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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175502
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093336
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】小澤 健
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB07
5E070CB03
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】高い自己共振周波数の確保と浮遊容量の発生の抑制とが可能なインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品は、絶縁体で構成された素体と、素体の内部に設けられたコイル導体と、を備える。コイル導体は、コイル導体の軸方向に間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する接続導体と、を備える。複数の導体パターンのうち少なくとも1つの導体パターンは、軸方向に並び且つ互いに接触した第1導体パターン及び第2導体パターンを備える。コイル導体の軸を含む断面において、第1導体パターンの軸方向に直交する方向の中心は、第2導体パターンの軸方向に直交する方向の中心と異なる位置にある。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体で構成された素体と、
前記素体の内部に設けられたコイル導体と、を備え、
前記コイル導体は、前記コイル導体の軸方向に間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する接続導体と、を備え、
前記複数の導体パターンのうち少なくとも1つの導体パターンは、前記軸方向に並び且つ互いに接触した第1導体パターン及び第2導体パターンを備え、
前記コイル導体の軸を含む断面において、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心と異なる位置にあるインダクタ部品。
【請求項2】
前記軸を含む断面において、前記第1導体パターンにおける前記コイル導体の径方向に沿った長さである前記第1導体パターンの幅は、前記第2導体パターンにおける前記径方向に沿った長さである前記第2導体パターンの幅と同じである請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記軸を含む断面において、前記第1導体パターンにおける前記コイル導体の径方向に沿った長さである前記第1導体パターンの幅は、前記第2導体パターンにおける前記径方向に沿った長さである前記第2導体パターンの幅と異なる請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記第1導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第1導体パターンの厚みは、前記第2導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第2導体パターンの厚みと同じである請求項1から3のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記第1導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第1導体パターンの厚みは、前記第2導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第2導体パターンの厚みと異なる請求項1から3のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記複数の導体パターンのうち少なくとも2つの導体パターンは、前記軸方向のうち一方の方向に位置する前記第1導体パターン、及び前記軸方向のうち他方の方向に位置する前記第2導体パターンを備え、
前記少なくとも2つの導体パターンの全てにおいて、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心に対して同じ方向にずれている請求項1から3のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記複数の導体パターンのうち少なくとも2つの導体パターンは、前記軸方向のうち一方の方向に位置する前記第1導体パターン、及び前記軸方向のうち他方の方向に位置する前記第2導体パターンを備え、
前記少なくとも2つの導体パターンのうち一部の導体パターンにおいて、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心に対して第1方向にずれており、
前記少なくとも2つの導体パターンのうち前記一部の導体パターン以外の導体パターンの少なくとも1つにおいて、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心に対して前記第1方向とは異なる第2方向にずれている請求項1から3のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記複数の導体パターンのうち前記コイル導体の前記軸方向の両端部に位置する2つの両端導体パターンにおいて、前記両端導体パターンが備える前記第1導体パターンは、前記コイル導体における前記軸方向の最も外側に位置し、前記両端導体パターンが備える前記第2導体パターンは、前記両端導体パターンが備える前記第1導体パターンよりも前記軸方向の内側に位置し、
前記両端導体パターンが備える前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記両端導体パターンが備える前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心よりも前記コイル導体の径方向の外側に位置している請求項1から3のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、素体の内部にコイル導体が設けられたインダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体の内部にコイル導体が設けられたインダクタ部品では、高いQ値を有することが求められている。インダクタ部品のQ値を高くするために、例えば、コイル導体を構成する複数の導体パターンの各々を厚くすることが考えられる。
【0003】
厚い導体パターンよりなるコイル導体を有するインダクタ部品の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された電子部品では、製造工程において、下部導体パターン層が形成された後に、下部導体パターン層の上に上部導体パターン層が形成される。これにより、下部導体パターン層の厚みと上部導体パターン層の厚みとを合わせた厚みを有する導体パターン、つまり厚い導体パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-36413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
素体のサイズには制限がある。また、素体の内部に設けられるコイル導体の長さには制限がある。そのため、素体を大型化することなく、コイル導体を構成する導体パターンの厚みを厚くするために、コイル導体の巻線間の間隔を狭くすることが考えられる。ここで、コイル導体の巻線間の間隔は、コイル導体を構成する複数の導体パターンにおいて隣り合う2つの導体パターン間の間隔である。
【0006】
しかし、隣り合う2つの導体パターン間の間隔が狭くなると、2つの導体パターン間に発生する浮遊容量が大きくなるおそれがある。浮遊容量が大きくなると、インダクタ部品の自己共振周波数(SRF: Self Resonant Frequency)が低下するおそれがある。自己共振周波数が低下すると、インダクタ部品のQ値が低下するおそれがある。
【0007】
本開示は、高い自己共振周波数の確保と浮遊容量の発生の抑制とが可能なインダクタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のインダクタ部品は、
絶縁体で構成された素体と、
前記素体の内部に設けられたコイル導体と、を備え、
前記コイル導体は、前記コイル導体の軸方向に間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する接続導体と、を備え、
前記複数の導体パターンのうち少なくとも1つの導体パターンは、前記軸方向に並び且つ互いに接触した第1導体パターン及び第2導体パターンを備え、
前記コイル導体の軸を含む断面において、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心と異なる位置にある。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高い自己共振周波数の確保と浮遊容量の発生の抑制とが可能なインダクタ部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係るインダクタ部品の外観斜視図
図2】コイル導体及び外部電極の外観斜視図
図3】コイル導体及び外部電極の外観斜視図
図4図1のA-A断面を示す模式断面図
図5】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図6】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図7】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図8】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図9】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図10】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図11】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図12】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図13】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図14】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図15】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図
図16】本開示の第2実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図
図17】本開示の第3実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図
図18】本開示の第4実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図
図19】本開示の第5実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。また、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」を含む用語)が用いられる。しかし、特定の方向あるいは位置を示す用語の使用は、図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係るインダクタ部品の外観斜視図である。
【0013】
図1に示すように、本開示の第1実施形態に係るインダクタ部品10は、素体20を備える。第1実施形態において、素体20は、直方体形状である。第1実施形態において、素体20は、上方を向く上面21と、下方を向く下面22と、上面21及び下面22間を連結する前側面23、後側面24、左側面25、及び右側面26とを備える。前側面23は前方を向き、後側面24は後方を向いている。左側面25は左方を向き、右側面26は右方を向いている。前側面23、後側面24、左側面25、及び右側面26の各々は、上面21から上面21と直行する下方へ延び、下面22から下面22と直交する上方へ延びている。上下方向、前後方向、及び左右方向は、互いに直交する方向である。
【0014】
素体20は、複数の絶縁体層(不図示)を積層してなる積層構造を有している。素体20は、絶縁体で構成されている。第1実施形態において、絶縁体層は、前側面23及び後側面24に対して直交する方向(前後方向)に積層されている。なお、素体20は、焼成などによって、複数の絶縁体層同士の界面が明確となっていない場合がある。
【0015】
図2は、コイル導体及び外部電極の外観斜視図である。図3は、コイル導体及び外部電極の外観斜視図である。図2及び図3では、素体20の輪郭が二点鎖線で示されることによって、コイル導体40及び外部電極31、32の素体20に対する相対的な位置が示されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、インダクタ部品10は、素体20の内部にコイル導体40を備える。コイル導体40は、複数(第1実施形態では7つ)の導体パターン411~417と、1つ以上(第1実施形態では6つ)の接続導体421~426とを備える。以下、導体パターン411~417は導体パターン41とも総称され、接続導体421~426は接続導体42とも総称される。
【0017】
複数の導体パターン41の各々は、絶縁体層間のいずれかの界面に沿って環状の軌道の一部を形成するように延びている。界面は、図1に示すように、素体2の内部において、上下方向及び左右方向に広がる仮想内面20Aと言い換えることもできる。図1では、1つの仮想内面20Aのみが例示的に示されているが、仮想内面20Aは導体パターン41の各々に対して設定される。第1実施形態では、7つの導体パターン411~417の各々に対応した7つの仮想内面20Aが設定される。7つの仮想内面20Aは、前後方向に間隔を空けて並んでいる。これにより、7つの導体パターン411~417は、前後方向に間隔を空けて並んでいる。環状の軌道は、環状であればよく、任意の形状であり得る。例えば、環状の軌道は、図2及び図3に示される形状に限らず、円形や四角形等であってもよい。
【0018】
複数の接続導体42の各々は、複数の導体パターン41のうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する。複数の接続導体42は、第1実施形態において、絶縁体層のいずれかを厚み方向(前後方向)に貫通するビアホール導体である。複数の接続導体42は、ビアホール導体に限らず、例えば絶縁体層に印刷等によって形成されてもよい。
【0019】
コイル導体40は、複数の導体パターン41と1つ以上の接続導体42とが交互に接続されることによって螺旋状に延びる形態とされている。
【0020】
複数の導体パターン41の各々は、接続導体42との接続部分に比較的幅広のパッド43を有している。
【0021】
導体パターン411、接続導体421、導体パターン412、接続導体422、導体パターン413、接続導体423、及び導体パターン414が順次接続される。更に、導体パターン414、接続導体424、導体パターン415、接続導体425、導体パターン416、接続導体426、及び導体パターン417が順次接続される。これにより、コイル導体40が構成される。各接続導体42は、パッド43を介して隣接する導体パターン41と接続されている。
【0022】
コイル導体40を構成するように順次接続された導体パターン41の数、接続導体42の数、及びコイル導体40のターン数は、図示したものに限らず、任意の数とすることができる。絶縁体層の積層数についても、任意の数とすることができる。
【0023】
図1に示すように、インダクタ部品10は、外部電極31、32を備える。外部電極31は、下面22の左部から左側面25の下部に亘って連続して設けられている。外部電極32は、下面22の右部から右側面26の下部に亘って連続して設けられている。外部電極31、32の各々は、L字形状を有する。外部電極31の下面22に設けられた部分と外部電極32の下面22に設けられた部分とは、間隔を空けて設けられている。
【0024】
外部電極31は、下面22及び左側面25において素体20の外部に露出している。外部電極32は、下面22及び右側面26において素体20の外部に露出している。第1実施形態では、外部電極31、32の各々は、露出している部分を除いて、素体20の内部に埋め込まれている。なお、外部電極31および32は、素体20から露出する表面がNiやSnなどのめっきにより覆われていてもよい。
【0025】
図3に示すように、導体パターン417から一体に延びる引出し導体パターン33は、外部電極31に接続される。図2に示すように、導体パターン411から一体に延びる引出し導体パターン34は、外部電極32に接続される。つまり、コイル導体40の一方端部は、引出し導体パターン33を介して外部電極31と電気的に接続され、コイル導体40の他方端部は、引出し導体パターン34を介して外部電極32と電気的に接続される。コイル導体40は、一方端部や他方端部以外の部分において外部電極31、32と電気的に接続されていてもよい。
【0026】
第1実施形態では、インダクタ部品10が回路基板(不図示)に実装されるとき、下面22が回路基板に向けられる実装面とされる。第1実施形態において、コイル導体40の軸方向101は、実装面に対して平行である。すなわち、第1実施形態において、コイル導体40は、いわゆる横巻である。
【0027】
以下、複数の導体パターン41の構成について、図4を主として参照しながら説明する。図4は、図1のA-A断面を示す模式断面図である。つまり、図4は、図1に示すインダクタ部品10の断面20Bを示している。図1において、断面20Bは、一点鎖線で示されている。
【0028】
図2図4に示すように、複数の導体パターン41の各々は、コイル導体40の軸方向101に並び且つ互いに接触した導体パターン41A及び導体パターン41Bを備える。第1実施形態において、コイル導体40の軸方向101は、前後方向である。導体パターン41Aは、第1導体パターンの一例である。導体パターン41Bは、第2導体パターンの一例である。第1実施形態において、導体パターン41Aは軸方向101のうち一方の方向(前方)に位置し、導体パターン41Bは軸方向101のうち他方の方向(後方)に位置する。
【0029】
第1実施形態において、導体パターン411~417の各々は、同構成である。そのため、以下の説明においては、導体パターン411が備える導体パターン41A及び導体パターン41Bの構成が説明される。他の導体パターン412~417については、必要に応じて言及される。
【0030】
図4に示すように、図4に一点鎖線で示すコイル導体40の軸を含む断面において、導体パターン41Aの幅W1は、導体パターン41Bの幅W2と同じである。幅W1は、導体パターン41Aにおけるコイル導体40の径方向102に沿った長さである。幅W2は、導体パターン41Bにおけるコイル導体40の径方向102に沿った長さである。コイル導体40の径方向102は、コイル導体40を軸方向101から見たときにコイル導体40の中心から放射状に延びる方向である。
【0031】
導体パターン41Aの幅W1と導体パターン41Bの幅W2とが同じであるとは、幅W1と幅W2とが完全に同じであるということに限らず、幅W1と幅W2とが略同じであるということも含む。
【0032】
導体パターン41Aの厚みT1は、導体パターン41Bの厚みT2と同じである。厚みT1は、導体パターン41Aにおける軸方向101に平行な長さである。厚みT2は、導体パターン41Bにおける軸方向101に平行な長さである。
【0033】
導体パターン41Aの厚みT1と導体パターン41Bの厚みT2とが同じであるとは、厚みT1と厚みT2とが完全に同じであるということに限らず、厚みT1と厚みT2とが略同じであるということも含む。
【0034】
図4に一点鎖線で示すコイル導体40の軸を含む断面において、導体パターン41Aの軸方向101に直交する方向の中心C1は、導体パターン41Bの軸方向101に直交する方向の中心C2と異なる位置にある。ここで、以下において、導体パターン41Aの軸方向101に直交する方向の中心C1を、中心C1と称する。導体パターン41Bの軸方向101に直交する方向の中心C2を、中心C2と称する。中心C1と中心C2とが異なる位置にあることを言い換えると、軸方向101から見て、導体パターン41Aの中心C1は、導体パターン41Bの中心C2と異なる位置にある。中心C1は、導体パターン41Aにおける径方向102の一端と他端との中間位置である。中心C2は、導体パターン41Bにおける径方向102の一端と他端との中間位置である。
【0035】
第1実施形態では、全ての導体パターン411~417において、導体パターン41Bの中心C2が導体パターン41Aの中心C1より左側面25側に位置している。つまり、全ての導体パターン411~417において、中心C1は中心C2に対して同じ方向にずれている。前記とは逆に、導体パターン41Bの中心C2が導体パターン41Aの中心C1より右側面26側に位置していてもよい。
【0036】
次に、図5図15が参照されつつ、インダクタ部品10の製造方法が説明される。図5図15は、インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。図5図15は、図1図3に示すインダクタ部品10の導体パターン411に対応した図である。以下では、インダクタ部品10のうちの導体パターン411に対応する部分の製造方法が説明される。インダクタ部品10のうちの導体パターン412~417に対応する部分の製造方法の説明は省略され、必要に応じて言及される。
【0037】
図5に示すように、基板60上に磁性体を含有しない絶縁体層51が形成され、絶縁体層51上に導電材料71が形成される。基板60は、例えば、焼結フェライトからなり、平板状である。絶縁体層51は、例えば、磁性体を含有しないポリイミド系樹脂や無機材料などからなる。
【0038】
ポリイミド系樹脂からなる絶縁体層51は、例えば、以下のように形成される。ポリイミド系樹脂が基板60上に印刷、塗布などによってコーティングされる。これにより、基板60上に絶縁体層51が形成される。無機材料からなる絶縁体層51は、例えば、基板60上に、蒸着、スパッタリング、化学気相成長(CVD: chemical vapor deposition)法などのドライプロセスによって形成される。
【0039】
導電材料71は、印刷、塗布などによって絶縁体層51上にコーティングされる。導電材料71は、感光性Agペーストなどの感光性の物質である。
【0040】
以下に詳述するように、導体パターン41Aは、例えばフォトリソグラフィ法を用いたパターニングによって、絶縁体層51上に形成される。
【0041】
図6に示すように、導電材料71上に、フォトマスク81が載置される。フォトマスク81は、導体パターン411の導体パターン41Aと同じ形状の開口部81Aを有する。つまり、フォトマスク81は、導体パターン411の導体パターン41Aの形状を除く部分がマスクされている。
【0042】
次に、フォトマスク81側が露光される。第1実施形態では、導電材料71はネガ型である。そのため、導電材料71における露光された部分(開口部81Aを介して露出している部分)の溶解性は低下する。一方、導電材料71における露光されていない部分(フォトマスク81によってマスクされている部分)の溶解性は低下しない。よって、露光後に現像されると、導電材料71における露光された部分のみが溶解されずに残る。その結果、図7に示すように、導体パターン411の導体パターン41Aが、絶縁体層51上に形成される。
【0043】
導電材料71は、ポジ型であってもよい。この場合、フォトマスク81は、導体パターン411の導体パターン41Aの形状の部分がマスクされる。
【0044】
次に、図8に示すように、絶縁体層51上に絶縁体層52が形成される。絶縁体層52は、絶縁体層51と同様に、磁性体を含有しないポリイミド系樹脂や無機材料などからなる。導体パターン411の導体パターン41Aは、絶縁体層52によって覆われる。
【0045】
次に、図9に示すように、絶縁体層52が溶剤によって洗い流されることや、絶縁体層52が研磨されることなどによって、導体パターン411の導体パターン41Aの上面が露出される。
【0046】
次に、図10に示すように、導電材料72が、導体パターン41Aと同様に、印刷、塗布などによって絶縁体層52上にコーティングされる。導電材料72は、導電材料71と同じ材料である。
【0047】
導体パターン41Bが、導体パターン41Aと同様に、例えばフォトリソグラフィ法を用いたパターニングによって、絶縁体層52上に形成される。以下に詳述する。
【0048】
図11に示すように、導電材料72上に、フォトマスク82が載置される。フォトマスク82は、導体パターン411の導体パターン41Bと同じ形状の開口部82Aを有する。つまり、フォトマスク82は、導体パターン411の導体パターン41Bの形状を除く部分がマスクされている。開口部82Aは、絶縁体層51上に形成された導体パターン41Aからずれた位置にある。但し、絶縁体層51上に形成された導体パターン41Aは、開口部82Aを介して露出している。
【0049】
次に、フォトマスク82側が露光される。第1実施形態では、導電材料72はネガ型である。そのため、導電材料72における露光された部分(開口部82Aを介して露出している部分)の溶解性は低下する。一方、導電材料72における露光されていない部分(フォトマスク82によってマスクされている部分)の溶解性は低下しない。よって、露光後に現像されると、導電材料72における露光された部分のみが溶解されずに残る。ここで、前述したように、絶縁体層51上に形成された導体パターン41Aは、開口部82Aを介して露出している。よって、溶解されずに残った導電材料72は、絶縁体層52から露出された導体パターン41Aと接続されている。その結果、図12に示すように、導体パターン411の導体パターン41Bが、導体パターン41Aと接続した状態で絶縁体層52上に形成される。つまり、導体パターン41A及び導体パターン41Bを備える導体パターン411が形成される。
【0050】
導電材料72は、ポジ型であってもよい。この場合、フォトマスク82は、導体パターン411の導体パターン41Bの形状の部分がマスクされる。
【0051】
次に、図13に示すように、絶縁体層52上に絶縁体層53が形成される。絶縁体層53は、絶縁体層51、52と同様に、磁性体を含有しないポリイミド系樹脂や無機材料などからなる。導体パターン411の導体パターン41Bは、絶縁体層53によって覆われる。
【0052】
次に、図14に示すように、絶縁体層53上に、フォトマスク83が載置される。絶縁体層51、52、53及びフォトマスク83の積層方向から見た平面視において、フォトマスク83は円形のマスク部分83Aを有しており、マスク部分83Aを除く部分83Bは開口されている。平面視において、マスク部分83Aは絶縁体層53に覆われた導体パターン41Bの一部と重なっている。フォトマスク83の平面視での形状は、円形に限らず、例えば四角形などであってもよい。
【0053】
次に、フォトマスク83側が露光される。第1実施形態では、絶縁体層53を構成する材料はネガ型である。そのため、絶縁体層53における露光された部分83Bの溶解性は低下する。一方、絶縁体層53における露光されていないマスク部分83A(フォトマスク83によってマスクされている部分)の溶解性は低下しない。よって、露光後に現像されると、絶縁体層53における露光された部分83Bが溶解されずに残り、マスク部分83Aが溶解される。その結果、図15に示すように、絶縁体層53に円形の穴53Aが形成され、導体パターン41Bの一部が穴53Aを介して露出される。
【0054】
絶縁体層53は、ポジ型であってもよい。この場合、フォトマスク83は、マスク部分83Aに対応する部分に円形などの穴を有しており、当該穴を除く部分がマスク部分となる。
【0055】
次に、図5図15が参照されつつ説明された工程が再び実行される。図15に示す状態において、図5における説明と同様にして、絶縁体層53上に導電材料が形成される。このとき、導電材料は、穴53Aに流れ込む。穴53Aに流れ込んだ導電材料によって、ビアホール導体である接続導体421が形成される。続いて、図6図15が参照されつつ説明された工程が実行されることにより、導体パターン412が形成される。
【0056】
その後、図5図15が参照されつつ説明された工程が繰り返される。これにより、接続導体422、導体パターン413、接続導体423、導体パターン414、接続導体424、導体パターン415、接続導体425、導体パターン416、接続導体426、及び導体パターン417が順次形成される。
【0057】
第1実施形態によれば、軸方向101から見て、複数の導体パターン41のうち導体パターン41A、41Bを有する導体パターン(以下、所定導体パターンと称する。)において、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2と異なる位置にある。これにより、コイル導体40の軸方向101から見て、所定導体パターンと、所定導体パターンの隣りに所定導体パターンと間隔を空けて設けられた導体パターン(以下、隣接導体パターンと称する。)との対向面積を小さくすることができる。
【0058】
例えば、軸方向101から見て、導体パターン412(所定導体パターンの一例)の導体パターン41A(第1導体パターンの一例)と、導体パターン411(隣接導体パターンの一例)の導体パターン41B(第2導体パターンの一例)との対向面積を小さくすることができる。
【0059】
また、例えば、軸方向101から見て、導体パターン413(所定導体パターンの一例)の導体パターン41B(第2導体パターンの一例)と、導体パターン414(隣接導体パターンの一例)の導体パターン41A(第1導体パターンの一例)との対向面積を小さくすることができる。
【0060】
また、例えば、隣接導体パターンが第1導体パターン及び第2導体パターンを備えていない場合であっても、前記の対向面積を小さくすることができる。具体的には、軸方向101から見て、所定導体パターンの第1導体パターン及び第2導体パターンのうち隣接導体パターン側に位置する導体パターンと、隣接導体パターンとの対向面積を小さくすることができる。
【0061】
前記の対向面積が小さいことにより、隣り合う2つの導体パターン間に発生する浮遊容量を小さくすることできる。その結果、インダクタ部品10の自己共振周波数の低下を抑制することができ、インダクタ部品10のQ値を高く維持することができる。
【0062】
第1実施形態によれば、導体パターン41Aの幅W1と導体パターン41Bの幅W2とは同じである。第1実施形態によれば、導体パターン41Aの幅W1が導体パターン41Bの幅W2と異なる構成に比べて、インダクタ部品10の製造が容易である。例えば、インダクタ部品10の製造工程において、導体パターン41Aの形成に用いるフォトマスクと、導体パターン41Bの形成に用いるフォトマスクとを、共通のフォトマスクとすることができる。
【0063】
第1実施形態によれば、導体パターン41Aの厚みT1と導体パターン41Bの厚みT2とは同じである。第1実施形態によれば、導体パターン41Aの厚みT1が導体パターン41Bの厚みT2と異なる構成に比べて、インダクタ部品10の製造が容易である。例えば、インダクタ部品10の製造工程において、導体パターン41Aの形成に用いるフォトマスクと、導体パターン41Bの形成に用いるフォトマスクとを、同じ厚みのフォトマスクとすることができる。
【0064】
第1実施形態によれば、全ての導体パターン411~417において、導体パターン41Aの中心C1が導体パターン41Bの中心C2に対して同じ方向にずれている。第1実施形態によれば、複数の導体パターン41の少なくとも一部において、導体パターン41Aの中心C1が導体パターン41Bの中心C2に対して異なる方向にずれている構成に比べて、インダクタ部品10の製造が容易である。例えば、第1実施形態によれば、インダクタ部品10の製造工程において、複数の導体パターン41の各々の形成のために共通のフォトマスクを用いることができる。
【0065】
第1実施形態及び後述する各実施形態では、導体パターン411~417の全てが、導体パターン41Aと導体パターン41Bとを備える例が説明されているが、導体パターン411~417の一部のみが、導体パターン41Aと導体パターン41Bとを備えていてもよい。この場合、導体パターン41Aと導体パターン41Bとを備えている導体パターン41は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0066】
複数の導体パターン41のうちの一部であって2つ以上の導体パターン41が導体パターン41Aと導体パターン41Bとを備える場合、当該一部であって2つ以上の導体パターン41の全てにおいて、中心C1は中心C2に対して同じ方向にずれていてもよい。この場合において、中心C1と中心C2とのずれの大きさは、当該一部であって2つ以上の導体パターン41のそれぞれにおいて異なっていてもよい。もちろん、当該一部であって2つ以上の導体パターン41の各々において、中心C1は中心C2に対して異なる方向にずれていてもよい。
【0067】
<第2実施形態>
図16は、本開示の第2実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図である。第2実施形態に係るインダクタ部品10Aが第1実施形態に係るインダクタ部品10と異なることは、導体パターン41Aの幅W1と導体パターン41Bの幅W2とが異なることである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るインダクタ部品10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0068】
図16に示すように、インダクタ部品10Aの各導体パターン41において、導体パターン41Aの幅W1は、導体パターン41Bの幅W2より大きい。前記とは逆に、導体パターン41Bの幅W2が導体パターン41Aの幅W1より大きくてもよい。インダクタ部品10Aの各導体パターン41では、導体パターン41Aの厚みT1は、導体パターン41Bの厚みT2と同じであるが、異なっていてもよい。
【0069】
第2実施形態によれば、導体パターン41Aの幅W1と導体パターン41Bの幅W2とは異なる。例えば、図16に示すように、導体パターン411において導体パターン41Bが導体パターン41Aより幅狭である。この場合、軸方向101から見て、導体パターン411の導体パターン41Bと、導体パターン411と隣り合う導体パターン412の導体パターン41Aとの間の対向面積を、導体パターン41Bの幅W2が短い分だけ小さくすることができる。導体パターン41Aが導体パターン41Bより幅狭である場合も同様である。
【0070】
第2実施形態では、複数の導体パターン41の全てにおいて幅W1が幅W2より大きい例が説明されている。しかし、複数の導体パターン41のうちの一部において幅W1が幅W2より大きく、複数の導体パターン41のうちの当該一部を除く導体パターン41において幅W1が幅W2より小さくてもよい。
【0071】
第2実施形態では、複数の導体パターン41の全てにおいて、幅W1と幅W2とが異なる例が説明されている。しかし、複数の導体パターン41のうちの一部において幅W1と幅W2とが異なっており、複数の導体パターン41のうちの当該一部を除く導体パターン41において幅W1と幅W2とが同じまたは略同じであってもよい。
【0072】
<第3実施形態>
図17は、本開示の第3実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図である。第3実施形態に係るインダクタ部品10Bが第1実施形態に係るインダクタ部品10と異なることは、導体パターン41Aの厚みT1と導体パターン41Bの厚みT2とが異なることである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るインダクタ部品10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0073】
図17に示すように、インダクタ部品10Bの各導体パターン41において、導体パターン41Aの厚みT1は、導体パターン41Bの厚みT2より大きい。前記とは逆に、導体パターン41Bの厚みT2が導体パターン41Aの厚みT1より大きくてもよい。インダクタ部品10Aの各導体パターン41では、導体パターン41Aの幅W1は、導体パターン41Bの幅W2と同じであるが、異なっていてもよい。
【0074】
第3実施形態によれば、インダクタ部品10Bの製造工程において、導体パターン41A、41Bのうち、より厚い導体パターンを先に積層することによって、製造されたインダクタ部品10Bの導体パターン41の積層構造を安定化することができる。
【0075】
第3実施形態では、複数の導体パターン41の全てにおいて厚みT1が厚みT2より大きい例が説明されている。しかし、複数の導体パターン41のうちの一部において厚みT1が厚みT2より大きく、複数の導体パターン41のうちの当該一部を除く導体パターン41において、厚みT1が厚みT2より小さくてもよい。
【0076】
第3実施形態では、複数の導体パターン41の全てにおいて、厚みT1と厚みT2とが異なる例が説明されている。しかし、複数の導体パターン41のうちの一部において厚みT1と厚みT2とが異なっており、複数の導体パターン41のうちの当該一部を除く導体パターン41において厚みT1と厚みT2とが同じまたは略同じであってもよい。
【0077】
<第4実施形態>
図18は、本開示の第4実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図である。第4実施形態に係るインダクタ部品10Cが第1実施形態に係るインダクタ部品10と異なることは、導体パターン41Aの中心C1が導体パターン41Bの中心C2に対してずれている方向が一定ではないことである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るインダクタ部品10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0078】
インダクタ部品10Cでは、複数の導体パターン41の一部の導体パターンにおいて、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して第1方向にずれている。また、インダクタ部品10Cでは、前記の複数の導体パターン41の一部とは異なる導体パターン41の少なくとも1つにおいて、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して第2方向にずれている。第2方向は、第1方向と異なる方向である。
【0079】
例えば、図18に示すように、インダクタ部品10Cでは、導体パターン411、414、417において、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して、右側面26側にずれている。また、導体パターン413において、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して、左側面25側にずれている。また、導体パターン412、415において、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して、コイル導体40の径方向102の内側にずれている。また、導体パターン416において、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して、コイル導体40の径方向102の外側にずれている。
【0080】
つまり、インダクタ部品10Cでは、7つの導体パターン411~417において、導体パターン41Aの中心C1が導体パターン41Bの中心C2に対してずれる方向は4種類である。この場合、4種類の方向(右側面26側の方向、左側面25側の方向、コイル導体40の径方向102の内側の方向、コイル導体40の径方向102の外側の方向)のうちの1種類が第1方向に相当し、他の3種類のいずれかが第2方向に相当する。
【0081】
インダクタ部品10Cにおいて、導体パターン41Aの中心C1の導体パターン41Bの中心C2に対する位置ずれの態様は、図18に示す態様に限らない。
【0082】
例えば、図18では、インダクタ部品10Cにおいて、導体パターン41Aの中心C1が導体パターン41Bの中心C2に対してずれる方向は4種類であるが、当該方向は2種類や3種類或いは5種類以上であってもよい。
【0083】
また、前記の位置ずれの態様は、図18に示すようにランダムであってもよいし、図18とは異なって一定の法則性を有していてもよい。一定の法則性を有する態様は、例えば、以下のような態様である。導体パターン411、413、415、417において、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して右側面26側にずれている。一方、導体パターン412、414、416において、導体パターン41Aの中心C1は導体パターン41Bの中心C2に対して左側面25側にずれている。
【0084】
全ての導体パターン41において導体パターン41Aの中心C1が導体パターン41Bの中心に対して同じ方向にずれている構成の場合、インダクタ部品において生じる内部応力に偏りが生じるおそれがある。第4実施形態によれば、導体パターン41Aの中心C1が導体パターン41Bの中心C2に対して複数の方向にずれている。これにより、インダクタ部品10Cにおいて、導体パターン41Aに基づいて生じる内部応力と、導体パターン41Bに基づいて生じる内部応力とが相殺され得る。その結果、インダクタ部品10Cにおいて生じる内部応力の偏りを低減することができる。
【0085】
<第5実施形態>
図19は、本開示の第5実施形態に係るインダクタ部品における図1のA-A断面に対応する断面を示す模式断面図である。第5実施形態に係るインダクタ部品10Dが第1実施形態に係るインダクタ部品10と異なることは、コイル導体40の軸方向の両端部に位置する導体パターンが当該導体パターンと隣接する導体パターンよりも、コイル導体40の径方向外側に位置することである。以下、第1実施形態との相違点が説明される。第1実施形態に係るインダクタ部品10との共通点については、同一の符号が付された上で、その説明は原則省略され、必要に応じて説明される。
【0086】
図19に示すように、インダクタ部品10Dでは、導体パターン411、417がコイル導体40の軸方向101の両端部に位置する。つまり、図19に示すインダクタ部品10Dでは、導体パターン411、417が、両端導体パターンに相当する。
【0087】
導体パターン411が備える導体パターン41Aと、導体パターン417が備える導体パターン41Bとは、コイル導体40における軸方向101の最も外側に位置する。導体パターン411において、導体パターン41Bは導体パターン41Aよりもコイル導体40の軸方向101の内側に位置する。導体パターン417において、導体パターン41Aは導体パターン41Bよりもコイル導体40の軸方向101の内側に位置する。以上より、図19に示すインダクタ部品10Dでは、導体パターン411が備える導体パターン41Aと、導体パターン417が備える導体パターン41Bとが、第1導体パターンに相当する。また、図19に示すインダクタ部品10Dでは、導体パターン411が備える導体パターン41Bと、導体パターン417が備える導体パターン41Aとが、第2導体パターンに相当する。
【0088】
導体パターン411が備える導体パターン41Aの中心C3は、導体パターン411が備える導体パターン41Bの中心C4よりも、コイル導体40の径方向102の外側に位置している。導体パターン417が備える導体パターン41Bの中心C5は、導体パターン417が備える導体パターン41Aの中心C6よりも、コイル導体40の径方向102の外側に位置している。つまり、両端導体パターンが備える第1導体パターンの中心は、両端導体パターンが備える第2導体パターンの中心よりもコイル導体40の径方向102の外側に位置している。
【0089】
コイル導体40において発生する磁束103は、コイル導体40の軸方向101の両端部の一方(図19に示す構成では導体パターン417付近)において、コイル導体40の径方向102に広がりつつ、コイル導体40の内部から外部へ軸方向101に進む。コイル導体40において発生する磁束103は、コイル導体40の軸方向101の両端部の他方(図19に示す構成では導体パターン411付近)において、コイル導体40の径方向102に狭まりつつ、コイル導体40の外部から内部へ軸方向101に進む。
【0090】
第5実施形態によれば、導体パターン411、417がコイル導体40の軸方向101の端部に位置している。この場合、導体パターン411において、軸方向101の外側に位置する導体パターン41Aの中心C3は、軸方向101の内側に位置する導体パターン41Bの中心C4よりもコイル導体40の径方向102の外側に位置している。導体パターン417において、軸方向101の外側に位置する導体パターン41Bの中心C5は、軸方向101の内側に位置する導体パターン41Aの中心C6よりもコイル導体40の径方向102の外側に位置している。これにより、コイル導体40の内部から外部へ進む磁束103や、コイル導体の外部から内部へ進む磁束103が、導体パターン411の導体パターン41Aや導体パターン417の導体パターン41Bによって遮蔽されることを低減することができる。その結果、インダクタ部品10DのL値の取得効率を上げることができる。
【0091】
<変形例>
前述した各実施形態では、コイル導体40の軸方向101が実装面に対して平行である例、つまり、コイル導体40が横巻である例が説明されているが、コイル導体40は横巻に限らない。例えば、コイル導体40の軸方向101が実装面に対して垂直であってもよい。つまり、コイル導体40は、いわゆる縦巻であってもよい。
【0092】
前述した各実施形態では、外部電極31、32の各々がL字形状を有する例が説明されているが、外部電極31、32の形状はL字形状に限らない。
【0093】
例えば、外部電極31、32の各々は、素体2の下面22にのみ設けられていてもよい。
【0094】
また、例えば、外部電極31が素体2の左部を覆い、外部電極32が素体2の右部を覆うように設けられていてもよい。具体的には、外部電極31は、左側面25の全面と、左側面25の縁部から上面21、下面22、前側面23、及び後側面24の各々へ延設した部分とで構成されていてもよい。外部電極32は、右側面26の全面と、右側面26の縁部から上面21、下面22、前側面23、及び後側面24の各々へ延設した部分とで構成されていてもよい。
【0095】
以上説明したインダクタ部品は、以下のようにも表現することができる。
【0096】
(1) 本開示の一態様のインダクタ部品は、
絶縁体で構成された素体と、
前記素体の内部に設けられたコイル導体と、を備え、
前記コイル導体は、前記コイル導体の軸方向に間隔を空けて並ぶ複数の仮想内面の各々に環状の軌道の一部を形成するように設けられた複数の導体パターンと、前記複数の導体パターンのうち隣り合う2つの導体パターンを電気的に接続する接続導体と、を備え、
前記複数の導体パターンのうち少なくとも1つの導体パターンは、前記軸方向に並び且つ互いに接触した第1導体パターン及び第2導体パターンを備え、
前記コイル導体の軸を含む断面において、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心と異なる位置にある。
【0097】
(2) (1)のインダクタ部品において、
前記軸を含む断面において、前記第1導体パターンにおける前記コイル導体の径方向に沿った長さである前記第1導体パターンの幅は、前記第2導体パターンにおける前記径方向に沿った長さである前記第2導体パターンの幅と同じであってもよい。
【0098】
(3) (1)のインダクタ部品において、
前記軸を含む断面において、前記第1導体パターンにおける前記コイル導体の径方向に沿った長さである前記第1導体パターンの幅は、前記第2導体パターンにおける前記径方向に沿った長さである前記第2導体パターンの幅と異なっていてもよい。
【0099】
(4) (1)から(3)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記第1導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第1導体パターンの厚みは、前記第2導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第2導体パターンの厚みと同じであってもよい。
【0100】
(5) (1)から(3)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記第1導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第1導体パターンの厚みは、前記第2導体パターンにおける前記軸方向に平行な長さである前記第2導体パターンの厚みと異なっていてもよい。
【0101】
(6) (1)から(5)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記複数の導体パターンのうち少なくとも2つの導体パターンは、前記軸方向のうち一方の方向に位置する前記第1導体パターン、及び前記軸方向のうち他方の方向に位置する前記第2導体パターンを備えていてもよく、
前記少なくとも2つの導体パターンの全てにおいて、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心に対して同じ方向にずれていてもよい。
【0102】
(7) (1)から(5)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記複数の導体パターンのうち少なくとも2つの導体パターンは、前記軸方向のうち一方の方向に位置する前記第1導体パターン、及び前記軸方向のうち他方の方向に位置する前記第2導体パターンを備えていてもよく、
前記少なくとも2つの導体パターンのうち一部の導体パターンにおいて、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心に対して第1方向にずれていてもよく、
前記少なくとも2つの導体パターンのうち前記一部の導体パターン以外の導体パターンの少なくとも1つにおいて、前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心に対して前記第1方向とは異なる第2方向にずれていてもよい。
【0103】
(8) (1)から(7)のいずれか1つのインダクタ部品において、
前記複数の導体パターンのうち前記コイル導体の前記軸方向の両端部に位置する2つの両端導体パターンにおいて、前記両端導体パターンが備える前記第1導体パターンは、前記コイル導体における前記軸方向の最も外側に位置してもよく、前記両端導体パターンが備える前記第2導体パターンは、前記両端導体パターンが備える前記第1導体パターンよりも前記軸方向の内側に位置してもよく、
前記両端導体パターンが備える前記第1導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心は、前記両端導体パターンが備える前記第2導体パターンの前記軸方向に直交する方向の中心よりも前記コイル導体の径方向の外側に位置していてもよい。
【0104】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0105】
本発明は、適宜図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0106】
10 インダクタ部品
20 素体
20A 仮想内面
40 コイル導体
41 導体パターン
411 導体パターン(両端導体パターン)
417 導体パターン(両端導体パターン)
41A 導体パターン(第1導体パターン)
41B 導体パターン(第2導体パターン)
42 接続導体
101 軸方向
102 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19