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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175512
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】螺旋管の製管装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20241211BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093348
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白瀧 滉司
(72)【発明者】
【氏名】山下 卓也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
(72)【発明者】
【氏名】木原 彬
(72)【発明者】
【氏名】高久 将志
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AF01
4F211AG05
4F211AG08
4F211AH43
4F211AR07
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SJ11
4F211SP04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内周解放型の製管装置において、帯状部材における未製管の後続帯部からの捩じりや引っ張りによる製管装置の倒れを防止する。
【解決手段】螺旋管3の前方側の管端部3eの一箇所に、製管装置20の装置フレーム21が設けられ、装置フレームには、駆動部30と管端ガイドが設けられ、駆動部の駆動ローラ32,33によって、帯状部材10の未製管の後続帯部19を挟み込んで管端部へ斜めに押し込むことによって、後続帯部を管端部に組み入れるととともに装置フレームを螺旋巻回方向へ推進させる推進力を得る。管端ガイドを管端部に螺旋巻回方向へスライド可能に係止させる。装置フレームにおける延伸方向の後方側の側方には、倒れ防止部材52,53を更生管3の先に製管された管部分3aの内周面に沿うように設ける。倒れ防止部材は、管部分の内周面との当たりによって装置フレームの延伸方向の後方側への傾斜を規制する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材から螺旋管を製管しながら螺旋巻回方向へ推進される製管装置において、
前記螺旋管における先に製管された管部分の延伸方向の前方側の管端部の一箇所に、該一箇所以外の前記管端部を内周側へ解放するように設けられた装置フレームと、
前記延伸方向の後方側すなわち延伸後方側から前記管端部に続く前記帯状部材の未製管の後続帯部を挟み込んで前記管端部へ押し込む少なくとも一対の駆動ローラ、及びこれら駆動ローラを回転駆動させる駆動モータを有し、前記装置フレームに設けられた駆動部と、
前記装置フレームに設けられるとともに、前記管端部に前記螺旋巻回方向へスライド可能に係止される管端ガイドと、
前記装置フレームにおける前記延伸後方側の側方に、前記管部分の内周面に沿うように設けられ、前記内周面との当たりによって前記装置フレームの前記延伸後方側への傾斜を規制する倒れ防止部材と
を備えたことを特徴とする製管装置。
【請求項2】
前記倒れ防止部材が、前記装置フレームの前記螺旋巻回方向と直交する装置幅方向に沿う軸まわりに回転可能な回転体を含む請求項1に記載の製管装置。
【請求項3】
前記倒れ防止部材が、前記装置フレームの前記螺旋巻回方向を向く装置長さ方向の中間部から前記延伸後方側へ突出されている請求項1に記載の製管装置。
【請求項4】
前記駆動モータが、前記装置フレームから前記延伸後方側へ突出されており、
前記駆動モータの筐体に、前記倒れ防止部材を支持する支持部材が設けられている請求項1に記載の製管装置。
【請求項5】
前記駆動モータを挟んで前記螺旋巻回方向を向く装置長さ方向の両側にそれぞれ前記倒れ防止部材が設けられている請求項4に記載の製管装置。
【請求項6】
前記両側の倒れ防止部材どうしの離間距離が調節可能である請求項5に記載の製管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材から螺旋管を製管する装置に関し、特に、螺旋巻回方向へ推進されながら製管を行なう自走式の製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水道管等の老朽化した既設管の内壁に沿って、帯状部材からなる螺旋管状の更生管をライニングすることによって、既設管を更生する方法が知られている(特許文献1、2等参照)。帯状部材の両縁には凹凸嵌合部が形成されている。該帯状部材が、製管装置によって螺旋状に巻回されて、対向する凹凸嵌合部どうしが嵌合される。これによって、更生管(螺旋管)が製管される。
【0003】
特許文献1、2には、螺旋巻回方向へ推進されながら更生管の製管を行なう自走式の製管装置が開示されている。
特許文献1の製管装置は、製管中の更生管の管端部を内周側から規制するリンクローラと呼ばれる環状の内周規制体を備えた内周規制型の製管装置である。
【0004】
特許文献2には、前記内周規制体を有しない内周解放型(内周規制体レス)の製管装置が開示されている。当該内周解放型の製管装置は、更生管の延伸方向の前方側の管端部に配置された装置フレームと、少なくとも一対の駆動ローラと、管端部に沿ってスライド可能に係止された管端ガイドとを含む。装置フレームには、管端部を内周側から規制するリンクローラ等の内周規制体が設けられておらず、装置フレームの配置箇所以外の管端部が内周側へ解放されている。
【0005】
帯状部材における未製管の後続帯部は、更生管における先に製管された管部分の内部に通されることによって、延伸方向の後方側すなわち延伸後方側から製管装置の一対の駆動ローラの間に導入される。これら駆動ローラによって、後続帯部が挟み付けられるとともに管端部へ向けて斜めに押し込まれる。これによって、後続帯部と管端部の凹凸嵌合部どうしが凹凸嵌合され、後続帯部が管端部に組み込まれる。このとき、駆動ローラによる押し込みの反力が推進力となって、装置フレームが螺旋巻回方向へ推進される。これによって、更生管が延伸される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-112790号公報
【特許文献2】特開2019-084728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者の知見によれば、自走式製管装置のうち、特に前記内周解放型の製管装置においては、帯状部材の未製管の後続帯部から捩じりや引っ張り等の力を受けることで延伸後方側へ倒れることがある。例えば、製管装置へ導入前の後続帯部が巻き癖付与機で巻き癖を付与されていなかったり、更生管の内径が小径であったりすると、後続帯部が、巻きピッチが大きく巻き径が小さい弦巻き螺旋状に絞られた状態になるため、後続帯部から製管装置に加わる力のうち延伸後方側への力成分が大きくなり、製管装置が倒れやすい。製管装置が倒れると、凹凸嵌合部どうしの嵌合不良や、管端ガイドの脱落その他の製管装置の脱線が起き、製管不良となる。
【0008】
なお、前掲特許文献1等の内周規制型の製管装置においては、リンクローラ等の内周規制体が管端部に張り付いて拘束されているから、前述したような倒れが発生することはほとんどない。
本発明は、かかる事情に鑑み、自走式かつ内周解放型の製管装置において、帯状部材における未製管の後続帯部からの延伸後方側への力による製管装置の倒れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、帯状部材から螺旋管を製管しながら螺旋巻回方向へ推進される製管装置において、
前記螺旋管における先に製管された管部分の延伸方向の前方側の管端部の一箇所に、該一箇所以外の前記管端部を内周側へ解放するように設けられた装置フレームと、
前記延伸方向の後方側すなわち延伸後方側から前記管端部に続く前記帯状部材の未製管の後続帯部を挟み込んで前記管端部へ押し込む少なくとも一対の駆動ローラ、及びこれら駆動ローラを回転駆動させる駆動モータを有し、前記装置フレームに設けられた駆動部と、
前記装置フレームに設けられるとともに、前記管端部に前記螺旋巻回方向へスライド可能に係止される管端ガイドと、
前記装置フレームにおける前記延伸後方側の側方に、前記管部分の内周面に沿うように設けられ、前記内周面との当たりによって前記装置フレームの前記延伸後方側への傾斜を規制する倒れ防止部材と
を備えたことを特徴とする。
【0010】
当該製管装置によれば、駆動ローラによる後続帯部の押し込みによって、後続帯部が管端部に組み込まれて製管が進むとともに、製管装置の螺旋巻回方向への推進力が生じる。
後続帯部が絞られた状態(巻きピッチが大きく巻き径が小さい弦巻き螺旋状)であると、製管時の製管装置が後続帯部から捩じりや引っ張り等の延伸後方側への力を強く受ける。このような延伸後方側への力によって製管装置が傾こうとすると、倒れ防止部材が管部分の内周面に当たる。これによって、製管装置が延伸後方側へ倒れるのが防止され、嵌合不良や脱線等の製管不良を回避できる。
【0011】
好ましくは、前記倒れ防止部材が、前記装置フレームの前記螺旋巻回方向と直交する装置幅方向に沿う軸まわりに回転可能な回転体を含む。
これによって、製管装置の製管時の推進に伴って回転体が管部分の内周面上を転がる。これによって、帯状部材が倒れ防止部材との摺擦によって損傷するのを防止でき、帯状部材の白化などが生じるのを防止できる。
【0012】
好ましくは、前記倒れ防止部材が、前記装置フレームの前記螺旋巻回方向を向く装置長さ方向の中間部から前記延伸後方側へ突出されている。
これによって、装置長さ方向の中間部の管端ガイドが管端部から外れるのを効果的に防止でき、製管装置の脱線を確実に防止できる。
【0013】
好ましくは、前記駆動モータが、前記装置フレームから前記延伸後方側へ突出されており、前記駆動モータの筐体に、前記倒れ防止部材を支持する支持部材が設けられている。
これによって、倒れ防止部材の支持強度を確保できる。
また、倒れ防止部材の重量を重くすることによって、倒れを阻止するときの倒れ防止部材に加わる負荷に対する耐力を高めて、倒れ防止部材の変形を防止できる。
【0014】
好ましくは、前記駆動モータを挟んで前記螺旋巻回方向を向く装置長さ方向の両側にそれぞれ前記倒れ防止部材が設けられている。
これによって、製管装置が前記後方側へ倒れるのを確実に防止できる。
1の支持部材の両端部が、駆動モータの筐体から装置長さ方向の両側へ延び出て、該支持部材の両端部にそれぞれ前記倒れ防止部材が設けられていてもよい。
2つの支持部材が駆動モータの筐体の両側に分かれて設けられ、各支持部材に前記倒れ防止部材が設けられていてもよい。
【0015】
好ましくは、前記両側の倒れ防止部材どうしの離間距離が調節可能である。
これによって、例えば螺旋管の管径に応じて離間距離を調節することで、両側の倒れ防止部材の各々が管部分の内周に当たるようにでき、製管装置が倒れるのを確実に防止することができる。
より好ましくは、各倒れ防止部材の支持部材への取り付け位置が前記装置長さ方向に可変であり、これによって、前記両側の倒れ防止部材どうしの離間距離が調節される。
前記支持部材が前記装置長さ方向へ伸縮されることで、前記両側の倒れ防止部材どうしの離間距離が調節されてもよい。
支持部材を長さの異なるものに取り換えることで、前記両側の倒れ防止部材どうしの離間距離を調節することにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自走式かつ内周解放型の製管装置において、後続帯部からの延伸後方側への力によって製管装置が倒れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る製管装置によって更生施工中の既設管の断面図である、
図2図2は、前記製管装置によって製管中の更生管を延伸方向の後方側から見た断面図である。
図3】前記製管装置によって製管中の更生管の斜視図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿う平面図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る製管装置によって製管中の更生管の斜視図である。
図7図7は、前記第2実施形態に係る製管装置によって製管中の更生管の平面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図5)>
図1は、老朽化した既設管1を更生する様子を示したものである。既設管1は、地中2に埋設された下水道管であるが、これに限らず、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管、トンネル等であってもよい。既設管1の内壁に更生管3がライニングされている。更生管3は、長尺の帯状部材10によって構成された螺旋管である。図5に示すように、帯状部材10の両縁には凹凸嵌合部13,14が形成されている。更生管3においては、帯状部材10が螺旋状に巻回され、隣接する巻き部分の凹凸嵌合部13,14どうしが嵌合されている。更生管3の内径は、例えば1000mm~2000mm程度であるが、本発明はこれに限らない。
なお、帯状部材10の断面形状は、図5に図示したものに限らず、適宜改変できる。
【0019】
図1に示すように、製管中の更生管3(先に製管された管部分3a)における、管軸に沿う延伸方向の前方側(図1において左側、以下「延伸前方側」と称す)の管端部3eには、製管装置20が設けられている。帯状部材10における未製管の後続帯部19が、管部分3aの内部に通されることによって、延伸方向の後方側(図1において右側、以下「延伸後方側」と称す)から製管装置20に導入されている。製管装置20によって、後続帯部19が管端部3eに組み込まれることによって、更生管3の製管が進む。製管装置20は、螺旋巻回方向へ、図2において反時計回りに推進されながら製管を行なう自走式であり、かつ管端部3eを内周側から規制する内周規制体を有しない内周解放型(内周規制体レス)の製管装置である。
【0020】
詳しくは、図2に示すように、製管装置20は、二点鎖線にて模式的に示す装置フレーム21と、駆動部30と、管端ガイド40を備えている。装置フレーム21は、管端部3eの一箇所の内周側に配置されている。図3及び図4に示すように、装置フレーム21の長さ方向(以下「装置長さ方向LD」又は「長さ方向LD」と称す)は、更生管3の螺旋巻回方向へ向けられている。装置フレーム21の長さ寸法は管端部3eの周長より十分短く、装置フレーム21の配置箇所以外の管端部3eが内周側へ解放されている。装置フレーム21の幅方向(以下「装置幅方向WD」又は「幅方向WD」と称す)は、概略、更生管3の延伸方向ないしは管軸に沿っており、厳密には更生管3の管軸に対して螺旋のリード角だけ傾けられている。
【0021】
図2図4に示すように、装置フレーム21に駆動部30が設けられている。駆動部30は、駆動モータ31と、少なくとも一対(図では2対)の駆動ローラ32,33を含む。駆動モータ31は、装置フレーム21から幅方向WDに沿って延伸後方側(図4において紙面下側)へ突出されている。なお、図2においては、駆動モータ31の図示が省略されている。図3においては、駆動モータ31を二点鎖線にて示す。
【0022】
図2及び図3に示すように、装置フレーム21内において、内周側駆動ローラ32と外周側駆動ローラ33とが互いに平行に対峙している。駆動ローラ32,33の軸線は、装置幅方向WD(図2において紙面直交方向)へ向けられている。駆動モータ31によって各駆動ローラ32,33が回転駆動される。
【0023】
図2に示すように、装置フレーム21における管外周側を向く底部(図2において下側部)には、1又は複数(ここでは3つ)の管端ガイド40が設けられている。図2に示すように、複数の管端ガイド40は、装置長さ方向LDに互いに離れている。以下、これら管端ガイド40を互いに区別するときは、製管装置20の推進方向の前方側(推進前方側)の管端ガイド40を「管端ガイド41」と称し、中間部の管端ガイド40を「管端ガイド42」と称し、推進方向の後方側(推進後方側)の管端ガイド40を「管端ガイド43」と称す。図3及び図4に示すように、推進後方側の管端ガイド43は、推進前方側及び中間の管端ガイド41,42より延伸前方(図4において上側)へ螺旋ピッチ分だけずれて配置されている。図5に示すように、各管端ガイド40は、管端部3eの外周溝に螺旋巻回方向へスライド可能に係止されている。
【0024】
図2に示すように、製管装置20には、外周規制ワイヤ29が設けられている。外周規制ワイヤ29は管端部3eの外周に掛け回されている。外周規制ワイヤ29の両端は、管端ガイド41,43又は装置フレーム21に係着されている。外周規制ワイヤ29の長さによって、管端部3eの周長ひいては管径を調節できる。
【0025】
図2図4に示すように、製管装置20は、倒れ防止ユニット50を更に備えている。倒れ防止ユニット50は、装置フレーム21における延伸後方側の側方(図4において下方)の底部近くの、好ましくは長さ方向LDの中間部に設けられている。
【0026】
詳しくは、図4及び図5に示すように、倒れ防止ユニット50は、支持部材51と、1又は複数(ここでは2つ)の倒れ防止部材52,53を有している。支持部材51は、長さ方向LD(図5において紙面直交方向)へ延びる棒形状に形成され、装置フレーム21の延伸後方側(図5において右側)の側壁22に固定されている。
【0027】
図4に示すように、支持部材51の長手方向の両端部に、それぞれ倒れ防止部材52,53が設けられている。倒れ防止部材52,53は、支持部材51ひいては装置フレーム21から延伸後方側(図4において下側)へ突出されている。倒れ防止部材52,53は、円筒形状の回転体によって構成されている。回転体からなる倒れ防止部材52,53が、支持部材51に自由回転可能に支持されている。各倒れ防止部材52,53の中心線をなす回転軸線は、装置幅方向WDへ向けられている。
【0028】
2つの倒れ防止部材52,53の大きさ(直径及び軸長)は互いに異なっている。推進前方側の倒れ防止部材52は、推進方側の倒れ防止部材53よりも直径及び軸長が大きい。
なお、これとは逆に、推進後方側の倒れ防止部材53が、推進前方側の倒れ防止部材52より大きくてもよい。2つの倒れ防止部材52,53が同じ大きさでもよい。
【0029】
図2及び図5に示すように、各倒れ防止部材52,53は、管部分3aの内周面に沿っており、好ましくは管部分3aの内周面に当接又は近接している。より好ましくは、倒れ防止部材52,53は、装置フレーム21の長さ方向LDに沿って中間部の管端ガイド42の近くに配置されている。
【0030】
製管装置20によって、更生管3(螺旋管)が次のようにして製管される。
図1に示すように、帯状部材10における未製管の後続帯部19が、地上のドラム5から発進人孔4を経て、管部分3aの内部を通って、製管装置20へ送られている。後続帯部19には、ドラム5に巻き付けられていたことによる軽い巻き癖が付けられている。一方、本実施形態においては、設備の簡便化及びコスト削減等のために、ドラム5と製管装置20の間の巻き癖付与機が省略されている。このため、後続帯部19は、巻き癖の程度が弱く、絞られた状態になっている。すなわち、巻きピッチが大きく、巻き径が小さい弦巻き螺旋状になっている。
【0031】
図2に示すように、該後続帯部19が、製管装置20の対をなす駆動ローラ32,33の間に導入される。これら駆動ローラ32,33によって、後続帯部19が挟み付けられるとともに管端部3eへ向けて斜めに押し出されて、製管装置20の長さ方向LDの中間の嵌合位置Pにおいて、後続帯部19と管端部3eの凹凸嵌合部13,14どうしが嵌合される(図5)。これによって、後続帯部19が、管端部3eに組み込まれる。このとき、駆動ローラ32,33による押し込みの反力が推進力となって、装置フレーム21が螺旋巻回方向へ推進される。これによって、更生管3が延伸される。
【0032】
製管時の製管装置20は、後続帯部19を駆動ローラ32,33間に引き込む際、後続帯部19から捩じりや引っ張り等の力を受ける。前述したように、後続帯部19は巻き癖付与処理をなされておらず、絞られた状態になっているため、製管装置20が後続帯部19から受ける力における延伸後方側への力成分が比較的大きい。つまり、製管時の製管装置20は、後続帯部19によって延伸後方側へ強く捩じられたり引っ張られたりする。
また、ドラム5からの後続帯部19の繰り出し速度が、製管装置20における製管速度より遅くなると、後続帯部19が伸ばされて一層絞られた状態になる。このため、製管装置20が延伸後方側へ一層強く捩じられたり引っ張られたりする。
既設管1の内径ひいては更生管3の内径φが小さい場合も(例えばφ=1000mm~1500mm程度)、管部分3a内における後続帯部19が絞られるために、製管装置20が延伸後方側へ強く捩じられたり引っ張られたりする。
【0033】
前記延伸後方側への捩じりや引っ張り等の力によって、製管装置20が延伸後方側へ傾斜しようとすると、倒れ防止部材52,53が管部分3aの内周面に強く当たり、それ以上傾斜されないよう規制する。これによって、製管装置20が延伸後方側へ倒れるのを防止できる。
【0034】
したがって、凹凸嵌合部13,14どうしの嵌合不良が起きるのを回避できる。また、管端ガイド40が管端部3eから脱落する等により製管装置20の脱線が起きるのを防止できる。この結果、製管不良を防止でき、更生管3を円滑に製管することができる。特に、製管装置20が倒れようとする場合、中間部の管端ガイド42が外れやすいところ、倒れ防止部材52,53を装置フレーム21の長さ方向LDの中間部に配置しておくことによって、中間部の管端ガイド42が管端部3eから外れるのを確実に防止できる。これによって、製管装置20の脱線を確実に防止できる。
【0035】
倒れ防止部材52,53は、製管装置20の製管時の推進に伴って、管部分3aの内周面上を転がる。これによって、更生管3を構成する帯状部材10が倒れ防止部材との摺擦によって損傷するのを防止でき、帯状部材10の白化などが生じるのを防止できる。
図1において二点鎖線にて示すように、このようにして、更生管3が既設管1の内壁に沿って到達人孔4Bまでライニングされることによって、既設管1が更生される。
【0036】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図6図8)>
図6及び図7に示すように、本発明の第2実施形態に係る製管装置20Bにおいては、装置フレーム21の延伸後方側の側壁22に設けられた倒れ防止ユニット50Bに加えて、駆動モータ31に設けられた倒れ防止ユニット60を備えている。倒れ防止ユニット50Bは、倒れ防止部材53を有している。倒れ防止部材52(図4)は省略されているが、倒れ防止ユニット50Bが倒れ防止部材52をも有していてもよい。
【0037】
図7に示すように、倒れ防止ユニット60は、倒れ防止ユニット50Bよりも延伸後方側(図7において下側)に離れて配置されている。図6及び図8に示すように、倒れ防止ユニット60は、支持部材61と、一対の倒れ防止部材62,63を含む。支持部材61は、製管装置20Bの長さ方向LDへ延びている。支持部材61は、倒れ防止ユニット50Bの支持部材51よりもサイズ(断面積及び長さ)が大きく重量が重い。支持部材61の中間部が、駆動モータ31の筐体31bに支持されている。支持部材61の両端部は、駆動モータ31よりも製管装置20Bの長さ方向LDの両側へ延び出ている。
【0038】
図7及び図8に示すように、支持部材61の推進前方側(図7において右側)の端部には倒れ防止部材62が設けられている。支持部材61の推進後方側(図7において左側)の端部には倒れ防止部材63が設けられている。2つの倒れ防止部材62,63が、駆動モータ31を挟んで製管装置20Bの長さ方向LDの両側に配置されている。各倒れ防止部材62,63は、円筒形状の回転体によって構成され、支持部材61に回転可能に支持されている。倒れ防止部材62,63の中心線からなる回転軸は、製管装置10Bの幅方向WDへ向けられている。
【0039】
倒れ防止部材62,63の大きさは互いに等しいが、異なっていてもよい。
倒れ防止部材62,63は、倒れ防止ユニット50Bの倒れ防止部材53よりもサイズ(直径及び軸長)が大きく重量が重い。したがって、倒れ防止ユニット60は、倒れ防止ユニット50Bよりも大サイズかつ大重量である。
【0040】
図7に示すように、支持部材61の両端部には倒れ防止部材62,63のための取り付け穴64が形成されている。取り付け穴64は、長さ方向LDへ延びる長孔になっている。これによって、各倒れ防止部材62,63が、取り付け穴64の長さ分だけ長さ方向LDへ位置調節可能になっている。したがって、両側の倒れ防止部材62,63どうしの離間距離が調節可能である。例えば、更生管3に内径(製管径)に応じて、各倒れ防止部材62,63が更生管3の内周面に当たるように、これら倒れ防止部材62,63どうしの離間距離が調節されたうえで、取り付け穴64に通したボルト65によって、倒れ防止部材62,63が支持部材61に固定される。
【0041】
第2実施形態によれば、製管中、製管装置20Bが後続帯部19からの捩じりや引っ張り等の力によって延伸後方側へ傾斜しようとしたときは、倒れ防止ユニット50Bの倒れ防止部材53が管部分3aの内周面に強く当たって傾斜を規制するのに加えて、倒れ防止ユニット60の一対の倒れ防止部材62,63が管部分3aの内周面に強く当たって傾斜を規制する。これによって、製管装置20Bが延伸後方側へ倒れるのを確実に防止できる。
倒れ防止部材62,63のサイズを大きくすることで、倒れ防止部材62,63と管部分3aの内周面との接触面積を大きくできる。これによって、製管装置10が倒れないように確実に支えることができる。また、倒れ防止ユニット60の重量を重くすることによって、倒れ防止ユニット60に加わる負荷に対する耐力を高めて、倒れ防止ユニット60の変形を防止できる。
更に、更生管3の管径に応じて、倒れ防止部材62,63どうしの離間距離を調節することで、これら倒れ防止部材62,63がそれぞれ管部分3aの内周面に確実に当たるようにできる。これによって、製管装置20が倒れるのを確実に防止することができる。
【0042】
本発明は、前記実施形態に限らず種々の改変をなすことができる。
例えば、倒れ防止部材は、回転体に限らず、管部分3aの内周面に沿ってスライドする摺動体であってもよい。
本発明は、更生管3以外の螺旋管の製管にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば、老朽化した下水道管の更生技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 既設管
3 更生管
3a 先に製管された管部分
3e 延伸前方側の管端部
10 帯状部材
19 後続帯部
20 製管装置
20B 製管装置
21 装置フレーム
22 側壁
29 外周規制ワイヤ
30 駆動部
31 駆動モータ
31b 筐体
32,33 駆動ローラ
40 管端ガイド
42 中間部の管端ガイド
50 倒れ防止ユニット
50B 倒れ防止ユニット
51 支持部材
52,53 倒れ防止部材
60 倒れ防止ユニット
61 支持部材
62,63 倒れ防止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8