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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175499
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20241211BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093333
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】小澤 健
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB07
5E070CB03
5E070CB13
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】高い自己共振周波数の確保と浮遊容量の発生の抑制とが可能なインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品は、素体と、素体の内部にあるコイル導体と、素体の外面にあってコイル導体と電気的に接続された外部電極とを備える。素体は下面と側面とを備える。外部電極は、下面に設けられた下部分と、側面に下部分と連続して設けられた側部分とを備える。コイル導体は、下面及び側面の双方と交差し且つ間隔を空けて並んだ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、隣り合う2つの導体パターンを接続する接続導体とを備える。下部分及び側部分の境界部とコイル導体との最短距離を距離Aとし、下部分における境界部とは反対側の端部とコイル導体との最短距離を距離Bとする場合、B/Aは0.2以上且つ0.6以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体で構成された素体と、
前記素体の内部に設けられたコイル導体と、
前記素体の外面に設けられ、前記コイル導体と電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記素体は、下面と、前記下面に接続された側面とを備え、
前記外部電極は、前記下面に設けられた下部分と前記側面に前記下部分と連続して設けられた側部分とよりなるL字形状を有し、
前記コイル導体は、前記素体の内部において前記下面及び前記側面の双方と交差し且つ間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する接続導体と、を備え、
前記仮想内面と直交する方向から見て、前記下部分及び前記側部分の境界部と前記コイル導体との最短距離を距離Aとし、前記下部分における前記境界部とは反対側の端部と前記コイル導体との最短距離を距離Bとする場合、前記距離Bを前記距離Aで除算したB/Aは0.2以上且つ0.6以下であるインダクタ部品。
【請求項2】
前記距離Aは、57μm以上且つ78μm以下である請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記距離Bは、14μm以上且つ45μm以下である請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記複数の導体パターンの少なくとも一部の導体パターンは、前記下面と平行な方向において前記側面に近づくにしたがって、前記下面と垂直な方向において前記下面から離れるように延びる斜辺部を備える請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記仮想内面と直交する方向から見て、前記斜辺部と前記下面とがなす内角は、15°以上且つ40°以下である請求項4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記斜辺部を仮想的に延長した延長部は、前記側部分と交差する請求項4に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記下面と垂直な方向における前記環状の軌道の寸法は、前記下面と垂直な方向における前記素体の寸法の0.6倍以上且つ0.85倍以下である請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記下部分の少なくとも一部は、前記素体に埋め込まれており、
前記コイル導体は、前記下面と垂直な方向において前記下部分の埋め込まれた部分に対して前記下面の反対側に位置している請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記複数の導体パターンの少なくとも一部の導体パターンにおいて、前記少なくとも一部の導体パターンの厚みTを、前記少なくとも一部の導体パターンの幅Wで除算したT/Wは0.8以上である請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンの間の最短間隔は7μm以上である請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、素体の内部にコイル導体が設けられたインダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略直方体形状をなす素体と、素体の外部に露出した外部電極とを備えるインダクタ部品が開示されている。素体の内部には、コイル構造が設けられている。外部電極は、素体の底面と側面とに亘ってL字形状に形成されており、コイル構造と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-98356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたインダクタ部品では、コイル構造の内径を大きくすることによって、インダクタ部品のL値の取得効率が向上され得る。
【0005】
しかし、コイル構造の内径が大きくなると、コイル構造と外部電極との距離が近くなる。これにより、コイル構造と外部電極との間において、浮遊容量が発生するおそれがある。浮遊容量が発生すると、インダクタ部品の自己共振周波数(SRF: Self Resonant Frequency)が低下するおそれがある。自己共振周波数が低下すると、インダクタ部品のQ値が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、高い自己共振周波数の確保と浮遊容量の発生の抑制とが可能なインダクタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
絶縁体で構成された素体と、
前記素体の内部に設けられたコイル導体と、
前記素体の外面に設けられ、前記コイル導体と電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記素体は、下面と、前記下面に接続された側面とを備え、
前記外部電極は、前記下面に設けられた下部分と前記側面に前記下部分と連続して設けられた側部分とよりなるL字形状を有し、
前記コイル導体は、前記素体の内部において前記下面及び前記側面の双方と交差し且つ間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する接続導体と、を備え、
前記仮想内面と直交する方向から見て、前記下部分及び前記側部分の境界部と前記コイル導体との最短距離を距離Aとし、前記下部分における前記境界部とは反対側の端部と前記コイル導体との最短距離を距離Bとする場合、前記距離Bを前記距離Aで除算したB/Aは0.2以上且つ0.6以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高い自己共振周波数の確保と浮遊容量の発生の抑制とが可能なインダクタ部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係るインダクタ部品の外観斜視図
図2図1に示すインダクタ部品の分解斜視図
図3図2のA-A断面を示す断面図
図4図1に示すインダクタ部品をコイル導体の中心軸線方向に透視した模式図
図5】インダクタ部品をコイル導体の中心軸線方向に透視した模式図
図6図5に示すインダクタ部品の分解平面図
図7図5に示すインダクタ部品における距離Bを距離Aで除算した値に対する自己共振周波数の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図
図8図5に示すインダクタ部品における距離Bに対する自己共振周波数の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図
図9】インダクタ部品をコイル導体の中心軸線方向に透視した模式図
図10図9に示すインダクタ部品の分解平面図
図11図9に示すインダクタ部品における距離Aに対するQ値の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図
図12図9に示すインダクタ部品における距離Aに対するL値の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図
図13図9に示すインダクタ部品における斜辺部と下面とがなす内角の角度に対するQ値の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。また、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」を含む用語)が用いられる。しかし、特定の方向あるいは位置を示す用語の使用は、図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係るインダクタ部品の外観斜視図である。
【0012】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係るインダクタ部品1は、素体2を備える。本実施形態において、素体2は、直方体形状である。本実施形態において、素体2の外面2Aは、上方を向く上面3と、下方を向く下面4と、上面3及び下面4間を連結する前側面5、後側面6、左側面7、及び右側面8とを備える。左側面7及び右側面8は、側面の一例である。前側面5は前方を向き、後側面6は後方を向いている。左側面7は左方を向き、右側面8は右方を向いている。前側面5、後側面6、左側面7、及び右側面8の各々は、上面3から上面3と直行する下方へ延び、下面4から下面4と直交する上方へ延びている。つまり、素体2を上下方向に切断した断面において、素体2の外面2Aは、下面4と、下面4から下面4と直交する上方へ延びた左側面7及び右側面8とを備える。上下方向、前後方向、及び左右方向は、互いに直交している。
【0013】
図2は、図1に示すインダクタ部品の分解斜視図である。
【0014】
図2に示すように、素体2は、複数の絶縁体層9A~9Fを積層してなる積層構造を有している。素体2は、絶縁体で構成されている。絶縁体層9A~9Fは、前側面5及び後側面6(図1参照)に対して直交する方向(前後方向)に積層されている。なお、絶縁体層9A~9Fのうち、両端に位置する絶縁体層9A、9Fについては、残りの絶縁体層9B~9Eよりも厚いことからわかるように、複数の絶縁体層からなる積層体として図示されている。
【0015】
インダクタ部品1は、素体2の内部にコイル導体12を備える。コイル導体12は、複数(本実施形態では5つ)の導体パターン10A~10Eと、1つ以上(本実施形態では4つ)の接続導体11A~11Dとを備える。
【0016】
複数の導体パターン10A~10Eの各々は、絶縁体層9A~9F間のいずれかの界面に沿って環状の軌道の一部を形成するように延びている。ここで、界面は、素体2の内部において、上下方向及び左右方向に広がり且つ前後方向に間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面2Bと言い換えることもできる。この場合、仮想内面2Bは、下面4、左側面7、及び右側面8と交差する。複数の導体パターン10A~10Eは、複数の仮想内面2Bの各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられている。なお、環状の軌道は、環状であればよく、任意の形状であり得る。例えば、本実施形態において、環状の軌道は、六角形であるが、六角形に限らず、円形や四角形等であってもよい。
【0017】
複数の接続導体11A~11Dの各々は、複数の導体パターン10A~10Eのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する。複数の接続導体11A~11Dは、本実施形態において、絶縁体層9B~9Eのいずれかを厚み方向に貫通するビアホール導体である。なお、複数の接続導体11A~11Dは、ビアホール導体に限らず、例えば絶縁体層9B~9Eに印刷等によって形成されてもよい。また、複数の接続導体は、絶縁体層9A、9Fに形成されてもよい。
【0018】
コイル導体12は、複数の導体パターン10A~10Eと、1つ以上の接続導体11A~11Dとが交互に接続されることによって螺旋状に延びる形態とされている。
【0019】
導体パターン10A~10Eは、接続導体11A~11Dとの接続部分に比較的幅広のパッド13A~13Hを有している。
【0020】
図3は、図2のA-A断面を示す断面図である。本実施形態では、図3に示すように、導体パターン10Bの厚みTを、導体パターン10Bの幅Wで除算したT/Wは0.8以上である。ここで、導体パターンの厚みTは、コイル導体12の軸方向に沿った導体パターンの長さである。導体パターンの幅Wは、導体パターンの延びている方向とコイル導体12の軸方向との双方と直交する方向に沿った導体パターンの長さである。本実施形態では、他の導体パターン10A、10C~10Eについても、T/Wは0.8以上である。つまり、本実施形態では、コイル導体12が備える全ての導体パターン10A~10Eについて、T/Wは0.8以上である。
【0021】
なお、コイル導体12が備える導体パターン10A~10Eのうちの一部のみについて、T/Wが0.8以上であってもよい。つまり、複数の導体パターン10A~10Eの少なくとも一部の導体パターンにおいて、T/Wは0.8以上である
【0022】
図2に示すように、導体パターン10A、接続導体11A、導体パターン10B、接続導体11B、導体パターン10C、接続導体11C、導体パターン10D、接続導体11D、及び導体パターン10Eが順次接続されることによって、コイル導体12が構成される。
【0023】
接続導体11Aは、パッド13Aを介して導体パターン10Aと接続され、パッド13Bを介して導体パターン10Bと接続される。
【0024】
接続導体11Bは、パッド13Cを介して導体パターン10Bと接続され、パッド13Dを介して導体パターン10Cと接続される。
【0025】
接続導体11Cは、パッド13Eを介して導体パターン10Cと接続され、パッド13Fを介して導体パターン10Dと接続される。
【0026】
接続導体11Dは、パッド13Gを介して導体パターン10Dと接続され、パッド13Hを介して導体パターン10Eと接続される。
【0027】
導体パターン10A~10Eのうち隣り合う2つの導体パターンの間の最短距離Lは、7μm以上である。本実施形態において、最短距離Lは、各絶縁体層9B~9Eの厚みである。例えば、隣り合う2つの導体パターン10A、10Bの間の最短距離Lは、絶縁体層9Bの厚みである。分解斜視図である図2では、導体パターン10Bは絶縁体層9Bから離れて記載されている。しかし、実際には、導体パターン10Bは、絶縁体層9Bに接触している。他の導体パターンについても同様である。
【0028】
なお、両端部に位置する絶縁体層9A、9Fについては、前述したように、複数の絶縁体層からなる積層体として図示されている。そのため、例えば、絶縁体層9Aの内部に導体パターンが位置している場合、当該導体パターンと、当該導体パターンに対して隣り合う導体パターン10Aとの間の最短距離は、7μm以上である。
【0029】
なお、コイル導体12を構成するように順次接続された導体パターン10A~10E及び接続導体11A~11Dの数、コイル導体12のターン数、ならびに絶縁体層9A~9Fの積層数については、図示したものに限らず、任意の数とすることができる。
【0030】
図1に示すように、インダクタ部品1は、素体2の外面2Aに2つの外部電極15、16を備える。外部電極15は、下面4の左部に設けられた下部分151と、左側面7に下部分151と連続して設けられた側部分152とよりなるL字形状を有する。外部電極16は、下面4の右部に設けられた下部分161と、右側面8に下部分161と連続して設けられた側部分162とよりなるL字形状を有する。外部電極15の下部分151と外部電極16の下部分161とは、間隔を空けて設けられている。外部電極15の側部分152は、下部分151から左側面7の途中まで上方に延びている。外部電極16の側部分162は、下部分161から右側面8の途中まで上方に延びている。
【0031】
外部電極15、16の下部分151、161は、下面4において素体2の外部に露出している。外部電極15の側部分152は、左側面7において素体2の外部に露出している。外部電極16の側部分162は、右側面8において素体2の外部に露出している。本実施形態では、外部電極15、16の各々は、露出している部分を除いて、素体2の内部に埋め込まれている。なお、外部電極15、16は、完全に素体2の内部に埋め込まれていてもよいし、一部が素体2から突出しているように一部のみが素体2の内部に埋め込まれていてもよい。
【0032】
図2に示すように、絶縁体層9Aおよび9B間の界面に沿って設けられた導体パターン10Aから一体に延びる引出し導体パターン17は、外部電極15に接続される。絶縁体層9Eおよび9F間の界面に沿って設けられた導体パターン10Eから一体に延びる引出し導体パターン18は、外部電極16に接続される。このようにして、コイル導体12の一方端部は、引出し導体パターン17を介して外部電極15と電気的に接続され、コイル導体12の他方端部は、引出し導体パターン18を介して外部電極16と電気的に接続される。なお、コイル導体12は、一方端部や他方端部以外の部分において外部電極15、16と電気的に接続されていてもよい。
【0033】
インダクタ部品1が回路基板(不図示)に実装されるとき、下面4が回路基板に向けられる実装面とされる。したがって、本実施形態において、コイル導体12によって与えられる磁束の方向は、実装面に対して平行である。
【0034】
インダクタ部品1は、例えば、以下のようにして製造される。
【0035】
基本的には、以下の4つの技術が適用される。第1の技術は、キャリアフィルム上に、例えば硼珪酸ガラスを主成分とする感光性絶縁体ペーストを印刷にて塗布することによって、絶縁体層9A~9Fとなるべき複数の絶縁体ペースト層を形成する技術である。第2の技術は、例えば銀(Ag)を金属主成分とする感光性導電性ペーストを用いて、特定の絶縁体ペースト層に複数の導体パターン10A~10E等の配線導体を形成する技術である。第3の技術は、特定の絶縁体ペースト層に接続導体11A~11Dまたは外部電極15、16を配置するための穴または溝を形成する技術である。第4の技術は、複数の絶縁体ペースト層を積層し、所定の寸法にカットした後、焼成する技術である。
【0036】
1.図2に示す絶縁体層9Aを作製するため、キャリアフィルム上で、前述した感光性絶縁体ペーストを印刷することを繰り返すことによって、複数層をなす感光性絶縁体ペースト層が形成される。
【0037】
ここで、絶縁体層9Aの一部であって、最外層をなす絶縁体層となるべき感光性絶縁体ペースト層にあっては、これを紫外線で全面露光する。なお、得られた最外層となる絶縁体層には、インダクタ部品1の実装時の横転等の検出を容易にするため、他の絶縁体層とは異なる着色を施しておいてもよい。
【0038】
また、絶縁体層9Aの残りの一部であって、外部電極15、16が形成される絶縁体層となるべき感光性絶縁体ペースト層にあっては、フォトリソグラフィ技術を適用して、外部電極15、16を配置するための溝が形成される。この溝に、感光性導電性ペーストが充填される。
【0039】
2.図2に示す絶縁体層9B~9Eを作製するため、絶縁体層9B~9Eの各々となるべき感光性絶縁体ペースト層がキャリアフィルム上で形成される。また、感光性絶縁体ペースト層に、フォトリソグラフィ技術を適用して、接続導体11A~11Dを配置するための穴、及び外部電極15、16を配置するための溝が形成される。
【0040】
次に、上記感光性絶縁体ペースト層上に、感光性導電性ペースト層が印刷にて塗布される。このとき、感光性導電性ペーストが、上述した接続導体11A~11Dを配置するための穴、及び外部電極15、16を配置するための溝に充填される。次いで、上記感光性導電性ペースト層に対してフォトリソグラフィ技術を適用して、パッド13A~13Gを持つ導体パターン10A~10Dが得られるようにパターニングされる。
【0041】
3.図2に示した絶縁体層9Fを作製するため、キャリアフィルム上で、前述した感光性絶縁体ペーストを印刷することを繰り返す。これにより、複数層をなす感光性絶縁体ペースト層が形成される。
【0042】
ここで、絶縁体層9Fの一部であって、最外層をなす絶縁体層となるべき感光性絶縁体ペースト層にあっては、前述した絶縁体層9Aの場合と同様、これを紫外線で全面露光する。このとき、他の絶縁体層とは異なる着色が施されてもよい。
【0043】
また、絶縁体層9Fの残りの一部であって、外部電極15、16のみが形成される絶縁体層となるべき感光性絶縁体ペースト層にあっては、フォトリソグラフィ技術を適用して、外部電極15、16を配置するための溝が形成される。この溝に感光性導電性ペーストが充填される。
【0044】
また、外部電極15、16及びパッド13Hを有する導体パターン10Eが形成されるべき感光性絶縁体ペースト層にあっては、この感光性絶縁体ペースト層に、フォトリソグラフィ技術を適用して、外部電極15、16を配置するための溝がまず形成される。次いで、この感光性絶縁体ペースト層上に、感光性導電性ペースト層が印刷にて塗布される。このとき、感光性導電性ペーストが前述した外部電極15、16を配置するための溝に充填される。次いで、上記感光性導電性ペースト層に対してフォトリソグラフィ技術を適用して、パッド13Hを有する導体パターン10Eが得られるようにパターニングされる。
【0045】
4.次に、図2に示す順序で絶縁体層9A~9Fが積層されるように、前述した感光性絶縁体ペースト層が順次積層される。これにより、マザー積層体が得られる。
【0046】
5.ダイシングまたは押し切り等によりマザー積層体がカットされ、未焼成の複数個の部品本体が得られる。このカットによって得られるカット面には、外部電極15、16が露出する。
【0047】
6.未焼成の部品本体が所定条件で焼成され、それによって、素体2が得られる。この焼成により、素体2は収縮する。素体2に対して、たとえばバレル研磨加工が施される。
【0048】
7.必要に応じて、外部電極15、16の、素体2から露出している部分にめっき膜が形成される。めっき膜は、たとえば、Niめっき層またはCuめっき層およびその上のSnめっき層から構成される。
【0049】
8.以上のようにして、インダクタ部品1が完成される。
【0050】
以下、インダクタ部品1の構成について、図4を主として参照しながら説明する。図4は、図1に示すインダクタ部品をコイル導体の中心軸線方向に透視した模式図である。つまり、図4は、インダクタ部品1を仮想内面2Bと直交する方向から透視した模式図である。図4では、外部電極15、16、及びコイル導体12における導体パターン10A~10Eのみが図示され、接続導体11A~11D、引出し導体パターン17、18及びパッド13A~13Hの図示が省略されている。なお、図4では、互いに重なり合う導体パターン10A~10Eは、「10」の参照符号で総称されている。
【0051】
図4に示すように、インダクタ部品1が備える導体パターン10は、下辺部19と、2つの側辺部20、21と、2つの斜辺部22、23と、上辺部24と、を有する六角形を形成している。
【0052】
下辺部19は、下面4に対して平行に直線状に延びている。
【0053】
下辺部19は、外部電極15の下部分151及び外部電極16の下部分161よりも上方に位置している。ここで、下辺部19は、コイル導体12において最も下部に位置している。つまり、コイル導体12は、下面4と垂直な上下方向において下部分151、161の埋め込まれた部分に対して下面4の反対側に位置している。
【0054】
2つの側辺部20、21は、左側面7及び右側面8に対してそれぞれ平行に直線状に延びている。
【0055】
斜辺部22は、下辺部19の左側面7側の端部と側辺部20の下端部とを下面4に対して斜め方向に連結している。詳細には、斜辺部22は、左方へ向かうにしたがって上方へ向かうように延びている。つまり、斜辺部22は、下面4と平行な左右方向において左側面7に近づくにしたがって、下面4と垂直な上下方向において下面4から離れるように延びている。
【0056】
斜辺部23は、下辺部19の右側面8側の端部と側辺部21の下端部とを下面4に対して斜め方向に連結している。詳細には、斜辺部23は、右方へ向かうにしたがって上方へ向かうように延びている。つまり、斜辺部23は、左右方向において右側面8に近づくにしたがって、上下方向において下面4から離れるように延びている。
【0057】
図示した実施形態では、図4の斜辺部22、23が直線状に延びる形状を有していることからわかるように、斜辺部22、23は、下辺部19の左右方向の両端部と側辺部20、21の各々の下端部とを最短距離で結ぶ形状とされている。
【0058】
上辺部24は、上面3に対して平行に直線状に延びている。
【0059】
なお、下辺部19と、2つの側辺部20、21と、2つの斜辺部22、23と、上辺部24との形態は、前述した形態に限らず任意である。
【0060】
例えば、下辺部19及び上辺部24は、下面4に対して平行に延びていなくてもよいし、直線状でなくてもよい。例えば、下辺部19及び上辺部24は、下面4に対して傾斜して延びていてもよいし、円弧状や波線状などの曲線状であってもよい。上辺部24は、その位置関係が外部電極15、16から比較的離れている。そのため、上辺部24は、下辺部19に比べて、前述した浮遊容量の問題にそれほど影響を及ぼすものではない。
【0061】
本実施形態では、インダクタ部品1が備える複数の導体パターン10A~10Eの全てが、斜辺部22、23を備えている構成が説明されている。しかし、複数の導体パターン10A~10Eの一部(例えば導体パターン10A、10B)が斜辺部22、23を備えている一方、残り(例えば導体パターン10C~10E)が斜辺部22、23を備えていなくてもよい。つまり、複数の導体パターン10A~10Eの少なくとも一部が斜辺部22、23を備えていてもよい。
【0062】
本実施形態において、外部電極15のL字状の内角部15aから斜辺部22の外周縁22aに下した垂線の長さA1、および外部電極16のL字状の内角部16aから斜辺部23の外周縁23aに下した垂線の長さA2は、ともに、57μm以上且つ78μm以下である。内角部15aは、外部電極15の下部分151及び側部分152の境界部である。内角部16aは、外部電極16の下部分161及び側部分162の境界部である。長さA1は、内角部15aとコイル導体12との最短距離である。長さA2は、内角部16aとコイル導体12との最短距離である。長さA1、A2は、距離Aの一例である。
【0063】
本実施形態において、外部電極15の下部分151における内角部15aとは反対側の端部15bから斜辺部22の外周縁22aに下した垂線の長さB1、および外部電極16の下部分161における内角部16aとは反対側の端部16bから斜辺部23の外周縁23aに下した垂線の長さB2は、ともに、14μm以上且つ45μm以下である。長さB1は、端部15bとコイル導体12との最短距離である。長さB2は、端部16bとコイル導体12との最短距離である。長さB1、B2は、距離Bの一例である。
【0064】
インダクタ部品1において、距離Bを距離Aで除算した値、つまりB/Aは、0.2以上且つ0.6以下である。
【0065】
本実施形態では、図4が左右対称の幾何学的形態を有していることからわかるように、長さA1と長さA2とは等しく、かつ長さB1と長さB2とは等しくされている。しかし、長さA1と長さA2は異なっていてもよいし、長さB1と長さB2は異なっていてもよい。
【0066】
なお、前述した長さA1、A2の起点となる外部電極15、16の内角部15a、16aにアールが形成される場合には、当該内角部のアール部分上に上記起点が位置される。また、長さB1、B2の起点となる外部電極15、16の端部15b、16bにアールが形成される場合には、当該端部のアール部分上に上記起点が位置される。
【0067】
また、インダクタ部品が備える導体パターン10A~10Eは、絶縁体層間の1つの界面において、1ターンを超えて渦巻き状に延びる形態を有していてもよい。この場合には、長さA1、A2及び長さB1、B2の終点となる斜辺部22、23の外周縁22a、23aは、最も外側に位置する周回導体層の外周縁によって与えられる。
【0068】
本実施形態では、斜辺部22と下面4とがなす内角θ1、及び斜辺部23と下面4とがなす内角θ2は、15°以上且つ40°以下である。本実施形態では、内角θ1と内角θ1とは等しいが、内角θ1と内角θ2とは異なっていてもよい。
【0069】
本実施形態では、下面4と垂直な上下方向における前記の環状の軌道の寸法M1は、上下方向における素体2の寸法M2の0.6倍以上且つ0.85倍以下である。ここで、上下方向における環状の軌道の寸法M1とは、上下方向における環状の軌道の最大寸法であり、上下方向における素体2の寸法M2とは、上下方向における素体2の最大寸法である。
【0070】
インダクタ部品100(図5及び図6参照)とインダクタ部品200(図9及び図10参照)とについて、後述するシミュレーションを実施した。なお、インダクタ部品100、200において、インダクタ部品1と同構成の部分については、インダクタ部品1と同じ符号を付した上で、その説明を省略する。
【0071】
最初に、インダクタ部品100の構成が説明される。
【0072】
図5は、インダクタ部品をコイル導体の中心軸線方向に透視した模式図である。図6は、図5に示すインダクタ部品の分解平面図である。
【0073】
インダクタ部品100は、絶縁体層の層数、コイル導体112のターン数、及びコイル導体112の導体パターン110A~110Lの形状において、図1図4に示すインダクタ部品1と異なる。また、詳細な説明は省略するが、前述の相違点によって、インダクタ部品100は、パッド(不図示)の数及び位置、接続導体111A~111Kの数及び位置においてもインダクタ部品1と異なる。
【0074】
図6に示すように、インダクタ部品100は、12層構造の素体102に10.5ターン構造のコイル導体112が設けられている。コイル導体112は、導体パターン110A~110Lと、接続導体111A~111Kとを備える。接続導体111A~111Kの各々は、導体パターン110A~110Lのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する。これにより、コイル導体112は、複数の導体パターン110A~110Lと、複数の接続導体111A~111Kとが交互に接続されることによって螺旋状に延びる形態とされている。
【0075】
導体パターン110Aは、導体パターン117を介して外部電極115に電気的に接続される。導体パターン110Lは、導体パターン118を介して外部電極116に電気的に接続される。
【0076】
前述したインダクタ部品1が備える各導体パターン10A~10Eは、6つの屈曲部を有する六角形を形成している。これに対して、インダクタ部品100が備える各導体パターン110A~110Lは、前記の6つの屈曲部の代わりに湾曲部を有している。つまり、各導体パターン110A~110Lは、2つの側辺部と、2つの斜辺部と、上辺部との各境界部において滑らかに曲がっている。この点において、各導体パターン110A~110Lの形状は、各導体パターン10A~10Eの形状と異なる。
【0077】
次に、インダクタ部品100において実施されたシミュレーションが説明される。
【0078】
図7は、図5に示すインダクタ部品における距離Bを距離Aで除算した値に対する自己共振周波数の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図である。
【0079】
インダクタ部品100について、距離A及び距離Bの少なくとも一方を変えることによって、B/Aを略0.1~略0.25の範囲で振り、自己共振周波数がどのように変化するかを、電磁界シミュレータを用いてシミュレーションを実施した。図7に示すように、B/Aが減少するにしたがって、自己共振周波数は減少している。
【0080】
図7に示すように、B/Aが0.2未満であるときのB/Aの減少に対する自己共振周波数の減少の割合は、B/Aが0.2以上であるときの前記の割合より大きくなる。本実施形態に係るインダクタ部品1では、B/Aが0.2以上であるため、B/Aが0.2未満である構成に比べて、自己共振周波数の減少を低減することができる。その結果、高い自己共振周波数を確保することができる。
【0081】
図8は、図5に示すインダクタ部品における距離Bに対する自己共振周波数の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図である。
【0082】
インダクタ部品100について、距離Bを略7μm~略20μmの範囲で振り、自己共振周波数がどのように変化するかを、電磁界シミュレータを用いてシミュレーションを実施した。図8に示すように、距離Bが減少するにしたがって、自己共振周波数は減少している。
【0083】
距離Bが14μm未満であるときの距離Bの減少に対する自己共振周波数の減少の割合は、距離Bが14μm以上のときの前記の割合より大きくなる。本実施形態に係るインダクタ部品1によれば、距離Bが14μm以上であるため、距離Bが14μm未満である構成に比べて、自己共振周波数の減少を低減することができる。
【0084】
なお、インダクタ部品100とは異なる形状のインダクタ部品(例えば、後述するインダクタ部品200)においてシミュレーションが実施された場合も、図7及び図8と同様の結果が得られる。
【0085】
次に、インダクタ部品200の構成が説明される。
【0086】
図9は、インダクタ部品をコイル導体の中心軸線方向に透視した模式図である。図10は、図9に示すインダクタ部品の分解平面図である。
【0087】
インダクタ部品200は、絶縁体層の層数、コイル導体212のターン数、及びコイル導体212の導体パターン210A~210Iの形状において、図1図4に示すインダクタ部品1と異なる。また、詳細な説明は省略するが、前述の相違点によって、インダクタ部品200は、パッド(不図示)の数及び位置、接続導体211A~211Iの数及び位置においてもインダクタ部品1と異なる。
【0088】
図10に示すように、インダクタ部品200は、9層構造の素体202に6.5ターン構造のコイル導体212が設けられている。コイル導体212は、導体パターン210A~210Iと、接続導体211A~211Iとを備える。接続導体211A~211Iの各々は、導体パターン210A~210Iのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する。これにより、コイル導体212は、複数の導体パターン210A~210Iと、複数の接続導体211A~211Iとが交互に接続されることによって螺旋状に延びる形態とされている。
【0089】
導体パターン210Aは、導体パターン217を介して外部電極215に電気的に接続される。導体パターン210Iは、導体パターン218を介して外部電極216に電気的に接続される。なお、インダクタ部品1の外部電極15、16と同様に、外部電極215は下部分2151と側部分2152とよりなるL字形状を有し、外部電極216は下部分2161と側部分2162とよりなるL字形状を有する(図9参照)。
【0090】
図9に示すように、変形例に係るインダクタ部品200が備える各導体パターン210A~210Iは、前述したインダクタ部品1が備える各導体パターン10A~10Eと同様に、下辺部219と、2つの側辺部220、221と、2つの斜辺部222、223と、上辺部224と、を有する。
【0091】
インダクタ部品200では、斜辺部222、223を仮想的に延長した延長部222A、223Aは、外部電極215、216の側部分2152、2162と交差する。図9において、延長部222A、223Aは、破線で示されている。
【0092】
次に、インダクタ部品200において実施されたシミュレーションが説明される。
【0093】
図11は、図9に示すインダクタ部品における距離Aに対するQ値の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図である。
【0094】
インダクタ部品200について、距離Aを略40μm~略110μmの範囲で振り、Q値がどのように変化するかを、電磁界シミュレータを用いてシミュレーションを実施した。図11に示すように、距離Aが78μmより大きい場合には距離Aが増加するにしたがってQ値は減少し、距離Aが78μmより小さい場合には距離Aが減少するにしたがってQ値は減少している。
【0095】
距離Aが57μm未満である場合、距離Aの減少にしたがってインダクタ部品のQ値が急激に低下する。距離Aが78μmより大きい場合、距離Aの増加にしたがってインダクタ部品のQ値が急激に低下する。一方、本実施形態に係るインダクタ部品1のように距離Aが57μm以上且つ78μm以下である場合、インダクタ部品のQ値は、距離Aが57μm未満である場合や距離Aが78μmより大きい場合より高い値を維持する。つまり、本実施形態に係るインダクタ部品1によれば、高いQ値を確保することができる。
【0096】
図12は、図9に示すインダクタ部品における距離Aに対するL値の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図である。
【0097】
インダクタ部品200について、距離Aを略40μm~略110μmの範囲で振り、L値がどのように変化するかを、電磁界シミュレータを用いてシミュレーションを実施した。図12に示すように、距離Aが増加するにしたがってL値は減少している。
【0098】
距離Aが78μmより大きいときの距離Aの増加に対するインダクタ部品のL値の減少の割合は、距離Aが78μm以下のときの前記の割合より大きくなる。本実施形態に係るインダクタ部品1によれば、距離Aが78μm以下であるため、距離Aが78μmより大きい構成に比べて、L値の減少を低減することができる。その結果、高いL値を確保することができる。
【0099】
図13は、図9に示すインダクタ部品における斜辺部と下面とがなす内角θ1、θ2の角度に対するQ値の変化を電磁界シミュレーションにより求めた結果を示す図である。
【0100】
インダクタ部品200について、内角θ1、θ2の角度を略15°~略40°の範囲で振り、Q値がどのように変化するかを、電磁界シミュレータを用いてシミュレーションを実施した。図13に示すように、内角θ1、θ2の角度が15°より小さい場合には内角θ1、θ2の角度が小さくなるにしたがってQ値は減少し、内角θ1、θ2の角度が40°より大きい場合には内角θ1、θ2の角度が大きくなるにしたがってQ値は減少している。一方、内角θ1、θ2の角度15°~40°の場合には内角θ1、θ2の角度は、内角θ1、θ2の角度が15°より小さい場合や内角θ1、θ2の角度が40°より大きい場合に比べて大きなQ値を維持している。
【0101】
斜辺部と下面とがなす内角θ1、θ2の角度が15°未満である場合、内角θ1、θ2の角度の減少にしたがってインダクタ部品のQ値が急激に低下する。内角θ1、θ2の角度が40°より大きい場合、内角θ1、θ2の角度の増加にしたがってインダクタ部品のQ値が急激に低下する。一方、本実施形態に係るインダクタ部品1のように内角θ1、θ2の角度が15°以上且つ40°以下である場合、インダクタ部品1のQ値は、内角θ1、θ2の角度が15°未満である場合や内角θ1、θ2の角度が40°より大きい場合より高い値を維持する。つまり、本実施形態に係るインダクタ部品1によれば、高いQ値を確保することができる。
【0102】
なお、インダクタ部品200とは異なる形状のインダクタ部品(例えば、前述したインダクタ部品100)においてシミュレーションが実施された場合も、図11図13と同様の結果が得られる。
【0103】
以下、本実施形態における他の効果が説明される。
【0104】
B/Aが大きくなるにしたがって、外部電極15、16の下部分151、161と導体パターンの下面側の部分(斜辺部22、23)との位置関係が平行に近づく。これにより、外部電極の下部分と導体パターンの下面側の部分との間に浮遊容量が発生し易くなる。本実施形態に係るインダクタ部品1では、B/Aが0.6以下であるため、B/Aが0.6より大きい構成に比べて、前記の浮遊容量の発生を抑制することができる。
【0105】
距離Bが大きくなるにしたがって、コイル導体の内径が小さくなり、L値が低下する。本実施形態に係るインダクタ部品1によれば、距離Bが45μm以下である。そのため、コイル導体の内径が小さくなり過ぎることを抑制することができる。
【0106】
本実施形態によれば、斜辺部22、23は、下面4、左側面7、及び右側面8に対して斜めに延びている。一方、外部電極15、16は、下面4、左側面7、及び右側面8に沿って設けられている。そのため、導体パターン10A~10Eが斜辺部22、23を備えておらず下面4と平行に設けられている従来構成に比べて、導体パターン10A~10E(斜辺部22、23)と外部電極15、16との距離を大きくすることができる。これにより、斜辺部22、23と外部電極15、16との間の浮遊容量の発生を低減することができる。
【0107】
導体パターン10A~10Eと外部電極15、16との距離が、本実施形態と前記の従来構成とで同じである場合、斜辺部22、23を有する本実施形態の方が、斜辺部22、23を有さない従来構成よりもコイル導体12の内径を大きくすることができる。
【0108】
延長部222A、223Aが側部分152、162と交差する構成では、延長部222A、223Aが側部分152、162と交差しない構成に比べて、コイル導体12の内径を大きくすることができる。
【0109】
本実施形態によれば、下面4と垂直な上下方向における環状の軌道の寸法M1が上下方向における素体2の寸法M2の0.6倍以上であるため、0.6倍未満である構成に比べてコイル導体12の内径を大きくすることができる。
【0110】
下面4と垂直な上下方向における環状の軌道の寸法M1が上下方向における素体2の寸法M2に近づく(言い換えると1倍に近くなる)場合、製造ばらつきによって導体パターン10A~10Eが素体2の外部に露出する可能性が高まる。本実施形態によれば、上下方向における環状の軌道の寸法M1が上下方向における素体2の寸法M2の0.85倍以下である。そのため、0.85倍より大きい構成に比べて、導体パターン10A~10Eが素体2の外部に露出する可能性が高くなることを抑制できる。
【0111】
コイル導体12の一部が上下方向において下部分151、161の埋め込まれた部分に重なっている構成(以下、重複構成と記す。)の場合、コイル導体12が下面4に近くなるため、コイル導体12と下面4との距離が短くなる。これにより、製造ばらつきによってコイル導体12が素体2の下面4に露出する可能性が高まる。本実施形態によれば、コイル導体12が上下方向において下部分151、161の埋め込まれた部分に対して下面4の反対側に位置している。本実施形態の場合、前記の重複構成よりも、コイル導体12と下面4との距離が長くなる。そのため、本実施形態によれば、前記の重複構成よりも、コイル導体12が素体2の下面4に露出する可能性を低くすることができる。
【0112】
本実施形態によれば、T/Wが0.8未満である構成に比べて、高周波におけるコイル導体12の電気抵抗を低くすることができる。
【0113】
本実施形態によれば、隣り合う2つの導体パターンの間の距離が7μm未満である構成に比べて、当該2つの導体パターン間の浮遊容量の発生を低減することができる。その結果、高い自己共振周波数を確保することができる。
【0114】
本実施形態では、インダクタ部品1が2つの外部電極15、16を備える例が説明されているが、インダクタ部品1が備える外部電極15、16は2つに限らない。
【0115】
本実施形態では、各導体パターン10A~10Eが6つの屈曲部を有する六角形を形成している例が説明されているが、各導体パターン10A~10Eの構成は六角形に限らない。例えば、各導体パターン10A~10Eは、前述したインダクタ部品100が備える各導体パターン110A~110Lのように、屈曲部の代わりに湾曲部を有していてもよい。また、例えば、各導体パターン10A~10Eが有する斜辺部は2つに限らない。
【0116】
本実施形態では、素体2が直方体形状である例が説明されたが、素体2は直方体形状に限らない。例えば、素体2は、円柱形状であって、上面と、下面と、上面及び下面を連結する1つの側面とを備えていてもよい。この場合であっても、本実施形態と同様に、素体2を上下方向に切断した断面において、素体2の外面は、下面と、下面から下面と直交する上方へ延びた左側面及び右側面とを備えると捉えることができる。また、当該左側面と当該右側面との各々に外部電極が設けられていてもよい。つまり、素体2が円柱形状の場合であっても、インダクタ部品1は、1つの側面に2つの外部電極を備え得る。
【0117】
以上説明したインダクタ部品は、以下のようにも表現することができる。
【0118】
(1) 本開示の一態様のインダクタ部品は、
絶縁体で構成された素体と、
前記素体の内部に設けられたコイル導体と、
前記素体の外面に設けられ、前記コイル導体と電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記素体は、下面と、前記下面に接続された側面とを備え、
前記外部電極は、前記下面に設けられた下部分と前記側面に前記下部分と連続して設けられた側部分とよりなるL字形状を有し、
前記コイル導体は、前記素体の内部において前記下面及び前記側面の双方と交差し且つ間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する接続導体と、を備え、
前記仮想内面と直交する方向から見て、前記下部分及び前記側部分の境界部と前記コイル導体との最短距離を距離Aとし、前記下部分における前記境界部とは反対側の端部と前記コイル導体との最短距離を距離Bとする場合、前記距離Bを前記距離Aで除算したB/Aは0.2以上且つ0.6以下である。
【0119】
(2) (1)のインダクタ部品において、
前記距離Aは、57μm以上且つ78μm以下であってもよい。
【0120】
(3) (1)または(2)のインダクタ部品において、
前記距離Bは、14μm以上且つ45μm以下であってもよい。
【0121】
(4) (1)から(3)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記複数の導体パターンの少なくとも一部の導体パターンは、前記下面と平行な方向において前記側面に近づくにしたがって、前記下面と垂直な方向において前記下面から離れるように延びる斜辺部を備えていてもよい。
【0122】
(5) (4)のインダクタ部品において、
前記仮想内面と直交する方向から見て、前記斜辺部と前記下面とがなす内角は、15°以上且つ40°以下であってもよい。
【0123】
(6) (4)または(5)のインダクタ部品において、
前記斜辺部を仮想的に延長した延長部は、前記側部分と交差していてもよい。
【0124】
(7) (1)から(6)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記下面と垂直な方向における前記環状の軌道の寸法は、前記下面と垂直な方向における前記素体の寸法の0.6倍以上且つ0.85倍以下であってもよい。
【0125】
(8) (1)から(7)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記下部分の一部は、前記素体に埋め込まれていてもよく、
前記コイル導体は、前記下面と垂直な方向において前記下部分の埋め込まれた部分に対して前記下面の反対側に位置していてもよい。
【0126】
(9) (1)から(8)のいずれか1つのインダクタ部品では、
前記複数の導体パターンの少なくとも一部の導体パターンにおいて、前記少なくとも一部の導体パターンの厚みTを、前記少なくとも一部の導体パターンの幅Wで除算したT/Wは0.8以上であってもよい。
【0127】
(10) (1)から(9)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンの間の最短間隔は7μm以上であってもよい。
【0128】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0129】
本発明は、適宜図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0130】
1 インダクタ部品
15 外部電極
151 下部分
152 側部分
15a 内角部(境界部)
16 外部電極
161 下部分
162 側部分
16a 内角部(境界部)
2 素体
2A 外面
2B 仮想内面
12 コイル導体
4 下面
7 左側面(側面)
8 右側面(側面)
10A 導体パターン
10B 導体パターン
10C 導体パターン
10D 導体パターン
10E 導体パターン
11A 接続導体
11B 接続導体
11C 接続導体
11D 接続導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13