IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社酉島製作所の特許一覧

<>
  • 特開-ポンプ 図1
  • 特開-ポンプ 図2
  • 特開-ポンプ 図3
  • 特開-ポンプ 図4
  • 特開-ポンプ 図5
  • 特開-ポンプ 図6
  • 特開-ポンプ 図7
  • 特開-ポンプ 図8
  • 特開-ポンプ 図9
  • 特開-ポンプ 図10A
  • 特開-ポンプ 図10B
  • 特開-ポンプ 図11
  • 特開-ポンプ 図12
  • 特開-ポンプ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175479
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20241211BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20241211BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F04D29/66 F
F04D13/00 A
F04D29/60 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093300
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
(72)【発明者】
【氏名】羽野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】潘 応康
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC07
3H130AC10
3H130BA09A
3H130BA09J
3H130BA97A
3H130BA97J
3H130CA03
3H130CA21
3H130DG02X
3H130DG05Z
3H130EA08J
(57)【要約】
【課題】ポンプの軽量化と空気吸込渦の抑制とを両立する。
【解決手段】ポンプ10は、水槽1の底近傍から上向きに延びるケーシング11と、ケーシング11内で上下方向に延在し、羽根車25と連結された回転軸20と、ケーシング11の外周側で上下方向に延在する1以上の延在部材32と、ケーシング11に対して延在部材32を周方向に変位させる変位機構50と、ケーシング11に延在部材32を取外し可能に固定する固定機構40と備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の底近傍から上向きに延びるケーシングと、
前記ケーシング内で上下方向に延在し、羽根車と連結された回転軸と、
前記ケーシング外で上下方向に延在する1以上の延在部材と、
前記ケーシングに対して前記延在部材を前記ケーシングの中心軸周りに周方向に変位させる変位機構と、
前記ケーシングに前記延在部材を取外し可能に固定する固定機構と、
を備える、ポンプ。
【請求項2】
前記延在部材の本数が2つであり、2つの前記延在部材が、周方向に60度から120度離れて配置される、
請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記1以上の延在部材の下端を支持するベース部材を更に備え、
前記ベース部材は、軸方向に見て円弧状に形成されたベースセグメントを含む、
請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
前記変位機構は、
前記ケーシングの外周側で周方向に延びるレールと、
前記レールに沿って移動可能な可動部と、
前記可動部と前記1以上の延在部材とを連結する連結部材と、
を有し、
前記可動部の移動に応じて、前記延在部材が前記ケーシングに対して周方向に変位する、
請求項1に記載のポンプ。
【請求項5】
前記レールが、前記延在部材の上端よりも上方に配置され、
前記1以上の延在部材が、前記連結部材を介し、前記可動部に吊り下げられる、
請求項4に記載のポンプ。
【請求項6】
前記1以上の延在部材の上端同士を互いに接続する接続部材を更に備え、
前記連結部材の下端が、前記接続部材に係止される、
請求項1に記載のポンプ。
【請求項7】
前記固定機構が、
前記延在部材に取り付けられ、ボルトが挿通されるボルト挿入穴を有するブラケットと、
前記ケーシングに周方向に間隔をあけて設けられ、前記ボルトが挿入される複数のボルト挿入穴と、
を有する、請求項1に記載のポンプ。
【請求項8】
前記ケーシングが、第1ケーシング部材、及び前記第1ケーシング部材の端部と連結される第2ケーシング部材を有し、前記第1ケーシング部材は、前記端部に前記第2ケーシング部材との連結のため径方向外周側に突出するフランジを有し、
前記複数のボルト挿入穴が、前記フランジに設けられる、
請求項7に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水槽の底近傍から上向きに延在するケーシングを備えた立軸ポンプを開示している。水は、水槽からケーシング下端の吸込口を介してケーシング内に流入する。水位が低いと、空気吸込渦が水面から吸込口にかけて発生する。空気がケーシングに流入すると、吐出量が少なくなる。空気吸込渦の発生を防止するため、この立軸ポンプには、吸込口を外囲する円環状のベース部材と、ケーシングの外周側で周方向に等間隔をあけて配置された4本の軸部材とが設けられる。各軸部材は、下端でベース部材に支持され、上端でケーシングに支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5436605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気吸込渦は、水槽の形状により、周方向において様々な位置で発生する。ポンプが上記のようなベース部材及び複数の軸部材を備える場合には、様々な水槽の形状に対応して、空気吸込渦を抑制し得る。しかし、ベース部材及び軸部材がポンプの全周にわたって配置されるため、ポンプ全体の重量が大きくなり、ポンプの製造コストが嵩む。
【0005】
本発明は、ポンプの軽量化と空気吸込渦の抑制とを両立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、水槽の底近傍から上向きに延びるケーシングと、前記ケーシング内で上下方向に延在し、羽根車と連結された回転軸と、前記ケーシング外で上下方向に延在する1以上の延在部材と、前記ケーシングに対して前記延在部材を前記ケーシングの中心軸周りに周方向に変位させる変位機構と、前記ケーシングに前記延在部材を取外し可能に固定する固定機構と、を備える、ポンプを提供する。
【0007】
上記構成によれば、変位機構及び固定機構の作用で、延在部材をケーシングの中心軸周りに周方向に変位させ、この変位後に延在部材をケーシングに固定できる。そのため、水槽の形状ひいては空気吸込渦の発生位置に応じて、延在部材のケーシングに対する取付位置を周方向に調整できる。すると、延在部材を全周にわたって配置しなくても、水槽の形状に関わらず、空気吸込渦の発生を抑制可能になる。延在部材の本数を削減でき、ポンプの軽量化を実現できる。
【0008】
前記延在部材の本数が2つであり、2つの前記延在部材が、周方向に60度から120度離れて配置されてもよい。
【0009】
本件発明者は、空気吸込渦は、水槽内における水の流れ方向において、ケーシングの中心軸よりも下流側の2か所に形成されるとの知見を得た。上記構成によれば、2本の延在部材で2か所の空気吸込渦をそれぞれ効果的に抑制でき、軽量化と渦抑制とを両立できる。
【0010】
前記ポンプが、前記1以上の延在部材の下端を支持するベース部材を更に備え、前記ベース部材は、軸方向に見て円弧状に形成されたベースセグメントを含んでもよい。
【0011】
上記構成によれば、ベース部材が周方向に細切れであるため、ポンプの軽量化及び低コスト化に資する。
【0012】
前記変位機構は、前記ケーシングの外周側で周方向に延びるレールと、前記レールに沿って移動可能な可動部と、前記可動部と前記1以上の延在部材とを連結する連結部材と、を有し、前記可動部の移動に応じて、前記延在部材が前記ケーシングに対して周方向に変位してもよい。
【0013】
上記構成によれば、可動部をレールに沿って移動させるだけで、延在部材を容易に変位させることができる。
【0014】
前記レールが、前記延在部材の上端よりも上方に配置され、前記1以上の延在部材が、前記連結部材を介し、前記可動部に吊り下げられてもよい。
【0015】
上記構成によれば、可動部の移動と連動した延在部材の変位を容易に実現できる。
【0016】
前記ポンプが、前記1以上の延在部材の上端同士を接続する接続部材を更に備え、前記連結部材の下端が、前記接続部材に係止されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、可動部を移動させるだけで、複数の延在部材の相対位置関係を維持した状態で、複数の延在部材を一斉に変位させることができる。
【0018】
前記固定機構が、前記延在部材に取り付けられ、ボルトが挿通されるボルト挿入穴を有するブラケットと、前記ケーシングに周方向に間隔をあけて設けられ、前記ボルトが挿入される複数のボルト挿入穴と、を有してもよい。
【0019】
上記構成によれば、ボルトが挿入されるボルト挿入穴を、複数のボルト挿入穴から選択することにより、延在部材のケーシングに対する取付位置を可変的に設定できる。
【0020】
前記ケーシングが、第1ケーシング部材、及び前記第1ケーシング部材の端部と連結される第2ケーシング部材を有し、前記第1ケーシング部材は、前記端部に前記第2ケーシング部材との連結のため径方向外周側に突出するフランジを有し、前記複数のボルト挿入穴が、前記フランジに設けられてもよい。
【0021】
上記構成によれば、フランジが延在部材の支持にも利用されることで、延在部材の支持強度の確保とポンプ全体のコンパクト化とを両立しやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ポンプを軽量化でき且つ空気吸込渦を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係るポンプが適用される水槽の平面図。
図2】実施形態に係るポンプの縦断面図。
図3】ラッパ管の周辺を拡大して示す図2の拡大図。
図4】固定機構の周辺を拡大して示す図2の拡大図。
図5】変位機構の周辺を拡大して示す図2の拡大図。
図6図3のVI-VI断面図。
図7図4のVII-VII断面図。
図8図7のVIII矢視図。
図9図5のXI-XI断面図。
図10A】渦防止機構の初期位置を示す図。
図10B】位置調整後の渦防止機構を示す図。
図11】渦防止機構の重心位置を示す平面図。
図12】変形例に係るベース部材を示す図6相当図。
図13】変形例に係るベース部材を示す図6相当図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細な説明の重複を省略する。
【0025】
図1を参照して、本実施形態に係るポンプ10は、水路(図示せず)と連通する水槽1を備えたポンプ場に導入される。ポンプ場は、例えば、排水機場や揚水機場に設けられ、水路には、例えば、雨水あるいは汚水の排水路、又は運河などが含まれる。
【0026】
単なる一例として、水槽1は、水路から連続する共通部2と、共通部2から連続する複数の分岐部3とを含む。共通部2は、平面視で概略的に長方形状である。共通部2は、長手方向一端部で水路と連通する流入口を有し、長手方向他端部及び短手方向一方側で閉塞されている。複数の分岐部3は、共通部2の短手方向他方側で、共通部2の長手方向に間隔をあけて並べられている。各分岐部3は、平面視で概略的に長方形状である。各分岐部3は、その長手方向一端側で共通部2に連通し、その長手方向他端側及び短手方向両側で閉塞されている。
【0027】
水は、共通部2に流入し、共通部2を長手方向一方側から他方側に向けて通流し、共通部2から複数の分岐部3それぞれに流入する。複数のポンプ10が、複数の分岐部3に一対一で対応し、各ポンプ10が、対応する分岐部3の長手方向他端部に配置されている。
【0028】
図2を参照して、水槽1の上側は、ポンプ場の床4で閉塞される。ポンプ10は、床4に形成された開口4aを介し、水槽1(より詳細には、対応する分岐部3)内へと差し込まれる。ポンプ10は、鉛直方向に延在する姿勢で床4に固定される立軸ポンプである。
【0029】
ポンプ10は、ケーシング11及び回転軸20を備える。
【0030】
ケーシング11は、水槽1の底近傍から上向きに延在している。ケーシング11は、ラッパ管12、ポンプケーシング13、下揚水管14、上揚水管15、吊下げ管16、及び吐出エルボ管17を含む複数のケーシング部材を、下からこの順番で順次に連結することによって構成される。ケーシング部材は、両端が開口する筒状又は管状であり、互いに同軸状である。
【0031】
図3を参照して、ラッパ管12は、下端に向けて拡開する外ラッパ管12a及び中心ラッパ管12bを有する。中心ラッパ管12bは、外ラッパ管12aよりも小径であり、外ラッパ管12a内に配置され、リブ12cを介して外ラッパ管12aに連結される。
【0032】
外ラッパ管12aの上端には、開口を画定し且つその管壁よりも径方向外周側へ突出するフランジ12dが設けられている。複数のケーシング部材のうち、ラッパ管12以外の各部材の両端についても、これと同様である。
【0033】
軸方向に隣り合う2つのケーシング部材は、締結構造60により互いに締結される。この締結構造60において、フランジ同士が軸方向に重ね合わせられ、ボルト67がフランジに挿し込まれてナット68と螺合される。ただし、締結構造60は、ナット68を使用する通しボルト式に限定されず、押さえボルト式又は植え込みボルト式でもよい。
【0034】
外ラッパ管12aの上端のフランジ12dがポンプケーシング13の下端のフランジ13aと締結される(図3を参照)。ポンプケーシング13の上端のフランジ13bが下揚水管14の下端のフランジ14aと締結され、下揚水管14の上端のフランジ14bが上揚水管15の下端のフランジ15aと締結される(図4を参照)。上揚水管15の上端のフランジ15bが吊下げ管16の下端のフランジ16aと締結される(図5を参照)。吊下げ管16の上端のフランジ16bが吐出エルボ管17の一端のフランジ17aと締結される(図2を参照)。吐出エルボ管17は、一端から他端に向かって円弧状に延在する。中心軸Aは、一端で鉛直に向けられ、吐出エルボ管17内で90度曲げられ、他端で水平に向けられる。
【0035】
図2を参照して、吊下げ管16の上端のフランジ16aは、その他のフランジと比べ、大径を有する。吊下げ管16の上端のフランジ16aの内周側部分は、上記の通り吐出エルボ管17と締結され、外周側部分は、床4の開口4aの周縁部に設置されたベース5に載置され、ベース5に締結される。吊下げ管16の上端、及びこれに締結された吐出エルボ管17は、床4よりも上方に配置される。他方、吊下げ管16の下端、及びその下方に連結された上揚水管15、下揚水管14、ポンプケーシング13、及びラッパ管12は、床4に吊り下げられ、水槽1に収容される。
【0036】
ラッパ管12の下端開口が、ケーシング11の吸込口11aとしての役割を果たす。吸込口11aは、水槽1の底面と近接対向する。吐出エルボ管17の他端開口が、ケーシング11の吐出口11bとしての役割を果たす。吐出エルボ管17の他端のフランジ17bは、ポンプ場の排水管(図示せず)の端部と連結される。
【0037】
回転軸20は、ケーシング11内で上下方向に延在する。回転軸20の下端は、中心ラッパ管12bの上端開口と近接対向する。回転軸20は、ポンプケーシング13、下揚水管14、上揚水管15、及び吊下げ管16と同軸状である。ケーシング11の中心軸Aは吐出エルボ管17内で曲げられる一方、回転軸20の軸線はそのまま直線的に延在する。回転軸20の上端部は、吐出エルボ管17の管壁を貫通し、ケーシング11外に配置されたアクチュエータ(図示せず)に接続される。アクチュエータは、回転軸20を回転駆動する。
【0038】
図2図5を参照して、回転軸20は、上下方向に間隔をあけて配置された複数の軸受21A,21B,21Cによって回転可能に支持される。各軸受21A,21B,21Cは、筒状の軸受ホルダ22A,22B,22Cに保持される。他方、3つの円環状の継手部材23A,23B,23Cが、(A)外ラッパ管12aの上端のフランジ12dとポンプケーシング13の下端のフランジ13aとの間(図3参照)、(B)下揚水管14の上端のフランジ14bと上揚水管15の下端のフランジ15aとの間(図4参照)、及び(C)上揚水管15の上端のフランジ15bと吊下げ管16の下端のフランジ16aとの間(図5参照)にそれぞれ、介在している。各軸受ホルダ22A,22B,22Cは、対応するベーン24A,24B,24Cを介し、対応する継手部材23A,23B,23Cに連結されている。すなわち、各継手部材23Aは、対応する2つのフランジ12d,13aと共締めされて締結構造60に組み込まれている。その他の継手部材23B,23Cについても、これと同様である。
【0039】
更に、図3に示すように、ポンプケーシング13の内部には、軸受21Dを保持する軸受ケーシング18が設けられている。回転軸20は、軸受ケーシング18を貫通し、軸受ケーシング18に保持された軸受21Dによって回転可能に支持される。軸受21Dは、上下方向において、軸受21A,21Bの間に配置されている。
【0040】
回転軸20には、羽根車25が固定されている。羽根車25は、軸受ケーシング18よりも下方に配置され、回転軸20の下端を支持する軸受21Aよりも上方に配置され、ポンプケーシング13内に収容される。ケーシング11内では、ポンプケーシング13の内周面と軸受ケーシング18の外周面とにより、流路13cが画定される。軸受ケーシング18は、当該流路13c内に配置されたベーン26を介し、ポンプケーシング13に連結される。なお、図4に示すように、軸受ケーシング18の上端は、中心管19を介し、軸受ホルダ22Bの下端と連結される。中心管19は、下揚水管14に収容され、下揚水管14と同軸状であり、回転軸20を外囲する。
【0041】
このようなケーシング11及び回転軸20を備えるポンプ10において、回転軸20が回転駆動されると、羽根車25が回転軸20と一体に回転する。これに伴い、水槽1内の水が、吸込口11aを介してケーシング11に下から流入する。水は、ラッパ管12の内部、ポンプケーシング13の上記流路13c、下揚水管14と中心管19との間の空間、上揚水管15の内部、吊下げ管16の内部、及び吐出エルボ管17の内部を順次に通流する。水は、ケーシング11内で上向きに圧送され、吐出口11bを介してケーシング11から流出する。
【0042】
水槽1内の水位が低いと、空気吸込渦E(図1及び図2参照)が、水面から吸込口11aに向けて生じる。空気が水と共にケーシング11を通流し、揚水効率の低下を招く。そこで、ポンプ10は、低水位時でも空気吸込渦Eの発生を防止すべく、渦防止構造30を備える。
【0043】
本実施形態に係る渦防止構造30は、ケーシング11外に配置される。渦防止構造30は、ベース部材31、1以上の延在部材32、固定機構40、及び変位機構50を備える。単なる一例として、延在部材32は2本である。
【0044】
図3及び図6を参照して、ベース部材31は、円弧状に延びる管材又は棒材によって構成されたベースセグメント31Aを含む。管材又は棒材の断面形状は、特に限定されず、例えば円形である。ベースセグメント31Aが中空の管状であると、渦防止構造30を備えたポンプ10を軽量化できる。
【0045】
ここでは、ベース部材31が単一のベースセグメント31Aにより構成される場合を例示する。そのため、以降、特段断らない限り、用語「ベース部材31」は、単一のベースセグメント31Aと同義である。ベース部材31が、複数のベースセグメントにより構成される場合には、複数のベースセグメントがその延在方向に順次に連結される。これにより、ベース部材31の周長が長くなり、場合により、ベース部材31が、完全に閉じた環状体(管材又は棒材の断面が円形の場合には、トーラス形)となり得る。ベースセグメント31Aは、他のベースセグメントとの連結を許容するため、その両端部にフランジ31aを有する。ベースセグメント31Aが管状であり、ベース部材31が閉じた環状体ではない場合には、ベース部材31の両端に位置するフランジ31aは、管の閉塞のため、板状の閉塞部材39と連結されてもよい。
【0046】
ベース部材31は、ポンプ10、ケーシング11、又は回転軸20の軸方向に見て円弧状となる姿勢でケーシング11に支持され、ケーシング11の下端部の外周側に配置される。ベース部材31を支持する構造は、どのように構成されていてもよい。例えば、複数のブラケット33が、外ラッパ管12aの外周面から径方向外周側へ突出し、周方向に間隔をあけて配置される。各ブラケット33の先端には、ベース部材31を保持する凹部33aが設けられている。凹部33aは、ベース部材31の外面と面接触可能に構成される。ベース部材31が円形断面を有する管状の場合には、凹部33aは、ベース部材31の外面の径(トーラス形における小半径に相当)と略同径の曲面を有する。
【0047】
図2図4を参照して、延在部材32は、ベース部材31から上方へ延びる。延在部材32の下端は、ベース部材31に支持される。ここでの支持には、溶接等の接合手段による固定も含まれる。延在部材32は、全体として上下方向に直線的に延在し、下端部では下に向かうほど径方向内周側に向かうように傾斜している。
【0048】
延在部材32の下端部は、ポンプケーシング13の下端部と径方向に対向する。ポンプケーシング13の下端部は、上に向かうほど径方向外周側へ傾斜しており、延在部材32の下端部は、これに沿って傾斜している。よって、ベース部材31の径(トーラス形における大半径に相当)を小さくすることができ、また、ベース部材31及び延在部材32の下端を吸込口11aに近づけることができる。ケーシング11は、ポンプケーシング13よりも上方の部位では、軸方向において一様な径を有する。よって、延在部材32の直線的に延在する部分では、延在部材32とケーシング11の外周面との間の径方向距離が軸方向において略一定に保たれる。
【0049】
図6及び図7を参照して、2本の延在部材32は、ポンプ10の周方向において、間隔あけて配置される。間隔は、例えば、60度から120度の間の角度、好ましくは80度から100度の間の角度である。図示例では、単なる一例として、間隔が90度に設定されている。
【0050】
固定機構40は、ケーシング11に対して延在部材32を取外し可能に固定する。固定機構40には、第1固定機構40A及び第2固定機構40Bが含まれる。延在部材32の上端部は、第1固定機構40Aを介し、ケーシング11に支持される。延在部材32の上下方向中間部は、第2固定機構40Bを介し、ケーシング11に支持される。延在部材32が長尺でも、延在部材32は、ケーシング11に安定的に支持される。なお、第1固定機構40Aも第2固定機構40Bも、延在部材32ごとに設けられている。延在部材32が2本であるため、渦防止構造30には、2つの第1固定機構40A及び2つの第2固定機構40Bが設けられる。
【0051】
変位機構50は、ケーシング11に対して2本の延在部材32をケーシング11の中心軸A周りに周方向に変位させる。変位時には、2本の延在部材32はケーシング11から取り外される。2本の延在部材32が両方ともベース部材31に支持されているため、変位機構50は、2本の延在部材32をベース部材31と共に一斉に周方向に変位させる。2本の延在部材32の変位量は互いに同じであり、2本の延在部材32の間の周方向における上記間隔は変わらない
【0052】
以下、固定機構40及び変位機構50について説明する。
【0053】
図2を参照して、固定機構40は、ケーシング11に元より備わる締結構造60を一部利用し、それにより延在部材32がケーシング11に取外し可能に固定される。すなわち、固定機構40の構成要素は、締結構造60の構成要素と部分的に重複する。変位機構50は、締結構造60を利用してケーシング11に取り付けられる。
【0054】
第1固定機構40Aは、第2固定機構40Bよりも上方に位置する。変位機構50のケーシング11への取付箇所は、固定機構40よりも上方に位置する。例えば、変位機構50は、水槽1内に配置された複数の締結構造60のうち最上位の締結構造61、すなわち、上揚水管15の上端のフランジ15bと、吊下げ管16の下端のフランジ16aとを締結する締結構造61に取り付けられる(図5を参照)。第1固定機構40Aは、その下の締結構造62、すなわち、下揚水管14の上端のフランジ14bと、上揚水管15の下端のフランジ15aとを締結する締結構造62に適用される(図4を参照)。第2固定機構40Bは、その下の締結構造63、すなわち、ポンプケーシング13の上端のフランジ13bと、下揚水管14の下端のフランジ14aとを締結する締結構造63に適用される(図4を参照)。なお、締結構造61,62においては、継手部材22B,22Cが、2つのフランジの間に介在している。
【0055】
図4及び図5を参照して、各締結構造60において、2つのフランジの各々に、周方向に等間隔をあけて、複数のボルト挿入穴66が設けられている。各フランジのボルト挿入穴66の個数は、互いに同じである。本実施形態では、単なる一例として、20個のボルト挿入穴66が、18度の等間隔をあけて配置される(図7を参照)。2本の延在部材32の間の周方向における間隔は、隣接する2つのボルト挿入穴66の間隔のn倍である(nは2以上の整数)。本実施形態では、延在部材32同士の間隔が90度であり、ボルト挿入穴66同士の間隔(18度)の5倍である。
【0056】
ボルト67は、上下方向に整合された3つのボルト挿入穴66に下から上向きに挿入される。ボルト67の頭部は、下側のフランジに当接し、ボルト67の先端部は、上側のフランジから上方へ突出する。ナット68は、この先端部に締め回される。これにより、上下のフランジが締結される。
【0057】
図4及び図7を参照して、第1固定機構40Aは、延在部材32の上端部に取り付けられ、ボルト47が挿通されるボルト挿入穴41eを有するブラケット41と、ケーシング11に周方向に間隔をあけて設けられ、ボルト47と取外し可能に係合可能な複数のボルト挿入穴46とを有する。ボルト挿入穴46は、ケーシング部材のフランジに設けられている。本例では、第1固定機構40Aのボルト挿入穴46は、下揚水管14の上端のフランジ14a及び上揚水管15の下端のフランジ15bに設けられる。ボルト47も、ボルト47と螺合されるナット48も、締結構造62のもの(ボルト67及びナット68)を流用する。
【0058】
ブラケット41は、水平板41a、鉛直板41b、及びリブ41cを有する。水平板41a及び鉛直板41bは、側面視でL字を呈する。リブ41cは、水平板41aの裏面と鉛直板41bの裏面とに接続され、ブラケット41の剛性を向上させる。鉛直板41bには、水平に並ぶ2つの取付孔41dが設けられている。延在部材32には外側からUボルト42が取り付けられる。Uボルト42の両端が、鉛直板41bの表面側から2つの取付孔41dに挿通され、2つのナット43が鉛直板41bの裏面側でUボルト42の両端それぞれに締め回される。これにより、延在部材32が、Uボルト42と鉛直板41bの表面とによって挟持される。
【0059】
水平板41aの表面は、フランジに重ねられる。2つのボルト挿入穴41eが、水平板41aを貫通している。2つのボルト挿入穴41eの中心間直線距離は、フランジに設けられて周方向に隣り合う2つのボルト挿入穴46の中心間直線距離と等しい。水平板41aは、平面視で概略矩形状である。2つのボルト挿入穴41eは、一方の長辺に沿って長辺方向に離れて配置されている。鉛直板41bは、他方の長辺の辺縁部から水平板41aに対して直交する方向に延びる。
【0060】
本実施形態に係る固定機構40では、1つの延在部材32について、締結構造60を構成する複数組(20組)のなかから、周方向に隣接する2組のボルト67及びナット68が流用される。渦防止構造30が、2本の延在部材32を備えるため、合計4組の2組のボルト67及びナット68が流用される。
【0061】
第1固定機構40Aにおいては、ボルト47が挿通されるに先立ち、水平板41aの表面が、上に向けられた姿勢で、下側のフランジ(下揚水管14の上端のフランジ14b)に下から重ねられる。なお、鉛直板41bは、水平板41aから下方に延びる。水平板41aの2つのボルト挿入穴41eが、締結構造62のボルト挿入穴66と上下方向に整合するようにして、ブラケット41のフランジ14b,15aに対する水平面内での位置及び姿勢が調整される。2本のボルト47が、水平板41aの下から挿入される。締結構造62と同様、ボルト47の先端部は、上側のフランジ(上揚水管15の下端のフランジ15a)から突出し、ナット48がこの先端部に締め回される。ボルト47の頭部が、水平板41aの裏面に当接し、ナット48が上側のフランジの上面に当接する。
【0062】
これにより、上下方向に重ねられた水平板41a、下側のフランジ14b、継手部材23B、及び上側のフランジ15aの4部材が共締めされる。すなわち、上下のフランジ14b,15a同士が締結されてケーシング11が構成され、軸受21Bがケーシング11に固定され、且つ延在部材32の上端部がブラケット41を介してケーシング11に固定される。ナットを緩めると、ブラケット41がケーシング11から取り外される。この点で、延在部材32は、第1固定機構40Aにより取外し可能にケーシング11に固定されている。
【0063】
図4を参照して、第2固定機構40Bも、第1固定機構40Aと同様に構成される。ただし、ブラケット41が、第1固定機構40Aとは上下逆向きの姿勢で、延在部材32に取り付けられる。水平板41aの表面が下に向けられ、鉛直板41bが水平板41aから上方へ延びる。水平板41aは、上側のフランジ(下揚水管14の下端のフランジ14a)に上から重ねられる。2本のボルト47が、下側のフランジ(ポンプケーシング13の上端のフランジ13b)の下から挿入される。ボルト47の先端部は、水平板41aから上方に突出する。ナット48は、この先端部に締め回される。ボルト47の頭部は、下側のフランジ13aの下面に当接し、ナット48は、水平板41aの裏面に当接する。
【0064】
第1固定機構40Aのブラケット41がフランジ14bの下方に設置され、第2固定機構40Bのブラケット41がフランジ14aの上方に設置されている。そのため、延在部材32の上方変位及び下方変位が、いずれかのブラケット41により規制される。したがって、延在部材32がしっかりとケーシング11に固定される。第1固定機構40Aのブラケット41がフランジ15aの上方に設置され、第2固定機構40Bのブラケット41がフランジ13bの下方に設置された場合にも、同様の作用が得られる。
【0065】
図5及び図9を参照して、変位機構50は、レール51、可動部52、及び連結部材53を有する。レール51は、ケーシング11の外周側で周方向に延在する。可動部52は、レール51に沿って移動可能である。連結部材53は、可動部52と延在部材32とを連結する。本実施形態では、2本の延在部材32の上端が、接続部材34を介して相互に接続され、連結部材53の下端が接続部材34に係合している。可動部52は、連結部材53を介して接続部材34に連結されており、接続部材34を介して2本の延在部材32と連結される。レール51は、延在部材32の上端よりも上方に配置されており、延在部材32は、連結部材53を介して可動部52に吊り下げられた状態である。延在部材32は、ケーシング11から取り外されている状態において、可動部52の移動に応じて周方向に変位できる。
【0066】
レール51は、締結構造61の下側のフランジ(上揚水管15の上端のフランジ15b)の下面に、サポート54を介して支持される。本実施形態では、4つのサポート54が、周方向に等間隔をあけて配置される。各サポート54は、上壁54a、下壁54b、及びウェブ54cを有する。上壁54aは、固定機構40のブラケット41と同じ要領で、締結構造61の複数組のボルト及びナット68のうちの2組を流用して、上下のフランジ及び継手部材23Cと共締めされる。ウェブ54cは、上壁54aの下面と下壁54bの上面とを上下方向に接続する。下壁54bは、平面視で上壁54aよりも径方向外周側に突出する。
【0067】
レール51は、H型又はI型の金属材であり、一例として鋼製である。レール51は、上フランジ51a、下フランジ51b、及びウェブ51cを有する。上フランジ51a及び下フランジ51bは、水平であり、上下方向に離れている。ウェブ51cは、上下方向に延び、上フランジ51aの下面を下フランジ51bの上面と接続する。平面視において、レール51は、円周の一部を切り欠いた形状、すなわちC字状である。
【0068】
上フランジ51aは、サポート54の下壁54bに締結される。上フランジ51aは、ウェブ51cに対して径方向内周側の部分と、径方向外周側の部分とを有する。各サポート54の下壁54bには、径方向に2か所に分かれ且つ周方向に2か所に分かれた合計4か所において、ボルト挿入穴が貫通している。レール51の上フランジ51aは、各サポート54に対して4点締結される。これにより、レール51が、ウェブ51cに対して径方向内周側においても外周側においても、サポート54を介してケーシング11にしっかりと固定される。
【0069】
可動部52は、下フランジ51bの径方向内周側の上面を転動する内輪52aと、下フランジ51bの径方向外周側の上面を転動する外輪52bと、内輪52a及び外輪52bを回転可能に保持する保持体55とを有する。保持体55は、一対のフレーム55a,55b及び連結ピン55cを有する。一対のフレーム55a,55bは、平板状であり、径方向に対向し、レール51の径方向両側を覆う。連結ピン55cは、レール51の下フランジ51bよりも下方で一対のフレーム55a,55bを径方向に連結している。
【0070】
内輪52aも外輪52bも、レール51のウェブ51cから見て径方向に遠ざかる側(すなわち、保持体55のうち対応するフレーム55a,55bに近づく側)に、脱輪防止用のフランジを有する。他方、レール51はC字状に切り欠かれているため、レール51の端部から内輪52a及び外輪52bをレール51上に載せることができる。内輪52a及び外輪52bがフランジ付きであっても、また、内輪52a及び外輪52bが下フランジ51bの上方に配置されるべきである一方で連結ピン55cが下フランジ51bの下方に配置されるべきであっても、可動部52を組立状態でレール51上に簡単に設置できる。
【0071】
連結部材53は、例えばチェーンである。連結部材53の一端は、保持体55の連結ピン55cに支持され、連結部材53の他端は、接続部材34に係止されている。
【0072】
図1に示すように、各分岐部3において、空気吸込渦Eは、ポンプ10の外周側で周方向に離れた2か所で発生する。水槽1の形状は、ポンプ場の敷地の制約その他の要因により、ポンプ場ごとに様々であり、標準水槽と同様に形成されないことが多い。水槽1内では水槽1の形状に固有の偏流が生じ、それにより、空気吸込渦Eの発生個所が水槽1によって異なってくる。同一のポンプ場においても、空気吸込渦Eの発生個所が、分岐部3によって異なる場合もある。他方、延在部材32が、周方向において、空気吸込渦Eの発生個所の近くに位置していると、その空気吸込渦Eの発生が、その延在部材32によって防止されやすい。
【0073】
従来のように、ベース部材を環状体に形成して4本の延在部材をベース部材から立設する場合、空気吸込渦がどこで発生しても、いずれかの延在部材が空気吸込渦の発生個所と相応に近くなり、空気吸込渦を解消し得る。しかし、4本の延在部材のなかには、空気吸込渦の解消に大きく寄与する延在部材と、空気吸込渦の解消への寄与度が低い延在部材とが存在する。このため、ポンプの重量増大を招く。
【0074】
一方、本実施形態においては、ベース部材31が円弧状のベースセグメント31Aで構成され、軸方向に見て円弧状である。延在部材32の本数は、4本から2本に減少している。そのため、ポンプ10の軽量化が実現される。
【0075】
そのうえで、延在部材32が、変位機構50の作用で、中心軸A周りに周方向に変位可能に構成される。また、延在部材32は、固定機構40の作用で、変位後にケーシング11に固定される。そのため、水槽1の形状ひいては空気吸込渦Eの発生位置に応じて、延在部材32のケーシング11に対する取付位置を周方向に調整できる。すると、延在部材32を従来のように全周にわたって配置しなくても、水槽1の形状に関わらず、空気吸込渦Eの発生を抑制可能になる。
【0076】
具体例として、複数台のポンプ10がポンプ場に新規に導入される時点で、各ポンプ10の延在部材32は、所定の初期位置に位置する。ポンプ場が稼働すると、ポンプ場に固有の水槽1の形状、又は各ポンプ10の運転状態に起因して、分岐部3ごとに2つの空気吸込渦Eの発生位置が異なる場合がある。初期位置で空気吸込渦Eの発生が抑制される分岐部3も存在し得る一方、空気吸込渦Eの発生個所が、延在部材32の初期位置から周方向に相応に遠く、それにより空気吸込渦Eが効果的に抑制されない分岐部3も存在し得る。
【0077】
図10Aに示すように、後者の分岐部3においても、ポンプ10の稼働後には空気吸込渦Eの発生個所を特定し得る。そこで、この空気吸込渦Eを抑制できていない分岐部3と対応するポンプ10に関し、空気吸込渦Eの抑制に適した延在部材32の位置が予測される。なお、延在部材32は、フランジに設けられたボルト挿入穴66を利用してケーシング11に固定されることから、延在部材32が周方向において取り得る位置(すなわち、位置の候補)は、18度おきに離散的に設定され、ボルト挿入穴66の個数に等しい。
【0078】
そして、固定機構40のナット48を緩めてボルト47を抜き、延在部材32をケーシング11から取り外す。単なる一例として、取外し作業は、水槽1内の水位が下がった状態で、作業員が開口4aを介して水槽1内に進入し、手作業でボルト47およびナット48を緩めることにより、行われる。
【0079】
延在部材32がケーシング11から取り外されると、可動部52がレール51に沿ってケーシング11外で周方向に移動する。可動部52の走行に伴い、連結部材53は可動部52に引っ張られる。2本の延在部材32は、互いの間隔を変えずに、可動部52に追従してケーシング11外で周方向に移動する。
【0080】
図11を参照して、平面視において、連結部材53の接続部材34に対する係止位置は、渦防止構造30の重心位置と重なる。渦防止構造30は、平面視において線対称形状であり、重心位置Gは、対称軸B上にある。対称軸Bは、平面視で円弧状のベース部材31の中心位置から、ベース部材31の周方向中央に向けて延在する。2本の延在部材32は、互いに同様に構成され、この対称軸Bを基準として線対称に配置される。本実施形態では、延在部材32が比較的に長尺であり、2本の延在部材32の合計重量がベース部材31の重量よりも大きい。そのため、渦防止構造30の重心位置Gは、2本の延在部材32同士を結ぶ線の近傍に配置される。接続部材34の係止穴34aは、対称軸B上にあり、また、重心位置Gと重なる、又は重心位置の付近に位置付けられる。
【0081】
したがって、延在部材32がケーシング11から取り外され、ベース部材31と共に連結部材53で吊り下げられた状態となっても、ベース部材31及び延在部材32の姿勢が、ケーシング11に固定されている状態から殆ど変化しない。このため、可動部52が移動するとき、ベース部材31及び延在部材32がぐらつかず、延在部材32を周方向に円滑に変位させることができる。
【0082】
延在部材32が予測された位置まで移動すると、可動部52の走行を停止する。そして、作業員が、固定機構40で延在部材32をケーシング11に固定する。
【0083】
図10Bに示すように、これにより、空気吸込渦Eに対する延在部材32の位置が最適化される。分岐部3ごとに空気吸込渦Eの発生個所が異なっていても、各分岐部3において空気吸込渦Eの発生を抑制できる。
【0084】
なお、延在部材32がケーシング11に固定された後は、可動部52がレール51から取り外され、連結部材53と接続部材との係止が解除され、可動部52及び連結部材がケーシング11の内部から抜き取られてもよい。可動部52及び連結部材53は、延在部材32の変位に際してケーシング11内に装着されてもよい。
【0085】
変位に先立ち、固定機構40から取り外されたボルト47及びナット48は、締結構造60のボルト67及びナット68として同じボルト挿入穴66に組み込まれる。変位後の固定に際しては、延在部材の新たな締結位置に存在しているボルト67及びナット68が取り外され、当該ボルト67及びナット68が固定機構40のボルト及びナット48として再使用される。
【0086】
本実施形態では、延在部材32が2本であり、2つの延在部材32は、60度から120度の角度だけ離れて配置されている。これにより、2本の延在部材32で2か所の空気吸込渦Eをそれぞれ効果的に抑制できる。
【0087】
ベース部材31が、軸方向に見て円弧状に形成されたベースセグメント31Aを含む。ベース部材31が周方向に細切れであるため、ポンプ10の軽量化及び低コスト化に資する。
【0088】
変位機構50が、ケーシング11の外周側で周方向に延びるレール51と、レール51に沿って移動可能な可動部52と、可動部52と延在部材32を連結する連結部材53とを有し、可動部52の移動に応じて延在部材32がケーシング11に対して周方向に変位する。これにより、可動部52をレール51に沿って移動させるだけで、延在部材32を容易に変位させることができる。
【0089】
レール51が、延在部材32の上端よりも上方に配置され、延在部材が連結部材53を介して可動部52に吊り下げられる。これにより、可動部52の移動と連動した延在部材32の変位を容易に実現できる。また、連結部材53の下端は、延在部材32の上端同士を接続する接続部材に係合する。これにより、可動部52を移動させるだけで、複数の延在部材32の相対位置関係を維持した状態で、複数の延在部材32を一斉に変位させることができる。
【0090】
図12及び図13を参照して、変形例について説明する。
【0091】
図12では、ベース部材31が、2つのベースセグメント31Aによって構成される。2つのベースセグメント31Aは、互いに同様に構成され、上記実施形態と同様である。2つのベースセグメント31Aは、平面視で半円弧状であり、フランジ31a同士が周方向に重ね合わせられて締結される。これにより、ベース部材31が全体として閉じた環状体となる。空気吸込渦Eの発生位置が経時的に変化する水槽、あるいは発生位置の予測が困難な水槽に適用される場合には、このように全周に延在部材32を配置することで、従来同様に空気吸込渦Eを効果的に抑制できる。
【0092】
図13では、ベース部材31が第1ベースセグメント31Bを含む。第1ベースセグメントは、上記実施形態と比べて周方向長さが短く、平面視で1/3円弧状である。第1ベースセグメント31Bは、2本の延在部材32と接合されている。2本の延在部材32は、周方向に互いに90度離れている。第1ベースセグメント31B及び2本の延在部材32の組立体は、平面視で線対称である。このように、ベースセグメントの周方向長さは適宜変更可能である。ベースセグメントが、1/n円弧状であれば、n個のベースセグメントを周方向に順次に連結することで、ベース部材31が閉じた環状体に構成される。
【0093】
図13に示す例ではnが3であり、上記の第1ベースセグメント31Bに、2つの第2ベースセグメント31Cを連結することにより、環状体のベース部材31が構成される。第2ベースセグメント31Cには、1本の延在部材32が接合される。延在部材32は、平面視でベース部材31の対称軸C上に配置される。この構成により、ベース部材31が環状体に構成された場合には、4本の延在部材32が周方向に等間隔をあけて配置される。
【0094】
これまで、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は一例であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更、削除、又は追加可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 水槽
2 共通部
3 分岐部
4 床
4a 開口
5 ベース
10 ポンプ
11 ケーシング
11a 吸込口
11b 吐出口
12 ラッパ管
12a 外ラッパ管
12b 中心ラッパ管
12c リブ
12d フランジ
13 ポンプケーシング
13a,13b フランジ
13c 流路
14 下揚水管
14a,14b フランジ
15 上揚水管
15a,15b フランジ
16 吊下げ管
16a,16b フランジ
17 吐出エルボ管
17a,17b フランジ
18 軸受ケーシング
19 中心管
20 回転軸
21A,21B,21C,21D 軸受
22A,22B,22C 軸受ホルダ
23A,23B,23C 継手部材
24A,24B,24C ベーン
25 羽根車
26 ベーン
30 渦防止構造
31 ベース部材
31a フランジ
31A ベースセグメント
31B 第1ベースセグメント
31C 第2ベースセグメント
32 延在部材
33 ブラケット
33a 凹部
34 接続部材
34a 係止穴
39 閉塞部材
40 固定機構
40A 第1固定機構
40B 第2固定機構
41 ブラケット
41a 水平板
41b 鉛直板
41c リブ
41d 取付孔
41e ボルト挿入穴
42 Uボルト
43 ナット
46 ボルト挿入穴
47 ボルト
48 ナット
50 変位機構
51 レール
51a 上フランジ
51b 下フランジ
51c ウェブ
52 可動部
52a 内輪
52b 外輪
53 連結部材
54 サポート
54a 上壁
54b 下壁
54c ウェブ
55 保持体
55a,55b フレーム
55c 連結ピン
60 締結構造
61~63 締結構造
66 ボルト挿入穴
67 ボルト
68 ナット
A 中心軸
E 空気吸込渦
G 重心位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13