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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175461
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20241211BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241211BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20241211BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20241211BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G01N23/046
G06T7/00 610Z
G06T7/60 300Z
G01N23/18 310
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093258
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】中本 智
【テーマコード(参考)】
2G001
3D131
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA04
2G001HA07
2G001HA14
2G001KA04
2G001KA05
2G001LA05
2G001MA06
3D131LA22
5L096AA03
5L096AA06
5L096BA03
5L096DA01
5L096EA02
5L096EA37
5L096EA43
5L096FA02
5L096FA54
5L096FA60
5L096FA69
5L096GA10
5L096GA51
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】CT画像から溝を上手く抽出する方法を提供する。
【解決手段】タイヤの断面をCT装置にて撮影して取得され、複数の溝が現れたCT画像を、閾値を使用して二値化するステップを含む画像処理方法において、前記CT画像を二値化することにより、前記タイヤの部分が白くなりその周囲が黒くなった第1画像とし、前記第1画像の溝の色を白に変換した上で白黒反転させることにより第2画像とし、前記第1画像と前記第2画像の両方において黒い部分を溝と判定する、画像処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの断面をCT装置にて撮影して取得され、複数の溝が現れたCT画像を、閾値を使用して二値化するステップを含む画像処理方法において、
前記CT画像を二値化することにより、前記タイヤの部分が白くなりその周囲が黒くなった第1画像とし、
前記第1画像の溝の色を白に変換した上で白黒反転させることにより第2画像とし、
前記第1画像と前記第2画像の両方において黒い部分を溝と判定する、画像処理方法。
【請求項2】
同じ画素において前記第1画像における輝度と前記第2画像における輝度を加算した結果が0となる画素を溝と判定する、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記第1画像に対して膨張収縮処理を行うことにより溝の色を白に変換する、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項4】
溝の開口端が開放された状態で前記CT画像を撮影する、請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CT装置でタイヤ断面を撮影したCT画像に基づき、タイヤについて評価を行うことが知られている。CT画像では、タイヤ断面が明るく写り、タイヤ周辺領域が暗く写る。特許文献1に記載のように、このようなCT画像からタイヤの部分だけを抽出することが行われている。特許文献1には、タイヤの部分を手動又は自動で指定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-002841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、出願人は、CT画像に基づきタイヤの溝について評価することを検討している。そのために、CT画像から溝を抽出する必要がある。
【0005】
しかし、CT画像における溝は、明るく写るタイヤの部分ではなく、暗く写る何もない部分である。従って、溝を抽出するためには、タイヤの部分を抽出する方法とは異なる方法が必要となる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、CT画像から溝を上手く抽出する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0008】
[1]タイヤの断面をCT装置にて撮影して取得され、複数の溝が現れたCT画像を、閾値を使用して二値化するステップを含む画像処理方法において、前記CT画像を二値化することにより、前記タイヤの部分が白くなりその周囲が黒くなった第1画像とし、前記第1画像の溝の色を白に変換した上で白黒反転させることにより第2画像とし、前記第1画像と前記第2画像の両方において黒い部分を溝と判定する、画像処理方法。
【0009】
[2]同じ画素において前記第1画像における輝度と前記第2画像における輝度を加算した結果が0となる画素を溝と判定する、[1]に記載の画像処理方法。
【0010】
[3]前記第1画像に対して膨張収縮処理を行うことにより溝の色を白に変換する、[1]又は[2]に記載の画像処理方法。
【0011】
[4]溝の開口端が開放された状態で前記CT画像を撮影する、[1]~[3]のいずれかに記載の画像処理方法。
【発明の効果】
【0012】
上記の実施形態によれば、CT画像から溝を上手く抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像処理のフローチャート。
図2】第1画像。
図3】第2画像。
図4】第1画像と第2画像の輝度の足し合わせの結果を示す図。
図5】それぞれの画像での輝度を示す図。
図6】変更例において溝を抽出する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0015】
本実施形態は、X線を使用して空気入りタイヤ(以下「タイヤ」とする)の断面のCT画像を撮影するCT(Computed Tomography)装置と、CT装置で撮影されたCT画像の処理を行う画像処理装置とにより実行される。
【0016】
CT装置は、タイヤ周方向の任意の位置におけるタイヤ断面のCT画像を撮影する。CT装置が撮影するタイヤ断面は、タイヤ外周面に対する垂線とタイヤ回転軸とを通る平面上にある。CT画像においては、X線が吸収されやすい部分ほど明るく写り、X線が透過されやすい部分ほど暗く写る。そのため、CT画像には、タイヤの部分が明るく写り、何もない場所が暗く写る。CT装置によれば、タイヤを切断することなく、タイヤ断面の画像を取得することができる。
【0017】
評価装置は、処理装置、記憶装置、入力装置及び表示装置を含むコンピュータにより実現される。記憶装置として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等が設けられている。記憶装置には、本実施形態を実行するためのプログラム、CT装置で撮影されたCT画像、後述する画像処理に関するデータ等が記憶される。処理装置はCPU(Central Processing Unit)等で構成されている。処理装置は、ROM等に記憶されているプログラムをRAM上に読み出して実行することにより、本実施形態の方法を実行する。入力装置は、例えばマウス及びキーボードであり、評価装置の利用者(以下「利用者」とする)からの入力を受け付ける。表示装置は、例えばディスプレイであり、入力装置により入力するための入力画面、CT画像、画像処理に関するデータ、画像処理結果等を表示する。
【0018】
ここで説明する実施形態においては、CT画像に複数の主溝が現われ、それら主溝の抽出が実行されるものとする。ただし、後述する変更例5及び変更例6に示すように、ここで説明する方法は主溝以外の溝にも適用可能である。
【0019】
まず、利用者は、CT装置でタイヤ断面を撮影する。具体的には、利用者は、インフレート時のタイヤであり、かつ、路面(路面とは、タイヤが接地する対象となる面のことで、例えば密粒アスコン、コンクリート、鋼板、樹脂等のいずれかからなる面のことである)に接地しておらず荷重が負荷されていない状態のタイヤの断面を撮影する。このとき、タイヤの主溝が路面で塞がれておらず、主溝の開口端(タイヤ径方向外側への開口端)が開放された状態で撮影される。撮影されたCT画像には、タイヤの断面が周囲よりも明るく写っている。また、CT画像には、タイヤのトレッドに形成された複数の主溝が現われている。
【0020】
次に、利用者は、CT画像を評価装置に読み込む。評価装置は、読み込んだCT画像に対して、図1に示す画像処理を行う。
【0021】
まず、評価装置に読み込まれたCT画像は、グレースケールの画像に変換される(図1のS1-1)。変換により、CT画像が、黒を0、白を255とする0から255までの256階調の画像になる。以下の説明において、階調を表す数値のことを輝度とする。輝度が大きいほど白に近く、輝度が小さいほど黒に近い。
【0022】
グレースケールに変換されたCT画像は、画像を構成する多数の画素それぞれの座標と輝度のデータを含んでいる。CT画像のサイズは、限定されないが、例えば縦横とも1000画素以上である。具体例としては、縦1200画素、横1800画素である。
【0023】
次に、必要に応じて、CT画像のトリミングが実行される(図1のS1-2)。トリミングにより、CT画像から、主溝の抽出に不要な部分が除去される。トリミング後に取得されるトリミング画像には、タイヤのトレッドの全体が写っており、トレッドに形成された複数の主溝も写っている。トリミング画像における主溝は、路面によって塞がれることなく、タイヤ径方向外側へ向かって開口している。
【0024】
次に、トリミング画像の二値化処理が実行される(図1のS1-3)。二値化処理により、輝度が閾値より大きい画素は白の画素に変換される。また、輝度が閾値より小さい画素は黒の画素に変換される。閾値として、タイヤの部分が白くなり、タイヤの周囲の何もない部分が黒くなるような輝度が選択される。そのような輝度は、画像にもよるが、例えば50~70である。図2に、二値化処理後の画像である二値化画像を示す。二値化画像において、タイヤ1は白く、主溝2は黒く写っている。
【0025】
CT画像(トリミング画像を含む)が二値化されて取得された二値化画像を、第1画像とする。第1画像において、タイヤ1は輝度が255である白の画素からなり、その他の部分(主溝2を含む)は輝度が0である黒の画素からなる。
【0026】
次に、第1画像(二値化画像)における主溝2の色が白に変換される(図1のS1-4)。本実施形態では、変換の手段として、膨張収縮処理が実行される。
【0027】
ここで、膨張処理においては、所定の形状及び大きさを有するカーネルが画像内で走査される。そして、走査中の各位置において、注目画素を中心とするカーネル内に信号値1(白)の画素が1つでも含まれていれば注目画素の信号値が1とされる(すなわち、注目画素の信号値が元々1であった場合は1のままとされ、0であった場合は1に変換される)。そのため、膨張処理によって白の領域が膨張する。また、膨張処理によって小さな黒のノイズ(欠け等)が消滅する。
【0028】
また、収縮処理においては、上記のカーネルが画像内で走査される。そして、走査中の各位置において、注目画素を中心とするカーネル内に信号値0(黒)の画素が1つでも含まれていれば注目画素の信号値が0とされる(すなわち、注目画素の信号値が元々0であった場合は0のままとされ、1であった場合は0に変換される)。そのため、収縮処理によって白の領域が収縮する。また、収縮処理によって小さな白のノイズが消滅する。
【0029】
本実施形態の膨張収縮処理においては、まず1回の膨張処理が実行され、それに続いて1回の収縮処理が実行される。それにより、主溝の色が白に変換された画像が取得される。第1画像の主溝の色が白に変換された画像を「主溝変換画像」とする。主溝変換画像は、主溝の色が白である点で、第1画像と異なる。
【0030】
このような膨張収縮処理において、カーネルの形状及びサイズは、第1画像における主溝の全体を白に変換でき、かつ、第1画像におけるタイヤ及び主溝以外の部分を白に変換しないように設定される。ここで、カーネルのサイズとは、カーネルの中心から一番外側の点までの画素数のことであり、カーネルの形状が円の場合は半径のことである。
【0031】
一例としては、カーネルのサイズは、主溝の深さ以上かつ主溝の幅の半分以上で、タイヤのトレッドの左右方向中央での厚みの半分以下に設定される。
【0032】
また、カーネルのサイズは、膨張処理が実行されたときにトレッドの白い領域が第1画像の縁に到達しないサイズが好ましい。膨張処理によりトレッドの白い領域が第1画像の縁に到達してしまうと、その後収縮処理が実行されてもトレッドの形状が元に戻れなくなるためである。トレッドの白い領域が第1画像の縁に到達しないサイズを決定するために、例えば、第1画像におけるトレッドの輪郭線のX座標(左右方向の座標)及びY座標(上下方向の座標)の最大値及び最小値が特定される。そして、最大値及び/又は最小値に基づきトレッドの輪郭線と第1画像の縁との最短距離が特定され、その最短距離に基づきカーネルのサイズが決定される。
【0033】
なお、膨張時と収縮時で、カーネルの形状及び大きさは同じである。
【0034】
主溝変換画像が取得された後、その主溝変換画像に対して白黒反転処理が実行される(図1のS1-5)。白黒反転処理により、主溝変換画像において白かった画素が黒くなり、主溝変換画像において黒かった画素が白くなる。これにより、図3に示す、タイヤ及び主溝が黒で、その他の部分が白い画像が取得される。
【0035】
主溝変換画像の白黒反転処理後に取得される画像を第2画像とする。第2画像において、タイヤ及び主溝の部分は輝度が0である黒の画素からなり、その他の部分は輝度が255である白の画素からなる。
【0036】
次に、第1画像と第2画像の両方において黒い部分が特定される(図1のS1-6)。その特定方法として、第1画像と第2画像の輝度の足し合わせが実行される。詳細には、第1画像と第2画像の全ての画素について、同じ座標の画素同士の間で、それぞれの輝度の加算が実行される。第1画像と第2画像の一方において白で他方において黒い画素は、加算の結果が255となり、第1画像と第2画像の両方において黒い画素は、加算の結果が0となる。
【0037】
具体的には、図5に示すように、タイヤの部分の画素は第1画像では輝度が255(色は白)で第2画像では輝度が0(色は黒)なので、加算の結果が255となる。また、主溝の部分の画素は第1画像でも第2画像でも輝度が0(色は黒)なので、加算の結果が0となる。また、その他の部分(タイヤでも主溝でもない部分)の画素は第1画像では輝度が0(色は黒)で第2画像では輝度が255(色は白)なので、加算の結果が255となる。これらのことから、主溝を構成する画素のみが、加算の結果が0となることがわかる。
【0038】
図2に示す第1画像と、図3に示す第2画像の輝度の足し合わせの結果は、輝度分布として図4のように示される。この図4から、足し合わせにより主溝が黒くなりその他の部分が白くなったことが視認できる。ただし、膨張収縮処理の影響等により、主溝以外の場所にも、若干の黒い部分がノイズとして発生している。
【0039】
次に、第1画像と第2画像の両方において黒い部分が主溝であると判定され、その部分が抽出される(図1のS1-7)。例えば、利用者が図4の輝度分布を目視して黒い部分を主溝であると判定しその部分を選択することにより、主溝が抽出される。
【0040】
抽出された主溝のデータは、タイヤの主溝に関わる評価に利用される。タイヤの主溝に関わる評価として、タイヤが有するそれぞれの主溝の断面積の評価が挙げられる。主溝の断面積は、主溝と判定された部分の画素数に、1画素当たりの実際の面積を乗じることにより、求めることができる。1画素当たりの実際の面積は、画像中のスケールバー等を利用して求めることができる。
【0041】
また、このようにして求まる主溝の断面積から、タイヤの排水性能や、主溝で発生する気柱管共鳴音のレベルについて、評価することができる。
【0042】
また、タイヤの主溝に関わる評価として、主溝の断面形状を利用した評価が挙げられる。例えば、タイヤが無負荷のときと荷重が負荷されたときのCT画像が撮影され、それぞれのCT画像から抽出される主溝の断面形状の変化から、トレッドに形成されたブロックの潰れ方を評価することができる。また、タイヤに上から荷重が負荷されたときと横力が負荷されたときのCT画像が撮影され、それぞれのCT画像から抽出される主溝の断面形状の変化から、横力が負荷されたことによるブロックの倒れ込みについて評価することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態の画像処理方法では、CT画像の二値化処理によりタイヤ部分が白くなった第1画像が取得され、第1画像の主溝の色が白に変換されたうえ白黒反転された第2画像が取得され、第1画像と第2画像の両方において黒い部分が主溝と判定される。これにより、CT画像から主溝を上手く抽出することができる。
【0044】
また、本実施形態では、同じ画素において、第1画像における輝度と第2画像における輝度が加算され、その結果が0となる画素が主溝と判定される。これにより、容易に、第1画像と第2画像の両方において黒い部分を主溝として抽出することができる。
【0045】
また、本実施形態では、第1画像の主溝の色を白に変換する方法として、膨張収縮処理が実行される。これにより、容易に、第1画像の主溝の色を白に変換することができる。
【0046】
また、本実施形態では、主溝の開口端が開放された状態でCT画像がされる。この場合、CT画像において主溝が白い部分で囲まれないので、従来は主溝の抽出が容易でなかった。しかし、本実施形態の方法によれば主溝を容易に抽出することができる。
【0047】
以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。以下で説明する変更例のいずれか1つを上記実施形態に適用しても良いし、いずれか2つ以上を組み合わせて上記実施形態に適用しても良い。組み合わせは自在に行うことができる。
【0048】
<変更例1>
タイヤが路面に接地した状態でCT装置による撮影がなされ、タイヤと路面との接触部分についてCT画像が取得されても良い。その場合、主溝のタイヤ径方向外側への開口端が路面で閉塞されているため、CT画像では、明るいタイヤと明るい路面とに暗い主溝が挟まれている。このようなCT画像からも、上記実施形態の方法により主溝を抽出することができる。
【0049】
<変更例2>
第1画像における主溝の色を白に変換する方法として、膨張収縮処理以外の方法が採用されても良い。例えば、利用者が手作業で第1画像における主溝を白で埋めても良い。
【0050】
<変更例3>
第1画像と第2画像の両方において黒い部分を特定する方法は、輝度の加算に限定されない。例えば、加算等の計算をすることなく、第1画像と第2画像の両方において輝度が0である画素が、第1画像と第2画像の両方において黒い部分として特定されても良い。
【0051】
<変更例4>
第1画像と第2画像の両方において黒い部分を、自動的に抽出する方法もある。その方法について、図6に基づき説明する。
【0052】
まず、第1画像と第2画像の輝度の足し合わせの結果として取得される図4の画像において、全ての黒い画素の座標がリスト化される(図6のS2-1)。このとき作成されるリストを第1リストとする。
【0053】
次に、近傍点探索の開始点となる画素が特定される。本実施形態においては、第1リストの最初の画素、すなわちX座標が最小の画素が、近傍点探索の開始点として特定される(図6のS2-2)。
【0054】
次に、ステップS2-2で特定された画素を開始点にして、近傍点探索が実行される(図6のS2-3)。近傍点探索は、先に特定した画素の所定範囲内にあり先に特定した画素に最も近い画素を、次の画素として特定することを繰り返し、それにより、特定した複数の画素の集合を抽出する手法である。
【0055】
具体的には、まず、第1リスト内の開始点以外の画素の中から、開始点から所定範囲内にあり開始点に最も近い画素が探索され、見つかった画素が2番目の画素として特定される。次に、第1リストに含まれかつ未だ特定されていない画素の中から、2番目の画素から所定範囲内にあり2番目の画素に最も近い画素が探索され、見つかった画素が3番目の画素として特定される。このように、先に特定した画素に最も近い画素(ただしその時点までに特定されていない画素で、かつ、先に特定した画素から所定範囲内にある画素)を次の画素として特定することが、繰り返される。ここで、「所定範囲内」は、例えば、先に特定された画素と上下左右及び斜めに隣接する範囲である。
【0056】
このように所定範囲内の画素だけが次の画素として特定されることにより、図4の画像の中で1つの黒いまとまりを形成している画素だけが特定され抽出される。そして、先に特定された画素に最も近い次の画素が所定範囲内になくなり、次の画素を特定できなくなった時点で、近傍点探索が終了する。
【0057】
次に、ステップS2-3の近傍点探索により特定された全ての画素が、1つのグループにまとめられる(図6のS2-4)。このとき作成されるグループを第1グループとする。
【0058】
次に、ステップS2-1で作成された第1リストから、ステップS2-4で作成された第1グループに含まれる全ての画素のデータが除去される(図6のS2-5)。除去された後のリストを第2リストとする。
【0059】
次に、リスト(第2リスト)に画素のデータがなくなったか、すなわちリスト内のデータの有無が確認される(図6のS2-6)。第2リストには、第1グループに含まれなかった画素のデータが残っている(図6のS2-6の「あり」)。この場合、再びステップS2-2に戻り、次に行われる近傍点探索の開始点が特定される。このとき、例えば、第2リストにおいてX座標が最小の画素が、次の近傍点探索の開始点として特定される。そして、ステップS2-3において近傍点探索が実行され、ステップS2-4において2つ目のグループである第2グループが作成され、ステップS2-5において第2グループに含まれる全ての画素のデータが第2リストから除去される。
【0060】
このように、第nリスト(第1リストに含まれる画素から第n-1グループまでの全ての画素が除去されたリスト)にある画素の1つを開始点として特定するステップ(図6のS2-2)、開始点から近傍点探索を実行するステップ(図6のS2-3)、近傍点探索により求まる複数の画素を第nグループに分類するステップ(図6のS2-4)、及び、第nグループに含まれる全ての画素のデータを第nリストから除去するステップ(図6のS2-5)が、リストにデータがなくなるまで繰り返される。そして、ステップS2-6においてリストに画素のデータがなくなった場合(図6のS2-6の「なし」)に、画像処理が終了する。
【0061】
図6の画像処理により、複数の黒い画素の集合であるグループが複数個作成される。このとき作成されるグループには、主溝に対応するグループ(主溝の画素からなるグループ)と、ノイズに対応するグループ(ノイズの画素からなるグループ)がある。
【0062】
次に、作成されたそれぞれのグループに含まれる画素数がカウントされる。図4の画像において、主溝としての黒い部分は大きく、ノイズとしての黒い部分は小さい。そのため、主溝に対応するグループは画素数が多く、ノイズに対応するグループは画素数が少ない。
【0063】
次に、画素数が多い順に、主溝の数と同数のグループが、主溝に対応するグループとして特定される。図4の画像の場合、4つの主溝があるので、画素数が多い順に4つのグループが、主溝に対応するグループとして特定される。このようにして、ノイズは別にして、第1画像と第2画像の両方において黒い部分を、主溝として抽出することができる。
【0064】
この変更例では、それぞれのグループに属する画素の座標から、それぞれのグループの重心の座標を計算することができる。そこで、それぞれのグループの重心の座標を利用して、それぞれのグループがどの主溝に対応するかを自動的に判断することができる。例えば、重心のX座標が小さい方から順に、反セリアル側のショルダー主溝、反セリアル側のセンター主溝、セリアル側のセンター主溝、セリアル側のショルダー主溝に対応するグループである、と自動的に判断することができる。
【0065】
<変更例5>
上記実施形態と同じ向きの断面(タイヤ外周面に対する垂線とタイヤ回転軸とを通る平面上の断面)が撮影されたCT画像に、主溝以外の溝、例えば、主溝よりも幅が狭くタイヤ周方向に延びる溝、主溝よりも幅が狭くタイヤ周方向に対して傾斜して延びる溝、サイプ等が現れる場合がある。それらの場合も、上記実施形態の方法により、CT画像に現れた溝を抽出することができる。
【0066】
<変更例6>
CT装置にてタイヤ周方向の断面を撮影することもできる。その場合に取得されるCT画像には、タイヤ軸方向に延びる溝や、タイヤ軸方向に対して傾斜する方向に延びる溝が現れる。それらの溝として、例えば、スロット、スリット、ノッチ、サイプ等がある。このようなCT画像からも、上記実施形態の方法により溝を抽出することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…第1画像におけるタイヤ、2…第1画像における主溝

図1
図2
図3
図4
図5
図6