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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175508
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】原子炉および原子炉の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20241211BHJP
   G21C 7/08 20060101ALI20241211BHJP
   G21C 7/22 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21C7/08
G21C7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093342
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】小池 武史
(57)【要約】
【課題】原子炉および原子炉の制御方法において、原子炉を適正に非常停止可能であると共に装置の小型化および軽量化を図る。
【解決手段】複数の燃料ブロックが環状に配置されて構成される炉心と、複数の燃料ブロック間の隙間に配置される収容部と、外部から収容部に中性子吸収体を供給可能な中性子吸収体供給装置と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料ブロックが環状に配置されて構成される炉心と、
前記複数の燃料ブロック間の隙間に配置される収容部と、
外部から前記収容部に中性子吸収体を供給可能な中性子吸収体供給装置と、
を備える原子炉。
【請求項2】
前記収容部は、前記炉心の中心部の隙間に配置される第1収容部と、前記複数の燃料ブロックにおける周方向の隙間に配置される複数の第2収容部とを有する、
請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
前記第1収容部は、中空円柱形状をなし、前記第2収容部は、前記第1収容部から前記複数の燃料ブロック間の隙間に向けて放射状に配置されて中空直方体形状をなす、
請求項2に記載の原子炉。
【請求項4】
前記第1収容部と前記複数の第2収容部は、連通する、
請求項2または請求項3に記載の原子炉。
【請求項5】
前記中性子吸収体は、複数の粒状体である、
請求項1に記載の原子炉。
【請求項6】
前記中性子吸収体供給装置は、前記複数の粒状体を貯留するタンクと、前記タンクと前記収容部とを連通する通路と、前記通路を開閉可能な開閉体とを有する、
請求項5に記載の原子炉。
【請求項7】
前記通路は、複数設けられ、前記収容部の異なる位置に連通する、
請求項6に記載の原子炉。
【請求項8】
前記開閉体は、前記炉心の温度が上昇して予め設定された所定温度に到達すると開放される、
請求項6または請求項7に記載の原子炉。
【請求項9】
前記複数の燃料ブロック間の隙間は、前記炉心の周方向に間隔を空けて複数設けられ、複数の前記隙間は、一部に前記収容部が配置され、その他の部分に熱伝導体が配置される、
請求項1に記載の原子炉。
【請求項10】
前記収容部と前記熱伝導体は、前記炉心の周方向に交互に設けられる、
請求項9に記載の原子炉。
【請求項11】
前記炉心は、外形が多角形状をなし、前記複数の燃料ブロックは、外形が三角形状をなす、
請求項1に記載の原子炉。
【請求項12】
複数の燃料ブロックが環状に配置されて構成される炉心を有する原子炉において、
前記炉心の温度が上昇して予め設定された所定温度に到達すると中性子吸収体を前記炉心の内側と前記複数の燃料ブロック間の隙間に供給する、
原子炉の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉および原子炉の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電システムは、核燃料を格納した原子炉を有する。原子力発電システムは、原子炉で核燃料により核反応を生じさせ、発生した熱を外部に取り出して冷媒を加熱する。加熱された冷媒は、タービンを駆動回転することで発電機により発電を行う。このような原子力発電システムとしては、特許文献1,2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-63014号公報
【特許文献2】特開2022-61791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子炉は、非常用停止装置が設けられる。従来の原子炉は、核燃料が環状をなし、非常用停止装置は、核燃料の内側に中性子吸収材を挿入可能である。この場合、非常用停止装置は、核燃料の反応を抑制して原子炉を停止するものであり、核燃料の内面と中性子吸収材の外面との間に所定量の接触面積を確保する必要がある。そのため、核燃料の大径化により原子炉が大型化してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、原子炉を適正に非常停止可能であると共に装置の小型化および軽量化を図る原子炉および原子炉の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の原子炉は、複数の燃料ブロックが環状に配置されて構成される炉心と、前記複数の燃料ブロック間の隙間に配置される収容部と、外部から前記収容部に中性子吸収体を供給可能な中性子吸収体供給装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の原子炉の制御方法は、複数の燃料ブロックが環状に配置されて構成される炉心を有する原子炉において、前記炉心の温度が上昇して予め設定された所定温度に到達すると中性子吸収体を前記炉心の内側と前記複数の燃料ブロック間の隙間に供給する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の原子炉および方法によれば、原子炉を適正に非常停止することができると共に、装置の小型化および軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の原子力発電システムを表す概略図である。
図2図2は、本実施形態の原子炉を表す縦断面図である。
図3図3は、原子炉を表す縦断面図である。
図4図4は、原子炉を表す水平断面図である。
図5図5は、原子炉の非常停止状態を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<原子力発電システム>
図1は、本実施形態の原子力発電システムを表す概略図である。
【0012】
図1に示すように、原子力発電システム100は、原子炉ユニット101と、熱交換器102と、冷媒循環経路103と、タービン104と、発電機105と、冷却器106と、圧縮機107とを有する。
【0013】
原子炉ユニット101は、原子炉容器111と、原子炉112と、熱伝導部113とを有する。原子炉容器111は、内部に原子炉112が格納される。原子炉容器111は、原子炉112を密閉状態で格納する。原子炉容器111は、内部に配置される原子炉112が格納または取り出せるように、例えば、蓋である開閉部が設けられる。原子炉容器111は、原子炉112で核反応が生じて内部が高温、高圧になった場合でも、密閉状態を維持することができる。原子炉容器111は、中性子線の遮へい性能を有する材料により形成される。
【0014】
原子炉112は、核燃料を格納する。原子炉112は、核燃料により核反応を生じさせ、熱を発生させる。熱伝導部113は、原子炉112で発生した熱を熱交換器102に伝える。なお、原子炉112と熱伝導部113の詳細は、後述する。
【0015】
熱交換器102は、原子炉ユニット101を構成する原子炉112との間で熱交換を行う。熱交換器102は、原子炉ユニット101を構成する熱伝導部113を介して原子炉112の熱を回収する。
【0016】
冷媒循環経路103は、冷媒を循環させる経路である。冷媒循環経路103は、熱交換器102とタービン104と冷却器106と圧縮機107とを接続する。冷媒循環経路103を流れる冷媒は、熱交換器102、タービン104、冷却器106、圧縮機107の順で流れ、圧縮機107を通過した冷媒は、熱交換器102に戻れる。熱交換器102は、熱伝導部113と冷媒循環経路103を流れる冷媒との間で熱交換を行う。すなわち、冷媒循環経路103を流れる冷媒は、熱伝導部113により加熱され、熱伝導部113は、冷媒により冷却される。
【0017】
タービン104は、熱交換器102を通過した冷媒が供給される。タービン104は、加熱された冷媒のエネルギーにより回転する。タービン104は、冷媒のエネルギーを回転エネルギーに変換して、冷媒からエネルギーを吸収する。
【0018】
発電機105は、タービン104と同軸上に連結されている。発電機105は、タービン104と一体に回転する。発電機105は、タービン104の回転力により回転することで発電を行う。
【0019】
冷却器106は、タービン104を通過した冷媒を冷却する。冷却器106は、チラーや冷媒を一時的に液化する場合、復水器等である。
【0020】
圧縮機107は、冷却器106を通過した冷媒を圧縮する。圧縮機107は、冷媒を加圧するポンプとして機能する。
【0021】
原子炉112の核燃料の反応により生じた熱は、熱伝導部113を介して熱交換器102に伝えられる。冷媒循環経路103を流れる冷媒は、圧縮機107により圧縮された後、熱交換器102に供給される。熱交換器102は、熱伝導部113の熱により冷媒循環経路103を流れる冷媒を加熱する。つまり、冷媒は、熱交換器102により熱を吸収して昇温されることで、原子炉112で発生した熱は、冷媒により回収される。
【0022】
タービン104は、圧縮機107により圧縮され、熱交換器102により加熱された冷媒が供給される。タービン104は、供給された冷媒により駆動回転し、発電機105を駆動することで、発電機105が発電を行う。タービン104を回転させた冷媒は、冷却器106で基準温度まで冷却された後、圧縮機58に供給される。
【0023】
原子力発電システム100は、原子炉112から取り出された熱を熱伝導部113により冷媒に伝道し、高温高圧の冷媒によりタービン104を駆動して発電機105による発電を行う。そのため、原子炉112とタービン104を駆動回転する媒体となる冷媒とを隔離することができ、タービン104を駆動回転する媒体が放射能汚染されるおそれを低減することができる。
【0024】
<原子炉>
図2は、本実施形態の原子炉を表す縦断面図、図3は、原子炉を表す縦断面図、図4は、原子炉を表す水平断面図である。なお、図2は、原子炉を燃料ブロックの位置で破断した断面図であり、図3は、原子炉を収容部の位置で破断した断面図である。
【0025】
図2から図4に示すように、原子炉ユニット101は、原子炉容器111と、原子炉112と、熱伝導部113とを有する。原子炉112は、原子炉容器111の内部に格納され、熱伝導部113が設けられる。熱伝導部113は、原子炉112で発生した熱を外部に取り出す。
【0026】
原子炉112は、炉心11と、遮へい部12と、熱伝導体(熱伝導部113)13と、反応度制御装置14と、非常停止装置15とを有する。原子炉112は、円柱形状をなし、縦型なして配置される。すなわち、原子炉112は、中心軸Oが鉛直方向に沿って配置される。
【0027】
<炉心>
図2および図4に示すように、炉心11は、中心軸Oを中心とした全体として多角柱形状(本実施形態では、六角柱形状)をなすように形成される。炉心11は、複数(本実施形態では、6個)の燃料ブロック21を有する。燃料ブロック21は、核燃料であり、同形状をなす。炉心11は、複数の燃料ブロック21が周方向に沿って配置されることで、軸方向(中心軸Oに沿った方向)に長い環状をなす。すなわち、炉心11は、外形が多角形状(六角形状)をなし、複数の燃料ブロック21は、外形が三角形状をなす。但し、炉心11の形状は、六角形状に限るものではなく、多角形状や円形状であってもよい。
【0028】
炉心11は、中心軸Oが位置する中心部に第1空間部22が設けられる。第1空間部22は、円柱形状をなす。また、炉心11は、複数の燃料ブロック21間に複数(本実施形態では、6個)の第2空間部(隙間)23a,23bが設けられる。複数の第2空間部23a,23bは、直方体形状をなし、それぞれ同形状をなす。複数の第2空間部23aと、複数の第2空間部23bは、同形状であってもよく、異なる形状であってもよい。複数の第2空間部23a,23bは、第1空間部22の外周部から放射状をなして配置される。すなわち、第2空間部23a,23bは、炉心11の径方向に沿って配置され、軸方向および径方向(中心軸Oに直交する方向)に長く、周方向(幅方向)に短い形状をなす。
【0029】
なお、炉心11(燃料ブロック21)は、図示しないが、核燃料(放射性物質)と、支持体とを含む。支持体は、炉心11の全域に配置される。支持体は、軸方向に沿って複数の穴部が設けられる。穴部は、例えば、円柱形状をなす。支持体は、減速材を含んでいてもよい。減速材として、例えば、グラフェン、黒鉛等を用いることができる。核燃料は、支持体の穴部に配置される。核燃料は、支持体の穴部の形状に対応しており、円柱形状をなす。核燃料は、軸方向に連続する棒形状であってもよいし、軸方向に不連続なペレット形状であってもよい。核燃料は、核分裂性物質としてウラン(例えば、ウラン235)やプルトニウム(例えば、プルトニウム239、241)、トリウムなどを用いることができる。
【0030】
<遮へい部>
遮へい部12は、炉心11の周囲を覆うように配置される。遮へい部12は、金属ブロックからなり、炉心11を構成する核燃料から照射される放射線(中性子)を反射することで、外部への放射線の漏洩を抑制する。遮へい部12は、使用する材料の中性子散乱および中性子吸収の能力に応じて反射体と呼ばれることがある。
【0031】
遮へい部12は、胴体31と、底部32と、蓋部33とを有する。胴体31は、円筒形状をなし、炉心11の径方向の外側に配置される。すなわち、胴体31は、炉心11の外周部を取り囲むように被覆する。底部32は、円板形状をなし、胴体31の軸方向の一方側に配置される。すなわち、底部32は、炉心11の下部を塞ぐように被覆する。蓋部33は、円板形状をなし、胴体31の軸方向の他方側に配置される。すなわち、蓋部33は、炉心11の上部を塞ぐように被覆する。なお、遮へい部12は、内部に炉心11を収容するにあたり、内部の酸化を防止する目的から、密閉構造とした内部に、例えば、窒化ガス等の不活性ガスを充填するとよい。
【0032】
<熱伝導体>
熱伝導体13は、熱伝導部113を構成する。すなわち、熱伝導体13は、炉心11で発生した熱を熱交換器102(図1参照)に伝導する。熱伝導体13は、炉心11を軸方向に貫通するように配置される。熱伝導体13は、長手方向の一端部が遮へい部12の蓋部33を貫通して外部に延出される。熱伝導体13は、炉心11の核燃料の核反応により生じる熱を遮へい部12の外部に伝える。
【0033】
熱伝導体13は、例えば、伝熱管41を有する。伝熱管41は、内部に冷媒(例えば、二酸化炭素)が充填され、冷媒が流動可能である。伝熱管41は、例えば、U字形状をなし、炉心11の内部に配置され、一端部と他端部が遮へい部12(蓋部33)を貫通して外部に延出される。冷媒は、伝熱管41の一端部から供給され、炉心11の内部を流れた後、伝熱管41の他端部から外部に排出される。このとき、冷媒は、炉心11の核燃料の核反応により生じる熱により加熱され、熱を外部に取り出す。
【0034】
なお、炉心11(燃料ブロック21)は、板形状をなす複数の燃料板が軸方向に積層されて構成されていてもよい。また、遮へい部12は、板形状をなす複数の遮へい板が軸方向に積層されて構成されていてもよい。この場合、リング形状をなす燃料板の外周側にリング形状をなす遮へい板が配置される。そして、リング状に配置された燃料板および遮へい板が板厚方向に複数配置される。
【0035】
さらに、熱伝導部113として、板形状をなす複数の熱伝導板を軸方向に積層して設けてもよい。この場合、リング状に配置された燃料板および遮へい板とリング形状をなす熱伝導板が板厚方向に交互に積層配置される。熱伝導板は、外径が遮へい板の外径より大きく、炉心11の核燃料の核反応により生じる熱を径方向の外方に取り出す。なお、熱伝導板は、例えば、チタン、ニッケル、銅、グラファイトを用いることができる。グラファイトは、特に、グラフェンを用いることができる。グラフェンは、炭素原子とその結合からできた六角形格子が連続した構造であり、六角形格子の連続した方向を熱の伝達方向とすることで、熱伝達効率を向上できる。
【0036】
<反応度制御装置>
反応度制御装置14は、遮へい部12に配置される。反応度制御装置14は、炉心11の周囲を取り囲むように配置される。反応度制御装置14は、複数(本実施形態では、12個)の制御ドラム(制御部)51を有する。但し、制御ドラム51の数は限定されない。複数の制御ドラム51は、炉心11の外側で、周方向に間隔(好ましくは、均等間隔)を空けて配置される。複数の制御ドラム51は、炉心11を構成する複数の燃料ブロック21の外側に対向して配置される。
【0037】
制御ドラム51は、円柱形状をなし、炉心11の軸方向に沿って配置される。制御ドラム51は、炉心11とほぼ同等の長さを有する。制御ドラム51は、遮へい部12に回転自在に支持される。制御ドラム51は、軸方向の一端部に連結部52が連結される。連結部52は、遮へい部12の蓋部33を貫通し、一端部が制御ドラム51の一端部に連結され、他端部が遮へい部12の外側に延出される。駆動部53は、原子炉112の外部に配置される。駆動部53は、複数の連結部52の他端部が連結される。駆動部53は、複数の連結部52を介して複数の制御ドラム51を回転可能である。
【0038】
制御ドラム51は、ドラム本体54と、中性子吸収部55とを有する。制御ドラム51は、ドラム本体54における周方向の一部に中性子吸収部55が設けられて構成される。ドラム本体54は、例えば、グラフェンを用いることができ、中性子吸収部55は、例えば、ボロンカーバイト(BC)を用いることができる。制御ドラム51が回転することで、ドラム本体54に対する中性子吸収部55の周方向の位置が変わる。すなわち、制御ドラム51が回転することで、中性子吸収部55は、炉心11に対して接近または離反することができる。中性子吸収部55が炉心11に対して接近すると、炉心11を構成する核燃料の反応度が下がり、中性子吸収部55が炉心11に対して離反すると、核燃料の反応度が上がる。反応度制御装置14は、複数の制御ドラム51を回転することで、中性子吸収部55を炉心11に対して接近または離反させ、炉心11の核燃料の反応度を制御することができ、炉心11の温度を制御することができる。ここで、炉心11の温度は、熱伝導体13により遮へい部12の外部に取り出される炉心平均温度である。
【0039】
反応度制御装置14は、制御装置56を有する。制御装置56は、駆動部53に接続される。制御装置56は、駆動部53を駆動制御することで、複数の制御ドラム51の回転位置を制御可能である。なお、制御装置56は、例えば、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む演算処理装置などにより実現される。制御装置56は、炉心11の温度を取得することができる。制御装置56は、反応度制御装置14を構成する複数の制御ドラム51の回転位置を制御し、中性子吸収部55を炉心11に対して離反させる。すると、炉心11の反応度が上がり、原子炉112は運転を開始する。一方、制御装置56は、制御ドラム51の回転位置を制御し、中性子吸収部55を炉心11に対して接近させる。すると、炉心11の反応度が下がり、原子炉112は運転を停止する。
【0040】
<非常停止装置>
図3および図4に示すように、非常停止装置15は、原子炉112の運転中、炉心11の温度が上昇して予め設定された所定温度に到達すると作動し、原子炉112を停止させる。
【0041】
非常停止装置15は、収容部61と、中性子吸収体供給装置62とを有する。収容部61は、炉心11を構成する複数の燃料ブロック21間の隙間に配置される。中性子吸収体供給装置62は、原子炉112に対して鉛直方向の上方に配置され、外部から収容部61に中性子吸収体63を供給可能である。
【0042】
収容部61は、第1収容部71と、第2収容部72とを有する。第1収容部71は、円筒形状をなす炉心11の内側、つまり、中心部の隙間に配置される。第1収容部71は、中空円柱形状をなし、炉心11の中心部に軸方向に沿って配置される。なお、第1収容部71は、中空円柱形状に限定されるものではなく、角柱形状などいずれの形状であってもよい。第1収容部71は、炉心11とほぼ同様の長さを有する。第2収容部72は、第1収容部71から複数の燃料ブロック21間の隙間に向けて放射状に配置される。第2収容部72は、中空直方体形状をなし、周方向に隣接する複数の燃料ブロック21の間の隙間に配置される。第2収容部は、炉心11とほぼ同様の長さを有する。
【0043】
第1収容部71は、炉心11の中心部の隙間に配置され、第2収容部72は、隣接する複数の燃料ブロック21の間の隙間に配置される。第2収容部72は、複数(本実施形態では、3個)設けられる。1個の第1収容部71と、3個の第2収容部72は、互いに連通する。第1収容部71および第2収容部72は、中性子吸収性能が低い材料により形成される。すなわち、第1収容部71および第2収容部72は、少なくとも後述する中性子吸収体84より中性子吸収性能が低い材料により形成される。第1収容部71および第2収容部72は、例えば、黒鉛のような高温高圧下で構造の成立性が確認できる物質などにより形成される。
【0044】
炉心11は、中心部、つまり、6個の燃料ブロック21の内側に第1空間部22が設けられる。第1収容部71は、第1空間部22に配置される。炉心11は、6個の燃料ブロック21における周方向の隙間に6個の第2空間部23a,23bが設けられる。3個の第2空間部23aと3個の第2空間部23bは、炉心11の周方向に交互に配置される。3個の第2収容部72は、一方の3個の第2空間部23aに配置される。他方の3個の第2空間部23bは、熱伝導体13を構成する多数の伝熱管41が配置される。
【0045】
すなわち、第2空間部23aに配置された第2収容部72と、第2空間部23bに配置された多数の伝熱管41とは、炉心11の周方向に交互に配置される。なお、伝熱管41は、第2空間部23bだけではなく、第2空間部23aに連通するように形成された複数の切欠部にも複数配置される。また、伝熱管41は、複数の燃料ブロック21の外側にも周方向に間隔を空けて配置される。すなわち、複数の伝熱管41は、各燃料ブロック21の周囲を取り囲むように配置される。
【0046】
中性子吸収体供給装置62は、タンク81と、通路82と、開閉体83とを有する。タンク81は、原子炉112の上方に配置される。なお、タンク81は、原子炉112の上方に限るものではない。タンク81は、中空円柱形状をなし、内部に多数の中性子吸収体84を貯留する。但し、タンク81の形状は限定されない。通路82は、タンク81と収容部61とを連通する。通路82は、複数(本実施形態では、3個)設けられ、タンク81と収容部61の異なる位置とを連通する。ここで、3個の通路82は、タンク81と3個の第2収容部72とを連通する。なお、通路82の数は、3個に限定されない。また、タンク81と第1収容部71とを連通する通路を設けてもよい。開閉体83は、3個の通路82にそれぞれ設けられる。開閉体83は、通路82を開閉可能である。開閉体83は、炉心11の温度が上昇して予め設定された所定温度に到達すると開放される。開閉体83は、例えば、鉛―銅合金、鉛合金のような所定温度以上で溶融する物質などにより形成される。
【0047】
中性子吸収体84は、複数の粒状体である。具体的に、中性子吸収体84は、球形状をなす。中性子吸収体84は、例えば、ボロンカーバイト(BC)を用いることができる。球形状の中性子吸収体84は、外径が通路82の内径、第1収容部71の内径、第2収容部72の幅よりも小さい。中性子吸収体84は、タンク81に貯留されており、開閉体83が開放されると、各通路82を通って第1収容部71および第2収容部72の内部に供給される。すると、第1収容部71および第2収容部72は、中性子吸収体84が充てんされる。
【0048】
開閉体83が閉止し、中性子吸収体84がタンク81に貯留されたまま、第1収容部71および第2収容部72に供給されない状態で、炉心11は、核燃料の反応度が上がる。一方、開閉体83が開放され、タンク81に貯留された中性子吸収体84が各通路82から第1収容部71および第2収容部72に供給されて充てんされた状態で、炉心11は、核燃料の反応度が下がる。
【0049】
なお、中性子吸収体84は、複数の粒状体に限定されるものではない。中性子吸収体84は、タンク81に貯留され、通路82を通って収容部61に供給することができれば、いずれの形状であってもよい。例えば、中性子吸収体84は、第1収容部71の形状に応じた円柱形状や第2収容部72の形状に応じた直方体形状などであってもよい。
【0050】
<原子炉の制御方法>
図1および図2図4に示すように、原子炉112にて、制御装置56は、炉心11の温度に応じて反応度制御装置14を構成する複数の制御ドラム51の回転位置を制御する。すなわち、制御ドラム51を回転し、中性子吸収部55を炉心11に対して離反させて炉心11の反応度を上げたり、中性子吸収部55を炉心11に対して接近させて炉心11の反応度が下げたりする。炉心11の核燃料の核反応により生じた熱は、熱伝導体13(伝熱管41)により遮へい部12の外部に取り出される。遮へい部2の外部に取り出された熱は、熱交換器102により冷媒に伝達され、冷媒によりタービン104が回転し、発電機105による発電が行われる。
【0051】
図3および図4に示すように、原子炉112の運転中、炉心11の温度が所定温度未満であることから、非常停止装置15は、非作動状態にある。すなわち、中性子吸収体供給装置62は、開閉体83が閉止し、中性子吸収体84がタンク81に貯留されたままであり、第1収容部71および第2収容部72に供給されていない。
【0052】
そして、原子炉112の運転中、炉心11の温度が所定温度に到達すると、非常停止装置15は、作動状態になる。すなわち、図3および図5に示すように、中性子吸収体供給装置62は、開閉体83が開放され、タンク81に貯留された中性子吸収体84が各通路82を通して第1収容部71および第2収容部72に供給され、充てんされる。また、制御装置56は、制御ドラム51を回転し、中性子吸収部55を炉心11に対して接近させる。
【0053】
すると、炉心11は、内側に中性子吸収体84が充填された第1収容部71が位置し、各燃料ブロック21の間に中性子吸収体84が充填された各第2収容部72が位置し、外側に制御ドラム51の中性子吸収部55が位置することとなる。そのため、炉心11は、核燃料の反応度が低下し、原子炉112が非常停止される。
【0054】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る原子炉は、複数の燃料ブロック21が環状に配置されて構成される炉心11と、複数の燃料ブロック21間の隙間に配置される収容部61と、外部から収容部61に中性子吸収体84を供給可能な中性子吸収体供給装置62と、を備える。
【0055】
第1の態様に係る原子炉によれば、収容部61が炉心11の内側だけでなく、複数の燃料ブロック21間の隙間に配置されることから、原子炉112の非常時に、炉心11の内側と複数の燃料ブロック21間の隙間に中性子吸収体84を供給することができる。そのため、原子炉112を適正に非常停止することができる。そして、炉心11(燃料ブロック21)と中性子吸収体84とが対向する面積を十分に確保することができることから、炉心11の外径を大きくする必要がなく、原子炉112の小型化および軽量化を図ることができる。
【0056】
第2の態様に係る原子炉は、第1の態様に係る原子炉であって、さらに、収容部61は、炉心11の中心部の隙間に配置される第1収容部71と、複数の燃料ブロック21における周方向の隙間に配置される複数の第2収容部72とを有する。これにより、原子炉112の非常時に、炉心11の中心部の隙間と複数の燃料ブロック21における周方向の隙間に中性子吸収体84を適切に供給することができる。
【0057】
第3の態様に係る原子炉は、第2の態様に係る原子炉であって、さらに、第1収容部71は、中空円柱形状をなし、第2収容部72は、第1収容部71から複数の燃料ブロック21間の隙間に向けて放射状に配置されて中空直方体形状をなす。これにより、炉心11の中心部の隙間と複数の燃料ブロック21における周方向の隙間に効率良く収容部61を配置することができる。
【0058】
第4の態様に係る原子炉は、第2の態様または第3の態様に係る原子炉であって、さらに、第1収容部71と複数の第2収容部72は、連通する。これにより、第1収容部71と第2収容部72のいずれに中性子吸収体84を供給しても、第1収容部71と複数の第2収容部72の全域に中性子吸収体84を充てんすることができる。
【0059】
第5の態様に係る原子炉は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る原子炉であって、さらに、中性子吸収体84は、複数の粒状体である。これにより、中性子吸収体84を複数の粒状体とすることで、収容部61の形状にかかわらず中性子吸収体84を収容部61の隙間なく充てんすることができる。また、中性子吸収体84を収容部60の形状に形成する必要がなく、不使用時における中性子吸収体84の収容スペースを小さくして装置の大型化を抑制することができる。
【0060】
第6の態様に係る原子炉は、第5の態様に係る原子炉であって、さらに、中性子吸収体供給装置62は、複数の粒状体の中性子吸収体84を貯留するタンク81と、タンク81と収容部61とを連通する通路82と、通路82を開閉可能な開閉体83とを有する。これにより、原子炉112の非常時に、開閉体83を開放することで、タンク81に貯留された中性子吸収体84を通路82から収容部61に適切に供給することができる。
【0061】
第7の態様に係る原子炉は、第6の態様に係る原子炉であって、さらに、通路82は、複数設けられ、収容部61の異なる位置に連通する。これにより、通路82が閉塞してしまったり、開閉体83が開放されなかったりしたときであっても、いずれかの通路82により中性子吸収体84を収容部61に適切に供給することができる。
【0062】
第8の態様に係る原子炉は、第6の態様または第7の態様に係る原子炉であって、さらに、開閉体83は、炉心11の温度が上昇して予め設定された所定温度に到達すると開放される。これにより、原子炉112の非常時に、開閉体83を適切に開放して中性子吸収体84を収容部61に供給することができる。
【0063】
第9の態様に係る原子炉は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係る原子炉であって、さらに、複数の燃料ブロック21間の隙間は、炉心11の周方向に間隔を空けて複数設けられ、複数の隙間は一部に収容部61が配置され、その他の部分に熱伝導体13が配置される。これにより、熱伝導体13による炉心11からの熱の取り出しの効率化と、中性子吸収体84による炉心11の迅速な非常停止の両立を図ることができる。
【0064】
第10の態様に係る原子炉は、第9の態様に係る原子炉であって、さらに、収容部61と熱伝導体13は、炉心11の周方向に交互に設けられる。これにより、熱伝導体13により炉心11の熱を効率良く取り出すことができると共に、炉心11の非常時に中性子吸収体84により炉心11の反応度を迅速に低下させることができる。
【0065】
第11の態様に係る原子炉は、第1の態様から第10の態様のいずれか一つに係る原子炉であって、さらに、炉心11は、外形が多角形状をなし、複数の燃料ブロック21は、外形が三角形状をなす。これにより、核燃料を効率良く配置することができると共に、燃料ブロック21の製作性を向上することができる。
【0066】
第12の態様に係る原子炉の制御方法は、複数の燃料ブロック21が環状に配置されて構成される炉心11を有する原子炉112において、炉心11の温度が上昇して予め設定された所定温度に到達すると中性子吸収体84を炉心の内側と複数の燃料ブロック間の隙間に供給する。これにより、原子炉112を適正に非常停止することができる。そして、炉心11(燃料ブロック21)と中性子吸収体84とが対向する面積を十分に確保することができることから、炉心11の外径を大きくする必要がなく、原子炉112の小型化および軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0067】
11 炉心
12 遮へい部
13 熱伝導体
14 反応度制御装置
15 非常停止装置
21 燃料ブロック
22 第1空間部
23a,23b 第2空間部(隙間)
31 胴体
32 底部
33 蓋部
41 伝熱管
51 制御ドラム
52 連結部
53 駆動部
54 ドラム本体
55 中性子吸収部
56 制御装置
61 収容部
62 中性子吸収体供給装置
71 第1収容部
72 第2収容部
81 タンク
82 通路
83 開閉体
84 中性子吸収体
100 原子力発電システム
101 原子炉ユニット
102 熱交換器
103 冷媒循環経路
104 タービン
105 発電機
106 冷却器
107 圧縮機
111 原子炉容器
112 原子炉
113 熱伝導部
図1
図2
図3
図4
図5