(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175458
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】検査装置および選別装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20241211BHJP
B07C 5/342 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G01N21/85 A
B07C5/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093255
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 健志
(72)【発明者】
【氏名】檜和田 貫児
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
【テーマコード(参考)】
2G051
3F079
【Fターム(参考)】
2G051AA04
2G051AB01
2G051AB02
2G051BA01
2G051BA20
2G051BB02
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB02
2G051CB03
2G051DA08
2G051DA13
3F079AC15
3F079CA41
3F079CB29
3F079CC03
(57)【要約】
【課題】 光学式検査装置において、一つの光学センサ当たりの対象物の撮像可能領域を広げる。
【解決手段】 対象物の状態を検査するための検査装置は、対象物に回転力を付与するように構成された回転力付与部と、回転力によって回転しながら移送される対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、同一の対象物についてのエリアセンサの複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成された識別部と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の状態を検査するための検査装置であって、
前記対象物に回転力を付与するように構成された回転力付与部と、
前記回転力によって回転しながら移送される前記対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、
前記同一の対象物についての前記エリアセンサの複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて前記対象物の前記状態を識別するように構成された識別部と
を備える検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記回転力付与部は、前記対象物に前記回転力を付与するように構成されたフィーダを含み、
前記エリアセンサは、前記フィーダから落下してシュート、コンベアまたはローラを介することなく空中を移送される前記対象物を撮像するように配置された
検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置であって、
前記回転力付与部は、前記フィーダの下流側移送縁部から放出された前記対象物が部分的に衝突するように前記下流側移送縁部に隣接して配置された被衝突部材を含み、
前記エリアセンサは、前記被衝突部材への衝突の後に空中を移送される前記対象物を撮像するように配置された
検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記対象物を摺動的に移送するための摺動面を有するシュートを備え、
前記回転力付与部は、
前記シュートの摺動面上に配置された凸部を含み、
前記対象物が前記摺動面を摺動しているときに前記凸部に衝突することによって前記対象物に回転力が付与されるように構成された
検査装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の検査装置であって、
前記エリアセンサの視野の大きさおよび前記フレームレートは、前記対象物の回転に起因して前記同一の対象物を全周的に撮像できるように設定された
検査装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の検査装置であって、
前記検査装置は、前記エリアセンサとして、単一のエリアセンサのみを備える
検査装置。
【請求項7】
選別装置であって、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の検査装置と、
前記識別部の識別結果に基づいて前記対象物の選別を行うように構成された選別部と
を備える選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移送中の対象物に光源から光を照射した際に光学センサによって得られる光情報を使用して、対象物の状態(例えば、不良品であるか否か)を識別する光学式検査装置(以下、単に検査装置とも呼ぶ)が従来から知られている。例えば、下記の特許文献1は、そのような検査装置を搭載した選別装置を開示している。この選別装置は、シュートから滑り落ちた対象物をラインセンサで撮像して、不良品であると識別された対象物をエア噴射によって除去するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の検査装置は、改良の余地を残している。具体的には、対象物は立体的な形状を有しているので、一つのラインセンサでは、その視野に依存して、対象物の一部の領域しか撮像できない。撮像されない部分については、その状態を識別することができない。このことは、対象物全体として、識別精度の低下を招くことになる。異なる複数の角度から対象物をそれぞれ撮像する複数のラインセンサを設置すれば、このような識別精度の低下を抑制することができるが、ラインセンサの設置台数は、検査装置の大型化や高コスト化を避ける観点から、できるだけ少ない方が望ましい。このようなことから、一つの光学センサ当たりの対象物の撮像可能領域を広げることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本発明の第1の形態によれば、対象物の状態を検査するための検査装置が提供される。この検査装置は、対象物に回転力を付与するように構成された回転力付与部と、回転力によって回転しながら移送される対象物を、同一の対象物を複数回撮像可能なフレームレートで撮像するように構成されたエリアセンサと、同一の対象物についてのエリアセンサの複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて対象物の状態を識別するように構成された識別部と、を備えている。
【0007】
この検査装置によれば、回転している同一の対象物をエリアセンサが複数回撮像する。このため、対象物の回転軸線が延在する方向とは異なる角度から対象物が撮像されれば、同一の対象物の異なる複数の領域がそれぞれ撮像された複数の画像が得られる。したがって、一つの光学センサ(エリアセンサ)当たりの対象物の撮像可能領域を広げることができる。したがって、対象物の状態の識別精度を向上できる。あるいは、所望の識別精度を確保するために必要な光学センサの数を低減できる。なお、回転付与部は、必ずしも、全ての対象物に回転を付与するように構成されていなくてもよく、全ての対象物のうちの少なくとも一部に回転が付与されてもよい。
【0008】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、回転力付与部は、対象物に回転力を付与するように構成されたフィーダを含む。エリアセンサは、フィーダから落下してシュート、コンベアまたはローラを介することなく空中を移送される対象物を撮像するように配置される。この形態によれば、簡単な構成で対象物に回転力を付与できる。
【0009】
本発明の第3の形態によれば、第2の形態において、回転力付与部は、フィーダの下流側移送縁部から放出された対象物が部分的に衝突するように下流側移送縁部に隣接して配置された被衝突部材を含む。エリアセンサは、被衝突部材への衝突の後に空中を移送される対象物を撮像するように配置される。この形態によれば、対象物の被衝突部材への衝突によって、対象物の回転をより細かく制御できる。
【0010】
本発明の第4の形態によれば、第1の形態において、検査装置は、対象物を摺動的に移送するための摺動面を有するシュートを備えている。回転力付与部は、シュートの摺動面上に配置された凸部を含む。回転力付与部は、対象物が摺動面を摺動しているときに凸部に衝突することによって対象物に回転力が付与されるように構成される。この形態によれば、簡単な構成で対象物に回転力を付与できる。
【0011】
本発明の第5の形態によれば、第1ないし第4のいずれかの形態において、フレームレートは、対象物の回転に起因して同一の対象物を全周的に撮像できるように設定される。この形態によれば、一つのエリアセンサ当たりの対象物の撮像可能領域を最大化できる。
【0012】
本発明の第6の形態によれば、第1ないし第5のいずれかの形態において、検査装置は、エリアセンサとして、単一のエリアセンサのみを備えている。この形態によれば、第1ないし第5のいずれかの形態に基づいて所望の識別精度を確保しつつ、検査装置を小型化するとともに低コスト化することができる。
【0013】
本発明の第7の形態によれば、第1ないし第6のいずれかの形態において、回転力付与部は、(i)対象物の回転軸線が完全には規則的ではない方向に延在することと、(ii)対象物に多軸の回転力が付与され得ることと、のうちの少なくとも一方を満たすように、対象物に回転力を付与するように構成される。上記(i)によれば、対象物の形状に依存することなく(換言すれば、形状が均一ではない対象物や、対称的ではない形状を有する対象物を検査する場合であっても)、簡素な構成(例えば、第2ないし第4のいずれかの形態)で、対象物に回転力を容易に付与できる。上記(ii)によれば、同一の対象物を複数回撮像する際のエリアセンサの視野に対する同一の対象物の向きの自由度が増すので、一つのエリアセンサ当たりの対象物の撮像可能領域を広げることができる。
【0014】
「回転軸線が完全には規則的ではない方向に延在すること」とは、全ての対象物の各々の回転軸線の延在方向が完全に同一であることを除外することが意図されている。このため、上記(i)には、全ての対象物の各々の回転軸線がランダムな方向に延在する状態に加えて、全ての対象物の各々の回転軸線の延在方向に何らかの傾向(あるいは、偏り)が見られる状態も含まれ得る。例えば、上記(i)には、全ての対象物の各々の回転軸線の延在方向の発生頻度が、第1の方向、第2の方向および第3の方向の順に高い偏りを有する状態も含まれる。また、「対象物に多軸の回転力が付与され得ること」とは、全ての対象物のうちの少なくとも一部に対して多軸の回転力が付与されることを意図している。「多軸」には、延在方向が異なる複数の回転軸を同時に有する態様と、回転軸の延在方向が経時的に変化する態様と、が含まれ得る。多軸の回転力は、例えば、対象物の対称的ではない形状に起因して付与することができる。
【0015】
本発明の第8の形態によれば、第3の形態、および、第3の形態を含む第5ないし第7の形態のいずれかにおいて、被衝突部材は、下流側移送縁部よりも上方に位置する上方部分を含む。上方部分は、対象物が、上方部分に部分的に衝突した後、上方部分の上を通って落下するように配置される。この形態によれば、対象物の回転軸線の延在方向に関する発生分布(偏り)を制御できる。例えば、上方から見たフィーダによる対象物の放出方向に延在する回転軸線を有する対象物の数を低減できる。この場合、フィーダによる対象物の放出方向と、エリアセンサの視野と直交する方向と、が概ね一致するようにエリアセンサの視野を設定すれば、対象物の回転によって対象物の撮像可能領域が広げられる確率が高まる。
【0016】
本発明の第9の形態によれば、第8の形態において、被衝突部材は、下流側移送縁部に対する上方部分の傾斜角度および相対位置の少なくとも一方を変更可能に構成される。この形態によれば、対象物の回転軸線の延在方向に関する発生分布をより細かく制御できる。例えば、対象物の特性(例えば、大きさ、形状など)に応じて傾斜角度および相対位置の少なくとも一方が変更されてもよい。相対位置を変更可能に被衝突部材が構成される場合、上方から見たフィーダによる対象物の放出方向における下流側移送縁部と上方部分との離間距離が変更可能であってもよいし、下流側移送縁部に対する上方部分の突出距離が変更可能であってもよいし、それらの両方が変更可能であってもよい。
【0017】
本発明の第10の形態によれば、第3の形態、第3の形態を含む第5ないし第7の形態、第8の形態および第9の形態のいずれかにおいて、被衝突部材は、下流側移送縁部よりも下方に位置する下方部分を含む。下方部分は、対象物が、下方部分に部分的に衝突した後、下方部分を越えて落下するように配置される。この形態によれば、対象物の回転速度に関する発生分布(偏り)を制御できる。例えば、回転速度が相対的に大きい対象物の数を増加させることができる。この場合、対象物が所定の角度(例えば、360度)回転する間に当該対象物が移送される距離を小さくできる確率が高まる。その結果、対象物の撮像可能領域を広げるために必要な、一つのエリアセンサ当たりの視野を小さくできる。あるいは、エリアセンサの有限の視野内で、同一の対象物について、より広い領域を撮像できる確率が高まる。
【0018】
本発明の第11の形態によれば、第10の形態において、被衝突部材は、下流側移送縁部に対する下方部分の傾斜角度および相対位置の少なくとも一方を変更可能に構成される。この形態によれば、対象物の回転速度に関する発生分布をより細かく制御できる。例えば、対象物の特性(例えば、大きさ、形状など)に応じて傾斜角度および相対位置の少なくとも一方が変更されてもよい。相対位置を変更可能に被衝突部材が構成される場合、上下方向における下流側移送縁部と下方部分との離間距離が変更可能であってもよいし、上方から見たフィーダによる対象物の放出方向における下流側移送縁部に対する下方部分の突出距離が変更可能であってもよいし、それらの両方が変更可能であってもよい。
【0019】
本発明の第12の形態によれば、第1の形態において、検査装置は、対象物を摺動的に移送するための斜め下方に延在する第1の摺動面を有するシュートを備えている。回転力付与部は、第1の摺動面の下側縁部から斜め上方に向けて円弧状に折り返された第2の摺動面を有する湾曲部を含む。回転力付与部は、対象物が、第1の摺動面上および第2の摺動面上を摺動した後、第2の摺動面から空中に放たれることによって対象物に回転力が付与されるように構成される。この形態によれば、簡単な構成で対象物に回転力を付与できる。第12の形態に第5ないし第7の形態の少なくとも一つを付加してもよい。
【0020】
本発明の第13の形態によれば、選別装置が提供される。この選別装置は、第1ないし第12のいずれかの形態の検査装置と、識別部の識別結果に基づいて対象物の選別を行うように構成された選別部と、を備えている。この選別装置によれば、第1ないし第12の形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態による選別装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】対象物に回転力を付与するための回転付与部の構成を示す模式図である。
【
図3】対象物の回転方向の定義を説明するための図である。
【
図4】対象物の回転に関するシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図5】回転する同一の対象物を複数回撮像した画像を示す模式図である。
【
図6】第2実施形態による回転付与部の構成を示す模式図である。
【
図7】第2実施形態による対象物の回転に関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】第3実施形態による回転付与部の構成を示す模式図である。
【
図9】第3実施形態による対象物の回転に関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】第4実施形態による選別装置の構成を示す模式図である。
【
図11】第4実施形態による回転付与部の構成を示す模式図である。
【
図12】第5実施形態による回転付与部の構成を示す模式図である。
【
図13】第6実施形態による回転付与部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、第1実施形態による光学式選別装置(以下、単に選別装置と呼ぶ)10の概略構成を示す模式図である。本実施形態では、選別装置10は、選別対象物(以下、単に対象物と呼ぶ)90の一例としての米粒(より具体的には、玄米または精白米)の状態(換言すれば、品位)を測定し、その結果に基づいて、対象物90を良品と不良品とに選別するために使用される。不良品には、例えば、砕米、未熟粒、着色粒、被害粒、死米、異物(例えば、小石、泥、ガラス片など)などが含まれ得る。ただし、対象物90は、玄米または精白米に限られるものではなく、任意の粒状物であってもよい。例えば、対象物90は、籾、麦粒、豆類(大豆、ひよこ豆、枝豆など)、樹脂(ペレット等)、ゴム片等であってもよい。
【0023】
図1に示すように、選別装置10は、検出ユニット20と、貯留タンク71と、振動フィーダ50と、良品排出樋72と、不良品排出樋73と、選別部60と、コントローラ80と、を備えている。コントローラ80は、選別装置10の動作全般を制御する。コントローラ80は、識別部81としても機能する。コントローラ80の機能は、所定のプログラムをCPUが実行することによって実現されてもよいし、専用回路(例えば、PLD、ASICなど)によって実現されてもよいし、CPUと専用回路との組み合わせによって実現されてもよい。また、コントローラ80の機能は、一体的な一つのデバイスに割り当てられてもよいし、複数のデバイスに分散的に割り当てられてもよい。
【0024】
貯留タンク71は、対象物90を一時的に貯留する。振動フィーダ50は、対象物90を、エリアセンサ40による検出位置(撮像位置)に供給する。振動フィーダ50は、貯留タンク71から供給された対象物90を振動によってフィーダ移送方向D1に移送する。具体的には、振動フィーダ50は、トラフ51と加振装置52とを備えている。トラフ51上には、貯留タンク71から対象物90が供給される。加振装置52は、トラフ51をフィーダ移送方向D1に振動(揺動)させるように構成される。
【0025】
図3に示すように、トラフ51は、フィーダ移送方向D1に直交する略U字状の断面形状を有している。トラフ51の底面は、対象物90を移送するための移送面53として機能する。移送面53上には、フィーダ移送方向D1の一端寄りの位置で、貯留タンク71から対象物90が供給される。トラフ51の移送面53上の対象物90には、加振装置52によって与えられる振動に起因して、
図2に矢印93で示すように斜め上方に向けた力が作用する。そのような力が繰り返し作用することによって、対象物90は、トラフ51の移送面53上をフィーダ移送方向D1に移送され、最終的には下流側移送縁部54から空中に放出され、落下する。下流側移送縁部54とは、振動フィーダ50のうちの、対象物90がそこから空中へ放出される縁部であり、本実施形態では、フィーダ移送方向D1における移送面53の下流側の縁部である。上方から見ると、対象物90は振動フィーダ50からフィーダ移送方向D1に放出される。トラフ51は、多数の対象物90を同時に落下させることができる所定幅(
図3に示すトラフ幅方向D4の幅)を有している。トラフ51から落下する対象物90は、初期にはフィーダ移送方向D1の小さな速度成分を有しているものの、対象物90は、ほぼ、鉛直方向下向きに(つまり、重力方向)に落下する。このときの対象物90が落下する方向を対象物90の移送方向D2とも呼ぶ。
【0026】
この振動フィーダ50は、対象物90に回転力を付与することができる。具体的には、対象物90が斜め上方向に向けた力の作用を受けて下流側移送縁部54から放出されることによって、対象物90は回転しながら移送方向D2に落下する。
【0027】
代替実施形態では、より強い回転力を対象物90に付与するために、トラフ51の先端(換言すれば、下流側移送縁部54)に近い部分が基端に近い部分よりも大きく振動するように、振動フィーダ50が構成されてもよい。そのような構成は、例えば、トラフ51の重量バランスを調整することによって実現できる。そのような重量バランスを調整するために、トラフ51にウェイトが取り付けられてもよい。
【0028】
本実施形態では、対象物90が回転しながら落下する際の対象物90の回転軸線は、完全には規則的ではない方向に延在する。換言すれば、全ての対象物90の各々の回転軸線の延在方向は、完全に同一ではない(詳細は後述)。このことは、貯留タンク71からトラフ51へ供給される対象物90の種々の特徴、例えば、トラフ51上に供給された対象物90の向きが揃っていないこと、対象物90の各々が非対称な形状を有していること、対象物90の各々の形状が完全には同一ではないこと、などに起因している。このような特徴に起因して、対象物90に多軸の回転力が付与されることもある。振動フィーダ50は、特許請求の範囲の「回転力付与部」の非限定的な一例である。対象物90の回転軸線の延在方向に関する上述の特徴は、例えば、対象物90の形状が楕円体、楕円柱、または、細長い棒状体であることによっても得られる。
【0029】
検出ユニット20は、振動フィーダ50(より具体的には、下流側移送縁部54)から回転しながら落下している対象物90(つまり、空中にある対象物90)に対して光を照射し、対象物90に関連付けられた光(具体的には、対象物90を透過した透過光、および/または、対象物90によって反射された反射光)を検出して、その光によって表される画像を取得する。
【0030】
図1に示すように、検出ユニット20は、電磁波照射源の一例としての第1の光源30および第2の光源31と、単一のエリアセンサ40と、を備えている。第1の光源30およびエリアセンサ40は、対象物90の移送経路(換言すれば、落下軌跡)に対して一方側(フロント側とも呼ぶ)に配置されている。一方、第2の光源31は、対象物90の移送経路に対して他方側(リア側とも呼ぶ)に配置されている。
【0031】
本実施形態では、光源30,31の各々は、移送中の(つまり、落下中の)対象物90に可視光を照射するための光源ユニットである。第1の光源30は、第1の光32を放出する。同様に、第2の光源31は、第2の光33を放出する。光32,33の各々は、赤色に対応する波長と、緑色に対応する波長と、青色に対応する波長と、を有している。本実施形態では、光源30,31の各々は、いわゆるカラーLEDを備えている。光源30,31の各々は、複数のLEDがトラフ幅方向D4に配列されたライン光源である。ただし、光源30,31の仕様(例えば、数、発光形式、波長領域など)は、特に限定されない。例えば、光源30,31の各々は、複数のLEDが二次元状に配列されたエリア光源であってもよい。
【0032】
エリアセンサ40は、光学センサであり、赤色光、緑色光および青色光をそれぞれ個別に検出可能である。エリアセンサ40は、二次元状に(本実施形態では、移送方向D2およびトラフ幅方向D4に沿って)配列された複数の光検出素子を備えている。エリアセンサ40は、本実施形態ではCCDセンサであるが、CMOSセンサなどの他の形式のセンサであってもよい。
【0033】
エリアセンサ40は、移送中の対象物90に関連付けられた光を検出する。具体的には、フロント側に配置されたエリアセンサ40は、フロント側の第1の光源30から放出され、対象物90で反射された第1の光32(以下、反射光32とも呼ぶ)と、リア側の第2の光源31から放出され、対象物90を透過した第2の光33(以下、透過光33とも呼ぶ)と、を検出可能である。
【0034】
エリアセンサ40によってどのような光が検出されるかは、光源30,31の点灯パターンによって定まる。第1の光源30と第2の光源31とが同時に点灯する第1の点灯パターンでは、エリアセンサ40は、反射光32と透過光33とが合成された光(以下、反射透過光とも呼ぶ)を検出する。第1の光源30が点灯し、第2の光源31が消灯する第2の点灯パターンでは、エリアセンサ40は、反射光32のみを検出する。第1の光源30が消灯し、第2の光源31が点灯する第3の点灯パターンでは、エリアセンサ40は、透過光33のみを検出する。以下では、上述した反射光、透過光および反射透過光の少なくとも一つを対象物90に関連付けられた光とも呼ぶ。
【0035】
第1ないし第3の点灯パターンのいずれを採用するかは、対象物90の種類、性状、除去されるべき不良品の種類に応じて、任意に決定され得る。第1ないし第3の点灯パターンのいずれか一つのみが採用されてもよい。あるいは、第1ないし第3の点灯パターンのうちの二つ以上の点灯パターンが、所定の時間間隔で交互に、または、予め定められた繰り返し規則で出現してもよい。
【0036】
エリアセンサ40の仕様(例えば、分光感度特性など)は、特に限定されず、光源30,31の仕様に応じて任意に決定され得る。また、エリアセンサ40の数、設置位置および画角は、どのような画像を取得すべきかに応じて任意に決定され得る。例えば、単一のエリアセンサ40がリア側のみに配置されてもよい。あるいは、二つのエリアセンサ40が、フロント側およびリア側にそれぞれ配置されてもよい。あるいは、複数のエリアセンサ40が、複数の異なる角度から対象物90をそれぞれ撮像できるように、任意の位置に配置されてもよい。
【0037】
本実施形態では、
図2および
図3に示すように、エリアセンサ40は、対象物90に対するエリアセンサ40による撮像方向D3(換言すれば、エリアセンサ40の視野41と直交する方向)がフィーダ移送方向D1(換言すれば、上方から見た振動フィーダ50による対象物90の放出方向)と一致するように(換言すれば、移送方向D2と直交するように)方向付けられている。ただし、撮像方向D3は、移送方向D2と直交する方向に対して、上方または下方に角度付けられていてもよい。任意の方向に方向付けられてもよい。視野41は、トラフ幅方向D4において、トラフ51の幅以上の幅を有しており、移送方向D2において、複数の対象物90が納まる高さを有している。
【0038】
図3および
図4を参照して、対象物90の回転について更に説明する。
図3は、対象物90の回転方向の定義を説明するための図である。図示するように、X軸が撮像方向D3(換言すれば、フィーダ移送方向D1)と平行になり、Y軸が移送方向D2に平行になり、Z軸がトラフ幅方向D4と平行になるように、直交座標系を定義する。そして、回転軸線がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に延在する対象物90の回転を、それぞれX軸回転、Y軸回転およびZ軸回転と呼ぶ。
【0039】
図4は、対象物90の回転に関するシミュレーション結果の一例を示す図であり、振動フィーダ50によって空中に放出された対象物90の回転軸線の延在方向と、1回転に要する落下距離(換言すれば、回転速度)と、に関する分布を表している。縦軸は、対象物90の粒数を表している。図示する例では、対象物90の回転方向は、完全に同一ではなく、Z軸回転、X軸回転、Y軸回転の順に発生頻度が高くなる偏りを有している。また、400mm程度の落下距離を確保すれば、ほぼ全ての対象物90が少なくとも1回転することが分かる。
【0040】
エリアセンサ40のフレームレート(単位は、Hzまたはframe/sec)は、同一の対象物90を複数回撮像可能に設定される。本実施形態では、フレームレートは、対象物90の回転に起因して同一の対象物90を全周的に撮像できるように設定される。また、視野41の大きさ(移送方向D2の高さ)は、そのような撮像が可能となるように設定される。そのようなフレームレートおよび視野41の大きさは、
図4に示した1回転に要する落下距離を考慮して設定することができる。
【0041】
ここで説明を
図1に戻す。エリアセンサ40からの出力、すなわち、検出された光の強度を表すアナログ信号は、AC/DCコンバータ(図示省略)によってデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、画像データとしてコントローラ80に入力される。コントローラ80は、入力された画像に基づいて対象物90の状態を決定する。そのような決定は、識別部81の処理として、対象物90の各々について行われる。
【0042】
本実施形態では、識別部81によって決定される状態には、色彩的な状態(換言すれば、光学的な状態)と、形状的および/または寸法的な状態と、が含まれる。また、状態には、物理量によって表される特徴量と、特徴量に基づいて判定される品質と、が含まれる。
【0043】
色彩的な状態の特徴量には、対象物90を表す画像の各画素の色階調値が含まれる。形状的および/または寸法的な状態の特徴量には、例えば、対象物90の全体および/または一部分の面積、高さ、幅、外周長さ、および、円形度の少なくとも一つが含まれ得る。
【0044】
本実施形態では、「品質」には、例えば、良品(つまり、品質が相対的に高い米粒)と不良品(つまり、品質が相対的に低い米粒、および/または、異物)との区分が含まれる。ただし、「品質」には、不良の種別(例えば、砕米、未熟粒、着色粒、被害粒、死米、異物のいずれに該当するか)が含まれてもよい。あるいは、「品質」には、選別部60において除去すべき物と、除去すべきではない物と、の区分が含まれてもよい。また、「品質」には、色彩的な状態に基づいて決定される品質と、形状的および/または寸法的な状態に基づいて決定される品質と、が含まれる。色彩的な状態に基づいて決定される不良品には、例えば、未熟粒、着色粒、被害粒、死米、異物が含まれ得る。形状的および/または寸法的な状態に基づいて決定される不良品には、例えば、砕米、虫害粒、異物が含まれ得る。
【0045】
本実施形態では、識別部81は、色彩的な状態の特徴量(換言すれば、画像データの階調値)と、予め定められた閾値と、を比較することによって(換言すれば、色彩的な状態の特徴量が、予め定められた正常範囲にあるか否かに基づいて)、対象物90が良品であるか、それとも、不良品であるかを決定する。そのような決定は、対象物90の画像を構成する複数の画素の階調値の代表値(例えば、平均値、中央値、最大値、最小値など)に基づいて行われてもよい。あるいは、不良品には、所定以上の大きさの部分的不良を有する対象物90が含まれてもよい。そのような部分的不良は、対象物90の画像を構成する複数の画素のうち、階調値が正常範囲にない画素の数が所定数以上である(換言すれば、不良部分の面積が所定値以上である)ことを基準として決定されてもよい。
【0046】
さらに、本実施形態では、識別部81は、形状的および/または寸法的な状態の特徴量と、予め定められた閾値と、を比較することによって(換言すれば、形状的および/または寸法的な特徴量が、予め定められた正常範囲にあるか否かに基づいて)、対象物90が良品であるか、それとも、不良品であるかを決定する。
【0047】
識別部81は、同一の対象物90についての複数回の撮像によって得られる複数の画像に基づいて対象物90の状態を識別する。
図5は、回転する同一の対象物90を複数回撮像した画像を示す模式図である。
図5は、連続する7回のスキャンでエリアセンサ40によって取得された七つの画像95a~95gを重ね合わせた状態を示している。七つの画像95a~95g上の同一の対象物90は、それぞれ対象物90a~90gとして示されている。この例では、対象物90は、Z軸回転しながら移送方向D2に落下している。また、この例では、対象物90は、画像95a~95gの間で180度回転している。このような回転に起因して、画像95a~95gの各々では、同一の対象物90の異なる領域がそれぞれ撮像されている。つまり、対象物90が回転せずに落下する場合と比べて、対象物90の撮像領域が広くなっている。
【0048】
複数の画像間での同一の対象物90の同定は、公知の任意の手法によって行われ得る。例えば、フレームレートが比較的大きいときには、第1の画像の複数の対象物90と、第2の画像の複数の対象物90と、の重なりを検出し、重なり合っている対象物90同士が同一の対象物90であると判断されてもよい。あるいは、第1の画像の複数の対象物90の各々の重心と、第2の画像の複数の対象物90の各々の重心と、が算出されてもよい。この場合、第1の画像の複数の対象物90の各々の重心を、フレームレートに対応する移動距離(予め想定される距離)だけずらしたときに、第1の画像および第2の画像間で、最も離間距離が小さい重心同士が、同一の対象物90についての重心であると判断されてもよい。
【0049】
識別部81は、このようにして撮像される複数の画像に基づいて対象物90の状態を識別するので、対象物90の一部のみに所定の状態が現れているときであっても、所定の状態を識別しやすくなる。例えば、
図5に示すように、対象物90の小さな側面のみに不良部分94が存在する場合、対象物90が、対象物90aの向きのままで回転せずに落下すると、識別部81は、不良部分94を識別することができない。一方、本実施形態によれば、画像95dに基づいて不良部分94を識別することができる。
【0050】
選別部60は、識別部81によって決定された状態に基づいて、対象物90の選別を行う。この選別は、特定の対象物90の軌道を変更するための軌道変更動作によって行われる。具体的には、選別部60は、
図1に示すように、複数のノズル61と、ノズル61に対応する数(本実施形態では、ノズル61と同数であるが、ノズル61の数と異なっていてもよい)のバルブ62と、を備えている。複数のノズル61は、トラフ幅方向D4に配列されている。
【0051】
複数のノズル61は、複数のバルブ62をそれぞれ介して、コンプレッサ(図示せず)に接続されている。コントローラ80からの制御信号に応じて複数のバルブ62が選択的に開かれることによって、複数のノズル61は、特定の不良を有する対象物90に向けてエア63を選択的に噴射する。本実施形態では、エア63を噴射すべき対象物90は、色彩不良および形状寸法不良の少なくとも一方を有する対象物90である。ただし、エア63を噴射すべき対象物90は、任意に設定され得る。例えば、色彩不良を有し、かつ、形状寸法不良を有する対象物90のみにエア63が噴射されてもよい。
【0052】
特定の不良を有する対象物90は、エア63によって吹き飛ばされ、移送方向D2に沿った落下軌道から逸脱して不良品排出樋73に導かれる(
図1に対象物91として示す)。一方、良品であると決定された対象物90には、エア63は噴射されない。このため、良品であると決定された対象物90は、落下軌道を変えることなく、良品排出樋72に導かれる(
図1に対象物92として示す)。
【0053】
代替実施形態では、不良品であると決定された対象物90に対してエア63を噴射する構成に代えて、良品であると決定された対象物90に対してエア63が噴射されてもよい(いわゆる逆打ち)。また、軌道変更動作は、エア63の噴射に限定されるものではなく、公知の任意の他の方法が採用されてもよい。
【0054】
上述した選別装置10によれば、エリアセンサ40の検出領域(つまり、対象物90の移送経路上の、対象物90を撮像する場所)を通過する際に、対象物90が回転するように、対象物90に回転力が付与される。そして、回転している同一の対象物90をエリアセンサ40が複数回撮像する。このため、エリアセンサ40の撮像方向D3と平行な回転軸線を中心として回転する対象物90(上述の例では、X軸回転の対象物90)以外の対象物90に関して、同一の対象物90の異なる複数の領域がそれぞれ撮像された複数の画像が得られる。したがって、一つのエリアセンサ40当たりの対象物90の撮像可能領域を広げることができる。したがって、対象物90の状態の識別精度を向上でき、ひいては、選別部60による選別の精度を向上できる。上述した選別装置10は、対象物90が完全な球体ではない形状を有する場合、対象物90が非対称な形状を有する場合、および、対象物90が非均一な形状を有する(換言すれば、複数の対象物90間で形状が異なる)場合であっても、上述した効果が得られる。
【0055】
さらに、選別装置10によれば、振動フィーダ50を利用して、簡単な構成で対象物90に回転力を付与できる。具体的には、従来の選別装置では、対象物90が回転した状態で光学センサによって撮像される事象の発生を抑制するために、対象物90を振動フィーダからシュート上、コンベヤ(例えば、ベルトコンベヤまたはローラコンベア)上、または、ローラ上に供給して、振動フィーダによって付与された回転力が解消される。そして、回転力が解消された状態でシュート、コンベヤまたはローラから空中に放出された対象物90が光学センサで撮像される。このような従来技術とは対照的に、本実施形態では、シュート、コンベアまたはローラが省略される。つまり、振動フィーダ50からシュート、コンベアまたはローラを介することなく空中を移送される対象物90がエリアセンサ40によって撮像される。それによって、回転しながら移送される対象物90を撮像することができる。
【0056】
さらに、選別装置10によれば、エリアセンサ40のフレームレートおよび視野は、対象物90の回転に起因して同一の対象物90を全周的に撮像できるように設定される。したがって、単一のエリアセンサ40による対象物90の撮像可能領域を最大化できる。さらに、選別装置10は、光学センサとして単一のエリアセンサ40のみを備えているので、検出ユニット20(ひいては、選別装置10)を小型化するとともに低コスト化することができる。
【0057】
図6は、第2実施形態による回転付与部150の構成を示す模式図であり、第1実施形態の
図2に対応している。以下、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図6に示すように、回転付与部150は、第1実施形態による振動フィーダ50に加えて、被衝突部材156を備えている。被衝突部材156は、振動フィーダ50の移送面53の下流側移送縁部54から放出された対象物90が部分的に衝突するように下流側移送縁部54に隣接して配置される。被衝突部材156は、下流側移送縁部54よりも上方に位置する上方部分157を備えている。上方部分157は、対象物90が、上方部分157に部分的に衝突した後、上方部分157の上を通って落下するように配置される。エリアセンサ40は、被衝突部材156への衝突の後に、シュートまたはコンベアを介することなく空中を移送される対象物90を撮像する。
【0058】
回転付与部150によれば、対象物90の被衝突部材156への衝突によって、対象物90の回転をより細かく制御できる。例えば、対象物90の回転軸線の延在方向に関する発生分布(偏り)を制御できる。
図7は、第2実施形態による対象物90の回転に関するシミュレーション結果を示す図であり、第1実施形態の
図4に対応している。
図4と
図7とを比較すると明らかなように、第2実施形態では、第1実施形態と比べてX軸回転の対象物90の発生頻度が低減している。換言すれば、フィーダ移送方向D1に延在する回転軸線を有する対象物90の数が低減されている。
【0059】
エリアセンサ40の撮像方向D3は、X軸(フィーダ移送方向D1)と平行に設定されているから、上方部分157によってX軸回転の対象物90の発生頻度を低減させることによって、対象物90の撮像可能領域が広げられる確率を高めることができる。
【0060】
図6に示すように、回転付与部150は、さらに、アクチュエータ158を備えている。アクチュエータ158は、任意の機械的機構を介して、移送面53に対する上方部分157の傾斜角度および相対位置を変更することができる。この相対位置として、フィーダ移送方向D1における下流側移送縁部54と上方部分157との離間距離S1が変更可能であってもよいし、下流側移送縁部54に対する上方部分157の突出距離S2が変更可能であってもよいし、離間距離S1および突出距離S2の両方が変更可能であってもよい。このような構成によれば、例えば、対象物の特性(例えば、大きさ、形状など)または所望の回転特性に応じて、対象物90の回転軸線の延在方向に関する発生分布をより細かく制御できる。代替実施形態では、移送面53に対する上方部分157の傾斜角度および相対位置の一方のみが変更可能であってもよい。さらなる代替実施形態では、傾斜角度および相対位置は固定されていてもよい。
【0061】
図8は、第3実施形態による回転付与部250の構成を示す模式図であり、第2実施形態の
図6に対応している。以下、第3実施形態について、第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図8に示すように、回転付与部250は、被衝突部材156に代えて、被衝突部材256を備えている。被衝突部材256は、振動フィーダ50の移送面53の下流側移送縁部54から放出された対象物90が部分的に衝突するように下流側移送縁部54に隣接して配置される。被衝突部材256は、下流側移送縁部54よりも下方に位置する下方部分257を備えている(図示する例では、被衝突部材256の全体が下流側移送縁部54よりも下方に位置しているので、被衝突部材256を下方部分257としても示している)。下方部分257は、対象物90が、下方部分257に部分的に衝突した後、下方部分257を越えて(つまり、下流側移送縁部54と反対側に更に進んで)落下するように配置される。エリアセンサ40は、被衝突部材256への衝突の後に、シュートまたはコンベアを介することなく空中を移送される対象物90を撮像する。
【0062】
回転付与部250によれば、対象物90の被衝突部材256への衝突によって、対象物90の回転をより細かく制御できる。例えば、対象物90の回転速度に関する発生分布(偏り)を制御できる。
図9は、第3実施形態による対象物90の回転に関するシミュレーション結果を示す図であり、第1実施形態の
図4に対応している。
図4と
図9とを比較すると明らかなように、第3実施形態では、第1実施形態と比べてZ軸回転の対象物90に関して、1回転に要する落下距離が相対的に小さい(換言すれば、回転速度が相対的に大きい)対象物90の数が増加している。
【0063】
エリアセンサ40の撮像方向D3は、X軸(フィーダ移送方向D1)と平行に設定されているから、上方部分157によってX軸回転の対象物90の発生頻度を低減させることによって、対象物90の撮像可能領域が広げられる確率を高めることができる。したがって、対象物90が所定の角度(例えば、360度)回転する間に当該対象物90が移送される距離を小さくできる確率が高まる。その結果、対象物90の撮像可能領域を広げるために必要な、エリアセンサ40の視野を小さくできる。あるいは、エリアセンサ40の有限の視野内で、同一の対象物90について、より広い領域を撮像できる確率が高まる。
【0064】
図8に示すように、回転付与部250は、さらに、第2実施形態と同様に、アクチュエータ158を備えている。アクチュエータ158は、任意の機械的機構を介して、移送面53に対する下方部分257の傾斜角度および相対位置を変更することができる。上下方向(移送方向D2)における下流側移送縁部54と下方部分257との離間距離S3が変更可能であってもよいし、フィーダ移送方向D1における下流側移送縁部54に対する下方部分257の突出距離S4が変更可能であってもよいし、それらの両方が変更可能であってもよい。このような構成によれば、例えば、対象物の特性(例えば、大きさ、形状など)または所望の回転特性に応じて、対象物90の回転速度に関する発生分布をより細かく制御できる。代替実施形態では、移送面53に対する下方部分257の傾斜角度および相対位置の一方のみが変更可能であってもよい。さらなる代替実施形態では、傾斜角度および相対位置は固定されていてもよい。
【0065】
図10は、第4実施形態による選別装置310の構成を示す模式図であり、第1実施形態の
図1に対応している。以下、第4実施形態について、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図10に示すように、選別装置310は、シュート370を備えている。振動フィーダ50は、貯留タンク71に貯留された対象物90をシュート370上に供給する。
【0066】
図11に示すように、シュート370は、対象物90を摺動的に移送するための摺動面371を備えている。振動フィーダ50からシュート370に供給された対象物90は、摺動面371上を下方に向けて摺動する。摺動面371には、少なくとも一つの凸部350が形成されている。少なくとも一つの凸部350は、少なくとも、摺動面371の下流側の半分の領域(換言すれば、移送方向D2におけるシュート370の中間地点よりも下流側の領域)に形成される。本実施形態では、少なくとも一つの凸部350は、摺動面371の下流側の半分の領域に形成される。ただし、少なくとも一つの凸部350は、摺動面371の上流側の半分の領域と下流側の半分の領域とに形成されてもよい。本実施形態では、複数の凸部350が、移送方向D2およびシュート幅方向D5のそれぞれに間隔を隔てて形成されている。複数の凸部350が形成される場合には、複数の凸部350は、移送方向D2およびシュート幅方向D5の少なくとも一方において不均一な位置に(換言すれば、同じ位置に直線的に並ばないように)配置される。
図11に示す例では、複数の凸部350は、シュート幅方向D5の2つの位置で移送方向D2に直線的に並んでいるが、移送方向D2の異なる位置にそれぞれ配置されている(移送方向D2において不均一な位置に配置されている)。凸部350は、特許請求の範囲の「回転力付与部」の非限定的な一例である。
【0067】
図11には、対象物90が凸部350やシュート370の側壁に衝突して方向を変えながら、移送される軌跡が二点鎖線で例示されている。対象物90は、摺動面371を摺動しているときに、例えば例示されるような経路で凸部350に衝突することによって対象物に回転力が付与される。この回転は、主に、摺動面371に直交する方向に延在する回転軸線を中心とした回転である。凸部350が摺動面371の下流側の半分の領域に形成されていることによって、対象物90は、そのような回転状態でシュート370の下端から空中に放出され得る。対象物90が、このような回転状態で、シュート370の下端から空中に放出されると、回転方向は他の方向に変換され得る。そのような変換は、例えば、対象物90の非対称な形状によって生じ得る。
【0068】
シュート370の下端から空中に放出された対象物90は、重量の影響を受けつつ、概ね摺動面371と平行な移送方向D2に落下する。エリアセンサ40は、回転しながら空中を落下する対象物90を撮像する。本実施形態では、エリアセンサ40の撮像方向D3は、移送方向D2に直交する方向に設定されている。本実施形態によっても、簡単な構成で対象物90に回転力を付与できる。
【0069】
図12は、第5実施形態による回転力付与部の構成を示す模式図である。以下、第5実施形態について、第4実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図12に示すように、第5実施形態の選別装置は、第4実施形態のシュート370に代えて、シュート470を備えている。シュート470は、対象物90を摺動的に移送するための斜め下方に延在する第1の摺動面471を備えている。第1の摺動面471には、第4実施形態のような凸部は形成されていない。その代わりに、シュート470の下側縁部には、湾曲部450が形成されている。
【0070】
湾曲部450は、第1の摺動面471と連続するように第1の摺動面471の下側縁部から斜め上方に向けて円弧状に折り返された第2の摺動面451を備えている。湾曲部450は、特許請求の範囲の「回転力付与部」の非限定的な一例である。振動フィーダ50からシュート370に供給された対象物90は、第1の摺動面471上を下方に向けて摺動し、その後、第2の摺動面451を摺動する。そして、対象物90は、第2の摺動面451から空中に放たれることによって回転力が付与される。具体的には、第1の摺動面471上を摺動するとき、対象物90は、より重い半分が下側に位置する姿勢になっている。そして、対象物90が第1の摺動面471から第2の摺動面451に進入しても、しばらくは、その姿勢が維持される。このとき、第2の摺動面451は上方に向けて折り返されていることから、対象物90のより重い半分が下側に位置することになる。そのような姿勢のままで対象物90が空中に放出されると、重力の影響を受けて、より重い半分が下側に向くように姿勢が変わる。対象物90には、その姿勢の変化の方向に回転力が付与されることになる。本実施形態によっても、簡単な構成で対象物90に回転力を付与できる。
【0071】
図13は、第6実施形態による回転力付与部の構成を示す模式図である。以下、第6実施形態について、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。第6実施形態の選別装置は、第1実施形態の振動フィーダ50に代えて、
図13に示すロータリーバルブ550を備えている。ロータリーバルブ550は、特許請求の範囲の「回転力付与部」の非限定的な一例である。ロータリーバルブ550は、ホッパ部551と、ロータ収容部552と、シャフト553と、ロータ554と、を備えている。
【0072】
ホッパ部551には、対象物90が貯留される。ロータ収容部552は、円筒形状を有しており、ホッパ部551と上下方向に連通している。ロータ収容部552内には、シャフト553およびロータ554が配置される。ロータ収容部552は、排出口558を有している。排出口558は、ロータ収容部552の最下部よりも上方に形成される。本実施形態では、排出口558は、ロータ収容部552の中心(換言すれば、シャフト553の回転軸線)よりも上方に形成されている。
【0073】
シャフト553は、ロータ収容部552内を延在するとともに、ロータ収容部552を貫通している。シャフト553は、モータ(図示省略)によって矢印の方向に回転駆動される。シャフト553の周囲には、ロータ554が取り付けられている。ロータ554は、二つの端板555と、複数(図示する例では八つ)の羽根556と、を備えている。二つの端板555の各々は、ロータ収容部552の内面とほほ同じ大きさの円形形状を有している。二つの端板555は、シャフト553の軸線方向に離間して配置される。複数の羽根556は、二つの端板555の間で、シャフト553の周囲から二つの端板555の径方向外側縁部まで放射状に延在している。二つの端板555と複数の羽根556とによって、周方向に区画された複数の収容空間557が形成されている。
【0074】
ホッパ部551に対象物90が貯留された状態でシャフト553(ひいては、ロータ554)が回転駆動されると、ホッパ部551から、ホッパ部551と連通する位置にある収容空間557に進入した対象物90が、矢印の方向に回転的に移送され、ロータ収容部552の底部に達する。そして、シャフト553がさらに回転されると、収容空間557内の対象物90は上方に掻き上げられた後、排出口558を介して、下流側移送縁部559(排出口558の底面の下流側の縁部)から径方向に(上方から見て水平方向に)空中に放出される。
【0075】
ロータリーバルブ550は、排出口がロータ収容部の最下部に位置する従来のロータリーバルブとは対照的に、排出口558がロータ収容部552の最下部よりも上方に形成されている。この構造によって、上述の掻き上げ排出動作が実現され、それによって、対象物90に回転力を付与できる。また、本実施形態では、排出口558が、シャフト553の回転軸線よりも上方に位置しているので、対象物90に付与する回転力を高めることができる。第3または第4実施形態において、振動フィーダ50に代えて、ロータリーバルブ550を採用することも可能である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上記した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0077】
例えば、選別装置10,310は、可視光光源(上述の例では、光源30,31)に代えて、または、加えて、任意の波長を有する電磁波を対象物90に照射する電磁波照射源を備えていてもよい。そのような電磁波は、例えば、X線および近赤外線の少なくとも一方であってもよい。この場合、選別装置10は、電磁波照射源によって照射される電磁波の波長に対応する複数の電磁波検出素子を有するエリアセンサを備えていてもよい。この場合、識別部81は、対象物90の状態として、エリアセンサによって検出される電磁波の強度によって表される光学的状態を識別してもよい。
【0078】
あるいは、対象物90に回転力を付与するための構成は、エリアセンサ40の視野41と直交する方向(換言すれば、撮像方向D3)以外に延在する回転軸線を中心とした回転が対象物90の少なくとも一部に付与され得る限りにおいて、任意に変更され得る。例えば、第1実施形態の振動フィーダ50に代えて、スクリューフィーダが採用されてもよい。このスクリューフィーダは、筒体と、筒体内に回転可能に配置されたスクリューと、を備えている。スクリューの回転軸線の延在方向における筒体の一端には、排出口が形成される。対象物90にはスクリューの回転に伴ってねじり力が作用するので、その状態で、排出口の下流側移送縁部(排出口の底面の下流側の縁部)から、スクリューの回転軸線の延在方向に空中に放出されると、対象物90は回転しながら落下することになる。そのようなスクリューフィーダを第3または第4実施形態で採用することも可能である。
【0079】
本発明は、選別装置に限られず、種々の形態で実現可能である。例えば、本発明は、対象物の状態を測定するための測定装置として実現されてもよい。そのような測定装置は、例えば、上述した選別装置10,310から選別部60および不良品排出樋73が取り除かれた形態を備えていてもよい。この場合、コントローラ80は、対象物90の状態(あるいは、その統計量)を、任意のデバイス(例えば、ディスプレイ、通信インタフェース、記憶媒体、印刷装置など)に出力してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10...光学式選別装置
20...検出ユニット
30...第1の光源
31...第2の光源
32...第1の光
33...第2の光
40...エリアセンサ
41...視野
50...振動フィーダ
51...トラフ
52...加振装置
53...移送面
54...下流側移送縁部
60...選別部
61...ノズル
62...バルブ
63...エア
71...貯留タンク
72...良品排出樋
73...不良品排出樋
80...コントローラ
81...識別部
90,90a~90g,91,92...対象物
94...不良部分
95a~95g...画像
150,250...回転付与部
156,256...被衝突部材
157...上方部分
158...アクチュエータ
257...下方部分
310...選別装置
350...凸部
370...シュート
371...摺動面
450...湾曲部
451...第2の摺動面
470...シュート
471...第1の摺動面
550...ロータリーバルブ
551...ホッパ部
552...ロータ収容部
553...シャフト
554...ロータ
555...端板
556...羽根
557...収容空間
558...排出口
559...下流側移送縁部
D1...フィーダ移送方向
D2...移送方向
D3...撮像方向
D4...トラフ幅方向
D5...シュート幅方向