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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175507
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】原子炉および原子炉の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20241211BHJP
   G21C 7/00 20060101ALI20241211BHJP
   G21C 7/28 20060101ALI20241211BHJP
   G21C 7/08 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21C7/00 200
G21C7/28
G21C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093341
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】小池 武史
(57)【要約】
【課題】原子炉および原子炉の制御方法において、原子炉における効率の向上を図る。
【解決手段】核燃料から構成される炉心と、炉心の外側に配置されて中性子を反射する中性子反射部と中性子を吸収する中性子吸収部とが設けられる制御部を有する反応度制御装置と、を備え、中性子反射部は、炉心の外側に対向して配置され、中性子吸収部は、炉心に対向しない第1位置と、炉心と前記中性子反射部との間に位置する第2位置との間で移動可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料から構成される炉心と、
前記炉心の外側に配置されて中性子を反射する中性子反射部と中性子を吸収する中性子吸収部とが設けられる制御部を有する反応度制御装置と、
を備え、
前記中性子反射部は、前記炉心の外側に対向して配置され、
前記中性子吸収部は、前記炉心に対向しない第1位置と、前記炉心と前記中性子反射部との間に位置する第2位置との間で移動可能である、
原子炉。
【請求項2】
前記第1位置は、前記中性子吸収部が前記中性子反射部に隠れて前記炉心に対向しない位置である、
請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
前記炉心は、外形が多角形状をなし、前記中性子反射部は、多角形状をなす前記炉心の複数の平面部に対向して配置される、
請求項1または請求項2に記載の原子炉。
【請求項4】
前記中性子反射部は、多角形状をなす前記炉心の複数の平面部に対向して複数配置され、前記中性子吸収部は、複数の前記中性子反射部に対応して複数設けられる、
請求項3に記載の原子炉。
【請求項5】
前記中性子吸収部は、前記第2位置と、前記第2位置に対して前記炉心の周方向に隣接する前記中性子反射部に隠れて前記炉心に対向しない前記第1位置との間で移動可能である、
請求項4に記載の原子炉。
【請求項6】
前記第1位置と前記第2位置との間で前記中性子吸収部を移動自在に案内するレールが設けられる、
請求項4に記載の原子炉。
【請求項7】
核燃料から構成される炉心の外側に対向する中性子反射部と中性子吸収部とを有する制御部が配置される原子炉において、
前記制御部により前記中性子吸収部を前記炉心に対向しない第1位置と前記炉心と前記中性子反射部との間に位置する第2位置との間で移動することで前記炉心の反応度を制御する、
原子炉の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉および原子炉の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電システムは、核燃料を格納した原子炉を有する。原子力発電システムは、原子炉で核燃料により核反応を生じさせ、発生した熱を外部に取り出して冷媒を加熱する。加熱された冷媒は、タービンを駆動回転することで発電機により発電を行う。このような原子力発電システムとしては、特許文献1,2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-63014号公報
【特許文献2】特開2022-61791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子炉は、反応度制御装置が設けられる。従来の原子炉は、核燃料が円形をなし、反応度制御装置として、核燃料の外側に複数の制御部が設けられて構成される。制御部は、円形をなして回転自在に支持され、周方向の一部に中性子吸収部が設けられる。制御部が回転し、中性子吸収部が核燃料に接近すると核燃料の反応度が下がり、中性子吸収部が核燃料から離反すると核燃料の反応度が上がる。この場合、制御部の中性子吸収部が核燃料から離反したとき、核燃料の反応度が上がるものの、一部の中性子が漏洩して効率が低下してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、原子炉における効率の向上を図る原子炉および原子炉の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の原子炉は、核燃料から構成される炉心と、前記炉心の外側に配置されて中性子を反射する中性子反射部と中性子を吸収する中性子吸収部とが設けられる制御部を有する反応度制御装置と、を備え、前記中性子反射部は、前記炉心の外側に対向して配置され、前記中性子吸収部は、前記炉心に対向しない第1位置と、前記炉心と前記中性子反射部との間に位置する第2位置との間で移動可能である。
【0007】
また、本開示の原子炉の制御方法は、核燃料から構成される炉心の外側に対向する中性子反射部と中性子吸収部とを有する制御部が配置される原子炉において、前記制御部により前記中性子吸収部を前記炉心に対向しない第1位置と前記炉心と前記中性子反射部との間に位置する第2位置との間で移動することで前記炉心の反応度を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の原子炉および方法によれば、原子炉における効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の原子力発電システムを表す概略図である。
図2図2は、本実施形態の原子炉を表す縦断面図である。
図3図3は、原子炉を表す水平断面図である。
図4図4は、制御部の詳細を表す概略図である。
図5図5は、制御部の作動を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<原子力発電システム>
図1は、本実施形態の原子力発電システムを表す概略図である。
【0012】
図1に示すように、原子力発電システム100は、原子炉ユニット101と、熱交換器102と、冷媒循環経路103と、タービン104と、発電機105と、冷却器106と、圧縮機107とを有する。
【0013】
原子炉ユニット101は、原子炉容器111と、原子炉112と、熱伝導部113とを有する。原子炉容器111は、内部に原子炉112が格納される。原子炉容器111は、原子炉112を密閉状態で格納する。原子炉容器111は、内部に配置される原子炉112が格納または取り出せるように、例えば、蓋である開閉部が設けられる。原子炉容器111は、原子炉112で核反応が生じて内部が高温、高圧になった場合でも、密閉状態を維持することができる。原子炉容器111は、中性子線の遮へい性能を有する材料により形成される。
【0014】
原子炉112は、核燃料を格納する。原子炉112は、核燃料により核反応を生じさせ、熱を発生させる。熱伝導部113は、原子炉112で発生した熱を熱交換器102に伝える。なお、原子炉112と熱伝導部113の詳細は、後述する。
【0015】
熱交換器102は、原子炉ユニット101を構成する原子炉112との間で熱交換を行う。熱交換器102は、原子炉ユニット101を構成する熱伝導部113を介して原子炉112の熱を回収する。
【0016】
冷媒循環経路103は、冷媒を循環させる経路である。冷媒循環経路103は、熱交換器102とタービン104と冷却器106と圧縮機107とを接続する。冷媒循環経路103を流れる冷媒は、熱交換器102、タービン104、冷却器106、圧縮機107の順で流れ、圧縮機107を通過した冷媒は、熱交換器102に戻れる。熱交換器102は、熱伝導部113と冷媒循環経路103を流れる冷媒との間で熱交換を行う。すなわち、冷媒循環経路103を流れる冷媒は、熱伝導部113により加熱され、熱伝導部113は、冷媒により冷却される。
【0017】
タービン104は、熱交換器102を通過した冷媒が供給される。タービン104は、加熱された冷媒のエネルギーにより回転する。タービン104は、冷媒のエネルギーを回転エネルギーに変換して、冷媒からエネルギーを吸収する。
【0018】
発電機105は、タービン104と同軸上に連結されている。発電機105は、タービン104と一体に回転する。発電機105は、タービン104の回転力により回転することで発電を行う。
【0019】
冷却器106は、タービン104を通過した冷媒を冷却する。冷却器106は、チラーや冷媒を一時的に液化する場合、復水器等である。
【0020】
圧縮機107は、冷却器106を通過した冷媒を圧縮する。圧縮機107は、冷媒を加圧するポンプとして機能する。
【0021】
原子炉112の核燃料の反応により生じた熱は、熱伝導部113を介して熱交換器102に伝えられる。冷媒循環経路103を流れる冷媒は、圧縮機107により圧縮された後、熱交換器102に供給される。熱交換器102は、熱伝導部113の熱により冷媒循環経路103を流れる冷媒を加熱する。つまり、冷媒は、熱交換器102により熱を吸収して昇温されることで、原子炉112で発生した熱は、冷媒により回収される。
【0022】
タービン104は、圧縮機107により圧縮され、熱交換器102により加熱された冷媒が供給される。タービン104は、供給された冷媒により駆動回転し、発電機105を駆動することで、発電機105が発電を行う。タービン104を回転させた冷媒は、冷却器106で基準温度まで冷却された後、圧縮機58に供給される。
【0023】
原子力発電システム100は、原子炉112から取り出された熱を熱伝導部113により冷媒に伝道し、高温高圧の冷媒によりタービン104を駆動して発電機105による発電を行う。そのため、原子炉112とタービン104を駆動回転する媒体となる冷媒とを隔離することができ、タービン104を駆動回転する媒体が放射能汚染されるおそれを低減することができる。
【0024】
<原子炉>
図2は、本実施形態の原子炉を表す縦断面図、図3は、原子炉を表す水平断面図である。
【0025】
図2および図3に示すように、原子炉ユニット101は、原子炉容器111と、原子炉112と、熱伝導部113とを有する。原子炉112は、原子炉容器111の内部に格納され、熱伝導部113が設けられる。熱伝導部113は、原子炉112で発生した熱を外部に取り出す。
【0026】
原子炉112は、炉心11と、遮へい部12と、熱伝導体(熱伝導部113)13と、反応度制御装置14とを有する。原子炉112は、円柱形状をなし、縦型なして配置される。すなわち、原子炉112は、中心軸Oが鉛直方向に沿って配置される。
【0027】
<炉心>
炉心11は、中心軸Oを中心とした全体として多角柱形状(本実施形態では、六角柱形状)をなすように形成される。炉心11は、複数(本実施形態では、6個)の燃料ブロック21を有する。燃料ブロック21は、核燃料であり、同形状をなす。炉心11は、複数の燃料ブロック21が周方向に沿って配置されることで、軸方向(中心軸Oに沿った方向)に長い環状をなす。すなわち、炉心11は、外形が多角形状(六角形状)をなし、複数の燃料ブロック21は、外形が三角形状をなす。但し、炉心11の形状は、六角形状に限るものではなく、多角形状や円形状であってもよい。
【0028】
炉心11は、中心軸Oが位置する中心部に第1空間部22が設けられる。第1空間部22は、円柱形状をなす。また、炉心11は、複数の燃料ブロック21間に複数(本実施形態では、6個)の第2空間部23が設けられる。複数の第2空間部23は、直方体形状をなし、それぞれ同形状をなす。複数の第2空間部23は、第1空間部22の外周部から放射状をなして配置される。すなわち、第2空間部23は、炉心11の径方向に沿って配置され、軸方向および径方向(中心軸Oに直交する方向)に長く、周方向(幅方向)に短い形状をなす。但し、炉心11は、第2空間部23を有して複数の燃料ブロック21から構成されるものに限るものではなく、第2空間部23を有しない一体の角筒形状や円筒形状であってもよい。また、炉心11は、第1空間部22を有する筒形状に限るものではなく、第1空間部22を有しない角柱形状や円柱形状であってもよい。
【0029】
なお、炉心11(燃料ブロック21)は、図示しないが、核燃料(放射性物質)と、支持体とを含む。支持体は、炉心11の全域に配置される。支持体は、軸方向に沿って複数の穴部が設けられる。穴部は、例えば、円柱形状をなす。支持体は、減速材を含んでいてもよい。減速材として、例えば、グラフェン、黒鉛等を用いることができる。核燃料は、支持体の穴部に配置される。核燃料は、支持体の穴部の形状に対応しており、円柱形状をなす。核燃料は、軸方向に連続する棒形状であってもよいし、軸方向に不連続なペレット形状であってもよい。核燃料は、核分裂性物質としてウラン(例えば、ウラン235)やプルトニウム(例えば、プルトニウム239、241)、トリウムなどを用いることができる。
【0030】
<遮へい部>
遮へい部12は、炉心11の周囲を覆うように配置される。遮へい部12は、金属ブロックからなり、炉心11を構成する核燃料から照射される放射線(中性子)を反射することで、外部への放射線の漏洩を抑制する。遮へい部12は、使用する材料の中性子散乱および中性子吸収の能力に応じて反射体と呼ばれることがある。
【0031】
遮へい部12は、胴体31と、底部32と、蓋部33とを有する。胴体31は、円筒形状をなし、炉心11の径方向の外側に配置される。すなわち、胴体31は、炉心11の外周部を取り囲むように被覆する。底部32は、円板形状をなし、胴体31の軸方向の一方側に配置される。すなわち、底部32は、炉心11の下部を塞ぐように被覆する。蓋部33は、円板形状をなし、胴体31の軸方向の他方側に配置される。すなわち、蓋部33は、炉心11の上部を塞ぐように被覆する。なお、遮へい部12は、内部に炉心11を収容するにあたり、内部の酸化を防止する目的から、密閉構造とした内部に、例えば、窒化ガス等の不活性ガスを充填するとよい。
【0032】
<熱伝導体>
熱伝導体13は、熱伝導部113を構成する。すなわち、熱伝導体13は、炉心11で発生した熱を熱交換器102(図1参照)に伝導する。熱伝導体13は、炉心11を軸方向に貫通するように配置される。熱伝導体13は、長手方向の一端部が遮へい部12の蓋部33を貫通して外部に延出される。熱伝導体13は、炉心11の核燃料の核反応により生じる熱を遮へい部12の外部に伝える。
【0033】
熱伝導体13は、例えば、伝熱管41を有する。伝熱管41は、内部に冷媒(例えば、二酸化炭素)が充填され、冷媒が流動可能である。伝熱管41は、例えば、U字形状をなし、炉心11の内部に配置され、一端部と他端部が遮へい部12(蓋部33)を貫通して外部に延出される。冷媒は、伝熱管41の一端部から供給され、炉心11の内部を流れた後、伝熱管41の他端部から外部に排出される。このとき、冷媒は、炉心11の核燃料の核反応により生じる熱により加熱され、熱を外部に取り出す。
【0034】
炉心11は、中心部、つまり、6個の燃料ブロック21の内側に第1空間部22が設けられ、6個の燃料ブロック21における周方向の隙間に6個の第2空間部23が設けられる。伝熱管41は、第1空間部22や第2空間部23に多数配置されることが好ましい。また、伝熱管41は、第1空間部22や第2空間部23だけではなく、複数の燃料ブロック21の外側に周方向に間隔を空けて配置されていてもよい。すなわち、複数の伝熱管41を、各燃料ブロック21の周囲を取り囲むように配置されていてもよい。さらに、熱伝導体13を、例えば、固体熱伝導部材として、複数の燃料ブロック21を軸方向に貫通するように設けてもよい。
【0035】
なお、炉心11(燃料ブロック21)は、板形状をなす複数の燃料板が軸方向に積層されて構成されていてもよい。また、遮へい部12は、板形状をなす複数の遮へい板が軸方向に積層されて構成されていてもよい。この場合、リング形状をなす燃料板の外周側にリング形状をなす遮へい板が配置される。そして、リング状に配置された燃料板および遮へい板が板厚方向に複数配置される。
【0036】
さらに、熱伝導部113として、板形状をなす複数の熱伝導板を軸方向に積層して設けてもよい。この場合、リング状に配置された燃料板および遮へい板とリング形状をなす熱伝導板が板厚方向に交互に積層配置される。熱伝導板は、外径が遮へい板の外径より大きく、炉心11の核燃料の核反応により生じる熱を径方向の外方に取り出す。なお、熱伝導板は、例えば、チタン、ニッケル、銅、グラファイトを用いることができる。グラファイトは、特に、グラフェンを用いることができる。グラフェンは、炭素原子とその結合からできた六角形格子が連続した構造であり、六角形格子の連続した方向を熱の伝達方向とすることで、熱伝達効率を向上できる。
【0037】
<反応度制御装置>
反応度制御装置14は、遮へい部12に配置される。反応度制御装置14は、炉心11の周囲を取り囲むように配置される。反応度制御装置14は、複数(本実施形態では、6個)の制御部51を有する。但し、制御部51の数は限定されない。複数の制御部51は、炉心11の外側で、周方向に間隔(好ましくは、均等間隔)を空けて配置される。複数の制御部51は、炉心11を構成する複数の燃料ブロック21の外側に対向して配置される。
【0038】
制御部51は、炉心11の軸方向に沿って配置される。制御部51は、炉心11とほぼ同等の長さを有する。制御部51は、中性子反射部52と、中性子吸収部53とを有する。中性子反射部52は、炉心11構成する複数の燃料ブロック21の外側に対向して配置される。中性子吸収部53は、炉心11(燃料ブロック21)に対向しない第1位置と、炉心11(燃料ブロック21)と中性子反射部52との間に位置する第2位置との間で移動可能である。中性子反射部52は、酸化ベリリウム(BeO)を用いることができる。但し、中性子反射部52は、酸化ベリリウムに限らず、例えば、(NgO)などを用いることもできる。中性子吸収部53は、例えば、ボロンカーバイト(BC)を用いることができる。ここで、中性子反射部52は、中性子吸収部53や遮へい部12よりも中性子反射性能が高い。中性子吸収部53は、中性子反射部52や遮へい部12よりも中性子吸収性能が高い。
【0039】
制御部51は、中性子吸収部53が移動することで、炉心11(燃料ブロック21)に対向する部材が中性子反射部52と中性子吸収部53との間で切替る。すなわち、中性子吸収部53が第1位置に位置すると、炉心11(燃料ブロック21)に対して中性子反射部52が対向し、中性子吸収部53が第2位置に位置すると、炉心11(燃料ブロック21)に対して中性子吸収部53が対向する。
【0040】
中性子反射部52は、炉心11(燃料ブロック21)の外側に対向するように遮へい部12に固定される。一方、中性子吸収部53は、遮へい部12に移動自在に支持される。中性子吸収部53は、軸方向の一端部に連結部54が連結される。連結部54は、遮へい部12の蓋部33を貫通し、一端部が中性子吸収部53の一端部に連結され、他端部が遮へい部12の外側に延出される。駆動部55は、原子炉112の外部に配置される。駆動部55は、複数の連結部54の他端部が連結される。駆動部55は、複数の連結部54を介して複数の中性子吸収部53を移動可能である。
【0041】
反応度制御装置14は、制御装置56を有する。制御装置56は、駆動部55に接続される。制御装置56は、駆動部55を駆動制御することで、複数の中性子吸収部53の移動位置を制御可能である。なお、制御装置56は、例えば、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む演算処理装置などにより実現される。
【0042】
<制御部>
図4は、制御部の詳細を表す概略図、図5は、制御部の作動を表す概略図である。
【0043】
図4に示すように、反応度制御装置14は、複数の制御部51を有する。制御部51は、炉心11の外側で、三角形状をなす燃料ブロック21における径方向の外側の平面部21aに対向して配置される。具体的に、制御部51は、中性子反射部52と、中性子吸収部53とを有する。中性子反射部52は、燃料ブロック21の平面部21aに対向して配置される。中性子吸収部53は、燃料ブロック21の平面部21aに対向しない第1位置と、燃料ブロック21の平面部21aと中性子反射部52との間に位置する第2位置との間で移動可能である。
【0044】
中性子反射部52は、燃料ブロック21の平面部21aに対して所定隙間を空けて配置される。中性子反射部52は、外形が三角形状をなし、燃料ブロック21の平面部21aに対向する1個の平面部52aと、燃料ブロック21の平面部21aに対向しない2個の平面部52b,52cとを有する。制御部51は、第1位置と第2位置との間で中性子吸収部53を移動自在に案内するレール61が設けられる。レール61は、燃料ブロック21と中性子反射部52の間で平面部21aと平面部52aとが対向する位置(隙間)から、周方向に隣接する中性子反射部52の平面部52bが対向する位置まで、直線をなして配置される。なお、レール61は、例えば、上下一対をなし、下レールが遮へい部12の底部32に設けられ、上レールが遮へい部12の蓋部33に設けられる。
【0045】
中性子吸収部53は、レール61に沿って移動自在に支持される。すなわち、中性子吸収部53は、レール61により第1位置と第2位置との間で移動自在に支持される。ここで、中性子吸収部53の第1位置は、中性子吸収部53が中性子反射部52の平面部52bに対向する位置であり、中性子吸収部53が第1位置に位置するとき、中性子吸収部53は、中性子反射部52の裏側に隠れて炉心11(燃料ブロック21)に対向しない。一方、図5に示すように、中性子吸収部53の第2位置は、中性子吸収部53が燃料ブロック21の平面部21aと中性子反射部52の平面部52aとに対向する位置であり、中性子吸収部53が第2位置に位置するとき、中性子吸収部53は、炉心11(燃料ブロック21)に対向し、中性子反射部52は、中性子吸収部53の裏側に隠れて炉心11(燃料ブロック21)に直接対向しない。
【0046】
反応度制御装置14は、炉心11に対する中性子吸収部53の位置を調整可能である。中性子反射部52は、三角形状をなし、中性子吸収部53は平板形状をなす。すなわち、中性子反射部52の厚さは、中性子吸収部53の厚さより厚い。但し、中性子反射部52は、三角形状に限らず、中性子吸収部53のような平板形状であってもよい。中性子反射部52は、平板形状であっても、厚さが中性子吸収部53の厚さより厚いことが好ましい。
【0047】
図4に示すように、中性子吸収部53が中性子反射部52に隠れて燃料ブロック21に対向しない第1位置にあるとき、中性子反射部52は、燃料ブロック21に対向する。このとき、燃料ブロック21から外側に放出された中性子は、中性子反射部52により反射して燃料ブロック21に戻され、核分裂に寄与する。そのため、炉心11を構成する核燃料の反応度が上がる。一方、図5に示すように、中性子吸収部53が燃料ブロック21と中性子反射部52との間で燃料ブロック21に対向する第2位置にあるとき、中性子反射部52は、燃料ブロック21に直接対向しない。このとき、燃料ブロック21から外側に放出された中性子は、中性子吸収部53により吸収されて燃料ブロック21には戻されず、核分裂に寄与しない。そのため、炉心11を構成する核燃料の反応度が下がる。
【0048】
反応度制御装置14は、制御部51を構成する中性子吸収部53を移動することで、炉心11に対する中性子反射部52が対向する面積を増減させ、炉心11の核燃料の反応度を制御することができ、炉心11の温度を制御することができる。ここで、炉心11の温度は、熱伝導体13により遮へい部12の外部に取り出される炉心平均温度である。
【0049】
すなわち、図2および図3に示すように、制御装置56は、炉心11の温度を取得することができる。制御装置56は、複数の制御部51を構成する中性子吸収部53を移動して位置を制御し、中性子吸収部53を炉心11に対して離反させ、中性子反射部52を炉心11に対向させる。すると、炉心11の反応度が上がり、原子炉112は運転を開始する。一方、制御装置56は、複数の制御部51を構成する中性子吸収部53を移動して位置を制御し、中性子吸収部53を炉心11に対して接近させ、中性子反射部52を炉心11に対向させない。すると、炉心11の反応度が下がり、原子炉112は運転を停止する。
【0050】
<原子炉の制御方法>
図1および図2図3に示すように、原子炉112にて、制御装置56は、炉心11の温度に応じて反応度制御装置14を構成する複数の制御部51における中性子吸収部53の移動位置を制御する。すなわち、中性子吸収部53を移動し、中性子反射部52を炉心11に対して対向させて炉心11の反応度を上げたり、中性子吸収部53を炉心11に対向させて炉心11の反応度が下げたりする。すなわち、中性子吸収部53を第1位置に移動し、中性子反射部52が燃料ブロック21に対向するように位置させ、中性子吸収部53が燃料ブロック21に対向しないように位置させる。すると、燃料ブロック21から放出された中性子が中性子反射部52に反射して燃料ブロック21に戻される。そのため、燃料ブロック21から放出された中性子の外部漏洩が抑制され、発生した中性子を有効利用して核分裂に寄与させることができる。
【0051】
炉心11の核燃料の核反応により生じた熱は、熱伝導体13(伝熱管41)により遮へい部12の外部に取り出される。遮へい部2の外部に取り出された熱は、熱交換器102により冷媒に伝達され、冷媒によりタービン104が回転し、発電機105による発電が行われる。
【0052】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る原子炉は、核燃料から構成される炉心11と、炉心11の外側に配置されて中性子を反射する中性子反射部52と中性子を吸収する中性子吸収部53とが設けられる制御部51を有する反応度制御装置14とを備え、中性子反射部52は、炉心11の外側に対向して配置され、中性子吸収部53は、炉心11に対向しない第1位置と、炉心と中性子反射部と52の間に位置する第2位置との間で移動可能である。
【0053】
第1の態様に係る原子炉によれば、原子炉112の運転時、制御部51により中性子吸収部53を第1位置に移動して中性子反射部52を炉心11に対向させることで、炉心11の核燃料から放出された中性子は、中性子反射部52に反射して炉心11に戻される。そのため、炉心11で発生した中性子の外部漏洩が抑制され、発生した中性子を有効利用することができ、原子炉112における効率の向上を図ることができる。
【0054】
第2の態様に係る原子炉は、第1の態様に係る原子炉であって、さらに、第1位置は、中性子吸収部53が中性子反射部52に隠れて炉心11に対向しない位置である。これにより、中性子反射部52が第1位置に位置するとき、炉心11に対する中性子反射部52の影響力を効果的に減少させることができる。
【0055】
第3の態様に係る原子炉は、第1の態様または第2の態様に係る原子炉であって、さらに、炉心11は、外形が多角形状をなし、中性子反射部52は、多角形状をなす炉心11の複数の平面部21aに対向して配置される。これにより、炉心11の核燃料から径方向の外方に放出された中性子を中性子反射部52により適切に反射して炉心11に戻すことができる。
【0056】
第4の態様に係る原子炉は、第3の態様に係る原子炉であって、さらに、中性子反射部52は、多角形状をなす炉心11の複数の平面部21aに対向して複数配置され、中性子吸収部53は、複数の中性子反射部52に対応して複数設けられる。これにより、炉心11の各平面部21aに対してそれぞれ中性子反射部52と中性子吸収部53を効果的に配置することができる。
【0057】
第5の態様に係る原子炉は、第2の態様に係る原子炉であって、さらに、中性子吸収部53は、第2位置と、第2位置に対して炉心11の周方向に隣接する中性子反射部52に隠れて炉心11に対向しない第1位置との間で移動可能である。これにより、中性子吸収部53の移動経路(レール61)を容易に確保することができると共に、構成を簡素化することができる。
【0058】
第6の態様に係る原子炉は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る原子炉であって、さらに、第1位置と第2位置との間で中性子吸収部を移動自在に案内するレール61が設けられる。これにより、中性子吸収部53のレール61を用いて容易に移動することができる。
【0059】
第7の態様に係る原子炉の制御方法は、核燃料から構成される炉心11の外側に対向する中性子反射部52と中性子吸収部53とを有する制御部51が配置される原子炉112において、制御部51により中性子吸収部53を炉心11に対向しない第1位置と炉心11と中性子反射部52との間に位置する第2位置との間で移動することで炉心11の反応度を制御する。これにより、原子炉112の運転時、制御部51により中性子吸収部53を第1位置に移動して中性子反射部52を炉心11に対向させることで、炉心11の核燃料から放出された中性子は、中性子反射部52に反射して炉心11に戻される。そのため、炉心11で発生した中性子の外部漏洩が抑制され、発生した中性子を有効利用することができ、原子炉112における効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
11 炉心
12 遮へい部
13 熱伝導体
14 反応度制御装置
21 燃料ブロック
22 第1空間部
23 第2空間部
31 胴体
32 底部
33 蓋部
41 伝熱管
51 制御部
52 中性子反射部
53 中性子吸収部
54 連結部
55 駆動部
56 制御装置
100 原子力発電システム
101 原子炉ユニット
102 熱交換器
103 冷媒循環経路
104 タービン
105 発電機
106 冷却器
107 圧縮機
111 原子炉容器
112 原子炉
113 熱伝導部
図1
図2
図3
図4
図5