(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175518
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241211BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093357
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃裕
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】現実のクリニックや人に対する患者の心理的抵抗を低減させることが可能な情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】実施形態の情報処理装置は、取得部と、行動分析部と、出力制御部とを持つ。前記取得部は、メタバースにおいてアバターに扮してクリニックを受診する患者の行動履歴を取得する。前記行動分析部は、前記行動履歴を分析することで、前記患者の状態を推定するための特定の行動を判定する。前記出力制御部は、前記特定の行動に基づく情報を、出力インタフェースを介して出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタバースにおいてアバターに扮してクリニックを受診する患者の行動履歴を取得する取得部と、
前記行動履歴を分析することで、前記患者の状態を推定するための特定の行動を判定する行動分析部と、
前記特定の行動に基づく情報を、出力インタフェースを介して出力する出力制御部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記行動履歴には、前記患者の前記メタバースにおける行動履歴と、前記患者の現実世界における行動履歴とのうち一方又は双方が含まれる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記行動履歴には、前記患者が前記クリニックを受診する前の行動履歴と、前記患者が前記クリニックを受診した後の行動履歴と、前記患者が前記クリニックを受診している間の行動履歴と、のうち少なくとも一つが含まれる、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定の行動に基づいて、前記患者が現実世界へと復帰できる度合いを示す復帰度を判定する復帰度判定部をさらに備え、
前記出力制御部は、前記復帰度に基づく情報を、前記出力インタフェースを介して出力する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記出力インタフェースを介して、前記メタバースにおいて前記患者のアバターである第1アバターを出力し、
前記復帰度に応じて、前記メタバースにおける前記第1アバターの姿を抽象化させる抽象化部をさらに備える、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記抽象化部は、前記復帰度が低いほど、前記患者の姿から遠ざかるように前記第1アバターの姿を変更し、前記復帰度が高いほど、前記患者の姿に近づけるように前記第1アバターの姿を変更する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記出力制御部は、さらに、前記出力インタフェースを介して、前記第1アバターの音声を出力し、
前記抽象化部は、前記復帰度に応じて、前記メタバースにおける前記第1アバターの音声を変更する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記抽象化部は、前記復帰度が低いほど、前記患者の音声から遠ざかるように前記第1アバターの音声を変更し、前記復帰度が高いほど、前記患者の音声に近づけるように前記第1アバターの音声を変更する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記出力制御部は、前記出力インタフェースを介して、前記メタバースにおいて前記クリニックの医師のアバターである第2アバターを出力し、
前記復帰度に応じて、前記メタバースにおける前記第2アバターの姿を抽象化させる抽象化部をさらに備える、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記抽象化部は、前記復帰度が低いほど、前記医師の姿から遠ざかるように前記第2アバターの姿を変更し、前記復帰度が高いほど、前記医師の姿に近づけるように前記第2アバターの姿を変更する、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記出力制御部は、前記出力インタフェースを介して、前記メタバースにおいて前記患者のアバターである第1アバターを出力し、
前記復帰度に応じて、前記メタバースにおける前記第1アバターからみた外部環境を抽象化させる抽象化部をさらに備える、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記抽象化部は、前記復帰度が低いほど、現実世界から遠ざかるように前記外部環境を変更し、前記復帰度が高いほど、前記現実世界に近づけるように前記外部環境を変更する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
コンピュータを用いた情報処理方法であって、
メタバースにおいてアバターに扮してクリニックを受診する患者の行動履歴を取得すること、
前記行動履歴を分析することで、前記患者の状態を推定するための特定の行動を判定すること、
前記特定の行動に基づく情報を、出力インタフェースを介して出力すること、
を含む情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
メタバースにおいてアバターに扮してクリニックを受診する患者の行動履歴を取得すること、
前記行動履歴を分析することで、前記患者の状態を推定するための特定の行動を判定すること、
前記特定の行動に基づく情報を、出力インタフェースを介して出力すること、
を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタバースクリニックというサービスが提供されている。このサービスは、メタバース上で匿名アバターとして参加し、医師などの医療資格者による、医療相談やカウンセリングなどが受けられる。
【0003】
メタバースを利用することで、匿名性に加えて、一緒にいる感覚や心理的障壁の低減の効果が得られ、自己開示がしやすいといった効果が得られる。そのため、メタバースクリニックは主にメンタルヘルス患者に対して活用されている。
【0004】
メンタルヘルス患者の最終的な目標の一つに、現実のクリニックを受診し、現実の人と触れ合うことが考えられる。しかしながら、メンタルヘルス患者に向けられたメタバースクリニック(つまりメタバースメンタルクリニック)では、アバターのまま会話が行われるため、現実のクリニックや人への抵抗を減らすことができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、現実のクリニックや人に対する患者の心理的抵抗を低減させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の情報処理装置は、取得部と、行動分析部と、出力制御部とを持つ。前記取得部は、メタバースにおいてアバターに扮してクリニックを受診する患者の行動履歴を取得する。前記行動分析部は、前記行動履歴を分析することで、前記患者の状態を推定するための特定の行動を判定する。前記出力制御部は、前記特定の行動に基づく情報を、出力インタフェースを介して出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態における情報処理システム1の構成例を表す図。
【
図2】第1実施形態におけるメタバースの体験場面の一例を表す図。
【
図3】第1実施形態における情報処理装置100の構成例を表す図。
【
図4】第1実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャート。
【
図7】復帰度に応じて患者アバターA
Pの抽象度を変更する様子を表した図。
【
図8】復帰度に応じて患者アバターA
Pの抽象度を変更する様子を表した図。
【
図9】現実世界への復帰度が低い患者Pが医療クリニックを受診したときの様子を表す図。
【
図10】現実世界への復帰度が低い患者Pが医療クリニックを受診したときの様子を表す図。
【
図11】第2実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャート。
【
図12】復帰度に応じてメタバース内の外部環境の抽象度を変更する様子を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態の情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムについて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
[情報処理システムの構成]
図1は、第1実施形態における情報処理システム1の構成例を表す図である。第1実施形態における情報処理システム1は、例えば、情報処理装置100、ウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、及びラップトップ型端末400などを備える。これらの装置は通信ネットワークNWを介して通信可能に接続される。ウェアラブルデバイス200は「出力インタフェース」の一例であり、タブレット型端末300及びラップトップ型端末400は「出力インタフェース」の他の例である。
【0011】
通信ネットワークNWは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味する。通信ネットワークNWは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワーク等を含む。
【0012】
情報処理装置100は、通信ネットワークNWを介して、ウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、及びラップトップ型端末400のうち、一部または全部と通信し、その(それら)装置又は端末において記録された患者Pの行動履歴を収集する。
【0013】
患者Pとは、メタバース(仮想空間ともいう)上において、とあるアバターに扮して医療クリニック(特に心療内科クリニック又は精神科クリニック)を過去に受診した患者、アバターに扮して現在医療クリニックを受診している患者、及び/又はアバターに扮して医療クリニックを将来受診する予定の患者である。つまり、患者Pは、メンタルになんらかの疾患を患う患者である。
【0014】
情報処理装置100は、様々な装置又は端末から患者Pの行動履歴を収集すると、その患者Pの行動履歴を分析することで、患者Pの心身の状態(具体的には患者Pが現実世界へと復帰できる度合いを示す復帰度)を判定する。
【0015】
そして情報処理装置100は、患者Pの心身の状態(患者Pの現実世界への復帰度)に応じて、メタバース内の環境の出力態様を変更する。
【0016】
メタバース内の環境には、例えば、患者Pのアバター(以下、患者アバターAPという)の姿や音声、医療クリニックにおいて患者Pを診察する際に患者Pと対話する医師のアバター(以下、医師アバターADという)の姿や音声などが含まれる。患者アバターAPは「第1アバター」の一例であり、医師アバターADは「第2アバター」の一例である。
【0017】
さらにメタバース内の環境には、患者アバターAPからみたメタバース内の風景や構造物などが含まれてよい。より具体的には、メタバース内の環境には、医療クリニックの壁のテクスチャが含まれたり、医療クリニックの部屋やそこに配置された椅子や机が含まれたり、患者アバターAPと医師アバターADとの距離が含まれたり、医療クリニック内で流れる音楽が含まれたり、その他さまざまな外部環境が含まれてよい。
【0018】
ウェアラブルデバイス200は、メタバースを体験するためのデバイスであり、例えば、頭部に装着して使用するゴーグル、ヘッドセット、ヘッドマウントディスプレイ、スマートグラスなどである。ウェアラブルデバイス200は、例えば、VR(Virtual Reality)技術を用いた装置である。ウェアラブルデバイス200は、VRに限られず、AR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)、プロジェクションマッピングといった他の技術を用いた装置であってもよい。
【0019】
ウェアラブルデバイス200には、メタバース上においてアバターを操作することが可能なコントローラやグローブが付随してよい。これらコントローラやグローブには、生体センサ(例えば脈拍センサ、発汗量センサ、温度センサなど)やモーションセンサ、患者Pの顔を撮像可能なカメラ(いわゆるインカメラ)、患者Pの声を収音可能なマイクロフォンが備えられてよい。この場合、生体センサの検出値(脈拍、発汗量、体温など)や、モーションセンサの検出値(加速度や角速度など)、カメラによって撮像された画像(患者Pの顔画像など)、マイクロフォンによって取得された音(患者Pの音声など)は、患者Pの行動履歴の一部として記録される。
【0020】
例えば、患者Pは、ウェアラブルデバイス200を装着して、自身の姿に擬した患者アバターAPや動物やキャラクターに擬した患者アバターAPに扮してメタバース内の医療クリニックを受診してよい。
【0021】
タブレット型端末300及びラップトップ型端末400は、患者Pによって利用される端末装置(コンピュータ)である。これら装置は、ウェアラブルデバイス200の代わりや、そのウェアラブルデバイス200に付随するコントローラやグローブの代わりに利用されてよい。
【0022】
例えば、患者Pは、ウェアラブルデバイス200を利用することに代えて、あるいは加えて、タブレット型端末300及びラップトップ型端末400の一方又は双方を利用することで、患者アバターAPに扮してメタバース内の医療クリニックを受診してよい。
【0023】
[メタバースの体験場面]
図2は、第1実施形態におけるメタバースの体験場面の一例を表す図である。図中のMTはメタバース内の空間、すなわち仮想空間を表している。
【0024】
例えば、ウェアラブルデバイス200を装着した患者Pは、そのウェアラブルデバイス200に投影された映像を視認することで、患者アバターAPに扮してメタバース内の医療クリニックを受診することができる。この際、患者Pは、ウェアラブルデバイス200に付随するコントローラやグローブを利用したり、あるいはタブレット型端末300やラップトップ型端末400を利用したりすることで、メタバース内で患者アバターAPを操作することができる。例えば、マウス操作やタッチパネル操作によって患者アバターAPを操作することができる。マウス操作量(マウスポインタの移動量やクリック回数など)や、タッチパネル操作量(例えばタップ回数やスクロール距離など)などは、患者Pの行動履歴の一部として記録される。
【0025】
[情報処理装置の構成]
図3は、第1実施形態における情報処理装置100の構成例を表す図である。情報処理装置100は、例えば、通信インタフェース111と、入力インタフェース112と、出力インタフェース113と、メモリ114と、処理回路120とを備える。
【0026】
通信インタフェース111は、通信ネットワークNWを介して外部装置と通信する。外部装置とは、ウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、及びラップトップ型端末400などである。通信インタフェース111は、例えば、NIC(Network Interface Card)や無線通信用のアンテナ等を含む。
【0027】
入力インタフェース112は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路120に出力する。
【0028】
例えば、入力インタフェース112は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等を含む。入力インタフェース112は、例えば、マイクロフォン等の音声入力を受け付けるユーザインタフェースであってもよい。入力インタフェース112がタッチパネルである場合、入力インタフェース112は、後述する出力インタフェース113に含まれるディスプレイ113aの表示機能を兼ね備えるものであってもよい。
【0029】
なお、本明細書において入力インタフェース112はマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース112の例に含まれる。
【0030】
出力インタフェース113は、例えば、ディスプレイ113aやスピーカ113bなどを備える。ディスプレイ113aは、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ113aは、処理回路120によって生成された画像や、操作者からの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。例えば、ディスプレイ113aは、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。スピーカ113bは、処理回路120から入力された情報を音声として出力する。
【0031】
メモリ114は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクによって実現される。これらの非一過性の記憶媒体は、NAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置といった通信ネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。
【0032】
また、メモリ114には、ROM(Read Only Memory)やレジスタ等の非一過性の記憶媒体が含まれてもよい。メモリ114には、処理回路120のハードウェアプロセッサによって実行されるプログラムや、処理回路120による各種演算結果、上述した患者Pの行動履歴などが格納される。
【0033】
処理回路120は、例えば、取得機能121と、行動分析機能122と、判定機能123と、アバター生成機能124と、特徴抽出機能125と、抽象化機能126と、出力制御機能127とを備える。取得機能121は「取得部」の一例であり、行動分析機能122は「行動分析部」の一例であり、判定機能123は「復帰度判定部」の一例であり、抽象化機能126は「抽象化部」の一例であり、出力制御機能127は「出力制御部」の一例である。
【0034】
処理回路120は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ114(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0035】
処理回路120におけるハードウェアプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。
【0036】
メモリ114にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ114に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が情報処理装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ114にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0037】
[情報処理装置の処理フロー]
以下、フローチャートに即しながら、情報処理装置100の処理回路120による一連の処理について説明する。
図4は、第1実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャートである。
【0038】
まず、取得機能121は、患者Pの行動履歴を取得する(ステップS100)。
【0039】
上述したように患者Pとは、過去、現在、又は将来の少なくともいずれかの時点において医療クリニックを受診する(受診した)患者である。したがって、患者Pの行動履歴には、過去、現在、又は将来の少なくともいずれかの時点の行動履歴が含まれる。
【0040】
より具体的には、患者Pの行動履歴には、患者Pが医療クリニックを受診する前の行動履歴と、患者Pが医療クリニックを受診した後の行動履歴と、患者Pが医療クリニックを受診している間の行動履歴と、のうち少なくとも一つが含まれる。
【0041】
これらの行動履歴には、患者Pがメタバース内でとった行動や、患者Pが現実世界内でとった行動が含まれる。
【0042】
患者Pの行動履歴には、例えば、患者Pによって操作された患者アバターAPの動きや、患者アバターAPを操作する際の患者Pの動き、患者Pの発話、その他メタバースでの行動や現実世界での行動が含まれる。以下、これらの一部を例示するがこれに限定されない。
【0043】
(i)患者アバターAPの行動(患者Pによって操作された患者アバターAPの動き)
・肯定的な表現(いいね、笑い、お辞儀など)
・否定的な表現(悲しい、恐怖、嘆きなど)
・感情的な表現(おかしい、幸せ、楽しい、幸せ、怒りなど)
・メタバース内での基本的操作(立つ、座る、歩く、走るなど)
【0044】
(ii)モーションセンサや生体センサ、カメラ、マイクロフォンによって検出された患者Pの行動(患者アバターAPを操作する際の患者Pの動き)
・アクションした回数、瞬き、目線、うなずき、貧乏ゆすり、ウェアラブルデバイス200のつけ外し、立つ、座る、口の動き、声の大きさ、表情、動悸、脳波、など
【0045】
(iii)患者Pの発話
・患者Pが医師や他人と会話した際の発話内容、単語、文章、文脈、質問など
【0046】
(iv)その他の行動
・チャットの使用回数、会話した回数・時間、メタバース空間にいた時間(ログイン時間)、診療を受けた医師をネットで調べた回数、診療を受けたクリニックをネットで調べた回数、など
【0047】
例えば、取得機能121は、通信インタフェース111を介して、ウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、又はラップトップ型端末400にアクセスし、その(それら)から患者Pの行動履歴を取得してよい。また、患者Pの行動履歴が入力インタフェース112に入力された場合、取得機能121は、入力インタフェース112から入力された患者Pの行動履歴をしてもよい。更に、メモリ114に患者Pの行動履歴が格納された場合、取得機能121は、メモリ114から患者Pの行動履歴を取得してもよい。
【0048】
次に、行動分析機能122は、取得機能121によって取得された患者Pの行動履歴を分析することで、患者Pの状態を推定するための特定の行動を抽出する又は判定する(ステップS102)。
【0049】
例えば、行動分析機能122は、行動履歴に含まれる一連の患者Pの行動の中から、自己開示をしている行動を特定の行動として抽出する。
【0050】
自己開示をすることでメンタルヘルスの回復につながる可能性があることが多くの研究で認識されている。また自己開示の種類として、(i)趣味又は嗜好、(ii)困難な経験、(iii)欠点又は弱点、(iv)性格や能力の否定的側面、が報告されている。
【0051】
例えば、行動分析機能122は、行動履歴に含まれる一連の患者Pの行動の中から、4つの自己開示のそれぞれを定量的に算出することが可能な指標(自己開示行動)を抽出する。以下に、各指標についていくつか例示するがこれに限定されない。
【0052】
(a)自身がどれだけ話せたか
・自己開示に関する単語を発した回数
・自己開示をするために発言した時間
・自己開示の種類、など
【0053】
(b)相手から聞き出すことができたか
・相槌
・質問回数
・発言を聞いた時間
・肯定的・否定的表現(アバターアクション)を使用した回数
・医師を検索した回数、など
【0054】
(c)ストレスがどれだけかかったか
・目を合わせた回数・時間
・アバターアクションした(コントローラを動かした時間)回数
・動悸
・声の大きさ又はトーンの変化
・発汗量、など
【0055】
次に、判定機能123は、行動分析機能122によって指標として抽出された自己開示行動に基づいて、患者Pの現実世界への復帰度を判定する又は算出する(ステップS104)。
【0056】
図5及び
図6は、復帰度を判定する方法を説明するための図である。例えば、判定機能123は、
図5のように、(i)~(iv)の4種類の自己開示のそれぞれについて、(a)~(c)の指標(行動)をパラメータ化する(数値化する)。パラメータは、その取りうる上限値が定められており、各自己開示に関する行動の回数や時間に応じてその値が決められる。
【0057】
判定機能123は、(i)趣味又は嗜好という種類の自己開示に関して、(a)~(c)の全指標のパラメータの統計的計算(例えば平均化)を行い、一つの代表的パラメータを算出する。同様に、判定機能123は、(ii)困難な経験という種類の自己開示に関して、(a)~(c)の全指標のパラメータの統計的計算を行い、一つの代表的パラメータを算出し、(iii)欠点又は弱点という種類の自己開示に関して、(a)~(c)の全指標のパラメータの統計的計算を行い、一つの代表的パラメータを算出し、(iv)性格や能力の否定的側面という種類の自己開示に関して、(a)~(c)の全指標のパラメータの統計的計算を行い、一つの代表的パラメータを算出する。これによって、
図6のレーダーチャートのように、4次元のパラメータ(つまり4次元ベクトル)が生成される。
【0058】
判定機能123は、この4次元のパラメータの合計を、患者Pの現実世界への復帰度として算出する。つまり、判定機能123は、(i)趣味又は嗜好という種類の自己開示に関する代表的パラメータと、(ii)困難な経験という種類の自己開示に関する代表的パラメータと、(iii)欠点又は弱点という種類の自己開示に関する代表的パラメータと、(iv)性格や能力の否定的側面という種類の自己開示に関する代表的パラメータとを合計し、その合計した値を、患者Pの現実世界への復帰度として算出する。
【0059】
なお、判定機能123は、自己開示に加えて、あるいは代えて、例えば感情(喜怒哀楽)ごとに(a)~(c)の指標(行動)をパラメータ化することで、患者Pの現実世界への復帰度を算出してもよい。
【0060】
フローチャートの説明に戻る。アバター生成機能124は、S100の処理と並行して、メタバース上において各ユーザによって操作されるアバターを生成する(ステップS106)。このアバターには、上述した患者アバターAPや医師アバターADが含まれる。
【0061】
アバターは、典型的には3次元のアバターであってよい。3次元のアバターには、3次元構造の表面形状に関する情報(いわゆる「ポリゴン」)、内部骨格に関する情報(いわゆる「ボーン」)、これら両者の関係性を規定する情報(いわゆる「ウェイト」)、及び3次元構造の表面における質感や模様に関する情報(いわゆる「テクスチャ」)が含まれる。本実施の形態における3次元アバターは、これらの情報を全て含むものでもよいし、ポリゴンとテクスチャのみを含むものでもよいし、ポリゴンのみを含むものでもよい。なお、アバターは、3次元のアバターに限られず、2次元のアバターであってもよい。
【0062】
例えば、アバター生成機能124は、現実世界の人物(つまり患者Pや医師など)に擬したアバターを生成したり、現実世界の動物(例えば犬や猫など)に擬したアバターを生成したり、現実世界には存在しない想像上又は架空のキャラクターや生き物を模したアバターを生成したりしてよい。どのようなアバターを生成するのかは、例えば、メタバースに参加する各ユーザが任意に決定してよい。
【0063】
次に、特徴抽出機能125は、アバター生成機能124によって生成されたアバター(例えば患者アバターAP)の特徴を抽出する(ステップS108)。
【0064】
例えば、アバター生成機能124によって生成されたアバターが人型のアバターである場合、特徴抽出機能125は、目、鼻、口、体型や体格、テクスチャ―などを特徴として抽出する。
【0065】
また例えば、アバター生成機能124によって生成されたアバターが動物や創作物のアバターである場合、特徴抽出機能125は、それらアバターの独自の特徴(例えば牙、角、耳など)を抽出する。
【0066】
次に、特徴抽出機能125は、アバターの元となったユーザ(例えば患者P)の特徴を抽出する(ステップS110)。
【0067】
例えば、特徴抽出機能125は、ユーザの目、鼻、口、体型や体格、肌の色などを特徴として抽出する。
【0068】
次に、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、アバター生成機能124によって生成されたアバターを抽象化させる(ステップS112)。
【0069】
次に、出力制御機能127は、アバター(抽象化されたアバターを含む)を、通信インタフェース111を介して、外部装置であるウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、及びラップトップ型端末400のうち少なくとも一つに送信する(ステップS114)。これを受けて、ウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、及び/又はラップトップ型端末400は、メタバース上においてアバターを表示する。
【0070】
抽象化とは、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、アバター本来の特徴(デフォルトの特徴)を残しつつ、ユーザの特徴をアバターに反映させることである。言い換えれば、抽象化とは、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、アバター本来の特徴(デフォルトの特徴)を、ユーザの特徴に近づけていくことである。近づける特徴は、目や鼻、口といった一部分の特徴であってもよいし、顔や身体全体であってもよい。
【0071】
例えば、復帰度が0~100の数値範囲で変動する場合、アバターの抽象度は、数式(1)に従って決定されてよい。
【0072】
{(100-復帰度)×(アバターの特徴)
+(復帰度)×(ユーザの特徴)}/100…(1)
【0073】
例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、患者Pの現実世界の姿から遠ざかるように患者アバターAPの姿を変更し、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、患者Pの現実世界の姿に近づけるように患者アバターAPの姿を変更する。
【0074】
言い換えれば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、患者Pの現実世界の姿から遠ざかるように患者アバターAPの姿の抽象度をより高くし、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、患者Pの現実世界の姿に近づけるように患者アバターAPの姿の抽象度をより低くする。
【0075】
図7は、復帰度に応じて患者アバターA
Pの抽象度を変更する様子を表した図である。図示の例では、アバター生成機能124によって生成された患者アバターA
Pが人型のアバターであり、髪型、眼鏡の有無、髭といった基本的な患者Pの特徴がすでに反映されている。
【0076】
図示のように、患者Pの現実世界への復帰度が高まるにつれて患者Pの特徴が患者アバターAPに反映されていくため、患者アバターAPの見た目が段階的にアニメ調からリアル調に変更される。このように、患者Pの現実世界への復帰度が低く、心理的抵抗を感じやすい心理状況にあるときには、患者Pの現実世界の姿から患者アバターAPの見た目を遠ざけておくことができるので、メタバース上において医療クリニックを受診する際に、その医療クリニックや医師などに対する患者Pの心理的抵抗を低減させることができる。
【0077】
図8は、復帰度に応じて患者アバターA
Pの抽象度を変更する様子を表した図である。図示の例では、アバター生成機能124によって生成された患者アバターA
Pが犬型のアバターであり、髪型、眼鏡の有無、髭といった基本的な患者Pの特徴が一つも反映されていない。
【0078】
図示のように、患者Pの現実世界への復帰度が高まるにつれて患者Pの特徴が患者アバターAPに反映されていき、完全な犬型のアバターから半擬人化型のアバターへと徐々に変化し、最終的に人型のアバターへと変化することになる。このように、患者Pの現実世界への復帰度が低く、心理的抵抗を感じやすい心理状況にあるときには、患者アバターAPの見た目を患者Pの現実世界の姿から完全にかけ離れた犬のような姿にしておくことができる。この結果、メタバース上において医療クリニックを受診する際に、その医療クリニックや医師などに対する患者Pの心理的抵抗を低減させることができる。
【0079】
図9は、現実世界への復帰度が低い患者Pが医療クリニックを受診したときの様子を表す図である。図示のように、現実世界への復帰度が低い患者Pは、メタバース上において、完全な犬型の患者アバターA
Pに扮して(自身の姿を秘匿して)医師アバターA
Dと会話することができる。図示のように、メタバース上において医師アバターA
Dとの会話が三人称視点で行われる場合、患者Pは、患者アバターA
Pの見た目を三人称視点で確認しながら診療を受けることができる。
【0080】
図10は、現実世界への復帰度が低い患者Pが医療クリニックを受診したときの様子を表す図である。図示のように、メタバース上において医師アバターA
Dとの会話が一人称視点で行われる場合、患者アバターA
Pは、クロマキー合成などの手法を用いて医師アバターA
Dに重畳表示されてよい。これによって、患者Pは、一人称視点であっても患者アバターA
Pの見た目を確認しながら診療を受けることができる。
【0081】
以上説明した第1実施形態によれば、医用情報処理装置100の処理回路120は、メタバース上において患者アバターAPに扮して医療クリニックを受診する患者Pの行動履歴を取得する。処理回路120は、患者Pの行動履歴を分析することで、患者Pの状態を推定するための特定の行動を判定する。処理回路120は、特定の行動に基づいて、患者Pの現実世界への復帰度を判定する。処理回路120は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、患者アバターAPを抽象化させる。これによって、メタバース上において医療クリニックを受診する際に、その医療クリニックや医師などに対する患者Pの心理的抵抗を低減させることができる。
【0082】
(第1実施形態の変形例)
以下、第1実施形態の変形例について説明する。例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、患者アバターAPの姿(見た目)だけでなく、その患者アバターAPの音声も抽象化させてよい。
【0083】
例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、患者Pの現実世界の音声から遠ざかるように患者アバターAPの音声を変更し、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、患者Pの現実世界の音声に近づけるように患者アバターAPの音声を変更する。
【0084】
言い換えれば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、患者Pの現実世界の音声から遠ざかるように患者アバターAPの音声の抽象度をより高くし、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、患者Pの現実世界の音声に近づけるように患者アバターAPの音声の抽象度をより低くする。
【0085】
また、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、患者アバターAPの姿(見た目)や音声に加えて、あるいは代えて、医師アバターADの姿や音声も抽象化させてよい。
【0086】
例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、医師の現実世界の姿・音声から遠ざかるように医師アバターADの姿・音声を変更し、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、医師の現実世界の姿・音声に近づけるように医師アバターADの姿・音声を変更する。
【0087】
言い換えれば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、医師の現実世界の姿・音声から遠ざかるように医師アバターADの姿・音声の抽象度をより高くし、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、医師の現実世界の姿・音声に近づけるように医師アバターADの姿・音声の抽象度をより低くする。
【0088】
また、抽象化機能126は、判定機能123によって判定された復帰度に加えて、あるいは代えて、医師によって判定された復帰度を用いて、患者アバターAPの姿・音声や、医師アバターADの姿・音声を変更してもよい。例えば、通信インタフェース111が医師のコンピュータから、医師が独自に判定した復帰度を受信したり、入力インピーダンス112に対して医師が独自に判定した復帰度を入力したりしたとする。この場合、抽象化機能126は、通信インタフェース111によって受信された復帰度や、入力インピーダンス112に入力された復帰度を用いて、患者アバターAPの姿・音声や、医師アバターADの姿・音声を変更してよい。
【0089】
また、判定機能123は、自患者Pの現実世界への復帰度を算出する際に、患者Pの感情の振れ幅に応じて、復帰度を低くしたり、又は高くしたりしてよい。例えば、患者Pの行動履歴上において嬉しい感情と悲しい感情が交互に表れており、患者Pの感情に一貫性がないような場合、判定機能123は、復帰度を低く算出してよい。
【0090】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、患者アバターAPの姿・音声や、医師アバターADの姿・音声を抽象化するものとして説明した。これに対して、第2実施形態では、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、患者アバターAPからみたメタバース内の外部環境(風景など)を抽象化する点で第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点については説明を省略する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同じ部分については同一符号を付して説明する。
【0091】
図11は、第2実施形態に係る処理回路120の一連の処理の流れを表すフローチャートである。
【0092】
まず、取得機能121は、患者Pの行動履歴を取得する(ステップS200)。
【0093】
次に、行動分析機能122は、取得機能121によって取得された患者Pの行動履歴を分析することで、患者Pの状態を推定するための特定の行動、すなわち自己開示行動を抽出する又は判定する(ステップS202)。
【0094】
次に、判定機能123は、行動分析機能122によって抽出された自己開示行動に基づいて、患者Pの現実世界への復帰度を判定する又は算出する(ステップS204)。
【0095】
次に、アバター生成機能124は、S200の処理と並行して、メタバース上において各ユーザによって操作されるアバターや、現実世界の医療クリニックの室内に擬した仮想空間(アバターが配置される仮想空間)を生成する(ステップS206)。
【0096】
次に、特徴抽出機能125は、アバター生成機能124によって生成されたアバター(例えば患者アバターAP)の特徴や、現実世界の医療クリニックの室内に擬した仮想空間の特徴を抽出する(ステップS208)。
【0097】
次に、特徴抽出機能125は、アバターの元となったユーザ(例えば患者P)の特徴や、現実世界の医療クリニックの室内の特徴を抽出する(ステップS210)。
【0098】
次に、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、患者アバターAPからみたメタバース内の外部環境を抽象化させる(ステップS212)。
【0099】
メタバース内の外部環境には、例えば、上述した医師アバターADに加えて、医療クリニックの部屋の壁の色やテクスチャ、その部屋に配置された椅子や机、その部屋で流れる音楽などが含まれる。
【0100】
次に、出力制御機能127は、患者アバターAPや外部環境を、通信インタフェース111を介して、外部装置であるウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、及びラップトップ型端末400のうち少なくとも一つに送信する(ステップS114)。これを受けて、ウェアラブルデバイス200、タブレット型端末300、及び/又はラップトップ型端末400は、メタバース上においてアバターや医療クリニックを表示する。
【0101】
図12は、復帰度に応じてメタバース内の外部環境の抽象度を変更する様子を表した図である。例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、現実世界の医療クリニックから遠ざかるようにメタバース内の外部環境を変更し、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、現実世界の医療クリニックに近づけるようにメタバース内の外部環境を変更する。
【0102】
言い換えれば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、現実世界の医療クリニックから遠ざかるようにメタバース内の外部環境の抽象度をより高くし、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、現実世界の医療クリニックに近づけるようにメタバース内の外部環境の抽象度をより低くする。
【0103】
これによって図示のように、患者Pの現実世界への復帰度が低い場合には、医療クリニックの部屋として現実にはありえない風景をテクスチャとして表示させ、患者Pの現実世界への復帰度が高まるにつれて、医療クリニックの部屋に近い風景をテクスチャとして表示させることができる。このように、患者Pの現実世界への復帰度が低く、心理的抵抗を感じやすい心理状況にあるときには、現実世界からメタバース内の外部環境を遠ざけておくことができるので、メタバース上において医療クリニックを受診する際に、その医療クリニックや医師などに対する患者Pの心理的抵抗を低減させることができる。
【0104】
以上説明した第2実施形態によれば、医用情報処理装置100の処理回路120は、メタバース上において患者アバターAPに扮して医療クリニックを受診する患者Pの行動履歴を取得する。処理回路120は、患者Pの行動履歴を分析することで、患者Pの状態を推定するための特定の行動を判定する。処理回路120は、特定の行動に基づいて、患者Pの現実世界への復帰度を判定する。処理回路120は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、患者アバターAPからみたメタバース内の外部環境を抽象化させる。これによって、メタバース上において医療クリニックを受診する際に、その医療クリニックや医師などに対する患者Pの心理的抵抗を低減させることができる。
【0105】
(第2実施形態の変形例)
以下、第2実施形態の変形例について説明する。例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、医療クリニックの部屋のテクスチャだけでなく、その部屋で流れる音楽を変更してよい。
【0106】
また、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度に応じて、医療クリニックの部屋のテクスチャやその部屋で流れる音楽だけでなく、その部屋に配置される患者アバターAPと医師アバターADとの距離や、部屋の広さを変更してもよい。
【0107】
例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、患者アバターAPと医師アバターADとの距離を長くし、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、患者アバターAPと医師アバターADとの距離を短くしてよい。
【0108】
また例えば、抽象化機能126は、患者Pの現実世界への復帰度が低いほど、メタバース上に形成される医療クリニックの部屋を広くし、患者Pの現実世界への復帰度が高いほど、メタバース上に形成される医療クリニックの部屋を狭くしてよい。
【0109】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
100…情報処理装置、111…通信インタフェース、112…入力インタフェース、113…出力インタフェース、114…メモリ、120…処理回路、121…取得機能、122…行動分析機能、123…判定機能、124…アバター生成機能、125…特徴抽出機能、126…抽出化機能、127…出力制御機能、200…ウェアラブルデバイス、NW…通信ネットワーク、AP…患者アバター、AD…医師アバター