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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175517
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電動遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/264 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
E06B9/264 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093356
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100182349
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 誠治
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 輝
(72)【発明者】
【氏名】前原 竜二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃
【テーマコード(参考)】
2E043
【Fターム(参考)】
2E043AA01
2E043AA02
2E043AA04
2E043BC02
2E043BE14
2E043DA03
(57)【要約】
【課題】遮蔽材が下降動作中に障害物に接触した場合に駆動軸の回転を機械的にロックする障害停止装置を用いて構成される電動遮蔽装置を提供する。
【解決手段】電動ブラインド100は、操作信号に基づきモーター111を駆動させて駆動軸112を回転させることによりスクリーン120を昇降動作させる制御ユニット113と、スクリーンが下降動作中に障害物に接触すると、駆動軸のスクリーン下降方向の回転を機械的にロックして下降動作を停止させる障害停止状態を維持する障害停止装置130と、を備え、制御ユニットは、障害停止状態において操作信号として下降指令を受信した場合には、スクリーン上昇方向に駆動軸を所定量回転させてスクリーンを上昇動作させた後に、スクリーン下降方向に駆動軸を回転させてスクリーンを下降動作させることを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作信号に基づきモーターを駆動させて駆動軸を回転させることにより遮蔽材を昇降動作させる制御装置と、
前記遮蔽材が下降動作中に障害物に接触すると、前記駆動軸の遮蔽材下降方向の回転を機械的にロックして下降動作を停止させる障害停止状態を維持する障害停止装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合には、遮蔽材上昇方向に前記駆動軸を所定量回転させて前記障害停止装置のロックを解除するロック解除位置まで前記遮蔽材を上昇動作させた後に、遮蔽材下降方向に前記駆動軸を回転させて前記遮蔽材を下降動作させることを特徴とする、電動遮蔽装置。
【請求項2】
前記モーターの回転を検知するエンコーダーを更に備え、
前記制御装置は、前記エンコーダーの検知情報及び前記モーターの状態情報の少なくともいずれかの情報に基づいて、前記障害停止装置が作動して前記障害停止状態となったか否かを判定することを特徴とする、請求項1に記載の電動遮蔽装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合には、前記遮蔽材を前記ロック解除位置よりも更に上昇させた後に、前記遮蔽材を下降動作させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動遮蔽装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合に遮蔽材上昇方向に前記駆動軸を前記所定量回転させている間は、前記駆動軸の回転速度を遅くすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動遮蔽装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合に遮蔽材上昇方向に前記駆動軸を前記所定量回転させている間は、アラームを発することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動遮蔽装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記障害停止装置が作動して前記障害停止状態となった場合に前記モーターを停止し、前記障害停止状態において前記操作信号を受信した場合に、前記モーターを再駆動することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動遮蔽装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動遮蔽装置としては、特開2007-177584号公報(特許文献1)に示されるものがある。同文献に示される電動遮蔽装置は、昇降コードの張力状態に応じて作動するマイクロスイッチにより構成された障害物検知停止装置を備えており、昇降コードの緩みに伴いマイクロスイッチが作動することでモーターの駆動を停止するように構成されている。
【0003】
このような従来の電動遮蔽装置によれば、遮蔽材が下降動作中に障害物に接触して昇降コードが緩むとマイクロスイッチが作動してモーターの駆動を停止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-177584号公報
【特許文献2】特開2008-156984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電動の遮蔽装置と手動の遮蔽装置との間で部品を共用可能とするために、マイクロスイッチを用いずに上記同様の障害停止を可能にしたいという要望がある。そのため、例えば特開2008-156984号公報(特許文献2)に開示される手動の遮蔽装置が備える障害停止装置のように、昇降コードが緩んだ場合には駆動軸の回転を機械的にロックする障害停止装置を用いて電動遮蔽装置を構成する技術が望まれているという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、遮蔽材が下降動作中に障害物に接触した場合に駆動軸の回転を機械的にロックする障害停止装置を用いて構成される電動遮蔽装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によれば、操作信号に基づきモーターを駆動させて駆動軸を回転させることにより遮蔽材を昇降動作させる制御装置と、前記遮蔽材が下降動作中に障害物に接触すると、前記駆動軸の遮蔽材下降方向の回転を機械的にロックして下降動作を停止させる障害停止状態を維持する障害停止装置と、を備え、前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合には、遮蔽材上昇方向に前記駆動軸を所定量回転させて前記障害停止装置のロックを解除するロック解除位置まで前記遮蔽材を上昇動作させた後に、遮蔽材下降方向に前記駆動軸を回転させて前記遮蔽材を下降動作させることを特徴とする、電動遮蔽装置が提供される。
【0008】
かかる構成によれば、遮蔽材が下降動作中に障害物に接触した場合に駆動軸の回転を機械的にロックする障害停止装置、すなわち、手動の遮蔽装置でも使用可能な機械的に駆動軸の回転をロックする障害停止装置を用いて電動遮蔽装置を構成することができる。よって、遮蔽装置が電動であるか手動であるかに関わらず、同一の障害停止装置を共用することができるようになる。
【0009】
本発明の応用例として様々なものが考えられる。例えば、前記モーターの回転を検知するエンコーダーを更に備え、前記制御装置は、前記エンコーダーの検知情報及び前記モーターの状態情報の少なくともいずれかの情報に基づいて、前記障害停止装置が作動して前記障害停止状態となったか否かを判定するようにしてもよい。かかる構成によれば、機械的にロックする障害停止装置を用いた場合であっても、障害停止装置が作動して障害停止状態となったことを検知することができる。
【0010】
また、前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合には、前記遮蔽材を前記ロック解除位置よりも更に上昇させた後に、前記遮蔽材を下降動作させるようにしてもよい。かかる構成によれば、遮蔽材と障害物との間の隙間が大きくなり、障害物を取り除く作業をより容易にすることができる。
【0011】
また、前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合に遮蔽材上昇方向に前記駆動軸を前記所定量回転させている間は、前記駆動軸の回転速度を遅くするようにしてもよい。かかる構成によれば、通常の上昇動作ではないことを使用者に知らせることができる。
【0012】
また、前記制御装置は、前記障害停止状態において前記操作信号として下降指令を受信した場合に遮蔽材上昇方向に前記駆動軸を前記所定量回転させている間は、アラームを発するようにしてもよい。かかる構成によれば、通常の上昇動作ではないことを使用者に知らせることができる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記障害停止装置が作動して前記障害停止状態となった場合に前記モーターを停止し、前記障害停止状態において前記操作信号を受信した場合に、前記モーターを再駆動するようにしてもよい。かかる構成によれば、遮蔽材の下降が停止したときにモーターも停止するため、クリープ負荷が生じることなく遮蔽材を停止させた状態に保持できる。よって、例えば、ホテルの窓などのように高い遮蔽性が求められる場合であっても、遮蔽材が窓の下枠に当接すると、その位置で停止した状態が保持される。このため、遮蔽材と窓枠との間に隙間が生じることが防止され、高い遮蔽性を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遮蔽材が下降動作中に障害物に接触した場合に駆動軸の回転を機械的にロックする障害停止装置を用いて構成される電動遮蔽装置が提供される。本発明のその他の効果については、後述する発明を実施するための形態においても説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の電動ブラインド100(電動遮蔽装置)の全体構成を示す概略正面図である。
図2】障害停止装置130を説明するための図であり、(a)は分解斜視図であり、(b)は組立後の斜視図である。
図3】障害停止装置130の動作を説明するための図であり、(a)は通常時の一部平面図であり、(b)は障害発生時の一部平面図及びカム筒134の爪134cとドラム受け115の端部凸部115aの状態を示す一部底面図であり、(c)は障害物除去後の一部平面図であり、(d)はカム筒134の爪134cとドラム受け115の端部凸部115aの状態を示す一部底面図であり、(e)は復帰中の一部平面図である。
図4】電動ブラインド100の制御フローである。
図5】電動ブラインド100の動作を説明するための図であり、(a)はスクリーン120(遮蔽材)が通常に下降しているときの一部正面図、(b)は障害発生時の一部正面図、(c)は障害物除去後に下降指令を受信したときの一部正面図、(d)は下降指令により下降中の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
本実施形態に係る電動ブラインド100(電動遮蔽装置)の全体の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の電動ブラインド100の全体構成を示す概略正面図である。本実施形態では、電動ブラインド100は、プリーツスクリーンを例に挙げて説明するが、これに限ることなく、横型ブラインド、ローマンシェード等、任意のブラインドに適用することができる。
【0018】
電動ブラインド100は、図1に示したように、窓枠等の固定部に取り付けられるヘッドボックス110を備える。ヘッドボックス110内には、操作信号に基づきモーター111を駆動させて駆動軸112を回転させることによりスクリーン120(遮蔽材)を昇降動作させる制御ユニット113(制御装置)と、スクリーン120が下降動作中に障害物に接触すると、駆動軸112のスクリーン下降方向の回転を機械的にロックして下降動作を停止させる障害停止状態を維持する障害停止装置130(図2参照)と、を備える。
【0019】
さらに、ヘッドボックス110内には、図1に示したように、駆動軸112と一体に回転する巻取ドラム114と、ヘッドボックス110内で固定され、巻取ドラム114を回転可能に支持するドラム受け115と、モーター111及び制御ユニット113に電源を供給する電源ユニット116と、を備える。
【0020】
制御ユニット113では、後述する制御フローによって障害停止の制御を行う。制御ユニット113での障害検知の判定方法は、図示していないエンコーダーの検知情報及びモーター111の負荷に伴う過電流等に関する情報などの状態情報の少なくともいずれかの情報に基づいて判定する。制御ユニット113は、障害停止状態において操作信号として下降指令を受信した場合には、スクリーン上昇方向に駆動軸112を所定量回転させてスクリーン120を上昇動作させた後に、スクリーン下降方向に駆動軸112を回転させてスクリーン120を下降動作させるように構成される。
【0021】
ヘッドボックス110からは、図1に示したように、複数の襞が上下方向に連続して形成されるスクリーン120が昇降可能に吊り下げられている。スクリーン120の下端にはボトムレール121が設けられる。また、ヘッドボックス110からは複数の昇降コード140が垂下されており、昇降コード140の下端はボトムレール121に取り付けられる。昇降コード140の上端はヘッドボックス110に導入されて、ヘッドボックス110内に配設された巻取ドラム114に巻取り及び巻解き可能に連結される。
【0022】
スクリーン120の下降中にボトムレール121等が障害物に接触すると、障害物に接触した部分は下降不能となるが、それ以外の障害物に接触していない部分が引き続き下降しようとするので、ボトムレール121の片下がりが生じるおそれがある。そのような片下がりを防ぐために、各巻取ドラム114と駆動軸112との間に障害停止装置130が設けられる。
【0023】
(障害停止装置130)
本実施形態の特徴的な構成である障害停止装置130について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、障害停止装置130を説明するための図であり、(a)は分解斜視図であり、(b)は組立後の斜視図である。図3は、障害停止装置130の動作を説明するための図であり、(a)は通常時の一部平面図、(b)は障害発生時の一部平面図及びカム筒134の爪134cとドラム受け115の端部凸部115aの状態を示す底面図、(c)は障害物除去後の一部平面図、(d)はカム筒134の爪134cとドラム受け115の端部凸部115aの状態を示す一部底面図であり、(e)は復帰中の一部平面図である。
【0024】
障害停止装置130は、図2に示したように、巻取ドラム114の端部に設けられた円筒部131に形成された案内孔132と、入力軸133と、カム筒134と、カム筒134に形成された凸部135とから構成される。
【0025】
円筒部131は、巻取ドラム114の端部に設けられ、巻取ドラム114と一体に回転する。円筒部131には、後述するカム筒134の凸部135の移動を案内する案内孔132が形成される。案内孔132は、図3(a)に示したように、一端から他端まで巻取ドラム114の軸方向に対して傾斜して伸びるカム溝部132aと、カム溝部132aの他端を一端として該一端から他端まで軸方向に直交する方向に伸びる戻り溝部132bと、からなる。また、円筒部131の内周面には、図2(a)に示したように、軸方向に延びる円筒部リブ131aが形成されている。
【0026】
入力軸133は、図2に示したように、円筒部131を介して巻取ドラム114内に軸方向に移動不能かつ回転可能に配置される。入力軸133は、その中心孔133aの断面形状が駆動軸112の非円形断面形状と合致しており、よって、駆動軸112と一体に回転するようになっている。さらに、入力軸133の外周面には、外径方向に突出した一対の入力軸リブ133bが形成される。
【0027】
カム筒134は、図2に示したように、入力軸133と円筒部131との間に配設される。カム筒134の内周面には入力軸133の入力軸リブ133bと嵌合する溝が形成されており、入力軸リブ133bと溝とが嵌合することによって、カム筒134は入力軸133及び駆動軸112と一体回転するようになっている。
【0028】
また、カム筒134の外周面には、図2(a)に示したように、外径方向に突出する凸部135が形成される。凸部135の周囲にはコ字状のスリット134aが形成されており、このスリット134aの存在によって、凸部135は径方向に弾性変位可能となっている。カム筒134の凸部135と周方向に離間した位置には凹部134bが形成されている。
【0029】
さらに、カム筒134の外周面には、図2(a)に示したように、鋸歯状に形成された爪134cが設けられている。爪134cは、端部が軸方向に凹凸するように形成されたドラム受け115の端部凸部115aに係合可能となっている(図3(b)参照)。爪134cがドラム受け115の端部凸部115aに係合したときにはカム筒134は回転不能となり、ドラム受け115の端部凸部115aと非係合となっているときにはカム筒134は回転可能である。カム筒134は、回転可能位置と回転不能位置との間を軸方向に移動する。通常時は、カム筒134は、爪134cとドラム受け115とが軸方向に離反しており、回転可能位置にある。さらに、カム筒134には、爪134cが形成された部分から軸方向に軸受部134dが延設されている。軸受部134dは、ドラム受け115に回転可能に支持される。
【0030】
カム筒134の凸部135が巻取ドラム114の案内孔132に挿入され、円筒部131の円筒部リブ131aがカム筒134の凹部134bに挿入されることで、カム筒134と巻取ドラム114は所定角度範囲で相対回転可能で、所定範囲で軸方向に相対移動可能となっている。
【0031】
以上の円筒部131、入力軸133及びカム筒134は、次のように組み立てられる。まず、円筒部131の内部に端部から入力軸133を挿入する。そして、円筒部131と入力軸133の間にカム筒134を更に挿入する。カム筒134の凸部135が内径方向に変位することで、図2(b)に示したように、巻取ドラム114の円筒部131をくぐり案内孔132へと挿入される。案内孔132は組立時に外部から視認できるために、凸部135を案内孔132に挿入する作業は簡単に行うことができる。また、組立後にメンテナンスの為等で、部品を分解する際にも、案内孔132と凸部135とが外部から視認可能であるために、凸部135を内径方向に押し込みながら案内孔132から外すことで、簡単に作業を行うことができる。
【0032】
以上のように構成される障害停止装置130の作用を、図3を参照しながら説明する。
モーター111が駆動しておらず駆動軸112が停止中のときは、巻取ドラム114には、スクリーン120及びボトムレール121の自重によって昇降コード140からスクリーン120の下降方向に回転が付与されている。図3(a)に示すように、カム筒134の凸部135は、案内孔132のカム溝部132aの一端にあって、かつ、図には表れていないが、カム筒134の凹部134bの端面が円筒部131の円筒部リブ131aと当接している。この状態は、回転軸112が回転可能となった障害停止装置130のロックが解除された状態である。よって、駆動軸112がスクリーン下降方向に回転すると、入力軸133及びカム筒134は、矢印aに示したように、巻取ドラム114の回転を許容する。これによって、昇降コード140は巻取ドラム114から巻き解かれて、スクリーン120が下降する。
【0033】
スクリーン120が下降中にボトムレール121等が障害物に接触すると、昇降コード140に張力が作用しなくなり、下降方向に回転していた巻取ドラム114は回転を停止する。しかしながら、モーター111によって駆動軸112は昇降コード140を巻き解く方向に回転しているため、入力軸133及びカム筒134は回転を続ける。よって、回転を停止した巻取ドラム114とカム筒134との間に相対回転が発生する。
【0034】
このため、図3(b)の矢印bに示したように、カム筒134の凸部135は、案内孔132のカム溝部132aに沿って移動し、カム溝部132aの他端に到達する。この凸部135の移動によってカム筒134は、矢印cに示したように、軸方向に移動して、その爪134cがドラム受け115の端部凸部115aに係止する。こうして、カム筒134の回転が禁止されるため、モーター111の駆動にかかわらず駆動軸112のスクリーン下降方向への回転が拘束される。よって、障害物の影響を受けずに張力が作用する昇降コード140に取り付けられる他の巻取ドラム114も回転が阻止されて、ボトムレール121の片下がりを防ぐことができる。この状態では駆動軸112の回転が拘束されており、これは障害停止装置130がロックされた状態である。
【0035】
上昇指令又は下降指令を受信した場合には、モーター111によって駆動軸112がスクリーン上昇方向に回転駆動するため、駆動軸112と一体にカム筒134も、図3(c)の矢印dに示すスクリーン上昇方向に回転する。よって、カム筒134の凸部135は、矢印dに示したように、案内孔132の戻り溝部132bに沿って相対移動し、戻り溝部132bの他端に到達する。戻り溝部132bの他端は係止部となり、カム筒134の凸部135は巻取ドラム114のスクリーン下降方向の回転を阻止するので、結果として、スクリーン120が停止した状態を保持することができる。
【0036】
さらに、モーター111によって駆動軸112をスクリーン上昇方向に回転駆動すると、カム筒134も図3(d)の矢印eに示すスクリーン上昇方向に回転駆動する。このとき、カム筒134の鋸歯状の爪134cの斜面が、ドラム受け115の端部凸部115aに当接しながら回転する。よって、カム筒134は、図3(e)の矢印fに示したように、軸方向に移動する。これによって、カム筒134の凸部135は、案内孔132のカム溝部132aに移動する。このため、駆動軸112は回転が正逆方向に自由となるため、スクリーン下降方向にも回転させることができる状態となる。よって、障害停止装置130は、ロックが解除された状態となる。
【0037】
以上、本実施形態の電動ブラインド100の構成について説明した。次に、電動ブラインド100の動作について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、電動ブラインド100の制御フローである。図5は、電動ブラインド100の動作を説明するための図であり、(a)はスクリーン120が通常に下降しているときの一部正面図、(b)は障害発生時の一部正面図、(c)は障害物除去後に下降指令を受信したときの一部正面図、(d)は下降指令により下降中の正面図である。
【0038】
一例として、図5に示したように、電動ブラインド100の下方の床面FLに障害物OBが置いてあり、スクリーン120を下降させる場合について説明する。電動ブラインド100に電源が入ると、制御ユニット113は、図4に示したフローに従って制御を行う。まず、制御ユニット113は、図4に示したように、昇降指令信号を受信したかどうかを判断する(ステップS101)。制御ユニット113が昇降指令信号を受信していない(No)場合は、ステップS101に戻る。一方、制御ユニット113が、昇降指令信号を受信した(Yes)場合は、障害停止状態であるかどうかを判断する(ステップS102)。
【0039】
ステップS102において、障害停止状態でないと判断された(No)場合、すなわち、ボトムレール121が障害物OBに接触していない状態の場合は、昇降指令に従って昇降動作を開始する(ステップS103)。例えば、制御ユニット113がスクリーンを下降させる昇降指令信号を受信している場合は、モーター111は、昇降指令信号に従ってスクリーン下降方向に駆動し、図5(a)の矢印gに示したように、スクリーン120が下降していく。なお、ステップS102において、障害停止状態であると判断された(Yes)場合、すなわち、ボトムレール121が障害物OBに接触している状態の場合は、後述する。
【0040】
次いで、制御ユニット113は、昇降動作の停止指令を受信したか、上下限位置に到達したことを検知したか、障害を検知したかが判断される(ステップS104)。ステップS104において、いずれでもない(No)場合は、ステップS104に戻る。すなわち、スクリーン120の昇降が継続される。ステップS104において、いずれかが該当する(YES)場合は、昇降動作を停止する(ステップS105)。
【0041】
ここで、障害検知の判定方法について説明する。電動ブラインド100は、図5(b)に示したように、ボトムレール121が障害物OBに接触すると、ボトムレール121が下降できなくなるために巻取ドラム114による昇降コード140の巻き解きが停止し、駆動軸112、入力軸133及びカム筒134のみが回転する。よって、巻取ドラム114とカム筒134との間で相対回転が発生することで障害停止装置130が作動して、図3(b)に示したように、駆動軸112の回転が拘束されて障害停止装置130がロックされた状態となる。このときの床面FLとボトムレール121の距離はL1である。このように障害停止装置130が作動すると、エンコーダーの検知情報やモーター111の負荷に伴う過電流等に関する情報などの状態情報が変化するため、これらの状態情報の少なくともいずれかの情報で障害停止装置130が作動したかどうかが判断される。
【0042】
前述のステップS102で、障害停止状態であると判定された(Yes)場合、図4に示したように、制御ユニット113は上昇指令を受信したかどうかを判断する(ステップS106)。制御ユニット113は、上昇指令を受信した(Yes)場合は、モーター111をスクリーン上昇方向に駆動する(ステップS107)。よって、スクリーン120が上昇していく。そして、前述のステップS104に移行する。
【0043】
前述のステップS106で、制御ユニット113が上昇指令を受信していない(No)、すなわち、下降指令を受信した場合は、制御ユニット113はモーター111をスクリーン上昇方向に所定量駆動する(ステップS108)。すると、図5(c)の矢印hに示したように、スクリーン120が床面FLとボトムレール121の距離が障害停止装置130のロックが解除された位置であるロック解除位置L2になるまで上昇して、ボトムレール121が障害物OBから離間する。よって、障害物OBを取り除くことができる。L2-L1は、モーター111がスクリーン上昇方向に駆動する上記所定量に相当し、このとき、障害停止装置130は、図3(c)~(e)に示したように、カム筒134の凸部135は、案内孔132のカム溝部132aに移動し、ロックが解除された状態となる。
【0044】
なお、制御ユニット113は、障害停止状態において操作信号として下降指令を受信した場合には、スクリーン120をロック解除位置L2よりも更に上昇させた後に、後述するステップS109の通り、スクリーン120を下降動作させるようにすることもできる。すなわち、障害停止装置130のロックが解除された後に、スクリーン120を更に数センチ程度上昇させることもできる。こうすることにより、ボトムレール121と障害物OBとの間の隙間が大きくなり、障害物OBを取り除く作業をより容易にすることができる。
【0045】
また、スクリーン120がロック解除位置L2(又はロック解除位置L2から更に数センチ程度上昇した高さ)まで上昇する速度を、通常時にスクリーン120を上昇させる速度よりも遅くしてもよい。また、スクリーン120がロック解除位置L2(又はロック解除位置L2から更に数センチ程度上昇した高さ)まで上昇している間はアラームが鳴るようにしてもよい。このような構成にすることにより、通常の上昇動作ではないことを使用者に知らせることができる。
【0046】
次に、制御ユニット113は、図4に示したように、モーター111をスクリーン下降方向に駆動する(ステップS109)。すると、図5(d)の矢印iに示したように、スクリーン120が下降していく。そして、前述のステップS104に移行する。ステップ108からステップ109へ移行する間に障害物OBを取り除くが、ステップ108からステップ109へ移行する間隔は、障害物OBを取り除く作業時間を考慮して予め間隔を設定しておいてもよく、また、モーター111の反転動作の時間を利用してもよい。さらに、ステップ108を行うとモーター111の駆動が一旦止まるように設定し、ユーザーが指令を入力するとステップ109を行うようにしてもよい。
【0047】
なお、説明の便宜上、図4の制御フローは、制御ユニット113が昇降指令を受信してからスクリーン120の昇降を停止するまでの一連の動作に関するものとしているが、例えばスクリーン120を床面FLまで下降させる間に本制御フローが繰り返し行われ、その過程において複数回の障害検知が生じ得ることは言うまでもない。
【0048】
このように、スクリーン120が下降動作中に障害物OBに接触して駆動軸112の回転が機械的にロックされたときは、次に受信する昇降指令が上昇指令又は下降指令のいずれであっても、必ず駆動軸112を上昇方向に動作させるように制御することで障害停止装置130を解除することができる。
【0049】
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、スクリーン120が下降動作中に障害物に接触した場合に駆動軸112の回転を機械的にロックする障害停止装置130、すなわち、手動の遮蔽装置でも使用可能な機械的に駆動軸112の回転をロックする障害停止装置130を用いて電動ブラインド100を構成することができる。よって、遮蔽装置が電動であるか手動であるかに関わらず、同一の障害停止装置130を共用することができるようになる。
【0050】
また、制御ユニット113は、エンコーダーの検知情報及びモーター111の状態情報の少なくともいずれかの情報に基づいて、障害停止装置130が作動して障害停止状態となったか否かを判定する。このため、機械的にロックする障害停止装置130を用いた場合であっても、障害停止装置130が作動して障害停止状態となったことを検知することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
例えば、上記実施形態では、制御ユニット113は、障害停止装置130が作動して障害停止状態となった場合にモーター111は駆動した状態のままであるが、本発明はこの例に限定されない。例えば、制御ユニットは、障害停止装置が作動して障害停止状態となった場合にモーターを停止し、障害停止状態において操作信号を受信した場合に、モーターを再駆動するようにしてもよい。かかる構成によれば、スクリーンの下降が停止したときにモーターも停止するため、クリープ負荷が生じることなくスクリーンを停止させた状態で維持させることができる。よって、例えば、ホテルの窓などのように高い遮蔽性が求められる場合に、遮蔽材が下の窓枠に当接すると、スクリーンを停止させた状態で維持させることができる。このため、スクリーンと窓枠との間に隙間が生じることが防止され、高い遮蔽性を実現することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 電動ブラインド(電動遮蔽装置)
110 ヘッドボックス
111 モーター
112 駆動軸
113 制御ユニット(制御装置)
114 巻取ドラム
115 ドラム受け
115a 端部凸部
116 電源ユニット
120 スクリーン(遮蔽材)
121 ボトムレール
130 障害停止装置
131 円筒部
131a 円筒部リブ
132 案内孔
132a カム溝部
132b 戻り溝部
133 入力軸
133a 中心孔
133b 入力軸リブ
134 カム筒
134a スリット
134b 凹部
134c 爪
134d 軸受部
135 凸部
140 昇降コード
FL 床面
OB 障害物
L2 ロック解除位置

図1
図2
図3
図4
図5