シールリング151及び第2シールリング152はいずれも、非円形部分151A、152Aを有する。複数のドット160は、第1シールリング151の内側において、第1シールリング151の形状に沿って並ぶように配置された第1ドット群と、第2シールリング152の内側において、第2シールリング152の形状に沿って並ぶように配置された第2ドット群と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に形成された環状の突起であって、その先端面が前記載置面の一部となっている複数のシールリングと、
前記誘電体基板に形成された突起であって、その先端面が前記載置面の一部となっている複数のドットと、を備え、
複数の前記シールリングは、
前記載置面のうち最も外周端となる位置に配置された第1シールリングと、
前記第1シールリングとの間に他の前記シールリングを挟むことなく、前記第1シールリングの内側となる位置に配置された第2シールリングと、を含み、
前記第1シールリング及び前記第2シールリングはいずれも、前記載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が円形から外れている部分、である非円形部分を有し、
複数の前記ドットは、
前記第1シールリングの内側において、前記第1シールリングの形状に沿って並ぶように配置された複数の前記ドット、である第1ドット群と、
前記第2シールリングの内側において、前記第2シールリングの形状に沿って並ぶように配置された複数の前記ドット、である第2ドット群と、を含むことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記第1ドット群に含まれるそれぞれの前記ドットは、前記第1シールリングまでの距離において互いに同じであることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第2ドット群に含まれるそれぞれの前記ドットは、前記第2シールリングまでの距離において互いに同じであることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第1シールリングと前記第2シールリングとの間に設けられた複数の前記ドットは、いずれも前記第1ドット群に含まれものであり、一列に並ぶよう配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記第1ドット群に含まれるそれぞれの前記ドットは等間隔で並ぶように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記第2ドット群に含まれるそれぞれの前記ドットは等間隔で並ぶように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記非円形部分は、前記載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が直線状となっていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置等の半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板を備える。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
下記特許文献1に記載されているように、誘電体基板と基板との間の空間には、処理中における基板の温度調整等を目的として、ヘリウム等の不活性ガスが供給される。不活性ガスは、誘電体基板に形成されたガス穴を通じて上記空間に供給される。
【0004】
誘電体基板と基板との間で上記空間を確保するために、誘電体基板のうち基板側の面には、環状の突起であるシールリングが形成される。上記空間を複数に分けておき、各部における不活性ガスの圧力を個別に調整し得るように、上記のシールリングは複数設けられるのが一般的である。また、誘電体基板のうち基板側の面には、上記のシールリングに加えて、基板を支持するための微小な突起であるドットも複数形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-234904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
載置面に対し垂直な方向から見た場合のシールリングの形状は、全体において円形とされることもあるが、例えばシリコンウェハのオリフラやノッチと対応する部分のみを直線状とするなど、一部においては非円形の形状とされることもある。このような非円形部分は、最外周に配置されたシールリングのみならず、その1つ内側に配置されたシールリングにも設けられる。
【0007】
一方、ドットは、上記の非円形部分を考慮することなく、例えば互いに等間隔に並ぶよう載置面の全体において規則的に配置される。このため、シールリングのうち上記の非円形部分の近傍となる位置においては、ドットとシールリングとの間が局所的に狭くなってしまったり、逆に広くなってしまったりすることがある。
【0008】
非円形部分の近傍におけるドットの配置によっては、基板に加えられる支持力のバランスが崩れてしまい、基板の撓み量が大きくなってしまう可能性が有る。基板の撓みは、基板における局所的な温度上昇や温度低下等の原因となり得るため、好ましくない。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板に加えられる支持力のバランスを保ち、基板の撓みを抑制することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に形成された環状の突起であって、その先端面が載置面の一部となっている複数のシールリングと、誘電体基板に形成された突起であって、その先端面が載置面の一部となっている複数のドットと、を備える。複数のシールリングは、載置面のうち最も外周端となる位置に配置された第1シールリングと、第1シールリングとの間に他のシールリングを挟むことなく、第1シールリングの内側となる位置に配置された第2シールリングと、を含む。第1シールリング及び第2シールリングはいずれも、載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が円形から外れている部分、である非円形部分を有する。複数のドットは、第1シールリングの内側において、第1シールリングの形状に沿って並ぶように配置された複数のドット、である第1ドット群と、第2シールリングの内側において、第2シールリングの形状に沿って並ぶように配置された複数のドット、である第2ドット群と、を含む。
【0011】
このような構成の静電チャックでは、最も外周側にある第1シールリングと、その1つ内側にある第2シールリングとのそれぞれが、例えば基板のオリフラ等に対応する非円形部分を有している。また、第1シールリングの内側では、非円形部分を含む第1シールリングの形状に沿って並ぶよう、複数のドットである第1ドット群が配置されている。同様に、第2シールリングの内側では、非円形部分を含む第2シールリングの形状に沿って並ぶよう、複数のドットである第2ドット群が配置されている。
【0012】
このような構成においては、第1ドット群に含まれる各ドットから第1シールリングまでの距離が、全周に亘り概ね均等となるので、第1シールリングの内側において、基板への支持力のバランスを保つことができる。同様に、第2ドット群に含まれる各ドットから第2シールリングまでの距離も、全周に亘り概ね均等となるので、第2シールリングの内側においても、基板への支持力のバランスを保つことができる。基板のうち非円形部分やその近傍の部分、すなわち、比較的撓みの生じやすかった部分に対する支持力のバランスが保たれるので、基板の撓みを従来に比べ抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係る静電チャックでは、第1ドット群に含まれるそれぞれのドットは、第1シールリングまでの距離において互いに同じであることも好ましい。第1ドット群に含まれるそれぞれのドットから第1シールリングまでの距離が、非円形部分も含めて同一の距離となるので、第1シールリングやその近傍部分における基板の撓みを十分に抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る静電チャックでは、第2ドット群に含まれるそれぞれのドットは、第2シールリングまでの距離において互いに同じであることも好ましい。第2ドット群に含まれるそれぞれのドットから第2シールリングまでの距離が、非円形部分も含めて同一の距離となるので、第2シールリングやその近傍部分における基板の撓みを十分に抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る静電チャックでは、第1シールリングと第2シールリングとの間に設けられた複数のドットは、いずれも第1ドット群に含まれものであり、一列に並ぶよう配置されていることも好ましい。
【0016】
基板のうち最外周部分は、処理中にはその内側に比べて高温となりやすい部分である。上記構成の静電チャックでは、第1シールリングと第2シールリングとの間を、ドットが1列のみ並ぶ程度に互いに近づけておくことで、基板のうち最外周部分の温度を調整することが可能となる。また、第1シールリングと第2シールリングとの間において一列に並ぶドットは、第1シールリングの形状に沿って並んでいるため、基板への支持力のバランスを保つことができる。
【0017】
また、本発明に係る静電チャックでは、第1ドット群に含まれるそれぞれのドットは等間隔で並ぶように配置されていることも好ましい。第1ドット群の各ドットを等間隔で並ぶよう配置することで、基板への支持力のバランスを十分に保つことができる。
【0018】
また、本発明に係る静電チャックでは、第2ドット群に含まれるそれぞれのドットは等間隔で並ぶように配置されていることも好ましい。第2ドット群の各ドットを等間隔で並ぶよう配置することで、基板への支持力のバランスを十分に保つことができる。
【0019】
また、本発明に係る静電チャックでは、非円形部分は、載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が直線状となっていることも好ましい。シールリングのうち、基板のオリフラ等に対応する非円形部分の形状は、直線状とされる場合が多い。このような場合でも、基板への支持力のバランスを十分に保つことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板に加えられる支持力のバランスを保ち、基板の撓みを抑制することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
図2図1の静電チャックが備える誘電体基板の構成を示す図である。
図3】誘電体基板におけるシールリング及びドットの配置について説明するための図である。
図4】誘電体基板におけるシールリング及びドットの配置について説明するための図である。
図5】誘電体基板におけるシールリング及びドットの配置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0023】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは「被吸着物」に該当するものであり、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0024】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0025】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0026】
誘電体基板100のうち図1における上方側の面110は、基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち図1における下方側の面120は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0027】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。給電路13を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、本実施形態のように所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよいが、所謂「双極」の電極として2つ設けられていてもよい。
【0028】
図1においては、給電路13の全体が簡略化して描かれている。給電路13のうち誘電体基板100の内部の部分は、例えば、導電体の充填された細長いビア(穴)として構成されており、その下端には不図示の電極端子が設けられている。給電路13のうち後述のベースプレート200を貫いている部分は、上記の電極端子に一端が接続された導電性の金属部材(例えばバスバー)である。ベースプレート200には、給電路13を挿通するための不図示の貫通穴が形成されている。当該貫通穴の内面と給電路13との間には、例えば円筒状の絶縁部材が設けられていてもよい。
【0029】
図1に示されるように、誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、空間SPには、後述のガス穴140等を介して外部から温度調整用の不活性ガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間に不活性ガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用の不活性ガスとしては、本実施形態ではヘリウムガスが用いられるが、ヘリウムガスとは異なる種類のガスであってもよい。
【0030】
図2は、誘電体基板100を上面視で描いた図である。同図に示されるように、載置面である面110上にはシールリング150やドット160が設けられており、上記の空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0031】
シールリング150は、空間SPを区画する壁として設けられた環状の突起である。シールリング150は複数設けられており、上面視において略同心円状に並んでいる。それぞれのシールリング150の先端面(図1における上端面)は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。本実施形態では、計4つのシールリング150が設けられており、これにより空間SPは4つに分けられている。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0032】
図1図2において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング150は、次に述べるドット160と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0033】
ドット160は、底面116から突出する円形の突起である。図2に示されるように、ドット160は複数設けられており、誘電体基板100の載置面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット160の上端面は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット160を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0034】
空間SPの底面116には、溝113が形成されている。溝113は、底面116から更に面120側へと後退させるように形成された溝である。溝113は、ガス穴140から供給されるヘリウムガスを、空間SP内に素早く拡散させ、空間SP内の圧力分布を短時間のうちに略均一とすることを目的として形成されている。
【0035】
誘電体基板100には、面120から面110側に向かって垂直に伸びるガス穴140が形成されている。ガス穴140は、空間SPにガスを供給するための穴である。図1図2に示されるように、ガス穴140のうち面110側の端部は、溝113の底面において開口している。誘電体基板100において、ガス穴140は複数形成されており、これらが溝113に沿って並んでいる。本実施形態では、4つに区分された空間SPのそれぞれに対して、ガス穴140が複数個ずつ繋がっている。
【0036】
尚、図2においては図示の便宜上、ガス穴140の直径が溝113の幅よりも大きくなっているように描かれているが、図1に示されるように、実際のガス穴140の直径は溝113の幅よりも小さい。ガス穴140が溝113の内側に収まるように、ガス穴140の位置において、溝113の幅が局所的に大きくなっていてもよい。
【0037】
図1に示されるように、ガス穴140のうち面120側の部分は、面110側の部分に比べて拡径されており、その内側には通気プラグ145が配置されている。通気プラグ145は、例えばアルミナにより形成された多孔質体であり、全体が通気性を有している。このような通気プラグ145をガス穴140の内側に配置することで、ガス穴140におけるガスの流れを確保しながらも、ガス穴140を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0038】
図2において符号「115」が付されているのは、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンが挿通される穴である。当該穴のことを、以下では「リフトピン穴115」とも称する。リフトピン穴115は計3つ形成されており、これらが120度等配となるように配置されている。リフトピン穴115を通じて上下に移動するリフトピンにより、誘電体基板100の面110に対する基板Wの着脱が行われる。リフトピン穴115の周囲には、リフトピン穴115と空間SPとの間を隔てるためのシール面が形成されていてもよい。
【0039】
図2において符号「101」が付されている部分においては、上面視における誘電体基板100の外形が円弧状ではなく直線状となっている。当該部分は、基板W(シリコンウェハ)に設けられた位置合わせ用のオリフラ又はノッチと対応する部分である。当該部分のことを、以下では「オリフラ部101」とも称する。尚、誘電体基板100にオリフラ部101が設けられておらず、上面視における誘電体基板100の外形が完全な円形となっているような態様であってもよい。ただし、この場合であっても、誘電体基板100のシールリング150には後述の非円形部分151A、152Aが設けられる。
【0040】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持する略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属材料により形成されている。ベースプレート200のうち、図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。
【0041】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。本実施形態では、上記接着剤としてシリコーン接着剤を用いている。ただし、接合層300は、他の種類の接着剤を硬化させたものであってもよい。いずれの場合であっても、誘電体基板100とベースプレート200との間の熱抵抗が小さくなるように、接合層300の材料としては、可能な限り熱伝導率が高い材料を用いるのが好ましい。
【0042】
図1に示されるように、ベースプレート200には、面210から、その反対側の面220側に向かって垂直に伸びるガス穴240が形成されている。ガス穴240は、上面視において誘電体基板100のガス穴140と重なる位置、のそれぞれに形成されており、接合層300に設けられた貫通穴310を介してガス穴140に連通されている。ガス穴240は、誘電体基板100のガス穴140と共に、空間SPに向けてヘリウムガスを供給するための経路の一部となっている。
【0043】
図1に示されるように、ガス穴240のうち面210側の部分は、面220側の部分に比べて拡径されており、その内側には通気プラグ245が配置されている。通気プラグ245は、例えばアルミナにより形成された多孔質体であり、全体が通気性を有している。このような通気プラグ245をガス穴240の内側に配置することで、ガス穴240におけるガスの流れを確保しながらも、ガス穴240を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0044】
尚、ガス穴240は、本実施形態のように全体が直線状に伸びるように形成されていてもよいが、面220に向かう途中で屈曲するように形成されていてもよい。また、面210側の複数のガス穴240を、ベースプレート200の内部において少数の流路に集約した上で、当該流路を面220側まで伸ばすような構成としてもよい。
【0045】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路250が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路250に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0046】
ベースプレート200のうち、上面視においてリフトピン穴115と重なる位置のそれぞれには、リフトピンを通すための不図示の貫通穴が形成されている。
【0047】
ベースプレート200の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜は、ベースプレート200の表面の全体ではなく一部のみを覆うように形成されてもよい。例えば、面210や面220を除く側面部分、すなわち、半導体製造装置の内部においてプラズマ等に曝される露出部分のみを覆うように絶縁膜が形成されてもよい。それとは異なり、少なくとも面210の全体を含む範囲を覆うように絶縁膜が形成されてもよい。絶縁膜としては、例えば、溶射により形成されたアルミナの膜を用いることができる。ベースプレート200の表面を絶縁膜で覆っておくことにより、ベースプレート200の絶縁耐圧を高めることができる。
【0048】
誘電体基板100に設けられたシールリング150の形状やドット160の配置について、更に説明する。図2に示される4つのシールリング150のうち、最も外側に配置されているシールリング150のことを、以下では「第1シールリング151」とも称する。第1シールリング151は、載置面である面110のうち、最も外周端となる位置に配置されたシールリング150、ということができる。
【0049】
また、第1シールリング151の1つ内側に配置されているシールリング150のことを、以下では「第2シールリング152」とも称する。第2シールリング152は、第1シールリング151との間に他のシールリング150を挟むことなく、第1シールリング151の内側となる位置に配置されたシールリング150、ということができる。
【0050】
図3には、説明の便宜のために、図2に示される複数のシールリング150及び複数のドット160のうち、一部のみが抜き出して描かれている。
【0051】
第1シールリング151の内側において、第1シールリング151の形状に沿って1列に並んでいる複数のドット160のことを、以下では「第1ドット群」とも称する。第1ドット群は、第1シールリング151との間において他のドット160を挟むことなく、第1シールリング151の内側で一列に並んでいる複数のドット160である。第1ドット群に属するそれぞれのドット160のことを、以下では「ドット161」とも表記する。
【0052】
第2シールリング152の内側において、第2シールリング152の形状に沿って1列に並んでいる複数のドット160のことを、以下では「第2ドット群」とも称する。第2ドット群は、第2シールリング152との間において他のドット160を挟むことなく、第2シールリング152の内側で一列に並んでいる複数のドット160である。第2ドット群に属するそれぞれのドット160のことを、以下では「ドット162」とも表記する。
【0053】
図3においては、第1ドット群に含まれる全てのドット161と、第2ドット群に含まれる全てのドット162と、が図示されており、それ以外のドット160については図示が省略されている。
【0054】
上面視における第1シールリング151の形状は概ね円形である。ただし、第1シールリング151のうちオリフラ部101の近傍の部分(図3においてハッチングが付されている部分)は、円弧状とはなっておらず、オリフラ部101と平行な直線状に伸びている。つまり、第1シールリング151のうち当該部分は、上面視における形状が円形から外れている部分、ということができる。当該部分のことを、以下では「非円形部分151A」とも称する。
【0055】
上面視における第2シールリング152の形状も概ね円形である。ただし、第2シールリング152のうちオリフラ部101の近傍の部分(図3においてハッチングが付されている部分)は、やはり円弧状とはなっておらず、オリフラ部101と平行な直線状に伸びている。つまり、第2シールリング152のうち当該部分は、上面視における形状が円形から外れている部分、ということができる。当該部分のことを、以下では「非円形部分152A」とも称する。
【0056】
第1ドット群に属するドット161のうち、非円形部分151Aと隣り合っているドット161(図3においてハッチングが付されており、符号「161A」が付されているもの)は、非円形部分151Aと平行に直線状に並んでいる。第1ドット群に属するドット161のうち上記以外のドット161は、いずれも円弧状に並んでいる。つまり、第1ドット群に属するそれぞれのドット161は、非円形部分151Aと隣り合っているものも含めて、全てが第1シールリング151の形状に沿って環状に並ぶように配置されている。
【0057】
同様に、第2ドット群に属するドット162のうち、非円形部分152Aと隣り合っているドット162(図3においてハッチングが付されており、符号「162A」が付されているもの)は、非円形部分152Aと平行に直線状に並んでいる。第2ドット群に属するドット162のうち上記以外のドット162は、いずれも円弧状に並んでいる。つまり、第2ドット群に属するそれぞれのドット162は、非円形部分152Aと隣り合っているものも含めて、全てが第2シールリング152の形状に沿って環状に並ぶように配置されている。
【0058】
図4は、図3の一部を拡大して示す図である。図4に示される一点鎖線DL1は、第1シールリング151の幅方向中央となる位置を示す線である。ドット161の中心C1から一点鎖線DL1までの距離のことを、ここでは、当該ドット161から第1シールリング151までの「距離」と定義する。本実施形態では、第1ドット群に含まれる全てのドット161について、第1シールリング151までの距離がいずれも同じL1となるように、各ドット161が配置されている。
【0059】
図4に示される一点鎖線DL2は、第2シールリング152の幅方向中央となる位置を示す線である。ドット162の中心C2から一点鎖線DL2までの距離のことを、ここでは、当該ドット162から第2シールリング152までの「距離」と定義する。本実施形態では、第2ドット群に含まれる全てのドット162について、第2シールリング152までの距離がいずれも同じL2となるように、各ドット162が配置されている。
【0060】
尚、上記のL1とL2とは互いに同じ距離であってもよいが、互いに異なる距離であってもよい。
【0061】
図5に示される点線DL12は、互いに隣り合う一対のドット161の各中心C1同士を繋ぐ直線である。それぞれの点線DL12の長さのことを、ここではドット161の「間隔」と定義する。本実施形態では、第1ドット群に含まれる全てのドット161について、上記の間隔が全て同じL21となるように、各ドット161が配置されている。
【0062】
図5に示される点線DL22は、互いに隣り合う一対のドット162の各中心C2同士を繋ぐ直線である。それぞれの点線DL22の長さのことを、ここではドット162の「間隔」と定義する。本実施形態では、第2ドット群に含まれる全てのドット162について、上記の間隔が全て同じL22となるように、各ドット162が配置されている。
【0063】
以上のような構成としたことの利点について説明する。従来の静電チャックにおいては、全てのドット160が、シールリング150における非円形部分151A等の存在を考慮することなく、例えば互いに等間隔に並ぶよう載置面の全体において規則的に配置されるのが一般的であった。このため、シールリング150のうち非円形部分151A等の近傍となる位置においては、ドット160とシールリング150との間が局所的に狭くなってしまったり、逆に広くなってしまったりすることがあった。
【0064】
非円形部分151A等の近傍におけるドット160の配置によっては、基板Wに加えられる支持力のバランスが崩れてしまい、基板の撓み量が大きくなってしまう可能性が有った。しかしながら、基板Wの撓みは、基板Wにおける局所的な温度上昇や温度低下等の原因となり得るため、好ましくない。
【0065】
そこで、本実施形態では上記のように、第1シールリング151の内側では、非円形部分151Aを含む第1シールリング151の形状に沿って環状に並ぶよう、複数のドット161(第1ドット群)を配置している。同様に、第2シールリング152の内側では、非円形部分152Aを含む第2シールリング152の形状に沿って環状に並ぶよう、複数のドット162(第2ドット群)を配置している。
【0066】
このような構成においては、第1ドット群に含まれる各ドット161から第1シールリング151までの距離L1が、全周に亘り概ね均等となるので、第1シールリング151の内側において、基板Wへの支持力のバランスを保つことができる。同様に、第2ドット群に含まれる各ドット162から第2シールリング152までの距離も、全周に亘り概ね均等となるので、第2シールリング152の内側においても、基板Wへの支持力のバランスを保つことができる。
【0067】
基板Wのうち、非円形部分(151A、152A)やその近傍の部分、すなわち、比較的撓みの生じやすかった部分に対する支持力のバランスが保たれるので、基板Wの撓みを従来に比べ抑制することができる。
【0068】
図4を参照しながら先に説明したように、本実施形態では、第1ドット群に含まれるそれぞれのドット161が、第1シールリング151までの距離において互いに同じとなっている。それぞれのドット161から第1シールリング151までの距離が、非円形部分151Aも含めていずれも同一の距離L1となるので、第1シールリング151やその近傍部分における基板Wの撓みを十分に抑制することができる。
【0069】
ただし、基板Wの撓みを十分に抑制し得るのであれば、ドット161から第1シールリング151までの距離が、一部のドット161については他と異なっていてもよい。
【0070】
同様に、本実施形態では、第2ドット群に含まれるそれぞれのドット162が、第2シールリング152までの距離において互いに同じとなっている。それぞれのドット162から第2シールリング152までの距離が、非円形部分152Aも含めていずれも同一の距離L2となるので、第2シールリング152やその近傍部分における基板Wの撓みについても十分に抑制することができる。
【0071】
ただし、基板Wの撓みを十分に抑制し得るのであれば、ドット162から第2シールリング152までの距離が、一部のドット162については他と異なっていてもよい。
【0072】
図5を参照しながら先に説明したように、本実施形態では、第1ドット群に含まれるそれぞれのドット161が、距離L21を空けて等間隔で並ぶように配置されている。第1ドット群の各ドット161を等間隔で並ぶよう配置することで、基板Wへの支持力のバランスを十分に保つことができる。
【0073】
ただし、基板Wの撓みを十分に抑制し得るのであれば、互いに隣り合うドット161の間隔が、一部においては他と異なっていてもよい。
【0074】
第1ドット群に含まれる複数のドット161のうち、上記のように等間隔で配置されるのは、非円形部分151Aとは異なる位置において円弧状に並んでいるドット161のみであってもよく、非円形部分151Aにおいて直線状に並んでいるドット161Aのみであってもよい。また、それぞれのドット161を等間隔に並ぶように配置した上で、非円形部分151Aとは異なる位置において並んでいるドット161の配置間隔と、非円形部分151Aにおいて並んでいるドット161Aの配置間隔とを、互いに異ならせてもよい。
【0075】
第1ドット群と同様に、本実施形態では、第2ドット群に含まれるそれぞれのドット162も、距離L22を空けて等間隔で並ぶように配置されている。第2ドット群の各ドット162についても等間隔で並ぶよう配置することで、基板Wへの支持力のバランスを更に十分に保つことができる。
【0076】
ただし、基板Wの撓みを十分に抑制し得るのであれば、互いに隣り合うドット162の間隔が、一部においては他と異なっていてもよい。
【0077】
第2ドット群に含まれる複数のドット162のうち、上記のように等間隔で配置されるのは、非円形部分152Aとは異なる位置において円弧状に並んでいるドット162のみであってもよく、非円形部分152Aにおいて直線状に並んでいるドット162Aのみであってもよい。また、それぞれのドット162を等間隔に並ぶように配置した上で、非円形部分152Aとは異なる位置において並んでいるドット162の配置間隔と、非円形部分152Aにおいて並んでいるドット162Aの配置間隔とを、互いに異ならせてもよい。
【0078】
図3等に示されるように、第1シールリング151と第2シールリング152との間に配置されたドット160は、いずれも第1ドット群に含まれるドット161となっており、これらが1列に並ぶよう配置されている。
【0079】
基板Wのうち最外周部分は、処理中にはその内側に比べて高温となりやすい傾向がある。そこで本実施形態では、第1シールリング151と第2シールリング152との間を、複数のドット161が1列のみ並ぶ程度に互いに近づけておくことで、上記の最外周部分の温度調整を可能としている。また、第1シールリング151と第2シールリング152との間において一列に並ぶドット161は、これまで述べたように第1シールリング151の形状に沿って並んでいるため、基板Wへの支持力のバランスが保たれる。
【0080】
第1ドット群に含まれる複数のドット161には、本実施形態のように、非円形部分151Aに対し隣り合う位置に形成されたもの(つまりドット161A)が含まれることが好ましい。同様に、第2ドット群に含まれる複数のドット162には、本実施形態のように、非円形部分152Aに対し隣り合う位置に形成されたもの(つまりドット162A)が含まれることが好ましい。このような構成とすることで、一部のドット160がシールリング150に近接してしまうことを防止しながらも、全周に亘って概ね等間隔で並ぶようにドット160を配置することができる。尚、上記における「非円形部分151Aに対し隣り合う位置に形成されたもの」とは、複数のドット161のうち、その径方向外側となる位置に非円形部分151Aがあるようなドット161、のことである。「非円形部分152Aに対し隣り合う位置に形成されたもの」の意味についても同様である。
【0081】
本実施形態では、非円形部分151A、152Aはいずれも、上面視における形状が直線状となっている。このような形状は、基板Wのオリフラの形状に合わせたものである。例えば、基板Wのオリフラではなくノッチが形成されている場合には、非円形部分151A等の形状を直線以外の形状としてもよい。
【0082】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0083】
10:静電チャック
100:誘電体基板
110:面
150:シールリング
151:第1シールリング
152:第2シールリング
151A,152A:非円形部分
160,161,162:ドット
W:基板
図1
図2
図3
図4
図5