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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017546
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20240201BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240201BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/365
A61K8/362
A61K8/63
A61K8/36
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120260
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】土居 亮介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC122
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC471
4C083AC472
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC03
4C083DD01
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】本発明は、水中で電離するカルボキシル基を持つ水溶性成分を配合した場合であっても適度な粘度を維持し、なおかつみずみずしい使用感を有する化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の化粧料は、(A)カルボキシビニルポリマーおよび(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーから選択される1種以上と、(B)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーと、(C)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を持つ水溶性成分とを含み、前記(A)成分の配合量を、化粧料100g中に含まれる(C)成分が持つカルボキシル基またはその塩の数で除した値が2.46~5.94であり、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーが配合される場合にはその配合量が化粧料全量に対して0.3質量%未満であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシビニルポリマーおよび(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーから選択される1種以上、
(B)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、および、
(C)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を持つ水溶性成分、
を含む化粧料であって、
前記(A)成分の配合量を、化粧料100g中に含まれる(C)成分が持つカルボキシル基またはその塩の数で除した値が、2.46~5.94であり、
前記化粧料に(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーが配合される場合には、その配合量が化粧料全量に対して0.3質量%未満である、化粧料。
【請求項2】
前記化粧料の粘度が、当該化粧料から前記(C)水溶性成分を抜去した組成物の粘度の10%以上である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
pHが4.5~7.5である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】
前記(C)水溶性成分の分子量が1000以下である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(C)水溶性成分が、1分子内にカルボキシル基またはその塩を1~3個持つ、請求項1に記載の化粧料。
【請求項6】
前記(C)水溶性成分が、コハク酸、クエン酸、グリチルリチン酸、サリチル酸、メトキシサリチル酸およびそれらの塩からなる群から選択される、請求項1に記載の化粧料。
【請求項7】
前記(C)水溶性成分の配合量が、化粧料全量に対して0.01質量%以上である、請求項1に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性と使用感に優れる化粧料に関する。さらには、水中で電離するカルボキシル基を持つ水溶性成分を配合した場合であっても適度な粘度を維持し、なおかつみずみずしい使用感を有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料や皮膚外用医薬部外品においては、みずみずしい使用感が得られることから、ジェル状あるいは水中油型乳化系の基剤が広く用いられている。その際、使用性や安定性等を高めるために水相増粘剤を使用することが一般的に行われる。カルボキシビニルポリマーや(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーは、べたつきのない使用感が得られ、優れた増粘作用を有することから、スキンケア製剤の基剤の増粘に汎用されている。
【0003】
しかしながら、上記したカルボキシビニルポリマーや(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーは耐塩性が低く、一定量以上の塩や電解質の存在により、著しく減粘することが知られている。また、化粧料や皮膚外用医薬部外品では、収れん効果や抗炎症効果等を目的として、水溶性の有効成分を配合することが多く行われる。これら有効成分のなかには水中で電離するカルボキシル基を持つものがあり、カルボキシビニルポリマーや(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーの増粘性が著しく阻害される。
よって、塩や電解質により増粘性が阻害される系では、十分な増粘性を得るために増粘剤を高配合する必要があり、結果としてみずみずしさがなく、増粘剤由来のべたつきが生じるといった問題があった。
【0004】
特許文献1には、グリチルリチン酸等の有効成分を配合した皮膚外用医薬部外品において、カルボキシビニルポリマーによるゲル構造の耐塩性を向上する目的で、トリメチルグリシンを配合することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、4-アルキルレゾルシノール等の有効成分を配合した皮膚外用剤において、N-アシルグルタミン酸ジアルキルエステルを配合することにより、カルボキシビニルポリマーを増粘剤として使用した場合であっても粘度低下が防止されることが記載されている。
【0006】
また、上記カルボキシビニルポリマー等の耐塩性の低い水相増粘剤の弱点に鑑み、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー等の耐塩性のある増粘剤も開発されているが、カルボキシビニルポリマー等と比較するとみずみずしさが劣り、べたつきを感じる傾向がある。
【0007】
以上のことから、電離するカルボキシル基を持つ水溶性成分を含む系において、十分な増粘性を確保しながら、みずみずしい使用感を有する化粧料を得るためにはさらなる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-179318号公報
【特許文献2】特開2007-223991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、水中で電離するカルボキシル基を持つ水溶性成分を含む化粧料において、水相増粘剤としてカルボキシビニルポリマーや(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーを用いた場合であっても、前記水溶性成分による減粘作用が抑制され、みずみずしくべたつきのない化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、カルボキシル基を持つ水溶性成分を含む化粧料において、前記水溶性成分に対して一定比率のカルボキシビニルポリマーおよび/または(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーと、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとを配合することにより、前記水溶性成分による減粘作用が緩和され、べたつきがなく、みずみずしい使用感が得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
(A)カルボキシビニルポリマーおよび(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーから選択される1種以上、
(B)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、および、
(C)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を持つ水溶性成分、
を含む化粧料であって、
前記(A)成分の配合量(質量%)を、化粧料100g中に含まれる(C)成分が持つカルボキシル基またはその塩の数で除した値が2.46~5.94であり、
前記化粧料に(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーが配合される場合には、化粧料全量に対して0.3質量%未満である、化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化粧料は、上記構成とすることにより、水中で電離するカルボキシル基を持つ水溶性成分を含む化粧料において、べたつきがなく、みずみずしい使用感を確保するとともに、優れた安定性を得ることができる。また、本発明によれば、透明性を有する化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化粧料は、(A)カルボキシビニルポリマーおよび(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーから選択される1種以上、(B)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、および(C)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を持つ水溶性成分を必須成分として含むことを特徴とする。以下に、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0014】
<(A)カルボキシビニルポリマーおよび(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーから選択される1種以上>
本発明に係る化粧料は、(A)カルボキシビニルポリマーおよび(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーから選択される1種以上(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)を必須成分として配合する。
【0015】
本発明に係る化粧料に配合されうるカルボキシビニルポリマー(カルボマー)は、アクリル酸を主鎖としペンタエリスチルアリエーテル、スクロースアリエーテルまたはプロピレンアリエーテルで架橋したアクリル酸系水溶性ポリマーであり、カルボキシル基を持つ。本発明のカルボキシビニルポリマーとしては、水やアルコール等の溶媒に対する増粘剤として化粧料に一般的に用いられるものを指す。
カルボキシビニルポリマーの市販品としては、アクペック HV-501E、HV-505E、HV-505ED、HV-801EG、HV-801EG-300、HV-805EG、HV-805EG-300およびSW-705E(以上、住友精化社製)、ハイビスワコー103、ハイビスワコー104およびハイビスワコー105(以上、富士フイルム和光純薬社製)、カーボポール(登録商標) 934ポリマー、940ポリマー、941ポリマー、980ポリマー、981ポリマー、2984ポリマー、5984ポリマー、ETD2050ポリマー、Silk100ポリマー、Stylr2.0ポリマー、Ultrez10ポリマーおよびUltrez30ポリマー(以上、ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0016】
本発明に係る化粧料に配合されうる(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーは、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとをメチレンビスアクリルアミドで架橋したコポリマーである。本発明の(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーとしては、化粧料に一般的に用いられるものであれば特に限定されない。
【0017】
本発明に係る化粧料に配合される(A)成分としては、前記カルボキシビニルポリマーと(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマーとがそれぞれ単独で用いられてもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(A)成分の配合量(質量%)は、化粧料100g中に含まれる後述の(C)成分が持つカルボキシル基またはその塩の数で除した値が2.46~5.94となるように配合する必要がある。ここで「化粧料100g中に含まれる(C)成分が持つカルボキシル基またはその塩の数」とは、(C)成分の1分子中に含まれる水中で電離するカルボキシル基の数を、100g当たりの数に換算し、化粧料全量を100質量%としたときの化粧料中の(C)成分の配合量(質量%)を掛けた値を指す。この値が2.46未満となると、製剤の安定性が劣り、ジェルの形状が保てなくなったり、使用性が劣る傾向がある。一方、前記値が5.94を超えると、べたつき感が強くなる傾向となる。
【0019】
(A)成分の配合量は、前記値を満たす限り、化粧料の剤型に応じて水相を増粘するために通常配合される量であれば特に限定されない。配合量の例としては、化粧料全量に対して、0.05~2.0質量%であることが好ましく、0.1~1.5質量%であることがより好ましく、0.2~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
<(B)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー>
本発明に係る化粧料に配合される(B)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を主鎖とするポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部がアルキル基によりエステル化されたポリマーである。エステル結合によって結合しているアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、その炭素数は10~30である。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーの市販品としては、カーボポール(登録商標)1342ポリマー、PEMULEN TR-1およびTR-2(以上、ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0021】
(B)成分の配合量は、化粧料の剤型に応じて水相を増粘するために通常配合される量であれば特に限定されない。配合量の例としては、化粧料全量に対して、0.005~1.0質量%であることが好ましく、0.01~0.4質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
<(C)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を持つ水溶性成分>
本発明に係る化粧料に配合される(C)少なくとも1個のカルボキシル基またはその塩を持つ水溶性成分(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)とは、水中で電離するカルボキシル基またはその塩、好ましくはpH4.5~7.5の範囲で電離するカルボキシル基またはその塩を1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~3個持つ水溶性成分を指す。この水溶性成分は、通常化粧料および皮膚外用剤に配合され、収れん作用、抗炎症作用、角質軟化作用等、肌を美しく整える作用を有する有効成分をいう。本発明の(C)成分としては分子量が1000以下のものであることが好ましい。
【0023】
カルボキシル基またはその塩を持つ水溶性成分であっても、アミノ基を持つ場合には、一定のpH領域の化粧料においてカルボキシル基が電離せず、塩による減粘の問題が生じない場合がある。例えば、トラネキサム酸はカルボキシル基を持つ水溶性の有効成分であるが、アミノ基を持つので、pHが4.5~7.5の化粧料においてはカルボキシル基が電離しない。よって、本発明の(C)成分としては、アミノ基を持たないものが好ましい。
【0024】
本発明の(C)成分として好ましく用いられる例として、コハク酸、クエン酸、グリチルリチン酸、サリチル酸、メトキシサリチル酸等が挙げられ、それらの塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
本発明の(C)成分としては、コハク酸、クエン酸、グリチルリチン酸、サリチル酸、メトキシサリチル酸およびそれらの塩であることが好ましく、コハク酸、クエン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、サリチル酸、メトキシサリチル酸カリウムであることがさらに好ましい。
【0025】
(C)成分の配合量は、化粧料において所望の有効作用を発揮する上で通常配合される量であれば特に限定されない。配合量の例としては、化粧料全量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましく、配合量範囲の例としては、0.01~5.0質量%であることが好ましく、さらに0.05~3.0質量%であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る化粧料においては、使用感を向上する観点から、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー等の耐塩性のある水相増粘剤の配合量を0.3質量%未満とすることが好ましい。耐塩性のある水相増粘剤は、塩による減粘作用を受けにくいため、解離性の有効成分を含む水相の増粘剤として好ましく用いられる。しかしながら、これら耐塩性のある水相増粘剤は、みずみずしさに劣り、べたつき感を感じる傾向があることが知られている。本発明においては、前記(A)成分および(B)成分の配合により、解離性のカルボキシル基を持つ有効成分を含む場合であっても一定条件下で十分な粘度を得ることができるので、これら耐塩性のある水相増粘剤の配合量を低くすることが可能である。あるいは、本発明に係る化粧料はこれら耐塩性のある水相増粘剤を含まなくともよい。
【0027】
耐塩性のある水相増粘剤の例として、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0028】
また、本発明に係る化粧料の粘度は、当該化粧料から前記(C)成分を抜去した組成物の粘度の10%以上であることが好ましい。本発明においては、(C)成分を配合した化粧料の粘度が、(C)成分を配合していない組成物の粘度の10%以上である場合に、(C)成分による減粘作用が十分抑制されていると評価する。
【0029】
本発明に係る化粧料は、透明のジェル状化粧料に調製するのに適する。この場合、本発明に係る化粧料の粘度は、1,000~100,000mPa・sであることが好ましく、さらに1,500~60,000mPa・sであることが好ましい。なお、本明細書における粘度は、30℃においてB型粘度計で測定した値とする。
【0030】
本発明において「透明」とは、化粧料を肌に塗布した際に色彩、特に白色が生じないことを意味する。
【0031】
本発明に係る化粧料には、化粧料に配合可能な他の任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合することができる。他の任意成分としては、限定されないが、保湿剤、界面活性剤、油分、清涼化剤、防腐剤、キレート剤、香料、各種薬剤、安定化剤、着色剤、精油などが例示できる。
【0032】
本発明に係る化粧料においては、前記(A)成分および(B)成分の配合により、解離性のカルボキシル基を持つ有効成分を含む場合であっても一定条件下で十分な粘度を得ることができるので、特許文献1に開示されるトリメチルグリシンや特許文献2に開示されるN-アシルグルタミン酸ジアルキルエステルを配合しなくともよい。よって、本発明に係る化粧料の態様には、トリメチルグリシンおよび/またはN-アシルグルタミン酸ジアルキルエステルを含まない態様が包含される。
【実施例0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0034】
1.透明性
各試料を調製した後、外観を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。下記基準においてA~C評価である場合には、化粧料を肌に塗布しても色彩(白色)が表れない。
<評価基準>
A:まったく濁りがなく、透明である
B:微かな濁りが見られる
C:一部に顕著な濁りがある
D:全体的に顕著な濁りがある
【0035】
2.使用性評価(塗布時のみずみずしさ)
専門パネラー10名による実使用試験を行った。各試料を肌へ塗布した際のみずみずしい使用感触について、下記評価基準に基づいて評価した。
<評価基準>
A:かなりみずみずしい
B:みずみずしい
C:あまりみずみずしさを感じない
D:まったくみずみずしさを感じない
【0036】
3.使用性評価(べたつきのなさ)
専門パネラー10名による実使用試験を行った。各試料を肌へ塗布した際のべたつき感について、下記評価基準に基づいて評価した。
<評価基準>
A:まったくべたつきを感じない
B:べたつきをほとんど感じない
C:ややべたつきがある
D:べたつきがある
【0037】
4.粘度の残存割合(%)
各実施例および比較例の化粧料について、(C)成分を除く成分を混合して得た組成物を試料1とし、(C)成分を含む全成分を混合して得た化粧料を試料2とし、それぞれの試料の粘度をTVB-15形粘度計(東機産業社製)、ローターNo.1、No.2、No.3およびNo.4、回転数12rpm、1分間の条件で測定した。測定して得た試料1の粘度の値を、試料2の粘度の値で除して100を掛けた値を(C)成分を配合したときの粘度の残存割合(%)とした。
この残存割合が10%以上ある場合に、(C)成分による減粘作用が十分抑制され、粘度安定性があると評価した。
【0038】
(実施例1~10および比較例1~10)
下記表1に掲げた組成を有するジェル状化粧料を常法により調製した。具体的には、中和剤(水酸化カリウム)と本発明の(C)成分を除く成分を精製水に混合溶解した。前記溶解液に中和剤を添加した後、(C)成分を添加してジェル状化粧料を得た。添加に際しては、必要に応じ、攪拌しながら行った。調製した化粧料について、前記した評価方法に従って透明性、使用性および粘度の残存割合を測定した。結果は表に併せて示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示されるように、本発明の(A)成分を用いず、(B)成分のみで増粘した場合には(比較例7)、(C)成分による減粘作用の影響が低く、粘度安定性があるが、みずみずしい使用感が得られず、透明性も劣っていた。また、(B)成分を用いず、(A)成分のみで増粘した場合には(比較例1~6)、(A)成分の組み合わせや配合量を種々変更しても(C)成分による減粘作用を十分に抑制できず、粘度安定性が得られなかった。また、透明性およびみずみずしい使用感がともに劣っていた。この結果から、本発明の化粧料においては、(C)成分の減粘作用を抑制するために(B)成分が必須であることが示された。
【0041】
本発明の(A)および(B)成分を含む場合であっても、(A)成分の配合量(質量%)を化粧料100g中に含まれる(C)成分が持つカルボキシル基の数で除した値が2.46~5.94を外れる場合(比較例8および9)には、べたつきが生じた。また、2.46よりも低い値のもの(比較例8)は(C)成分配合後の粘度が十分に保てなかった。
さらに、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを0.3質量%含む場合(比較例10)には、みずみずしい使用感が失われ、べたつきが生じる傾向となった。
【0042】
一方、本発明の(A)および(B)成分を含み、(A)成分の配合量(質量%)を化粧料100g中の(C)成分が持つカルボキシル基またはその塩の数で除した値が2.46~5.94である実施例の化粧料はいずれも、透明性、みずみずしい使用感、べたつきのなさに優れ、(C)成分による減粘作用が十分に抑制され、良好な粘度安定性が得られた。
【0043】
(実施例11~14)
表1と同様に、下記表2に掲げた組成を有するジェル状化粧料を調製した。調製した化粧料について、前記した評価方法に従って透明性、使用性および粘度の残存割合を測定した。結果は表に併せて示す。なお、表2中の実施例5は表1の実施例5と同じものである。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示されるように、(C)成分を種々変更した場合であっても、(A)成分の配合量(質量%)を化粧料100g中の(C)成分が持つカルボキシル基またはその塩の数で除した値を2.46~5.94に調製することにより、透明性・みずみずしい使用感・べたつきのなさに優れ、良好な粘度安定性を有する化粧料が得られた。