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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175523
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20241211BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20241211BHJP
   F24F 120/14 20180101ALN20241211BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20241211BHJP
   F24F 110/64 20180101ALN20241211BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
F24F120:14
F24F110:70
F24F110:64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093366
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服巻 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】古橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】折戸 真理
(72)【発明者】
【氏名】伏江 遼
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BD07
3L260BA12
3L260BA26
3L260CA04
3L260CA17
3L260CA35
3L260EA07
3L260FC02
(57)【要約】
【課題】良質な睡眠を得る上で有利になる換気システムを提供する。
【解決手段】換気システムは、換気手段と、室内にいるユーザの生体情報を取得する生体情報取得手段と、生体情報取得手段によって取得した生体情報から、ユーザの就床有無を推定する就床推定手段と、室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさに関する情報を取得する濃度特性取得手段と、就床推定手段および濃度特性取得手段の取得結果に応じて換気手段を制御する制御手段と、を備える。制御手段は、室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上である場合にはユーザの就床前に第1風量での換気を換気手段に行わせる第1モードでの制御を実行し、室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満である場合にはユーザの就床前に第1風量より小さい風量での換気または換気の停止を換気手段に行わせる第2モードでの制御を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の換気を行う換気手段と、
前記室内にいるユーザの生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報取得手段によって取得した生体情報から、前記ユーザの就床有無を推定する就床推定手段と、
前記室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさに関する情報を取得する濃度特性取得手段と、
前記就床推定手段の推定結果および前記濃度特性取得手段の取得結果に応じて前記換気手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上である場合には前記ユーザの就床前に第1風量での換気を前記換気手段に行わせる第1モードでの制御を実行し、前記室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満である場合には前記ユーザの就床前に前記第1風量より小さい風量での換気または換気の停止を前記換気手段に行わせる第2モードでの制御を実行することを特徴とする換気システム。
【請求項2】
外気の情報を取得する外気情報取得手段と、
前記ユーザの個人属性を取得する属性取得手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記外気情報取得手段および前記属性取得手段の取得結果に応じて、前記換気手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記室内の空気中の塵埃量を検出する塵埃量検出手段と、
前記ユーザの個人属性を取得する属性取得手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記塵埃量検出手段の検出結果および前記属性取得手段の取得結果に応じて、前記換気手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の換気システム。
【請求項4】
前記室内の空気中の塵埃量を検出する塵埃量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記塵埃量検出手段の検出結果と前記外気情報取得手段および前記属性取得手段の取得結果とに応じて、前記換気手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の換気システム。
【請求項5】
前記ユーザの体調を推定する体調推定手段を備え、
前記制御手段は、前記体調推定手段の推定結果に応じて、前記換気手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠の質の向上を目的として、室内の二酸化炭素濃度を制御する技術がある。このような技術として、特許文献1には、換気システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-081170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に開示される従来技術においては、実際の室内の環境を十分には考慮できておらず、室内の空気中の二酸化炭素濃度を適切に制御することが難しいという課題がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためのものである。本開示の目的は、ユーザが良質な睡眠を得る上で有利になる換気空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る換気システムは、室内の換気を行う換気手段と、前記室内にいるユーザの生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段によって取得した生体情報から、前記ユーザの就床有無を推定する就床推定手段と、前記室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさに関する情報を取得する濃度特性取得手段と、前記就床推定手段および前記濃度特性取得手段の取得結果に応じて前記換気手段を制御する制御手段と、を備える。前記制御手段は、前記室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上である場合には前記ユーザの就床前に第1風量での換気を前記換気手段に行わせる第1モードでの制御を実行し、前記室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満である場合には前記ユーザの就床前に前記第1風量より小さい風量での換気または換気の停止を前記換気手段に行わせる第2モードでの制御を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユーザが良質な睡眠を得る上で有利になる換気システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による換気システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1による換気システムの動作例を示すフローチャートである。
図3】第1モードでの制御時における換気システムの動作例を説明する図である。
図4】第2モードでの制御時における換気システムの動作例を説明する図である。
図5】実施の形態1による換気システムの変形例を示すブロック図である。
図6】第3モードでの制御時における換気システムの動作を説明する図である。
図7】実施の形態1に係る推論装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による換気システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態による換気システムは、対象となる室内の換気を行う換気手段の一例として、換気装置1を備えている。換気装置1は、屋外の空気である外気を室内に取り入れることができる。換気装置1は、換気の風量を調節可能である。
【0011】
換気装置1は、例えば、排気のみを行ういわゆる換気扇でもよいし、給排気と熱交換とを行う装置でもよい。本開示に係る換気手段は、自然吸気または自然排気を行う設備であってもよい。換気装置1は、給気と排気の双方にファンを用いる第1種換気装置でもよいし、給気にファンを用いて排気にはファンを用いない第2種換気装置でもよいし、排気にファンを用いて給気にはファンを用いない第3種換気装置でもよい。また、外気を取り込む機能を有する空気調和装置を換気装置1として利用することも可能である。例えば、住宅に備えられた全館空調機器を、本開示における換気手段として利用してもよい。本開示における換気手段は、室内を換気することができ、換気の風量を調節可能に構成されたものであればよい。
【0012】
ユーザは、室内にある寝床で就寝可能である。本開示における「就床」とは、ユーザが寝床に入ることを意味する。本開示における「就床中」とは、ユーザが就床してから起床するまでの間を意味する。
【0013】
本実施の形態による換気システムは、換気装置1の制御のために用いられる各種の情報を取得する情報取得部10を備えている。情報取得部10は、例えば、ユーザの生体情報を検出する生体センサ2、および、室内の空気中の二酸化炭素濃度を検出するCO2センサ3、等から構成される。
【0014】
生体センサ2には、例えば、ドップラセンサ、サーモセンサあるいはウェアラブルセンサ等を用いることができる。生体センサ2が検出する生体情報は、例えば、脈拍、呼吸および体動に関するパラメータである。生体センサ2は、生体情報を取得する生体情報取得手段の一例である。CO2センサ3は、二酸化炭素濃度検出手段の一例である。以下、本実施の形態においては、室内の空気中の二酸化炭素濃度を単に「二酸化炭素濃度」と呼ぶことがある。
【0015】
情報取得部10は、入力部11によって入力された各種の情報を取得してもよい。入力部11は、個人属性、体調、在室人数、対象となる室内の広さおよび就寝スケジュール等の情報をユーザが入力するための入力手段の一例である。
【0016】
本実施の形態による換気システムは、情報取得部10によって取得した各種の情報に基づいた情報処理を行う情報処理部20を備えている。情報処理部20は、例えば、睡眠深度推定部21、就床推定部22、在室推定部23および濃度特性判定部24等から構成される。
【0017】
睡眠深度推定部21は、生体センサ2によって取得した生体情報から、就床中のユーザの睡眠深度を推定する。睡眠深度とは、睡眠の深さを示すパラメータである。また、就床推定部22は、生体センサ2によって取得した生体情報から、ユーザの就床有無を推定する。就床推定部22は、例えば、入力部11によって入力された就寝スケジュール等の情報に基づいてユーザの就床有無を推定してもよい。
【0018】
在室推定部23は、生体センサ2によって取得した生体情報およびCO2センサ3によって取得した二酸化炭素濃度の情報から、在室者の有無および在室人数の推定を行うものである。在室者の有無および在室人数は、二酸化炭素濃度の増加しやすさに関するパラメータの一例である。以下、本実施の形態において、二酸化炭素濃度の増加しやすさを「濃度特性」と呼ぶことがある。濃度特性判定部24は、在室推定部23の推定結果に応じて、濃度特性の判定を行う。本実施の形態における在室推定部23および濃度特性判定部24は、濃度特性に関する情報を取得する濃度特性取得手段の一例を構成するものである。
【0019】
本開示において、濃度特性取得手段によって取得するパラメータは在室者の有無および在室人数に限られず、在室推定部23ではない構成要素を、パラメータを取得するための手段として用いてもよい。例えば、入力部11を用いて、濃度特性に関するパラメータとして室内の広さの情報を取得してもよい。濃度特性判定部24は、室内の広さの情報に基づいて、濃度特性の判定を行ってもよい。
【0020】
濃度特性判定部24は、例えば、在室人数が多い場合および室内が小さい場合に、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上であると判定してもよい。濃度特性判定部24は、例えば、在室人数少ない場合および室内が広い場合に、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満であると判定してもよい。
【0021】
また、濃度特性判定部24は、CO2センサ3によって取得した過去の二酸化炭素濃度の情報および換気装置1の運転情報に基づいて、濃度特性の判定を行ってもよい。例えば、過去に換気装置1が運転を停止している場合の二酸化炭素濃度の増加の傾きが閾値より大きい場合には、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上であると判定してもよい。あるいは、ある特定の換気量の場合の二酸化炭素濃度の減少の傾きが閾値より小さい場合に二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上であると判定してもよい。
【0022】
本実施の形態による換気システムは、換気手段を制御する制御手段の一例として、換気装置1を制御する制御部30を備えている。制御部30は、情報処理部20による各種の処理の結果に応じて、換気装置1の動作を制御する。制御部30は、第1モードおよび第2モードの何れかの制御モードで、換気装置1を制御することができる。本実施の形態における制御部30は、就床推定手段の推定結果、睡眠深度推定手段の推定結果、二酸化炭素濃度検出手段の検出結果および濃度特性取得手段の取得結果に応じて、換気手段を制御する制御手段の一例である。
【0023】
情報取得部10、情報処理部20および制御部30等の換気システムを構成する機能は、処理回路により実現されてもよい。この処理回路は、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを備えてもよい。処理回路が少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを備える場合、制御部の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。ソフトウェア及びファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述されてもよい。ソフトウェア及びファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリに格納されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つのメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現してもよい。少なくとも1つのメモリは、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク等を含んでもよい。
【0024】
処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェアを備えてもよい。処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェアを備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものでもよい。また、換気システムを構成する各部の機能がそれぞれ処理回路で実現されても良いし、まとめて1つの処理回路で実現されても良い。制御系統の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、他の一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、各機能を実現しても良い。
【0025】
情報取得部10、情報処理部20および制御部30等の機能は、換気装置1に備えられた機器によって実現してもよいし、換気装置1の外部に備えられた機器によって実現してもよいし、換気装置1に備えられた機器と外部機器とが連携することで実現されてもよい。本実施の形態に係る換気システムは、各部の機能を搭載した換気装置1単体によって実現することもできるし、換気装置1と当該換気装置1と通信を行って連携する外部機器とによって実現することもできる。換気装置1と外部機器との通信は、例えば、赤外線通信のような近距離無線通信、無線LANによるネットワークを介した通信、あるいは有線通信でもよい。また、換気装置1と外部機器とは、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)あるいはサーバ等を介して通信してもよい。
【0026】
本実施の形態による換気システムは、制御部30による制御モードの選択あるいは切り替えを、二酸化炭素濃度の増加しやすさである濃度特性に応じて切り替えることを特徴としている。制御部30は、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上である場合には第1モードでの制御を実行し、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満である場合には第2モードでの制御を実行する。
【0027】
制御部30による制御モードの選択は、例えば、ユーザが入力部11によって入力した就床時刻の情報、または、過去に就床推定部22で推定した就床時刻の情報に基づいて、ユーザが就床するより所定時間前に、行われる。あるいは、制御部30による制御モードの選択は、ユーザの就床中に行われてもよいし、ユーザの就寝を検知した時点で行われてもよい。
【0028】
二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上である場合の第1モードでの制御時において、換気装置1は、ユーザの就床前に第1風量での換気を行う。第1モードでは、予め二酸化炭素濃度を下げておくことで、ユーザの就床中に二酸化炭素濃度が上がりすぎて、当該ユーザの睡眠の質が悪化してしまうことを抑制できる。二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満である場合の第2モードでの制御時において、換気装置1は、ユーザの就床前に第1風量よりも小さい風量での換気または換気の停止を行う。予め二酸化炭素濃度を上げておくことで、ユーザに眠気を発生させ、入眠を促すことができる。
【0029】
図2は、実施の形態1による換気システムの動作例を示すフローチャートである。なお、図2のフローチャートにおける各ステップは、同時に行われ得るし、一部を省略または変形してもよいし、順番を入れ替えることも可能である。
【0030】
まず、ユーザの生体情報を取得する(ステップS101)。ステップS101において取得した生体情報からユーザの就床有無を推定する(ステップS102)。また、並行して、室内の空気中の二酸化炭素濃度の増加しやすさである濃度特性の情報を取得する(ステップS103)。ステップS103において取得した濃度特性の情報に基づいて、制御モードを選択する(ステップS104)。上述したように、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上である場合には第1モードを、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満である場合には第2モードを選択する。そして、選択した制御モードで、ユーザの就床前に換気制御を行う(ステップS105)。本実施の形態に係る換気システムは、ユーザの就床前における室内の二酸化炭素濃度を二酸化炭素濃度の増加しやすさに応じて制御する。これにより、ユーザが良質な睡眠を得ることを支援できる。
【0031】
以上に説明したように構成された換気システムの動作の具体例について、更に図面を参照して説明する。図3は、第1モードでの制御時における換気システムの動作例を説明する図である。図4は、第2モードでの制御時における換気システムの動作例を説明する図である。図3および図4では、換気装置1による換気風量および二酸化炭素濃度の時系列変化の例を、ユーザの睡眠深度の時系列変化と共に示している。
【0032】
図3および図4に示すように、一般的に、人が睡眠を開始してから次に目覚めて覚醒状態になるまでの間には、睡眠深度1、2、3、4の順に睡眠が深くなるように移行し、その後、睡眠深度3、2、1、REM睡眠へと移行するという睡眠サイクルが約90分周期で繰り返される。一般的に、睡眠が深いほど体動が少なくなる。生体センサ2によって体動を検出することで、睡眠深度および睡眠サイクルなどの睡眠状態に関する情報を睡眠深度推定部によって推定することができる。なお、睡眠深度および睡眠サイクルなどの睡眠状態に関する情報は、体動以外の生体情報に基づいて行われてもよい。
【0033】
図3を参照して、第1モードでの制御時における換気システムの動作例を説明する。図3に示すように、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準以上である場合の第1モードにおいて換気装置1は、ユーザの就床前に、大風量での換気を行う。一例として、図3に示すように、第1モードにおいて換気装置1は、ユーザが就床するまでに二酸化炭素濃度が規定濃度閾値Caまであるいは規定濃度閾値Ca以下になるように、大風量での換気を行う。予め二酸化炭素濃度を下げておくことで、ユーザの就床中に二酸化炭素濃度が上がりすぎて、当該ユーザの睡眠の質が悪化してしまうことを抑制できる。このときの換気風量である大風量とは、本開示における第1風量に相当する。
【0034】
ユーザが就床すると、音等によって入眠を妨げないように、換気装置1の風量を低下させてもよい。このとき、換気装置1の運転を停止してもよい。就床時および就床直後のユーザはまだ入眠前である。入眠前のユーザは、睡眠深度が非常に小さい状態あるいは覚醒状態である。第1モードにおいて換気装置1は、就床中のユーザの睡眠深度が第1深度閾値S1以下の場合には、第1風量より小さい第2風量での換気または換気の停止を行ってもよい。ユーザの就床中は、当該ユーザの入眠後においても同様の動作を行ってもよい。これにより、睡眠深度が浅い状態のユーザが換気装置1の運転音等によって覚醒してしまうことを抑制できる。
【0035】
第1モードにおいて換気装置1は、ユーザが就床中であり二酸化炭素濃度が第1濃度閾値C1より大きく当該ユーザの睡眠深度が第1深度閾値S1より大きい場合には、第2風量より大きい第3風量での換気または換気の再開を行ってもよい。ユーザの睡眠深度が深い場合には、換気装置1の運転音等によって覚醒してしまうリスクが少ない。そこで、第2風量より大きい第3風量での換気または換気の再開を行うことで、二酸化炭素濃度を低下させ、ユーザの睡眠の質を向上させることができる。
【0036】
なお、図3の例では第1濃度閾値C1は規定濃度閾値Caより大きく設定されているが、第1濃度閾値C1と規定濃度閾値Caとは同じ値であってもよい。また、図3の例では第3風量は、第1風量よりも小さく設定されている。これにより、睡眠中のユーザが換気装置1の運転音等によって覚醒してしまうことを抑制できる。なお、二酸化炭素濃度を低下させることを優先して、第3風量を第1風量と同じあるいは第1風量よりも大きく設定してもよい。
【0037】
第1モードにおいて、就床中のユーザの睡眠深度が第1深度閾値S1より大きく、二酸化炭素濃度が第1濃度閾値C1以下である場合の換気装置1の動作は任意に設定され得る。例えば、換気装置1の運転音等によって覚醒してしまうリスクあるいは電気代等を考慮して第3風量よりも小さい風量での換気または換気の停止を行ってもよいし、二酸化炭素濃度を低下させることを優先して第3風量での換気を行ってもよい。
【0038】
図4を参照して、第2モードでの制御時における換気システムの動作例を説明する。図4に示すように、二酸化炭素濃度の増加しやすさが基準未満である場合の第2モードにおいて換気装置1は、ユーザの就床前に、小風量での換気を行う。一例として、図4に示すように、第2モードにおいて換気装置1は、ユーザが就床するまでに二酸化炭素濃度が増加するように、上記の第1風量よりも小さい第4風量での換気を行う。このとき、換気装置1は、換気を停止していてもよい。予め二酸化炭素濃度を上げておくことで、ユーザに眠気を発生させ、入眠を促すことができる。
【0039】
ユーザが就床すると、音等によって入眠を妨げないように、換気装置1は引き続き小風量での換気あるいは換気を停止してもよい。第2モードにおいて換気装置1は、就床中のユーザの睡眠深度が第2深度閾値S2以下の場合には、第1風量より小さい第5風量での換気または換気の停止を行ってもよい。ユーザの就床中は、当該ユーザの入眠後においても同様の動作を行ってもよい。これにより、睡眠深度が浅い状態のユーザが換気装置1の運転音等によって覚醒してしまうことを抑制できる。なお、図4の例において、第5風量は第4風量と同じに設定されているが、互いに異なる風量として設定されていてもよい。また、第4風量は、上記の第2風量と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2深度閾値S2は、第1深度閾値S1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
第2モードにおいて換気装置1は、ユーザが就床中であり二酸化炭素濃度が第2濃度閾値C2より大きく当該ユーザの睡眠深度が第2深度閾値S2より大きい場合には、第5風量より大きい第6風量での換気または換気の再開を行ってもよい。ユーザの睡眠深度が深い場合には、換気装置1の運転音等によって覚醒してしまうリスクが少ない。そこで、第5風量より大きい第6風量での換気または換気の再開を行うことで二酸化炭素濃度を低下させ、ユーザの睡眠の質を向上させることができる。なお、第6風量は、上記の第3風量と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
第2モードにおいて、就床中のユーザの睡眠深度が第2深度閾値S2より大きく、二酸化炭素濃度が第2濃度閾値C2以下である場合の換気装置1の動作は任意に設定され得る。例えば、換気装置1の運転音等によって覚醒してしまうリスクあるいは電気代等を考慮して第6風量よりも小さい風量での換気または換気の停止を行ってもよいし、二酸化炭素濃度を低下させることを優先して第6風量での換気を行ってもよい。
【0042】
以上に示したように、二酸化炭素濃度の増加しやすさに応じた制御を行うことで、実際の環境に応じた換気装置1の動作が実現される。本実施の形態によれば、ユーザが良質な睡眠を得る上で有利になる換気システムが得られる。
【0043】
図5は、実施の形態1による換気システムの変形例を示すブロック図である。換気システムは、例えば、外気情報取得部12を備えていてもよい。外気情報取得部12は、外気中の花粉量およびPM2.5濃度等の外気の情報を取得する外気情報取得手段を構成するものである。外気情報取得部12は、外部機関から気象情報などのデータを取得するものでもよいし、換気装置1の外気導入部に設置したセンサ機器あるいは屋外に設置したセンサ機器等から構成されるものでもよい。
【0044】
例えば、入力手段の一例である入力部11は、情報取得部10とともに、ユーザの個人属性を取得する属性取得手段として機能してもよい。制御部30は、外気情報取得部12の取得結果と入力部11および情報取得部10の取得結果とに応じて換気装置1を制御してもよい。すなわち、制御部30は、外気の情報およびユーザの個人属性に応じて換気装置1を制御してもよい。
【0045】
制御部30は、外気の情報およびユーザの個人属性に応じて、規定濃度閾値Ca、第1濃度閾値C1および第2濃度閾値C2を変更してもよい。例えば、ユーザが花粉およびほこり等へのアレルギーを有している場合またはユーザが喘息を有している場合において、外気の花粉量およびPM2.5濃度が特定の基準を超えている場合には、規定濃度閾値Ca、第1濃度閾値C1および第2濃度閾値C2をより高い値に変更してもよい。あるいは、同様の場合において、換気装置1による換気の風量を下げてもよい。ユーザの個人属性に合わせて換気量を減らして屋外から流入する花粉およびPM2.5の量を抑えることで、アレルギー症状等によって眠りを妨げることを抑制できる。
【0046】
また、換気システムは、例えば、塵埃センサ4を備えていてもよい。塵埃センサ4は、室内の空気中の塵埃量を検出する塵埃量検出手段の一例である。空気中の塵埃には、いわゆるほこり、花粉およびPM2.5等が該当する。制御部30は、塵埃センサ4の検出結果と入力部11および情報取得部10の取得結果とに応じて換気装置1を制御してもよい。すなわち、制御部30は、室内の空気中の塵埃量およびユーザの個人属性に応じて換気装置1を制御してもよい。
【0047】
例えば、ユーザが花粉およびほこり等へのアレルギーを有している場合またはユーザが喘息を有している場合においては、室内の空気中の塵埃量が基準以下に維持されるように、換気装置1による換気の風量を調整してもよい。ユーザの個人属性に合わせて換気量を調整することで、アレルギー症状等によって眠りを妨げることを抑制できる。
【0048】
また、塵埃センサ4の検出結果と外気情報取得部12の取得結果と入力部11および情報取得部10の取得結果と応じて、換気装置1を制御してもよい。外気の情報に応じて制御を行うことで、より確実に室内の空気中の塵埃量を基準以下に維持しつつ、二酸化炭素濃度も適切な状態に維持することができる。
【0049】
図6は、第3モードでの制御時における換気システムの動作を説明する図である。制御部30は、図6に示される第3モードでの制御を行ってもよい。例えば、ユーザが花粉およびほこり等へのアレルギーを有している場合またはユーザが喘息を有している場合において、外気の花粉量およびPM2.5濃度が特定の基準を超えている場合に、第3モードでの制御を行う。第3モードでは、室内の空気中の塵埃量を基準塵埃量P0以下に維持するように換気風量を制御する。
【0050】
第3モードでは、基本的には第1モードと同様の制御が行われる。第3モードでは、室内の空気中の塵埃量が塵埃量閾値よりも大きい場合には、通常の第1モードに比べて換気風量を下げる。これにより、室内の空気中の塵埃量を基準塵埃量P0以下に維持することができる。室内の空気中の塵埃量が塵埃量閾値以下である場合には、第1モードと同様の換気風量での動作を行う。第3モードは、通常の第1モードに比べて換気風量を下げた運転モードに相当するものである。第3モードは、第1モードと比較して、二酸化炭素濃度の維よりも塵埃量の維持を優先した運転モードである。
【0051】
また、換気システムは、例えば、情報処理部20の構成要素として、体調推定部25を備えていてもよい。体調推定部25は、ユーザの体調を推定する体調推定手段を構成するものである。体調推定部25は、例えば、生体センサ2で取得した生体情報および入力部11により入力された情報から、ユーザの体調を推定する。制御部30は、体調推定部25の推定結果に応じて換気装置1を制御してもよい。
【0052】
制御部30は、体調推定部25の推定結果に応じて、規定濃度閾値Ca、第1濃度閾値C1および第2濃度閾値C2を変更してもよい。例えば、二酸化炭素濃度をより低く維持することが好ましいあるいは多くの外気を取り込んだ方がよいと推定される場合には、規定濃度閾値Ca、第1濃度閾値C1および第2濃度閾値C2をより低い値に変更してもよい。また、例えば、ユーザが花粉およびほこり等へのアレルギーを有している場合またはユーザが喘息を有している場合において、当該のユーザの体調が悪いと推定される場合には、外気の流入によるアレルギー症状を抑えるために、規定濃度閾値Ca、第1濃度閾値C1および第2濃度閾値C2をより高い値に変更してもよい。同様に、体調推定部25の推定結果に応じて換気風量を調整してもよいし、ユーザの体調が悪いと推定される場合には上述した塵埃量閾値および基準塵埃量P0をより低い値に変更してもよい。
【0053】
なお、上述した実施の形態およびその変形例で説明した任意の構成要素は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、自由な組み合わせ、変形または省略が可能である。例えば、換気システムは、塵埃センサ4、外気情報取得部12および体調推定部25の3つ全てを図5に示すように備えていてもよいし、何れか1つまたは2つを備えていてもよい。
【0054】
また、図7は、実施の形態1に係る推論装置70の構成を示すブロック図である。換気システムの機能の一部、特に、情報処理部20および制御部30の機能を実現するに当たっては、推論装置70を活用するとよい。推論装置70を用いることで、より適切な推定および学習を自動的に実行することが可能となる。
【0055】
推論装置70は、データ取得部71および推論部72を備えている。推論装置70の処理回路には、例えば、図示しないプロセッサ及びメモリが備えられている。推論装置70は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することによって予め設定された処理を実行し、推論装置70の動作を制御する。すなわち、推論装置70においてメモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行し、推論装置70のハードウェアとソフトウェアとが協働することによって、推論装置70が備えるデータ取得部71および推論部72の機能が実現される。
【0056】
学習済モデル記憶部80には、学習済モデルが記憶されている。学習済モデル記憶部80に記憶される学習済モデルは、データ取得部71への入力データから推論をするためのものである。学習済モデル記憶部80に記憶される学習済モデルは、例えば、学習装置により生成される。学習済モデル記憶部80は、例えば、推論装置70と通信可能に設けられたサーバ装置等に備えられる。また、学習済モデル記憶部80を推論装置70に設けてもよい。
【0057】
推論装置70のデータ取得部71は、推論装置70への入力データを取得する。入力データは、例えば、生体センサ2から取得される生体情報、CO2センサ3か取得される二酸化炭素濃度の情報、入力部11による各種の入力データ、在室推定部23の推定結果、過去の換気装置1の動作情報、外気情報取得部12による取得情報等である。また、推論装置70への入力データとして、例えば、対象となる室内の窓およびドアの開閉状態に関する情報が含まれていても良い。換気システムは、窓およびドアの開閉状態の情報を取得する手段を備えていてもよい。
【0058】
推論装置70の推論部72は、学習済モデル記憶部80に記憶されている学習済モデルを用いて、データ取得部71が取得した入力データから、各種の推定等を行う。推論部72は、データ取得部71が取得した入力データを、学習済モデルに入力することで、入力データから推論される推定結果を出力することができる。このようにして、推論部72は、入力データから各種の推定をするための学習済モデルを用いて、データ取得部71が取得した入力データから推定結果を出力する。
【0059】
また、推論装置70は、モデル更新部73をさらに備えていてもよい。推論装置70のモデル更新部73は、推論部72から出力された推定結果に基づいて、学習済モデルを更新する。このモデルの更新の際、データ取得部71は、推論部72から推定結果が出力された後に、入力データを再度取得する。そして、モデル更新部73は、データ取得部71により再度取得された入力データを用いて、学習済モデル記憶部80に記憶されている学習済モデルを更新する。モデル更新部73は、学習装置による学習済モデルの生成と同様の処理により、学習済モデルを更新できる。モデル更新部73により更新された学習済モデルは、学習済モデル記憶部80に記憶され、次回の推論部72による推論に利用される。学習済モデルの更新にあたっての推定結果の評価は、システム自体が自動で行ってもよいし、ユーザによって入力される主観の評価情報を用いて行ってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 換気装置、 2 生体センサ、 3 CO2センサ、 4 塵埃センサ、 10 情報取得部、 11 入力部、 12 外気情報取得部、 20 情報処理部、 21 睡眠深度推定部、 22 就床推定部、 23 在室推定部、 24 濃度特性判定部、 25 体調推定部、 30 制御部、 70 推論装置、 71 データ取得部、 72 推論部、 73 モデル更新部、 80 学習済モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7