(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175422
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241211BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241211BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241211BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/205
H01L21/31 C
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093201
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】上藤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄基
(72)【発明者】
【氏名】板倉 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 康介
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
【テーマコード(参考)】
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045AF03
5F045EJ03
5F045EM02
5F045EM05
5F045EM07
5F045EM09
5F131AA03
5F131BA04
5F131CA08
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB43
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】接合層を介したガスの漏出を抑制することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に形成された環状の突起であるシールリング151と、を備える。シールリング151は非円形部分151Aを有する。誘電体基板100には、シールリング151の内側の空間SPにガスを供給するための複数のガス穴140が形成されている。複数のガス穴140は、シールリング151の形状に沿って環状に並ぶように配置された環状ガス穴群を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に形成された環状の突起であって、その先端面が前記載置面の一部となっているシールリングと、を備え、
前記シールリングは、前記載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が円形から外れている部分、である非円形部分を有し、
前記誘電体基板には、前記シールリングの内側の空間にガスを供給するための複数のガス穴が形成されており、
複数の前記ガス穴は、前記シールリングの形状に沿って環状に並ぶように配置された複数の前記ガス穴、である環状ガス穴群を含むことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記環状ガス穴群に含まれるそれぞれの前記ガス穴は、等間隔で並ぶように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記環状ガス穴群に含まれるそれぞれの前記ガス穴は、前記シールリングまでの距離において互いに同じであることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記環状ガス穴群に含まれる複数の前記ガス穴には、前記非円形部分に対し隣り合う位置に形成されたものが含まれることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記非円形部分は、前記載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が直線状となっていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置等の半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
下記特許文献1に記載されているように、誘電体基板と基板との間の空間には、処理中における基板の温度調整等を目的として、ヘリウム等の不活性ガスが供給される。誘電体基板と基板との間で上記空間を確保するために、誘電体基板のうち基板側の面には、環状の突起であるシールリングが形成される。不活性ガスは、誘電体基板に形成された複数のガス穴を通じて上記空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
載置面に対し垂直な方向から見た場合のシールリングの形状は、全体において円形とされることもあるが、例えばシリコンウェハのオリフラやノッチと対応する部分のみを直線状とするなど、一部においては非円形の形状とされることもある。
【0006】
一方、ガス穴は、主に上記空間における圧力分布を均等にすることを考慮し、上記の非円形部分とは無関係に配置されるのが一般的であった。このため、シールリングのうち特に非円形部分の近傍となる位置においては、ガス穴とシールリングとの間が局所的に狭くなってしまう可能性があった。
【0007】
誘電体基板に設けられたそれぞれのガス穴は、接合層及びベースプレートのそれぞれを貫くように形成されたガス流路に繋がっている。このため、一部のガス穴がシールリングに接近し過ぎている場合には、ガス流路のうち接合層を通る部分から、静電チャックの外周面側に向けてガスが漏出してしまう可能性がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、接合層を介したガスの漏出を抑制することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に形成された環状の突起であって、その先端面が載置面の一部となっているシールリングと、を備える。シールリングは、載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が円形から外れている部分、である非円形部分を有する。誘電体基板には、シールリングの内側の空間にガスを供給するための複数のガス穴が形成されている。複数のガス穴は、シールリングの形状に沿って環状に並ぶように配置された複数のガス穴、である環状ガス穴群を含む。
【0010】
このような構成の静電チャックでは、シールリングが、例えば基板のオリフラ等に対応する非円形部分を有している。また、シールリングの内側では、非円形部分を含むシールリングの形状に沿って並ぶように環状ガス穴群が配置されている。
【0011】
このような構成においては、環状ガス穴群に含まれる各ガス穴からシールリングまでの距離が、全周に亘り概ね均等となるので、一部のガス穴が非円形部分に接近し過ぎてしまうことが無い。接合層内のガス流路から、接合層の外周端までの距離を十分に確保することができるので、接合層を介した外周面側へのガスの漏出を十分に抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る静電チャックでは、環状ガス穴群に含まれるそれぞれのガス穴は、等間隔で並ぶように配置されていることも好ましい。このような構成とすることで、ガス圧力の面内分布が概ね均等になるという効果が更に得られる。
【0013】
また、本発明に係る静電チャックでは、環状ガス穴群に含まれるそれぞれのガス穴は、シールリングまでの距離において互いに同じであることも好ましい。このような構成とすることで、接合層を介したガスの漏出を十分に抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る静電チャックでは、環状ガス穴群に含まれる複数のガス穴には、非円形部分に対し隣り合う位置に形成されたものが含まれることも好ましい。このような構成とすることで、一部のガス穴がシールリングに近接してしまうことを防止しながらも、全周に亘って概ね等間隔で並ぶようにガス穴を配置することができる。
【0015】
また、本発明に係る静電チャックでは、非円形部分は、載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が直線状となっていることも好ましい。シールリングのうち、基板のオリフラ等に対応する非円形部分の形状は、直線状とされる場合が多い。このような場合でも、一部のガス穴がシールリングに近接してしまうことを防止し、接合層を介したガスの漏出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接合層を介したガスの漏出を抑制することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1の静電チャックが備える誘電体基板の構成を示す図である。
【
図3】誘電体基板におけるシールリング及びガス穴の配置について説明するための図である。
【
図4】誘電体基板におけるシールリング及びガス穴の配置について説明するための図である。
【
図5】誘電体基板におけるシールリング及びガス穴の配置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0019】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは「被吸着物」に該当するものであり、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0020】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0021】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al2O3)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0022】
誘電体基板100のうち
図1における上方側の面110は、基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち
図1における下方側の面120は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0023】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。給電路13を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、本実施形態のように所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよいが、所謂「双極」の電極として2つ設けられていてもよい。
【0024】
図1においては、給電路13の全体が簡略化して描かれている。給電路13のうち誘電体基板100の内部の部分は、例えば、導電体の充填された細長いビア(穴)として構成されており、その下端には不図示の電極端子が設けられている。給電路13のうち後述のベースプレート200を貫いている部分は、上記の電極端子に一端が接続された導電性の金属部材(例えばバスバー)である。ベースプレート200には、給電路13を挿通するための不図示の貫通穴が形成されている。当該貫通穴の内面と給電路13との間には、例えば円筒状の絶縁部材が設けられていてもよい。
【0025】
図1に示されるように、誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、空間SPには、後述のガス穴140等を介して外部から温度調整用の不活性ガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間に不活性ガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用の不活性ガスとしては、本実施形態ではヘリウムガスが用いられるが、ヘリウムガスとは異なる種類のガスであってもよい。
【0026】
図2は、誘電体基板100を上面視で描いた図である。同図に示されるように、載置面である面110上にはシールリング150やドット160が設けられており、上記の空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0027】
シールリング150は、空間SPを区画する壁として設けられた環状の突起である。シールリング150は複数設けられており、上面視において略同心円状に並んでいる。それぞれのシールリング150の先端面(
図1における上端面)は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。本実施形態では、計4つのシールリング150が設けられており、これにより空間SPは4つに分けられている。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0028】
図1や
図2において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング150は、次に述べるドット160と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0029】
ドット160は、底面116から突出する円形の突起である。
図2に示されるように、ドット160は複数設けられており、誘電体基板100の載置面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット160の上端面は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット160を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0030】
空間SPの底面116には、溝113が形成されている。溝113は、底面116から更に面120側へと後退させるように形成された溝である。溝113は、ガス穴140から供給されるヘリウムガスを、空間SP内に素早く拡散させ、空間SP内の圧力分布を短時間のうちに略均一とすることを目的として形成されている。
【0031】
誘電体基板100には、面120から面110側に向かって垂直に伸びるガス穴140が形成されている。ガス穴140は、シールリング151の内側の空間SPにガスを供給するための穴である。
図1や
図2に示されるように、ガス穴140のうち面110側の端部は、溝113の底面において開口している。誘電体基板100において、ガス穴140は複数形成されており、これらが溝113に沿って並んでいる。本実施形態では、4つに区分された空間SPのそれぞれに対して、ガス穴140が複数個ずつ繋がっている。
【0032】
尚、
図2においては図示の便宜上、ガス穴140の直径が溝113の幅よりも大きくなっているように描かれているが、実際のガス穴140は、その全体が溝113の内側に収まっている。
図4に示されるように、本実施形態では、ガス穴140が溝113の内側に収まるよう、ガス穴140の位置において溝113の幅が局所的に大きくなっている。
【0033】
図1に示されるように、ガス穴140のうち面120側の部分は、面110側の部分に比べて拡径されており、その内側には通気プラグ145が配置されている。通気プラグ145は、例えばアルミナにより形成された多孔質体であり、全体が通気性を有している。このような通気プラグ145をガス穴140の内側に配置することで、ガス穴140におけるガスの流れを確保しながらも、ガス穴140を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0034】
図2において符号「115」が付されているのは、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンが挿通される穴である。当該穴のことを、以下では「リフトピン穴115」とも称する。リフトピン穴115は計3つ形成されており、これらが120度等配となるように配置されている。リフトピン穴115を通じて上下に移動するリフトピンにより、誘電体基板100の面110に対する基板Wの着脱が行われる。リフトピン穴115の周囲には、リフトピン穴115と空間SPとの間を隔てるためのシール面が形成されていてもよい。
【0035】
図2において符号「101」が付されている部分においては、上面視における誘電体基板100の外形が円弧状ではなく直線状となっている。当該部分は、基板W(シリコンウェハ)に設けられた位置合わせ用のオリフラ又はノッチと対応する部分である。当該部分のことを、以下では「オリフラ部101」とも称する。
【0036】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持する略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属材料により形成されている。ベースプレート200のうち、
図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。
【0037】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。本実施形態では、上記接着剤としてシリコーン接着剤を用いている。ただし、接合層300は、他の種類の接着剤を硬化させたものであってもよい。いずれの場合であっても、誘電体基板100とベースプレート200との間の熱抵抗が小さくなるように、接合層300の材料としては、可能な限り熱伝導率が高い材料を用いるのが好ましい。
【0038】
図1に示されるように、ベースプレート200には、面210から、その反対側の面220側に向かって垂直に伸びるガス穴240が形成されている。ガス穴240は、上面視において誘電体基板100のガス穴140と重なる位置、のそれぞれに形成されており、接合層300に設けられた貫通穴310を介してガス穴140に連通されている。ガス穴240は、誘電体基板100のガス穴140と共に、空間SPに向けてヘリウムガスを供給するためのガス流路の一部となっている。
【0039】
図1に示されるように、ガス穴240のうち面210側の部分は、面220側の部分に比べて拡径されており、その内側には通気プラグ245が配置されている。通気プラグ245は、例えばアルミナにより形成された多孔質体であり、全体が通気性を有している。このような通気プラグ245をガス穴240の内側に配置することで、ガス穴240におけるガスの流れを確保しながらも、ガス穴240を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0040】
尚、ガス穴240は、本実施形態のように全体が直線状に伸びるように形成されていてもよいが、面220に向かう途中で屈曲するように形成されていてもよい。また、面210側の複数のガス穴240を、ベースプレート200の内部において少数の流路に集約した上で、当該流路を面220側まで伸ばすような構成としてもよい。
【0041】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路250が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路250に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0042】
ベースプレート200のうち、上面視においてリフトピン穴115と重なる位置のそれぞれには、リフトピンを通すための不図示の貫通穴が形成されている。
【0043】
ベースプレート200の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜は、ベースプレート200の表面の全体ではなく一部のみを覆うように形成されてもよい。例えば、面210や面220を除く側面部分、すなわち、半導体製造装置の内部においてプラズマ等に曝される露出部分のみを覆うように絶縁膜が形成されてもよい。それとは異なり、少なくとも面210の全体を含む範囲を覆うように絶縁膜が形成されてもよい。絶縁膜としては、例えば、溶射により形成されたアルミナの膜を用いることができる。ベースプレート200の表面を絶縁膜で覆っておくことにより、ベースプレート200の絶縁耐圧を高めることができる。
【0044】
誘電体基板100に設けられたシールリング150の形状やガス穴140等の配置について、更に説明する。
図2に示される4つのシールリング150のうち、最も外側に配置されているシールリング150のことを、以下では特に「シールリング151」とも称する。シールリング151は、載置面である面110のうち、最も外周端となる位置に配置されたシールリング150、ということができる。
【0045】
図3には、説明の便宜のために、
図2に示される複数のシールリング150及び複数のガス穴140のうち、一部のみが抜き出して描かれている。
【0046】
シールリング151の内側において、シールリング151の形状に沿って環状に且つ1列に並んでいる複数のガス穴140のことを、以下では「環状ガス穴群」とも称する。環状ガス穴群は、シールリング151との間において他のガス穴140を挟むことなく、シールリング151の内側で一列に並んでいる複数のガス穴140である。環状ガス穴群に属するそれぞれのガス穴140のことを、以下では「ガス穴141」とも表記する。
【0047】
図3においては、環状ガス穴群に含まれる全てのガス穴141が図示されており、それ以外のガス穴140については図示が省略されている。また、
図3においては、誘電体基板100に設けられた複数の溝113のうち、最外周となる位置に配置された1本の溝113のみが図示されており、その他の溝113については図示が省略されている。ガス穴141はいずれも、
図3に示される1本の溝113と重なる位置に配置されている。換言すれば、
図3に示される溝113は、それぞれのガス穴141の位置を通るように環状に引き回されている。
【0048】
上面視におけるシールリング151の形状は概ね円形である。ただし、シールリング151のうちオリフラ部101の近傍の部分(
図3においてハッチングが付されている部分)は、円弧状とはなっておらず、オリフラ部101と平行な直線状に伸びている。つまり、シールリング151のうち当該部分は、上面視における形状が円形から外れている部分、ということができる。当該部分のことを、以下では「非円形部分151A」とも称する。
【0049】
図3に示される溝113の形状も、上面視において概ね円形である。当該溝113のうち、オリフラ部101の近傍の部分は、シールリング151と同様にやはり円弧状とはなっておらず、オリフラ部101と平行な直線状に伸びている。溝113のうちこのように直線状に伸びている部分のことを、以下では「非円形部分113A」とも称する。溝113は、この非円形部分113Aも含めた全体が、その外側にあるシールリング151に対し概ね平行に伸びるように形成されている。
【0050】
環状ガス穴群に含まれるそれぞれのガス穴141は、このような形状の溝113上の各一に配置されている。ガス穴141のうち、溝113の非円形部分113Aと重なる位置に配置されたガス穴141のことを、以下では特に「ガス穴141A」とも称する。本実施形態では、ガス穴141Aは1つだけであるが、ガス穴141Aが複数あってもよい。この場合、複数のガス穴141Aは、非円形部分113Aの上において直線状に並ぶこととなる。それぞれのガス穴141が以上のように配置された結果、環状ガス穴群は先に述べたように、シールリング151の形状に沿って環状に且つ1列に並んでいる。
【0051】
図4は、
図3の一部を拡大して示す図である。
図4に示される一点鎖線DL1は、シールリング151の幅方向中央となる位置を示す線である。ガス穴141の中心C1から一点鎖線DL1までの距離のことを、ここでは、当該ガス穴141からシールリング151までの「距離」と定義する。本実施形態では、環状ガス穴群に含まれる全てのガス穴141について、シールリング151までの距離がいずれも同じL1となるように、各ガス穴141が配置されている。
【0052】
図5に示される点線DL2は、互いに隣り合う一対のガス穴141の各中心C1同士を繋ぐ直線である。それぞれの点線DL2の長さのことを、ここではガス穴141の「間隔」と定義する。本実施形態では、環状ガス穴群に含まれる全てのガス穴141について、上記の間隔が全て同じL2となるように、各ガス穴141が配置されている。
【0053】
以上のような構成としたことの利点について説明する。従来の静電チャックにおいては、全てのガス穴141が、シールリング150における非円形部分151A等の存在を考慮することなく、例えば全体が円形に並ぶように配置されるのが一般的であった。このため、シールリング151のうち非円形部分151Aの近傍となる位置においては、ガス穴141とシールリング150との間が局所的に狭くなってしまうことがあった。
【0054】
先に述べたように、誘電体基板100に設けられたそれぞれのガス穴140は、接合層300及びベースプレート200のそれぞれを貫くように形成されたガス流路に繋がっている。このため、一部のガス穴141がシールリング151に接近し過ぎている場合には、ガス流路のうち接合層300を通る部分から、静電チャック10の外周面側に向けてガスが漏出してしまう可能性がある。
【0055】
つまり、全てのガス穴141を円形に並ぶように配置した場合には、オリフラ部101の近傍において、接合層300に設けられた貫通穴310(
図1を参照)から誘電体基板100の外側面(つまりオリフラ部101)までの距離が短くなってしまう。その結果、貫通穴310から接合層300の界面等を通って、ガスがオリフラ部101側へと漏出してしまう可能性がある。
【0056】
そこで、本実施形態では上記のように、シールリング151の内側では、非円形部分151Aを含むシールリング151の形状に沿って環状に並ぶよう、複数のガス穴141(環状ガス穴群)を配置している。
【0057】
このような構成においては、環状ガス穴群に含まれる各ガス穴141からシールリング151までの距離L1が、一部において短くなりすぎることはなく全周に亘り概ね均等となる。これにより、一部のガス穴141が非円形部分151Aに接近し過ぎてしまうことが無い。接合層300内のガス流路(貫通穴310)から、接合層300の外周端までの距離を十分に確保することができるので、接合層300を介した外周面側へのガスの漏出を十分に抑制することができる。
【0058】
図4を参照しながら先に説明したように、本実施形態では、環状ガス穴群に含まれるそれぞれのガス穴141が、シールリング151までの距離において互いに同じとなっている。それぞれのガス穴141からシールリング151までの距離が、非円形部分151Aも含めていずれも同一の距離L1となるので、接合層300を介したガスの漏出を十分に抑制することができる。
【0059】
ただし、基板Wの撓みを十分に抑制し得るのであれば、ガス穴141からシールリング151までの距離が、一部のガス穴141については他と異なっていてもよい。
【0060】
図5を参照しながら先に説明したように、本実施形態では、環状ガス穴群に含まれるそれぞれのガス穴141が、距離L2を空けて等間隔で並ぶように配置されている。環状ガス穴群の各ガス穴141を等間隔で並ぶよう配置することで、空間SPにおけるガス圧力の面内分布が概ね均等になるという効果が更に得られる。
【0061】
環状ガス穴群に含まれる複数のガス穴141のうち、上記のように等間隔で配置されるのは、非円形部分151Aとは異なる位置において円弧状に並んでいるガス穴141のみであってもよく、非円形部分151Aにおいて直線状に並んでいるガス穴141Aのみであってもよい。また、それぞれのガス穴141を等間隔に並ぶように配置した上で、非円形部分151Aとは異なる位置において並んでいるガス穴141の配置間隔と、非円形部分151Aにおいて並んでいるガス穴141Aの配置間隔とを、互いに異ならせてもよい。
【0062】
環状ガス穴群に含まれる複数のガス穴141には、本実施形態のように、非円形部分151Aに対し隣り合う位置に形成されたもの(つまりガス穴141A)が含まれることが好ましい。このような構成とすることで、一部のガス穴141がシールリング151に近接してしまうことを防止しながらも、全周に亘って概ね等間隔で並ぶようにガス穴141を配置することができる。尚、上記における「非円形部分151Aに対し隣り合う位置に形成されたもの」とは、複数のガス穴141のうち、その径方向外側となる位置に非円形部分151Aがあるようなガス穴141、のことである。
【0063】
本実施形態では、上面視における非円形部分151Aの形状が直線状となっている。このような形状は、基板Wのオリフラの形状に合わせたものである。例えば、基板Wのオリフラではなくノッチが形成されている場合には、非円形部分151A等の形状を直線以外の形状としてもよい。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0065】
10:静電チャック
100:誘電体基板
110:面
150,151:シールリング
151A:非円形部分
140,141:ガス穴
W:基板