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特開2024-175522物性予測装置、物性予測方法、及び物性予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175522
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】物性予測装置、物性予測方法、及び物性予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16C 60/00 20190101AFI20241211BHJP
【FI】
G16C60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093364
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】村山 雄亮
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の物性を有する材料を適切かつ効率的に開発する物性予測装置、物性予測方法及び物性予測プログラムを提供する。
【解決手段】物性予測装置1は、試料の第1の製造条件と、第1の製造条件に基づいて製造された試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する実測データ取得部21と、試料の第2の製造条件と、第2の製造条件に対応する試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する仮想データ取得部22と、実測データ取得部21により取得された実測データと、仮想データ取得部22により取得された仮想データとに基づいて、実測データに対して物性の第1の不確かさを有し、仮想データに対して物性の第1の不確かさよりも大きい物性の第2の不確かさを有するような物性の予測モデルを生成するモデル生成部23と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の第1の製造条件と、前記第1の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する実測データ取得部と、
前記試料の第2の製造条件と、前記第2の製造条件に対応する前記試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する仮想データ取得部と、
前記実測データ取得部により取得された前記実測データと、前記仮想データ取得部により取得された前記仮想データとに基づいて、前記実測データに対して前記物性の第1の不確かさを有し、前記仮想データに対して前記物性の第1の不確かさよりも大きい前記物性の第2の不確かさを有するような前記物性の予測モデルを生成するモデル生成部と、
を備える物性予測装置。
【請求項2】
前記仮想データ取得部は、前記第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータの値が極端に小さい又は大きい場合に予測される前記試料の物性値を、前記仮想値として取得する、請求項1に記載の物性予測装置。
【請求項3】
前記仮想データ取得部は、原材料又はプロセスが前記試料に類似する物質の物性値を、前記仮想値として取得する、請求項1に記載の物性予測装置。
【請求項4】
前記物性の第1の不確かさは0である、請求項1に記載の物性予測装置。
【請求項5】
前記実測データ及び前記仮想データを入力するための入力画面を生成する入力画面生成部を更に備え、
前記実測データ取得部は、前記入力画面生成部により生成された前記入力画面に入力された前記実測データを取得し、
前記仮想データ取得部は、前記入力画面生成部により生成された前記入力画面に入力された前記仮想データを取得する、請求項1に記載の物性予測装置。
【請求項6】
前記入力画面生成部により生成された前記入力画面をユーザの端末装置に送信し、前記入力画面に入力された前記実測データ及び前記仮想データを前記端末装置から受信する通信部を更に備え、
前記実測データ取得部は、前記通信部により受信された前記実測データを取得し、
前記仮想データ取得部は、前記通信部により受信された前記仮想データを取得する、請求項5に記載の物性予測装置。
【請求項7】
前記仮想データを補完する仮想データ補完部を更に備え、
前記仮想データ取得部は、前記仮想データ補完部により補完された前記仮想データを取得する、請求項5に記載の物性予測装置。
【請求項8】
前記仮想データ補完部は、前記第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの極端に小さい又は大きい値を有する一部のパラメータと、前記一部のパラメータに基づいて予測される前記仮想値と、が前記入力画面に入力されたときに、前記複数のパラメータのうちの前記一部のパラメータ以外のパラメータの値を算出することで、前記仮想データの前記第2の製造条件を補完する、請求項7に記載の物性予測装置。
【請求項9】
前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさを設定する不確かさ設定部を更に備え、
前記モデル生成部は、前記不確かさ設定部により設定された前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさに更に基づいて前記予測モデルを生成する、請求項1に記載の物性予測装置。
【請求項10】
前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさを設定するための設定画面を生成する設定画面生成部を更に備え、
前記不確かさ設定部は、前記設定画面生成部により生成された前記設定画面に対する入力操作に応じて、前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさを設定する、請求項9に記載の物性予測装置。
【請求項11】
前記モデル生成部は、ベイズ推定を用いて前記予測モデルを生成し、前記第1の不確かさは、第1の分散であり、前記第2の不確かさは、前記第1の分散よりも大きい第2の分散である、請求項1に記載の物性予測装置。
【請求項12】
前記モデル生成部は、次式にしたがって前記予測モデルを生成する、請求項11に記載の物性予測装置。
【数1】
【数2】
【請求項13】
前記モデル生成部により生成された前記予測モデルに基づいて前記試料の第3の製造条件を算出する製造条件算出部を更に備える、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の物性予測装置。
【請求項14】
前記第3の製造条件は、前記予測モデル中の前記物性の不確かさが最大になるときの製造条件及び前記予測モデル中の前記物性の不確かさが最小になるときの製造条件の少なくとも1つを含む、請求項13に記載の物性予測装置。
【請求項15】
前記実測データ取得部は、前記製造条件算出部により算出された前記第3の製造条件と、前記第3の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した第2の実測値と、を含む第2の実測データを更に取得し、
前記モデル生成部は、前記実測データ取得部により取得された前記第2の実測データに基づいて前記予測モデルを更新する、請求項13に記載の物性予測装置。
【請求項16】
前記モデル生成部は、前記第2の実測値が設定された最適値である場合には、前記予測モデルを更新しない、請求項15に記載の物性予測装置。
【請求項17】
試料の第1の製造条件と、前記第1の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する工程と、
前記試料の第2の製造条件と、前記第2の製造条件に対応する前記試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する工程と、
前記取得された実測データ及び仮想データに基づいて、前記実測データに対して前記物性の第1の不確かさを有し、前記仮想データに対して前記物性の第1の不確かさよりも大きい前記物性の第2の不確かさを有するような前記物性の予測モデルを生成する工程と、
を備える物性予測方法。
【請求項18】
コンピュータに、
試料の第1の製造条件と、前記第1の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する手順、
前記試料の第2の製造条件と、前記第2の製造条件に対応する前記試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する手順、及び
前記取得された実測データ及び仮想データに基づいて、前記実測データに対して前記物性の第1の不確かさを有し、前記仮想データに対して前記物性の第1の不確かさよりも大きい前記物性の第2の不確かさを有するような前記物性の予測モデルを生成する手順
を実行させるための物性予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物性予測装置、物性予測方法、及び物性予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械学習などの情報科学の技術を活用して材料開発の効率化を図る、マテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれる技術分野が注目されている。マテリアルズ・インフォマティクスにおいては、所望の物性を有する材料を製造するために、原材料の配合比やプロセス条件に関する多数のパラメータの、適切な組み合わせを見出すことが求められる。パラメータの数が多い場合、パラメータの組み合わせが膨大となる。パラメータの組み合わせが膨大になると、網羅的に材料を試作することが困難となる。網羅的に材料を試作することが困難である場合は、試作された一定数の材料の物性を測定し、測定により得られた実測データに基づいて物性の予測モデルを構築する方法が取られる。予測モデルを用いることで、材料の試作数が限られていても最適なパラメータの探索を図ることができる。
【0003】
予測モデルを構築するために、教師ありの機械学習手法が用いられることがある。教師ありの機械学習手法では、実測データの数が不十分である場合や、パラメータと物性との関係が複雑である場合は、高精度の予測モデルを構築することが困難となる。実測データの数が不十分である場合や、パラメータと物性との関係が複雑である場合にも高精度の予測モデルを構築するため、ベイズ最適化などの逐次的実験計画の手法が用いられる。ベイズ最適化では、予測モデルの構築に、ベイズ推定が用いられる。ベイズ推定では、物性の予測値に加えて、予測値の不確かさが算出される。不確かさが算出されることで、物性が特定の値となる確率及び物性の期待値などを算出することができる。ベイズ推定によれば、限られた実測データに基づいて最適なパラメータを求めることができる。すなわち、ベイズ推定によれば、限られた実測データに基づいて材料の次の試作の実験計画を立てることができる。材料の次の試作と、試作された材料の物性の測定と、測定結果の実測データへの追加とを行うことで、予測モデルが更新される。ベイズ最適化では、これらの試作、物性の測定、及び予測モデルの更新からなる一連のサイクルを繰り返す。一連のサイクルを繰り返すことで、所望の物性値が得られるまでの試作回数の最小化を図ることができる。
【0004】
しかしながら、実測データが少数又は未取得の場合は、ベイズ最適化における初期の予測モデルを構築することが困難となる。初期の予測モデルを構築することが困難となることで、逐次的な実験計画を立てることが困難となる。具体的には、予測モデルの構築に必要な実測データの数は、通常は5~10程度である。パラメータ数が多ければ、予測モデルの構築に必要な実測データの数は更に増える場合がある。しかし、材料の試作及び物性の測定に要する金銭コスト及び時間コストが大きい場合や、開発予算及び開発期間が限られている場合は、実施可能な試作の回数が少数に限られる。試作の回数が少数に限られることで、実測データの数が不十分となり、初期の予測モデルの構築及びベイズ最適化の適用が困難となる。
【0005】
特許文献1には、実測データに機械学習を適用して逐次的な実験計画を行う技術が開示されている。特許文献2には、量子化学計算などのシミュレーションによってパラメータに対応する物性値を求めることで、物性値を事前学習する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/200281号
【特許文献2】国際公開第2020/188971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、初期段階において一定数の実測データが用意されていない場合は実施することが困難である。特に、試作の回数及び物性の測定の回数が少数に限られている場合は、初期の予測モデルの作成に必要な数の実測データを得ること自体が困難である。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術は、シミュレーションの手法が確立している一部の分野に限って実施することが可能である。すなわち、特許文献2に開示された技術は、シミュレーションの適用が困難な多くの分野では実施することが困難である。
【0009】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、所望の物性を有する材料を適切かつ効率的に開発することができる物性予測装置、物性予測方法、及び物性予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示による物性予測装置は、
試料の第1の製造条件と、前記第1の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する実測データ取得部と、
前記試料の第2の製造条件と、前記第2の製造条件に対応する前記試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する仮想データ取得部と、
前記実測データ取得部により取得された前記実測データと、前記仮想データ取得部により取得された前記仮想データとに基づいて、前記実測データに対して前記物性の第1の不確かさを有し、前記仮想データに対して前記物性の第1の不確かさよりも大きい前記物性の第2の不確かさを有するような前記物性の予測モデルを生成するモデル生成部と、
を備える。
【0011】
本開示による物性予測装置において、前記仮想データ取得部は、前記第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータの値が極端に小さい又は大きい場合に予測される前記試料の物性値を、前記仮想値として取得してもよい。
【0012】
本開示による物性予測装置において、前記仮想データ取得部は、原材料またはプロセスが前記試料に類似する物質の物性値を、前記仮想値として取得してもよい。
【0013】
本開示による物性予測装置において、前記物性の第1の不確かさは0であってもよい。
【0014】
本開示による物性予測装置において、前記実測データ及び前記仮想データを入力するための入力画面を生成する入力画面生成部を更に備え、
前記実測データ取得部は、前記入力画面生成部により生成された前記入力画面に入力された前記実測データを取得し、
前記仮想データ取得部は、前記入力画面生成部により生成された前記入力画面に入力された前記仮想データを取得してもよい。
【0015】
本開示による物性予測装置において、前記入力画面生成部により生成された前記入力画面をユーザの端末装置に送信し、前記入力画面に入力された前記実測データ及び前記仮想データを前記端末装置から受信する通信部を更に備え、
前記実測データ取得部は、前記通信部により受信された前記実測データを取得し、
前記仮想データ取得部は、前記通信部により受信された前記仮想データを取得してもよい。
【0016】
本開示による物性予測装置において、前記仮想データを補完する仮想データ補完部を更に備え、
前記仮想データ取得部は、前記仮想データ補完部により補完された前記仮想データを取得してもよい。
【0017】
本開示による物性予測装置において、前記仮想データ補完部は、前記第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの極端に小さい又は大きい値を有する一部のパラメータと、前記一部のパラメータに基づいて予測される前記仮想値と、が前記入力画面に入力されたときに、前記複数のパラメータのうちの前記一部のパラメータ以外のパラメータの値を算出することで、前記仮想データの前記第2の製造条件を補完してもよい。
【0018】
本開示による物性予測装置において、前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさを設定する不確かさ設定部を更に備え、
前記モデル生成部は、前記不確かさ設定部により設定された前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさに更に基づいて前記予測モデルを生成してもよい。
【0019】
本開示による物性予測装置において、前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさを設定するための設定画面を生成する設定画面生成部を更に備え、
前記不確かさ設定部は、前記設定画面生成部により生成された前記設定画面に対する入力操作に応じて、前記物性の第1の不確かさ及び前記物性の第2の不確かさを設定してもよい。
【0020】
本開示による物性予測装置において、前記モデル生成部は、ベイズ推定を用いて前記予測モデルを生成し、前記第1の不確かさは、第1の分散であり、前記第2の不確かさは、前記第1の分散よりも大きい第2の分散であってもよい。
【0021】
本開示による物性予測装置において、前記モデル生成部は、次式にしたがって前記予測モデルを生成してもよい。
【数1】
【数2】
【0022】
本開示による物性予測装置において、前記モデル生成部で生成された前記予測モデルに基づいて前記試料の第3の製造条件を算出する製造条件算出部を更に備えてもよい。
【0023】
本開示による物性予測装置において、前記第3の製造条件は、前記予測モデル中の前記物性の不確かさが最大になるときの製造条件及び前記予測モデル中の前記物性の不確かさが最小になるときの製造条件の少なくとも1つを含んでもよい。
【0024】
本開示による物性予測装置において、前記実測データ取得部は、前記製造条件算出部により算出された前記第3の製造条件と、前記第3の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した第2の実測値と、を含む第2の実測データを更に取得し、
前記モデル生成部は、前記実測データ取得部により取得された前記第2の実測データに基づいて前記予測モデルを更新してもよい。
【0025】
本開示による物性予測装置において、前記モデル生成部は、前記第2の実測値が設定された最適値である場合には、前記予測モデルを更新しなくてもよい。
【0026】
本開示による物性予測方法は、
試料の第1の製造条件と、前記第1の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する工程と、
前記試料の第2の製造条件と、前記第2の製造条件に対応する前記試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する工程と、
前記取得された実測データ及び仮想データに基づいて、前記実測データに対して前記物性の第1の不確かさを有し、前記仮想データに対して前記物性の第1の不確かさよりも大きい前記物性の第2の不確かさを有するような前記物性の予測モデルを生成する工程と、
を備える。
【0027】
本開示による物性予測プログラムは、
コンピュータに、
試料の第1の製造条件と、前記第1の製造条件に基づいて製造された前記試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する手順、
前記試料の第2の製造条件と、前記第2の製造条件に対応する前記試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する手順、及び
前記取得された実測データ及び仮想データに基づいて、前記実測データに対して前記物性の第1の不確かさを有し、前記仮想データに対して前記物性の第1の不確かさよりも大きい前記物性の第2の不確かさを有するような前記物性の予測モデルを生成する手順
を実行させる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、所望の物性を有する材料を適切かつ効率的に開発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、第1の実施形態による物性予測装置を示す模式図である。
図2図2は、第1の実施形態による物性予測装置を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態による物性予測装置の動作例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態による物性予測装置の動作例において、入力画面の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態による物性予測装置の動作例において、予測モデルの一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態による物性予測装置の動作例において、予測モデルの他の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態による物性予測装置の動作例において、予測モデルに基づく第3の製造条件の算出の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態による物性予測装置を示すブロック図である。
図9図9は、第2の実施形態による物性予測装置の動作例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の実施形態による物性予測装置の動作例において、入力画面の一例を示す図である。
図11図11は、第3の実施形態による物性予測装置を示すブロック図である。
図12図12は、第3の実施形態による物性予測装置の動作例を示すフローチャートである。
図13図13は、第3の実施形態による物性予測装置の動作例において、入力画面の一例を示す図である。
図14図14は、第4の実施形態による物性予測装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0031】
[第1の実施形態]
先ず、図1図7を参照して、第1の実施形態による物性予測装置について説明する。図1は、第1の実施形態による物性予測装置1を示す概念図である。
【0032】
図1に示すように、第1の実施形態による物性予測装置1は、実測データと予測データとに基づいて試料の予測モデルを生成する。実測データとは、試料の第1の製造条件と、実測値とを含むデータである。試料は、例えば、複数の原材料に基づいて製造される材料である。第1の製造条件は、例えば、材料の原材料の配合比や、温度等のプロセス条件などである。実測値とは、第1の製造条件に基づいて実際に製造された試料の物性を実際に測定した値である。試料の物性は、例えば、導電率及び誘電率などである。予測データとは、試料の第2の製造条件と、仮想値とを含むデータである。第2の製造条件は、第1の製造条件と異なる製造条件である。第2の製造条件は、試料を実際に製造したときの製造条件ではなく、仮想された製造条件である。仮想値とは、第2の製造条件に対応する試料の物性を仮想した値である。予測モデルとは、試料の製造条件に基づいて予測された試料の物性を示す情報である。言い換えれば、予測モデルは、試料の製造条件と物性との対応関係を示す情報である。
【0033】
また、物性予測装置1は、生成された予測モデルに基づいて試料の新たな実験計画を作成する。作成された新たな実験計画にしたがって、新たな試料が試作される。試作された新たな試料に対して、物性値を実測する実験が行われる。実験によって得られた実測データは、物性予測装置1に追加される。物性予測装置1は、追加によって更新された実測データと、仮想データとに基づいて、予測モデルを更新する。
【0034】
このように、物性予測装置1は、実測データ及び仮想データに基づく予測モデルの生成と、実験計画の作成と、実測データの追加とを繰り返すことで、実験計画を最適化する。
【0035】
図2は、第1の実施形態による物性予測装置1を示すブロック図である。より具体的には、図2に示すように、物性予測装置1は、制御部2と、入力インターフェース3と、表示部4と、記憶部5とを備える。制御部2と、入力インタフェース3と、表示部4と、記憶部5とは、バス6を介して通信可能に接続されている。
【0036】
入力インタフェース3は、ユーザから各種の指示及び情報の入力操作を受け付ける。入力インタフェース3は、ユーザから受け付けた入力操作を電気信号に変換する。入力インタフェース3は、電気信号に変換された入力操作を制御部2に出力する。入力インタフェース3は、例えば、マウス、キーボード、タッチパッド、タッチパネル、トラックボール、スイッチボタン、及びマイクロホン等であってもよい。
【0037】
表示部4は、制御部2から送信された画像データに応じた画像を表示する。表示部4は、例えば、液晶モニタ、CRT(Cathode Ray Tube)モニタ、及び、タッチパネル等であってもよい。表示部4は、スピーカを備えていてもよい。
【0038】
記憶部5は、種々の情報を記憶する非一過性の記憶装置である。記憶部5は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及び半導体メモリ等であってもよい。記憶部5は、例えば、物性予測装置1が実行する物性予測プログラムと、この物性予測プログラムの実行に用いられる各種のデータとを記憶する。
【0039】
制御部2は、入力インタフェース3を用いたユーザの入力操作に応じて、物性予測装置1の動作を制御する。制御部2は、実測データ取得部21と、仮想データ取得部22と、モデル生成部23と、入力画面生成部24と、製造条件算出部25とを備える。
【0040】
制御部2の各構成部21~25のそれぞれに対応する機能は、コンピュータによって実行可能な物性予測プログラムの形態で記憶部5に記録されている。制御部2は、例えば、プロセッサである。制御部2を構成するプロセッサは、記憶部5から物性予測プログラムを読み出して実行することで、読み出された物性予測プログラムに対応する構成部21~25の機能を実行する。なお、記憶部5に物性予測プログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内に物性予測プログラムを直接組み込んでもよい。この場合、プロセッサは、回路内に組み込まれた物性予測プログラムを実行することで、各構成部21~25に対応する機能を実行する。物性予測プログラムは、ネットワークを通じて物性予測装置1がサーバからダウンロードしたプログラムであってもよい。或いは、物性予測プログラムは、可搬型の記憶媒体から物性予測装置1に取り込まれたプログラムであってもよい。制御部2は、単一のプロセッサで構成されてもよく、又は、複数のプロセッサの組み合わせで構成されてもよい。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、及びプログラマブル論理デバイス等であってもよい。プログラマブル論理デバイスは、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよい。
【0041】
実測データ取得部21は、試料の第1の製造条件と、第1の製造条件に基づいて製造された試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する。
【0042】
仮想データ取得部22は、試料の第2の製造条件と、第2の製造条件に対応する試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する。
【0043】
仮想データ取得部22は、第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの一部のパラメータの値が極端に小さい又は大きい場合に予測される試料の物性値を、仮想値として取得してもよい。
【0044】
パラメータの値が極端に小さい場合とは、パラメータの値が、予め決められたパラメータの探索領域の下限の値である場合又は下限を下回る値である場合である。パラメータの値が極端に大きい場合とは、パラメータの値が、予め決められたパラメータの探索領域の上限の値である場合又は上限を上回る値である場合である。
【0045】
仮想データ取得部22は、一部のパラメータの値が極端に小さい又は大きい場合に予測される物性値の代わりに、原材料又はプロセスが試料に類似する物質の物性値を、仮想値として取得してもよい。
【0046】
モデル生成部23は、実測データ取得部21により取得された実測データと、仮想データ取得部22により取得された仮想データとに基づいて、物性の予測モデルを生成する。予測モデルは、予測される物性を確率で示した確率的予測モデルであってもよい。モデル生成部23は、実測データに対して物性の第1の不確かさを有し、仮想データに対して物性の第1の不確かさよりも大きい物性の第2の不確かさを有するような、予測モデルを生成する。物性の第1の不確かさは、例えば、0である。
【0047】
入力画面生成部24は、実測データ及び仮想データを入力するための入力画面を生成する。入力画面生成部24は、生成された入力画面を表示部4に表示する。実測データ取得部21は、入力画面生成部24により生成された入力画面に入力された、実測データを取得する。より具体的には、実測データ取得部21は、表示部4に表示された入力画面に対して入力インタフェース3を用いて入力された、実測データを取得する。仮想データ取得部22は、入力画面生成部24により生成された入力画面に入力された、仮想データを取得する。より具体的には、仮想データ取得部22は、表示部4に表示された入力画面に対して入力インタフェース3を用いて入力された、仮想データを取得する。
【0048】
製造条件算出部25は、モデル生成部23により生成された予測モデルに基づいて試料の第3の製造条件を算出する。
【0049】
第3の製造条件は、予測モデル中の物性の不確かさが最大になるときの製造条件及び予測モデル中の物性の不確かさが最小になるときの製造条件の少なくとも1つを含んでもよい。
【0050】
実測データ取得部21は、製造条件算出部25により算出された第3の製造条件と、第3の製造条件に基づいて製造された試料の物性を実測した第2の実測値と、を含む第2の実測データを更に取得する。
【0051】
モデル生成部23は、実測データ取得部21により取得された第2の実測データに基づいて予測モデルを更新する。モデル生成部23は、第2の実測値が設定された最適値である場合には、予測モデルを更新しない。
【0052】
モデル生成部23は、ベイズ推定を用いて予測モデルすなわち確率的予測モデルを生成してもよい。第1の不確かさは、第1の分散であり、第2の不確かさは、第1の分散よりも大きい第2の分散であってもよい。
【0053】
ベイズ推定を用いて予測モデルを生成する場合、モデル生成部23は、次式にしたがって予測モデルを生成してもよい。
【0054】
【数3】
【0055】
【数4】
【0056】
【0057】
数式(1)及び(2)にしたがった予測モデルの生成において、モデル生成部23は、実測データに対応する尤度の分散σを小さく設定し、仮想データに対応する尤度の分散σを大きく設定する。モデル生成部23は、実測データに対応する尤度の分散σを0に設定してもよい。
【0058】
【0059】
[動作例]
次に、以上の構成を有する物性予測装置1の動作例について説明する。図3は、第1の実施形態による物性予測装置1の動作例を示すフローチャートである。先ず、図3の前提として、ユーザは仮想データを作成する。ユーザは、経験に基づく予測によって仮想データを作成してもよい。例えば、第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのそれぞれが極端に小さい又は大きい値であるときに、経験に基づいて試料の物性値が予測される場合がある。この場合、ユーザは、極端に小さい又は大きい値をとる複数のパラメータを第2の製造条件として使用し、予測される試料の物性値を仮想値として使用して、仮想データを作成する。或いは、ユーザは、原材料又はプロセスが試料に類似する物質の既知の物性値を用いて、仮想データを作成してもよい。この場合、ユーザは、当該物質のプロセスを第2の製造条件として使用し、当該物質の既知の物性値を仮想値として使用して、仮想データを作成する。
【0060】
また、ユーザは、実測データを作成する。具体的には、ユーザは、第1の製造条件に基づいて製造された試料の物性を測定することで実測値を取得する。そして、ユーザは、第1の製造条件と実測値とを対応付けることで実測データを作成する。実測データの作成において、ユーザは、第1の製造条件を構成する複数のパラメータの値の組み合わせを1~5通り程度設定してもよい。そして、ユーザは、設定されたパラメータの値の組み合わせにしたがって試作された試料の物性を実測することで、実測データを作成してもよい。この場合、ユーザは、所定の範囲内で第1の製造条件の複数のパラメータの値をランダムに設定してもよい。或いは、ユーザは、ラテン方格サンプリング等の所定の範囲内で均一にパラメータの値を選択する方法を用いて、第1の製造条件の複数のパラメータの値を設定してもよい。
【0061】
仮想データ及び実測データが作成された後、入力インタフェース3を用いたユーザの入力操作に応じて、入力画面生成部24は入力画面を生成する。そして、入力画面生成部24は、生成された入力画面を表示部4に表示する(ステップS1)。
【0062】
図4は、第1の実施形態による物性予測装置1の動作例において、入力画面SCの一例を示す図である。図4に示される例において、入力画面SCは、第1の製造条件の一例である第1パラメータ~第5パラメータを入力する入力欄F1を有する。また、入力画面SCは、実測値及び仮想値の一例である第1物性及び第2物性を入力する入力欄F2を有する。また、入力画面SCは、データの種別、すなわち、仮想データ及び実測データの何れかを入力する入力欄F3を有する。入力欄F1~F3にデータを入力したうえで実行ボタンBを押すと、入力欄F1~F3に入力されたデータが確定される。
【0063】
表示部4に入力画面が表示された後、図3に示すように、ユーザは、入力インタフェース3を用いた入力操作により、表示部4に表示された入力画面に仮想データを入力する(ステップS2)。
【0064】
仮想データを入力した後、ユーザは、入力インタフェース3を用いた入力操作により、表示部4に表示された入力画面に実測データを入力する(ステップS3)。なお、ステップS2とステップS3とは前後が入れ替わってもよい。
【0065】
仮想データ及び実測データが入力された後、モデル生成部23は、入力された仮想データ及び実測データに基づいて予測モデルを生成する(ステップS4)。図3に示される例において、モデル生成部23は、上述した数式(1)及び数式(2)にしたがったベイズ推定を用いて予測モデルを生成する。このとき、モデル生成部23は、実測データに対応する尤度の分散σを0に設定する。また、モデル生成部23は、仮想データに対応する尤度の分散σを0よりも大きい値に設定する。また、モデル生成部23は、物性θの値が滑らかに変化する場合に高い確率密度を有するように事前分布p(A)を設定する。
【0066】
モデル生成部23は、生成された予測モデルを表示部4に表示してもよい。
【0067】
図5は、第1の実施形態による物性予測装置1の動作例において、予測モデルの一例を示す図である。図6は、第1の実施形態による物性予測装置1の動作例において、予測モデルの他の一例を示す図である。例えば、モデル生成部23は、図5及び図6に示される予測モデルを生成する。図5及び図6の横軸は、第1の製造条件の一例であるパラメータxである。図5及び図6の縦軸は、物性値θである。図5及び図6における実線のグラフは、パラメータxに対応する物性θの平均値を示す。実測データ及び仮想データは、平均値を示す実線のグラフ上に位置する。図5及び図6における2つの破線のグラフは、物性θの不確かさを示すグラフである。具体的には、図5及び図6における2つの破線のグラフは、物性θの確率分布である正規分布における50%信頼区間の上限及び下限をそれぞれ示す。一例として、図5には、x=0.4のときの正規分布Gが、平均値を示す実線のグラフ及び不確かさを示す破線のグラフに対応付けて示されている。正規分布G内のハッチングが施された領域は、x=0.4のときの50%信頼区間に対応する。
【0068】
図5及び図6から分かるように、実測データの付近では、不確かさが0になっている。これは、モデル生成部23によって実測データに対応する尤度の分散σが0に設定されたことによる。一方、仮想データの付近では、不確かさが大きくなっている。これは、モデル生成部23によって仮想データに対応する尤度の分散σが0よりも大きい設定されたことによる。
【0069】
予測モデルが生成された後、図3に示すように、実験計画の作成が行われる(ステップS5)。実験計画の作成において、先ず、製造条件算出部25は、モデル生成部23により生成された予測モデルに基づいて試料の第3の製造条件を算出する。図7は、第1の実施形態による物性予測装置1の動作例において、予測モデルに基づく第3の製造条件の算出の一例を示す図である。図7に示される例において、製造条件算出部25は、予測モデル中の物性の不確かさが最大になるときの製造条件と、予測モデル中の物性の不確かさが最小になるときの製造条件とを、第3の製造条件として算出する。より具体的には、製造条件算出部25は、物性θの不確かさが最大となるときのパラメータxの値x1と、物性θの不確かさが最小となるときのパラメータxの値x2とを、第3の製造条件として算出する。ここで、物性の不確かさが最大となる場合は、確率は低いが非常に良好な物性が得られる可能性がある。また、物性の不確かさが最小となる場合は、良好な物性が得られる確率が高い。したがって、物性θの不確かさが最大となるときのパラメータxの値x1と最小となるときのパラメータxの値x2とを第3の製造条件とすることで、所望の物性が得られるまでに要する試料の試作回数を低減することができる。次いで、実験計画の作成において、ユーザは、算出された第3の製造条件を用いて試料を製造するための具体的な計画を作成する。
【0070】
実験計画が作成された後、図3に示すように、ユーザは、実験を実施する(ステップS6)。実験の実施において、先ず、ユーザは、実験計画すなわち第3の製造条件にしたがって試料を製造する。試料の製造は、図示しない製造装置を用いて行われる。試料が製造された後、ユーザは、製造された試料の物性を測定する。試料の物性の測定は、物性に応じた図示しない測定器を用いて行われる。
【0071】
実験の結果、所望の物性が得られた場合(ステップS7:Yes)、処理を終了する。一方、実験の結果、所望の物性が得られなかった場合(ステップS7:No)であって、追加実験が可能である場合(ステップS8:Yes)、ユーザは、実験により得られた実測データを入力画面に入力する(ステップS3)。実験により得られた実測データの入力にともなって、モデル生成部23は、予測モデルを更新する(ステップS4)。
【0072】
以上述べたように、第1の実施形態では、実測データ取得部21が、試料の第1の製造条件と、第1の製造条件に基づいて製造された試料の物性を実測した実測値と、を含む実測データを取得する。また、仮想データ取得部22は、試料の第2の製造条件と、第2の製造条件に対応する試料の物性を仮想した仮想値と、を含む仮想データを取得する。また、モデル生成部23は、実測データ取得部21により取得された実測データと、仮想データ取得部22により取得された仮想データとに基づいて、物性の予測モデルを生成する。具体的には、モデル生成部23は、実測データに対して物性の第1の不確かさを有し、仮想データに対して物性の第1の不確かさよりも大きい物性の第2の不確かさを有するような、予測モデルを生成する。
【0073】
これにより、実測データが少数又は未取得の場合においても、材料開発における経験や勘といった暗黙知を反映した仮想データを有効活用して、適切に逐次的な実験計画を作成することができる。また、実施可能な実験回数が限られており、初期の予測モデルの構築に必要な数の試作及び測定が困難である場合にも、所望の物性を有する材料を開発することができる。また、十分に多くの実験回数を実施できる場合にも、実測データで表現されない暗黙知を活用することにより、所望の物性が得られるまでの試作回数を減らすことができる。したがって、第1の実施形態によれば、所望の物性を有する材料を適切かつ効率的に開発することができる。
【0074】
また、第1の実施形態では、仮想データ取得部22が、第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの一部のパラメータが極端に小さい又は大きい値である場合に予測される試料の物性値を、仮想値として取得してもよい。
【0075】
これにより、予測モデルの生成に有用な仮想データを簡便な手法で取得することができる。
【0076】
また、第1の実施形態では、仮想データ取得部22が、原材料またはプロセスが試料に類似する物質の物性値を、仮想値として取得してもよい。
【0077】
これにより、予測モデルの生成に有用な仮想データを簡便な手法で取得することができる。
【0078】
また、第1の実施形態では、物性の第1の不確かさが0である。
【0079】
これにより、最適な製造条件を簡便に探索可能な予測モデルを生成することができる。
【0080】
また、第1の実施形態では、物性予測装置1が、実測データ及び仮想データを入力するための入力画面を生成する入力画面生成部24を更に備える。また、実測データ取得部21は、入力画面生成部24により生成された入力画面に入力された、実測データを取得する。また、仮想データ取得部22は、入力画面生成部24により生成された入力画面に入力された、仮想データを取得する。
【0081】
これにより、ユーザの意思を反映した予測モデルを算出することができる。
【0082】
また、第1の実施形態では、モデル生成部23が、数式(1)及び数式(2)にしたがったベイズ推定を用いて予測モデルを生成する。すなわち、モデル生成部23は、実測データに対して第1の分散を有し、仮想データに対して第1の分散よりも大きい第2の分散を有するような予測モデルを生成する。
【0083】
これにより、最適な製造条件を高精度に探索可能な予測モデルを生成することができる。
【0084】
また、第1の実施形態では、製造条件算出部25が、モデル生成部23で生成された予測モデルに基づいて試料の第3の製造条件を算出する。
【0085】
これにより、予測モデルに基づいて最適な製造条件を探索することができる。
【0086】
また、第1の実施形態では、第3の製造条件が、予測モデル中の物性の不確かさが最大になるときの製造条件及び予測モデル中の前記物性の不確かさが最小になるときの製造条件の少なくとも1つを含む。
【0087】
これにより、所望の物性が得られるまでの試料の試作回数を低減することができ、所望の物性を有する材料を効率的に開発することができる。
【0088】
また、第1の実施形態では、実測データ取得部21が、製造条件算出部25により算出された第3の製造条件と、第3の製造条件に基づいて製造された試料の物性を実測した第2の実測値と、を含む第2の実測データを更に取得する。また、モデル生成部23は、実測データ取得部21により取得された第2の実測データに基づいて予測モデルを更新する。
【0089】
これにより、実験計画を最適化することができるので、所望の物性を有する材料を適切に開発することができる。
【0090】
また、第1の実施形態では、モデル生成部23が、第2の実測値が設定された最適値である場合には、予測モデルを更新しない。
【0091】
これにより、試料の試作回数を低減することができる。
【0092】
(第2の実施形態)
次に、設定された不確かさに基づいて予測モデルを生成する第2の実施形態について、第1の実施形態との差異を中心に説明する。図8は、第2の実施形態による物性予測装置1を示すブロック図である。
【0093】
図8に示すように、第2の実施形態による物性予測装置1の制御部2は、第1の実施形態の構成に加えて、更に、不確かさ設定部26と、設定画面生成部27とを備える。
【0094】
不確かさ設定部26は、物性の第1の不確かさと、物性の第2の不確かさとを設定する。モデル生成部23は、不確かさ設定部26により設定された物性の第1の不確かさ及び物性の第2の不確かさに更に基づいて予測モデルを生成する。
【0095】
設定画面生成部27は、物性の第1の不確かさ及び物性の第2の不確かさを設定するための設定画面を生成する。設定画面生成部27は、生成された設定画面を表示部4に表示する。不確かさ設定部26は、設定画面生成部27により生成された設定画面に対する入力操作に応じて、物性の第1の不確かさと、物性の第2の不確かさとを設定する。より具体的には、不確かさ設定部26は、表示部4に表示された設定画面に対する入力インタフェース3を用いた入力操作に応じて、物性の第1の不確かさと、物性の第2の不確かさとを設定する。設定画面生成部27は、入力画面生成部24により表示される入力画面と同時に、設定画面を表示してもよい。或いは、設定画面生成部27は、入力画面生成部24により表示される入力画面と異なるタイミングで、設定画面を表示してもよい。
【0096】
図9は、第2の実施形態による物性予測装置1の動作例を示すフローチャートである。図9に示すように、第2の実施形態において、設定画面生成部27は、入力画面生成部24により表示される入力画面と同時に、設定画面を表示する(ステップS11)。
【0097】
図10は、第2の実施形態による物性予測装置の動作例において、入力画面SCの一例を示す図である。図10に示される例において、設定画面生成部27は、入力画面SC上に設定画面SC2を表示する。設定画面SC2は、実測データの重みと仮想データの重みとの比率を入力可能なスライダーバーSを有する。スライダーバーSをスライドさせて実測データの重みと仮想データの重みとの比率を入力することで、入力された比率に対応する第1の不確かさ及び第2の不確かさを設定することができる。
【0098】
図9に示すように、第2の実施形態において、不確かさ設定部26は、設定画面に対する入力操作に応じて、第1の不確かさと、第2の不確かさとを設定する(ステップS9)。
【0099】
モデル生成部23は、入力された仮想データ及び実測データと、設定された第1の不確かさ及び第2の不確かさと、に基づいて予測モデルを生成する(ステップS4)。
【0100】
以上述べたように、第2の実施形態では、不確かさ設定部26が、物性の第1の不確かさと、物性の第2の不確かさとを設定する。また、モデル生成部23は、不確かさ設定部26により設定された物性の第1の不確かさ及び物性の第2の不確かさに更に基づいて、予測モデルを生成する。
【0101】
これにより、ユーザの意思を反映した予測モデルを算出することができるので、製造条件の探索の自由度を向上させることができる。
【0102】
また、第2の実施形態では、設定画面生成部27が、物性の第1の不確かさ及び物性の第2の不確かさを設定するための設定画面を生成する。また、不確かさ設定部26は、設定画面生成部27により生成された設定画面に対する入力操作に応じて、物性の第1の不確かさ及び物性の第2の不確かさを設定する。
【0103】
これにより、設定画面を用いて第1の不確かさ及び第2の不確かさを簡便に設定することができる。
【0104】
(第3の実施形態)
次に、仮想データを補完する第3の実施形態について、第1の実施形態との差異を中心に説明する。図11は、第3の実施形態による物性予測装置1を示すブロック図である。
【0105】
図11に示すように、第3の実施形態による物性予測装置1の制御部2は、第1の実施形態の構成に加えて、更に、仮想データ補完部28を備える。
【0106】
仮想データ補完部28は、仮想データを補完する。仮想データ補完部28は、入力画面に入力された仮想データが完全なデータではなく一部のデータが欠落している場合に、欠落したデータを補うことで仮想データを補完する。
【0107】
仮想データ取得部22は、仮想データ補完部28により補完された仮想データを取得する。
【0108】
仮想データ補完部28は、第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの極端に小さい又は大きい値を有する一部のパラメータと、一部のパラメータに基づいて予測される仮想値と、が入力画面に入力されたときに、仮想データを補完してもよい。具体的には、仮想データ補完部28は、複数のパラメータのうちの一部のパラメータ以外のパラメータの値を算出することで、仮想データの第2の製造条件を補完してもよい。
【0109】
図12は、第3の実施形態による物性予測装置1の動作例を示すフローチャートである。図13は、第3の実施形態による物性予測装置1の動作例において、入力画面の一例を示す図である。
【0110】
図12に示すように、第3の実施形態において、仮想データ補完部28は、入力画面に入力された仮想データが完全なデータではない場合に、仮想データを補完する(ステップS10)。
【0111】
例えば、第2の製造条件に含まれるm個のパラメータx,x,…,xのうち、1つのパラメータxの値が極端に小さい又は大きい値x であるときに、ユーザの暗黙知によって試料の物性値がθであると予測できることがある。この場合、ユーザは、入力画面に、パラメータxの値としてx を入力し、物性値としてθ入力し、x以外のパラメータの値は入力しない。図13に示される例において、入力画面SCには、第1パラメータの値として極端に小さい0が入力され、第1物性及び第2物性として0.0がそれぞれ入力され、第1パラメータ以外のパラメータの値は未確定すなわち***に設定されている。
【0112】
以外のパラメータの値が入力されない場合、仮想データは不完全となる。この場合、仮想データ補完部28は、x以外のパラメータx,…,xの値を算出して追加することで、仮想データを補完する。例えば、仮想データ補完部28は、予め決められたパラメータx,…,xのそれぞれの探索領域を、k水準に分割する。そして、仮想データ補完部28は、k水準に分割された各分割領域のそれぞれから選択された値を組み合わせた、km-1通りのパラメータx,…,xの値を算出する。このような方法に代えて、仮想データ補完部28は、m-1次元の一様乱数を発生させることによってパラメータx,…,xの値を算出してもよい。
【0113】
また、第2の製造条件に含まれるm個のパラメータx,x,…,xのうち、2個以上m-1個以下のパラメータの値が極端に小さい又は大きい値であるときに、ユーザの暗黙知によって試料の物性値を予測できることがある。この場合、ユーザは、入力画面に2個以上m-1個以下のパラメータの値を入力し、予測される物性値を入力し、2個以上m-1個以下のパラメータ以外のパラメータは入力しない。図13に示される例において、入力画面SCには、第3パラメータの値として極端に大きい100が入力され、第4パラメータの値として極端に大きい100が入力され、第1物性として100.0が入力され、第2物性として133.3が入力され、第3、第4パラメータ以外のパラメータの値は未確定に設定されている。
【0114】
2個以上m-1個以下のパラメータ以外のパラメータの値が入力されない場合、仮想データは不完全となる。この場合、仮想データ補完部28は、例えば、2個以上m-1個以下のパラメータ以外のパラメータのそれぞれの探索領域をk水準に分割する。そして、仮想データ補完部28は、k水準に分割された各分割領域のそれぞれから選択された値を組み合わせたパラメータの値を算出する。
【0115】
試料に類似する物質の実測データが参考になる場合、ユーザは、入力画面に、当該物質の実測データを仮想データとして入力してもよい。
【0116】
なお、入力画面に完全な仮想データが入力された場合、仮想データ補完部28は、仮想データを補完しない。
【0117】
以上述べたように、第3の実施形態では、仮想データ補完部28が、仮想データを補完する。また、仮想データ取得部22は、仮想データ補完部28により補完された仮想データを取得する。
【0118】
これにより、仮想データを効率的に生成することができる。
【0119】
また、第3の実施形態では、仮想データ補完部28が、第2の製造条件に含まれる複数のパラメータのうちの極端に小さい又は大きい値を有する一部のパラメータと、一部のパラメータに基づいて予測される仮想値と、が前記入力画面に入力されたときに、複数のパラメータのうちの一部のパラメータ以外のパラメータの値を算出することで、仮想データの第2の製造条件を補完する。
【0120】
これにより、仮想データを効率的に補完することができる。
【0121】
(第4の実施形態)
次に、ユーザの端末装置に入力画面を提供する第4の実施形態について、第1の実施形態との差異を中心に説明する。図14は、第4の実施形態による物性予測装置1を示すブロック図である。
【0122】
図1では、入力インターフェース3及び表示部4が物性予測装置1に備えられている例について説明した。これに対して、図14に示される例において、入力インタフェース3及び表示部4は、ユーザの端末装置9に備えられている。物性予測装置1と端末装置9とは、ネットワーク8を介して通信可能に接続される。
【0123】
物性予測装置1は、通信部7を備える。通信部7は、ネットワーク8を経由して端末装置9と通信を行うためのインタフェースである。例えば、通信部7は、ネットワークカード及びネットワークアダプタ等であってもよい。通信部7は、入力画面生成部24により生成された入力画面を端末装置9に送信する。通信部7は、入力画面に入力された実測データ及び仮想データを端末装置9から受信する。
【0124】
実測データ取得部21は、通信部7により受信された実測データを取得する。仮想データ取得部22は、通信部7により受信された仮想データを取得する。
【0125】
モデル生成部23は、通信部7を介して、モデル生成部23により生成された予測モデルを端末装置9に送信してもよい。端末装置9に送信された予測モデルは、端末装置9の表示部4に表示されてもよい。
【0126】
製造条件算出部25は、通信部7を介して、製造条件算出部25により算出された製造条件を端末装置9に送信してもよい。端末装置9に送信された製造条件は、端末装置9の表示部4に表示されてもよい。
【0127】
第4の実施形態によれば、端末装置9を使用するユーザが、物性予測装置1すなわちサーバから提供される入力画面を通じて、最適な製造条件を探索することができる。
【0128】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、開示の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本開示の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された本開示とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0129】
1 物性予測装置
21 実測データ取得部
22 仮想データ取得部
23 モデル生成部
24 入力画面生成部
25 製造条件算出部
26 不確かさ設定部
27 設定画面生成部
28 仮想データ補完部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14