(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175491
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ドライフィルムレジスト
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241211BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20241211BHJP
C08G 14/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/023
C08G14/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093321
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 優子
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
【テーマコード(参考)】
2H225
4J033
【Fターム(参考)】
2H225AF03P
2H225AF05P
2H225AM79P
2H225AM80P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
4J033FA02
4J033FA08
4J033HA13
4J033HB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エッチングパターンの再現性と基材へのラミネート性に優れ、かつ感光性レジスト層が含有する成分の相溶性が高く、塗膜中での成分の分離や析出が生じにくいポジ型ドライフィルムレジストを提供する。
【解決手段】支持体フィルム(A)と、前記支持体フィルム(A)上に、下記一般式(1)で表される構成単位(I)と特定の構成単位(II)とを少なくとも含むレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)、及びキノンジアジドスルホン酸エステル(c)を含有するポジ型感光性レジスト層(C)と、を有するドライフィルムレジスト。
(一般式(1)において、Xはそれぞれ独立して、-CH
2-又は-CH
2-O-CH
2-であり、前記樹脂(b)に構成単位(II)が複数含まれるとき、各構成単位(II)におけるmは同一であっても異なっていてもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体フィルム(A)と、
前記支持体フィルム(A)上に、下記一般式(1)で表される構成単位(I)と下記一般式(2)で表される構成単位(II)とを少なくとも含むレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)、及びキノンジアジドスルホン酸エステル(c)を含有するポジ型感光性レジスト層(C)と、を有するドライフィルムレジスト。
【化1】
【化2】
(一般式(1)及び(2)において、Xはそれぞれ独立して、-CH
2-又は-CH
2-O-CH
2-であり、一般式(2)において、mは1~2の整数であり、前記樹脂(b)に構成単位(II)が複数含まれるとき、各構成単位(II)におけるmは同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルムレジストに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、メタルマスク、リードフレーム、シャドウマスク、プリント基板等の製造において、各種基材の金属をエッチングする方法が知られている。このエッチングに使用されるレジストとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子化合物に、重クロム酸アンモニウム等の光架橋試薬を混合することによる光架橋を利用した感光性樹脂組成物が用いられてきた。しかし、この感光性樹脂組成物は、クロム廃液の処理が難しい等の問題を有しており、現在では、そのほとんどがアルカリ水溶液現像型感光性樹脂組成物を使用したドライフィルムレジストに置き換わっている。
【0003】
現在、このドライフィルムレジストとしてはネガ型感光性レジストが利用されており、アルカリ可溶性樹脂と光重合性架橋剤と光重合開始剤を組み合わせた組成物が一般的である。基材にネガ型感光性レジストを利用したドライフィルムレジストを熱圧着して感光性レジスト層を形成し、画像形成したフォトマスクを通した紫外線露光によって画像状に感光性レジスト層を硬化、難溶性とした後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に代表されるアルカリ性現像液で未露光部を現像液に溶出させてレジストパターンが形成される。そして該レジストパターンをマスクパターンとしたエッチング処理が行われる。
【0004】
しかしながら、ネガ型感光性レジストには、経時変化により組成物の感度変化が生じる問題及び現像後に基材の表面にレジスト成分の残渣が生じる問題がある。また、金属のエッチング加工後にレジストを剥離させる際には、強アルカリ性又は有機アミンを含有する特殊な剥離液を使用する必要がある。
【0005】
一方、ポジ型感光性レジストでは露光部の感光性レジスト層を除去するため、光重合を阻害する空気中の酸素の影響を受けにくく、経時変化による感度変化も小さく、さらには基材のエッチング加工後はレジストを全面露光して現像液等で処理することによって、レジストパターンを容易に溶解剥離できる等の利点がある。また、ネガ型感光性レジストと比較し、レジストが現像液に膨潤し難いため、微細パターンの形成に有利である。
【0006】
ポジ型感光性レジストにおいては、液体レジストが広く使用されており、スピンコートやロールコート等で、直接、基材へ塗工する方法が適用されていたが、近年ではその簡便性からポジ型感光性レジストをドライフィルムレジストとして、基材に熱圧着してラミネートする方法が強く望まれている。
【0007】
従来から広く用いられてきたポジ型感光性レジストとしては、キノンジアジド系の材料とノボラック樹脂を主成分とする材料が挙げられる(例えば、特許文献1)。しかしキノンジアジド系の材料とノボラック樹脂を主成分とするポジ型ドライフィルムレジストでは、ポジ型感光性レジスト層の剛性及びTgが高く、熱圧着の際に基材との密着不良が発生し易いという問題があった。熱圧着の際に密着不良が生じると、エッチングレジストとして利用できなくなることから、後述する特許文献5のように、ポジ型感光性レジスト層のTgの低下、可とう性の向上のために共縮合ノボラック樹脂の低分子量化を行うという開示もある。しかし低分子量化された共縮合ノボラック樹脂を用いた場合でも、ノボラック樹脂の構造の剛直さに由来する軟化点の高さゆえに、特にロールtoロールプロセスで熱圧着を適用する際には非常に低速での運転を行わなければ密着不良を生じやすい。生産性の観点から、微細なエッチングパターンの再現性を保ち、かつ熱圧着時に低速運転を行わずとも基材へのラミネート性に優れたポジ型ドライフィルムレジストが求められている。
【0008】
特許文献2では芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂及びその変性物をネガ型・ポジ型両方に使用できるリソグラフィ用膜形成用組成物として開示している。ドライフィルムにノボラック樹脂よりも柔軟な構造を持つこの膜形成用組成物を用いることで、ポジ型感光性レジスト層の柔軟性、熱圧着による基材への密着力を向上させる方法が考えられる。しかしながらこの文献においては薄膜の液体レジストとしての用途が実施例として示されており、これを単純にドライフィルムに転用するには支持体上での塗膜形成性や現像性において不十分な点が多い。
【0009】
他方、特許文献3~5ではキシリレンユニット、ビフェニルなどのアラルキル基を有するフェノール樹脂とノボラック樹脂を共用することで、ポジ型感光性レジスト層の解像性とドライフィルムとしての塗膜の柔軟性を両立させる方法が例示されている。しかしながらこの方法のアラルキル基を有するフェノール樹脂は分子内の疎水性ユニットの局在性の高さから塗液中での相溶性が低く、ポジ型感光性レジスト層にムラや白化が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-267660号公報
【特許文献2】国際公開第2019/098338号
【特許文献3】特開2020-98241号公報
【特許文献4】特開2020-98242号公報
【特許文献5】特開2020-98244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、エッチングパターンの再現性と基材へのラミネート性に優れ、かつ感光性レジスト層が含有する成分の相溶性が高く、塗膜中での成分の分離や析出が生じにくいポジ型ドライフィルムレジストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題は、以下の発明により解決される。
支持体フィルム(A)と、
前記支持体フィルム(A)上に、下記一般式(1)で表される構成単位(I)と下記一般式(2)で表される構成単位(II)とを少なくとも含むレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)、及びキノンジアジドスルホン酸エステル(c)を含有するポジ型感光性レジスト層(C)と、を有するドライフィルムレジスト。
【化1】
【化2】
(一般式(1)及び(2)において、Xはそれぞれ独立して、-CH
2-又は-CH
2-O-CH
2-であり、一般式(2)において、mは1~2の整数であり、前記樹脂(b)に構成単位(II)が複数含まれるとき、各構成単位(II)におけるmは同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エッチングパターンの再現性と基材へのラミネート性に優れ、かつ感光性レジスト層が含有する成分の相溶性が高く、塗膜中での成分の分離や析出が生じにくいポジ型ドライフィルムレジストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明について、詳細に説明する。
本発明のドライフィルムレジストは、支持体フィルム(A)と、前記支持体フィルム(A)上に、下記一般式(1)で表される構成単位(I)と下記一般式(2)で表される構成単位(II)とを少なくとも含むレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)、及びキノンジアジドスルホン酸エステル(c)を含有するポジ型感光性レジスト層(C)と、を有する。
【化3】
【化4】
(一般式(1)及び(2)において、Xはそれぞれ独立して、-CH
2-又は-CH
2-O-CH
2-であり、一般式(2)において、mは1~2の整数であり、前記樹脂(b)に構成単位(II)が複数含まれるとき、各構成単位(II)におけるmは同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
<支持体フィルム(A)>
支持体フィルム(A)としては、特に限定されない。支持体フィルム(A)は光を透過する透明フィルム、又は、光を遮光する白色フィルム若しくは有色フィルムであってもよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリイミド;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、難燃ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリカーボネート、ポリフェニレンサルフィド、ポリエーテルイミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン等のフィルムが使用できる。その中でも特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、平滑性に対して有利であり、また、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を有する等の利点から、非常に利用しやすい。
【0016】
支持体フィルム(A)の厚さは、1~100μmであることが好ましく、12~50μmであることがより好ましい。
【0017】
<剥離層(B)>
本発明のドライフィルムレジストにおいて支持体フィルム(A)は、ポジ型感光性レジスト層(C)を有する側の面に、剥離層(B)を有することが好ましい。支持体フィルム(A)が剥離層を有することで、ポジ型感光性レジスト層(C)から支持体フィルム(A)と剥離層(B)を同時かつ容易に剥がすことができる。
【0018】
支持体フィルム(A)が剥離層(B)を有する場合、該剥離層(B)は、ポリビニルアルコールを含む層であることが好ましい。剥離層(B)は、例えばポリビニルアルコールを含む剥離層用塗液を、支持体フィルム(A)上に塗工することによって形成することができる。
【0019】
支持体フィルム(A)が剥離層(B)を有する場合には、支持体フィルム(A)の剥離層(B)側に、コロナ放電処理が施されていてもよい。コロナ放電処理は、電極から支持体フィルム(A)の表面に向けてコロナ放電を照射することにより行うことができる。支持体フィルム(A)の表面にコロナ放電処理を施すことによって、表面張力を低下させ、支持体フィルム(A)と剥離層(B)との密着力を高めることができ、ポジ型感光性レジスト層(C)から支持体フィルム(A)と剥離層(B)を同時に剥がし易くなる。好ましいコロナ放電量は、10~200W・min/m2である。
【0020】
また支持体フィルム(A)が剥離層(B)を有していると、剥離層(B)上にポジ型感光性レジスト層(C)をむら無く均一に形成することができる。
剥離層(B)が含むポリビニルアルコールは、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールである事が好ましく、該けん化度は、82~99.5mol%であることがより好ましく、83~98mol%であることがさらに好ましい。使用するポリビニルアルコールは、未変性のものでも、部分的に変性基を導入し、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、バリア性、柔軟性等の機能性を付与したものを用いることもできる。また、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0021】
ポリビニルアルコールの市販品としては、限定はされないが、例えば、株式会社クラレ製のクラレポバール(登録商標)3-98、4-98 HV、5-98、11-98、28-98、60-98、(以上、けん化度=98~99mol%)、3-88、5-88、9-88、22-88、30-88、44-88、95-88(以上、けん化度=86~89mol%)、29-99、25-100(以上、けん化度=99mol%以上);日本酢ビ・ポバール株式会社製のJC-25、JC-33(以上、けん化度=99mol%以上)、JF-03、JF-04、JF-05(以上、けん化度=98~99mol%)、JP-03、JP-04(以上、けん化度=86~90mol%)、JP-05(けん化度=87~89mol%)、JP-45(けん化度=86.5~89.5mol%)、JL-18E(けん化度=83~86mol%)、三菱ケミカル株式会社製のゴーセネックス(登録商標)シリーズZ-100、Z-200、Z-205(以上、けん化度=99mol%以上)、Z-300、Z-410(以上、けん化度=97.5~99mol%)、Z-210(けん化度=95~97mol%)、Z-220、Z-320(以上、けん化度=90.5~94mol%)が挙げられる。
【0022】
剥離層(B)において、ポリビニルアルコールの含有率は、剥離層(B)の全固形分量に対して、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。該含有率が80質量%未満である場合、剥離層(B)とポジ型感光性レジスト層(C)間の密着力の調節が困難となり、密着力が高くなり過ぎることによって、剥離層(B)と支持体フィルム(A)を一緒に剥がすことが難しくなる場合があり、支持体フィルム(A)を剥がすと、剥離層(B)がポジ型感光性レジスト層(C)上に残るおそれ、又は、ポジ型感光性レジスト層(C)が部分的に剥がれるおそれがあるほか、剥離層(B)とポジ型感光性レジスト層(C)間の密着力が低下し、フィルムを折り曲げた際にポジ型感光性レジスト層(C)に容易にクラックや剥がれが生じるおそれがある。
【0023】
なお、ポリビニルアルコールの含有率が100質量%未満である場合、残りの成分としては、可塑剤等の低分子化合物又は高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、にかわ、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルホリン等の水溶性樹脂が挙げられる。
【0024】
剥離層(B)において、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールの含有率は剥離層(B)の全固形分量に対して、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。該含有率が80質量%未満である場合、剥離層(B)とポジ型感光性レジスト層(C)間の密着力が高くなり過ぎることによって、剥離層(B)と支持体フィルム(A)を一緒に剥がすことが難しくなる場合があり、支持体フィルム(A)を剥がす際に、剥離層(B)がポジ型感光性レジスト層(C)上に残る場合、又は、ポジ型感光性レジスト層(C)ごと部分的に剥がれる場合がある。なお、該含有率が100質量%未満である場合、残りの成分としては、特に限定は無いが、上述した、可塑剤等の低分子化合物又は高分子化合物等が挙げられる。また、けん化度82mol%未満のポリビニルアルコールが挙げられる。
【0025】
剥離層(B)の厚さは、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。また、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。1μmより薄いと、皮膜形成した際に厚さむらやピンホールの問題が発生しやすい場合がある。20μmより厚いと、剥離層用塗液が乾き難く、塗工後の乾燥工程が長引く傾向にある。また、剥離層用塗液中の気泡が残存し、それによるピンホール欠陥が発生する課題を解決するためには、剥離層(B)の厚さが4μm以下であることがさらに好ましい。なおここでいう剥離層(B)の厚さは、乾燥膜の厚さである。
【0026】
<ポジ型感光性レジスト層(C)>
ポジ型感光性レジスト層(C)は、下記一般式(1)で表される構成単位(I)と下記一般式(2)で表される構成単位(II)とを少なくとも含むレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)、及びキノンジアジドスルホン酸エステル(c)を含有する。
【化5】
【化6】
(一般式(1)及び(2)において、Xはそれぞれ独立して、-CH
2-又は-CH
2-O-CH
2-であり、一般式(2)において、mは1~2の整数であり、前記樹脂(b)に構成単位(II)が複数含まれるとき、各構成単位(II)におけるmは同一であっても異なっていてもよい。)
【0027】
(レゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b))
レゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)(以下、樹脂(b)ともいう)における構成単位(I)は、m-キシレンに由来する構成単位である。
構成単位(II)はフェノールに由来する構成単位である。
樹脂(b)は塩基性触媒を使用した、m-キシレンとフェノールとホルムアルデヒドの共重合により得ることができる。よって樹脂(b)はこれらの共重合レゾール樹脂である事が好ましい。また、樹脂(b)は、構成単位(I)及び構成単位(II)がメチレン結合やエーテル結合で架橋した多量体組成物でもある。
【0028】
樹脂(b)における構成単位(I)と構成単位(II)のモル比率は構成単位(I):構成単位(II)=1:4~2:1であることが好ましい。
【0029】
樹脂(b)はその分子末端において、下記式(3)のような構成単位を有していてもよい。
【化7】
【0030】
樹脂(b)の数平均分子量は、1400以下であることが好ましく、1100以下であることがより好ましい。また、該数平均分子量が500以上であることが好ましい。
樹脂(b)の数平均分子量が1400以下であると、樹脂(b)の軟化点が低くなり、熱ラミネート時の基材とポジ型感光性レジスト層との間で良好な密着力を得ることができるため好ましい。
樹脂(b)の数平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーにより、以下に示す装置及び条件にて測定することができる。
装置:Shodex GPC-101型((株)レゾナック製品)
カラム:KF-80M×3
溶離液:THF 1ml/min
温度:40℃
標準物質:ポリスチレン
【0031】
(キノンジアジドスルホン酸エステル(c))
キノンジアジドスルホン酸エステル(c)(以下、エステル(c)ともいう)としては、具体的には、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、4,4’-(1-{4-[2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-イル]フェニル}エタン-1,1-ジイル)ジフェノールのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等が挙げられる。また、例えば、フェノール樹脂のキノンジアジドスルホン酸エステル、クミルフェノールのキノンジアジドスルホン酸エステル、ピロガロール・アセトン樹脂のキノンジアジドスルホン酸エステル等を挙げることができる。本発明では、上記キノンジアジドスルホン酸エステルとして、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含むことが好ましい。
【0032】
ポジ型感光性レジスト層(C)が上記樹脂(b)と上記エステル(c)を含有すると、エッチングパターンの再現性と基材へのラミネート性に優れ、かつ感光性レジスト層が含有する成分の相溶性が高く、塗膜中での成分の分離や析出が生じにくいポジ型ドライフィルムレジストとすることができる。とくに、樹脂(b)としてレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂を含有していると、芳香環に結合したメチロール基(-CH2-OH)を有することから親水性が高くなり、塗液中での相溶性が高くなる。
【0033】
ポジ型感光性レジスト層(C)は、さらに、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(d)を含有していてもよい。
アルカリ可溶性ノボラック樹脂(d)(以下、樹脂(d)ともいう)は、フェノール類又はナフトール類と、アルデヒド類又はケトン類とを、酸性触媒を用いて縮合して得られる樹脂である。なお、ここでの「フェノール類」とは、クレゾール類、キシレノール類、レゾルシノール類、カテコール類、ピロガロール類等の「ベンゼン環等の芳香環にフェノール性水酸基が結合したもの全体」をも含むものである。アルカリ可溶性ノボラック樹脂(d)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0034】
アルカリ可溶性ノボラック樹脂(d)の原料となるフェノール類又はナフトール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-プロピルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、オクチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、ベンジルフェノール、メトキシカルボニルフェノール、ベンゾイルオキシフェノール、クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、β-ナフトール、p-ヒドロキシフェニル-2-エタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール、ヒドロキシエチルクレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
アルカリ可溶性ノボラック樹脂(d)を得るために用いられるアルデヒド類又はケトン類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、アセトン、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル等が挙げられる。これらのアルデヒド類又はケトン類は単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。また、これらの縮合物を用いてもよい。
【0036】
アルカリ可溶性ノボラック樹脂(d)は、p-クレゾール及びm-クレゾールと、アルデヒド類又はケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂であることが好ましく、且つ、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることが好ましい。ここで、「p-クレゾールとm-クレゾールと、アルデヒド類又はケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂」とは、ノボラック樹脂の原料となるフェノール類又はナフトール類の全体に対して、p-クレゾールとm-クレゾールの合計が50~100mol%である事を示す。
【0037】
上記した共縮合ノボラック樹脂において、フェノール類又はナフトール類の全体に対して、p-クレゾールとm-クレゾールの合計が60~100mol%であることがより好ましく、70~100mol%であることがさらに好ましく、80~100mol%であることがそれ以上に好ましく、90~100mol%であることが一層好ましく、96~100mol%であることが特に好ましく、100mol%であっても良い。フェノール類又はナフトール類の全体に対して、p-クレゾールとm-クレゾールの合計が100mol%未満である場合、残りの成分としては、特に限定は無いが、p-クレゾールとm-クレゾールを除く前記した「フェノール類又はナフトール類」等が挙げられる。
【0038】
また、フェノール類又はナフトール類の全体に対して、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合物を、50~100mol%含むことが好ましく、60~100mol%含むことがより好ましく、70~100mol%含むことがさらに好ましく、80~100mol%含むことがそれ以上に好ましく、90~100mol%含むことが一層好ましく、96~100mol%含むことが特に好ましい。ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合物が100mol%未満の場合、残りの成分としては、特に限定は無いが、ホルムアルデヒドとホルムアルデヒドの縮合物を除く前記した「アルデヒド類又はケトン類」等が挙げられる。
【0039】
上記p-クレゾールとm-クレゾールと、アルデヒド類又はケトン類よりなる共縮合ノボラック樹脂は、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が55mol%以上であることが好ましく、この事によって、共縮合反応時に分子が直線的に成長しやすくなり、三次元方向の架橋が抑制されることで、得られる共縮合ノボラック樹脂の重量平均分子量(Mw)が6,000以下に抑制される。この低分子量化によって共縮合ノボラック樹脂のTgの低下、可とう性の向上を達成することができ、ラミネート法で熱圧着する際に基材への密着不良が発生し難くなる。また、p-クレゾールの割合が増大することで、ポジ型感光性レジスト層(C)の露光部の溶解速度が上昇し、未露光部の現像液への接触時間が低減されて、膜減りやレジストパターンの欠けが生じ難くなる。共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量は、60mol%以上であることが好ましい。
【0040】
ポジ型感光性レジスト層(C)は、フェノールアラルキル樹脂(e)を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
フェノールアラルキル樹脂(e)(以下、樹脂(e)ともいう)は、酸性触媒を使用したアラルキル化合物とフェノール化合物の反応生成物である。
フェノールアラルキル樹脂(e)としては、フェノール樹脂で変性したノボラックタイプのキシレン樹脂(例えば、GP-100 6M22(商品名、フドー株式会社))、アルキルフェノール樹脂で変性したキシレン樹脂(例えば、ニカノール(登録商標)HP-70(商品名、フドー株式会社))、4,4-ビス(メトキシメチル)ビフェニルとフェノールとの共重合体(例えば、KAYAHARD(登録商標)GPH-65(商品名、日本化薬株式会社))等が挙げられる。
【0041】
ポジ型感光性レジスト層(C)に含まれる全固形分に占める各成分の好ましい割合は以下の通りである。なお、本明細書において、ポジ型感光性レジスト層(C)に含まれる固形分は、樹脂(b)、エステル(c)、樹脂(d)及び樹脂(e)の固形分の合計を意味し、残留溶剤成分は含まないものとする。
【0042】
ポジ型感光性レジスト層(C)に含まれる全固形分に占める樹脂(b)の割合は35~90質量%であることが好ましく、40~85質量%であることがより好ましい。
樹脂(b)の割合が40質量%以上であると、膜の軟化点を低下させて熱圧着可能速度を向上させるという観点からより好ましい。また、樹脂(b)の割合が85質量%以下であると、レジスト膜の成膜性を良好に保つという観点からより好ましい。
【0043】
ポジ型感光性レジスト層(C)に含まれる固形分に占めるキノンジアジドスルホン酸エステル(c)の割合は8~35質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
キノンジアジドスルホン酸エステル(c)の割合が10~30質量%である場合、基材表面に対するラミネート性にとりわけ優れたドライフィルムレジストが得られるとの観点からより好ましい。
【0044】
ポジ型感光性レジスト層(C)が樹脂(d)を含む場合、ポジ型感光性レジスト層(C)に含まれる固形分に占める樹脂(d)の割合は35質量%以下であることが好ましい。
樹脂(d)の割合が35質量%以下であると、膜の軟化点を低下させて熱圧着可能速度を向上させるという観点から好ましい。
また、樹脂(d)の割合は5質量%以上であることが好ましい。また、ポジ型感光性レジスト層(C)は樹脂(d)を含んでいなくてもよい。
【0045】
ポジ型感光性レジスト層(C)が樹脂(e)を含む場合、ポジ型感光性レジスト層(C)に含まれる固形分に占める樹脂(e)の割合は3.0質量%以下であることが好ましい。また、ポジ型感光性レジスト層(C)は樹脂(e)を含まないことが好ましい。
樹脂(e)を多く含む場合、エッチングパターン再現性が低下したり、他の成分との相溶性が低下することがある。
【0046】
ポジ型感光性レジスト層(C)は、溶剤成分を含んでも良い。溶剤成分としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤成分としては、ポジ型感光性レジスト層(C)に含まれる各成分に対し、十分な溶解性を有し、良好な塗工性を有していれば、特に限定されない。このような溶剤成分としては、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のプロピレングリコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート系溶剤;酢酸ブチル、酢酸ペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;ジオキサン、ジオキソラン等の環状エーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤;及びこれらの混合溶剤を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
溶剤成分については、ポジ型感光性レジスト層(C)の上記全固形分量に対し、3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、4質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。溶剤成分の含有率が3質量%未満である場合、ポジ型感光性レジスト層(C)の露光部の現像液に対する溶解速度が低下し、レジストパターンの形成が困難となる場合がある。溶剤成分の含有率が10質量%超である場合、露光部・未露光部両方の現像液に対する溶解速度が高くなり過ぎるために、現像の過程で未露光部の表面が溶解し、レジストパターンの欠けや画線のばらつきが生じ易くなる場合がある。また、未露光部の膜減りが起こる場合がある。
【0048】
ポジ型感光性レジスト層(C)の溶剤成分の含有率は、以下の方法で算出する。支持体フィルム(A)上に剥離層(B)、ポジ型感光性レジスト層(C)がこの順に形成されてなるドライフィルムレジストを、ポジ型感光性レジスト層(C)が銅箔に接触するようにして、ラミネート法によって熱圧着して貼り付け、支持体フィルム(A)及び剥離層(B)をポジ型感光性レジスト層(C)上から除去してから、10cm四方の試料を切り出す。該試料の質量W1を測定した後、乾燥機にて130℃で15分乾燥を行う。乾燥後室温に戻した状態の質量W2を測定し、質量減少量W1-W2を、ポジ型感光性レジスト層(C)が含む溶剤成分の質量W3とする。その後、メチルエチルケトンでポジ型感光性レジスト層(C)を溶かし銅箔から除去し、80℃で5分乾燥させた銅箔の質量W4を測定する。質量W1から銅箔の質量W4を除いた値W1-W4を、溶剤成分を含むポジ型感光性レジスト層(C)の質量(全量)W5とする。質量W5中の質量W3の割合(W3/W5×100)を、ポジ型感光性レジスト層(C)の溶剤成分の含有率として算出する。
【0049】
ポジ型感光性レジスト層(C)には、他の成分を含んでいてもよい。他の成分として、例えば、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド等の樹脂を含有してもよい。これらの樹脂等の「他の成分」の配合によって、可とう性、耐エッチング液性、現像性、密着性が向上する場合がある。また、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、光減色剤、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤及び撥油剤等の添加剤を含有してもよい。
【0050】
上記した「他の成分」や「添加剤」は、ポジ型感光性レジスト層(C)の全量に対して、各々0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0051】
ポジ型感光性レジスト層(C)の厚さは、1~20μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。1μm未満であると、基材に熱圧着する際に気泡が入り易くなる場合がある。また、皮膜形成した際に厚さむらやピンホールの問題が発生し易くなる。一方、20μmより厚いと、露光時に光がポジ型感光性レジスト層(C)の底部まで届かず、レジストパターンのボトムが太くなって台形形状になり、細線が形成できない場合がある。ポジ型感光性レジスト層(C)の厚さは、乾燥後の厚さである。
【0052】
支持体フィルム(A)上に剥離層(B)を形成する方法、及び、剥離層(B)上にポジ型感光性レジスト層(C)を設ける方法としては、ロールコータ、コンマコータ(登録商標)、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等を用いた塗工方法が挙げられる。
【0053】
<保護フィルム(D)>
本発明のポジ型ドライフィルムレジストは、必要に応じて保護フィルム(D)でポジ型感光性レジスト層(C)を被覆してもよい。保護フィルム(D)は、ポジ型ドライフィルムレジストを巻回した際等に、ポジ型感光性レジスト層(C)の支持体フィルム(A)へのブロッキングを防止するために設けられるもので、支持体フィルム(A)及び剥離層(B)とは反対側のポジ型感光性レジスト層(C)上に設けられる。保護フィルム(D)としては、フィッシュアイの小さいものが好まれる。例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0054】
保護フィルム(D)としては、自己粘着性樹脂フィルムを使用することが好ましい。該自己粘着性樹脂フィルムは、基材層と粘着層とが共押し出しで形成されるフィルムである。このような自己粘着性樹脂フィルムは、アウトガス成分による製品の汚染や糊残りや成分移行等の懸念が少なく好適である。また、加熱することなく、保護フィルム(D)によって、ポジ型感光性レジスト層(C)を被覆することができる。
【0055】
自己粘着性樹脂フィルムは、少なくとも基材層と粘着層とからなり、該基材層は自己粘着性を有さず、材質としては、前記したもの等が挙げられる。また、該粘着層としては、PMMA(ポリメチルメタクリレート)板と23℃で張り合わせることが可能で、その際の粘着力が0.01N/50mm幅以上、0.30N/50mm幅以下のものを用いることが好ましい。該粘着層の例としては、エチレン酢酸ビニル共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;合成ゴム;ポリアクレート;ポリウレタン;等が挙げられる。粘着層の材料は、分子量の調整や可塑剤を添加することで、自己粘着性の特性を有するように設計される。市中から入手可能なものとしては、例えば、トレテック(登録商標、東レフィルム加工株式会社製)、FSA(登録商標、フタムラ化学株式会社製)、サニテクト(登録商標、株式会社サンエー化研製)等が挙げられる。
【0056】
保護フィルム(D)の厚みは、5~100μmが好ましい。保護フィルム(D)の厚みが5μmより薄いと、ハンドリング性が難しい場合があり、100μmより厚いと、コスト高、ロール状体における嵩高、重量増になる場合がある。
【0057】
<エッチング方法>
次に、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを用いたエッチング方法について詳説する。まず、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを基材の少なくとも片面に、ポジ型感光性レジスト層(C)が基材に接触するようにして、ラミネート法によって熱圧着して貼り付けることが好ましい。本発明のポジ型ドライフィルムレジストが保護フィルム(D)を有するものである場合は、保護フィルム(D)を剥がした後に、基材の少なくとも片面にポジ型感光性レジスト層(C)が基材に接触するようにして貼り付けることが好ましい。
【0058】
本発明に係わる基材とは、エッチング加工を実施する基材であり、製造物によって決定される。プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造においては、金属を含有する基材が選択される。例えば、銅、銅系合金(チタン銅合金、銅ニッケル合金等)、ニッケル、クロム、鉄、タングステン、ステンレスや42アロイ等の鉄系合金、アルミニウム、アモルファス合金等の「金属を含有する基材(すなわち金属基材)」が使用できる。また、ITO、FTO等の金属酸化膜が使用できる。さらに、プリント配線板製造等に使用される、銅張積層板、(無)電解めっき済基板、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルステンレス板、積層体等が使用できる。
【0059】
基材の少なくとも片面に、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを貼り付ける方法は、ラミネート法が好適に使用される。かかる貼り付けには一般的な、プリント基板用熱ラミネーター、また、真空ラミネーターが使用できる。ニップ圧力、搬送速度、ロール温度は、使用する基材によって異なるが、気泡やむらが無い状態で、熱圧着によって貼り付けることができれば、いずれの条件であってもよい。
【0060】
ポジ型ドライフィルムレジストを基材に貼り付けた後、支持体フィルム(A)、あるいは剥離層(B)を有する支持体フィルム(A)をポジ型感光性レジスト層(C)上から除去する。後者の場合、支持体フィルム(A)及び剥離層(B)を同時に除去することが好ましい。なお後者においては、支持体フィルム(A)のみを除去する態様を排除する訳ではなく、その場合でも、残存する剥離層(B)は、その後に現像してレジストパターンを形成する際に、現像液によって容易に除去することができる。
【0061】
次に、ポジ型感光性レジスト層(C)に対して所望のパターンを露光する。露光には紫外線を使用することが好ましい。露光方法は、レーザー直接描画、フォトマスクを介した密着露光、投影露光等によって行われる。露光の光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、レーザー、LED等を用いることができる。
【0062】
次に、現像を実施する。現像によって、ポジ型感光性レジスト層(C)の露光部を除去する。現像に使用する現像液としては、アルカリ水溶液が有用に使用される。現像液に使用される塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;等を挙げることができる。
【0063】
露光部のポジ型感光性レジスト層(C)に対する現像性を調整するために、現像液の濃度、温度、スプレー圧等を調整することが望ましい。現像液の温度は20~40℃が好ましく、25~35℃がより好ましい。
現像液における塩基性化合物の濃度としては、水酸化カリウムの場合、0.3~3.0質量%であることが好ましい。装置としては、ディップ処理装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
【0064】
次に、基材のエッチング処理を実施する。本発明において、使用される基材を溶解除去できるものであれば、どのようなエッチング液、装置、方法であってもよい。エッチング液としては、例えば、アルカリ性アンモニア溶液、硫酸-過酸化水素溶液、塩化第二銅溶液、過硫酸塩溶液、塩化第二鉄溶液、王水等が挙げられる。また、装置や方法としては、例えば、水平スプレーエッチング、浸漬エッチング、等の装置や方法を使用できる。これらの詳細は、「プリント回路技術便覧」(社団法人日本プリント回路工業会編、1987年刊行、日刊工業新聞社発行)に記載されている。
【0065】
次に、剥離液によってレジスト剥離を実施するが、その前に、レジストパターンに紫外線を照射する露光をしてもよい。露光をすることによって、ポジ型感光性レジスト層(C)は、剥離液によって除去し易くなる。剥離液としては、強アルカリ水溶液が有用に使用される。剥離液が含有する塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;等を挙げることができる。
【0066】
レジスト剥離工程において、剥離液の濃度、温度、スプレー圧、超音波条件等を調整することが好ましい。該剥離液の温度が高いほど、ポジ型感光性レジスト層(C)が溶解する速度が速くなり、40℃以上の温度が好ましい。剥離液における塩基性化合物の濃度としては、溶解性に適した濃度がよく、塩基性化合物が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの場合、1~4質量%であることが好ましい。レジスト剥離に用いる装置としては、ディップ処理装置、超音波装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
【0067】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0068】
本開示(1)は、支持体フィルム(A)と、前記支持体フィルム上に、下記一般式(1)で表される構成単位(I)と下記一般式(2)で表される構成単位(II)とを少なくとも含むレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)、及びキノンジアジドスルホン酸エステル(c)を含有するポジ型感光性レジスト層(C)と、を有するドライフィルムレジストである。
【化8】
【化9】
(一般式(1)及び(2)において、Xはそれぞれ独立して、-CH
2-又は-CH
2-O-CH
2-であり、一般式(2)において、mは1~2の整数であり、前記樹脂(b)に構成単位(II)が複数含まれるとき、各構成単位(II)におけるmは同一であっても異なっていてもよい。)
【実施例0069】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール(登録商標)44-88(けん化度87~89mol%)株式会社クラレ)を準備し、ポリビニルアルコール5質量部に対して80質量部の水を加え、温水で攪拌することによって溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。次に、15質量部のエタノールを加えて、固形分5質量%の剥離層用塗液を作製した。ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(支持体フィルム(A)、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)の片面に、該剥離層用塗液を塗工した。その後、90℃で15分間乾燥し、支持体フィルム(A)上にポリビニルアルコールを含む剥離層を厚さ2μmで設け、支持体フィルム(A)と剥離層(B)を有する積層フィルムを得た。
【0071】
表1の各実施例及び比較例に示す組成である各成分(質量部)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した溶液を、メンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、ポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
【0072】
上記ポジ型感光性レジスト層用塗液につき、それぞれワイヤーバーを用いて、積層フィルムの剥離層面に、ポジ型感光性レジスト層用塗液を塗工した。その後、90℃で10分間乾燥し、剥離層上にポジ型感光性レジスト層を厚さ6μmで設け、3層の構造(支持体フィルム(A)/剥離層(B)/ポジ型感光性レジスト層(C))からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。なお乾燥後のポジ型感光性レジスト層は5質量%の溶剤成分を含有する。
【0073】
表1中に記載される各成分は以下のとおりである。
表1には各成分の配合量を各成分の固形分量(有効成分量/質量部)で示している。
(b)レゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂
(b-1)ニカノール(登録商標)PR-1440M(商品名、フドー株式会社、レゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂、数平均分子量911、構造単位(I)と構造単位(II)のモル比は大凡1:1)、代表構造として一般式(2)のmが1~2である化合物。メタノールの45%希釈品。
(b-2)ニカノール(登録商標)GRL(商品名、フドー株式会社、レゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂、数平均分子量620、構造単位(I)と構造単位(II)のモル比は4:3)、代表構造として一般式(2)のmが1~2である化合物。メタノールとキシレンの45%希釈品。
【0074】
(c)キノンジアジドスルホン酸エステル
(c-1)2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル
(c-2)4,4’-(1-{4-[2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-イル]フェニル}エタン-1,1-ジイル)ジフェノールのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル
【0075】
(d)アルカリ可溶性ノボラック樹脂
(d-1)p-クレゾールとm-クレゾールとホルムアルデヒドよりなる共縮合ノボラック樹脂EP6050G(旭有機材株式会社製、重量平均分子量2,500~4,000、共縮合に用いられるp-クレゾールとm-クレゾールの全体に対するp-クレゾールの量が60mol%)
【0076】
(e)フェノールアラルキル樹脂(酸性触媒を使用したアラルキル化合物とフェノール化合物の反応生成物)
(e-1)GP-100 6M22(商品名、フドー株式会社、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂)
(e-2)ニカノール(登録商標)HP-70(商品名、フドー株式会社、フェノール性水酸基のp位にt-ブチル基を有するアルキルフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂、数平均分子量1000)
(e-3)KAYAHARD(登録商標)GPH-65(商品名、日本化薬株式会社、4,4-ビス(メトキシメチル)ビフェニルとフェノールとの共重合体)
【0077】
【0078】
(塗膜中での成分の分離や析出の評価:塗膜中での成分安定性)
表1に示した実施例1~7及び比較例1~5の組成の塗液を調製し、8時間静置した後、調製した塗液の白濁度を目視で観察することにより、塗膜中での成分分離及び析出が生じないかを模擬的に評価した。成分の相溶性の低い塗液を使用することには塗膜中での成分析出による透明性低下、塗膜の現像速度むらが発生するリスクが高まり、解像性の低下を招く傾向がある。成分が溶解し白濁が認められない場合を〇、不溶化成分により白濁した場合を×とした。この結果を表1に示した。
【0079】
この結果、実施例1~7、比較例1~3においては8時間静置後の塗液は良好な相溶性を示し塗液に白濁は見られなかった。一方、フェノールアラルキル樹脂(e)中の分子内にかさ高い疎水性ユニットを有する比較例4、5は膜面の一部で相溶性の低さに起因する成分の析出が進み、塗液中に白濁がみられた。
【0080】
(ラミネート性)
以下の試験は実施例1~7及び比較例1~5の塗液を塗工・乾燥させてポジ型感光性レジスト層を剥離層上に設けてから1時間後に実施した。研磨及び脱脂した銅張積層板の銅層表面に、実施例1~7及び比較例1~5のポジ型ドライフィルムレジストのポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように、ラミネート法で熱圧着により貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件は、ロール温度100℃、圧力0.4MPa、搬送速度0.5m/min、搬送速度0.6m/min、及び搬送速度0.8m/minにて実施した。
【0081】
ポジ型ドライフィルムレジストを貼り付けた銅張積層板が室温(25℃)に戻ってから支持体フィルム及び剥離層を剥がし、銅層の表面にポジ型感光性レジスト層が欠陥なく貼り付いている状態をラミネート可とした。支持体フィルム及び剥離層を剥がした際に、ポジ型感光性レジスト層と銅張積層板の密着力不足のために銅層の表面のポジ型感光性レジスト層の一部又は全てが剥離層上に移行している状態をラミネート不可とした。各実施例、比較例における試験の結果は、搬送速度0.5m/minでラミネート不可であれば×、搬送速度0.5m/minを超えてラミネート可、搬送速度0.6m/minでラミネート不可であれば△、搬送速度0.6m/minを超えてラミネート可、搬送速度0.8m/minでラミネート不可であれば〇△、搬送速度0.8m/minを超えてラミネート可であれば〇とした。
【0082】
この結果、実施例1~5においては、ラミネート性が特に良好であった。実施例6及び7は、キノンジアジドスルホン酸エステル(c)の割合がやや多いかやや少ない例であり、ラミネート性が実施例1~5に比べると劣っていたが、実用的には十分なラミネート性を有している。
比較例1ではレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)を用いておらずラミネートができなかった。
【0083】
(エッチングパターン再現性)
超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、50μm及び20μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを、銅張積層板上に貼り付けた実施例1~7、比較例2~5のポジ型感光性レジスト層上に被せ、吸引密着させて露光した。次に、実施例1~3、6、7、及び比較例2~5のポジ型感光性レジスト層に対しては0.8質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液、30℃)、実施例4のポジ型感光性レジスト層に対しては0.5質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液、30℃)、実施例5のポジ型感光性レジスト層に対しては1.5質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液、30℃)、に50秒浸漬させ、露光部のポジ型感光性レジスト層を除去して、現像を行った(水酸化カリウム水溶液の濃度を変更して現像する事で、得られるエッチングパターンのライン幅とスペース幅がそれぞれ50μm及び20μmとなるように調整した)。その後、水洗を行い、乾かした。
【0084】
実施例1~7、比較例2~5のレジストパターンを形成した銅張積層板に対して、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約40秒間実施し、銅のエッチングを行った。その後、速やかに水洗-乾燥を実施した。次に、300mJ/cm2の紫外線を全面に照射した後、3質量%水酸化カリウム水溶液(レジスト剥離液、40℃)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施し、銅張積層板の銅層にエッチングパターンを形成した。
【0085】
観察によって20μm幅、50μm幅のエッチングパターンが再現できているかどうかを確認し、各幅のエッチングパターンに対して、エッチングパターンに欠けや変形がある場合はエッチングパターン形成不可、エッチングパターンに欠けや変形がない場合はエッチングパターン形成可とした。
【0086】
各実施例、比較例におけるエッチングパターン再現性の評価は、20μm幅のラインとスペースのエッチングパターン形成可であれば〇、20μm幅のラインとスペースのエッチングパターン形成不可、かつ50μm幅のラインとスペースのエッチングパターン形成可であれば△、50μm幅のラインとスペースのエッチングパターン形成不可であれば×とした。
【0087】
この結果、実施例1~7においては、いずれもエッチングパターン再現性が良好であった。比較例2はキノンジアジドスルホン酸エステル(c)を使用しない例であり、比較例3はレゾール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(b)に代えてフェノールアラルキル樹脂(e)を用いた例であり、いずれもエッチングパターン再現性が不良となっていた。