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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175485
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】便器洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/092 20060101AFI20241211BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20241211BHJP
   E03D 1/34 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E03D5/092
E03D5/10
E03D1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093314
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】香川 元輝
(72)【発明者】
【氏名】袋井 桂華
(72)【発明者】
【氏名】吉久 甫
(72)【発明者】
【氏名】井上 幸宏
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039BA13
2D039EA03
2D039FD01
(57)【要約】
【課題】騒音の生じにくい便器洗浄装置を提供すること。
【解決手段】便器100と連通する便器洗浄タンク300の排水口311を開閉する開閉機構350を動作させる便器洗浄装置1は、開閉機構350を開閉するために回転する出力軸2と、出力軸2を駆動するモータ7と、モータ7からの動力が伝達されるとともに互いに連結されることで動力を出力軸2に伝達する二つの回転部材3、4の間に配置され、回転部材3、4を連結又は分離させるクラッチ5と、開閉機構350により開動作が行われているときに、出力軸2を、開閉機構350の開動作を行う前の初期位置へ付勢する付勢部材23と、出力軸2に接続される洗浄ハンドル部材34と、モータ7の回転を制御するとともに、クラッチ5の連結及び分離を制御する制御部8と、を備え、制御部8は、開動作の後で、モータ7を逆方向に回転させた後、クラッチ5を分離させる制御を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と連通する便器洗浄タンクの排水口を開閉する開閉機構を動作させる便器洗浄装置であって、
前記開閉機構を開閉するために回転する出力軸と、
前記出力軸を駆動するモータと、
前記モータからの動力が伝達されるとともに互いに連結されることで前記動力を前記出力軸に伝達する二つの回転部材の間に配置され、前記回転部材を連結又は分離させるクラッチと、
前記開閉機構により開動作が行われているときに、前記出力軸を、前記開閉機構の開動作を行う前の初期位置へ付勢する付勢部材と、
前記出力軸に接続される洗浄ハンドル部材と、
前記モータの回転を制御するとともに、前記クラッチの連結及び分離を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記開動作の後で、前記モータを逆方向に回転させた後、前記クラッチを分離させる制御を実行する、便器洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータを逆方向に回転させて、前記出力軸を前記初期位置まで戻す制御を実行する、請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記便器に固定して配置される前記便器洗浄タンクを有する固定ユニットと、
前記固定ユニットに対して上下に昇降可能な昇降ユニットと、をさらに備え、
前記洗浄ハンドル部材は、
前記固定ユニット側に取り付けられるとともに、前記出力軸に接続される固定ユニット側ハンドルと、
前記昇降ユニットとともに昇降可能であり、下降した位置で前記固定ユニット側ハンドルに接触可能な昇降ユニット側ハンドルとを有する、請求項1又は2に記載の便器洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄装置として、モータにより回転する出力軸と、洗浄水を貯水する洗浄タンクの排水口を開閉する開閉機構とを接続し、電動で洗浄を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-197969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出力軸が回転して、開閉機構が元の位置に戻る際、出力軸の回転により、例えばハンドル等の開閉機構に設けられた部品が振動して騒音が生じる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、便器と連通する便器洗浄タンクの排水口を開閉する開閉機構を動作させる便器洗浄装置であって、前記開閉機構を開閉するために回転する出力軸と、前記出力軸を駆動するモータと、前記モータからの動力が伝達されるとともに互いに連結されることで前記動力を前記出力軸に伝達する二つの回転部材の間に配置され、前記回転部材を連結又は分離させるクラッチと、前記開閉機構により開動作が行われているときに、前記出力軸を、前記開閉機構の開動作を行う前の初期位置へ付勢する付勢部材と、前記出力軸に接続される洗浄ハンドル部材と、前記モータの回転を制御するとともに、前記クラッチの連結及び分離を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記開動作の後で、前記モータを逆方向に回転させた後、前記クラッチを分離させる制御を実行する、便器洗浄装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係る昇降装置を含む便器装置を示す図であって、タンクカバーが上昇前の定位置に配置された場合を示す図である。
図2】本実施形態に係る昇降装置を含む便器装置を示す図であって、タンクカバーが上昇後の上昇位置に配置された場合を示す図である。
図3】本実施形態に係る開閉機構を示す図である。
図4】本実施形態に係る洗浄機構の斜視図である。
図5】本実施形態に係る洗浄機構の断面図である。
図6】本実施形態に係るモータの回転制御を示す図である。
図7A】本実施形態に係る洗浄ハンドルユニットが開閉機構を閉じた状態を示す図である。
図7B】実施形態に係る洗浄ハンドルユニットが開閉機構を開いた状態を示す図である。
図7C】実施形態に係る洗浄ハンドルユニットが開閉機構を開いた状態から閉じるまでの途中の状態を示す図である。
図7D】本実施形態に係る洗浄ハンドルユニットが開閉機構を元に戻して閉じた状態を示す図である。
図8】本実施形態に係るモータの回転制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の便器洗浄装置1は、装置の一部が上下に昇降可能ないわゆるリフトアップ機能を有する。便器洗浄装置1は、便器100と、便器洗浄タンク300と、リアベース部材400と、フロントベース部材500と、昇降装置600と、洗浄機構10と、を備える。
【0008】
以下の説明においては、便器100の便座120に座った人から視た場合の前後の向きを前後方向Yとする。本実施形態では、前方側を前方側Y1とし、後方側を後方側Y2とする。また、便器100の便座120に座った人から視た場合の左右の向きを左右方向Xとする。本実施形態では、座った人から視た場合の左側を一方側X1(図3図5の紙面では右側)とし、座った人から視た場合の右側を他方側X2(図3図5の紙面では左側)とする。また、鉛直方向に沿った上下の向きを上下方向とする。
【0009】
便器100は、図1及び図2に示すように、便器本体110と、便座120と、便蓋130と、便器側部カバー部材140と、を備える。
【0010】
便器本体110は、上部が開口した凹部を有する、便座120及び便蓋130は、便器本体110の上部に、便器本体110に対して回動可能に取り付けられる。便器側部カバー部材140は、便器100の下方における後部の側部に配置され、便器本体110の後部及び配管等を側方から覆う。
【0011】
リアベース部材400は、便器本体110の後方の上部に取り付けられる。リアベース部材400は、樹脂材料により形成され、便器100の左右方向X及び前後方向Yに延びるように形成される。リアベース部材400の上方には、後述するタンク本体310及び機能部材(図示せず)が配置される。
【0012】
フロントベース部材500は、便器本体110の後部の上方において、リアベース部材400の前方に配置される。フロントベース部材500は、樹脂材料により形成され、便器100の左右方向X及び前後方向Yに延びるように形成される。フロントベース部材500は、機能部材(図示せず)を支持する。
【0013】
フロントベース部材500は、後述する昇降装置600により、リアベース部材400及び便器本体110に対して上下方向に移動可能に構成される。フロントベース部材500は、昇降装置600により、上昇前の定位置(図1参照)又は上昇後の上昇位置(図2参照)に移動可能である。
【0014】
便器洗浄タンク300は、タンクカバー330と、タンク本体310と、開閉機構350と、洗浄ハンドル部材34と、を備える。
【0015】
タンクカバー330は、図1に示すように、タンク本体310を覆うように、タンク本体310に被せられる。タンクカバー330は、上部カバー部330aと、下部カバー部330bと、を有する。
【0016】
タンクカバー330は、便器100の上方における後部に配置される。上部カバー部330aは、便器100の後部において、タンク本体310及び機能部材(図示せず)を上方から覆う。下部カバー部330bは、タンク本体310の側部を覆う。下部カバー部330bは、前方側Y1において、フロントベース部材500に取り付けられている。下部カバー部330bには、便座120及び便蓋130が、便器本体110に対して開閉可能に取り付けられる。上部カバー部330a、下部カバー部330b、便座120及び便蓋130は、昇降装置600の昇降に連動して、フロントベース部材500が昇降することで、上下方向に昇降される。
【0017】
上部カバー部330aは、タンクカバー330の上部を構成し、便器洗浄タンク300の上部を塞ぐように形成される。上部カバー部330aには、手洗い部900が設けられている。
下部カバー部330bは、タンクカバー330の下部を構成する。下部カバー部330bは、筒状に形成され、タンク本体310の側部の周囲を囲むように形成される。
【0018】
タンク本体310は、リアベース部材400の上方において、便器本体110の後方かつ上方に固定して配置され、便器本体110を洗浄する洗浄水を貯留する。タンク本体310は、便器洗浄タンク300に内装される。タンク本体310の上部には、不図示のタンク蓋部が配置されている。タンク本体310及びタンク蓋部は、タンクカバー330に覆われている。タンク本体310及びリアベース部材400を含む設置位置に固定されて動かない部材を、固定ユニットBという。
【0019】
タンク本体310は、洗浄水を貯留する。タンク本体310は、便器洗浄タンク300の左右方向Xに長く形成される。タンク本体310は、上面が開口して形成され、底部310aと、底部310aの周縁から立ち上がり周囲を囲むように形成される周壁310bと、を備える。周壁310bは、タンク本体310の外壁を構成する。
【0020】
図3に示すように、タンク本体310の下部には、フラッパー弁351により開閉される排水口311が形成されている。排水口311は、後述する開閉機構350により開閉され、便器本体110に洗浄水を排出する。
【0021】
開閉機構350は、便器本体110と連通する便器洗浄タンク300の排水口311を開閉する。開閉機構350は、図3に示すように、フラッパー弁351と、玉鎖352と、アーム部材353と、を有する。フラッパー弁351は、排水口311を閉塞する。玉鎖352は、一端がフラッパー弁351に、他端がアーム部材353に接続されている。アーム部材353は、後述する洗浄ハンドル部材34に接続される。洗浄ハンドル部材34が回転することで、アーム部材353が回転し、先端が上方へ移動する。アーム部材353の回転に伴って、玉鎖352が引っ張られてフラッパー弁351が開閉する。フラッパー弁351を引き上げて排水口311を開放することにより、タンク本体310の内部に貯留された洗浄水が排水口311から流出する。これにより洗浄水が便器本体110に供給され、便器本体110が洗浄される。
【0022】
洗浄ハンドル部材34の説明の前に、昇降装置600について説明する。昇降装置600は、機能部材(図示せず)を支持するフロントベース部材500を、便器本体110に対して昇降させる。昇降装置600は、機能部材(図示せず)が配置されたフロントベース部材500を昇降させることで、タンクカバー330(上部カバー部330a、下部カバー部330b)、便座120及び便蓋130を、上昇前の定位置(図1参照)又は上昇後の上昇位置(図2参照)に昇降させる。これらのフロントベース部材500、タンクカバー330、便座120、便蓋130及び昇降装置600を、昇降ユニットAと言う。昇降ユニットAは、固定ユニットBに対して上下に昇降する。
【0023】
昇降装置600は、図1及び図2に示すように、昇降操作レバー部材610と、昇降機構部620と、を備える。本実施形態においては、昇降装置600は、昇降操作レバー部材610を手動で操作することで、機能部材(図示せず)が配置されたフロントベース部材500やタンクカバー330を昇降させる。
【0024】
昇降操作レバー部材610は、フロントベース部材500の上面に配置される。昇降操作レバー部材610は、タンクカバー330の外部に露出する操作部611を有する。
【0025】
昇降機構部620は、伸縮軸機構部630を有する。伸縮軸機構部630は、圧縮ばね部材(図示せず)を有している。昇降操作レバー部材610の操作部611が押圧するように操作され、昇降機構部620の伸縮軸機構部630が伸縮することで、フロントベース部材500が、リアベース部材400に対して上下方向に移動する。
【0026】
洗浄ハンドル部材34は、図4に示すように、タンク本体310における左右方向Xの一方側X1(図4における右側)の端部の上部に配置される。洗浄ハンドル部材34は、固定ユニット側ハンドル341と、昇降ユニット側ハンドル342と、を有し、開閉機構350に接続される。
【0027】
固定ユニット側ハンドル341は、固定ユニットB側に取り付けられる。固定ユニット側ハンドル341は、ハンドル板341aを有し、後述する洗浄機構10の出力軸2と接続されて構成されている。固定ユニット側ハンドル341は、ハンドル板341aが回転操作されることで、出力軸2を回転させることが可能である。
【0028】
ハンドル板341aは、前後方向Yの中央において、出力軸2の左右方向Xの一方側X1(図4における右側)の端部に接続される。ハンドル板341aは、前後方向Yに水平に延びる板状に形成される。ハンドル板341aには、前後方向Yの中央に、凹部341bが形成されている。
【0029】
昇降ユニット側ハンドル342は、図4に示すように、固定ユニット側ハンドル341とは別体により構成され、タンクカバー330の下部カバー部330bに取り付けられている。昇降ユニット側ハンドル342は、昇降装置600によるタンクカバー330の昇降に伴って昇降する。昇降ユニット側ハンドル342は、タンクカバー330の定位置において、固定ユニット側ハンドル341のハンドル板341aの上部に載置されており、固定ユニット側ハンドル341を回転させることが可能な位置に配置される。昇降ユニット側ハンドル342は、図2に示すように、タンクカバー330の上昇位置において、定位置(図1参照)よりも上方側に離間して配置される。
【0030】
昇降ユニット側ハンドル342は、昇降ユニットAとともに昇降可能であり、下降した位置で固定ユニット側ハンドル341に接触可能である。昇降ユニット側ハンドル342は、ハンドル本体3421と、二股部材3422を有する。
【0031】
ハンドル本体3421は、下部カバー部330bの外側に配置され、手動により洗浄を行う際に使用者により回転操作される。ハンドル本体3421は、下部に突出する摘まみ部3421aを有する。
【0032】
二股部材3422は、下部カバー部330bの内側に配置され、ハンドル本体3421の内側に取り付けられる。二股部材3422は、昇降装置600によるタンクカバー330の定位置(図1参照)においては、固定ユニット側ハンドル341のハンドル板341aの上部に配置され、昇降装置600によるタンクカバー330の上昇位置(図2参照)においては、固定ユニット側ハンドル341のハンドル板341aから上方側に離間して配置される。
【0033】
二股部材3422は、図4に示すように、タンク本体310の前後方向Yに離れるように二股に分かれて延びる。二股部材3422の前後方向Yの中央の下部には、下方に膨出する膨出部3422aが形成されている。膨出部3422aは、昇降装置600によるタンクカバー330の定位置(図1参照)において、固定ユニット側ハンドル341の凹部341bに配置される。
【0034】
手動で洗浄を行う場合は、使用者が昇降ユニット側ハンドル342の摘まみ部3421aを操作する。摘まみ部3421aを前側に引くか、又は後側へ倒すと、昇降ユニット側ハンドル342が回転する。回転により、二股部材3422の下方に重なるように配置されているハンドル板341aを二股部材3422が押圧するので、ハンドル板341aも連動して回転する。
【0035】
次に、便器洗浄装置1における洗浄機構10の構成について説明する。洗浄機構10は、図3に示すように、便器洗浄タンク300の内部に配置されている。洗浄機構10は、開閉機構350を動作させる。洗浄機構10は、図4及び図5に示すように、モータ7と、出力軸2と、駆動ギア22と、付勢部材としての戻りばね23と、固定ギア3と、浮動ギア4と、クラッチ5と、ソレノイド6と、制御部8と、ケーシング9と、を備える。
【0036】
ケーシング9は、洗浄機構10を構成する各部品を収納する筐体であり、洗浄機構10の外形をなしている。
【0037】
制御部8は、自動で洗浄する自動洗浄を行うように制御するコンピュータである。制御部8は、不図示の電力供給部に接続されるとともに、排水を行うための契機を検知する各種のセンサ等と接続されたり、使用者が無線を介して信号の授受が可能なリモートコントローラーの操作を行うことで洗浄を行う信号を受信したりすることで、自動洗浄を行うように構成されている。制御部8は、モータ7に接続されてモータ7の回転を制御し、開閉機構350を動作させる制御を行う。また、制御部8は、クラッチ5の連結及び分離を制御する。
【0038】
モータ7は、洗浄機構10を駆動させる動力源である。モータ7は、開閉機構350を自動で動作させるものであり、出力軸2を駆動する。モータ7は、例えば、使用者がリモートコントローラーを操作することで、制御部8に出力される便器洗浄指示信号に基づいて通電され、駆動することができる。
【0039】
モータ7の動力は、減速機構70を介して開閉機構350に伝達される。減速機構70は、ケーシング9の内部に配置され、モータ7からの出力トルクを大きなトルクに変換するものである。減速機構70は、大きな減速比を得るために、ウォームギアと、2段ギアとを有する。ウォームギアは、モータ7の回転軸に固定されており、ケーシング9内で回転自在に支持された2段ギアの歯数の少ない側のギアと噛み合っている。
【0040】
出力軸2は、開閉機構350を開閉するために回転する。出力軸2は、ケーシング9に対して回転自在に支持されている。出力軸2は、ケーシング9により、ケーシング9に対して軸方向に移動することが規制されている。出力軸2の洗浄ハンドル部材34側(以下、単に「ハンドル側」と称する)の端部2aは、固定ユニット側ハンドル341に接続されている。手動で洗浄を行う場合、出力軸2は、使用者が洗浄ハンドル部材34を操作することで回転する。出力軸2の便器洗浄タンク300側(以下、単に「タンク側」と称する)の端部2bは、アーム部材353に接続されている。
【0041】
戻りばね23は、出力軸2のハンドル側に配置されている。戻りばね23は、開閉機構により開動作が行われているときに、出力軸2を、初期位置、すなわち開閉機構350の開動作を行う前の状態に位置するように付勢している。
【0042】
駆動ギア22は、浮動ギア4を介して、モータ7からの動力を出力軸2に伝達する。駆動ギア22は、出力軸2に固定されており、出力軸2と一体に回転する。駆動ギア22は、外周に複数の歯22aが形成され、後述する浮動ギア4の外周に形成された歯4aと接触して配置され、浮動ギア4と噛み合っている。駆動ギア22及び後述する浮動ギア4は平歯車である。駆動ギア22の歯22aは、浮動ギア4が固定ギア3に対して軸方向に移動しても、噛み合いを維持できるように配置されている。具体的には、歯22aは、浮動ギア4の軸方向における位置に拘わらず、浮動ギア4に伝達されたモータ7からの動力を駆動ギア22に伝達することが可能となり、浮動ギア4の歯4aと接触面を確保するように、軸方向における長さが設定されている。
【0043】
固定ギア3及び浮動ギア4は、本開示における二つの回転部材であり、モータ7からの動力が伝達されるとともに互いに連結されることでモータ7の動力を出力軸2に伝達する。
【0044】
固定ギア3には、減速機構70を介して、モータ7からの動力が伝達される。固定ギア3には、外周に複数の歯3aが形成されており、減速機構70の図示しない2段ギアの歯数の多い側のギアの外周に形成された歯と接触して配置され、2段ギアの歯数の多い側のギアと噛み合っている。つまり、固定ギア3は、モータ7からの動力が減速機構70を介してトルクが大きく変換された状態で伝達される。固定ギア3は、シャフト50に対して回転自在に支持されている。シャフト50は、ケーシング9にハンドル側の端部50aが支持され、軸方向におけるハンドル側に移動することが規制されている。また、シャフト50は、固定ギア3を回転自在に支持した状態で、タンク側の端部50bが固定ギア3よりタンク側に突出するように形成されている。また、固定ギア3は、歯3aのタンク側側面よりもタンク側に突出するタンク側突出部3bが形成されている。タンク側突出部3bには、図5に示すように、後述するクラッチ5の固定ギア側凸部51が周方向に等間隔で複数形成されている。
【0045】
浮動ギア4には、固定ギア3を介して、減速機構70に伝達されたモータ7からの動力が伝達される。浮動ギア4には、後述するクラッチ5が係合状態である場合に、モータ7からの動力が伝達される。浮動ギア4は、シャフト50のタンク側の端部50bが挿入されることで、シャフト50に対して回転自在に支持されるとともに、シャフト50に対して軸方向に移動自在に支持されている。つまり、浮動ギア4は、固定ギア3と同軸上で、固定ギア3のタンク側に配置され、固定ギア3に対して軸方向に移動自在に支持されている。また、浮動ギア4は、上述のように駆動ギア22と噛み合っているので、出力軸2にモータ7からの動力を伝達可能に連結されている。また、浮動ギア4は、歯4aのタンク側側面よりもタンク側に突出するタンク側突出部4bが形成されている。タンク側突出部4bは、後述するソレノイド6のソレノイドカバー61及びヨーク62に形成された貫通穴に軸方向に移動自在に挿入され、可動鉄芯64と接触する。また、浮動ギア4は、歯4aのハンドル側側面よりもハンドル側に突出するハンドル側突出部4cを有する。ハンドル側突出部4cは、タンク側突出部3bと軸方向において対向する。ハンドル側突出部4cは、図5に示すように、後述するクラッチ5の浮動ギア側凸部52が周方向に等間隔で複数形成されている。
【0046】
クラッチ5は、図5に示すように、固定ギア3及び浮動ギア4の間に配置され、これら二つのギアを連結又は分離させる。クラッチ5は、固定ギア3に対して浮動ギア4が軸方向に移動することで係合する。クラッチ5は、浮動ギア4を固定ギア3に連結する方向、本実施形態では、軸方向のうち、タンク側からハンドル側に向かう方向に、固定ギア3に対して浮動ギア4が移動することで係合するものである。つまり、クラッチ5は、固定ギア3と浮動ギア4とを連結し、モータ7からの動力により出力軸2を回転させ、開閉機構350を自動で動作させるものである。つまり、クラッチ5は、自動洗浄の際に動力を開閉機構350に伝達するために係合され、手動洗浄の際に解放される。クラッチ5は、固定ギア側凸部51と、浮動ギア側凸部52とを有する。
【0047】
固定ギア側凸部51は、固定ギア3のタンク側突出部3bのタンク側端部からタンク側に突出して形成されている。固定ギア側凸部51は、浮動ギア4が固定ギア3に対してハンドル側に移動することで、軸方向において隣り合う浮動ギア側凸部52の間に入り込む。固定ギア側凸部51は、浮動ギア側凸部52と接触する噛み合い面が固定ギア3の周方向において対向して形成されている。固定ギア側凸部51は、対向する噛み合い面の幅が先端部に向かう、すなわちハンドル側からタンク側に向かうに伴い狭くなるテーパー状に形成されている。
【0048】
浮動ギア側凸部52は、浮動ギア4のハンドル側突出部4cのハンドル側端部からハンドル側に突出して形成されている。浮動ギア側凸部52は、浮動ギア4が固定ギア3に対してハンドル側に移動することで、軸方向において隣り合う固定ギア側凸部51の間に入り込む。つまり、クラッチ5は、固定ギア側凸部51と浮動ギア側凸部52とは互いに軸方向に噛み合うことで係合し、固定ギア3と浮動ギア4とを一体回転させる。浮動ギア側凸部52は、固定ギア側凸部51と接触する噛み合い面が浮動ギア4の周方向において対向して形成されている。浮動ギア側凸部52は、対向する噛み合い面の幅が先端部に向かう、すなわちハンドル側からタンク側に向かうに伴い狭くなるテーパー状に形成されている。
【0049】
ソレノイド6は、アクチュエータであり、作動時に浮動ギア4を固定ギア3の方へ移動させる。ソレノイド6は、電磁エネルギーを機関的直線運動に変換するものであり、図5に示すように、浮動ギア4のタンク側に配置されている。ソレノイド6は、ソレノイドカバー61と、ヨーク62と、コイル63と、可動鉄芯64とを有する。
【0050】
ソレノイドカバー61は、ヨーク62と、コイル63と、可動鉄芯64を内部に収容する。ソレノイドカバー61は、ケーシング9に対して固定されている。
【0051】
ヨーク62は、コイル63を挟んで可動鉄芯64と軸方向において対向して、ソレノイドカバー61内に配置されている。ヨーク62は、可動鉄芯64が接触することで、可動鉄芯64が軸方向においてハンドル側に移動できる範囲を規制する。
【0052】
コイル63は、電力が供給されることで電磁エネルギーを発生する。コイル63は、リング状に形成され、ヨーク62内に収納されている。コイル63は、制御部8により電力の供給及び制御が行われている。コイル63は、使用者がリモートコントローラーを操作することで、制御部8に出力された便器洗浄指示信号に基づいて通電され、電磁エネルギーを発生する。
【0053】
可動鉄芯64は、電磁エネルギーにより直線運動を行う。可動鉄芯64は、円柱状に形成され、軸方向においてコイル63とケーシング9との間に配置され、軸方向において移動自在にコイル63に挿入されている。可動鉄芯64には、コイル63が電磁エネルギーを発生することで軸方向のうちタンク側からハンドル側に向かう方向の吸引力が加わる。可動鉄芯64は、加わった吸引力により軸方向においてハンドル側に移動する。従って、可動鉄芯64と軸方向において接触する浮動ギア4は、可動鉄芯64が吸引力により移動することで、軸方向においてハンドル側に移動、すなわちストロークすることとなる。これにより、可動鉄芯64は、軸方向において接触する浮動ギア4に対して連結方向の押圧力Fsを加えることができる。また、可動鉄芯64は、軸方向においてタンク側に半径方向外側に突出するフランジ部64aが形成されている。フランジ部64aは、少なくとも一部がケーシング9と軸方向において対向しており、ケーシング9に接触することで、可動鉄芯64が軸方向においてタンク側に移動できる範囲を規制する。可動鉄芯64がヨーク62に対して軸方向におい最も離間した位置をセット位置とし、最も接近、例えばヨーク62と接触する位置をストローク位置とする。セット位置では、可動鉄芯64と軸方向において接触する浮動ギア4が固定ギア3に対して軸方向において最も離間した状態となり、固定ギア側凸部51と浮動ギア側凸部52とが噛み合わずクラッチ5が解放状態となる。ストローク位置では、可動鉄芯64と軸方向において接触する浮動ギア4が固定ギア3に対して軸方向において最も接近した状態となり、固定ギア側凸部51と浮動ギア側凸部52とが噛み合いクラッチ5が係合状態となる。
【0054】
以上の洗浄機構10では、自動で洗浄する際には、モータ7が回転するとともに、ソレノイド6の可動鉄芯64が移動して浮動ギア4が固定ギア3の方へ移動し、クラッチ5が係合する。そして浮動ギア4と固定ギア3が連結されて回転するに伴い、浮動ギア4に噛み合った駆動ギア22が回転して、出力軸2が回転する。出力軸2が回転すると、開閉機構350のアーム部材353が引き上げられ、フラッパー弁351が開かれて排水が行われる。制御部8はこの間、洗浄機構10を以下のように制御する。
【0055】
図6図7A~7D及び図8に示すように、制御部8は、モータ7の回転及びクラッチ5の分離連結を制御する。リモートコントローラー等から、制御部8が便器洗浄指示信号を受信すると、制御部8は、クラッチ5を係合させ(クラッチ係合ステップS1)、図7Aの状態から図7Bの状態へ、開閉機構350を動作させる(開閉機構動作ステップS2)。この動作を開動作と呼ぶ。開動作では、アーム部材353の先端が上方へ移動し、玉鎖352が引っ張られる。排水が行われ、図7Bに示すように、アーム部材353が回転して開動作の全開状態になったところで、モータ7は停止する(モータ停止ステップS3)。開動作の後、図6及び図7Cに示すように、制御部8は、モータ7を逆方向に回転させる(モータ逆回転ステップS4)。図7Dに示すように、制御部8は、モータ7を逆回転させて、出力軸2を、開動作を行う前の位置である初期位置まで戻す。このとき、モータ7を逆方向に回転させて出力軸2を初期位置に戻した後でクラッチ5を解放し、分離させる(クラッチ分離ステップS5)。クラッチ5が分離した後、最終的にモータ7を停止させる(モータ停止ステップS6)。モータ7の逆回転を行わずにクラッチ5を解放すると、クラッチ5が分離した後、戻りばね23の勢いで二股部材3422がハンドル板341aの上で振動し、衝突音が生じる場合がある。しかし、モータ7を逆回転させて出力軸2を元に戻すと、出力軸2に接続されている昇降ユニット側ハンドル342も元へ戻り、元へ戻った後にクラッチ5が分離されるので、騒音が低減される。
【0056】
モータ逆回転ステップS4の時間は、100ミリ秒から1200ミリ秒の間、例えば、450ミリ秒から600ミリ秒が好ましく、500ミリ秒から550ミリ秒がさらに好ましい。500ミリ秒よりも少ない場合、モータ7でハンドルを元の位置に戻した際に、固定ユニット側ハンドル341と昇降ユニット側ハンドル342が衝突して騒音が生じる懸念がある。また、アーム部材353が初期位置に戻った後、実際にフラッパー弁351が開いた状態から排水口311を閉じるまでに時間がかかるので、1200秒を超えると、便器洗浄タンク300内の洗浄水が減少しすぎてしまう懸念がある。
【0057】
クラッチ分離ステップS5において、クラッチ5を分離するタイミングは、アーム部材353の位置によっても規定することができる。アーム部材353が、上がった状態から下がって鉛直方向に近くなればなるほど、騒音が生じる度合いが小さくなる。アーム部材353が下方に垂れた状態で、アーム部材353の傾きの角度は、鉛直方向に対して一方側をプラス、他方側をマイナスとした場合、-16.3度~+11.5度のときに、クラッチ5が分離することで、ハンドルが戻る際の騒音が好ましい程度に小さくなる。このとき、モータ逆回転ステップS4の好ましい時間は、例えば、450ミリ秒から600ミリ秒が好ましく、500ミリ秒から550ミリ秒に対応している。
【0058】
なお、モータ7の逆回転は、電流に負荷が生じない動作なので、電圧は、例えば、12v、30A程度で一定している。
【0059】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。便器洗浄装置1に、便器100と連通する便器洗浄タンク300の排水口311を開閉する開閉機構350を動作させた。便器洗浄装置1を、開閉機構350を開閉するために回転する出力軸2と、出力軸2を駆動するモータ7と、モータ7からの動力が伝達されるとともに互いに連結されることで動力を出力軸2に伝達する二つの固定ギア3、浮動ギア4の間に配置され、固定ギア3、浮動ギア4を連結又は分離させるクラッチ5と、開閉機構350により開動作が行われているときに、出力軸2を、開閉機構350の開動作を行う前の初期位置へ付勢する戻りばね23と、出力軸2に接続される洗浄ハンドル部材34と、モータ7の回転を制御するとともに、クラッチ5の連結及び分離を制御する制御部8と、を含んで構成した。制御部8を、開動作の後で、モータ7を逆方向に回転させた後、クラッチ5を分離させる制御を実行させた。モータ7を逆回転させた後で、クラッチ5を分離させると、出力軸2が戻った後でクラッチ5が分離する。このため、出力軸2を付勢する戻りばね23が戻る勢いで洗浄ハンドル部材34ががたつき、生じる騒音を低減することができる。
【0060】
本実施形態によれば、制御部8に、モータ7を逆方向に回転させて、出力軸2を初期位置まで戻す制御を実行するように構成した。モータ7の逆回転により出力軸2が初期位置へ戻されることで、出力軸2に連結された洗浄ハンドル部材34の固定ユニット側ハンドル341が初期位置に戻る。クラッチ5が、固定ユニット側ハンドル341が初期位置に戻った後に分離することとなるので、昇降ユニット側ハンドル342が固定ユニット側ハンドル341に衝突することを防止することができる。これにより便器洗浄後の騒音を低減することができる。
【0061】
本実施形態によれば、便器洗浄装置1を、便器100に固定して配置される便器洗浄タンク300を有する固定ユニットBと、固定ユニットBに対して上下に昇降可能な昇降ユニットAと、をさらに含んで構成した。洗浄ハンドル部材34を、固定ユニットB側に取り付けられるとともに、出力軸2に接続される固定ユニット側ハンドル341と、昇降ユニットAとともに昇降可能であり、下降した位置で固定ユニット側ハンドル341に接触可能な昇降ユニット側ハンドル342とを含んで構成した。洗浄ハンドル部材34が、固定ユニット側ハンドル341と、昇降ユニット側ハンドル342に分かれていて、二つが重なって回転する。開動作から元へ戻す際、モータ7が逆回転することで、出力軸2に接続された固定ユニット側ハンドル341が元の初期位置に戻ってからクラッチ5が分離するので、固定ユニット側ハンドル341と昇降ユニット側ハンドル342とが衝突して騒音が発生することを防止することができる。したがって、便器洗浄装置1において昇降ユニットAが昇降するいわゆるリフトアップタイプで合った場合に、好適に騒音を低減することができる。
【0062】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、実施形態で説明したハンドルの形状や開閉機構、洗浄機構等の具体的な構成は、適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0063】
1 便器洗浄装置、 2 出力軸、 3 固定ギア(回転部材)、 4 浮動ギア(回転部材)、 5 クラッチ、 7 モータ、 8 制御部、 23 戻りばね(付勢部材)、 34 洗浄ハンドル部材、 100 便器、 300 便器洗浄タンク、 310 タンク本体、 311 排水口、 341 固定ユニット側ハンドル、 342 昇降ユニット側ハンドル、 350 開閉機構、 A 昇降ユニット、 B 固定ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8