(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175478
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】埋めバーの脱着治具
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
E04F15/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093293
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小川 卓也
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA43
2E220AB10
2E220FA11
(57)【要約】
【課題】埋めバーの脱着を短時間かつ容易に行うことができる埋めバーの脱着治具を提供する。
【解決手段】平坦な床面が形成された床板1に溝2が形成され、溝2に移動用レール3が敷設されて搬送装置の移動を支援し、搬送装置を用いない場合に移動用レール3の少なくとも一部を埋めて床面を同一面にする埋めバー4が取り付けられる移動支援設備における埋めバー4の脱着を支援する埋めバー4の脱着治具10であって、埋めバー4に沿う板状基部11と、板状基部11の中央部に設けられた取っ手12と、板状基部11の両端側に形成された貫通孔14を介して取っ手12側からそれぞれ挿入されて埋めバー4の被螺合部である、ねじ穴15に螺合可能なノブボルト13と、を備え、貫通孔14は、埋めバー4のねじ穴15に対応する位置に形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な床面が形成された床板に溝が形成され、該溝あるいは移動用レールが敷設された該溝を介して搬送装置の移動を支援し、前記搬送装置を用いない場合に前記溝を埋めて前記床面を同一面にする埋めバーが取り付けられる移動支援設備における前記埋めバーの脱着を支援する埋めバーの脱着治具であって、
前記埋めバーに沿う板状基部と、
前記板状基部の中央部に設けられた取っ手と、
前記板状基部の両端側に形成された貫通孔を介して前記取っ手側からそれぞれ挿入されて前記埋めバーの被螺合部に螺合可能なノブボルトと、
を備え、
前記貫通孔は、前記埋めバーの被螺合部に対応する位置に形成されることを特徴とする埋めバーの脱着治具。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記埋めバー側の径を、前記ノブボルトが挿通される前記取っ手側の径よりも大きくした段差部が形成され、
前記ノブボルトの基部側の径は、前記ノブボルトの先端螺合部の径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の埋めバーの脱着治具。
【請求項3】
前記ノブボルトの先端螺合部は、前記取っ手側の貫通孔のねじ穴に螺合して挿通され、前記埋めバー側の貫通孔の空間に突出することを特徴とする請求項2に記載の埋めバーの脱着治具。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記被螺合部間の幅が異なる埋めバーに対応して複数対、設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の埋めバーの脱着治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋めバーの脱着を短時間かつ容易に行うことができる埋めバーの脱着治具に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置などでは、異なる製品を成形するためにその都度、金型の段替えを行う。この金型の迅速な交換を行うために、金型を運搬する段替え装置が用いられている。この段替え装置は、プレス装置に対して移動用のレールが敷設され、このレール上に、金型を運搬する台車などの搬送装置が移動する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の段替え装置では、搬送装置の移動用のレールが床の溝に配置される。この搬送装置が使用されない休止期間では、この溝の存在により床を移動する装置の走行が不安定になったり、人がつまずいてしまうため、溝の上面と床面とが面一となるように、レールの上部から覆って溝を塞ぐ埋めバーが取り付けられる。
【0005】
この埋めバーは、搬送装置を使用する場合に取り外されるが、埋めバーは溝に密着して、はめ込まれるため、取り外しは容易でない。従来は、この埋めバーを取り外す場合、作業者がバールなどの工具を駆使していたため、埋めバーの取り外しの作業時間が長くなるとともに、作業時間の見積もりが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、埋めバーの脱着を短時間かつ容易に行うことができる埋めバーの脱着治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、平坦な床面が形成された床板に溝が形成され、該溝あるいは移動用レールが敷設された該溝を介して搬送装置の移動を支援し、前記搬送装置を用いない場合に前記溝を埋めて前記床面を同一面にする埋めバーが取り付けられる移動支援設備における前記埋めバーの脱着を支援する埋めバーの脱着治具であって、前記埋めバーに沿う板状基部と、前記板状基部の中央部に設けられた取っ手と、前記板状基部の両端側に形成された貫通孔を介して前記取っ手側からそれぞれ挿入されて前記埋めバーの被螺合部に螺合可能なノブボルトと、を備え、前記貫通孔は、前記埋めバーの被螺合部に対応する位置に形成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の発明において、前記貫通孔は、前記埋めバー側の径を、前記ノブボルトが挿通される前記取っ手側の径よりも大きくした段差部が形成され、前記ノブボルトの基部側の径は、前記ノブボルトの先端螺合部の径よりも小さくしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記ノブボルトの先端螺合部は、前記取っ手側の貫通孔のねじ穴に螺合して挿通され、前記埋めバー側の貫通孔の空間に突出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記貫通孔は、前記被螺合部間の幅が異なる埋めバーに対応して複数対、設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、埋めバーの脱着を短時間かつ容易に行うことができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る埋めバーの脱着治具が用いられる移動支援設備の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した移動支援設備のA-A線断面図である。
【
図3】
図3は、脱着治具の構成を示すとともに脱着治具を用いた埋めバーの脱着を説明する図である。
【
図4】
図4は、ノブボルトの貫通孔への挿入と埋めバーのねじ穴への螺合を説明する図である。
【
図5】
図5は、ノブボルトが貫通孔に挿入された状態を示す図である。
【
図6】
図6は、埋めバーの他の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例にかかる脱着治具の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る埋めバーの脱着治具について説明する。
【0014】
<移動支援設備>
図1は、本実施の形態に係る埋めバーの脱着治具が用いられる移動支援設備100の一例を示す図である。この移動支援設備100は、平坦な床面が形成された床板1に溝2が形成され、この溝2に移動用レール3が敷設される。移動用レール3は、台車などの搬送装置20の移動を支援する。
図1では、搬送装置20が移動用レール3の+X方向の待機位置に置かれている。搬送装置20の載置面には、段替え用の金型31が積載されている。プレス装置30は、移動用レール3の-X方向の端部に配置され、搬送装置20が-X方向に搬送した金型31に交換されるとともに、交換された金型は、搬送装置20に積載されて+X方向に搬送される。すなわち、搬送装置20は、移動用レール3に沿って±X方向である方向AR2に沿って移動する。
【0015】
ここで、床板1の床面は、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)の移動領域200が移動用レール3と交差する移動領域200が存在するため、搬送装置20を用いない場合、移動用レール3の少なくとも一部である移動領域200に埋めバー4を埋めて床面を同一面にし、無人搬送車の移動をスムーズにする。なお、無人搬送車は、AGV用磁気テープ201に沿った方向AR1に移動する。なお、埋めバー4は、移動用レール3が敷設される溝2の全面を塞ぐようにしてもよい。この場合、複数の埋めバー4が直列に配置される。
【0016】
図2は、
図1に示した移動支援設備100のA-A線断面図である。
図2に示すように、移動用レール3は、溝2内に配置される。埋めバー4は、溝2に嵌まるように移動用レール3の上面に配置された板状部材であり、床面と同一面を形成する。従来、この埋めバー4は、作業者がバールなどの工具を用いて取り外していたため、作業が困難であり、作業時間もかかっていた。このため、本実施の形態では、埋めバー4の脱着を容易にする脱着治具10(
図3参照)を用いる。
【0017】
<脱着治具>
図3は、脱着治具10の構成を示すとともに脱着治具10を用いた埋めバー4の脱着を説明する図である。
図3に示すように、脱着治具10は、板状基部11、取っ手12及びノブボルト13を有する。板状基部11は、移動用レール3に沿う板状部材である。取っ手12は、板状基部11の中央部に設けられる。板状基部11の両端側には、一対の貫通孔14が形成され、一対のノブボルト13は、取っ手12側からそれぞれ挿入されて埋めバー4の被螺合部である、一対のねじ穴15に螺合する(
図3(b))。そして、ノブボルト13がねじ穴15に螺合した状態で、取っ手12を+Z方向に引き上げることにより、埋めバー4を溝2から取り外すことができる。なお、埋めバー4の溝2への取り付けは、ノブボルト13がねじ穴15に螺合した状態で行い、取り付け後にねじ穴15からノブボルト13を外す。なお、一対の貫通孔14は、一対のねじ穴15に対応する位置に形成される。
【0018】
図4は、ノブボルト13の貫通孔14への挿入と埋めバー4のねじ穴15への螺合を説明する図である。ノブボルト13は、ねじ頭にノブ13cが取り付けられたノブ付きねじであり、ドライバーなどの工具を必要とせずに、ノブボルト13を回すことができる。ノブボルト13のねじ部は、ねじ山が形成された先端螺合部13aと基部13bとを有する。ノブボルト13の基部13bの径d12は、先端螺合部13aの径d11よりも小さく形成されている。
【0019】
一方、貫通孔14は、取っ手12側に先端螺合部13aに螺合する、ねじ穴14bが形成され、ねじ穴14bの埋めバー4側に、ねじ穴14bの径d2よりも大きい径d1をもつ先端貫通孔14aが形成される。そして、ねじ穴14bと先端貫通孔14aとの間に段差部が形成される。なお、ねじ穴14bの径d2と、先端螺合部13aの径d11と、埋めバー4のねじ穴15の径d21とは同じ径である。
【0020】
したがって、
図4(a)に示すように、ノブボルト13を貫通孔14に挿着する場合、まず先端螺合部13aがねじ穴14bに螺合する。そして、
図4(b)に示すように、先端螺合部13aがねじ穴14bを通過すると、先端螺合部13aは先端貫通孔14aの空間に突出する。その後、
図4(c)に示すように、先端螺合部13aを埋めバー4のねじ穴15に螺合させることにより、脱着治具10の板状基部11と埋めバー4とが連結固定される。なお、この際、ノブボルト13のノブ13cの下部面は、板状基部11の上面に密着する。これにより、脱着治具10の取っ手12を上方(+Z方向)に引き上げることにより、容易に埋めバー4を溝2から取り外すことができる。なお、ねじ部の長さ(基部13bと先端螺合部13aとの合計長さ)は、板状基部11よりも長くし、ノブ13cの下部面が板状基部11の上面に密着した際、先端螺合部13aがねじ穴15に螺合している状態を形成する。
【0021】
図5は、ノブボルト13が貫通孔14に挿入された状態を示す図である。
図5に示すように、ねじ穴14bと先端貫通孔14aとの間には段差部が形成され、基部13bの径は、先端螺合部13aの径よりも小さく、ねじ穴14bの径よりも小さい。このため、基部13bの軸は貫通孔14の軸に対して傾き、あるいは±X方向にスライドし、段差部に係合する。これにより、ノブボルト13が貫通孔14から抜けにくくなる。また、先端螺合部13aとねじ穴14bとの螺合の困難性も加えて、ノブボルト13は貫通孔14からさらに抜けにくくなる。これにより、脱着治具10が転倒しても、ノブボルト13は外れなくなる。
【0022】
ノブボルト13は、常に
図5に示した状態で貫通孔14に挿着しておくことが好ましく、これにより、ノブボルト13の貫通孔14への挿入作業が不要になる。また、ノブボルト13の紛失を防止することができる。なお、貫通孔14では、ねじ穴14bを形成しているが、ねじ穴14bに替えて貫通孔としてもよい。
【0023】
本実施の形態では、脱着治具10のノブボルト13の回転のみにより、埋めバー4の脱着作業を短時間かつ容易に行うことができる。また、バールやドライバーを用いる必要がないので埋めバー4の脱着作業を安全に行うことができる。さらに、ノブボルト13は、板状基部11から抜けにくくなっているので、ノブボルト13の紛失を防止することができる。
【0024】
なお、上記の実施の形態では、ねじ穴14bと先端貫通孔14aとの間に段差部を形成していたが、先端貫通孔14aの径をねじ穴14bの径と同じねじ穴にしてもよい。この場合、ノブボルト13の基部13bは、先端螺合部13aと同じ径のねじ山をもたせることが好ましい。また、先端貫通孔14aの径をねじ穴14bの径と同じにし、ねじ穴14bのねじ山を取り除いた貫通孔であってもよい。
【0025】
また、上記の実施の形態の埋めバー4は、溝2に嵌まるように移動用レール3の上面に配置された板状部材であったが、
図6に示すように、埋めバーは、溝2全体を埋める角柱状の埋めバー5であってもよい。搬送装置20の車輪の外周部にU溝などが形成されている場合、
図2に示すように、このU溝などに対応した移動用レール3が必要であるが、
図6に示すように、搬送装置20の車輪の外周部が溝2を直接、ガイド溝として用いてもよい。この場合も、埋めバー5は角柱状をなし、溝2全体を埋め、埋めバー5の上面は、床面と同一面を形成する。
【0026】
<変形例>
図7は、変形例にかかる脱着治具10の構成を示す図である。
図7に示すように、本変形例では、埋めバー4に設けられる、ねじ穴15の配置位置に対応して板状基部11に複数対の貫通孔14,24,34が設けられている。これにより、種々の埋めバー4に対して、1つの脱着治具10により埋めバー4の脱着作業を行うことができる。
【0027】
また、本変形例では、ねじ穴15の上面に、周辺に向けて傾斜して周縁が床面に一致する位置決め突起16が設けられ、対応する貫通孔14,24,34の底面側に位置決め凹部17を設けている。これにより、埋めバー4のねじ穴15と、貫通孔14,24,34の位置決めとを容易に行うことができる。なお、位置決め突起16に替えて位置決め凹部とし、位置決め凹部17に替えて位置決め突起とする構成としてもよい。
【0028】
なお、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の埋めバーの脱着治具は、埋めバーの脱着を短時間かつ容易に行う場合に有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 床板
2 溝
3 移動用レール
4,5 埋めバー
10 脱着治具
11 板状基部
12 取っ手
13 ノブボルト
13a 先端螺合部
13b 基部
13c ノブ
14,24,34 貫通孔
14a 先端貫通孔
14b,15 ねじ穴
16 位置決め突起
17 位置決め凹部
20 搬送装置
30 プレス装置
31 金型
100 移動支援設備
200 移動領域
201 AGV用磁気テープ
AR1,AR2 方向
d1,d2,d11,d12,d21 径