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特開2024-17550慣性計測装置、慣性計測装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017550
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】慣性計測装置、慣性計測装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5783 20120101AFI20240201BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01C19/5783
H01L23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120267
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 徹
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 弘幸
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105BB04
2F105BB12
2F105BB15
2F105BB17
2F105CC01
2F105CD02
2F105CD06
2F105CD13
(57)【要約】
【課題】水分の影響を低減し、優れた検出精度を有する慣性計測装置を提供すること。
【解決手段】慣性計測装置は、接合領域を有する基板と、キャップと、樹脂製パッケージに収納され、前記基板と前記キャップとの間の内部空間において前記基板上の実装領域に配置されるセンサーデバイスと、前記基板の前記接合領域において、前記キャップを前記基板に接合する接合材及び封止材と、を備え、前記接合材は、前記実装領域を囲むとともに前記内部空間と外部とを連通する連通孔を有するように形成され、前記封止材は、前記連通孔をふさぐ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合領域を有する基板と、
キャップと、
樹脂製パッケージに収納され、前記基板と前記キャップとの間の内部空間において前記基板上の実装領域に配置されるセンサーデバイスと、
前記基板の前記接合領域において、前記キャップを前記基板に接合する接合材及び封止材と、を備え、
前記接合材は、前記実装領域を囲むとともに前記内部空間と外部とを連通する連通孔を有するように形成され、
前記封止材は、前記連通孔をふさぐ、
慣性計測装置。
【請求項2】
前記実装領域には、前記センサーデバイスを実装する第1ランドが設けられ、
前記接合領域には、前記接合材に対応する第2ランドが設けられ、
前記連通孔の外側には、第3ランドが設けられ、
前記封止材は、前記第2ランドから前記第3ランドに亘って配置される、
請求項1に記載の慣性計測装置。
【請求項3】
前記第2ランドにおける前記連通孔に対応する切欠き部の幅を幅dとし、
前記第3ランドの前記連通孔に対向する部分の長さを長さLとしたとき、
前記長さLは、前記幅dの1.5倍以上5倍以下である、
請求項2に記載の慣性計測装置。
【請求項4】
前記キャップは金属キャップであり、前記接合材及び前記封止材はハンダである、
請求項3に記載の慣性計測装置。
【請求項5】
前記第2ランドの前記切欠き部には、前記連通孔となる凹部が形成される、
請求項3に記載の慣性計測装置。
【請求項6】
前記キャップの前記第3ランドに対応する位置には、前記連通孔となる凹部が形成される、
請求項2に記載の慣性計測装置。
【請求項7】
前記接合領域は、屈曲部を有し、
前記連通孔は、前記屈曲部に設けられる、
請求項2に記載の慣性計測装置。
【請求項8】
前記連通孔は、前記接合領域に複数設けられる、
請求項2に記載の慣性計測装置。
【請求項9】
複数の前記連通孔は、前記実装領域を挟み対向配置される、
請求項8に記載の慣性計測装置。
【請求項10】
基板の実装領域、および、前記実装領域を囲う接合領域において連通孔となる凹部を有する接合ランドにハンダクリームを塗布する工程と、
前記実装領域にセンサーデバイスを載置する工程と、
前記接合領域にキャップを載置する工程と、
前記基板をリフローする工程と、
前記連通孔をハンダ付けにより封止する工程と、を含む、
慣性計測装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性計測装置、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサーや角速度センサーなどの慣性センサーを有する慣性センサーモジュールを備えた慣性計測装置が知られている。慣性計測装置は、様々な電子機器や機械に組み込まれ、または自動車などの移動体に搭載され、加速度や角速度などの慣性量のモニタリングを行うことに用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、封止樹脂により樹脂封止された慣性センサーを備えたセンサーデバイスを有するセンサーユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-49122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような封止樹脂に外部から水分が侵入すると封止樹脂の応力が変動する場合がある。封止樹脂の応力が変動すると、慣性センサーが変形し、センサーデバイスの計測に影響を及ぼす虞があった。つまり、水分の影響を低減し、優れた検出精度を有する慣性計測装置、およびその製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る一態様の慣性計測装置は、接合領域を有する基板と、キャップと、樹脂製パッケージに収納され、前記基板と前記キャップとの間の内部空間において前記基板上の実装領域に配置されるセンサーデバイスと、前記基板の前記接合領域において、前記キャップを前記基板に接合する接合材及び封止材と、を備え、前記接合材は、前記実装領域を囲むとともに前記内部空間と外部とを連通する連通孔を有するように形成され、前記封止材は、前記連通孔をふさぐ。
【0007】
本願に係る一態様の慣性計測装置の製造方法は、基板の実装領域、および、前記実装領域を囲う接合領域において連通孔となる凹部を有する接合ランドにハンダクリームを塗布する工程と、前記実装領域にセンサーデバイスを載置する工程と、前記接合領域にキャップを載置する工程と、前記基板をリフローする工程と、前記連通孔をハンダ付けにより封止する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る慣性計測装置の平面図。
図2図1のb-b断面における断面図。
図3図1のP視における斜視図。
図4】慣性計測装置の製造方法の流れを示すフローチャート図。
図5】製造過程における基板の一態様を示す平面図。
図6】製造過程における基板の一態様を示す断面図。
図7】センサーデバイスの概要を示す透過平面図。
図8図7のf-f断面における断面図。
図9図7のg-g断面における断面図。
図10】封止材の有無による出力変動の変化を示すグラフ図。
図11】実装形態2に係る慣性計測装置の連通孔周辺の部分平面図。
図12】連通孔周辺の拡大斜視図。
図13】実装形態3に係る慣性計測装置の連通孔周辺の部分平面図。
図14】連通孔周辺の拡大斜視図。
図15】実装形態4に係る慣性計測装置の平面図。
図16】異なる態様の慣性計測装置の平面図。
図17】実装形態5に係る慣性計測装置の平面図。
図18】実装形態6に係る慣性計測ユニットを示す分解斜視図。
図19】基板の斜視図。
図20】角速度センサーの透過平面図。
図21図20のj-j断面における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
***慣性計測装置の概略構成***
図1は、慣性計測装置の概略構成を示す平面図である。図2は、図1のb-b断面における断面図である。
まず、図1図2を用いて、本実施形態の慣性計測装置100の概略構成について説明する。なお、各図面では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。本実施形態では、第1軸がX軸であり、第2軸がY軸であり、第3軸がZ軸である。また、X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」と言う。また、各軸方向の矢印先端側を「プラス側」、基端側を「マイナス側」、Z方向プラス側を「上」、Z方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z方向は、鉛直方向に沿い、XY平面は、水平面に沿っている。また、プラス方向とマイナス方向とを合わせてX方向、Y方向、Z方向ともいう。
【0010】
本実施形態の慣性計測装置100は、センサーデバイス50、基板5、キャップ8などから構成される。
センサーデバイス50は、例えば、3軸ジャイロセンサーと、3軸加速度センサーとを備える6軸コンボセンサーである。各軸のセンサー素子は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いてシリコン基板を加工し製造されたセンサー素子を用いている。センサーデバイス50は、平たい直方体をなしており、その下面には、複数の電極端子1aが設けられている。なお、詳細は後述するが、センサーデバイス50の外装は、樹脂モールドされている。
【0011】
基板5は、平面的に略矩形をなした基板である。好適例では、複数枚のセラミック基板を積層して構成されたセラミック基板を用いる。基板5は、その上面5aが実装面となっている。上面5aの反対側の面である下面5b(図2)には、複数の実装用端子71が配置されている。複数の実装用端子71は、不図示の配線やビアホールを介して、センサーデバイス50の対応する電極端子1aと電気的に接続している。慣性計測装置100は、複数の実装用端子71により、後述の慣性計測ユニットなど上位装置の基板に実装される。なお、基板5は、セラミック基板に限定するものではなく、気密性を有するリジット基板であれば良く、例えば、ガラスエポキシ基板や、ガラスコンポジット基板などを用いても良い。
【0012】
図2に示すように、基板5の上面5aには、センサーデバイス50と、キャップ8とが実装されている。詳しくは、センサーデバイス50は上面5aの略中央の実装領域6に配置され、キャップ8は実装領域6を囲う接合領域7に配置される。
センサーデバイス50の電極端子1aは、実装領域6に設けられた実装用のパターンである第1ランド1bに対して、接合材9aにより接合される。接合材9aは、ハンダである。換言すれば、実装領域6には、センサーデバイス50を実装するための第1ランド1bが設けられている。
【0013】
キャップ8は、キャビティ8aを備えた金属製の蓋部材である。キャップ8は、バスタブ状の形状をなしており、キャビティ8aによる凹部の周囲を、フランジ部8bで囲んだ構成となっている。好適例において、キャップ8は、真鍮の板部材をプレス加工した部材を用いており、表面に錫メッキを施している。なお、キャップ8の材質は、真鍮に限定するものではなく、例えば、コバールなどの他の金属を用いても良い。換言すれば、キャップ8は、金属キャップであることが好ましい。または、キャップ8をセラミック材料で形成しても良く、この場合は、フランジ部8bの全面に金属パターンを設けてハンダ付け可能な構成とする。
フランジ部8bは、基板5の接合領域7に設けられた実装用のパターンである第2ランド2に対して、接合材9aにより接合される。接合材9aは、ハンダである。センサーデバイス50は、キャップ8のキャビティ8aによる内部空間SP内に収納される。内部空間SPは、センサーデバイス50の収容部に相当する。
【0014】
図1に示すように、接合領域7は、基板5の上面5aにおいて、キャップ8のフランジ部8bが載置される部分であり、実装領域6を囲う環状の略矩形のエリアである。
第2ランド2は、接合領域7の上に設けられるが、1ヶ所の頂点部分が切り欠かれている。換言すれば、第2ランド2は、頂点部分で分断している。切り欠かれた部分は、周囲の第2ランド2よりも低い凹部2bとなっている。第2ランド2の上にキャップ8をセットし、接合材9a(図2)で接合すると、フランジ部8bと凹部2bとの間に連通孔4が形成される。凹部2bの高さは第2ランド2の厚さであり、例えば、30μm~50μm程度であるが、これに限定するものではなく、空気孔として機能する高さであれば良い。換言すれば、第2ランド2の切欠き部には、連通孔4となる凹部2bが形成される。また、接合領域7は、頂点を含む屈曲部を有し、連通孔4は屈曲部に設けられることが好ましい。
連通孔4は、キャップ8の内部空間SPと外部とを連通する空気孔として機能する。
【0015】
連通孔4の外側には、第3ランド3が設けられている。第3ランド3は、基板5の一つの頂点部分にL字状に設けられており、連通孔4に向い合っている。第3ランド3の連通孔4に面した辺は、連通孔4の開口部に沿った曲線となっている。
ここで、第2ランド2における連通孔4に対応する切欠き部である凹部2bの幅を幅dとし、第3ランド3の連通孔4に対向する部分の長さを長さLとしたとき、長さLは幅dの1.5倍以上5倍以下に設定されている。これは、第2ランド2から第3ランド3に亘って封止材9bを配置して連通孔4をふさぐ際に適した寸法設定とするためである。
【0016】
***連通孔の封止態様***
図3は、図1のP視における拡大斜視図である。
図3は、連通孔4を中心とした周辺部の拡大斜視図である。
図3に示すように、連通孔4は、第2ランド2の切欠き部である凹部2bと、キャップ8のフランジ部8bとの間に形成される。第2ランド2とフランジ部8bとの間は、接合材9aで接合される。接合材9aは、ハンダである。
【0017】
図3に示すように、連通孔4は、封止材9bにより気密封止される。詳しくは、第2ランド2から第3ランド3に亘ってハンダ付けすることにより、封止材9bが設けられる。実際には、ハンダの濡れ広がりがあるため、封止材9bは、キャップ8のフランジ部8bにも延在する。また、図3では、各構成部位を明確にするために、接合材9aを実線で、封止材9bを点線で示しているが、実際には、接合材9a、封止材9bは一体となって、フランジ部8b、第2ランド2および第3ランド3を覆い、連通孔4を封止する。換言すれば、接合領域7において、キャップ8を基板5に接合する接合材9a、および、封止材9bを備える。そして、封止材9bは、連通孔4をふさぐ。
キャップ8の内部空間SP(図2)は、不活性ガスにより充填された状態で、封止材9bにより気密封止される。好適例では、窒素ガスが充填された状態で気密封止される。
【0018】
***慣性計測装置の製造方法***
図4は、慣性計測装置の製造方法の流れを示すフローチャート図である。図5は、製造過程における基板の一態様を示す平面図である。図6は、図5のc-c断面における基板の断面図であり、図2に対応している。
ここでは、慣性計測装置100の製造方法について説明する。
【0019】
ステップS10では、基板5をセットする。図5に示すように、初期状態の基板5には、第1ランド1b、第2ランド2、第3ランド3が配置されている。好適例では、各ランドは、銅およびニッケル下地の上に金メッキを施した配線パターンを用いるが、これに限定するものではなく、ハンダ付け可能な配線パターンであれば良い。換言すれば、実装領域6には、センサーデバイス50を実装するための第1ランド1bが設けられ、接合領域7には、接合材9a(図3)に対応する第2ランド2が設けられている。好適例では、基板5が複数個面付けされた大判基板の状態で、専用治具にセットされる。
【0020】
ステップS11では、基板5の実装領域6の第1ランド1b、および、接合領域7の第2ランド2にハンダクリーム9が塗布される。詳しくは、図6に示すように、第1ランド1b、および、接合ランドとしての第2ランド2の上に、ハンダクリーム9が塗布される。ハンダクリーム9の塗布は、好適例では、第1ランド1b、第2ランド2に当接する部分が開口したマスクを用いてスクリーン印刷により塗布される。この際、第3ランド3には、ハンダクリームは塗布されない。なお、ディスペンサーを用いて塗布しても良い。換言すれば、ハンダクリーム9の塗布工程では、基板5の実装領域6、および、実装領域6を囲う接合領域7において連通孔4となる凹部2bを有する接合ランドとしての第2ランド2にハンダクリームを塗布する。
【0021】
ステップS12では、基板5にセンサーデバイス50を載置する。詳しくは、図6に示すように、センサーデバイス50の電極端子1a側の面を下にして、基板5の上面5aにおける略中央に載置する。基板5にセンサーデバイス50をフェイスダウン実装する。換言すれば、この工程では、実装領域6にセンサーデバイス50を載置する。
ステップS13では、基板5にキャップ8を載置する。詳しくは、図2に示すように、第2ランド2の上にフランジ部8bの位置を合せて、キャップ8を載置する。換言すれば、この工程では、接合領域7にキャップ8を載置する。
【0022】
ステップS14では、センサーデバイス50とキャップ8とが載置された状態の基板5をリフロー処理する。好適例では、基板5が複数個面付けされた大判基板の状態で、所定の温度に設定されたリフロー炉に通す。なお、リフロー後の態様は、図1に示すように、接合材9aが、実装領域6を囲むとともに内部空間SPと外部とを連通する連通孔4を有するように形成される。
ここで、仮に連通孔4が設けられていない場合、キャップ8の内部空間SPの空気が高温により膨張した際の逃げ場がないため、キャップ8が浮き上がってしまい、気密封止は困難であった。これに対して、慣性計測装置100によれば、連通孔4から膨張した空気を逃がすことができるため、キャップ8の浮きは生じない。
【0023】
ステップS15では、連通孔4を封止材9bにより封止する。詳しくは、図3に示すように、連通孔4を覆うように、第2ランド2から第3ランド3に亘ってハンダ付けにより封止材9で連通孔4を封止する。好適例では、窒素ガスで満たされたチャンバー内において、大判基板の状態で1つずつの基板5に対してハンダ付けする。換言すれば、この工程では、連通孔4をハンダ付けにより封止する。そして、封止工程終了後、大判基板をチャンバーから取出し、1個ずつの小片に切り分けることにより、慣性計測装置100が完成する。
【0024】
***センサーデバイスの概要***
図7は、センサーデバイスの概要を示す透過平面図である。図8は、図7のf-f断面における断面図である。図9は、図7のg-g断面における断面図である。
【0025】
図7は、センサーデバイス50をZプラス側から観察した透過平面図である。図7に示すように、センサーデバイス50は、台座板41上に配置された第1慣性センサー45、第2慣性センサー46などから構成される。台座板41は、2つのセンサーを載置する基板である。
【0026】
図8に示すように、第1慣性センサー45は、基材10と、蓋体18と、第1ジャイロセンサー素子25と、第2ジャイロセンサー素子26と、第3ジャイロセンサー素子27とを有する。なお、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、及び第3ジャイロセンサー素子27は、基材10と蓋体18とで構成される収容空間S1に収容されている。また、収容空間S1は、気密空間であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態となっている。
【0027】
第1慣性センサー45において、第1ジャイロセンサー素子25は、X軸まわりの角速度を検出し、第2ジャイロセンサー素子26は、Y軸まわりの角速度を検出し、第3ジャイロセンサー素子27は、Z軸まわりの角速度を検出する。なお、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、及び第3ジャイロセンサー素子27は、MEMS技術を用いてシリコン基板を加工し製造されたジャイロセンサー素子であり、可動電極と固定電極との間の容量変化に基づいて、角速度を検出する。
【0028】
基材10には、3つの凹部21,22,23が形成されており、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、及び第3ジャイロセンサー素子27が、それぞれ、凹部21、凹部22、及び凹部23に対応するように基材10上に配置される。凹部21,22,23は、それぞれ、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、第3ジャイロセンサー素子27と、基材10との接触を防止するための逃げ部として機能する。
【0029】
なお、基材10は、シリコン基板である。基材10は、アルカリ金属イオンを含むガラス材料、例えば、パイレックス(登録商標)ガラスを主材料として形成された基板であっても良い。シリコン半導体プロセスに準拠した工程により、基材10上にポリシリコンなどの材料によりセンサー構造体が形成される。本実施形態におけるセンサー構造体は、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、第3ジャイロセンサー素子27である。
【0030】
蓋体18には、凹部18aが形成されており、基材10に接合することで、収容空間S1が形成され、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、及び第3ジャイロセンサー素子27を収容する。凹部18aは、基材10の3つの凹部21,22,23と向かい合って形成されている。なお、蓋体18は、本実施形態では、シリコン基板で形成されている。基材10と蓋体18との接合にはガラスフリット等が使用され、センサー構造体は最終的に外気に対して気密封止された構造となる。以上のセンサーデバイスの構成は一例であり、その他の例であっても構わない。例えば、ジャイロセンサーに関しては、駆動部が共通であり、検出部のみ軸別に分かれている構造などでも良い。更に第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、及び第3ジャイロセンサー素子27の制御・検出を実現する集積回路が、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、及び第3ジャイロセンサー素子27に接続されてもよいし、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、及び第3ジャイロセンサー素子27にスタックされてもよい。
【0031】
図7に戻る。
第2慣性センサー46は、第1加速度センサー素子35と、第2加速度センサー素子36と、第3加速度センサー素子37と、を備え、第1軸となるX方向、第2軸となるY方向、及び第3軸となるZ方向のそれぞれの検出軸の加速度を測定することのできる3軸加速度センサーである。なお、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37は、MEMS技術を用いて製造された加速度センサー素子であり、可動電極と固定電極との間の容量変化に基づいて、加速度を検出する。換言すれば、センサーデバイス50は、第1慣性センサー45が検出する物理量とは異なる物理量を検出する第2慣性センサー46を備える。
【0032】
図9に示すように、第2慣性センサー46は、基材30と、蓋体38と、第1加速度センサー素子35と、第2加速度センサー素子36と、第3加速度センサー素子37と、を有する。なお、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37は、基材30と蓋体38とで構成される収容空間S3に収容されている。また、収容空間S3は、気密空間であり、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入され、使用温度が-40℃~125℃程度で、ほぼ大気圧となっていることが好ましい。ただし、収容空間S3の雰囲気は、特に限定されず、例えば、減圧状態であってもよいし、加圧状態であっても良い。基材10は基材30と別体であるが、一体としてもよい。すなわち、一つの基材、例えば基材10の上に、第1ジャイロセンサー素子25、第2ジャイロセンサー素子26、第3ジャイロセンサー素子27、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37が形成されても良い。
【0033】
第2慣性センサー46において、第1加速度センサー素子35は、X方向の加速度を検出し、第2加速度センサー素子36は、Y方向の加速度を検出し、第3加速度センサー素子37は、Z方向の加速度を検出する。
【0034】
基材30には、3つの凹部31,32,33が形成されており、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37が、それぞれ、凹部31、凹部32、及び凹部33に対応するように基材30上に配置されている。凹部31,32,33は、それぞれ、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、第3加速度センサー素子37と、基材30との接触を防止するための逃げ部として機能する。
【0035】
なお、基材30は、シリコン基板である。基材30は、アルカリ金属イオンを含むガラス材料、例えば、パイレックス(登録商標)ガラスを主材料として形成された基板であっても良い。シリコン半導体プロセスに準拠した工程により、基材30上にポリシリコンなどの材料によりセンサー構造体が形成される。本実施形態におけるセンサー構造体は、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、第3加速度センサー素子37である。
【0036】
蓋体38には、凹部38aが形成されており、基材30に接合することで、収容空間S3が形成され、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37を収容する。凹部38aは、基材30の3つの凹部31,32,33と向かい合って形成されている。なお、蓋体38は、本実施形態では、シリコン基板で形成される。これにより、蓋体38と基材30とを陽極接合によって強固に接合することができる。基材30と蓋体38との接合にはガラスフリット等が使用され、センサー構造体は最終的に外気に対して気密封止された構造となる。以上のセンサーデバイスの構成は一例であり、その他の例であっても構わない。更に第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37の制御・検出を実現する集積回路が、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37に接続されてもよいし、第1加速度センサー素子35、第2加速度センサー素子36、及び第3加速度センサー素子37にスタックされてもよい。
【0037】
図7に戻る。
このようなセンサーデバイス50は、3軸ジャイロセンサーである第1慣性センサー45と、3軸加速度センサーである第2慣性センサー46とを備える6軸コンボセンサーであり、その周囲は、樹脂製パッケージである樹脂11によって覆われている。樹脂11は、例えば、エポキシ樹脂であり、センサーデバイス50の外装は、樹脂11により樹脂モールドされている。換言すれば、センサーデバイス50は、第1パッケージとしての樹脂11により樹脂モールドされている。第2慣性センサー46は、第1慣性センサー45と共に、第1パッケージに収納されている。
ここで、発明者等の検証によれば、センサーデバイス50をそのままの状態で使用した際に、例えば、使用環境の湿度が変動すると、変動した湿度に応じた量の水分が樹脂モールド内に吸着されてしまい、樹脂11の内部における残留応力が変化することが確認されている。この応力変化は、センサー素子に対して定常的に印加される応力の変動を引き起こし、センサー特性を変動させてしまうという課題があった。
【0038】
なお、上記では、センサーデバイス50は6つのセンサー素子を備えるものとして説明したが、これに限定するものではなく、少なくとも加速度3軸、角速度3軸の検出ができれば良く、例えば、センサー素子が3素子であっても良い。この場合、例えば、2つの加速度センサー素子と、1つの角速度センサー素子とによる3つのセンサー素子構成とする。この3素子は、検出軸の共通化などの複合化設計により、加速度3軸、角速度3軸の検出が可能なセンサー素子となっている。
【0039】
***耐湿特性の検証結果***
図10は、封止材の有無による出力変動の変化を示すグラフ図であり、横軸には時間(hour)を、縦軸には、出力変動(mG)を取っている。
図10に示すグラフ55は、本実施形態の慣性計測装置100による実験環境下での時間経過にともなう出力変動を示すグラフである。グラフ56は、比較例の慣性計測装置による実験環境下での時間経過にともなう出力変動を示すグラフであり、比較例の慣性計測装置では封止材9bが設けられていない。換言すれば、比較例の慣性計測装置では連通孔4が開口しており、内部空間SPと外部とが連通した状態となっている。
実験環境は、常温常湿よりも高湿度の環境下に、本実施形態の慣性計測装置100と、比較例の慣性計測装置とを一緒に、同じ姿勢でセットして行った。
【0040】
比較例のグラフ56では、時間経過にともない出力変動が比例的に大きく増加していることが解る。このバイアス変動は、外部の水分が連通孔4を通って浸入し、センサーデバイス50の樹脂11の樹脂モールド内に吸着されて、樹脂11の内部における残留応力が変化したことにより生じたものと推測される。
これに対して、本実施形態の慣性計測装置100によれば、グラフ55に示すように、時間が経過しても出力変動は、約1mGで一定であり安定している。換言すれば、バイアス変動が少なく耐湿特性が安定していることが解る。
【0041】
以上、述べた通り、本実施形態の慣性計測装置100、および、その製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
慣性計測装置100は、接合領域7を有する基板5と、キャップ8と、樹脂製パッケージに収納され、基板5とキャップ8との間の内部空間SPにおいて基板5上の実装領域6に配置されるセンサーデバイス50と、基板5の接合領域7において、キャップ8を基板5に接合する接合材9a及び封止材9bと、を備え、接合材9aは、実装領域6を囲むとともに内部空間SPと外部とを連通する連通孔4を有するように形成され、封止材9bは、連通孔4をふさぐ。
【0042】
これによれば、センサーデバイス50が収納された内部空間SPは、封止材9bにより気密状態で封止される。よって、センサーデバイス50への外部からの水分浸入を防ぐことができる。
従って、水分の影響を低減し、優れた検出精度を有する慣性計測装置100を提供することができる。換言すれば、耐湿性に優れ、信頼性の高い慣性計測装置100を提供することができる。
【0043】
また、実装領域6には、センサーデバイス50を実装する第1ランド1bが設けられ、接合領域7には、接合材9aに対応する第2ランド2が設けられ、連通孔4の外側には、第3ランド3が設けられ、封止材9bは、第2ランド2から第3ランド3に亘って配置される。
【0044】
これによれば、リフロー処理の後に、ハンダ付けにより第2ランド2から第3ランド3に亘って封止材9bを設けることができるため、連通孔4を封止することができる。
【0045】
また、第2ランド2における連通孔4に対応する切欠き部である凹部2bの幅を幅dとし、第3ランド3の連通孔4に対向する部分の長さを長さLとしたとき、長さLは、幅dの1.5倍以上5倍以下である。
これによれば、第2ランド2から第3ランド3に亘って封止材9bを配置する際に、確実に連通孔4をふさぐことができ、かつ、効率良くハンダ付けを行うことができる。
【0046】
また、キャップ8は金属キャップであり、接合材9a及び封止材9bはハンダである。
これによれば、ハンダ付けにより効率的に連通孔4をふさぐことができる。
【0047】
また、第2ランド2の切欠き部には、連通孔4となる凹部2bが形成される。
これによれば、第2ランド2の上にキャップ8を実装することにより、フランジ部8bと凹部2bとの間に、連通孔4が形成される。
【0048】
実施形態2
***慣性計測装置の異なる態様-1***
図11は、実装形態2の慣性計測装置の連通孔周辺の部分平面図であり、図1に対応している。図12は、連通孔周辺の拡大斜視図であり、図3に対応している。
【0049】
上記実施形態では、第2ランド2は、環状の一部に分断部分を有するものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、分断部分がなくても、連通孔が形成される構成であれば良い。例えば、第2ランド12の凹部12bにおける外周縁が、接続部12cで連結していても良い。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
図11に示すように、本実施形態の慣性計測装置110では、第2ランド12が角部で分断されておらず、その外周縁が接続部12cにより連結している。接続部12cは、キャップ8のフランジ部8bよりも外側に設けられており、平面的に、フランジ部8bと接続部12cとの間に隙間が設けられている。
図12に示すように、第2ランド12の上にキャップ8を載置した際、この隙間が連通孔44の開口部となる。これにより、連通孔44は、外部と内部空間SPとの間を連通する空気孔として機能する。その他の構成は、実施形態1での説明と同様である。
【0051】
なお、慣性計測装置110においても、リフロー後の態様は、図12に示すように、接合材9aが、実装領域6(図11)を囲むとともに内部空間SPと外部とを連通する連通孔44を有するように形成される。
そして、ハンダ付けにより連通孔44を封止する際には、連通孔44の開口部の前面に接続部12cがあるため、接続部12cがない場合よりも連通孔44を封止し易くなる。
また、上記では、接続部12cがフランジ部8bよりも外側に設けられているものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、例えば、接続部12cがフランジ部8bの内側に設けられることでも良い。この場合も、平面的に、フランジ部8bと接続部12cとの間に隙間が設けられるように設定する。
【0052】
以上、述べた通り、本実施形態の慣性計測装置110によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
慣性計測装置110によれば、センサーデバイス50が収納された内部空間SPは、封止材9bにより気密状態で封止される。よって、センサーデバイス50への外部からの水分浸入を防ぐことができる。
従って、水分の影響を低減し、優れた検出精度を有する慣性計測装置110を提供することができる。
【0053】
実施形態3
***慣性計測装置の異なる態様-2***
図13は、実装形態3の慣性計測装置の連通孔周辺の部分平面図であり、図1に対応している。図14は、連通孔周辺の拡大斜視図であり、図3に対応している。
【0054】
上記実施形態では、第2ランド2の凹部2bとキャップ8との間に連通孔4が設けられるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、連通孔がキャップに形成される構成であっても良い。例えば、本実施形態の慣性計測装置120では、キャップ81に連通孔81cが設けられる。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
図13に示すように、本実施形態の慣性計測装置120では、キャップ81の角部にスリット状の連通孔81cが設けられている。なお、キャップ81は、連通孔81cを有すること以外は、実施形態1のキャップ8と同じ構成である。また、本実施形態の第2ランド13には切り欠き部がなく、角部も直線部分と同じ幅で環状に閉じた接合ランドとなっている。図14に示すように、連通孔81cは、フランジ部81bの端部からフランジ部81bを横断し、キャップ81本体の側壁の一部まで形成されている。換言すれば、キャップ81の第3ランド3に対応する位置には、スリット状の凹部からなる連通孔81cが形成される。
【0056】
慣性計測装置120においても、リフロー後の態様は、図14に示すように、接合材9aが、実装領域6(図13)を囲むとともに内部空間SPと外部とを連通する連通孔81cを有するように形成される。
そして、ハンダ付けにより連通孔81cを封止する際には、キャップ81本体の側壁の一部を含む連通孔81cを覆うように、封止材9bを設ける。
【0057】
以上、述べた通り、本実施形態の慣性計測装置120によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
慣性計測装置120によれば、センサーデバイス50が収納された内部空間SPは、封止材9bにより気密状態で封止される。よって、センサーデバイス50への外部からの水分浸入を防ぐことができる。
従って、水分の影響を低減し、優れた検出精度を有する慣性計測装置120を提供することができる。
【0058】
実施形態4
***慣性計測装置の異なる態様-3***
図15は、実装形態4の慣性計測装置の平面図であり、図1に対応している。図16は、異なる態様の慣性計測装置の平面図であり、図1に対応している。
【0059】
上記実施形態では、連通孔4を1つ設けるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、連通孔4が複数設けられる構成であっても良い。また、連通孔4は、角部に設けることに限定されない。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0060】
図15に示すように、本実施形態の慣性計測装置130では、対角方向に連通孔4が2つ設けられている。詳しくは、Xプラス方向かつYプラス方向の角部に設けられた連通孔4に加えて、Xマイナス方向かつYマイナス方向の角部にも、連通孔4が設けられている。換言すれば、連通孔4は、接合領域7に複数設けられる。また、複数の連通孔4は、実装領域6を挟み対向配置される。これ以外の構成は、実施形態1の慣性計測装置100と同じである。
【0061】
また、図16に示す慣性計測装置140では、第2ランド2fの辺に沿って連通孔4が4つ設けられている。詳しくは、Yプラス方向の第2ランド2fの一辺に沿って2つの連通孔4が並んで設けられている。そして、Yマイナス方向の第2ランド2fの一辺に沿って2つの連通孔4が並んで設けられている。このように、連通孔4を直線部分に設けても良い。換言すれば、連通孔4は、接合領域7に複数設けられる。また、複数の連通孔4は、実装領域6を挟み対向配置される。その他の構成は、実施形態1の慣性計測装置100と同じである。
【0062】
以上、述べた通り、本実施形態の慣性計測装置130,140によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
慣性計測装置130,140によれば、センサーデバイス50が収納された内部空間SPは、封止材9bにより気密状態で封止される。よって、センサーデバイス50への外部からの水分浸入を防ぐことができる。
従って、水分の影響を低減し、優れた検出精度を有する慣性計測装置130,140を提供することができる。
【0063】
実施形態5
***慣性計測装置の異なる態様-4***
図17は、実装形態5の慣性計測装置の平面図であり、図1に対応している。
【0064】
上記実施形態では、内部空間SP内に1つのセンサーデバイス50を収納するものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、内部空間SP内に複数のセンサーデバイス50を収納する構成であっても良い。以下、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
図17に示すように、本実施形態の慣性計測装置150では、内部空間SP内に2つのセンサーデバイス50が収納されている。詳しくは、基板5およびキャップ8がX方向に長い長方形状に設けられており、内部空間SPも横長の長方形状となっており、その中に、センサーデバイス50が2つ並んで配置されている。なお、2つに限定するものではなく、センサーデバイス50の数は、複数であれば良い。連通孔4は、Xプラス方向かつYプラス方向の角部に1ヶ所設けられている。実施形態4のように、複数の連通孔4を備えていても良い。その他の構成は、実施形態1の慣性計測装置100と同じである。
また、上記では、内部空間SP内に2つのセンサーデバイス50を収納するものとして説明したが、これに限定するものではなく、樹脂モールドされたデバイスであれば良い。例えば、1つのデバイスとして樹脂モールドされた3軸の角速度センサーである第1慣性センサー45と、1つのデバイスとして樹脂モールドされた3軸の加速度センサーである第2慣性センサー46とを、内部空間SP内に並べて配置することでも良い。
【0066】
以上、述べた通り、本実施形態の慣性計測装置150によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
慣性計測装置150によれば、複数のセンサーデバイス50が収納された内部空間SPは、封止材9bにより気密状態で封止される。よって、センサーデバイス50への外部からの水分浸入を防ぐことができる。
従って、水分の影響を低減し、優れた検出精度を有する慣性計測装置150を提供することができる。
【0067】
実施形態6
***慣性計測ユニット***
図18は、慣性計測ユニットを示す分解斜視図である。図19は、基板の斜視図である。
上記実施形態で説明した慣性計測装置100を、高精度が求められる橋梁や、高架軌道などの建造物のモニタリングシステムに用いられる慣性計測ユニット300に適用することができる。なお、上記実施形態と同じ部位には、同じ付番を付し、重複する説明は省略する。
【0068】
図18に示すように、本実施形態の慣性計測ユニット300は、上位のモニタリングシステムにおける計測装置(図示省略)との接続を簡便に行うために、コネクター62を備えている。慣性計測ユニット300は、ケース70、基板61などから構成される。
ケース70は、基板61を覆い保護する筐体であり、その上面にはコネクター62を露出するための開口部72が形成されている。コネクター62は、プラグ型(オス)のコネクターであり、2列の接続端子を備えている。
ケース70の下面には、慣性計測装置100などが実装された基板61を収納するための凹部70bが設けられている。
ケース70の凹部70bに基板61を組み込んだ状態で、例えば、コネクター62に対応するメス型のコネクターを、開口部72から接続することができる。
【0069】
図19に示すように、基板61は、例えば、ガラスエポキシ基板などのリジット基板である。基板61は、平面的に略八角形をなしており、その一辺に沿ってコネクター62が設けられている。
基板61には、慣性計測装置100、コネクター62、制御IC65、角速度センサー200z、角速度センサー200x、角速度センサー200y、チップ抵抗や、チップコンデンサーなどを含む複数の電子部品が実装されている。なお、制御IC65は、基板61の裏面に実装されている。なお、基板61は、基板5と共通であってもよい。この場合、基板61にセンサーデバイス50及びキャップ8が実装されてもよいし、第1ランド1b、第2ランド2、及び第3ランド3が基板61に形成されてもよい。
制御IC65は、MCU(Micro Controller Unit)であり、慣性計測ユニット300の各部を制御する。制御IC65が備える記憶部には、加速度および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラム、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。
【0070】
角速度センサー200zは、基板61の表面(ケース70側の面)に実装されている。角速度センサー200zは、Z軸方向における1軸の角速度を検出するジャイロセンサーである。好適例として、水晶を振動子として用い、振動する物体に加わるコリオリの力から角速度を検出する振動ジャイロセンサーを用いている。なお、振動ジャイロセンサーに限定するものではなく、角速度を検出可能なセンサーで有れば良い。例えば、振動子としてセラミックや、シリコンを用いたセンサーを用いても良い。
角速度センサー200xは、X軸方向における1軸の角速度を検出するジャイロセンサーであり、基板61のX軸方向の側面において、実装面がX軸と直交するように配置されている。角速度センサー200yは、Y軸方向における1軸の角速度を検出するジャイロセンサーであり、基板61のY軸方向の側面において、実装面がY軸と直交するように配置されている。
【0071】
図20は、角速度センサーの透過平面図である。図21は、図20のj-j断面における断面図である。
次に、角速度センサー200zの構成について説明する。なお、角速度センサー200x、角速度センサー200yも角速度センサー200zと同じ構成である。
【0072】
図20に示す、角速度センサー200zは、振動ジャイロセンサー素子201を備えている。振動ジャイロセンサー素子201は、フォトリソグラフィー技術を用いて水晶基板を加工し製造されたジャイロセンサー素子であり、検出振動腕の振動を電気信号に変換し、角速度を検出する。また、水晶を基材としているので温度特性に優れている。そのため、MEMS技術を用いて製造したジャイロセンサー素子に比べ、外部からのノイズや温度の影響を受け難く、検出精度が高い。
【0073】
図20図21に示すように角速度センサー200zは、振動ジャイロセンサー素子201と、振動ジャイロセンサー素子201を収容するセラミック等からなるベース202と、ガラス、セラミック、又は金属等からなるリッド207と、を有する。
ベース202は、板状の第1基板203と枠状の第2基板204とを積層して形成されている。また、ベース202は、上方に開放する収容空間S2を有している。なお、振動ジャイロセンサー素子201を収容する収容空間S2は、リッド207をシールリング等の接合部材206により接合することで、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態に気密封止されている。
【0074】
ベース202の第1基板203の上面203aには、上方へ突出する凸部77が形成されており、凸部77の上面77aに金属バンプ97等を介して振動ジャイロセンサー素子201が電気的及び機械的に固定されている。そのため、振動ジャイロセンサー素子201と第1基板203との接触を防止することができる。
ベース202の第1基板203の下面203bには、複数の実装端子205が設けられている。実装端子205は、図示しない配線を介して、振動ジャイロセンサー素子201と電気的に接続されている。
【0075】
振動ジャイロセンサー素子201は、中心部分に位置する基部92と、基部92からY方向に延出された一対の検出用振動腕93と、検出用振動腕93と直交するように、基部92からX方向に延出された一対の連結腕94と、検出用振動腕93と平行になるように、各連結腕94の先端側からY方向に延出された各一対の駆動用振動腕95,96と、を有する。振動ジャイロセンサー素子201は、基部92において、金属バンプ97等を介してベース202に設けられた凸部77の上面77aに電気的及び機械的に固定されている。
【0076】
振動ジャイロセンサー素子201は、駆動用振動腕95,96が互いに逆相でX方向に屈曲振動をしている状態において、Z軸まわりの角速度ωzが加わると、駆動用振動腕95,96及び連結腕94に、Y方向のコリオリ力が働き、Y方向に振動する。この振動により検出用振動腕93がX方向に屈曲振動する。そのため、検出用振動腕93に形成された検出電極が、振動により発生した水晶の歪を電気信号として検出することで角速度ωzが求められる。
【0077】
以上、述べた通り、本実施形態の慣性計測ユニット300によれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
慣性計測ユニット300は、耐湿性が高く信頼性に優れた慣性計測装置100に加えて、水晶を振動子として用いた高精度の角速度センサー200x、角速度センサー200y、角速度センサー200zを備えている。
従って、信頼性に優れ高精度の慣性計測ユニット300を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1a…電極端子、1b…第1ランド、2,2f…第2ランド、2b…凹部、3…第3ランド、4…連通孔、5…基板、5a…上面、5b…下面、6…実装領域、7…接合領域、8…キャップ、8a…キャビティ、8b…フランジ部、9…ハンダクリーム、9a…接合材、9b…封止材、10…基材、11…樹脂、12,13…第2ランド、12b…凹部、12c…接続部、18…蓋体、18a…凹部、20…基材、21,22,23…凹部、25…第1ジャイロセンサー素子、26…第2ジャイロセンサー素子、27…第3ジャイロセンサー素子、30…基材、31,32,33…凹部、35…第1加速度センサー素子、36…第2加速度センサー素子、37…第3加速度センサー素子、38…蓋体、38a…凹部、41…台座板、44…連通孔、45…第1慣性センサー、46…第2慣性センサー、50…センサーデバイス、61…基板、62…コネクター、70…ケース、70b…凹部、71…実装用端子、72…開口部、77…凸部、77a…上面、81…キャップ、81b…フランジ部、81c…連通孔、92…基部、93…検出用振動腕、94…連結腕、95,96…駆動用振動腕、97…金属バンプ、100,110,120,130,140,150…慣性計測装置、200x,200y,200z…角速度センサー、201…振動ジャイロセンサー素子、202…ベース、203…第1基板、203a…上面、203b…下面、204…第2基板、205…実装端子、206…接合部材、207…リッド、300…慣性計測ユニット、IC65…制御、S1,S2,S3…収容空間、SP…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21