(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175482
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】光電変換装置、基板及び機器
(51)【国際特許分類】
H04N 25/77 20230101AFI20241211BHJP
H04N 25/57 20230101ALI20241211BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20241211BHJP
H04N 25/79 20230101ALI20241211BHJP
【FI】
H04N25/77
H04N25/57
H04N25/76
H04N25/79
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093307
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀央
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄二
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX43
5C024CY17
5C024CY47
5C024EX12
5C024EX43
5C024GX03
5C024GX07
5C024GX14
5C024GX16
5C024GX18
5C024HX13
5C024HX17
5C024HX23
5C024JX46
(57)【要約】
【課題】
画素から信号を読み出してアナログデジタル変換するときに要する時間を欄祝するのに有利な技術を提供すること。
【解決手段】
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素と、前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備える光電変換装置であって、前記2つの信号のうち振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換するための期間は、前記2つの信号のうち振幅の大きい方の信号をアナログデジタル変換するための期間より短く設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素と、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備える光電変換装置であって、
前記2つの信号のうち振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換するための期間は、前記2つの信号のうち振幅の大きい方の信号をアナログデジタル変換するための期間より短く設定されている、光電変換装置。
【請求項2】
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素と、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備える光電変換装置であって、
前記2つの信号のうち振幅が小さい方の信号をサンプルホールドする期間は、前記2つの信号のうち振幅の大きい方の信号をサンプルホールドする期間より短く設定されている、光電変換装置。
【請求項3】
前記サンプルホールド部と前記変換回路との間に前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号の大きさを調整する回路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記大きさを調整する回路は、前記2つの信号のそれぞれの大きさを調整することを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記サンプルホールド部は増幅回路を備え、前記2つの信号は前記増幅回路を介して出力されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記変換回路は、前記2つの信号と、前記光電変換素子のリセットレベルの信号との差分をアナログデジタル変換することを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記画素は2つの光電変換素子を有し、前記2つの光電変換素子の一方の光電変換素子からの信号と前記2つの光電変換素子からの信号とを、前記2つの信号とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記2つの光電変換素子は行列状に配置された前記画素のうちの異なる行に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記画素に対応してマイクロレンズが配置されており、前記2つの信号に基づいて位相差信号を生成することを特徴とする請求項7に記載の光電変換装置。
【請求項10】
同じ期間に入射する光に対して前記2つの光電変換素子が生成する電荷の量が異なるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記アナログデジタル変換は前記変換回路へクロック信号が供給されている間に行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換する期間に供給される前記クロック信号のサイクル数は、前記振幅が大きい方の信号をアナログデジタル変換するために供給されるクロック信号のサイクル数より少なく設定されることを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換する期間に供給される前記クロック信号の周波数は、前記振幅が大きい方の信号をアナログデジタル変換するために供給される前記クロック信号の周波数よりも高く設定されることを特徴とする請求項11に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記2つの信号はサンプルホールド部の2つの容量にそれぞれ保持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記変換回路の入力に積分器が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記積分器はアナログデジタル変換が行われない期間はリセットされていることを特徴とする請求項15に記載の光電変換装置。
【請求項17】
複数の前記サンプルホールド部と、前記複数の前記サンプルホールド部を選択する選択回路と、選択されたサンプルホールド部からの信号をアナログデジタル変換する前記変換回路と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記複数の前記サンプルホールド部のうちの第一サンプルホールド部からの信号をアナログデジタル変換する期間と、前記複数の前記サンプルホールド部のうちの第二サンプルホールド部が前記画素からの信号をサンプルホールドする期間とが重複するように設定されていることを特徴とする請求項17に記載の光電変換装置。
【請求項19】
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素が配置された基板と積層される基板であって、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備え、
前記2つの信号のうち、振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換するための期間は振幅の大きい方の信号をアナログデジタル変換するための期間より短く設定されている、基板。
【請求項20】
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素が配置された基板と積層される基板であって、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備え、
前記2つの信号のうち、振幅が小さい方の信号をサンプルホールドする期間は振幅の大きい方の信号をサンプルホールドする期間より短く設定されている、基板。
【請求項21】
請求項1又は2に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの出力信号を処理する処理装置と、を備えることを特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、基板及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デルタシグマ(ΔΣ)型のアナログデジタル変換回路を有する固体撮像素子がある。特許文献1には画素からの信号を記憶する2つの容量素子を設け、2つの容量素子に記憶された電圧の加重平均を出力とすることにより、広い入力電圧レンジに対応可能な固体撮像素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの画素から電圧範囲の異なる信号を読み出し、アナログデジタル変換して出力することがある。異なる信号の読出しと変換を行うために、読み出しと変換に要する時間の長さが問題となることがあった。本発明の目的は、画素から信号を読み出してアナログデジタル変換するときに要する時間を短縮するのに有利な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る光電変換装置は、光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素と、前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路とを備え、前記2つの信号のうち振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換するための期間は、前記2つの信号のうち振幅の大きい方の信号をアナログデジタル変換するための期間より短く設定されている。
【発明の効果】
【0006】
画素から信号を読み出してアナログデジタル変換するときに要する時間を短縮するのに有利な技術を提供できること。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】実施形態1に係る光電変換装置のタイミング図。
【
図6】実施形態2に係る光電変換装置のタイミング図。
【
図8】実施形態3に係る光電変換装置のタイミング図。
【
図10】実施形態4に係る光電変換装置のタイミング図。
【
図11】実施形態の変形例に係る光電変換装置の模式図。
【
図12】実施形態の変形例に係る光電変換装置のタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
また、本明細書では信号の大きさを示す表現として、「振幅」を用いることがある。この振幅とは、基準となる信号と、説明対象の信号との電圧差である。
【0010】
(実施形態1)
図1は本実施形態に係る光電変換装置の模式図である。光電変換装置は、画素基板1、回路が搭載された回路基板2を有する。画素基板1には画素部5が配置されている。画素部5には、入射した光に応じた信号電荷を生成する光電変換素子をそれぞれが含む複数の画素10が行列状に配置されている。複数の画素からの出力は垂直信号線30を介して回路基板2へ出力される。画素基板1と回路基板2とは同じ基板に形成されてもよいし、画素基板1に対して回路基板2が積層されていてもよい。なお、ここで列方向は、
図1において上下の方向を指し、垂直信号線30が画素基板1から回路基板2延びる向きの上下の方向を指す。行方向は、
図1において左右の方向を指し、垂直信号線30と直交する方向である。
【0011】
回路基板2には電流源40、サンプルホールド部50、変換部60、制御部70、データ処理部90、出力部100が配置されている。電流源40は、垂直信号線30のそれぞれに対応して配される。電流源40は、信号を読み出すために選択された画素10に対して、垂直信号線30を介してバイアス電流を供給する。垂直信号線30は、画素10の光電変換素子によって生成された信号電荷に応じた信号を画素10からサンプルホールド部50に転送する。
【0012】
サンプルホールド部50は、それぞれの画素10の光電変換素子で生成された信号を画素部5から垂直信号線30を介してサンプリングし保持する。本実施形態において、サンプルホールド部50は、2つのサンプルホールド回路を備えている。第一サンプルホールド回路は光電変換素子をリセットした際のリセットレベルに対応する信号をサンプリングして保持する。第二サンプルホールド回路は光電変換素子で光電変換動作を行った際に得られる画像信号に対応する信号をサンプリングして保持する。第一サンプルホールド回路及び第二サンプルホールド回路がそれぞれ、垂直信号線30のそれぞれに設けられている。
【0013】
変換部60には、サンプルホールド部50から出力される信号をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換回路を備えている。それぞれの垂直信号線30に対応して変換部60が接続されている。ここでアナログデジタル変換回路として、スロープ型アナログデジタル変換回路、逐次比較型アナログデジタル変換回路、デルタシグマ(ΔΣ)型アナログデジタル変換回路などが用いられるが、これらに限定されるものではない。オーバーサンプリング型のAD変換回路を使用するとよい。
【0014】
制御部70は、変換部60へ、後に説明する制御信号Adresとクロック信号Clkを供給する。データ処理部90は、変換部60から出力されるデジタル信号を処理する。データ処理部90は、変換部60から出力されたデジタル信号に対して補正処理や補完処理などもデジタル処理を行うことができる。出力部100は、データ処理部90で処理された信号を外部へ出力する。
【0015】
図2は、画素10の構成例を示す回路図である。画素10は、光電変換素子400、転送トランジスタ410、リセットトランジスタ455、増幅トランジスタ430、選択トランジスタ440を含む。光電変換素子400は、例えばフォトダイオードである。光電変換素子400は、主電極のうち一方が、グランド電位450に接続されており、受光した光をその光量に応じた電荷量の信号電荷(例えば、光電子)に光電変換し蓄積する。
【0016】
光電変換素子400の主電極のうち他方は、転送トランジスタ410を介して増幅トランジスタ430のゲート電極に電気的に接続されている。増幅トランジスタ430のゲート電極が電気的に繋がったノード420は、フローティングディフュージョンとして機能する。フローティングディフュージョンは、光電変換素子400で生成された信号電荷を信号電圧に変換する電荷電圧変換部として機能する。
【0017】
転送トランジスタ410のゲート電極には、転送信号TXが供給される。転送トランジスタ410が転送信号TXに応じて導通状態になることによって、光電変換素子400に蓄積された信号電荷が、フローティングディフュージョンであるノード420に転送される。
【0018】
リセットトランジスタ455は、電源電位460とノード420との間に接続されている。なお、トランジスタが、AとBとの間に接続されている、と表現した場合、トランジスタの主電極(ソースおよびドレイン)のうち一方がAに接続され、主電極のうち他方がBに接続されていることを示す。トランジスタのゲート電極はAまたはBに接続されていない。
【0019】
リセットトランジスタ455のゲート電極には、リセット信号RESが供給される。リセットトランジスタ455がリセット信号RESに応じて導通状態になることによって、ノード420(フローティングディフュージョン)の電位が、電源電位460にリセットされ、フローティングディフュージョンに保持されて電荷を掃き出す。このリセット動作により画素がリセットされる。
【0020】
増幅トランジスタ430は、ゲート電極がノード420に、主電極のうち一方が電源電位460に、主電極のうち他方が選択トランジスタ440に、それぞれ接続されている。増幅トランジスタ430のゲート電極は、光電変換素子400の光電変換によって得られた信号を読み出すソースフォロワ回路の入力になっている。増幅トランジスタ430は、主電極のうち他方が、選択トランジスタ440を介して垂直信号線30に接続される。増幅トランジスタ430と垂直信号線30に接続された電流源40とは、ノード420の電圧を垂直信号線30の電位に変換するソースフォロワを構成している。
【0021】
選択トランジスタ440は、増幅トランジスタ430と垂直信号線30との間に接続されている。選択トランジスタ440のゲート電極には、選択信号SELが供給される。選択トランジスタ440が選択信号SELに応じて導通状態になることによって、画素10を選択状態とされる。選択状態において、画素10から信号が増幅トランジスタ430を介して垂直信号線30に信号が出力される。
【0022】
画素10の回路構成は、
図2に示される構成に限定されるものではない。例えば、選択トランジスタ440が、電源電位460と増幅トランジスタ430との間に接続されていてもよい。また、
図2に示される構成では、画素10として、転送トランジスタ410、リセットトランジスタ455、増幅トランジスタ430、選択トランジスタ440を備える、所謂、4Transistor(4Tr.)型の構成を示した。しかし、これに限られるものではない。例えば、選択トランジスタ440を省略し、増幅トランジスタ430が選択トランジスタとしても機能する3Tr.型の構成としてもよい。また、トランジスタの数を増やした5Tr.型以上の構成にしてもよい。
【0023】
画素10は、制御信号RESが与えられるとリセットトランジスタ455によってノード420の電位をリセットされる。画素がリセットされると、画素から光電変換素子400をリセットした際のリセットレベルに対応するリセットレベルの信号が出力されうる。また、画素から光電変換素子400に入射した光に応じて光電変換を行って生成された、画像信号に対応しうるデータ信号が出力されうる。
【0024】
図3は、サンプルホールド部50および変換部60に関する回路の構成例を示す図である。
図3には、垂直信号線30に対応して配置されているサンプルホールド部50および変換部60が示されている。本実施形態では、1つの垂直信号線30に、1つのサンプルホールド部50が配置されている。
【0025】
サンプルホールド部50には第一サンプルホールド回路210及び第二サンプルホールド回路211が含まれている。第一サンプルホールド回路210は後に説明するように、光電変換素子400をリセットした際に画素から出力されるリセットレベルの信号をサンプリングして保持する。第二サンプルホールド回路211は光電変換素子への入射光に応じて生成されたデータ信号をサンプリングし保持する。サンプルホールド部50の出力はスイッチ252を介して変換部60に入力される。スイッチ252は信号Adinでオンオフ制御される。
【0026】
第一サンプルホールド回路210は、容量素子120および反転増幅器220を含む。スイッチ110は、制御信号Smp_nに従って、垂直信号線30と容量素子120との間の接続を制御する。反転増幅器220は、ソース接地回路およびソースフォロア回路の組み合わせによって構成されうる。反転増幅器220は、トランジスタ130、140、150、160、230、スイッチ170、180、190、電流源200を含む。スイッチ170は、トランジスタ130、140、150、160で構成されるソース接地回路の入出力間に接続されており、制御信号Smpa_nによって制御される。反転増幅器220からの信号は制御信号Hld_nに従って出力できる。
【0027】
第二サンプルホールド回路211は、第一サンプルホールド回路210とほぼ同様な構成を有しうるが、主に、スイッチ112、192と容量素子122が追加されている点で第一サンプルホールド回路210と相違する。第二サンプルホールド回路211は、垂直信号線30からの信号を保持する容量素子121及び122と反転増幅器221を含む。スイッチ111、112は、制御信号Smp_s1,Smp_s2に従って、垂直信号線30と容量素子121及び容量素子122との間の接続をそれぞれ制御する。
【0028】
反転増幅器221は、反転増幅器220と同様に、ソース接地回路およびソースフォロア回路の組み合わせによって構成されうる。反転増幅器221は、トランジスタ131、141、151、161、231、スイッチ171、181、191、192、電流源201を含む。スイッチ171は、トランジスタ131、141、151、161で構成されるソース接地回路の入出力間に接続されており、制御信号Smpa_sによって制御される。反転増幅器221からの信号は制御信号Hld_s1ないしHld_s2に従って出力される。
【0029】
第一サンプルホールド回路210の出力端と第二サンプルホールド回路211の出力端との間には、抵抗素子240が配されている。第一サンプルホールド回路210がリセットレベルの信号を出力し、第二サンプルホールド回路211がデータ信号を出力する場合を考える。第一サンプルホールド回路210の出力端の電位、つまりリセットレベルの信号の電位をVnとし、第二サンプルホールド回路211の出力端の電位、つまりデータ信号の電位をVsとする。抵抗素子240の抵抗値はRとする。これによって、抵抗素子240に流れる電流Iは、次の(式1)で表される。
【0030】
I=(Vn-Vs)/R (式1)
この電流Iは変換部60へと入力される。このとき、抵抗素子240に流れる電流Iは、式1に示されるように、画素信号のリセットレベルの信号の電位Vnとデータ信号の電位Vsとの差分に比例する。したがって、電流Iが変換部60に入力される段階でCDS(相関2重サンプリング)が行われていることになる。
【0031】
第一サンプルホールド回路210と第二サンプルホールド回路211の出力端の電圧差に応じた電流は、信号ADinで制御されるスイッチ252を介して変換部60へ入力される。
【0032】
変換部60はオーバーサンプリング型のアナログデジタル変換回路であり、例えば、ΔΣ型アナログデジタル変換回路である。ΔΣ型アナログデジタル変換回路は、第一積分器、第二積分器、量子化器370、デシメーションフィルタ380を含む。変換部60において、第一積分器は、積分容量320によって構成されている。第二積分器は、電圧を電流に変換する電圧電流変換回路(Gmセル)330および積分容量360によって構成されている。第一積分器の入力ノードには、電流源300およびスイッチ310を含むデジタルアナログ変換器305が接続されている。
【0033】
デジタルアナログ変換器305は、第二積分器および量子化器370を介したデジタル信号に応じて第一積分器への電流を制御する。第二積分器の入力ノードには、電流源340およびスイッチ350を含むデジタルアナログ変換器345が接続されている。デジタルアナログ変換器345は、第二積分器の出力を、量子化器370で量子化した結果に応じて、第二積分器への電流を制御する。量子化器370にはクロック信号Clkが入力されており、Clkに同期して量子化動作が行われる。
【0034】
変換部60では、量子化器370により前の量子化値を、デジタルアナログ変換器305、345を通して、第二積分器および第一積分器にフィードバックする動作が行われる。このように、前の量子化値をデジタルアナログ変換器305、345にフィードバックしながら積分器を2回通すことによって2次のノイズシェーピング特性を得ることができる。さらに、量子化器370の後段に配されているデシメーションフィルタ380によって高域ノイズを除去することで、精度が高いアナログデジタル変換出力を得ることができる。なお、Gmセル330の反転入力端子と出力の間にはスイッチ390が接続されており、スイッチ390は制御信号Adresで制御される。スイッチ390をオンすることにより、第一積分器および第二積分器の各ノードをリセット状態とすることができる。
【0035】
サンプルホールド部50と変換部60の動作例を、動作例のタイミングを示す
図4により説明する。制御信号RESは画素10をリセットする信号である。転送信号TXは光電変換素子400からの信号の読出しを制御する。制御信号Smp_n、Smpa_n,Hld_n,smp_s1,smp_s2,smpa_s,hld_s1,hld_s2,hld_sは第一サンプルホールド回路210、第二サンプルホールド回路211の各スイッチを制御する。以下では、
図4の波形において、制御信号がハイレベル(例えば時刻t1と時刻t2の間のRESの波形の状態。)の間、対応するスイッチがオン状態(導通状態)になり、制御信号がローレベルの間、対応するスイッチがオフ状態(非導通状態)になるとして説明する。
【0036】
時刻t1~t2において、
図2の制御信号RESがハイレベルとなりリセットトランジスタ455がオンすることにより、フローティングディフュージョン420がリセットされる。
図2に示す制御信号SELも制御され、それに応じて垂直信号線30の電位はリセットレベルの電位Vnとなる。また、時刻t1で、制御信号Smp_n,Smpa_nがハイレベルになり、第一サンプルホールド回路210のスイッチ110、170がオン状態になる。次いで、制御信号Smpa_nがハイレベルからローレベルに遷移する時刻t3で、リセットレベルの電位Vnがサンプリングされ、容量素子120に蓄積される。次に、時刻t4において、制御信号Smp_nがハイレベルからローレベルへ遷移し、スイッチ110がオフ状態となり、容量素子120は垂直信号線30と切り離される。
【0037】
なお、時刻t1~t4において、制御信号Adinはローレベルとなっており、スイッチ252はオフ状態となっており、第二サンプルホールド回路211は変換部60に接続されていない。また、制御信号Adresはハイレベルでスイッチ390はオン状態となっており、Gmセル330の入出力端子は短絡され、変換部60において、第一積分器および第二積分器の各ノードをリセット状態となっている。また、クロック信号Clkはローレベルとなっており、量子化器370は量子化動作を行わない状態となっている。
【0038】
時刻t5~t6において、
図2の制御信号TXがハイレベルとなり転送トランジスタ410がオンする。この間に、光電変換素子400からフローティングディフュージョン420へ、時刻t2から時刻t6の間に入射した光により光電変換素子400に生成された光電荷が転送される。つまり時刻t2から時刻t6の間は露光期間である。フローティングディフュージョン420の電位は、電荷の量に応じて低下する。制御信号SELに応じてフローティングディフュージョン420の電位は増幅トランジスタ430を介して垂直信号線30へ出力される。
【0039】
これにより、垂直信号線30の電位が第一データ信号の電位Vs1となる。また、時刻t5で、制御信号Smp_s、Smpa_s1がハイレベルになり、データ信号用の第二サンプルホールド回路211において、スイッチ111、171がオン状態になる。次いで、制御信号Smpa_sがハイレベルからローレベルに遷移する時刻t7で、スイッチ171がオフになって第一データ信号の電位Vs1がサンプリングされ、容量素子121に蓄積される。次に、時刻t8において、制御信号Smp_s1がハイレベルからローレベルへ遷移し、スイッチ111がオフ状態となり、容量素子121は垂直信号線30から切り離される。
【0040】
なお、時刻t7でスイッチ171をオフする際のスイッチ171の両端電圧は垂直信号線30の電位によらず常に略同一となる。このため、スイッチ171をオフにすることを起因とする電荷注入は発生せず、容量素子121に蓄積されている第一データ信号の電位Vs1に対して誤差となる電圧は発生しない。また、時刻t8でスイッチ111をオフする際には、容量素子121の両端ともにハイインピーダンス状態となっている。このため、スイッチ111のオフによる影響は生じない。このように、第一データ信号の電位Vs1への誤差電圧の発生を抑制ができる。
【0041】
時刻t9~t10において、再び、
図2の制御信号TXがハイレベルとなり転送トランジスタ410がオンする。この間に、時刻t6からt10の間に入射した光により光電変換素子400で生成、蓄積された光電荷をフローティングディフュージョン420へ追加で転送する。つまりt2からt6に加えて、t6からt10が露光期間になる。フローティングディフュージョン420の電位は、電荷の量に応じて更に低下する。これにより、垂直信号線30の電位が低下し、第二データ信号の電位Vs2となる。また、時刻t9で、制御信号Smp_s、Smpa_s2がハイレベルになり、データ信号用の第二サンプルホールド回路211において、スイッチ112、171がオン状態になる。
【0042】
次いで、制御信号Smpa_sがハイレベルからローレベルに遷移する時刻t11で、第二データ信号の電位Vs2がサンプリングされ、容量素子122に蓄積される。次に、時刻t12において、制御信号Smp_s2がハイレベルからローレベルへ遷移し、スイッチ112がオフ状態となり、容量素子122は垂直信号線30から切り離される。
【0043】
なお、時刻t11でスイッチ171をオフする際のスイッチ171の両端電圧は垂直信号線30の電位によらず常に略同一となる。このため、スイッチ171をオフすることを起因とする電荷注入による、容量素子122に蓄積されている第二データ信号の電位Vs2に対する誤差電圧は発生しない。また、時刻t12でスイッチ112をオフする際には、容量素子122の両端ともにハイインピーダンス状態となっているため、スイッチ112のオフによる影響は生じない。このように、第二データ信号の電位Vs2への誤差電圧の発生を抑制することができる。
【0044】
時刻t13で、制御信号Hld_nがハイレベルとなり、スイッチ180、190がオン状態になることによって、第一サンプルホールド回路210において、容量素子120がリセットレベルの信号の電位Vnを出力する。また、同時に時刻t13において、制御信号Hld_s1、Hld_sがハイレベルとなり、スイッチ181、191がオン状態になることによって、第二サンプルホールド回路211において、容量素子121が第一データ信号の電位Vs1を出力する。また、同時に時刻t13において、制御信号Adinがハイレベルとなり、サンプルホールド部50が変換部60へと接続される。また、同時に時刻t13において、制御信号Adresがローレベルとなり、スイッチ390がオフ状態となり、第一積分器および第二積分器の各ノードのリセットが解除される。
【0045】
変換部60への入力電流は、上述したように、第一サンプルホールド回路210の出力端のリセットレベルの信号の電位Vnと第二サンプルホールド回路211の出力端のデータ信号の電位Vs1との差に応じた電流となる。変換部60は電位Vnと電位Vs1との差に応じた電流をアナログデジタル変換する。
【0046】
時刻t13~t14において、クロック信号Clkにおいてクロック動作が有効となり、クロックサイクル毎に量子化器370で量子化動作が行われる。そして上述したように、クロックサイクル毎に、前の量子化値をデジタルアナログ変換器305、345にフィードバックしながら積分器を2回通すことによって2次のノイズシェーピング特性を得ることができる。さらに、量子化器370の後段に配されているデシメーションフィルタ380によって高域ノイズを除去することで、精度が高いアナログデジタル変換出力を得ることができる。
【0047】
時刻t14で第二サンプルホールド回路211の第一データ信号の電位Vs1に応じた信号のアナログデジタル変換を完了する。同時に制御信号Adinをローレベルとし、スイッチ252をオフ状態とすることによりサンプルホールド部50と変換部60を切り離す。また、同時に時刻t14において、制御信号Adresをハイレベルとすることで、スイッチ390がオン状態となり、第一積分器および第二積分器の各ノードがリセットされる。
【0048】
また、同時に時刻t14において、クロック信号Clkにおいてクロック動作が一旦停止する。時刻t14~t15では、サンプルホールド部50と変換部60が切り離され、第一積分器および第二積分器の各ノードのリセットがリセットされ、クロック信号Clkにおいてクロック動作が停止した状態となっている。このように、クロック信号が供給されている時刻t13~時刻t14の間がAD変換期間であり、時刻t14~時刻t15の間がAD変換の停止期間ないしAD変換器のリセット期間となっている。
【0049】
上述したように、AD変換期間においては、サンプルホールド部50と変換部60が接続され、変換部60へサンプルホールド部50からの信号電流が入力できる状態となっている。また、AD変換期間は制御信号Adresのロー期間となっており、第一積分器および第二積分器の各ノードのリセットが解除された期間となっている。また、AD変換期間はクロック信号Clkにおいてクロック動作が有効な期間となっている。
【0050】
時刻t15で、制御信号Adinがハイレベルとなり、サンプルホールド部50が変換部60に接続される。また、時刻t15で、制御信号Hld_s2がハイレベルとなり、スイッチ192がオン状態になることによって、第二サンプルホールド回路211において、容量素子122が第二データ信号の電位Vs2を出力する。これにより、第一サンプルホールド回路210の出力端のリセットレベルの信号の電位Vnと第二サンプルホールド回路211の出力端の第二データ信号の電位Vs2との差に応じた電流が、変換部60へと入力される。変換部60は該電流をアナログデジタル変換する。時刻t15~t16において、制御信号Adresがローレベルとなり、クロック信号Clkにおいてクロック動作が有効となる。この間に第一データ信号のときと同様に、第二サンプルホールド回路211の第二データ信号Vs2に応じた信号のアナログデジタル変換を行う。
【0051】
ここで、第一データ信号の電位Vs1と第二データ信号の電位Vs2は異なる蓄積時間に対応した信号であるため、露光していないダーク状態以外では同一の振幅の信号とはならない。第二データ信号の露光期間(t2~t10)は第一データ信号の露光期間(t2~t6)より長いから、光電変換素子400に入射する光量に大きな変化がない場合、電位Vs2の方が電位Vs1より振幅の大きい信号となる。本実施形態においては、第一データ信号の電位Vs1のAD変換期間を第二データ信号の電位Vs2のAD変換期間よりも短く設定する。具体的には、
図4において時刻t13~t14の期間を時刻t15~t16の期間よりも短く設定する。なお、ここでいう振幅は、フローティングディフュージョン420がリセットされている場合に画素10が出力する信号の電圧を基準の電圧として、この基準の電圧に対する電圧差に対応する。なお、以降の振幅についても、特に断りのない限り、基準の電圧はフローティングディフュージョン420がリセットされている場合に画素10が出力する信号とすることができる。
【0052】
これにより、時刻t13~時刻t14の間はクロック信号Clkのクロックサイクル数を減らして、オーバーサンプリングレートを減らしている。オーバーサンプリング型AD変換回路はサイクル数を変更し、AD変換に必要な期間を短縮してもAD変換を実行できる。この弊害としてはノイズの増加により、AD変換の諧調が低下することが考えられるが、低振幅側の信号のAD変換の諧調を落とすことは許容されうる。そこで、本実施形態においては、低振幅側の信号のAD変換期間を短くすることで、高振幅側の信号のAD変換の精度は確保しつつ、速度の低下を抑制することを可能としている。
【0053】
なお、
図4においては、クロックサイクル数を減らす例を場合にとって説明したが、これに限られない。例えば、クロックサイクル数は同じでクロック周波数を上げても構わない。つまり、時刻t13~14において、時刻t15~t16よりもクロック周波数を上げることでAD変換期間を短縮しても構わない。但し、この場合、電力が増加すること、またクロック周波数の動的変更への対応が必要になるが、クロックサイクル数を高めることができるので階調の低下を抑制しうる。
【0054】
なお、第一サンプルホールド回路210の出力端と第二サンプルホールド回路211の出力端との間の第一抵抗素子240は可変抵抗でも構わない。つまり抵抗値に応じて変換部60へのレベルを調整できるようしてもよい。容量素子121が第一のデータ信号の電位Vs1を読み出す時刻t13~t14と容量素子122が第二データ信号の電位Vs2を読み出す時刻t15~16とで、可変抵抗240の抵抗値を変化させる。抵抗値を変化させることにより、振幅レベルに応じた低ノイズ化もしくは低電力化を行うことができる。これについて以下に説明する。
【0055】
時刻t13~t14において、時刻t15~t16よりも抵抗値を相対的に小さくする場合には、抵抗素子240で発生する熱雑音を低減することにより、データ信号Vs1のノイズを低減することが可能となる。一方、時刻t13~t14において、時刻t15~t16よりも抵抗値を相対的に大きくすることで変換部60への出力電流を減らし、電力を低減することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態においては、容量素子121と122とで、第二サンプルホールド回路211を共有することにより、動作時電力を増加することなく、2つのデータ信号Vs1,Vs2を読み出すことが可能となっている。また、上述のように、2つのデータ信号Vs1、Vs2への誤差電圧を抑制することが可能となっており、HDR撮像時の画質劣化の抑制が可能となっている。
【0057】
また、2つのデータ信号Vs1,Vs2を共通の抵抗素子240を用いて読み出すことにより、温度やプロセスばらつきに対するレベル変動が連動しやすい。これにより、例えば、データ信号Vs1、Vs2との両者に異なるばらつきが重畳することを抑制できるのでHDR画像の画質の低下を抑制できる。
【0058】
なお、
図5のように、画素10は、フローティングディフュージョン420の容量を切り替えるトランジスタ456を有しても構わない。読み出し期間中に、例えば、
図4の時刻t9においてトランジスタ456のオンオフを信号FDINCにより切替えることによりフローティングディフュージョン420の容量が変化する。このときトランジスタ456はフローティングディフュージョンの容量を変更する利得変更部として機能する。また、別の容量素子を、トランジスタを介してフローティングディフュージョンに接続して、トランジスタをオンオフ切替することにより容量を変更するようにしてもよい。利得変更部により電圧変換利得の異なる信号を容量素子121、122に出力して保持させることができる。電圧利得の異なる信号を用いてHDR撮像を行うことが可能となる。
【0059】
(実施形態2)
図6に実施形態2に係る光電変換装置のタイミングチャートを示す。以下では、実施形態1の
図4との相違点について説明する。
図6においては、時刻t4~t9までの第一データ信号の電位Vs1のサンプリング期間S1_SHを、時刻t9~t13までの第二データ信号の電位Vs2のサンプリング期間S2_SHよりも短く設定している。第一データ信号の方が第二データ信号よりも振幅が小さい。振幅が小さい信号の方が、サンプルホールド回路にサンプリングするときに、静定までに要する時間が短い。サンプリング期間を上記のように設定することにより、高振幅側の信号の精度は確保しつつ、速度の低下を抑制することを可能としている。さらに、本実施形態を実施形態1と組み合わせて第一データ信号の電位Vs1を変換する時間を第二データ信号の電位Vs2を変換する時間より短く設定できる。変換に要する時間の設定も変更することにより、光電変換素子からの信号の読み出しと変換に要する時間をさらに短縮できる。
【0060】
(実施形態3)
図7、8に本実施形態に係る光電変換装置の模式図およびタイミングチャートを示す。以下では、実施形態1との相違点について説明する。
図7においては、第一サンプルホールド回路210と構成が同一の第三サンプルホールド回路215を有している。また、第二サンプルホールド回路211と構成が同一の第四サンプルホールド回路216を有している。垂直信号線30から、第一サンプルホールド回路210、第二サンプルホールド回路211からの信号だけでなく、第三サンプルホールド回路215、第四サンプルホールド回路216からの信号も読み出すように構成される。
【0061】
第一サンプルホールド回路210と第二サンプルホールド回路211の対を第一サンプルホールド部と呼び、第三サンプルホールド回路215と第四サンプルホールド回路216の対を第二サンプルホールド部と呼ぶ。第一サンプルホールド部は所定の行の画素に対応して配置され、第二サンプルホールド部は別の行の画素に対応して配置されているとする。第一サンプルホールド部と第二サンプルホールド部とで、AD変換動作とサンプルホールド動作を重複した期間に行うことができる。これにより、読み出し動作時間をさらに短縮しうる。以下に説明する。
【0062】
図7においては、第一サンプルホールド部と第二サンプルホールド部とからの信号の読み出しを制御するために、スイッチ250、251、252、255、256、257を更に有している。これにより、スイッチ250、251、252をオン状態とした場合は、第一サンプルホールド回路210、第二サンプルホールド回路211にホールドした信号を元に変換部60でAD変換が可能である。一方、スイッチ250、251、252をオフ状態とし、スイッチ255、256、257をオン状態とする。この場合は、第三サンプルホールド回路215、第四サンプルホールド回路216にホールドした信号を元に変換部60でAD変換が可能になる。
【0063】
図8のタイミングチャートを用いて更に詳細に説明する。
図8において時刻t1~t2では、第一サンプルホールド回路210へのリセットレベルの信号の電位Vnのサンプリングを行う(
図4の時刻t1~t5と同一動作)。次に、時刻t2~t3では、第二サンプルホールド回路211への第一データ信号の電位Vs1のサンプリングを行う(
図4の時刻t5~t9と同一動作)。次に、時刻t3~t4では、第二サンプルホールド回路211への第二データ信号の電位Vs2のサンプリングを行う(
図4の時刻t9~t13と同一動作)。次に、時刻t4~6では、第一サンプルホールド回路210のリセットレベルの信号の電位Vnと第二サンプルホールド回路211の第一データ信号の電位Vs1に応じたAD変換動作を行う(
図4の時刻t13~t14と同一動作)。
【0064】
なお、この時、スイッチ250、251、252をオン状態、スイッチ255、256、257をオフ状態としている。そして本実施形態においては、時刻t4で更に、第三サンプルホールド回路215へ、次の行の画素のリセットレベルの信号レベルの電位Vn’のサンプリングを開始する。このように、第一サンプルホールド回路210、第二サンプルホールド回路211を変換部60と接続しAD変換する。AD変換と重複した期間に、第三サンプルホールド回路215、第四サンプルホールド回路216への次の画素の信号の読み出しを開始している。以上のようにして、第一サンプルホールド部と第二サンプルホールド部とで、AD変換動作とサンプルホールド動作を重複した期間に行うことができる。これにより、読み出し動作の更なる速度の低下を抑制することが可能となっている。
【0065】
(実施形態4)
図9の模式図及び
図10のタイミングチャートにより本実施形態に係る光電変換装置について説明する。以下では、実施形態1との相違点について説明する。本実施形態では、画素10は光電変換素子401、転送トランジスタ411を更に有する。画素10は、2つの光電変換素子400、401によりフローティングディフュージョン420が共有される構成となっている。画素10は例えば、垂直方向の2画素分に相当する画素としうる。つまり光電変換素子400と光電変換素子401とを行列状に配置された画素の2行に相当するように配置しうる。この場合も、光電変換素子400、401の各々の信号を
図3の容量素子121、122に各々保持、出力することにより、読み出し期間中に2行分の画素信号を読み出すことが可能となり、読み出しに要する時間をさらに短縮しうる。
【0066】
図10のタイミングチャートにおいて、時刻t5~t6において、制御信号TXAがハイレベルとなり転送トランジスタ410がオンすることにより、光電変換素子400からフローティングディフュージョン420へ光電荷が転送される。時刻t5からt8の期間に、制御信号Smp_s1がハイレベルとなり、スイッチ111がオンとなり、光電変換素子400の光電荷に基づく第一データ信号を
図3の容量素子121に保持する。時刻t9~t10において、制御信号TXBがハイレベルとなり転送トランジスタ411がオンすることにより、光電変換素子401からフローティングディフュージョン420へ光電荷が転送される。時刻t9からt12の期間に、制御信号Smp_s2がハイレベルとなり、スイッチ112がオンとなり、光電変換素子400および401の光電荷に基づく第二データ信号を
図3の容量素子122に保持する。容量素子121には時刻t2~t6の期間に対応する電荷が、容量素子122にはt2~t10の期間に対応する電荷がサンプルホールドされる。
【0067】
時刻t13~t14で、第一データ信号とリセットレベルの信号との差信号をAD変換し、また、時刻t15~t16で、第二データ信号とリセットレベルの信号との差信号をAD変換する。後段のデータ処理部90で第一データ信号と第二データ信号との差分をとることで、光電変換素子400、401各々で生成された信号に対するデジタル信号を得ることが可能となる。第一データ信号をAD変換するのに要する期間S1_ADを、第二データ信号をAD変換するのに要する期間S2_ADより短く設定する。以上のような動作により、単位読み出し期間中に、2行分の画素信号を読み出すことが可能となり、読み出しに要する時間を短縮しうる。
【0068】
本実施形態では実施形態1と同様に、時刻t13~t14の期間を時刻t15~t16よりも短くしている。これにより、高振幅側の信号のAD変換の精度は確保しつつ、読出しに要する時間を短縮しうることを可能としている。
【0069】
また、光電変換素子400、401を、画素に対応して配置された同一のマイクロレンズ下に形成した一対の光電変換素子としてもよい。このときは2つの光電変換素子400、401により、光電変換素子400、401に入射する光による像の位相差に対応する位相差信号を生成しうる。この場合、第一データ信号はオートフォーカス(AF)用の信号、第二データ信号は画像信号にしてもよい。この場合、オートフォーカス(AF)用の信号のAD変換に要する期間を画像信号のAD変換に要する期間よりも短く設定する。オートフォーカス用の信号の精度を画像信号のAD変換精度より落ちるが、画像信号のAD変換の精度は確保できる。また読出しに要する時間の短縮が可能である。
【0070】
第一データ信号を光電変換素子1つ分の信号とし、第二データ信号を光電変換素子2つ分の信号とする。第一データ信号の信号振幅の範囲は、光電変換素子2つ分の第二データ信号の信号振幅の範囲よりも小さい。これは光電変換素子2つの方が保持できる光電荷の量が大きくなるためである。光電変換素子400、401は面積の互いに異なるフォトダイオードでもよい。大きなフォトダイオードと小さなフォトダイオードでは、保持できる光電荷の量が異なるため、上述の位相差検出画素の例と同じように、互いに信号振幅の範囲が異なる信号を出力することになる。
【0071】
なお、本実施形態でも、
図5のように、画素10にフローティングディフュージョン容量を切り替えるためのトランジスタ456を備えることができる。この場合、読み出し期間中にトランジスタ456のオンオフを切替えて、電圧変換利得の異なる信号を読み出す場合は、互いの信号振幅の範囲は異なりうる。これは、例えば、リセットトランジスタ455とトランジスタ456との閾値の違いに起因する。リセットトランジスタ455の閾値が相対的に高い場合、トランジスタ456がオン状態の場合、電圧変換利得が低くなり、信号振幅の範囲は大きくできる。これは、フローティングディフュージョン420の電位がリセットレベルからより低いところまで低下することができるためである。
【0072】
(実施形態の変形例)
なお、実施形態1では、1つのサンプルホールド部50に対して1つの変換部60を接続する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、
図11に示すように、4つサンプルホールド部50~53を、マルチプレクサ500を介して1つの変換部60に接続しても構わない。ここではそれぞれのサンプルホールド部のそれぞれに対応する画素を配置し、画素のそれぞれからのリセットレベルの信号、第一データ信号、及び第二データ信号をサンプルホールドするものとして動作を説明する。この場合のタイミングチャートの一例を
図12に示す。マルチプレクサ500はサンプルホールド回路を選択する選択回路として動作する。
【0073】
時刻t1~t2では、各々のサンプルホールド部50~53でリセットレベルの信号をサンプルする。時刻t2~t3では、各々のサンプルホールド部50~53で第一データ信号をサンプルする。時刻t3~t4では、各々のサンプルホールド部50~53で第二データ信号をサンプルする。時刻t4~t8では、マルチプレクサ500により、サンプルホールド部50~53を順次、変換部60に接続することにより、サンプルホールド部50~53の各々の第一データ信号をシリアルにAD変換する。
時刻t8~t12では、マルチプレクサ500により、サンプルホールド部50~53を順次、変換部60に接続することにより、サンプルホールド部50~53の各々の第二データ信号をシリアルにAD変換する。この場合、第一データ信号のAD変換期間を短縮する効果は4倍となるため、読出しに要する時間の更なる短縮を可能としうる。また実施形態3のようにサンプルホールド期間とAD変換期間とを重複するように設定することにより、読み出しと変換に要する期間をさらに短縮できる。
【0074】
<光電変換装置の機器への適用>
以下、
図13に示される、半導体集積回路を含む半導体チップ1110が載置されたパッケージ1020を含む半導体装置1100を備える機器1000について説明する。半導体チップ1110は、パッケージ1020に収容され、機器1000に搭載される。
図8に示される構成において半導体チップ1110は上述の実施形態に係る光電変換装置を含む。半導体装置1100は、半導体チップ1110が固定された基台1010と、半導体チップ1110に対向するガラスなどの光透過部材1030と、を含むパッケージ1020を備えることができる。パッケージ1020には、基台1010に設けられたインナーリードと半導体チップ1110に設けられたパッド電極などの端子とを接続するワイヤやバンプなどの接合部材が配されうる。
【0075】
機器1000は、光学装置1040、制御装置1050、処理装置1060、表示装置1070、記憶装置1080、機械装置1090の少なくともいずれかを備えることができる。光学装置1040は、例えば、レンズやシャッター、ミラーである。制御装置1050は、半導体チップ1110を制御する。制御装置1050は、例えば、ASICなどの半導体デバイスである。
【0076】
処理装置1060は、半導体チップ1110に含まれる光電変換装置からの出力信号を処理する。処理装置1060は、AFEアナログフロントエンドあるいはDFEデジタルフロントエンドを構成するための、CPUやASICなどの半導体デバイスである。例えばイベント信号Eに基づいて画像を生成してもよい。表示装置1070は、半導体チップ1110で得られた情報画像を表示する、EL表示デバイスや液晶表示デバイスである。記憶装置1080は、半導体チップ1110で得られた情報画像を記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスである。記憶装置1080は、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリである。
【0077】
機械装置1090は、モーターやエンジンなどの可動部あるいは推進部を有する。機器1000では、半導体チップ1110から出力された信号を表示装置1070に表示したり、機器1000が備える通信装置不図示によって外部に送信したりする。そのために、機器1000は、半導体チップ1110が有する記憶回路や演算回路とは別に、記憶装置1080や処理装置1060をさらに備えていてもよい。機械装置1090は、半導体チップ1110から出力され信号に基づいて制御されてもよい。
【0078】
また、機器1000は、撮影機能を有する情報端末例えば、スマートフォンやウエアラブル端末やカメラ例えば、レンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラなどの電子機器に適する。カメラにおける機械装置1090はズーミングや合焦、シャッター動作のために光学装置1040の部品を駆動することができる。あるいは、カメラにおける機械装置1090は防振動作のために光学装置1040を移動することができる。
【0079】
また、機器1000は、車両や船舶、飛行体などの輸送機器でありうる。輸送機器における機械装置1090は移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器1000は、半導体チップ1110を輸送するものや、撮影機能により運転操縦の補助および/または自動化を行うものに適している。運転操縦の補助および/または自動化のための処理装置1060は、半導体チップ1110で得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置1090を操作するための処理を行うことができる。あるいは、機器1000は内視鏡などの医療機器や、測距センサなどの計測機器、電子顕微鏡のような分析機器、複写機などの事務機器、ロボットなどの産業機器であってもよい。
【0080】
(その他の実施形態)
本明細書の開示は、以下の光電変換装置を含む。
(項目1)
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素と、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備える光電変換装置であって、
前記2つの信号のうち振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換するための期間は、前記2つの信号のうち振幅の大きい方の信号をアナログデジタル変換するための期間より短く設定されている、光電変換装置。
(項目2)
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素と、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備える光電変換装置であって、
前記2つの信号のうち振幅が小さい方の信号をサンプルホールドする期間は、前記2つの信号のうち振幅の大きい方の信号をサンプルホールドする期間より短く設定されている、光電変換装置。
(項目3)
前記サンプルホールド部と前記変換回路との間に前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号の大きさを調整する回路を備えることを特徴とする項目1又は2に記載の光電変換装置。
(項目4)
前記大きさを調整する回路は、前記2つの信号のそれぞれの大きさを調整することを特徴とする項目3に記載の光電変換装置。
(項目5)
前記サンプルホールド部は増幅回路を備え、前記2つの信号は前記増幅回路を介して出力されることを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目6)
前記変換回路は、前記2つの信号と、前記光電変換素子のリセットレベルの信号との差分をアナログデジタル変換することを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目7)
前記画素は2つの光電変換素子を有し、前記2つの光電変換素子の一方の光電変換素子からの信号と前記2つの光電変換素子からの信号とを、前記2つの信号とすることを特徴とする項目1乃至6のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目8)
前記2つの光電変換素子は行列状に配置された前記画素のうちの異なる行に配置されていることを特徴とする項目7に記載の光電変換装置。
(項目9)
前記画素に対応してマイクロレンズが配置されており、前記2つの信号に基づいて位相差信号を生成することを特徴とする項目7に記載の光電変換装置。
(項目10)
同じ期間に入射する光に対して前記2つの光電変換素子が生成する電荷の量が異なるように構成されていることを特徴とする項目7乃至9のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目11)
前記アナログデジタル変換は前記変換回路へクロック信号が供給されている間に行われることを特徴とする項目1乃至10のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目12)
前記振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換する期間に供給される前記クロック信号のサイクル数は、前記振幅が大きい方の信号をアナログデジタル変換するために供給されるクロック信号のサイクル数より少なく設定されることを特徴とする項目11に記載の光電変換装置。
(項目13)
前記振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換する期間に供給される前記クロック信号の周波数は、前記振幅が大きい方の信号をアナログデジタル変換するために供給される前記クロック信号の周波数よりも高く設定されることを特徴とする項目11又は12に記載の光電変換装置。
(項目14)
前記2つの信号はサンプルホールド部の2つの容量にそれぞれ保持されることを特徴とする項目1乃至13のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目15)
前記変換回路の入力に積分器が設けられていることを特徴とする項目1乃至14のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目16)
前記積分器はアナログデジタル変換が行われない期間はリセットされていることを特徴とする項目15に記載の光電変換装置。
(項目17)
複数の前記サンプルホールド部と、前記複数の前記サンプルホールド部を選択する選択回路と、選択されたサンプルホールド部からの信号をアナログデジタル変換する前記変換回路と、を有することを特徴とする項目1乃至16のいずれか1項目に記載の光電変換装置。
(項目18)
前記複数の前記サンプルホールド部のうちの第一サンプルホールド部からの信号をアナログデジタル変換する期間と、前記複数の前記サンプルホールド部のうちの第二サンプルホールド部が前記画素からの信号をサンプルホールドする期間とが重複するように設定されていることを特徴とする項目17に記載の光電変換装置。
(項目19)
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素が配置された基板と積層される基板であって、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備え、
前記2つの信号のうち、振幅が小さい方の信号をアナログデジタル変換するための期間は振幅の大きい方の信号をアナログデジタル変換するための期間より短く設定されている、基板。
(項目20)
光電変換素子を有し、振幅が異なる2つの信号を出力する画素が配置された基板と積層される基板であって、
前記画素から出力される前記2つの信号をそれぞれサンプルホールドするサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド部から出力される前記2つの信号を順にアナログデジタル変換するオーバーサンプリング型の変換回路と、を備え、
前記2つの信号のうち、振幅が小さい方の信号をサンプルホールドする期間は振幅の大きい方の信号をサンプルホールドする期間より短く設定されている、基板。
(項目21)
項目1乃至18のいずれか1項目に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの出力信号を処理する処理装置と、を備えることを特徴とする機器。
【0081】
なお、撮像装置、光電変換装置の形態は上述のものに限られない。例えば、画素10は
図2のもの限られない。垂直信号線が1画素列に複数本有する場合や選択トランジスタ440を複数有する形態でも構わない。また、変換部60は、オートゼロ動作用の容量やスイッチを有する比較器を用いた構成でも構わない。
【0082】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0083】
1:画素基板、2:回路基板、5:画素部、10:画素、30:垂直信号線、40:電流源、50:サンプルコールド部、60:変換部、70:制御部、90:データ処理部、100:出力部